不動産用語集

用語の頭文字

あ行

IRR

不動産経営などの投資事業においてその収益性を評価する指標の一つで、事業から得られるキャッシュフローの現在額と投資額が等しくなる割引率をいう。Internal Rate of Returnの略語。

 事業から将来得られるであろう各期間のキャッシュフローを現在価値に換算するには一定の割引率によって減価しなければならないが(第n期の収益を(1+割引率)のn乗で除する)、そのようにして算出したキャッシュフローの合計額と投資額とが等しくなるような割引率である。IRRは収益性が高いほど大きな数値となる。事業評価や投資判断などに当たって利用されている。

 不動産投資においては、DCF法が収益をベースに資産価格を算出して事業を評価するのに対して、IRRは投資額の回収性に着目して評価することになる。

  IRRを利用する場合には、事業規模に左右されない指標であること、事業期間を適切に設定する必要があることなどに注意しなければならない。

IHクッキングヒーター

IHとは、Induction Heaterの頭文字を取ったもので、「電磁誘導加熱器」という意味である。

IHクッキングヒーターは、トッププレート(結晶化ガラスなどの板)の下に、磁力発生用コイルを敷いたものである。
トッププレート上に鉄製の鍋を置いた状態でコイルに電流を流すと、電磁誘導により鍋底に電気抵抗が生じ、電気抵抗により鍋底が加熱される。

このような原理により鍋底全体を直接加熱するので、周囲の空気へ熱が逃げにくく、熱効率が80%以上と高いという特長がある。 2キロワットのタイプのIHクッキングヒーターは、4,000キロカロリーのハイカロリーバーナーに近い火力を持つとされている。

ただし電磁誘導により加熱を行なうため、磁力の影響を受けやすい調理器具(鉄製のフライパン、鉄鍋、18-0のステンレス鍋、鉄ホーロー鍋など)を使用する必要がある。アルミ鍋、銅鍋、土鍋、耐熱ガラス鍋などは使用することができない。また、鍋底が平らでない鍋(中華鍋など)も使用できない。

このため、アルミ鍋・銅鍋・超耐熱ガラス鍋などが使用できるクイックラジエントヒーターとIHクッキングヒーターを組み合わせたタイプの調理用ヒーターが開発され、普及しつつある(詳しくはラジエントヒーターへ)。

またIHクッキングヒーターを使用するには、家庭内の分電盤において、IHクッキングヒーターだけに使用する200Vの専用回路を設置する必要がある(ただし予備の回路がある場合、その回路を利用できる)。

ISDN

公衆電話網を用いて電話とデータ通信等を統合して運用するサービス。英語のIntegrated Services Digital Network(統合デジタル通信網)の略語。NTTが提供している。

特徴は、相手と直接に通信回線をつないで情報を送ることである(「コネクション型通信」という)。そのために回線の交換機を必要とするが、通信の安定性が高いとされる一方、コストが嵩むほか、ISDNの規格は国際性に欠ける。

なお、インターネットなどはISDNと違って情報にアドレスを付加して送る仕組みで、相手と直接に通信回線をつなぐことなく情報を伝達することができ、ISDNに比べて国際性を備え低コストであるが、通信の安定性に劣るとされる。

IoT(インターネット・オブ・シングス)

Internet of Things。モノが人を介することなく相互に情報をやりとりする概念をいう。これによって、広範な分野で、自動的な認識、判断、制御等やそれらの統合・連携が可能になるとの期待がある。 

例えば、住空間の状態や設備を自動的に制御し、住生活ニーズに幅広く応えることを目指した取り組み(スマートハウス、インテリジェントハウス、ユビキタス住宅など)も、この概念の具体化である。そのほか、エネルギー管理の最適化、ウエアラブルデバイスによる生活ニーズの充足、自動車の自動運転等々、多様な展開が考えられている。

なお、IoTを具体的に展開するためには、モノに認知・通信・制御機能を埋め込むこと、大量の情報をネットワーク化し分散したままで処理すること、データの収集・蓄積・分析を自律的に行なうことなどの技術開発が必要である。

IoTマンション

IoT技術を活用して住宅設備を制御することのできるマンション。インターネットを介して各種の設備を遠隔で操作できる。

インターネットによって操作できる設備には、例えば、鍵(スマートロック)、ドアや窓の開閉センサー、防犯カメラ(ネットワークカメラ)、室温コントロール装置などがある。

ICT

情報技術と通信技術が複合化・一体化した技術概念。英語のInformation and Communication Technologyの略語で、情報通信技術ともいう。

ICTは、ものごとのデータ化、データの分析・総合化、情報の交流ネットワーク化などの技術が組合わさった幅広い技術をさす概念である。たとえば、スマートハウス、交通系ICカード、POSシステム(販売時点情報管理)、ソーシャルメディアはいずれもICTに支えられているなど、その応用範囲は広く、コンピュータ技術に重点を置いたIT(Information Technology)を包含すると考えてよい。

一方、AI(人工知能 Artificial Intelligence)やロボット技術は、ICTと連携することはあってもそれには含めず、別の技術と考えられている。

IT重説

不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を利用して対面以外の方法で行なうこと。宅地建物取引業法が定めている重要事項説明における対面原則の例外である。

IT重説の導入に当たっては、関係書類を十分に確認できること、双方向で確実にやりとりができること、宅地建物取引士が実際に説明することなどの要件を満たすとともに、消費者が不利益を被らないよう措置する必要がある。そのための条件等について検討・検証が進められ、不動産の売買・賃貸に当たっての重要事項説明について、一定の条件を満たす場合に、IT重説を対面による説明と同様なものとして認める運用がなされている。

IP電話

インターネットをベースとした格安の音声電話サービスのこと。

IPフォンに加入するためには、利用者が光ファイバーADSLCATVという高速の情報通信サービスに加入していることが必要になる。その上で、利用者が加入している通信事業者(プロバイダなど)がIPフォンサービスを提供している場合には、利用者が申し込むことにより、IPフォンが使用できるようになる。ただし初期費用、月額(定額)使用料が必要である。

現在提供されているIPフォンのサービスでは、既存のアナログ電話機を、IPフォンに対応した特別の機器(IPフォン対応モデムなど)につなぐことにより、IPフォン通話が使用可能になるものが多い。

IPフォンに加入した場合、IPフォン専用の電話番号が交付される(既存の電話番号は一般電話回線として引き続き使用できる)。IPフォンへの一般電話・携帯電話からの着信も可能である。
IPフォンの加入者同士の通話は無料となることが多い。また、一般電話との国内通話・国際通話は格安となる。

IPフォン

IP電話ともいう。

インターネットをベースとした格安の音声電話サービスのこと。
IPフォンに加入するためには、利用者が光ファイバーADSLCATVという高速の情報通信サービスに加入していることが必要になる。その上で、利用者が加入している通信事業者(プロバイダなど)がIPフォンサービスを提供している場合には、利用者が申し込むことにより、IPフォンが使用できるようになる。ただし初期費用、月額(定額)使用料が必要である。

現在提供されているIPフォンのサービスでは、既存のアナログ電話機を、IPフォンに対応した特別の機器(IPフォン対応モデムなど)につなぐことにより、IPフォン通話が使用可能になるものが多い。

IPフォンに加入した場合、IPフォン専用の電話番号が交付される(既存の電話番号は一般電話回線として引き続き使用できる)。IPフォンへの一般電話・携帯電話からの着信も可能である。
IPフォンの加入者同士の通話は無料となることが多い。また、一般電話との国内通話・国際通話は格安となる。

IVS(国際評価基準)

不動産を含む資産の評価についての国際的な基準をいい、IVSはInternational Valuation Standardsの略語である。国際財務報告基準(IFRS)の採択など企業会計の国際的統一化の動きを背景に、財務諸表における資産評価の国際的基準として、国際評価基準審議会(International Valuation Standards Council)によって策定・提案されている。

IVSは、不動産だけでなくすべての資産や負債を評価の対象とし、市場価格(Market Value)を原価方式(Cost Approach)、比較方式(Market Approach)、収益方式(Income Approach)を基本として、市場参加者の視点から評価する方法を採用している。従って、日本の不動産鑑定評価基準と比較すれば、評価対象は幅広いが、その基本概念において同一で、手法についても整合的であると考えられている。

相見積もり

商品やサービスを注文するときに、複数の者に価格等の見積もりを求め、比較評価して注文先を決定すること。「見積もり合わせ」とも言う。

相見積もりは、住宅工事の発注、建物管理の委任、引越しの依頼などにおいて、幅広く活用されている。

相見積もりに当たっては、予算、依頼内容、納期などを明確にし、それを相手に伝えること、提出された見積書を同じ基準で比較評価すること、原則として3つ以上の相手に見積もりを依頼することが重要である。

アイランドキッチン

壁に接することなく独立して設置された調理台の形式。部屋の中で島(英語でアイランドIsland)のようなかたちとなることから名づけられた。

アイランドキッチンは、対面型のキッチンであるとともに、オープンキッチン(ダイニングルームや居間とつながった形式)でもある。開放感やコミュニケーション性に優れている一方、設置のために部屋の広さや強力な換気装置が必要とされる。

なお、アイランドキッチンに類似した調理台の形式として、一端のみ壁に接するかたちのもの(ペニンシュラキッチン)がある。

アウトドアリビング

居室のように利用する屋外の空間。和製英語である。

アウトドアリビングに利用するのは、中庭バルコニー、屋上などで、これらに手を加えて室内のように使用する。雨風への対応やプライバシーの確保が必要だが、開放感のある居住スペースになるとされる。

アウトフレーム工法

マンションの住戸を構造的に支える構法に、「ラーメン構造」と「壁構造」がある。

ラーメン構造は、柱とを剛接合するもの。壁構造は壁で荷重を持たせるものでそれぞれ一長一短があるが、ラーメン構法の場合は、柱や梁が室内側に出っ張り(出隅・入隅)、デッドスペースを生み出してしまう。この短所を解消するのがアウトフレーム工法。

柱や梁を住戸の外側に出してしまえば、住戸の室内には柱や梁の出っ張りはなくなるため、部屋を有効に使える。柱はバルコニー側と開放廊下側にあるが、バルコニー側に出すケースが一般的。

アウトレットモール

ブランド品などを安価に販売する店舗が多数集まった街区状の小売流通施設。英語のoutlet mallで、アメリカ合衆国で誕生した小売流通形態である。

大部分が市街地から離れた場所に立地する。買物の利便だけでなく、飲食や娯楽サービスを提供することによって、滞在型のショッピングセンターとして営まれることも多い。

アウトレット(電線類の〜)

電流や通信波を室内に引き出すための接続口。電線、電話線、TVケーブルなどを接続する。英語のoutlet。「コンセント」とも言うがこれは和製英語である。また、アウトレットに接続するための端子がプラグ(plug)である。

アウトレットの形状は、国や装置によって異なることがあるので、それに合わせてプラグを選択しなければならない。たとえば電源プラグのかたちは、日本やアメリカではAタイプ(縦に平行する2枚の板)が、ヨーロッパの多くの国ではCタイプ(平行する2本の棒)が、イギリスではBFタイプ(横に平行する2枚の板と垂直な1枚の板(アース)との組合せ)が使われている。

青色申告

個人が、不動産の貸付け業などの事業を営んでいる場合には「確定申告」を行なう必要があるが、毎日の取引を正確に記録して、所得や税金の計算を正確に行なっている個人については、国が所得税法上のさまざまなメリットを与えるという制度が設けられている。
この制度のことを「青色申告」という。

青色申告を行なう個人には、次のような所得税法上のメリットがある。

1.一定要件を満たす「家族従業員」に支払った適正な給料・賞与(これを青色事業専従者給与という)は、必要経費となる。
2.複式簿記に従って青色申告決算書を完成させることにより、所得から55万円の特別控除を受けることができる。
3.複式簿記によらないで青色申告決算書を完成させた場合には、上記2.に代わって、所得から45万円の特別控除を受けることができる。

なお、青色申告を行なうためには、青色申告を行なおうとする年の3月15日までに、税務署に「承認申請書」を提出することが必要である(ただしその年の1月16日以後に業を開始した場合には、開始した日から2ヵ月以内に「承認申請書」を提出すればよい)。

また、不動産の貸付けから生じる所得(不動産所得)のある個人が、上記1.から3.のメリットを享受するには、不動産の貸付けが「事業的規模」に達していることが必要である。

青色事業専従者給与

不動産所得がある個人が青色申告を行なっているとき、一定の条件を満たす家族従業員について「青色事業専従者給与の届出」をあらかじめ税務署に提出した場合には、家族従業員に対して支払った給与を必要経費とすることができる。
このような給与を「青色事業専従者給与」と呼んでいる。

ただしこの場合には、不動産の貸付けが「事業的規模」に達していることが必要となる。

青田売り

完成する前に宅地や建物を売却すること。新築マンションや戸建分譲住宅の販売手法として広く使われている。

売主は事業リスクを回避し、早期に資金を回収できるなどの利点があるが、買主には、確実に建物が完成するかどうか、完成物での仕様や品質が予定どおりであるかなど、引渡しまでのあいだ不安が残りやすい。そこで、宅地建物取引業法では、宅建業者に対して建築確認前の広告や契約の禁止、手付金等の保全義務などを課している。

青地

登記所に備え付けられている公図において青く塗られた部分のことで、国有地である水路や河川敷を示す。「青道」ともいう。

青地は本来は国有地であるから一般の宅地にはならないはずだが、長い年月のうちに水路が事実上廃止されてしまって、青地を含む敷地に普通の住宅が建っていることも少なくない。

このような青地を含む敷地を持つ中古住宅を購入する場合には、青地(国有地)を国から払い下げてもらう手続きを踏むのが安全である。

青道

青地」と同じ。それを参照。

なお、青地はもともと水路や河川敷であるが、その機能を失いあたかも道のようなかたちになっていることも少なくない。「青道」という名称は、このような土地の形状を反映したものと考えられる。

赤地

登記所に備え付けられている公図において、赤く塗られた部分のこと。
国有地である道路を示すものである。

従って、本来赤地は国有地であるから、一般の宅地にはならないはずだが、長い年月のうちに道路であることが忘れられてしまい、赤地を含む敷地に普通の住宅が建っていることも少なくない。

このような赤地を含む敷地を持つ中古住宅を購入する場合には、赤地(国有地)を国から払い下げてもらう手続きを踏むのが安全である。

赤道

公図上で地番が記載されていない土地(無籍地)の一つで、道路であった土地をいう。

古くから道路として利用された土地のうち、道路法の道路の敷地とされずにそのまま残った土地がこれに該当し、国有地である。公図に赤色で着色されていることから「あかみち」と呼ばれている。

現に、道路でなくその予定もない赤道の払い下げを受けるには、用途廃止等の所定の手続きが必要である。

上がり框

玄関に段差が設けられて、腰を下ろせるようになっているとき、その腰を下ろす部分にあたる水平材のこと。
高価な材が用いられることが多い。

空地条例

空き地等の管理や利活用の促進のために制定される条例。多くの地方公共団体において、空き地の適正な管理などを確保することによって、環境保全、防災、防犯などの必要に応えることを目的に制定されている。

空地条例の内容はさまざまであるが、雑草の除去を義務付けることや、騒音・振動・悪臭、害虫、砂ぼこり、ごみ等の投棄などを防止することによって生活環境の保全を図るものが多い。そのほか、防災、防犯、景観保全、自然環境保全、農地保全、危険防止、利活用の促進などを内容とするものがある。

空地条例による義務付けや措置の要請については、一般に、強制力を持たせることは困難で、法律による授権が必要であると考えられている。

空家対策特別措置法

適切に管理されていない空家等について、その状態を是正するための措置を定めた法律。正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」といい、2014(平成26)年に制定された。

同法は、市町村による空家等対策計画の策定、空家等の所在や所有者の調査、データベースの整備等を規定している。

さらに、ア)倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態、イ)著しく衛生上有害となる恐れのある状態、ウ)適切な管理が行なわれないことにより著しく景観を損なっている状態 、エ)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態の空家等を「特定空家等」として指定して、是正のための立入調査や、措置の指導、勧告、命令、代執行を行なうことができるとする規定を定めている。

また、措置の勧告を受けた特定空家等に係る土地については、固定資産税等の住宅用地特例から除外することとされている。

空家に係る譲渡所得の特別控除

相続した空家の譲渡利益に対する所得税について、課税を軽減する措置。

課税の軽減は、譲渡所得を計算するとき、譲渡利益から3,000万円(譲渡利益が3,000万円未満のときはその額)を控除する方法で行なう。

特別控除が適用されるのは、相続開始の直前まで被相続人が住んでいた居住用家屋とその敷地を譲渡する場合であって、相続が開始した日から3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡するなど一定の条件を満たす場合に限られる。

なお、この措置については、適用期限が定められているので注意が必要である。

空き家・空き地バンク・空き家バンク

空き家・空き地の物件情報が登録され、検索できる情報システム。地方自治体が運営していることが多い。

空き家・空き地バンクは、不動産需給のミスマッチの解消、不動産の有効活用の促進などに資すると考えられている。しかしながら、バンクごとに掲載項目が異なること、検索や比較がしづらいなどの課題があるため、それらを統合した全国版空き家・空き地バンクが構築されている。

アクアリウム

水生動物を飼育する水槽。英語のaquarium。一般に、水温の維持、汚染物の処理、酸素供給などのための装置を備えている。また、水草を植えるなど、水槽の環境を整えたものもある。

なお、アクアリウムは、飼育のためだけでなく、インテリアとして利用される場合もある。

悪意

私法上の概念で、契約などの法律的な行為の際に一定の事実を知っていることをいう。

逆に知らないことを「善意」という。民法などの規定において、事実を知っているかどうかによって行為の効果に違いが生じることがあり、一般に悪意の場合には不利になる。

例えば、AがBに不動産を虚偽で売却したうえで登記をしたときにはAB間の取引は無効であるが、その登記済みの不動産をCが買収した場合に、CがそのAB間の取引が虚偽であることを知っていた(悪意である)ときには、ABはCに対して当該不動産の所有権移転が無効であると主張できる。しかし、Cが知らなかった(善意である)ときには、その主張はできない。悪意の場合には、善意の場合に比べて法的に保護を受ける効果が劣るのである。

アクリル板

アクリル樹脂を板状に加工した素材。合成樹脂の一種で、化学的には、メタクリル酸エステルの重合体(ポリマー)である。

透明度が高く、衝撃に耐え、可塑性があって着色もできることから、ガラスの代用品として、建築材料、各種のカバー、製品の素材などさまざまな用途に使われている。

種類は、「押し出し材」と「キャスト材」に大別される。押し出し材は、アクリル樹脂をローラーで押し出して作られ、加工が容易で安価であるが、耐久性に欠けるとされる。キャスト材は、アクリル樹脂をガラスで挟み高度に重合させたもので、硬く耐久性があり、大きな板とすることもできるが、高価である。

上げ下げ窓

2枚の窓ガラスを上下に動かして開閉する。一般に、縦長の窓になる。


上げ下げ窓の形式には、両方の窓ガラスをそれぞれ独立に動かすもの(ダブルハング・タイプ)のほか、上の窓ガラスを固定(はめ殺し)して下だけを動かすもの(シングルハング・タイプ)、両方が連動するもの(バランス・タイプ)がある。

アコーディオンカーテン

仕切り壁が折りたたむように伸縮することによって開閉する可動間仕切り。英語のaccordion curtain。その仕切り壁は、一般に天井に設置したレールに吊され、アコーディオンの蛇腹のように動く。

本来、カーテンのような幕ではなく、可動する薄い壁であるが、最近は部屋を仕切るカーテンのように使われる場合もある。

アスファルトシングル葺き

アスファルトシングルとは、基材(無機系材料)にアスファルトを塗覆した柔軟性のある板状の材料である。
軽量かつ安価で、複雑な屋根でも加工しやすく、防水性、耐震性にも優れている。
このアスファルトシングルで屋根を覆うことを「アスファルトシングル葺き」という。

具体的な工法としては、アスファルトシングルを接着剤で下地に張る方法や、釘打ちによる方法がある。

アスベスト

石綿(せきめん・いしわた)のこと。

繊維質であるため紡績することができる。また、耐久力があり、溶融点が1,300度程度と高く、熱絶縁性が大きく、耐薬品性も大きいなど、安価で優れた性質を持つため、さまざまな用途に使用されてきた。建築素材としても、断熱材、保温材、耐火材として大量に利用された。

しかし、石綿の繊維を肺に吸入すると、肺がんや中皮腫の原因となることがわかり、1975年には吹き付け使用が禁止され、以後、段階的に使用の規制が強化 されて2006年には全面的に輸入・製造・使用等が禁止された(代替品が確立していない特定の部材については例外的に確立までの間は禁止が猶予されてい る)。

建物の解体などの際には、使用されていた石綿が飛散するなどの恐れがあり、それに伴う健康被害を予防するため、作業方法などについて一定の基準が定められている。

預かり金

他者から預かっている金銭。例えば、賃貸住宅を貸したときに受領する敷金、支払い給与から源泉徴収した税金、取引に当たって受け取った保証金などは、いずれも預かり金である。

預かり金は、いずれは返還しなければならないから、貸借対照表では負債として処理される(1年以内に返還するものは流動負債、1年を超えて預かるものは固定負債)。

なお、返還する必要がなくなった預かり金は、金銭の支払いを受けたことになるので、収入として計上する。また、「預かり金」の逆は「預け金」である。

アセットマネジメント(Asset Management)

委託を受けて不動産などの資産の形成、運用、保全を行なうことをいう。

その際に重要なのは、投資目的に沿ってリスクとリターンをコントロールすることであり、資産価値を評価するほか、投資内容や投資先の分散、投資期間の設定などについて工夫することが要求される。
また、その業務は多岐にわたり、例えば不動産を組み込んだアセットマネジメントにおいては、投資不動産の選定や売買だけでなく、不動産の収益性を左右する賃料の設定、テナントの選定などの業務にも関与する。

受託の方法として、大きく信託による方法と受委託の契約による方法とがあるが、その業務は、前者は主として信託業法によって、後者は主として金融商品取引法宅地建物取引業法などによって規制されている。

頭金

購入代金を分割して支払うときに最初に支払う代金。通常、商品引き渡しの際に支払われる。頭金は、以後支払う分割代金よりも多額であることが多い。

たとえば住宅ローンを利用する場合には、購入代金を金融機関から借り入れて販売者に一括して支払ったうえで、借入金を金融機関に分割返済することとなる。この場合に、通常、購入金額のすべてを住宅ローンの対象とすることはできず、代金の一部は自己資金で支払わなければならない。この住宅購入時に住宅ローンを充てることなく自己資金で支払う代金が「頭金」である。

UPREIT

土地を現物出資して不動産投資信託REIT)として運用することとし、その後に出資分をREITの投資口(株式と同義)に転換する手法をいう。

「Umbrella Partnership REIT」の略語であり、土地出資者とREITとがパートナーシップを形成することから名付けられた。アメリカで幅広く活用されている手法である。

UPREITにおいては、出資した土地の簿価が時価よりも低い場合でも、土地所有者に対する時価との差額益(譲渡益)課税は、REITの投資口に転換した時点で行なわれる。つまり、UPREITを活用することによって、土地の含み益を顕在化することなく課税を繰り延べることができるのである。

アティック

屋根裏部屋のこと。アティック(attic、アテカともいう)とは、もともと古代建築の記念門の上部につくられた部屋であったが、転じて屋根裏部屋の意味になったといわれている。

アテネ憲章

近代都市のあるべき姿を示した理念。1933年にCIAM(近代建築国際会議)がアテネで開催した会議の成果として提案された。

スプロールやスラムに現れている混沌を解決するべく、都市を機能的な構造に構築・再編する必要があるとし、そのための考え方を95条の項目にまとめたものである。その考え方を主導したのは、ル・コルビュジエだったとされている。

アテネ憲章で示された主な理念は、都市装置を人間を標準として構築すること、都市が必ず備えるべき機能は「住む」「働く」「楽しむ(余暇に)」「往来する」であること、都市計画においては機能の配置、効率性の規律、居住を最優先すること、都市の再編に当たっては立体化、計画による調和確保、科学技術の活用を重視することなどである。

都市計画による都市の構築・再編のための理念として広く受け入れられ、都市計画を主導する考え方となった。一方で、都市機能の分離、計画主導・プロセス軽視の手法、技術的な改造の偏重などに対する強い批判がある。

アトリウム

もともとはローマ時代の中庭や中庭付きの大広間のことだが、現代ではグリーンや池などを設け、人工的な自然環境をつくり出す、建物に囲まれた中庭、吹抜けなどの内部空間を指す。

アパート

英語の「アパートメント(apartment)」を略した言葉。
わが国では1階建てもしくは2階建ての共同住宅で、建築構造木造または軽量鉄骨構造のものを一般的に指している。

しかし最近では2階建ての共同住宅であっても、重量鉄骨構造のものがあり、また外壁・内壁も軽量気泡コンクリートパネル等としているものもある。

このため、マンションとアパートの外観上・構造上の区別がつきにくくなってきている。

アパート経営

居住用建物の全部を所有し賃貸する事業をいう。不動産投資として実施されることがある。

アパート経営は不動産賃貸業であるから、事業を行なうことについては宅地建物取引業法の適用はない。ただし、アパート経営の仲介、アパート経営者の委任を受けて行なう賃借人の募集などの業務については、同法の適用がある。

なお、建物の全部ではなく、マンションの一室などを所有して賃貸する事業は「マンション経営」という。

アプローチ

敷地の入り口や門から建物までの小道(取付き道路)のこと。前面道路から建物までの距離をできるだけ取り、カーポートや前庭を配置することにより、まち並みや景観に配慮するケースが近年増えてきている。

雨戸

家の外回りに設置される窓のない戸。風雨の吹込み防止や防犯のために用いられる。

雨どい

屋根面を流れる雨水を地上や下水に導くための溝形や管状の部材のこと。

いわば雨の道で、横方向に流す軒樋(のきどい)、谷樋(たにどい)、縦方向に導くための竪樋(たてどい)、横樋(よこどい)と竪樋をつなぐ呼樋(よびどい)(形状が似ているので鮟鱇=あんこう、ともいう)などがある。

ちなみに、ボーリング競技でいう「ガータ」は、英語で雨どいのこと。

雨漏り

雨水が建物内に漏れること。屋根や外壁から雨水が 浸入し、天井や壁から室内に水が漏れる現象である。

雨漏りの原因は、部材の劣化、破損、ズレなどさまざまであるから、その修理に当たっては、原因に応じて修理方法を適切に選択しなければならない。

なお、水が室内に漏れる現象として、「雨漏り」のほか「漏水」があるが、漏水は水道管から水が漏れることである。

網戸

細い金網などを張った建具。通気を保ちつつ虫類が侵入するのを防ぐために用いられる。

網戸は、に設置されるほか、引き戸などとしても用いられている。

アメニティ

居心地や住み心地が快適な環境。英語のamenity。都市環境や居住環境の状態を示す言葉として使われる用語である。

良好なアメニティを確保・実現することは、都市計画(特にイギリスのそれ)や住宅政策の重要な目標のひとつとされている。ただし、便利さを高めるだけではアメニティの向上にはならず、安らぐことのできる景観、慣れ親しむことのできる空間性などを備えている必要がある。

また、アメニティは宿泊施設等で提供する個人用の備品を指す言葉としても使われている。

アラベスク模様

アラビア風の装飾様式。英語のarabesque。

アラベスク模様はイスラム美術で発達した装飾様式で、植物をテーマに線が細かく絡み合った左右均整の模様(唐草模様)や、幾何学的なかたちを反復して造形した文様に特徴がある。

アラベスク模様は、イスラム美術だけでなく、室内装飾など各種の用途におけるデザインの様式として広く用いられている。

アルコーブ

マンションにおいて、共用廊下から数m離れた位置に玄関扉を置いた造りのこと。

アルベルゴ・ディフーゾ

まちのなかの複数の空き家を宿泊施設として利用し、まちの活性化を図る取り組み。イタリアで始まった取り組みで、アルベルゴ・ディフーゾalbergo diffusoは、イタリア語で「分散した宿」という意味である。イタリアだけでなく、日本を含め世界各地で取り組まれている。

もともとそこにあったものを再利用するという原則の下、街の複数の空き家や空き店舗をリノベーションし、レセプション、客室、食堂などの機能をそれぞれの家屋に分散させる。それによって、まち全体がホテルの機能を担うことになり、回遊性や触れ合いが生まれ、まちが活性化するとされている。

アルマイト

アルミニウムの表面に陽極酸化皮膜を作る処理方法。英語では、alumite、 anodize(アノダイズ)またはanodic oxidation(アノディック オキシディション)と表記される。

陽極酸化皮膜は、電解液にアルミニウム製品を浸し、これを陽極として弱い電流を流すことによって形成する。これによって、アルミニウムの耐食性、耐摩耗性が向上するほか、装飾性を加えることもできる。

アルマイトは、アルミニウム製建材、自動車部品、光学部品、半導体部品、化粧板などに幅広く用いられている。また、やかん、鍋などの家庭用製品にも利用されている。

なお、アルマイトはアルミニウム自体を酸化して皮膜にするもので、表面に他の金属を付加するメッキとは処理の方法が異なる。

アレルゲン

アレルギー疾患を引き起こす原因物質。アレルギー疾患は、抗体(免疫性を与える物質)が特定の抗原(抗体を作らせる物質)に過敏に反応することによって生じる。通常は無害な物質に対するこの特異な免疫反応がアレルギー(allergy)反応で、それを引き起こす抗原がアレルゲン(allergen)である。アレルゲンのほとんどはタンパク質で、空気中の粒子に付着していることが多い。

主なアレルゲンは、塵、ダニ、動物のフケ、花粉、カビ類である。また、食品アレルギーでは、鶏卵・牛乳・小麦などもアレルゲンになる。

なお、アレルギー疾患の発症には、遺伝因子、環境因子、部位特異的な因子が複雑に関与しているとされ、予防法が十分に確立しているとは言い難い。また、アレルギー疾患、シックハウス症候群化学物質過敏症は、それぞれ異なる概念である。

アレンジャー(Arranger)

不動産の証券化を実現するために各段階の実務を行なう参加者(不動産を所有するオリジネーター、証券を発行・販売する者、投資家など)の間に立ち、調整を行なう者。

その業務に当たっては、証券化実行への働きかけ、証券化の仕組みの検討・立案、証券化に必要なSPCの設立、格付の取得、資産管理の具体化、最終的な決済の見届け・確認など広範な仕事を実施し、または関与することが要求される。特に、利害関係者間の調整が重要で、そのためには、不動産、金融、法務、税務などに関する広範で専門的な知識を要する。

ただし、業務のための特別の資格制度はなく、不動産会社、証券会社、銀行、信託会社、独立の専門コンサルティング会社などがこれに当たっている。

アンカーボルト

布基礎にあらかじめ埋め込んでおく棒状の金物のこと。
布基礎と土台を緊結するための重要な金物である。

あんこう

軒どい(軒下に水平に設置する樋)と竪どい(軒下から地面まで垂直に設置する樋)とを繋ぐ部分をいう。「呼びどい」も同じ意味である。

その形が魚のアンコウ(鮟鱇)に似ているところから名付けられた。

暗号化

当事者以外には内容が理解できないように文字等の記号を変換することをいう。

インターネットを通じた情報交換においてはその通信は常に傍受可能であるため、秘密保持を要する記号(例えばクレジットカードの番号、重要な個人情報、企業秘密など)の通信に当たっては、暗号化が必須である。

暗号化は、記号を一定の方法で変換し(その際に使う鍵が暗号化鍵)、変換した記号を伝達し、受け取った記号をもとの記号に復元する(その際に使う鍵が複号化鍵)というプロセスを基本とする。従って、暗号の安全性は、復号化鍵を当事者のみが知っていることによって保たれる。暗号化の最重要課題が第三者による復号化鍵の解読を困難にすることにあるのはそのためである。

古来、さまざまな暗号化の技術が工夫されているが、インターネットによる取引の安全を確保するためによく使われる暗号化の方法として、「公開鍵暗号」がある。

これは、通常は同一である暗号化鍵と復号化鍵を異なるように設定し、暗号化鍵をあらかじめ公開したうえでその暗号化鍵を用いた暗号を受信する方法である。受け取った暗号は、受信者しか知らない復号化鍵がなければ解読できない。理論上は暗号化鍵から復号鍵を推定できるはずだが、その計算には膨大な時間を要して事実上不可能であるとされる。

また、公開鍵暗号を用いた通信に当たっては送信者を安全確実に特定することが必要だが、そのための方法として工夫されたのが「電子署名」である。

安心R住宅

安心に関する一定の要件を満たす旨の標章(マーク)を使用することのできる住宅。標章の付与は、国土交通省の告示(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)に基づいて登録された事業者団体が行なう。

安心R住宅の標章を使用するために必要な要件は、1)新耐震基準(1981年6月1日以降の耐震基準)等に適合すること、2)インスペクション(建物状況調査等)を実施し、構造上の不具合および雨漏りが認められず、住宅購入者の求めに応じて既存住宅売買瑕疵保険を締結できる用意がなされていることである。そして事業者は、当該住宅の広告などに際して、安心R住宅の標章を表示できる。

安心R住宅の標章の付与に当たる事業者団体は、国土交通大臣の審査・登録を受け、リフォームの基準及び標章の使用について事業者が守るべきルールを設定し、団体の構成員である事業者を指導・監督することとなる。

なお、「安心R住宅」の「R」は、Reuse(リユース)・Reform(リフォーム)・Renovation(リノベーション)の意味である。

アンティーク

骨董品。古い時代のスタイルを帯びていることや、希少性があることによって珍重される家具、道具、美術工芸品などをいう。英語のantique。

主なアンティークとして、年代物の家具類、古い陶磁器類、精巧な金属器類、デザイン豊かなガラス製品、珍しい文房具類や置物などがある。

実用に供されるだけでなく、部屋に置くことによって落ち着いた雰囲気を生み出すなど、インテリアとしても利用されている。

アーガイル

格子模様の一種で、連続する菱形で構成され、細い線が菱形の中心で交差するように辺に並行して描かれた模様である。英語のArgyle。

セーター、靴下などの衣料品の柄として使われるほか、デザインのための模様としても用いられている。

アーガイルという名前は、スコットランドのアーガイル(Argyll)地方に由来するという説が有力である。

アース

電位を大地と同じにすること。英語のearthで、「接地」ともいう。

電気回路の一部または電気機器等の金属部分を、導線によって、地中に埋設した接地用の電極とつなぐ方法で行なわれる。そのための導線を「アース線」または「接地線」という。 

落雷などによる過電流や電荷ノイズの流入を防ぎ、感電事故や電気機器の誤動作を防ぐことができる。また、アースを電気回路の一部として利用し回路を簡易化することもできる。

家電製品を設置する場合には、原則として、電源を接続するときに同時に、製品のアース線をコンセントのアース端末に接続する必要がある。

アーバニズム

都市社会に特有の生活様式。英語のurbanism。アメリカの社会学者ルイス・ワース(Louis Wirth)が1938年に提示した概念である。

ワースは、都市においては、「特徴的な生活様式を構成する諸特性の複合体」が発達しているとしている。そしてその生活様式は、大規模で高密度で高い異質性を備えた都市社会の特性から生まれるとし、その基本的な特徴として、i)社会組織の機能ごとの分節化と分業、ii)人々の相互作用における第二次的接触(間接的・合理的な関係)の優位、iii)個人の自由と疎外の並存をあげている。

アーバニズムの概念は、都市社会学を中心に広く受け入れられ、都市社会を理解するための基本的な枠組みとなっている。また、まちづくりなどに当たっても重視すべき視点であるとされる。

アール

アールを付けるなどと使う。円の半径を表す記号「r」に由来して、曲面や曲線を付けることをいう。

RE100

事業活動のために消費するエネルギーの全てを再生可能エネルギーとする国際的な取り組み(イニシアティブ)。RE100は「Renewable Energy 100%」の略である。2014年に、国際環境NGOであるThe Climate Groupが提唱・開始した取り組みで、事業運営を100%再生可能エネルギーで行なうことを宣言する企業が加盟している。

RE100に加盟する企業は、再生可能エネルギー100%の達成に向けた戦略とタイムテーブルを作成し、進捗状況を毎年報告しなければならない。達成の方法には、

(1)自ら太陽光・風力などによって再生可能エネルギーを生産し、事業に用いる方法
(2)再生可能エネルギーをエネルギー事業者から購入する方法
(3)環境価値証書(グリーン電力証書、非化石証書、J-クレジットなど)を購入する方法がある。

なお、RE100に参加できるのは、認知度・信頼度が優れ、電力消費量が大きい、国際的・地域的な影響力のある企業とされている。

RMBS

Residential Mortgage Backed Securitiesの略。住宅ローンを担保として発行される証券のことで、住宅金融公庫(現在は「住宅金融支援機構」)が発行する貸付債権担保住宅金融公庫債券(現在は「貸付債権担保住宅金融支援機構債券」)や金融機関が発行する住宅ローン債権担保証券がこれにあたる。

証券を買った投資家は、住宅ローンの償還金や利子を受け取る。その特徴は、多数の住宅ローン債権をまとめてパッケージとして金融商品化することであり、アメリカで発達・拡大した商品である。住宅ローンは超長期固定金利という特性があるが、債務不履行、繰上げ償還などのリスクがあり、それらのリスクを投資家に分散する手法として、日本でも発行が拡大してきている。

ROE

財務指標の一つで、当期純利益を自己資本で除した数値。英語のReturn On Equityの略称で、和訳は「自己資本利益率」という。

自己資本は株主が投下した資本であるから、ROEは投資の収益性を示すとされている。

ROA

財務指標の一つで、利益を総資産(総資本)で除した数値。英語のReturn On Assetsの略称で、和訳は「総資産利益率」という。資産利用の効率性を表すとされている。

RC

「Reinforced Concrete」の頭文字を取ったもの。
鉄筋コンクリート構造」という意味である。

鉄筋とコンクリートによって、柱・小梁・大梁・スラブ・壁を造り、すべての部分を一体化した構造のこと。
鉄筋コンクリートの部材は、引っ張る力にも、圧縮する力にも強いので、地震に対する安全性が高い構造となる。
また、すべての部材がコンクリートで一体化され、部材同士の接合部は剛であるので、建築学上の「ラーメン構造」となっている。

この鉄筋コンクリート構造のデメリットは、自重が大きいため、原則的には大空間建築や高層建築に向かないということである。

RPA

事務作業を自動的に実施する手法またはその手法を導入する取り組み。英語のRobotic Process Automation(ロボティック プロセス オートメーション)の略語。

基本的な仕組みは、主として定型的な事務作業のプロセスを情報化して、情報制御の下で機械システム(ロボット)が自動的に実施することである。いわば、産業ロボットの事務作業版として活用されている。

アール・デコ

1920~30年代にかけてヨーロッパやアメリカを中心に流行したデザイン・装飾様式。英語のArt Deco。フランス語のart décoratifの短縮語。

直線や立体を用いた静的な幾何学図形をモチーフにし、明るい色を使うことが特徴で、工業製品や近代的都市生活が一般化した時代を背景に、そこに表れた機能的・実用的な美意識を反映した様式であるとされている。

アール・デコを取り入れた分野は、工芸だけでなく、絵画、建築、家具、室内装飾など幅広い。

生け垣

樹木を密に植え並べてつくる垣根。用いる樹種によって高さが定まり、受ける感覚も違うものとなるが、植物の特性を生かすことができる。一方で刈り込みなどの手入れが必要である。

都市緑化や景観保全の手法として用いられることもある。たとえば、緑地協定で垣根を生け垣とする旨を定めるなどである。

遺言

死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、日常用語として、「ゆいごん」と読むことが多い。

その最大の役割は、遺産の処分について被相続人の意思を反映させることで、遺言がない場合は民法の規定に従って相続が行なわれる(法定相続)が、遺言を作成しておくと、遺産の全体または個々の遺産を誰が受け継ぐかについて自らの意思を反映させることができる。
また、遺贈の方法により、相続人以外の者に遺産を与えることも可能である。ただし、それが有効であるためには、民法に定められた方法で行なわなければならない。一般的には、遺言書の全文(日付と氏名を含む)を遺言者が自筆で記述して押印する自筆証書遺言、遺言内容を公証人に確認してもらってから公正証書にする公正証書遺言、遺言内容を秘密にして公正証書にする秘密証書遺言のどれかの方法による。

また、手続きを円滑に進めるため遺言執行者を指定することができ、遺言執行者は相続人の代理人とみなされる。遺言の執行は、弁護士、司法書士、行政書士、信託会社などが手がけている。

遺産分割

相続財産を相続人が分けることをいう。

遺言により各相続人の取得する財産が具体的に記されている場合を除いて、相続人全員で協議して、誰が、どの財産を、どの方法で、どれだけ取得するかを決めなければならないのである。

遺産分割の協議は、民法で「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」とされている。遺産分割協議に相続人全員が参加していなかった場合は、その遺産分割協議は無効となる。

また、協議は相続人間での任意の話し合いであり、相続人全員で協議し、全員が賛成すれば、遺言や法定相続分に関係なく財産をどのように分けることも自由である。なお、協議ができないときや不調のときには、家庭裁判所で決めてもらうこととなる。

具体的な分割の方法としては、遺産そのものを現物で分ける現物分割、相続分以上の財産を取得するときにその代償として他の相続人に金銭を支払う代償分割、遺産を売却して金銭に変換したうえでその金額を分ける換価分割がある。

なお、遺産共有状態にある共有物に共有に関する規定を適用するときは、法定相続分(相続分の指定があるケースは、指定相続分)により算定した持分を基準とする。また、共有者は、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者(氏名等不特定を含む)の不動産の持分を取得することができるが(2023年4月1日以降)、相続開始から10年を経過していなければならない。

遺産分割協議書

遺産分割について協議・合意した内容を記載した書類。

相続に当たっては、相続人が複数のときには、被相続人の遺産を分割しなければならない。この場合、遺言書の内容どおりに分割するときや、民法に規定する相続分(法定相続分)どおり分割するときには、遺産分割について協議する必要はなく、遺産分割協議書を作成する必要もない。一方、これ以外の場合には、相続人が、相続割合や分割の方法を協議して合意する必要がある。遺産分割協議書はその合意内容を記載した書類である。

遺産分割協議書には、相続発生の事実、相続人の全員が合意したこと(相続人全員の署名及び実印の押印)、相続する遺産の内容(財産目録)、遺産分割の割合及びその方法を記載しなければならない。

相続は遺産分割協議書がなくても有効に成立するが、相続した遺産について、預金の名義変更・払い戻し、不動産の名義変更、相続税の申告などを行なう ときには、遺産分割協議書の提示を求められることがある。

なお、相続税の申告・納税期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内 である。期限までに遺産分割の協議が成立していないときは、各相続人が、民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして、期限までに申告・納税しなければならないとされている。

意思能力

法律行為を行なったときに、自己の権利や義務がどのように変動するかを理解するだけの精神能力のこと。民法上明文の規定はないが、このような意思能力を持たない者(=意思無能力者)の行なった法律行為は無効とされている(判例)。
意思無能力者とは、具体的には小学校低学年以下に相当する精神能力しか持たない者と考えられる。
通常、法律行為が無効であれば、その無効は契約等の当事者の誰からでも主張することが可能とされており、意思無能力者の行なった法律行為も同様である。

ただし、意思無能力者の法律行為が無効とされるのは、意思無能力者を保護する趣旨であるので、意思無能力者が無効を主張しない場合(契約等の効力の存続を希望する場合)には、契約等の相手方から無効を主張することは許されない、とする有力な学説がある。

意思表示

一定の法律効果を欲するという意思を外部に表示することである。
意思表示は次の3つの部分から構成されている。

1.内心的効果意思
具体的にある法律効果を意欲する意思のこと。例えば、店頭で品物を買おうと意欲する意思が内心的効果意思である。

2.表示意思
内心的効果意思にもとづいて、その意思を表示しようとする意思のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を伝えようとする意思である。
(なお、表示意思を内心的効果意思に含める考え方もある)

3.表示行為
内心的効果意思を外部に表示する行為のこと。
例えば、店頭で品物を買うために、店員にその旨を告げることである。

なお、内心的効果意思のもととなった心意は「動機」と呼ばれる。例えば、品物を家族にプレゼントしようという意図が「動機」である。しかし、現在は判例・通説では「動機」は原則として、意思表示の構成要素ではないとされている。

意思無能力者

意思能力を持たない人のこと。

意匠

美術品、工芸品、工業製品、建築物などの 形、模様、色やその構成を考案すること、または、考案された表現を指す。デザイン(英語のdesign)も同じ意味である。その内容や方法に決まりはないが、考案に当たっては創造力が必要とされる。

なお、一定の意匠については、出願によって登録し、その意匠に係る物品等の製造、使用などを排他的に実施する権利(意匠権)を得ることができる(「意匠制度」を参照)。

意匠制度

特定の意匠を登録し、それを排他的に実施する権利(意匠権)を与える制度。「意匠法」に基づく仕組みである。

登録できる意匠は、物品の形状・模様・色彩やこれらの結合、建築物の形状等、画像のどれかであって、視覚を通じて美感を起こさせるものである。

登録は、特許庁に出願し、審査によって必要な要件を満たす場合に認められる。必要な要件は、利用可能性、新規性、創作が容易でないこと、先に出願された意匠と類似しないことなどとされている。

登録された意匠については、出願者は、その意匠に係る、物品の製造、使用、譲渡等、建築物の建築、使用、譲渡等、画像の作成、使用等を、排他的に実施する権利(意匠権)を有することになる。また、意匠権は、登録された意匠と同一のものだけでなく、それに類似する意匠についても効力が及ぶ。

なお、意匠権の存続期間は意匠登録出願の日から最長25年で、権利存続のためには、毎年、登録料を納入しなければならない。

囲障の設置

所有者を異にする2棟の間に空地があるときには、境界に囲障(塀、柵のような通行を妨げる構築物)を設置できるとするルール。民法の相隣関係の一つとして認められている権利で、「囲障設置権」という。

この場合の費用は、原則として相隣者が等しい割合で負担する。

移住

住む場所を移すこと。生活の本拠地を移転する場合を言う。明確な定義はないが、「地方移住」「海外移住」のように使われる。

なお、一時的に他の場所に居住することは移住ではない。また、一般的に、近所に転居する場合も移住とは言わない。

イ準耐

準耐火建築物の一つで、「建築基準法第2条9号の3イ」に規定されている建築物のこと。

主要構造部のすべてを準耐火構造にすると同時に、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)を防火戸等とした建築物である。

遺跡台帳

貝塚・古墳・住居跡などの遺跡について、その時代・種類・所在地・面積・主な出土品などを記載した台帳のこと。

文化財保護法第95条の規定にもとづき、原則として市町村教育委員会が作成する台帳であり、一般の閲覧が可能とされている。なお、遺跡の区域を明示した地図は遺跡地図と呼ばれている。

遺跡地図

貝塚・古墳・住居跡などの遺跡の区域を示す地図のこと。文化財保護法第95条の規定にもとづき、原則として市町村教育委員会が作成する地図であり、一般の閲覧が可能とされている。

この遺跡地図に登載された遺跡の区域は「周知の埋蔵文化財包蔵地」となるので、土木工事等の目的で発掘しようとする者は、事前に文化庁長官に届出をする義務が生じる(同法第93条)。

遺贈

民法に定める方式の遺言により、特定の者に財産を贈与すること。

民法では、民法に定める方式による遺言のみを認めており、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、特別方式による遺言が定められている(民法第967条、第976条から979条)。
これらの遺言において、遺言をする者が、特定の者に対して財産を贈与する意思表示をすることを「遺贈」という。

位置指定道路

特定行政庁から道路位置指定を受けた私道を、一般に「位置指定道路」と呼んでいる(建築基準法第42条第1項第5号)。

位置指定道路は「建築基準法上の道路」であるので、位置指定道路に面する土地では、建築物建築することができる。

一次エネルギー消費量

建築物のエネルギー消費性能を評価するときの評価指標のひとつで、建物の利用に伴う直接的なエネルギー消費量(エネルギー利用の効率化設備によるエネルギー消費削減量を含む)をいう。この数値が小さいほど省エネの程度は大きい。

非住宅建築物については、空気調和設備、空調設備以外の機械換気設備、照明設備、給湯設備、エレベーター、その他の一次エネルギー消費量を合計し、エネルギー利用の効率化設備によるエネルギー消費削減量を減じた消費量を算定する。

住宅については、暖房設備、冷房設備、機械換気設備、照明設備、給湯設備、その他の一次エネルギー消費量を合計し、エネルギー利用の効率化設備によるエネルギー消費削減量を減じた消費量を算定する。

その具体的な算定方法は、国土交通大臣が定めることとされているが、いずれも、一年当たりのエネルギー量(メガジュール/年)で表される。

省エネの程度を評価する場合の一次エネルギー消費量は、省エネ基準を1とすれば、誘導基準は、非住宅建築物については0.8倍、住宅については0.9倍、住宅トップランナー基準は0.9倍の水準に設定されている。

一時金

毎月支給される給与以外の、一時的に支払われる給与をいう。賞与、ボーナス、期末手当等がこれに該当し、通常、年2回支給される。

一時金の性格については、経営上の業績等に応じて支給される特別の手当て、または、毎月の給与を補填するべく支給される生活給とする2つの考え方がある。しかし、いずれにしても給与であることに変わりはない。

一時滞在施設(帰宅困難者の~)

地震が発生したときの帰宅困難者を一時的に受け入れ、滞在できるようにする施設をいう。

大都市が大地震で被災したときには、屋外で被災して待機する場所がなく、帰宅が難しい被災者(帰宅困難者)が多数発生する。そこで、震災対策の一つとして、帰宅困難者等を一時的に受け入れ、帰宅可能となるまでの間(おおむね3日間)安全に滞在できる施設を確保する必要がある。そのような施設が「一時滞在施設」である。

一時滞在施設は、耐震性があること、一定の広さがあること、滞在者を支援できることなどの条件を満たしていなければならない。そのため、あらかじめ自治体の指定を受けるか、協定を締結するのが望ましいとされている。

一時滞在施設として想定されているのは、集会場、庁舎やオフィスビルのエントランスホール、ホテルの宴会場、学校等である。

一団地認定

一団地の土地を一つの敷地とみなして建築規制を緩和適用するための、特定行政庁の認定をいう。建築基準法に基づく制度である。

建築確認に当たっては、一つの建物(用途上不可分の関係にある複数の建物は一つの建物とみなす)ごとに独立した敷地を確定し、基準の適合性が判断される。しかし、一団地認定を得れば、その土地に複数の建物を建築する場合でも(ただし、建物は総合的に設計されていなければならない)、一つの敷地に建築するとみなして建築規制が適用される。緩和適用される規制は、接道義務容積率制限、建ぺい率制限、日影規制等である。

例えば、ある土地を敷地とした建物が規制を満たさない場合に、隣地を敷地とする建物と総合的に設計した上で、両方の土地を一体として一団地認定を得ることができれば、前者の建築が可能となることがある。

一団地認定は、建築物の位置および構造が、安全上、防火上、衛生上支障がないと認められる場合に得ることができ、具体的な認定の基準は特定行政庁が公表している。

一団地の総合的設計

2以上の敷地等で形成されている一団の土地の区域に1または2以上の建築物を総合的な設計によって建築する場合に、その一団の土地の区域を建築物の一つの敷地とみなして建築規制(接道義務容積率制限、斜線制限日影規制等の規制)を適用する制度をいう。

この制度の適用を受けるには、特定行政庁によって、建築物の位置および構造の設計について、安全上、防火上および衛生上支障がないと認定されなければならない。

この制度を活用することによって、隣接する敷地等の間で容積率を移転することができる。

一括競売

土地の競売に当たって、土地に対する抵当権の設定後にその土地に建物が築造された場合に、土地とともにその建物をあわせて競売することをいう。民法によって認められている。

なお、建物に対して抵当権が設定されていない場合や建物所有者が債務者と異なる場合にも当該建物を競売できるが、優先弁済の対象となるのは土地の対価についてのみであるほか、建物所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有している場合は建物の競売はできない。

一級建築士

建築物の設計や工事管理を行なうことのできる資格のひとつ。建築士法に基づき、国土交通大臣の行なう一級建築士試験に合格し、大臣から免許を受けることによって得ることのできる資格である。

建築物の設計・工事管理は、用途、構造、規模に応じて定められた一定の建築物について、一級建築士、二級建築士または木造建築士が行なわなければならないとされている(建築基準法)。この場合、二級建築士および木造建築士については設計・工事管理を行なうことができる建築物に制限があるが、一級建築士は、すべての建築物について設計・工事管理を行なうことができる。

ただし、一定規模以上の建築物の構造設計または設備設計に関しては、構造設計一級建築士または設備設計一級建築士による構造関係規定または設備関係規定への適合性の確認を受けるか、それらの者が自ら構造設計または設備設計を行なう必要がある。

一戸建て

独立した一軒の家屋がひとつの住戸となっている住宅。「戸建て」も同じ意味である。これに対して、複数の住戸で構成される建物を「集合住宅」「共同住宅」という。

逸失利益

損害賠償において請求することのできる損失の一つで、本来得られるべきであるにもかかわらず得られなかった利益をいう。

「得べかりし利益」とか「消極的利益」ともいわれる。

例えば、事故による入院中に得ることのできなかった収入や、後遺障害によって生じる減収はこれに当たる。現実に生じた損失(「消極的利益」に対して「積極的利益」といわれる)に比べて、額の算定に当たって幅が生じやすい。

なお、慰謝料とは異なることに注意。

一般建築物

建築基準法において、特殊建築物と、大規模建築物とのどちらにも該当しない建築物のこと。

一般財団法人

法律(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)に基づく準則に従って設立された財団法人をいう。
従うべき主な準則は、

1)目的、設立者が拠出する財産及びその価額、評議員の選任・解任の方法などを定めた定款を作成すること
2)定款中に、理事又は理事会が評議員を選任・解任する旨、及び設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めが無いこと
3)評議員、評議員会、理事、理事会、監事を一定の手続きによって設置・運営すること(大規模一般財団法人については会計監査人が必置)
4)一定の方法によって会計を処理すること
である。

一般財団法人は、主たる事務所の所在地において、準則に適合するかどうかのみの審査を経て設立の登記をすることによって成立し、名称中に「一般財団法人」という文字を独占的に使用する。

一般社団法人

法律(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)に基づく準則に従って設立された社団法人をいう。
従うべき主な準則は、


1)目的、社員資格の得喪に関する規定などを定めた定款を作成すること
2)定款中に、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定めが無いこと
3)社員総会その他の機関を一定の手続きによって設置・運営すること(社員総会及び理事は必置であり、理事会、監事、会計監査人は定款により設置を選択できる)
4)一定の方法によって会計を処理すること
である。

一般社団法人は、主たる事務所の所在地において、準則に適合するかどうかのみの審査を経て設立の登記をすることによって成立し、名称中に「一般社団法人」という文字を独占的に使用する。

一般承継人

他人の権利義務を一括して承継する人のことで、包括承継人ともいわれる。たとえば被相続人の財産等を包括的に承継する場合の相続人がこれに当たる。承継するのは一身専属権(譲渡が禁止されている債権など)を除くすべての権利義務である。

なお、個別の権利を承継する人を特定承継人といい、たとえば売買によって所有権を取得する者がこれに該当する。

一般定期借地権

借地借家法(1992(平成4)年8月1日施行)により創設された3種類の定期借地権のうちの一つ。

「一般定期借地権」とは次の3つの契約内容を含む定期借地権のことである。

1.更新による期間の延長がない。
2.存続期間中に建物が滅失し、再築されても、期間の延長がない。
3.期間満了時に借地人が建物の買取を地主に請求することができない。

なお、「一般定期借地権」の存続期間は少なくとも50年以上としなければならない。

一般媒介契約

媒介契約の一つの類型。
一般媒介契約とは、次の1.および2.の特徴を持つ媒介契約のことである。

1.依頼者(すなわち売主等のこと)が「依頼した宅地建物取引業者」以外の「他の宅地建物取引業者」に重ねて媒介を依頼することが原則的に自由である。
2.依頼者自身が、自分の力で取引の相手を発見し、直接契約することが原則的に自由である。

なお、依頼者が、「依頼した宅地建物取引業者」以外の「他の宅地建物取引業者」に重ねて依頼する場合において、その「他の宅地建物取引業者」の名称と所在地を、「依頼した宅地建物取引業者」に通知するかどうかにより、一般媒介契約はさらに次の2つの類型に分かれる。

1)明示型の一般媒介契約
明示型の一般媒介契約とは、「他の宅地建物取引業者」の名称と所在地を、「依頼した宅地建物取引業者」に対して通知する義務があるとする媒介契約である。
2)非明示型の一般媒介契約
非明示型の一般媒介契約とは、「他の宅地建物取引業者」の名称と所在地を、「依頼した宅地建物取引業者」に対して通知しなくてよいとする媒介契約である。

一筆の土地

土地登記簿において、一個の土地を指す単位を「筆」という。

従って、「一筆の土地」とは「土地登記簿上の一個 の土地」という意味である。

移転登記

所有権移転登記を参照。

移動等円滑化経路協定

バリアフリー化するための経路の整備、管理に関する協定をいう。「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に基づき、土地所有者等の全員の合意によって締結され、市町村長の認可を得て公告される。

移動等円滑化経路協定は、高齢者、障害者等が生活上利用する旅客施設、官公庁施設、福祉施設などが所在し、バリアフリー化のための整備を進めるべく指定される一定の地区(重点整備地区)内の一団の土地について締結され、経路案内設備、エレベーター、エスカレーター等の整備、管理などに関して定められる。

この協定の効力は、新たに該当土地の所有者等となった者に承継される。また、この制限は、宅地建物取引における重要事項説明の対象とされている。

田舎間(江戸間)

建築の基準尺で、主に関東地方を中心に使われ、全国に広まっている単位。「江戸間」「関東間」も同じ意味である。

田舎間の尺度は、柱の心々間の長さ(=1間)を6尺(約1.82m)とする。田舎間で用いられるの大きさは柱の太さによって異なるが、おおむね5尺8寸×2尺9寸(約1.76m×約0.88m)とされている。

田舎間で用いられる畳の大きさは、本間(京間)や中京間よりも狭い規格である。

なお、住宅の居室等の広さを畳数で表示する場合においては、畳1枚当たりの広さは1.62平方メートル(各室の壁心面積を畳数で除した数値)以上の広さがあるという意味で用いることとされている(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)。

イニシャルコスト

収益を得る前にその準備のために必要な費用。英語のinitial costで、「初期費用」ともいう。これに対して、準備が整ったあとの運営に要する費用を「ランニングコスト」という。

建物の建築、事業の開始、機械設備の導入などに当たって発生する。その主な費用は、技術開発費、調査費、設計費、工事費、用地買収費などであるが、これらは、損益分析において固定費とするのが原則である。

囲繞地

公道に通じていない土地を囲んでいる周囲の土地をいう。

民法は、他の土地に囲まれ公道に接していない土地の所有者は、公道に至るために囲繞地を通行することができる(囲繞地通行権)としているが、これは、囲繞地に対して、囲繞する土地を受益地とする法定地役権が設定されていると考えることができる。

囲繞地通行権

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者が、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行できるとする権利。民法で定められている権利である。「公道に至るための他の土地の通行権」ともいわれる。

この場合、袋地の所有者は、囲繞地を通行するために与える損害に対して相応の金銭を支払うことが必要とされている。ただし、土地を分割した結果として袋地が発生した場合には、当該袋地の所有者は、公道に至るために、分割された他の土地を無償で通行することができる。

委任契約

民法上の典型契約の一つで、法律行為の実施を委託する契約をいう。労務供給契約であるが、雇用契約と違い受任者の裁量で実施すること、請負契約と異なり結果の完成が必須ではないことに特徴がある。

宅地建物取引業における媒介契約は法律行為の実施を委任するものではないから民法上の委任契約ではないが、準委任契約として委任契約の規定(民法643~655条)が適用されることとなる。ただしその適用においては、特別法である宅地建物取引業法の規定が優先する。

委任状

一定の事項を特定の者に委任する旨を記載した書面。委任する事項(委任事項)、委任する相手(受任者名)などを記載する。

委任状がなくても委任契約は有効だが、受任者が委任事項(例えば各種の申請手続)を実施する場合に委任状の提示を求められることがある。この場合には、委任状の発行が直近(通例は3ヵ月以内)でなければならないとされることが多い。

委任状には、委任の意思を表示するべく委任者が自署しなければならない。また、委任は多くの場合に代理権の授与を伴うが、このときには、委任状はその証拠となる。

なお、委任事項、受任者名などを記載せず、その白地部分の補充を他者に任せた委任状(これを「白紙委任状」という)を発行することがある。この場合には、白地が補充されたときに委任状の効力が発生する。ただし、補充権のない者が補充する、補充者が権限を濫用するなどの恐れがあり、白紙委任状の発行については、その是非を含めて十分な注意が必要である。

居抜き

店舗や工場などを、その内部の商品、設備、什器備品などを設置したままの状態で売買・賃貸すること。

従って、居抜きで購入もしくは借りた場合は、以前のままの内装や設計設備等が付帯するので、比較的早期で営業にこぎつけることができる。

犬走り

築地塀の外壁と溝との間にある細長く平らな通路状の部分。

土手、石垣などに設けられた同様の狭い帯状部分をさす場合もある。

違反建築物

建築基準法都市計画法などに違反している建築物。建築後に増改築や用途変更を行なった結果、違法となる場合もある。
なお、法令の改正や都市計画の変更によって違法となった建築物は、「既存不適格建築物」であって違反建築物とはいわない。

特定行政庁は、違反建築物を発見した場合には、建物の取り壊し、改築、修繕、使用禁止などの是正命令を出し、違反事実を公示できる。また緊急の場合は、特定行政庁が任命した建築監視員が工事施工の停止を求めることができる。

違法貸ルーム

居住以外の用途に供していると称しながら多人数の居住実態がある建築物、マンションの一住戸や戸建て住宅を改修して多人数の居住の用に供している建築物等であって、居住用施設としての防火関係規定等を満たしていないものをいう。安価なシェアハウスなどに多いとされる。

おもな違法事項として、非常用照明装置関係、窓先空地関係、防火上主要な間仕切壁関係、居室面積関係、採光関係がある。

違約金

不動産売買契約では、当事者の一方が債務を履行しない場合には、債務の履行を確保するために、その債務を履行しない当事者が他方の当事者に対して、一定額の金銭を支払わなければならないと定めることがある。
このような金銭を「違約金」と呼んでいる。

「違約金」と「損害賠償額の予定」とは、債務を履行しない当事者が支払う金銭という意味ではよく似た概念である。
しかし「違約金」は、実際に損害が発生しない場合でも支払いの義務が生じるという点で、「損害賠償額の予定」とは大きく異なっている。

ただし実際の売買契約においては、「違約金」という言葉を「損害賠償額の予定」と同じ意味で使用していることも多い。
さらに民法(第420条)では、違約金という言葉の意味について、売買契約書でその意味を明示していない場合には、違約金は「損害賠償額の予定」の意味であるものと一応推定されると定めている。

このように「違約金」は、「損害賠償額の予定」と同じ意味であると解釈されるケースも実際には多いのである。
そのため売買契約書において本来の意味での「違約金」を定める場合には、その意味を明記しておくことが望ましいといえる。

なお、宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者売主となる宅地建物の売買契約においては、「損害賠償額の予定」と「違約金」との合計額は売買代金の2割を超えてはならないと定めている(宅地建物取引業法第38条)。

これは売買取引に精通していない一般の買主が不利にならないように特に保護している強行規定である。
宅地建物取引業者同士の売買取引については、この宅地建物取引業法第38条は適用されない。

違約手付

手付の一種で、債務不履行が発生した場合には、手付が没収される(または手付の倍額を償還する)という手付のこと。

例えば、売買契約において買主が違約手付1万円を交付したとき、買主に債務不履行(代金支払義務の不履行)が発生すれば、その1万円は没収される。反対に、売主に債務不履行(引渡し義務の不履行)が発生すれば、売主は買主に2万円を償還しなければならない。
このような違約手付は、損害賠償額の予定と解される。

わが国では、手付とは原則として解約手付とされているが、解約手付であると同時に違約手付であってもよいとされている。

入会権

一定の地域の住民が特定の森林、原野、漁場等を共同で利用する権利。民法で物権として認められている権利である。入会権の対象となっている土地を「入会地」という。

民法は、入会権を、利用する土地等を共有する性質がある場合と特定の目的に従って利用するだけの性質の場合に分類し、前者は所有権の共有の規定を、後者は地役権に規定をそれぞれ準用するとしたうえで、地域の慣習に従うとしている。もっとも、民法は入会権の内容についてなんら規定しておらず、その内容、効力等は地域の慣習によって定まることとなる。

入会権を有する人々の集団が「入会団体」で、その大部分は「代表者が定められていない権利能力なき社団」であると考えられている。そして、入会権による使用収益や入会地管理の形態は、慣習に応じて区々であって、明確でない場合もある。

なお、入会地の農林業上の利用を増進するため、「入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律」に基づき、入会権利者の合意によって入会権を消滅させ権利関係を明確にするしくみが定められている。

入母屋屋根

屋根形式の一つで、上部が切妻屋根(両側に勾配のある屋根)、下部が寄棟屋根(四方に勾配のある屋根)のかたちのもの。

遺留分

被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して留保されなければならない相続財産の割合をいう。

原則として相続財産は被相続人が自由に処分でき、推定相続人の相続への期待は権利として保障されないが、相続が相続人の生活保障の意義を有すること、被相続人名義の財産には相続人の潜在的持分が含まれていることが多く、これを顕在化させる必要があることなどから、相続財産の一定割合について相続人に権利を認めている。遺留分は、相続開始1年前に贈与された遺産などを合算して、直系尊属のみが相続人の場合は遺産の3分の1、それ以外の場合は全体で遺産の2分の1とされている。

囲炉裏

部屋の床を切り込んで灰を敷き、炊事や暖房に使う炉。一般に、板敷の部屋に設けられる。燃料は、薪や炭である。

囲炉裏には、通常、自在鉤(天井から吊るす先端が鉤状の道具)や五徳(金属製の台)が設置され、調理に利用される。

なお、囲炉裏は設置場所が固定されているが、同様の炉をポータブルにしたのが「火鉢」である。

陰圧室

気圧が周囲より低い部屋。室内の浮遊物等を外に流出させない空間である。病原微生物、改変遺伝子など、拡散を防止しなければならない物質を取り扱う空間として利用される。気圧の状態は、建築物の空間が備える機能のひとつで、陰圧室はその機能に対するニーズに応える設備である。

COVID-19等の病室も、原則として陰圧室である。CDC(米国疾病予防管理センター)のガイドラインでは、病室内空気圧の圧差は2.5Pa以上に維持することが推奨されている。

陰圧室は、独立の空調設備によって換気、温度、湿度等を管理する必要がある。特に、吸排気ダクトにフィルターや逆流防止装置を設置すること、一定頻度で換気することなどが重要である。また、確実に隔離するためには、出入り口に前室を設けなければならない。

なお、陰圧室に対して、気圧が周囲より高い部屋を「陽圧室」という。

インカムゲイン

資産の保有によって得る利益。英語のincome gain。不動産賃料、株式の配当、預金の利子などがこれに該当する。

不動産のインカムゲインは、賃料収入から保有・管理費用を減じた価額である。

インカムゲインに対して、資産価額の変動によって得る利益を「キャピタルゲイン」と言い、例えば、不動産の売却益がこれに該当する。

印鑑証明書

捺印された印影(印を紙などに押した跡のかたち)が、あらかじめ届けられた印影(印鑑)と同一であることを証明する官公署の書面。届出できる印鑑は一つに限られている。

公正証書の作成、不動産登記、重要な契約などの際に、文書作成者が本人であることを証明するため必要とされる場合が多い。

印鑑証明書の交付は、個人の印鑑については、通常、市区町村長が条例等に従って行なうが、商業登記に当たって提出した印鑑については登記所が担当する。 

印鑑届けをした印影を生む印が「実印」である。

印鑑証明(会社の~)

株式会社・有限会社等の法人が、売買等の契約を行なう場合には、契約書に代表者印を押印するのが通例である。

このような代表者印について、その代表者印が、登記所に対して印鑑届けを行なった正式なものであるということを、登記所が公的に証明した書面のことを「印鑑証明」と呼んでいる。

印鑑証明(個人の~)

個人があらかじめ市区町村役所において印鑑登録を行なった実印について、その実印が印鑑登録された正式なものであるということを、市区町村長が公的に証明した書面のことを「印鑑証明」と呼んでいる。

印紙税

契約書、受取書、証書、通帳などを作成する際に課税される税金。国税である。

印紙税は、印紙税法に定められている20種類の文書(課税文書)に対して課税される。例えば、不動産売買契約書、建築工事請負契約書、土地賃貸借契約書、代金領収書などは課税文書であるが、建物賃貸借契約書や不動産媒介契約書は課税文書ではない。

納付方法は、課税対象となる文書に収入印紙を貼り、その収入印紙に消印を押すことによって納税が完了する。この場合に、契約等において両当事者が文書を2通作成するときにはその2通についてそれぞれ印紙税を納付しなければならない。

印紙税を納めなかった場合には、印紙そのものを貼付しないときは納付すべき金額の3倍(自ら申告したときは1.1倍)、消印をしないときは消印をしない印紙と同額の「過怠税」が課税される。

印紙税額は、文書の種類および文書に記載された契約金額等に応じて定められている。


なお、不動産の譲渡に関する契約書および建設工事の請負に関する契約書については、税率の引き下げが措置されている。ただし、この特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

インスペクション

住宅インスペクション」を参照。

インスペクター

建物の状況を検査・調査すること(建物の住宅インスペクション)に関する専門的な知識・技能を有すると認められた者。英語のInspectorであるが、英語では建物の検査・調査を行なう者に限定せず広く“検査官”を意味している。

(日本における)インスペクターは通称であって公的な資格ではないが、一般に、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に基づく一定の講習等を履修して住宅インスペクションを実施できる者を指している。そのための講習等は、各種の団体が実施している。

また、2017年2月に「既存住宅状況調査技術者講習登録規程」が制定され、国土交通大臣が登録した機関によって「既存住宅状況調査技術者講習」を実施する仕組みが制度化された。この講習は住宅のインスペクションに関するものであり、これを修了した「既存住宅状況調査技術者」もインスペクターである。

なお、宅地建物取引業法に基づき、宅建業者は、
1)既存住宅の媒介契約に当たって交付する書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載しなければならず、
2)重要事項説明に当たって、建物状況調査に実施の有無及びその結果の概要を説明しなければならない
とされているが(2018年4月1日から適用)、この場合の建物状況調査に当たるインスペクターは、建築士または国土交通大臣が定める講習を修了した者でなければならない。

インターホン

交換機なしで相互に通話できる電話装置。英語でInterphone。

マンションにおいて共用玄関と各戸のあいだで通話するなど、建物の内外で通話するときに用いられることが多い。広義には、船舶、工場、事務所などで用いられる構内専用回線による通話設備もインターホンである。通話と同時に通話者の映像を送信することができる装置もある。

インターホンによる通話・映像伝達は電気通信事業に該当せず、インターホンは自由に設置・運用してかまわない。

インテリア

本来は、建物の内部空間の全体を指す言葉である。

住宅の場合でいえば、室内の天井・壁・床の内装材と、家具・調度品のすべてが「インテリア」である。
また一般的には、家具と調度品のみを「インテリア」と呼ぶことも多い。

インテリアコーディネーター

家具や住宅設備などのインテリアを選択し、住む人にとって快適な住空間を作るために適切な提案を行なう専門家。インテリア商品の知識を提供するだけでなく、顧客と相談しながら、空間のデザイン、性能、快適性などを考え、費用を考慮して住空間を具体化することが求められる。

その知識、技能を認定する試験として(公社)インテリア産業協会が実施するインテリアコーディネーター資格試験がある。

インテリアデザイナー

建物室内の様相を設計する技能者。その業務範囲は、壁の装飾、家具・照明器具・カーテン類の選定・配置、雰囲気の演出など幅広い。

インテリアデザイナーは、設計を依頼する顧客の要請に応えなければならず、建築空間や内装品についての知識や感性のほか、コミュニケーション能力も必要とされている。

インテリアデザイナーとして仕事するための資格は定められていないが、民間組織による能力の認定が実施されている。

インテリジェントビル

高付加価値のオフィスビルのことで、高度情報化建築物といわれることもある。

はっきりした定義があるわけではないが、空調、電気、セキュリティなどの設備を自動的に制御し、建物内に情報通信ネットワークを構築して、オフィスオートメーションやテレコミュニケーションに対応できることなどが特徴である。省エネ、省コストに資するともいわれる。

英語ではスマートビルと称することが多い(英語で、インテリジェントIntelligentは「賢い」、スマートSmartは「気の利いた」という意味である)。

インナーバルコニー

屋外に開かれた部屋状の空間。屋外とのあいだに壁がない一方、バルコニーと違って屋根を備えている。形状はベランダと似ているが、部屋として利用でき、原則としてその床面積容積率に算入される。

インパクトドライバー

回転力に打撃力を加えた電動ドライバー。英語のimpact driver。強い力で締め付けることができるが、使う際に技術を要する。

内装作業や建築現場でよく使われている。

インフラ長寿命化

インフラストラクチャー(社会資本)の維持管理や更新を戦略的に推進し、その機能を確保する政策が進められている。「インフラストラクチャー」の略語が「インフラ」である。

インフラは、治山治水等の国土保全基盤、道路・鉄道・港湾・空港等の社会経済活動基盤、上下水道・公園・学校等の生活基盤などで構成されているが、過去から蓄積されてきたそれらについて、その機能の劣化を防止し、社会経済状況の変化を含めた中長期的なニーズに応えることが求められている。そこで、政府が主導して、インフラの寿命を長期化するための施策が展開されている。
主な施策は次の通りである。

1)インフラを安全・強靱に維持・確保するために、センサー、ロボット、非破壊検査技術等による点検・補修の高度化、新材料の実用化などを推進する。
2)インフラを総合的・一体的に管理するために、メンテナンスサイクルの構築、予防保全型維持管理の導入、維持管理の容易な構造の選択などを推進する。
3)メンテナンス産業を育成するべく、新技術の開発・導入、市場の創出・拡大などを推進する。

インフラファンド

金融商品の一つで、インフラストラクチャー(社会基盤)を投資対象とする投資法人または投資信託をいう。2015年に取引所に上場することが認められた。英語でInfrastructure fund。

インフラファンドは、インフラストラクチャーを保有・運用して得た収益を投資家に配分するしくみであって、その基本的な構造はREITと同じである。違いは、REITは不動産を投資対象とするのに対して、インフラファンドはインフラストラクチャーを対象とすることである。

投資対象とされるインフラストラクチャーは限定されていないが、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に対する投資が目立っている。

インフラ(インフラストラクチャー)

生活や産業活動の基盤となっている施設。「インフラ」は「インフラストラクチャー」を略した言葉で、英語のinfrastructureである。直訳すると「下部構造」であるが、「社会的基盤施設」または「社会資本」と訳されることが多い。

インフラとされている施設は、公共的な機能を担う施設で、道路、治水施設、港湾、鉄道、公園、上下水道、通信施設、エネルギー供給施設などが含まれる。また、広義には、これら公共施設のほか、教育、医療、社会福祉などの社会サービスを提供するための施設を加えている場合もある。

その多くが公共財の性質を帯びていること、社会の統合や安定の維持に不可欠であること、長期的な視点で計画的に整備・管理する必要があることなどから、その整備・管理は、政府が直接に担い、あるいは政府による強い監督のもとで実施されている。また、それら施設が満たすべき機能や構造については、法律に基づいて基準が定められている。

インボイス方式

定められた形式の書類に基づいて消費税額を算定する制度。「適格請求書等保存方式」ともいう。

インボイス方式は、仕入れ税額控除に当たって、定められた形式の書類(インボイス)に記載された税額のみを認めることとなるため、消費税を適切に課税することができるとされている。

インボイス方式を実施するには、インボイスの発行事業者を登録するなどのしくみを整備する必要がある等のため、その適用は、2023年10月1日からの予定である。

ESG投資原則

投資に当たって、環境(environment)、社会(social)、企業統治(governance)に配慮している企業を重視・選別する原則。

投資先の評価において、財務指標のみでなく、環境、社会、企業統治を評価することが、結局は企業の持続的成長や中長期的収益につながり、財務指標には現れにくいリスクを排除できるという考え方に基づいた行動原則である。

ESG投資原則による投資においては、たとえば、地球温暖化対策や生物多様性の保護活動(環境面)、人権への対応や地域貢献活動(社会面)、法令遵守、社外取締役の独立性、情報開示(企業統治面)などの実績や計画が重視される。

ESG投資の手法には、議決権行使等によって投資先企業にESGへの配慮を促す方法、ESGへの配慮に消極的な企業には投資しない方法、ESGに配慮した事業に対して優先的に投資する方法などがある。この場合の投資先には、都市開発や不動産開発が含まれる。また、投資だけでなく融資についても同様である。

なお、国連は、2006年に公表した「責任投資原則(PRI)」において、ESGへの配慮を反映した投資行動を促している。

ETF

株価指数等の特定の指標と連動して運用される投資信託などの金融商品。Exchange Traded Fundsの略。上場されている。

指標と連動する方法は二つある。

ア)現物拠出型
指標算定の対象とされている現物の集合(たとえば
TOPIX連動であれば、東証第1部に上場されている全銘柄の株式、これを株式バスケットという)を組成し、その持分を受益権のかたちで証券化する方法。これによって、当該証券は指標と同様の値動きをすることになる。
イ)リンク債型
指標と価格が連動する債券(リンク債)に対して投資し、その受益権を金融商品化する方法。この場合、リンク債の発行者は、償還価格が指標の動きに連動することを保証している。

e内容証明(電子内容証明)

インターネットを通じて差し出す文書について、その内容を証明し配達するサービス。日本郵政が提供している。

e内容証明を受ける文書は、インターネットを利用していつでも差し出すことができ、自動的に内容証明文書が作成・照合され、封入封緘されて内容証明郵便として発送される。

EBITDA

Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略。利益指標の一つで、税引前の利益に支払利息と減価償却費を加算して算出する。

利益の水準は、一般的に、利息負担、税制、会計基準などに左右されるため、その国際的な比較に当たっては注意が必要だが、EBITDAはその違いを最小限に抑えて利益を把握できる指標とされている。

国際的な企業で子会社を管理するための指標として活用されている他、株価の評価に当たってEBITDAに対する企業価値(EV、負債プラス株式時価総額)の比率(EV/EBITDA)を比較したり、有利子負債の返済能力を見るための利益水準としてEBITDAを評価するなどの活用例がある。

イールドギャップ

投資の実質利回りと金利との差をいう。英語ではYield gap。投資判断の目安として使われる。例えば、イールドギャップが大きければ当該投資は割安であると考えられている。

イールドギャップを算出する場合の金利は、長期国債の金利や銀行からの借入金利が用いられる。

イールドスプレッド

金融商品間の利回りの差をいう。英語ではYield spread。金融商品の利回りを比較することは、市場を分析して、投資を適切に判断するための方法となり得る。

一般に、イールドスプレッドが大きい場合は利回りが小さいほうの商品が割高、小さい場合は割安であると考えられている。

ウィークリーマンション

短期間の居住のために賃貸されるマンションをいう。「短期賃貸マンション」ともいわれる。

家具、家電製品、食器・調理器などが備わっていて、一時的な滞在の便を満たすことができる。また、賃貸住宅に比べて賃貸借の手続きが簡単である。

ウィークリーマンションの営業は、旅館業法による宿泊営業または不動産賃貸営業(貸室業)のいずれかにあたるが、その基準は明確ではない。一応の目安として、賃貸期間が1ヵ月を超えていれば貸室業であるとされている。

ウィークリーマンションを宿泊営業に充てる場合には、旅館業法による許可が必要で、一定の設備の設置等が求められる。

Web内覧会

インターネットを使って自宅の室内の様子などを公開すること。Web内覧会専用のホームページもある。公開されるのは、間取り図、内装、設備、部屋の雰囲気などで、通常、居住者のコメントが付されている。

ウォークインクロゼット

ウォークインクローゼット

ウォークイン、つまり歩いて入れるクローゼット、衣類の押入のこと。衣装ダンス、衣裳戸棚を指すワードローブは家具のニュアンスが強いのに対して、ウォークインクローゼットは造り付け家具、ないし部屋の意味に使われることが多い。

WIC

ウォークスルークローゼット

通り抜けできるクローゼット(衣服の収納空間)。英語のwalk through closet。

部屋間の通路の壁面を利用して設置されることが多く、ウォークインクローゼットと違って扉がない場合が多い。

WTC

ウォーターハンマー

水管内の圧力が瞬間的に上昇または下降する現象。その際に、管に衝撃や振動が加わる。英語のwater hammer。

水流が急に停止することによって起き、強いウォーターハンマーによって管路や設備が破損する恐れもある。その防止には、サージタンクの設置、空気弁の設置、管口径の拡大などが有効である。

浮床工法

歩行音やピアノ等の演奏に伴う音の振動が、床を伝わって伝搬しないようにするための工法。主構造体に防振材を据え付け、音を遮断・絶縁する。

請負契約

当事者の一方がある仕事を完成することを、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことをそれぞれ約束する契約。例えば、住宅の建築工事、洋服の仕立て、物品の運搬などの契約がこれに該当する。

請負契約の目的は、仕事の完成であって労務の供給ではないから、仕事の目的物が定まっていて、通常は、目的物を引き渡すことで仕事が完成する。

請負契約については民法に一般的な規定がある。また、たとえば建設工事の契約に関しては建設業法、運送契約については商法等のような特別法の適用がある。

民法は、
1)請負契約による報酬は目的物の引渡しと同時に支払わなければならないこと
2)引き渡した目的物が契約不適合の場合には、注文者は、補修等の追完請求報酬減額請求損害賠償請求、契約解除をすることができること(ただし、与えた指図等によって生じた不適合を理由にすることはできない)
3)契約不適合による請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内にその事実を通知しなければならないこと
4)請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できること
などを定めている。

なお、民法には、請負人の担保責任の存続期間について特別の定めがあったが、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって削除された。ただし、住宅の新築工事の請負に関しては、特定の部位についての契約不適合責任の存続期間は10年とされている(住宅の品質確保の促進等に関する法律)。

請負人の瑕疵担保責任(品確法における~)

請負契約によって引き渡した目的物(例えば、建設工事請負によって完成した建物)が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に、請負人が負うこととなる責任。民法の規定による契約不適合責任のひとつで、これを「瑕疵担保責任」という。

請負人に契約不適合責任を負わせるためには、注文者は、追完請求(補修等の実施を求める請求)、報酬減額請求損害賠償請求または契約解除権の行使をしなければならない。

民法は、契約不適合責任を負わせるためには、注文者は、原則として契約不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならないとしている。ただし、請負人が不適合を知っていたときまたは重大な過失によって知らなかったときはその限りではないとされている。

また、請負人は、知りながら告げなかった事実等についての契約不適合責任については免れることができないが、それ以外の事由による契約不適合については責任を負わない旨の特約をすることが認められている。

しかしながら、住宅の品質を確保するため、新築住宅の工事請負契約については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、契約不適合責任(瑕疵担保責任)について次のような特例が定められている。

(1)新築住宅の「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」の契約不適合(瑕疵)について、請負人は、注文者に住宅を引き渡した時から10年間、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負う。
(2)契約によって、(1)の瑕疵担保期間を20年以内に延長することができる。

この特例は強行規定であり、特約によって責任を免れることはできない。

なお、民法には、請負人の瑕疵担保責任の存続期間等について特別の規定があったが、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって削除され、契約不適合責任に統合・整理された。

受付番号(不動産登記における~)

それぞれの登記所で登記申請を受け付けた順序に従って、その登記に付けていく番号のこと。

登記記録では、甲区乙区のそれぞれで、登記の時間的順序に従って、順位番号が付けられる。この順位番号では、区を越えた登記の前後が分からない。
そこで、区を越えて登記の先後を知るためには、通し番号である「受付番号」で判断することになる。

雨水浸透阻害行為

雨水の浸透を妨げる恐れがあるとして、その実施に当たって都道府県知事等の許可を必要とする行為をいう。「特定都市河川浸水被害対策法」に基づき制限される行為である。

許可を要するのは、次のすべてに該当する場合である。

(1)市街化の進展によって河道等の整備による浸水被害の防止が困難であるとして指定された都市河川(特定都市河川)の流域内における行為
(2)宅地等にするための土地の区画形質の変更、土地の舗装、排水施設を伴うゴルフ場等の設置、ローラー等による土地の締め固めなど一定の行為
(3)行為に係る面積が原則として1,000平方メートル以上
雨水浸透阻害行為について許可が必要であることは、宅地建物取引における重要事項説明の対象とされている。

なお、特定都市河川流域においては、雨水浸透阻害行為に伴って設置した雨水貯留浸透施設の機能を阻害する恐れのある行為について許可を要するほか、保全調節池の埋立て、敷地での建築物の新改築などについて届出が必要である。これらの制限についても、宅地建物取引の営業における重要事項説明の対象とされている。

雨水貯留浸透施設

雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を有する施設。

雨水貯留浸透施設は、民間事業者等が自主的に設置して浸水被害を防止できる。そこで、一定のものについては、認定を受けて、設置に対する助言や支援を得ることができる。

また、施設設置後の管理を容易にするべく、地方公共団体または公共下水道管理者が、雨水貯留浸透施設の所有者等と管理の方法、有効期間等を定めた管理協定を締結し、管理する仕組みが定められている(特定都市河川浸水被害対策法・下水道法)。この協定によって、地方公共団体等は施設を管理する排他的な権利を取得する。

 雨水貯留浸透施設の管理協定は、土地所有者等が変わる場合でも引き続き効力を有するため、宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、管理協定について重要事項として説明しなければならない。

雨水の浸入を防止する部分(品確法における~)

住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)で定められた雨水の侵入を防止するための住宅の部分のこと(品確法第87・88条、同法施行令第6条第2項)。

具体的には次の部分が「雨水の浸入を防止する部分」に該当する。

1.住宅の屋根と外壁 (具体的には屋根・外壁の仕上げ・下地などを指す)
2.住宅の屋根・外壁の開口部に設ける戸・枠その他の建具 (具体的にはサッシなどを指す)
3.雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、住宅の屋根もしくは外壁の内部または屋内にある部分

このような「雨水の侵入を防止する部分」については、住宅品質確保法により、新築住宅に関する10年間の瑕疵担保責任が義務付けられている。
(詳しくは「請負人の瑕疵担保責任(品確法における~)」、「売り主の瑕疵担保責任(品確法における~)」へ)

内金

内金とは、売買契約が成立した後に、売買代金の一部として買主から売主へ交付される金銭のこと。

手付が売買契約が成立する際に交付されるのに対して、内金は契約成立後に交付されるという違いがある。

また、手付は契約の義務が履行されれば代金に充当されるのに対して、内金は交付される時点ですでに代金の一部である。

内法

建物床面積を測定する際に壁の厚みを考慮せず、壁の内側の部分の面積だけを「床面積」とする考え方のことである。

不動産登記法では、分譲マンションなどの区分所有建物を登記する場合には、この内法の考え方で床面積を計算することとされている(不動産登記法施行令第8条)。

この反対に、建物の床面積を測定する際に、壁の厚みの中心線を想定し、この中心線に囲まれた面積を「床面積」とする考え方のことを「壁心(へきしん・かべしん)」という。

ちなみに建築基準法では、建築確認を申請する際には、建物の床面積はこの壁心の考え方で測定することとしている(建築基準法施行令2条1項3号)。

従って、分譲マンションなどの区分所有建物については、建築確認を申請する際には床面積を「壁心」で求めるが、その後に登記をする際には床面積を「内法」で求めているのである。

内窓

現存する窓の内側に新たに設置する二重窓の内側の窓も同義。

内窓の設置は、断熱性の向上、結露の防止、防音性の向上などの効果があるとされる。ただし、内窓は、上げ下げ窓、内倒し窓などには設置できない。

ウッドデッキ

庭の一部に設けられた木製の床で、居間等と連続した造りになっているものを「ウッドデッキ(木の甲板)」という。

埋立地

水面を土砂等で埋め立てて造成された陸地。

埋立地は、港湾、空港、工場用地、住宅用地、商業用地などに利用されている。また、公共の水面を埋め立てるためには、公有水面埋立法に基づき都道府県知事の免許が必要で、国土利用上適正かつ合理的であることなど一定の要件を満たさなければならない。

埋立地の造成に当たっては、通常、土砂の流失、地盤沈下地盤の液状化などを防止するため、地盤改良、護岸の構築、埋立材の選別などの対策が講じられる。また、埋立に伴う環境への影響調査が必要な場合も多い。

なお、干拓地は、水面を区切って排水すること(干拓)によって生まれる土地であって、埋立地ではない。ただし、干拓についても公有水面埋立法が適用される。

埋戻し

埋設物の設置工事において、掘削した土砂等をもとに戻すことをいう。

地震時に、埋め戻した土砂等が液状化して、埋設物に被害が生じることがあるため、埋戻し土を適切に選択すること、埋戻し部を締め固めまたは固化することなどが必要とされる。

下水道などの官路については、特に適切な施工が求められる。

売建住宅

開発した宅地を分譲する際に、同時に宅地の購入者がその宅地に建設する住宅を分譲事業者に発注する方法で建てられた住宅をいう。

建売住宅」の建築主は不動産会社であるのに対して、「売建住宅」の建築主は宅地の購入者である。建売住宅に比べて設計などの自由度は高いが、建築を請け負う業者はあらかじめ決められている他、用意された建物の設計モデルから選択して発注することが多い。

なお、宅地分譲の方法は、大きく、宅地のみの分譲(更地分譲)と住宅付の分譲(建売分譲)に分かれるが、売建住宅はその実態を照らせば後者の類型に近いと考えてよい。また、宅地分譲の際に一定期間内に住宅を建設することを条件とする方法(建築条件付宅地分譲)があるが、売建住宅はこの方法の一つでもある。

売主

不動産売買契約において、不動産を売る人(または法人)を「売主」という。

また不動産広告においては、取引態様の一つとして「売主」という用語が使用される。

この取引態様としての「売主」とは、取引される不動産の所有者(または不動産を転売する権限を有する者)のことである。

売り主の瑕疵担保責任(品確法における~)

売買契約によって引き渡した目的物(たとえば、販売した住宅)が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に、売り主が負うこととなる責任。民法の規定による契約不適合責任のひとつで、これを「瑕疵担保責任」という。

売り主に契約不適合責任を負わせるためには、買い主は、追完請求(補修等の実施を求める請求)、代金減額請求損害賠償請求または契約解除権の行使をしなければならない。

民法は、契約不適合責任を負わせるためには、買い主は、原則として契約不適合を知った時から一年以内に不適合である旨を通知しなければならないとしている。ただし、売り主が不適合を知っていたときまたは重大な過失によって知らなかったときはその限りではないとされている。

また、売り主は、知りながら告げなかった事実等についての契約不適合責任については免れることができないが、それ以外の事由による契約不適合については責任を負わない旨の特約をすることが認められている。

しかしながら、住宅の品質を確保するため、新築住宅の工事請負契約については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、契約不適合責任(瑕疵担保責任)について次のような特例が定められている。
(1)新築住宅の「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の浸入を防止する部分」の契約不適合(瑕疵)について、売り主は、注文者に住宅を引き渡した時から10年間、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負う。
(2)契約によって、(1)の瑕疵担保期間を20年以内に延長することができる。

この特例は強行規定であり、特約によって責任を免れることはできない。

なお、民法には、売り主の瑕疵担保責任について特別の規定があったが、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって削除され、契約不適合責任に統合・整理された。

売渡証書

不動産売買契約の内容を簡潔に要約した書面のことを「売渡証書」という。

この売渡証書は、売主または買主からの依頼により、登記手続きを担当する司法書士が不動産売買契約書をもとにして作成するのが一般的である。
売渡証書の記載内容は「売主の住所氏名」「買主の住所氏名」「売買される不動産の概要」である。
この売渡証書は「所有権移転登記の原因を証する書面」として、所有権移転登記を申請する際に、登記所に提出される。

売渡承諾書

不動産の売買において、当該物件を売り渡す意思があることを表明する書面で、売主が買い受け希望者に対して交付する。書面には、売り渡し価格や売渡条件等が記載されている。

売渡承諾書は契約締結が可能である旨を表明するものであって、契約に至る過程で交わされる確認等のための文書に過ぎず、それを交付しても契約の申し込みや承諾の効果はないとされている。

ただし、売渡承諾書の交付によって一定の信頼関係が形成されることとなるので、売渡承諾書を交付したにもかかわらず合理性に欠ける理由等で契約に至らなかった場合には、信義則に反するとされることがある。

上物

土地の上に建物が存在しているとき、この建物を「上物」と呼ぶ。

土地に上物がある場合には、土地の状態を示すとき「上物あり」などと表示することが望ましい。

また、不動産広告においては、取引する土地の上に古家、廃屋等の老朽化した上物が存在する場合には、その旨を明示しなければならないとされている(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)。

エアコン

室内の空気温度・湿度を調整する設備。英語のAir conditionerを略した和製語。

エアコンは、冷媒ガスを循環させ、圧縮することによる放熱と減圧することによる吸熱を交互に繰り返すによって、冷媒ガスと接触する空気を暖め・冷やすしくみである。この暖め・冷やす装置が熱交換器であるが、一方を室内に他方を室外に置く(室内機・室外機)ことによって、室内を冷暖房する。エアコンが働くのは冷媒ガスが熱を運搬しているからであって、空気は室内外を出入りしてはいない。

家庭用エアコンの方式には、室内機と室外機を分離してダクトで繋ぐセパレート型と、両者を一体化して窓の内外に置く窓付け型(窓付けエアコン)とがあるが、広く普及しているのはセパレート型エアコンである。

なお、かつて冷媒ガスとしてフロンガスが使われていたが、オゾン層を破壊することが判明してその使用は禁止されている。また、その代替品(代替フロン)も温室効果ガスのひとつであることから、ノンフロン物質の使用が始まっている。

営業保証金

宅地建物取引業者が営業を開始するにあたって、供託所に供託しなければならない金銭。この保証金は、宅地建物取引業者との取引によって生じた債権の履行を担保する機能を果たす。

営業保証金の額は、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円である。

なお、宅地建物取引業保証協会の社員は営業保証金を供託する必要はなく、代わりに同協会に対して弁済業務保証金分担金を納付しなければならないとされている。分担金の額は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円である。

営業利益

企業会計上の概念で、企業の一般的な営業活動から生まれた利益をいう。

当期の損益計算書をもとに、営業収益(売上高)から売上原価を引き(その値が売上総利益)、さらに販売費および一般管理費を差し引いて算出される。
営業利益=営業収益-売上原価-販売費・一般管理費
この値は、企業の営業活動の成果を示すこととなる。

営業利益の営業収益(売上高)に対する割合が「営業利益率」であり、営業活動を分析するときの基礎データとされる。なお、営業利益がマイナスの場合は営業損失という。

永小作権

小作料を支払うことにより、他人の土地で耕作または牧畜をすることができるという権利(民法270条)。

1952(昭和27)年以前には、地主が小作人に小作地として土地を使用させる方式がとられていたため、小作人は永小作権者として土地を使用していたが、1952(昭和27)年の農地法制定により、そうした前近代的な地主・小作関係はほとんど姿を消した。このため今日では永小作権は殆ど残存していない(なお今日では農地の貸与は賃借権によって行なわれている)。

HRC

Hard Reinforced Concrete=高強度コンクリートのこと。

設計基準強度が大きいため、超高層RCSRC建築物が可能である。また、高強度化により柱、部材の断面を低減しスパンを長く取ることができるため、コストダウンや空間自由度が増大する一方、工期を短縮できるメリットがある。

HPC

鉄骨とコンクリートパネルとを組み合わせる建築構造。英語のHard Precast Concreteの略語。

現場で組み立てた重量鉄骨(H形鋼)に、あらかじめ製造されたコンクリートパネル(PC部材)を接合する工法で構築する。現場でのコンクリート打設工事が不要となるなどの特徴があり、中高層マンションに使われる場合が多い。

液状化(地盤の~)

地震の際に地盤が液体状態となる現象をいう。

水分をたくさん含んだ砂質の地盤で発生する。

地震による強い振動によって砂粒の間にある水分の圧力(間隙水圧)が高まり、砂粒の動きが自由になるために生じる。その結果、地上構造物の沈下や倒壊、地中構造物の浮き上がり、地盤の水平方向への移動(側方流動)、水と砂の吹き上げ(噴砂)などが起きる。
新潟地震(1964)でその発生が確認され、その後、阪神・淡路大震災(1995)や新潟県中越地震(2004)でも発生した。また、東日本大震災(2011)では、千葉県浦安市をはじめ広範囲に発生し、大きな被害をもたらした。

なお、液状化あるいはそれによる被害を防ぐための工法が開発されている。

役務提供型契約

私法上の概念で、役務(労働サービス)の提供に関する契約をいい、売買、賃貸借と並ぶ主要な契約類型のひとつである。民法で規定されている雇用、請負、委任、寄託のほか、商法上の仲立、問屋、運送などのための契約がこれに該当する。また、不動産取引の仲介(媒介)契約も役務提供型契約である。

役務提供型契約は、提供する役務・サービスの性質に応じて、有償・無償の別、成果物引渡の要否、報酬請求のあり方などについてさまざまなかたちがあり、発生する権利義務関係も多様である。そのため、民法で規定されている契約(典型契約)の既定によっては十分に対応できないのではないか、当事者間の交渉力等の違いによって利益を害することのないように配慮する必要があるのではないかなどの視点から、役務提供型契約の共通ルールを定めること等の必要性について議論がある。

エクイティ(Equity)

株主資本のこと。その資金は、新株や新株予約権付社債の発行などにより調達される。投資家にとっては、返済期限が定められていない資金の供与であり、その資金が利益の拡大に貢献する投資に充当されるよう監視が必要となる。

エクイティに対してデット(Debt)という用語があるが、デットは、返済期間や金利が定められ、社債発行や銀行借入などにより調達される他人資本である。

不動産の証券化に当たっては、不動産の価値を担保に資金を調達するが、その際にエクイティとデットをどのように組み合わせるかが重要となる。一般に、エクイティファイナンスのほうがハイリスク・ハイリターンであるといわれている。

エクステリア

本来は、建物の外観や建物の外壁を指す言葉であるが、わが国の不動産業界・建築業界では、建物の外周りに設置される工作物等を総称して「エクステリア」と呼んでいる。

具体的には、住宅の場合でいえば、門扉、塀、生垣、庭、カーポートなどのことである。

エクステリアプランナー

建物の外構(塀、外庭など)の設計や工事監理を行なう専門家。

外構の設計に当たっては、緑化や景観保全などについての知識・技能も必要であると考えられている。

なお、エクステリアプランナーとしての能力を認定する任意資格がある。

エクスパンションジョイント

構造体を分割して変位に対応する工法における継ぎ目。Expansion joint。分割された構造体は相互に力を伝えない。

対応が必要なのは、温度変化による収縮・膨張の変位、地震時の震動変位などが大きい場合や、変位性状が異なる構造体を一体化する場合である。

対応の方法は、構造体のあいだに隙間(クリアランス)を確保し、継ぎ目に変位に追従する部材を設置する。部材の材質は、アルミニウムやステンレスである。

エコウィル(ECOWILL)

ガスを用いて熱と電力とを同時に供給する家庭用装置のひとつ。小型のガスエンジンによって発電し、その際に発生する熱を給湯や暖房に利用する方法の愛称である。

熱と電力とを同時に供給することを「コジェネレーション」という。エコウィルは、ガスを燃焼して動力を得る装置(ガスエンジン)を用いたコジェネレーション手法の愛称である。一方、同様にガスを動力源とするが、燃料電池を用いるコジェネレーション手法の愛称は「エネファーム」という。

エコウィルはエネファームよりも安価な手法であるが、給湯をメインにした装置であるため貯蔵する湯量を超える発電はできない。

エコキュート

ヒートポンプ(熱媒体の圧縮・膨張サイクルによって低温の熱を高温に移す技術)を利用して、大気の熱で湯を沸かして給湯する機器。エコキュートという名前は「エコ」と「給湯」をつないだ統一商品名である。

熱媒体を圧縮するための動力源として電力を使うが、発熱のためのエネルギーとしては電力を利用しないため、水を直接に熱して給湯する場合と比べてランニングコストが小さく、環境負荷も少ないとされている。

エコスタイル

環境負荷が小さい生活様式。和製英語。

例えば、適正冷房の徹底、夏季の軽装勤務、3R(Reduce、発生抑制)、(Reus、繰り返し利用、(Recycle、再利用)によるごみ減量化などを取り入れた生活は、エコスタイルである。

エコハウス

環境への負荷を抑えるための対策を講じた住宅のこと。
対策の目標は、省エネルギーや再生可能エネルギーの使用、資源の再利用、廃棄物の削減などであり、具体的には、屋上緑化や雨水の再利用、太陽光・風力エネルギーの利用、ゴミの減量などが実施される。

その基準として、例えば(一財)建築環境・省エネルギー機構が定めた「環境共生住宅認定基準」があるが、この基準では、環境負荷の抑制だけでなく、バリアフリー化や室内の空気質の維持(シックハウス対策)なども要求されている。

エコマーク

環境保全に資する商品を認定し、表示する仕組み。環境ラベルの一つで、(公財)日本環境協会が1989年から実施している。

エコマークは、商品の類型ごとに定められた認定基準を満たすことで付与される。認定基準は、資源採取、製造、流通、使用消費、リサイクル、廃棄商品のライフステージごとに、4つの視点—省資源と資源循環、地球温暖化の防止、有害物質の制限とコントロール、生物多様性—を中心に評価し、消費者に奨励することが環境保全のために適切となるべく制定され、公表されている。

認定の対象となる商品は、日用品・家庭用品、文具・事務用品、家電製品、家具・インテリア商品など幅広く、建築資材・設備も含まれる。

エコロジカル

自然環境と調和している様子。英語でecological。

エコロジカルという言葉は、環境保全に対する関心や、自然環境との調和や環境負荷の低減を求める必要などが高まるなかで、その要請に応えるような行動を意味する言葉として使われている。その起源は、自然における生物の相互関係を解明する科学である生態学(ecology)の形容詞である。

エコロジカル・フットプリント

人間活動による環境負荷の程度を示す指標。英語のecological footprint。人間活動と地球環境との関係を考える場合によく使われる指標である。

人間が活動すると環境にさまざまな負荷が生じるが、その負荷を支えるのは資源の再生産(農産物の生産等)や廃棄物の浄化(森林による二酸化炭素の吸収等)である。エコロジカル・フットプリントは、その再生産や浄化のために必要な一人当たりの地球面積で示される。

1970年代に実際の一人当たり地球面積(環境容量)を超え、例えば2019年には、環境容量の約1.7倍に達している。また、生活水準が豊かであるほどエコロジカル・フットプリントも大きいという関係が明らかになっている。

SI

スケルトン・インフィルのこと。

スケルトンとは骨組ともいえる躯体や共用設備、インフィルは、住戸専有部分の内装・間仕切りや設備。これらを分離させることで、耐久性と可変性が得られる。

また、集合住宅において、インフィル部分を入居者の要望により間取りや使用を自由に構成する方式をスケルトン方式という。

集合住宅において、入居者の要望により各住戸の間取りや仕様を構成する方式の住宅。集合住宅においても、生活様式の多様化に対応した注文住宅を実現できるように考えられた手法。スケルトン(骨組ともいえる躯体や共用設備)とインフィル(住戸専有部分の内装・間仕切りや設備)が分離することにより、耐久性と可変性が得られる。

SIC

SRC

「Steel Reinforced Concrete」の頭文字を取ったもの。
鉄骨鉄筋コンクリート構造」という意味である。

鉄筋コンクリートに、鉄骨を内蔵させた建築構造
比較的小さい断面で、強い骨組を作ることができ、粘り強さもあるため、高層建築に多用されている。

エスクロウ

エスクロー(Escrow)

取引の際に、売り手と買い手の間に信頼を置ける中立な第三者を仲介させること、またはそのサービスをいう。

不動産取引の安全を確保するためにアメリカで発達した仕組みであり、最近は電子商取引の決済においても活用されている。

不動産取引の場合には、エスクローサービスを提供する第三者は、売り手からは権利証書等を、買い手からは代金を寄託され、物件の確認、決済、登記、引渡しなどの業務に当たる。もっとも、日本ではあまり広まっていない。取引当事者間に信頼感があること、宅地建物取引業者が包括的なサービスを提供していることなどの事情によるものと考えられる。

ESCO事業(Energy Service Company)

省エネルギーに関する提案やそのために設備等の維持・管理などを包括的に行なう事業をいう。

サービスの提供によって軽減したコスト(光熱費、水道料金など)の一定割合を報酬とすることに特徴がある。つまり、コスト削減が実現しないときには、顧客の負担は生じない。

ESCO事業によるサービスは、ビルの省エネルギー改修事業などにおいても活用されている。

S造

Sは「Steel」のことであり、「鉄骨構造」という意味である。
鉄骨造とも。

柱とを「鉄骨」で作り、壁・床に「木質系パネル」「軽量気泡コンクリートパネル」「窯業系パネル」など使用した構造のこと。

主要な構造を形成する鉄骨の種類により「軽量鉄骨構造」と「重量鉄骨構造」に分けることができる。

SDGs

国連が定めた世界が共通に達成すべき目標。SDGsは、英語のSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略語である。2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、2015年9月に国連で開かれたサミットで採択された。

持続可能な開発とは、「将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、現世代のニーズを充足する開発」である。そのための目標群がSDGsで、「貧困に終止符を打つため、経済成長を促し、教育、健康、社会的保護、雇用機会を含む幅広い社会的ニーズを充足しながら、気候変動と環境保護に取り組む」ための17の目標(ゴール)で構成されている。目標は、人間・豊かさ・地球・平和・パートナーシップという広い分野にわたって設定されていて、その達成のためには、経済成長、社会的包摂、環境保護を調和させる必要があるとしている。

また、SDGs の17の目標については、その達成を具体的に評価する全部で169のターゲット(具体目標)が定められている。たとえば最初に掲げられた目標「すべての場所におけるあらゆるかたちの貧困を終わりにする」(目標1)については、「2030年までに、すべての場所において、1日1.25ドル未満で生活する極貧の人々をなくする」(ターゲット1.1)など7つのターゲットがある。

エスニック(〜なデザイン)

民族固有のデザイン様式。英語のethnicは民族的という意味の形容詞で、エスニック・アート、エスニック・ミュージック、エスニック・フード、エスニック・コスチュームなどのように使われる言葉であるが、民族が受け継いできたデザインの様式を指す用語としても使われている。

エスニックとされるデザインは、東南アジア、インド、北欧、南欧、中米、アフリカなど世界各地の民族が担ってきた伝統的な様式であり、担う民族も多彩である。また、「アジア風」「北欧調」のように称されるデザイン様式の多くは、エスニックなデザイン又はその模倣である。

インテリアにおいてもエスニックなデザインが活用されている。たとえば、エスニック柄の織物等を配置する、家具をエスニック調のものにする、壁や床をエスニックな雰囲気にデザインするなどである。

SPE

Special Purpose Entityの略で、資産(不動産)を証券化するための事業体を総称していう。

「特別目的事業体」と訳される。資産(不動産)を保有、運用し、収益を得て、それを投資家に配分する役割を果たす。投資収益を投資家に運搬するというイメージから「ビークル(SPV(Special Purpose Vehicle)」といわれることもある。

特定目的会社(SPC)、投資法人のような特別の法律にもとづく事業体のほか、株式会社、合同会社、任意組合、匿名組合など、その形態はさまざまである。信託もその一つと考えてよい。

SPEがその役割を果たすためには、

1.得た利益をそのまま投資家に配分できること(導管体としての機能)、2.関係者の倒産等の影響が保有・運用する資産(不動産)に及ばないこと(倒産隔離の機能)、3.資産(不動産)の保有・運用におけるリスクとリターンが透明であること

の3つの要件を満たす必要があるとされる。

SPC

Special Purpose Company(スペシャル パーパス カンパニー)の略。特定の資産を担保にした証券の発行など、限定された目的のために設立された法人をいい、一般に「特別目的会社」と訳されている。また、狭義には、「資産の流動化に関する法律(資産流動化法又はSPC法)」によって設立される「特定目的会社」(TMKと略称されることがある)をさす場合もある。

不動産の証券化においては、SPCは、流動化の対象となる不動産を保有・管理し、それを裏付けに資金を調達することのみを目的に設立される。この場合、SPCの中心的な機能は、証券化に際して、二重課税の回避、倒産隔離等を可能とする特別の器としての働きであり、会社と称するが実体のないペーパーカンパニーである。通常、SPCが保有する資産の管理処分、投資家からの資金調達などの実際の業務は、一定の条件を満たす実務会社に委託される。

なお、SPCは、不動産の証券化など資産を流動化するための法人のほか、PFI事業など責任を限定した特定の事業を行なうための会社も含む広い意味で使われる場合もある。

SPCの形態は、資産流動化法に基づき設立される社団のほか、会社法に基づく合同会社の場合が多い。

SPC法

資産の流動化に関する法律」の略称。

特定目的会社または特定目的信託を用いて資産を流動化するための仕組みを定めた法律(平成10(1998)年6月公布)。

特定目的会社(SPC)や特定目的信託が、不動産などの資産を保有・運用し、その収益を裏付けとして証券や信託受益権を発行する(これにより資産が流動化される)場合の手続きやルールを決めている。

当初、流動化の対象となる資産が限定されていたが、平成13(2001)年4月の改正で、すべての財産権を対象とした流動化が可能となった。資産の有効的な活用や、多様な金融商品の開発に当たって重要な役割を果たす法律である。

SVOC

比較的高温で揮発する有機化合物。SVOCは、Semi Volatile Organic Compoundsの略語で、「準揮発性有機化合物」または「半揮発性有機化合物」とも言う。SVOCの沸点は240-260〜380-400℃で、VOC揮発性有機化合物、沸点は50-100〜240-260℃)に比べて沸点が高い。

殺虫剤、可塑剤、難燃剤などとして使われるが、その中には、VOCと同じように、環境中に放出されると健康に悪影響を与えるものがある。例えば、クロルピリホスを添加した建築材料は、シックハウス対策として、居室を有する建築物への使用が禁止されている。また、DDTやPCBは製造・使用が禁止され、フタル酸エステルの一部は使用が制限されている。

なお、揮発性有機化合物は、沸点が低い順に、高揮発性有機化合物(VVOC)、揮発性有機化合物(VOC)、準揮発性有機化合物(SVOC)、粒子状有機化合物(POM)に分類されている。

越境(通学における~)

「越境」は、一般に、境界を越えて他の境域に入ることをいうが、ここでは通学における越境について説明する。

通学における越境とは、定められた学区とは異なる学区の学校に通学することをいう。

すべての公立小中学校や一部の公立高等学校については、住所に応じて通学すべき学校が定められ(学区の指定)、学区外の学校への入学は認めないとされている。しかしながら、一定の事情がある場合には、異なる学区の学校に入学することができるとされていて、それに基づき学区を超えて通学することが「越境通学」である。

また、特定の学校に入学するために、形式上その学区内に住所を移転し、実際は異なる学区から通学することも「越境通学」とされる。

NAV

投資信託の純資産総額。英語のNet Asset Valueの略称。不動産投資ファンドのNAVは、不動産の含み損益を加減して算定されることがある。

REITにおいては、NAVを投資口数で除した価額が一口当たりの純資産額価であり、投資判断の目安となる。

NOI

Net Operating Incomeの略。純収益という意味で、収入(賃料)から、実際に発生した経費(管理費、固定資産税など)のみを控除して求める。減価償却費のような支出を伴わない費用、支払利息のような金融費用、修繕費などの資本的な支出は収入から控除しないため、事業によって生み出される単純なキャッシュフローとなる。

例えば、不動産賃貸により得ることのできる純粋な収益額がこれに相当し、資産価値を評価する場合の指標となる。

なお、NOIから資本的な支出を控除したものがNCF(Net Cash Flow)である。

NCF

不動産経営において用いられる概念で、不動産から得る単純なキャッシュフロー収益から資本的な支出を控除した金額をいう。Net Cash Flowの略語。

不動産経営によって生み出されるキャッシュフロー収益は、家賃収入と管理コスト(減価償却費等のキャッシュフローに影響しない費用、および支払い利息等の金融費用は算入しない)との差額となる。この場合に、管理コストの算定に当たって、修繕費等の資本的支出を考慮し算入するのがNCFである。不動産鑑定評価に当たって収益還元法を用いるときには、このNCFをベースにすることが多い。

一方、資本的支出を考慮せず単純なキャッシュフローベースで収益を算定するのがNOI(Net Operating Income)である。

NGO

「Non Governmental Organization」の頭文字を取ったもの。
民間非政府組織」という意味である。

民間非政府組織とは、国連に協力する政府以外の非営利の民間団体を指す言葉である(国連憲章第71条)。

一般的には、環境問題や平和問題などに取り組んでいる大規模な非営利の民間団体のことを、「民間非政府組織(NGO)」と呼んでいる。

NPO法人

「Non Profit Organization」(民間非営利組織)のことで、福祉・医療・教育など不特定で多数のものの利益に寄与することを目的に活動する民間の非営利的な団体をいう。

民間非営利組織は、社団法人、財団法人など特別の法律によって設立されたもの以外は「権利能力なき社団」として法人格を有することができなかったが、1998年に「特定非営利活動促進法」が施行され、設立の認証によって法人格が認められることとなった。この認証を受けたNPOを、「特定非営利活動法人」という。

エネファーム

都市ガスLPガスから取り出した水素を空気中の酸素と反応させて発電し、そのときに発生する排熱で湯を沸かす設備。発電と給湯とを同時に行う仕組みで、「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」とも言う。エネファームという名前は「エネルギー」と「ファーム(農場)」を合成した統一商品名である。

送電ロスが生じないことや排熱を利用することからエネルギー効率が高い。一方、設置費用は高額である。また、ガスを原料としているため、自然エネルギーによる発電と違い環境負荷が皆無とは言えない。

エネルギー消費性能の表示

建築物の所有者が、その所有する建築物について、省エネ基準に適合する旨の認定を受け、エネルギー消費性能を表示することをいう。建築物省エネ法に基づく制度で、2016年4月1日から施行。

省エネ性能の表示は、当該建物の設計、一次エネルギー消費量の基準、一次エネルギー消費量からの削減率、両者の関係図、省エネ基準への適合などを記載することによって行なう。BELSはその評価のしくみのひとつである。

FIT制度(固定価格買取制度)

電気事業者に対して、再生可能エネルギー電気を固定された価格(固定買取価格)で、一定期間、全量を買い取ることを義務付ける制度をいう。FITは、Feed-in Tariffの略語である。

買い取りの対象となる再生可能エネルギー電気は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスを利用して発電された電気(住宅用太陽光発電の余剰電力を含む)である。買い取り価格および買取期間は、エネルギー源ごとに、コスト低減を促す観点を含めて、入札または調達価格等算定委員会の審議によって定めることとされている。

買い取りの義務を負うのは一般送配電事業者であり、買い取った電力は、卸電力取引所を経由して小売電気事業者等に供給される。このとき、買取費用は再生可能エネルギー発電促進賦課金として電気料金に上乗せされるが、賦課金額は全国一律で、電⼒多消費事業者に対する減免措置などの負担調整が行なわれている。

この制度は、一定の価格で発電した電気の全量が確実に買い取られるため、再生可能エネルギー事業の推進を促すことになる一方、コスト低減を図るための措置が必要である。

日本では、2009年に太陽光について先行的に導入されたのち、2012年にすべての再生可能エネルギーを対象とする制度へと拡大され、2017年度には、入札制度の導入や中長期的な買取り価格の設定など、事業の効率化などに向けた競争を促すしくみが整備された。

FRP

プラスチックを繊維によって強化した複合材料。英語のFiber-reinforced plasticsの略語。「強化プラスチック」ともいう。

軽量で加工し易いプラスチックの性質と強度・弾性度が高い繊維の性質を組み合わせた材料である。安価・軽量で耐久性があり、成型等の加工が比較的容易なため、建築材、設備材料などとして使われている。

強化材として使われる繊維は、ガラス繊維、炭素繊維などである。その製造方法は、裁断した繊維をプラスチックに混合する方法と繊維をプラスチックに浸潤する方法とがある。

経年劣化で小さな割れが生じやすく補修が困難であること、リサイクル・廃棄処分が難しいこと、強い衝撃に弱いことなどの難点があるとされている。

FFO

 Funds From Operationsの略。REITを評価するための指標の一つで、純収益に減価償却費と不動産の売買損益を加えて算出する。投資先不動産の運用によって生み出されるキャッシュフローのうち、投資家に配分することが可能な金額に相当する。

株式投資に当たってPERで投資先を評価するように、REITに対する投資評価の際には、FFOをその取引価格で除した価を用いることが一般的である。

FC

MLS(Multiple Listing Service)

不動産の売り情報をリスト化・共有化して取引を支援する仕組み。不動産仲介業者に対するサービスとしてアメリカで発達した。

掲載される売り情報は当該物件の価値を評価できるものであること、リストは資格ある業者に対して広く公開されていること、取引は売り・買いの依頼を受けた業者が共同で仲介することなどが特徴とされる。

原型は業者仲間の情報共有であって古くから行なわれてきたが、情報通信技術の発達に伴って高度なサービスが提供されるようになっている。

MLSは、日本の「指定流通機構」構築に当たって参考とされた。「マルティプル・リスティング」を参照。

MBS

Mortgage Backed Securityの略。不動産を担保とした融資に係る債権を裏付けとして発行された証券で、一般にモーゲージと呼ばれる。

住宅ローン債権を裏付けとする証券がRMBS(Residential Mortgage Backed Securities)、商業用不動産担保ローンを裏付けとする証券がCMBS(Commercial Mortgage Backed Securities)である。

エリアマネジメント

地域における良好な環境や固有の価値を維持・形成・向上するための取り組みで、地域住民などが主体的に行なうものをいう。和製英語である。

エリアマネジメントは制度化された仕組みではなく、事実として行なわれている活動形態である。その内容は、まち並みの規制・誘導、地域美化、防犯性の維持・向上、空き家・空地等の活用促進、生活ルールづくり、生活支援サービスの提供、地域産業の活性化、地域イベントの実施など、多種多様である。また、その実施に当たっては、地域の住民、事業主、地権者、NPOなどがさまざまなかたちで参加し、それらの協力関係のもとで進められることが多い。

LED照明

発光ダイオード(LED)を光源とする照明器具。LEDはLight Emitting Diodeの略語で、電圧を加えると発光する半導体素子である。

LEDが発光するのは、P型半導体(正孔が多い)とN型半導体(電子が多い)を接合した素子に順方向に電圧をかけると、正孔と電子とが再結合してエネルギーが発生し、光となるからである。LED照明はその現象を利用した器具である。この場合に放出される光は、半導体を構成する化合物によって波長が異なっていて白色ではない。そのため、照明に用いるためには白色にする必要があるが、その方法には、大きく分けて、青色LEDの光を蛍光体に通して白色に変換する方法と、異なるLEDが発光する青・赤・緑の光を混光して白色にする方法とがある。現在は前者の方法が普及している。

LEDは、発光方法の特質から、白熱電球に比べてエネルギー効率が高く耐久性に優れるとされるが、高価である。

なお、白熱電球はフィラメントに通電することによって生じる熱輻射発光を、蛍光管は放電で生じる紫外線が蛍光体に当たって可視光線に変わる現象を、それぞれ利用した照明器具である。

LCCM住宅

住宅の建設から解体までの間(ライフサイクル)における二酸化炭素排出量がマイナスとなる住宅をいう。Life Cycle Carbon Minus住宅の略。

そのための手法として、
1.断熱性を高め、開口部などの可変性を確保する
2.高効率の設備機器の採用などでエネルギー利用を効率化する
3.太陽光発電などによって住宅自身がエネルギーを生産する
4.建設段階におけるCO2排出量を削減する
ことが有効だとされる。

また、その実現のためには、要素技術だけでなく、ライフサイクルCO2排出量の評価手法、省エネルギーのための環境設備設計手法の開発が必要であると考えられている。

LGS

軽量鉄骨」を参照。

L値

音をどの程度遮るか(遮音性能)を表わす単位をいう。

衝撃の伝わり方の程度によって測定し、ほとんど気にならない程度の音の伝わり方をL-50として、数値が小さいほど遮音性能が優れるように定められている。

LTV

不動産購入価格に占める借入金の割合。不動産投資ファンドにおける総資産に占める負債の割合でもある。英語のLoan To Value Ratioの略称。

LTVが高いほど投資リスクが大きいとされている。

LDK

「リビング・ダイニング・キッチン」のこと。
リビングは「居室」、ダイニングは「食事室」、キッチンは「台所」であり、リビング・ダイニング・キッチンは「居室兼食事室兼台所」という意味である。

不動産広告を規制している「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」では、広告中に「LDK」と表示する場合には、「居室兼食事室兼台所」として使用できるだけの広さと機能を備えていることが必要であるとしている(不動産の表示に関する公正競争規約第15条第25号)。

この場合に、最低必要なLDKの広さの目安は、居室(寝室)数が1部屋のときには8畳、2部屋以上のときには10畳以上とされている。

LPガス

可燃性炭化水素を圧縮し液化した燃料で、Liquefied Petroleum Gasの略語。日本では「液化石油ガス」と訳され、「プロパンガス」も同じ意味で使われている。

主成分は、石油から精製されるプロパン(構造式 CH3-CH2-CH3)またはブタン(構造式 CH3-CH2-CH2-CH3)で、常圧常温で容易に気化し、燃焼時の発熱量が大きい。本来無色無臭であるが、微量の硫黄系化合物で着臭されていて、液体のままボンベに充填して運搬・供給される。

なお、LPガスに似た燃料用ガスとして「都市ガス」があるが、都市ガスの主成分はメタン(分子式CH4)で、ガス管によって気体のまま供給される。

LVL

薄い木板を同一の繊維方向に揃えて層状に重ね、接着した木質部材。英語のlaminated veneer lumberの略語。和語の「単板積層材」も同じ意味である。

LVLは、重なった板の繊維方向が同じであるため、その方向の強度が大きく、長尺の棒状部材として利用でき、また、品質の安定性が高いとされる。その特徴から、建物の軸材・骨組材として利用されることが多い。

なお、LVLに対し、木板の繊維方向を直角に重ね、パネル状にした部材がCLTである。

エレベーター

荷物や人をかご(籠)に載せ、その箱を主に垂直方向に移動して運搬する装置。移動空間(シャフト)、かご、ワイヤーロープ、釣り合い錘り、駆動装置、調速機などで構成される。

建築物にエレベーターを設置する場合には、建築基準法に基づいて確認・完了検査が必要とされている。また一般に、高さ31m(おおむね6~7階に相当する)以上の建築物については、エレベーターを設置しなければならない。

なお、建築基準法では、「エレベーター」「エスカレーター」「小荷物専用昇降機」を「昇降機」としている。

縁側

建物主要部の外側に張り出した板敷きの空間。「縁」は「へり・ふち」という意味である。

縁側は、和風建築において用いられ、建物の縁をかたちづくる空間デザインの一つである。
縁側のつくり方には、床板が空間の短手方向に張られ、一般に雨ざらしとなっている「ぬれ縁」と、床板を空間の長手方向に張って、外部と雨戸などで仕切った「くれ縁」とがある。

延焼

火災が他の建物に燃え広がること。炎の接触や放射熱による延焼と、飛び火による延焼とがある。「類焼」も同義。

延焼を防止するため、都市計画で「防火地域」または「準防火地域」を指定し、指定地域内の建物について、防火設備を設置すること、耐火構造または準耐火構造とすることなどが定められている。この場合に、防火設備の設置や耐火構造化が義務付けられるのは「延焼のおそれのある部分」についてであるが、この「延焼のおそれのある部分」とは、原則として、隣地境界線等からの距離が、1階にあっては3m以下、2階以上にあっては5m以下の距離にある建物部分である。

延焼防止性能

火事の際に延焼しないための建物性能。防火のために必要とされる性能のひとつである。

建築基準法においては、延焼防止性能は、建物のすべての壁・柱等に対して一律に耐火性能を要求することで確保されてきた。しかしながら、外壁や開口部など外殻の防火性能を高めれば、構造物に対して一律に耐火性能を要求しなくても延焼防止性能を確保できると考えられている。

そこで、延焼防止性能について技術的基準を整備し、防火地域準防火地域における延焼防止性能の高い建築物建ぺい率制限を10%緩和するほか、建物内部の柱等に木材を利用する設計を容認することとされている。

エントランス

建物の入り口や玄関のこと。マンションや商業ビルでは、その建物の印象に強い影響を及ぼすことが多い。

沿道地区計画

都市計画法第12条の4に規定する「地区計画等」の一つ。幹線道路の沿道の整備に関する法律に従い、都市計画によって定められる。

沿道地区計画は、幹線道路のうち交通騒音が著しく沿道に相当数の住居が密集している道路(沿道整備道路という)の沿道の地区について、緑地帯などの緩衝帯の整備、沿道の建築物建築の規制などにより、騒音被害の防止を図ろうとする計画である。

塩ビ管

ポリ塩化ビニールで作られている管。用途、太さ、長さはさまざまである。

ポリ塩化ビニールは化学製品で、耐久性があって、燃えにくく加工しやすいため、管類のほか、建設資材など幅広い用途がある。

英語名はpolyvinyl chloride(ポリビニル クロライド)で、PVCと略記される。

エンボス加工

浮き彫りに加工すること。英語のembossは「浮き彫りにする」という意味の動詞である。

紙や金属の表面に文字や模様を表す方法として広く使われている。例えば、点字、クレジットカードや自動車ナンバープレートの番号などもエンボス加工によって表示されている。

住宅設備では、壁紙などに用いられる場合もある。

AR

情報技術を活用して、現実世界に仮想の情報を重ねることによって現実感を拡張すること。英語のAugmented Reality(オーグメンテッド・リアリティ)の略語で、「拡張現実感」「拡張現実」などと翻訳されている。

たとえば、現実の部屋のなかに仮想の家具を置いてリアルな空間として知覚すること、現実の土地に仮想の建物を建築して空間的な調和や景観を確認することなどは、ARの利用例である。

なお、ARは現実をベースに人工的な情報を重ねて現実感を広げるのに対して、VR(Virtual Reality)は現実感を人工的に生み出すという違いがある。

ALC

「Autoclaved Light Weight Concrete」の頭文字を取ったもの。日本語では「軽量気泡コンクリート」と表記される。

「軽量気泡コンクリート」は、工場でセメント等に発泡剤を混ぜて、高温高圧の状態で養生したコンクリートである。その特長として軽量にもかかわらず強度があり、耐火性や遮音性にも優れていることが挙げられる。

ALC造

ALC造とは、 ALC製のパネルを使用した建築構造のことである。

以前は高級戸建住宅の外壁や間仕切りをALCとすることが多かったが、最近では賃貸マンションにもALC造が多用されるようになった。

AJFI(不動産ファンドインデックス)

不動産投資ファンドの運用実績を示す指数で、(一社)不動産証券化協会が公表しているもの。ARES Japan Fund Indexの略(ARESは、Association for Real Estate Securitizationの略称)。
 
不動産インデックスは、一般的には実物不動産の平均的な価格動向を示す指数であるが、AJFIは不動産投資ファンドの平均的な収益動向を示す指数で、ファンドの運用成績を表している。

AJFIの算定は、主に賃貸収益を目的に運用される不動産投資ファンド(コア型不動産ファンドという)の当期利益(インカムゲイン)と、そのファンドが投資した不動産の純資産額の増減(キャピタルゲイン)とを加重平均する方法で行なわれ、2001年12月31日を1,000とする指数のかたちで月次に公表される。この場合、インカムゲインにはファンドが投資のために借り入れた資金の割合やコストなどが反映されているので、実物不動産の収益とは異なる動きを示す。

なお、算定の対象となるファンドは、JREIT私募ファンド(私募REITを含む)である。

AJPI

不動産投資の運用実績を示す指標(不動産投資インデックス)のひとつで、国内不動産投資の収益性等を判断する際に使われている。ARES Japan Property Indexの略語。

投資ファンドが保有する不動産の賃貸収益(インカムゲイン)と評価損益(キャピタルゲイン)をもとに、両者を加重平均し、指数化する方法で算出され、毎月公表される。

AJPIの特徴は、評価対象不動産を保有するファンドが、主に投資不動産からの賃貸収益によって運営されていることである。このようなファンドを「コア型」といい、安定性を重視する比較的低リスクのファンドとされている。

ADR(不動産紛争に関する~)

ADRは、Alternative Dispute Resolution の略語。「裁判外紛争処理」と訳され、裁判によらない紛争解決方法をいう。

紛争解決のために行政機関や民間機関が行なう斡旋、調停、仲裁などがこれに該当する。そのほか、裁判所で行なわれる民事調停・家事調停、訴訟上の和解もこれに含まれるとされる。

ADRの特徴は、紛争当事者の自主的な努力を尊重し、専門的な知見を反映して、紛争の実情に即した迅速な解決を図ることにある。
不動産紛争に関しても、いくつかのADR機関がその役割を果たしている。主なものとしては、
1.(独)国民生活センター紛争解決委員会
2.指定住宅紛争処理機関(住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)により指定される機関で弁護士会が指定されている)
3.ADR法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)によって認証された民間ADR機関
4.(一財)不動産適正取引推進機構による特定紛争処理事業(ただし、紛争当事者が直接に申し立てることはできず、一次処理機関から申請があった紛争が対象)

なお、民間賃貸住宅をめぐって多様な紛争が発生しているが、その円滑な解決のためには専門的な知見が必要となる場合が多いことから、ADRを活用することが有効であると考えられている。

ADSL

通常のアナログ固定電話回線を使用して高速で通信する技術をいう。

Asymmetric Digital Subscriber Line(非対称デジタル加入者線)の略。

通信の方向(上りか下りか)によって通信速度を変えることで通信速度の高速化を実現する手法であり、アナログ通信線にデジタル情報を乗せる方法を取るため特別の配線工事を必要としない。インターネットの利用においては、サイトからのダウンロード(下り)需要のほうが格段に大きいので、ADSLを活用すれば、画像等の大容量データの取り込み時間を容易に短縮できる。

ADSLを活用した商業用サービスは、日本では1999年に開始され、2001年に急速に普及した。この年をブロードバンド元年というのはそれゆえである。

一方、通信線として光ファイバーを利用する技術(光通信)は、ADSLよりもより高速で安定した通信を可能とするが、敷設のための配線工事が必要であることから、しばらくの間はADSLと光通信との併存が続くと予想されている(08年3月には、光通信加入世帯数がADSL回線加入世帯数を上回るに至った)。

ADL(日常生活動作)

日常生活を送るために最低限必要な動作。英語のActivities of Daily Living(アクティビティーズ オブ デイリー リビング)の略語。

介護やリハビリテーションにおいて、高齢者や障害者の身体能力や日常生活レベルを測るための指標として用いられている。

ADLは、基本的日常生活動作と手段的日常生活動作で構成される。基本的日常生活動作は、日常生活における基本的な動作で、起居・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容のための動作をいい、狭義のADLとされる。

手段的日常生活動作は、基本的な動作よりも複雑な動作で、掃除・料理・洗濯・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味などの日常生活動作をいう。

ADLの評価方法はいくつかあるが、自立能力と認知能力に着目して評価することは共通している。

ABW

雇用されている人が自分自身で働く時間と場所を決定する働き方。英語のActivity Based Workingの略語。

時々の仕事の内容に応じて、従業者自身がその都度、働く時間と場所を決めることになる。時間と場所を自由に選択できることから、従業者は、仕事と生活のバランスを独自に保つことができる一方、事業主は、多様な人材を確保できると考えられている。また、事業コストの削減に資するともされる。一方で、ABWが円滑に機能するためには、業務の管理や成果の確認などに関するシステムを見直す必要がある。

追いだき

追い焚き、追焚きとも。

風呂の湯の温度が時間の経過や入浴により低下したときに、温度を上げるために風呂の湯を再度加熱することを「追いだき」という。

かつては手動で追いだきを行なっていたが、近年はオートタイプのガス風呂給湯器やオートタイプの電気温水器が登場したことにより、自動的に追いだきを行なうことができるようになった。

応急借上げ住宅

災害被災者に対して、応急的に民間賃貸住宅等を借り上げて提供する住宅。応急仮設住宅の一つで、「借上型応急仮設住宅」「みなし応急仮設住宅」ともいう。

応急借上げ住宅の供給方式には、都道府県(又は市町村)によるマッチング方式と、被災者自ら物件を探し、都道府県に申請する方式(被災者自らが探す方式)とがある。

なお、応急仮設住宅の提供方法には、建設する方法と借りる方法とがあるが、提供されるまでの期間、それぞれの住宅の特徴、被災地域の実情等を踏まえて、あらかじめそれぞれの供給について計画しておく必要があるとされている。たとえば、応急借上げ住宅の供給に関して不動産業団体等とあらかじめ協定を締結しておくことによって円滑な供給を確保できる。

応急危険度判定

地震で被災した建築物について、余震等による倒壊、部材の落下などの危険度を調査し、判定・表示する制度。

応急危険度は、「危険」「要注意」「調査済」の3段階に分けて判定され、判定は、応急危険度判定士による調査の結果に基づいて、市町村が行なう。

応急危険度判定調査

地震で被災した建築物について、余震等による倒壊、部材の落下などの危険度を判定するための調査。

応急危険度判定調査を実施するのは被災市町村で、調査に当たるのは、市町村から派遣される応急危険度判定士である。調査は、原則として建物外部からの外観目視によって行い、「危険」「要注意」「調査済」の3段階で判定され、表示される。

なお、応急危険度判定調査は、罹災証明のための「住家被害認定調査」ではなく、そのための調査は別に実施される。

大壁

構造用合板などの面材で柱を覆い、柱を隠した壁のこと。

屋外広告物条例

屋外広告物法第3条から第5条までの規定にもとづいて、都道府県・指定都市・中核市・景観行政団体である市町村が定めた、屋外広告物の規制に関する条例のこと。

屋外広告物条例による規制が可能な地域は、従来は「市及び人口5千人以上の市街的町村の区域」(旧屋外広告物法第3条第1項)に限定されていたが、2004(平成16)年の法改正により、全国どこでも屋外広告物条例を設けることが可能になった(法第3条から第5条)。

屋外広告物条例による規制内容は、屋外広告物の表示・掲出の禁止(法第3条)、屋外広告物の表示・掲出に対する知事・首長の許可制(法第4条)、屋外広告物の形状・面積・色彩・意匠・掲出方法の基準(法第5条)である。また屋外広告物条例で定めるところにより、違反広告物を除却することができる(法第7条)。

屋外広告物法

屋外広告物を取り締まるため、1949(昭和24)年に制定された法律。最近、景観法の創設に伴って、屋外広告も良好な景観の形成に影響を与えるという観点により、2004(平成16)年6月に大幅改正された(改正法の施行は2004(平成16)年12月より)。

屋外広告物法では、立看板広告旗(いわゆる「のぼり」)、広告看板、広告塔などを「屋外広告物」と規定している(第2条)。

また、屋外広告物の表示・屋外広告物を掲出するための物件の設置を行なう営業のことを「屋外広告業」と呼び(第2条)、この営業を登録制としている(第9条)。

都道府県・指定都市・中核市・景観行政団体である市町村は、良好な景観または風致を維持するために必要があると認めるとき等においては、第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域美観地区風致地区または伝統的建造物群保存地区景観地区などの地域において、屋外広告物の表示・掲出を、条例で禁止することができる(第3条)。

また、都道府県・指定都市・中核市・景観行政団体である市町村は、良好な景観または風致を維持するために必要があると認めるとき等においては、屋外広告物の表示・掲出を条例で知事・首長の許可制とすることができる(第4条)。さらに、屋外広告物の基準を条例で定めることができる(第5条)。

このような屋外広告物条例に違反した屋外広告物については、知事・首長は、相当の期限を定めて、除却を命令することができる(第7条)。
ただし、立看板・のぼり等については、簡易除却制度が設けられており、知事・首長が通知・公告なしに立看板・のぼり等を即時撤去することができる。

屋外電源

家屋の外側に設置する電気供給設備。たとえば、外壁等に設けた電源コンセントがこれに当たる。

家屋の外で電気を使う場合には、屋内の電源から電気コードを引くこともできるが、屋外電源を設置すればより簡便に電力を供給できる。

屋上防水工事

建物屋上の雨漏りを防ぐ工事をいう。

屋上防水の方法には、大きく、
ⅰ)防水塗料を塗る方法(塗膜防水):ウレタン防水、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)防水
ⅱ)防水シートを貼る方法(シート防水):ゴムシート防水、塩化ビニールシート防水
ⅲ)アスファルトを含んだ不燃布等を重ねあわせて接着する方法(アスファルト防水)

がある。防水方法は、屋根の形状や施工条件に応じて選択する。

屋上緑化

樹木・植物などを建造物の屋上に設置し、緑化すること。

近年ではヒートアイランド現象を緩和するために屋上緑化が非常に有効であることが認識されるようになってきた。

このため国では、2001(平成13)年8月より「都市緑地法」を改正・施行し、「緑化施設整備計画認定制度」を創設している。
この制度は、一定の要件を満たす樹木・植物などを屋上等に設置する場合には、固定資産税を軽減するというものである。

また東京都では、2001(平成13)年4月より東京都自然保護条例を改正・施行し、1,000平方メートル以上の敷地面積の民有地において、建築物等を新築・増築する者に対して、地上部の空地部分の20%と屋上の利用可能部分の20%を緑化することを義務化している。

奥行

建物や宅地の前面道路に接する境界から、その反対側の境界までの距離。これに対して、前面道路に接している距離を「間口」と呼び、この両者によって建物や宅地の形状や大きさをおおまかに示すことがある。

押入れ

部屋の一部分をふすま、または戸で仕切った空間で、寝具、衣服等の生活用品を収納する場所。英語の「closet(クローゼット)」も同じ意味で使われる。

汚染井戸周辺地区調査

地下水の汚染が明らかとなった場合に、その汚染範囲を確認するとともに汚染原因の究明に資するために実施する調査。土壌汚染が判明した場合にも、必要に応じて実施される。水質汚濁防止法の規定に基づく地下水モニタリング調査の一つである

汚染物質の種類、帯水層の構造、地下水流向・流速等を勘案して、汚染範囲全体が含まれるように複数地点を設定して実施される。この場合、利水影響が大きい井戸を優先して選定し、また飲用井戸は必ず調査することとされている。

汚染井戸周辺地区調査によって把握された汚染地域については、「継続監視調査」の対象に移行し、特定地点について年1回以上汚染状態を調査することとなる。また、継続監視調査を数年間実施したあと、再び汚染井戸周辺地区調査を実施して、汚染範囲の確認などを行なうこととされている。

汚染除去等計画(土壌汚染対策法の~)

土壌汚染対策法に基づき要措置区域(土壌汚染の摂取経路があり健康被害が生じる恐れがあるため汚染の除去等の措置が必要な区域)に指定された土地所有者等が作成する汚染除去等のための計画。都道府県知事の指示によって作成し提出する。

汚染除去等計画に記載するのは、講じようとする汚染の除去等の措置(技術的基準に適合する措置に限る)、措置の着手予定時期および完了予定時期等である。

提出した汚染除去等計画が技術的基準に適合していないときには、都道府県知事は、提出があった日から起算して30日以内に変更を命じることができる。また、土地所有者等は提出した汚染除去等計画に従って措置を実施しなければならない。

汚染土地の指定

土壌の汚染状態が基準に適合していない土地として指定すること。土壌汚染対策法に基づく措置で、土壌汚染状況調査の結果によって都道府県知事が指定する。指定は公示され、台帳に記載して公衆の閲覧に供される。

指定される汚染土地には、次の二つの種類がある。

(1)要措置区域
土壌汚染の摂取経路があり健康被害が生じる恐れがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域。この区域に指定されると、健康被害を防止するために必要な措置を講じなければならない。また、土地の形質変更は原則禁止される。

(2)形質変更時要届出区域
土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じる恐れがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域(摂取経路の遮断が行なわれた区域を含む)。この区域では、土地の形質変更時に都道府県知事に計画の届け出が必要である。

汚染土地の指定台帳

汚染土地として指定された区域の所在地、土壌汚染の状況等を記載した台帳。土壌汚染対策法に基づき、都道府県知事が調製する。 

汚染土地として指定される区域は、汚染の除去等の措置が必要な「要措置区域」と、汚染の除去等の措置が不要な「形質変更時要届出区域」との二つの種類に分かれているが、指定台帳は、この区域の種類ごとに別々に調製される。

台帳に記載される主な事項は、次のとおりである。
1. 指定された年月日
2. 区域の所在地
3. 区域の概況
4. 区域内の土壌の汚染状態(基準に適合していない特定有害物質の種類等)
5. 土壌汚染状況調査の実施方法、実施した指定調査機関等
6. 要措置区域における地下水汚染の有無
7. 形質変更時要届出区域における汚染の除去等の措置
8. 自然由来特例区域、埋立地特例区域、埋立地管理区域、臨海部特例区域にあってはその旨
9. 関係図面

また、汚染土地の指定が解除された場合には、指定台帳からその記載を削除し、「解除台帳」に記載して措置内容及び解除された旨を記録することとされている。

汚染土地の土地の形質変更

形質変更時要届出区域(土壌の汚染状態が基準に適合していない土地であって、健康被害が生じる恐れがないため汚染の除去等の措置が不要な区域)に指定された土地について、宅地造成等の土地の形質を変更する行為を行なうこと。この行為を行なおうとするときには、行為に着手する日の14日前までに都道府県知事に届け出なければならない。この場合、その行為によって土壌汚染を拡散させる恐れがある場合には、都道府県知事はその工事の計画を変更することを命令することができる

また、要措置区域(土壌汚染の除去等の措置が必要な区域)に指定された土地については、実施措置が実施され要措置区域の区域指定が解除されない限りは、原則として土地の形質の変更を行なってはならないとされている。

汚染土壌の掘削による土壌汚染の除去

汚染土壌について、地下水汚染を経由した健康被害の恐れがある場合、または土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。
汚染土壌を掘削し、その場所に掘削した汚染土壌以外の汚染されていない土壌を埋め戻す。また、掘削した汚染土壌から特定有害物質を除去した土壌を埋め戻してもよい(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

オットマン

足を載せるためのクッションが付いた台。英語のottoman。「フットスツール(footstool)」ともいう。

オットマンは、もともとはオスマン帝国で使われていたクッション張りの背の低い長椅子をさしていたが、それがイギリスで小型化して、現在のようなクッション付き足載せ台となった。オットマンという名称はその名残である。

乙区

登記記録において、不動産所有権以外の権利に関する事項を記載した部分のこと。

この乙区に記載される登記には「抵当権設定登記」「地役権設定登記」「賃借権設定登記」などがある。

おとり広告

実際には取引できない物件の広告のことで、客寄せのためにする。
架空の物件、売却済みの物件、売主に取引の意思がない物件などの広告はすべてこれに当たる。そのような広告を出すことは宅地建物取引業法に違反し、また、不動産公正取引協議会不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)で禁止されている。

踊り場

階段の途中に設けられた踏面の広い段のこと。階段を昇降するときの危険防止と小休止のために設ける。また、階段の方向を変えるときにも付ける。

幅と奥行き、段の高さの最大・最小寸法については、建築基準法で決められている。

鬼瓦

屋根棟の先端部に設置された瓦。棟の端を覆って雨の侵入を防ぐとともに、魔除けの意味もあるとされる。

鬼瓦の形は、鬼ヅラのほか、州浜形、家紋入りなど、一般に装飾的な意匠が用いられている。

オフバランス

資産をバランスシート(貸借対照表)から切り離すこと。「オフ・バランスシート」の略語。資産保有に伴うリスクや負債の軽減、キャッシュフローの獲得などの効果がある一方、資産利用コストの増大、キャピタルゲイン獲得機会の喪失などを伴う。

オフバランスは、資産の保有と利用とを分離する財務手法のひとつである。その例としては、不動産の証券化によって自社ビルを流動化すること、リースバック手法によって事業設備を流動化することなどがある。

オプション

選択の自由があること。英語のoption。一般に、標準的な装備に追加する付属品やサービスをいうことが多い。

また、金融においては、目的物を一定の期期間後に一定の価格で取引する権利をさす用語として使われている。

オポチュニティファンド(Opportunity Fund)

私募ファンド(任意の契約によって投資家から集められた資金を運用者が運用し、その成果を出資額に応じて投資家に還元する仕組み。元本保証はなく、リスクもリターンも投資家に帰属する)の一つで、高い運用実績を売り物にするものをいう。

投資対象を限定せず、運用者に自由な裁量権を与えてリターンを高めることに特徴があるが、一般に投資対象が限定的なファンドよりもリスクが大きい。不動産を投資対象とすることが多く、アメリカで普及した。

親子ドア

広いドアと狭いドアの二面で構成されている両開きのドア。通常は狭いドア(子ドア)を閉めたまま広いドア(親ドア)のみを使って出入りし、必要に応じて子ドアも開放して広い間口とすることができる。

なお、かたちは親子ドアに似ているが、子ドアを開かないように固定したドアを「片袖」という。

折り上げ天井

壁の上端に弧状の蛇腹を設けて、天井面を高くした天井。壁面と天井とが凹曲面で接合される。和風建築のデザインとして用いられ、このようなデザイン技法を「折り上げ」、設置する弧状の蛇腹を「折り上げ支輪」という。

折り上げ天井は、天井面が壁面上端よりも高いので、開放感のある部屋を形づくることができる。

オリジネーター(Originator)

不動産の証券化において、証券化の対象となる不動産、不動産信託受益権、不動産担保債権などを証券の発行に当たるSPC等に譲渡する者。原資産保有者、資産譲渡人ともいわれる。

証券化をスタートさせる役割を担うが、資産を譲渡したオリジネーターは資金を調達できるのである。また、オリジネーターは、証券化を推進する者と同一の場合もあるし、いったん不動産を譲渡したうえで、改めて同じ不動産を賃借することもある。

オルタナティブ投資

伝統的な資産以外に対する投資

伝統的な資産とされるのは上場株式や債券であるが、オルタナティブ投資は、
これら伝統的な資産と価格動向等が連動しない資産に対する投資であり、リスクの分散、収益パターンの多様化、ハイリスク・ハイリターンなどのニーズに応えるべく発達してきた。

オルタナティブ投資のかたちは多様で、農産物、鉱産物などの現物・先物取引、不動産投資、ファンドへの投資、金融派生商品(先物、オプション、スワップなど、デリバティブといわれる)の取引などがある。

温室効果ガス

人為的に排出され、地球温暖化の原因となると考えられている化学物質をいう。

京都議定書で排出量の削減対象として指定されているのは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCS)、パーフルオロカーボン類(PFCS)、六フッ化硫黄(SF6)の6種類である(HFCS、PFCS、SF6を合わせてフッ素ガス類という)。

温室効果ガス排出の削減に当たって削減量を評価するときには、これら6種類のガスを、100年間にわたる温室効果の強さに応じて二酸化炭素に換算する。
その換算値(地球温暖化係数)は、二酸化炭素=1、メタン=25、亜酸化窒素=298、ハイドロフルオロカーボン類=124~1万4,800、パーフルオロカーボン類=7,390~1万2,200、六フッ化硫黄=2万2,800である。

換算評価すると、6種類の温室効果ガスの中で地球温暖化に対する寄与が最も大きいのは二酸化炭素である。
排出量のシェアは、二酸化炭素76.7%(うち56.6%分は化石燃料からの排出)、メタン14.3%、亜酸化窒素7.9%、フッ素ガス類1.1%である(2004年、IPCCによる)。

なお、気候に対する人為的な影響は、温室効果ガスの排出だけでなく、エアロゾル(粉じん)の排出や森林伐採などによっても生じる。

温水洗浄便座

温水を噴出して肛門等を洗浄する機能のある便座。洗浄強度の調整のほか、乾燥や脱臭などの機能が付加されている場合もある。

「ウォシュレット」「シャワートイレ」などの商標があり、これらの商標で呼ばれることも多い。

温水ルームヒーター

温水の熱を利用した暖房器具のひとつで、屋外のガスボイラー(ガス給湯器)で温水をつくり、それをコンセント接続によって室内の器具に導いて空気を暖める器具をいう。

温水を利用した暖房方式には床暖房や温水パネルヒーターがあるが、それらは設備が固定され部屋全体を暖めるのに対して、温水ルームヒーターは器具を移動できる一方、暖房範囲は局所的である。

オンライン申請(不動産登記における~)

不動産登記を、インターネットを利用したオンラインで申請することをいう。

法律上の名称は「電子申請」。不動産登記法の改正(2005年3月施行)によって創設された申請方法である。

従来、不動産登記は、書面(または携帯型のディスク等)でのみ申請できること(書面主義)、権利の登記の申請は当事者または代理人(司法書士)が直接登記所に出頭すること(出頭主義)とされていたが、登記申請者の負担軽減等のためオンラインによる申請が新設されたのである。

オンライン申請では、法務省オンライン申請システムにユーザー登録をしている者(通常は司法書士)が、インターネットで法務省オンライン申請システムへ接続し、申請情報を送信する。この際セキュリティを確保するために、電子署名・電子認証の仕組みを利用し、なりすましやデータ改ざんを防止するようになっている。

オンライン庁(不動産登記における~)

不動産登記をオンライン申請できる登記所をいう。

2008年7月14日をもって、すべての法務局(本局・支局・出張所)がオンライン庁となった。

なお、よく似た言葉としてコンピュータ庁がある。コンピュータ庁とは、登記事務をコンピュータで処理する登記所のことである。コンピュータ庁では、従来の紙の登記簿に代わって、磁気ディスクによる登記記録が原則とされる。

OL(オープンエアリビング)

リビングと連続していて一体的に使うことのできるバルコニー。Open air Livingの略語だが和製英語である。

オープンエアリビングとリビングとのあいだは、一般に、折り戸式全開口サッシによって仕切られていて、サッシを開けば両方の空間が一体化する。

オーク

ブナ科コナラ属の落葉広葉樹の総称で、建築材、家具材、船材、樽材などとして古くから使われている。英語のoakで、和名はナラ(楢)である。

オーク材は、硬さと耐朽性を備え、木目や色に天然木の美しさがあることから、建材においては無垢材として使われる場合が多い。

なお、オークは落葉樹であって、コナラ属の常緑樹であるカシ(樫)とは区別される。

オートバス

自動的に給湯する機能を備えた浴槽。和製英語である。

湯量、湯温などを設定しておけば、給湯の開始をボタンなどで指示するだけで設定どおりに給湯される。この場合、自動的に追い焚きする機能を備えたものを「フルオートバス」、追い焚きのためには別途の指示が必要なものを「セミオートバス」という。

なお、オートバスであっても浴槽の栓は自動的に開閉しない。

オートライト

自動的に点灯・消灯する照明装置。玄関灯、廊下灯、庭園灯などに使われている。automaticとlightを組み合わせた和製英語である。

オートライトの点灯・消灯は、センサーによって制御する。センサーは目的に応じて選択することになるが、その方式には、人が発する赤外線を感知するもの(人感センサー、人が近づくと点灯する)、明るさを感知するもの(光センサー、暗くなると点灯する)などがある。

なお、オートライトには自動車や自転車の前照灯の意味もあるが、これはautomobile lightの略語であって、住宅等に使われるオートライトとは異なる用語である。

オートロック

ドアを閉じると自動的に施錠するしくみ。和製英語で、英語ではautomatic door lock(オートマチック ドア ロック)が一般的。

マンションの出入口、ホテルの部屋などで使われている。

オーナーチェンジ

賃貸住宅の所有者が、賃借人が入居したままその建物を売却することをいう。

購入者は新たに賃借人を見つける必要がなく、投資用のワンルームマンションでよく使われる方法である。その際に、賃借人から預かっている敷金の引渡しや建物の管理ルールの引継ぎなどに注意が必要である。

オーニング

英語でawning、窓やポーチに張り出して設置する可動式の「日よけ」をいう。

一般に、テント生地でできている。オーニングによって、窓辺などの陽射しを調節したり、ポーチなどを雨から保護することができる。

オーバーハング

もともとは登山用語で、岸壁の上部に突き出た岩、張り出した岩のことをいうが、建物の場合は、外壁よりキャンティレバーで支えられた跳ね出した床、バルコニーのことをいう。

オーブンレンジ

電子レンジとオーブンの機能を兼ね備えた調理機器。和製英語である。

電子レンジは食品の含有水分を熱して中から温める調理方法であり、オーブンは高温の空気や赤外線で外から素材を加熱し焼く調理方法であるが、オーブンレンジは、この両方を一つの機器で使い分けることができる。

オープンエアスペース

通常よりも広くて開放感があるベランダまたはバルコニーを指す用語として使われることがある。その明確な基準はなく、一般的な用語ではない。また、英語ではない。

ベランダやバルコニーの開放感は、広さだけでなく部屋との連続性も大事な要素である。広告や間取表示の名称に惑わされず、状態を実地で確認しなければならない。

なお、建築基準において、ベランダやバルコニーの外端からの距離が1m超える内側の部分は、建築面積に算入される。

オープンエンド

投資信託のうち、受益権の買い戻し義務があるもの。

信託による投資は、投資者が金銭を受託者に提供し、受託者がその資金を運用し(運用先が不動産経営である場合がREIT)、投資者は運用益を受け取る権利(受益権)を保有するしくみである。この場合、オープンエンドにおいては、投資者は、いつでも受託者に対して受益権の買い戻しを求めることができる。このときの買い戻し価格は、純資産価額に基づいて算出される基準価額である。

金融商品として売り出されている契約型の投資信託のほとんどすべては、オープンエンドである。また、私募REITの大部分もオープンエンドである。

なお、受益権の買い戻し義務のない投資信託は「クローズドエンド」といわれ、会社型の投資信託に多い。上場されているREITもクローズドエンドである。

オープン外構

敷地の周囲を遮蔽しない外構。樹木や草花を植栽するなどによって、開放性のある敷地境界をかたちづくる。

オープン外構は、開放性がある一方、プライバシー確保や防犯のための工夫が必要である。

オープンキッチン

居室・食事室と一体となっていて、部屋と仕切りがない調理スペースをいう。

間取りを広くとることができ、調理中にも居室とコミュニケーションを保つことができる一方、調理に伴う臭いなどが居室・食事室に波及することへの対応や、収納スペースの適切な確保が必要となる。

オープンシェルフ

背面や側面に板がない棚。収納したものが空間に開放されているような状態となる。オープンシェルフと収納物とが一体となって、インテリア(室内装飾)として機能する場合もある。

オープンスペース

大規模なビルやマンションに設けられる空地(くうち:敷地のうち建築物が建てられていない部分)であって、歩行者用通路や植栽などを整備した空間をオープンスペースという。また広い意味では、都市における公園・緑地・街路・河川敷・民有地の空地部分などの建築物に覆われていない空間を総称して「オープンスペース」と呼ぶ場合がある。

高層建築物による景観や生活環境の悪化に対する制度として、国では1961(昭和36)年に特定街区制度、1971(昭和46)年に総合設計制度を創設した。
これらの制度は、大規模なビルやマンションを建設する際に広い空地を確保し、その空地を一般の歩行者が自由に通行できる空間として利用することを推奨するものである。
特に後者の総合設計制度は、現在も広く活用されており、この制度によって設けられた一般公衆が自由に出入りできる空地は「公開空地」と呼ばれている。

近年では、大規模なビルやマンションにおいて、ヒートアイランド現象を緩和するために地上の空地部分の緑化が推進されており、また地方自治体の条例により良好なまち並みの形成が推進されている。

さらにビルやマンションの市場価値自体を高めるという目的のために、開発者が空地に歩行用通路・樹木・植栽・庭園・水路などを整備することが盛んになっている。
このようなさまざまな理由にもとづいて、大規模なビルやマンションの空地において、通路・植栽等を整備することが近年盛んになっている。こうした空地のことを一般に「オープンスペース」と呼んでいる。

オープンハウス

本来は、企業のオフィスや生産施設を、顧客・取引先・投資家に見学させて、企業に対する理解度を高めるという企業広報活動のこと。

不動産業界では、販売しようとする物件の内部を一定の期間、担当営業員が常駐して、買い希望客に公開するという販売促進活動を指す。

オール電化システム

住宅内の熱源、例えば冷暖房、給湯、調理などに必要な熱をすべて電気で賄うシステムをいう。

燃料の燃焼による有害物質や水蒸気が発生しないこと、火事の恐れが比較的小さいことなどが特徴とされる。

か行

買い換え特約

不動産の買主が、別の不動産を売却した代金をもって当該不動産の購入費用に充てることを「買い換え」という。

こうした買い換えでは、別の不動産の売却が不調に終わったときには、当該不動産の購入ができなくなるケースが多い。

そのため実際の不動産取引では、別の不動産の売却が不調に終わった場合には、買主は不動産を購入する契約を解除し、契約を白紙に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。こうした特約を「買い換え特約」と呼んでいる。

「買い換え特約」は、買主が一定の場合に解除権を行使することを認める特約であるので、「買い換え特約」では次の事項を明記しておくのが望ましい。

1.買主に解除権が発生するための具体的な条件(どのような物件がいくらで、いつまでに売却できないときに買主に解除権が発生するのか)
2.買主が解除権を行使した際の売主の義務の内容(売主が契約締結時に受領した手付金や代金を返還するか否か)
3.買主が解除権を行使した際の買主の義務の内容(買主に損害賠償義務が存在しないこと等)

開口部

壁・床・屋根に設けられた開口部分のこと。窓、出入口、天窓などを指す。

介護付有料老人ホーム

介護サービスを提供する高齢者向け居住施設。有料老人ホームの類型の一つである。

介護付有料老人ホームでは、食事の提供、食事・入浴・排せつの介助、清掃や洗濯の代行などのほか、要介護度に応じて、身体介護、一定の医療行為、リハビリテーションなどのサービスを受けることができる。

なお、有料老人ホームには、「介護付」のほか、生活支援サービスのみを提供し介護サービスは別の契約となる「住宅型」、自立生活を基本に食事等を提供し、介護が必要になれば退去する「健康型」がある。

介護保険

介護サービスを提供する保険制度をいう。

2000年4月に公的な制度として導入された。
介護保険への加入は強制的であり、満40歳以上の者が被保険者となる。介護サービスを受けるには、

1.介護を要する状態であることの保険者(市町村等)による認定(要介護認定)
2.要支援・要介護の程度に応じた、ケア・マネージャーによる介護サービスのコーディネート(ケアプランの作成)
3.介護施設(介護サービス事業者)によるサービスの提供

という手順を踏まなければならない。また、介護サービスに要する費用の1割は自己負担となる(施設利用に伴う食費・居住費は別途負担)。

自己負担以外の介護保険制度を運営するための費用は、政府と被保険者が折半で負担する。被保険者が負担する保険料は、地域、所得等によって異なる他、財政の均衡を保つべく3年ごとに見直される。

提供される介護サービスの内容は、大きく介護給付と予防給付に分かれ、次のようなサービスで構成されている。

1)介護給付
・施設サービス(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など)
・居宅サービス(訪問介護、訪問看護、短期入所サービスなど)
・地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護など)
2)予防給付
介護予防サービス(介護予防通所介護、介護予防通所リハビリなど)
・地域密着型介護予防サービス

介護予防

介護が必要な状態の発生を防止・遅延することや、要介護状態の悪化を防止・軽減することをいう。

介護予防のためには、運動機能や栄養状態を改善するだけでなく、個々人の生活機能(活動レベル)や参加(役割レベル)を充実することも必要である。そしてこれによって生活の質を維持し、向上することとなる。

住宅は、地域活動とともに介護予防の場としての役割を担うと考えてよい。

介護療養型医療施設(=療養型)

療養型は、長期の療養を必要とする要介護者に対して医療リハビリを行なう施設で、従来の老人病院と同じ機能を担っている。なお、2017年度末での廃止が決定済み。

平均要介護度は4.36と、介護保険3施設の中で最も高く、平均在所期間も約1年2ヵ月と長い。
居室の定員は4人以下で、1人当たりの床面積は6.4平方メートル以上。
公的機関の他に医療法人が設置・運営しており、月額費用は平均約9万円で、諸雑費を加えて13万円ほど徴収している施設もある。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム=特養)

要介護高齢者のための生活施設で、一定の基準(居室定員1人、床面積10.65平方メートル以上など)を満たすものをいう(介護保険法)。特別養護老人ホームともいう(老人福祉法)。定員29名以下のものは、「地域密着型特別養護老人ホーム(地域密着型介護老人福祉施設)」と呼ばれる。

地方公共団体、社会福祉法人などが設置・運営する。

入居の対象は、65才以上で常時介護を必要とし、居宅では介護が困難な者(原則として要介護度3以上)とされている。入所者に対しては、入浴、排泄、食事等の介護その他日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話が提供される。

介護老人保健施設(=老健)

医療的な介護やリハビリを必要としている人に対して、日常生活の世話をして自宅への復帰を目指す施設で、公的機関のほかに民間事業者も設置・運営しており、開設には都道府県知事の許可が必要。

入居者の平均要介護度は3.29と特養よりも低いが、最近では特養の入所待機者も増えており、平均在所期間は約9ヵ月。
居室の定員は特養と同じ4人以下で、1人当たりの床面積は8平方メートル以上と特養より狭く、月額費用は平均8万円と高めとなっている。

会社型投資信託

投資信託のうち、投資家が特定の法人を設立して投資を行なう方法をいう。

不動産投資信託の大部分は、会社型投資信託である。

従来、投資信託は、投資家が資金を信託したうえで運用する方法(契約型)しか認められていなかったが、1998(平成10)年の法改正によって、会社型投資信託も実施可能となった。さらに、2000(平成12)年には投資信託の対象が大幅に拡大されて不動産投資も認められるようになった結果、不動産投資信託が実現したのである。

なお、会社型投資信託を担う法人を投資法人、その構成員(投資家)を投資主、投資主に与えられる権利を投資口という。

会社法

会社の設立、組織、運営及び管理についての一般的なルールを定めた法律(平成17年法律第86号)。 2005年7月に制定され、06年5月1日から施行されている。

会社には法人格が付与され、取引等の主体となることから、その法的な権能、責務などを明確にする必要がある。そのための規則は、会社法が制定されるまでは、商法(明治32年法律第48号)第二編(会社)のほか、有限会社法、会社の配当する利益又は利息の支払いに関する法律、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律などに定められていた。会社法は、これらの規定を統合整理し、会社の管理運営に関する規則を現代化するべく新たに制定された法律である。

会社の種類を株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4つとし、会社に法人格を付与する。その上で、会社の設立・組織変更等、株式の権能・発行・譲渡・取得等、株式会社の機関の設置・運営等、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社の総称)の社員の権利義務・加入退社等、会社の会計計算の方法等、会社の解散・清算等などに関するルールを規定している。また、特別背任罪、会社財産を危うくする罪、贈収賄罪など、会社の利益を妨げる一定の行為に対する刑罰も定めている。

解除権

契約を解除する権利。民法で認められている権利である。

例えば、債務不履行、債務の履行不能、手付放棄、契約不適合などの場合に行使できる。

解除権の効力は、相手方に対する意思表示によって発生する。この意思表示は撤回できないとされている。また、解除は、一般に、期間を定めて債務の履行を催告し、その期間内に履行がないときにすることができるとされる。ただし、債務の履行が不能であるとき、債務者が債務の履行を拒絶する意思を表明しているときなど法律で定める一定の場合は、催告することなく直ちに解除できる。

解除権が行使されたときには、契約の当事者は、それぞれ相手方を現状に戻す義務を負う。ただし、第三者の利益を害することはできないとされている。また、解除権を行使した上で、損害賠償の請求をすることもできる。

なお、解除権を有する者が、故意、過失によって、契約の目的物を著しく損傷すること、加工・改造して他の種類のものに変えることなどをしたときには、その解除権は消滅する。

解除条件

契約等の法律行為の効果が、将来不確定な事実が発生することによって消滅する場合の、当該不確定な事実をいう。

例えば、マンション購入契約の際に、物件が完成するまでの間に転勤になったら契約を失効させるという条項を入れた場合、転勤になることは解除条件である。そのような契約を解除条件付契約という。

その反対に、法律行為の効果の発生が、将来の不確定な事実にかかっている場合には、その事実を「停止条件」という。解除条件は、法律効果が発生した後にそれを消滅させる条件、停止条件は法律効果を発生させる条件、というように対比して考えればわかりやすい。

改善命令(宅地造成等規制区域における~)

宅地造成等規制区域の中の宅地において、崖崩れや土砂の流出を防止するために必要な擁壁や排水施設の設置が不完全である場合には、知事(または政令市・中核市・特例市の市長)は必要な改善工事を行なうことを命令することができる。これを改善命令という(宅地造成等規制法第16条)。

解体工事施工技士

解体工事に必要な知識および技術を確認するための試験に合格した者。建設業法に基づく国家資格で、試験は、(公社)全国解体工事業団体連合会が実施している。

解体工事施工技士は、一般建設業である解体工事業の営業所の専任技術者および工事現場の主任技術者または監理技術者の資格を満たすとされている。

また、建設業法の許可を得る必要のない解体工事業を営む場合には、都道府県知事の登録が必要とされ、工事現場における解体工事の施工の技術上の管理をつかさどる技術管理者を置かなければならないとされている(「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」)。解体工事施工技士は、この場合の技術管理者として認められている。

階高

ある階の水平基準面から直上階の水平基準面までの高さのこと。

階段

登り降りする段差のある通路。「きざはし」「梯子段」とも言う。建物の階を移動するための設備として造り付けるほか、傾斜の大きい道などにも設置される。

階段は、複数の平面を高低差をもって順次に連結した構造になっている。この構造において、隣り合う平面の高低差を「蹴上げ」、足を乗せる平面の奥行きを「踏面」、高い階段の途中に設ける広い平面部分を「踊り場」という。

建築基準では、住宅用の階段について、蹴上寸法を23cm以下(共同住宅の共用階段は22cm以下)、踏面寸法を15cm以上(同21cm以上))、幅員を75cm以上とすること、高さ4m以内ごとに踊り場を設けること、手すりを設けることを義務付けている。ただし、蹴上寸法と踏面寸法との関係や階段の斜度については特に決まりはない。

階段のかたちには、まっすぐに昇降するもの(直階段)のほか、踊り場で直角に向きを変えるもの(かね折れ階段)、踊り場で向きを正反対に変えるもの(折り返し階段)、らせん状に回りながら上り下りするもの(螺旋階段)などがある。

階段下収納

階段の下に設けた収納スペースのこと。

デッドスペースを有効に利用する方法であるが、スペースのかたちは直方体とはならない。

改築

建築物の全部もしくは一部を除却すると同時に、これと同様の規模・構造の建築物を建てることをいう。

建築基準法では、改築も「建築」の一種とされており(建築基準法第2条第13号)、改築についても建築確認を申請する必要がある(建築基準法第6条)。

海中公園地区

国立公園または国定公園の中の海面・海中で指定される地区(自然公園法第18 条の2)。

海中公園地区では、建築物の建築、工作物の建築、宅地造成、海底の形状変更、土石採取、環境大臣が指定する熱帯魚・珊瑚等の捕獲、物の係留、広告物の掲出について、環境大臣または都道府県知事の許可が必要である。

海中特別地区

自然環境保全地域の中の海面・海中で指定される地区(自然環境保全法第27条)。

海中特別地区では、建築物の建築、工作物の建築、宅地造成、海底の形状変更、土石採取、環境大臣が指定する熱帯魚・珊瑚等の捕獲物の係留について、環境大臣の許可が必要である。

買取再販

既存住宅を買い取り、リフォーム工事を実施した上で販売する事業形態をいう。

買取再販に当たって実施するリフォーム工事が、大規模な修繕工事、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修など一定の要件に該当する場合には、当該既存住宅の取得に係る登録免許税の軽減措置および、不動産取得税の軽減措置が講じられている。

買主の地位の譲渡

売買契約における買主の地位をさらに別の者に売り渡すことをいう。

契約上の地位を譲渡する旨の契約を締結することにより実現する。中間省略登記を合法的に行なうための手法の一つとされる。

買主の地位の譲渡を利用した実際の契約は、次の2つの契約からなる。

1.売買契約(A→B)
2.買主の地位を譲渡する契約(B→C)

この結果、所有権はAから直接にCに移転する(BC間の契約は売買契約に従属するため、CはAB間の契約内容を知ることができる)。

開発型証券化

将来、建設を予定している建物などを対象に行なう不動産の証券化をいう。完成後の建物から得られるであろう収益を裏付けにして証券を発行するもので、既存の建物の証券化に比べて不確定要素が多い。

事業者は、不動産開発事業のリスクを投資家に分散できる一方、投資家はハイリスク・ハイリターンの金融商品を購入できる。

開発許可

宅地造成等(開発行為)を行なう際に必要とされる許可のこと。都市計画法に基づく制度である。

1.趣旨
都市計画法では、無秩序な開発を規制するために、開発許可の制度を設けている。一定規模以上の開発行為を行なうためには、知事(指定都市等では市長)から開発許可を受ける必要がある。

2.開発許可の概要
1)許可の対象は「開発行為」である。
2)開発行為を行なおうとする者は、開発行為に着手する前に知事(指定都市等では市長)の許可を受ける必要がある(都市計画法第29条)。
3)一定の開発行為については、開発許可を受ける必要がない。
4)知事等が開発許可を与えるか否かを審査する基準には、全国どこでも適用される全般的許可基準(技術的基準、都市計画法第33条)と、市街化調整区域内の開発行為についての基準(立地基準、都市計画法第34条)とがある。

3.開発行為
開発許可の対象は「開発行為」である。開発行為とは「建築物の建築または特定工作物の建設のために土地の区画形質を変更すること」である(詳しくは「特定工作物」「土地の区画形質の変更」を参照)。

4.開発許可を得る必要がない開発行為
次のような開発行為は開発許可を受けないで行なうことができる。
1)次の面積に達しない開発行為
・東京都の特別区・既成市街地・近郊整備地帯等:500平方メートル未満
・市街化区域:1,000平方メートル未満
・区域区分が定められていない都市計画区域: 3,000平方メートル未満
準都市計画区域:3,000平方メートル未満
ただしこれらの面積は、特に必要があると認められる場合には、都道府県・指定都市等の条例で「300平方メートル未満」にまで引き下げることができる。
2)市街化調整区域・区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域における、農林漁業者の住宅を建築するための開発行為および農林漁業用の建築物を建築するための開発行為
3)公益施設のための開発行為
公益施設は、駅舎、医療施設、小中学校、高校、公民館、郵便局、図書館、墓地、火葬場、と畜場、し尿処理施設、ごみ処理施設、卸売市場など政令で指定するものに限る。
4)国・都道府県・一定の市町村が行なう開発行為
5)都市計画事業の施行として行なう開発行為
6)市街地再開発事業の施行、住宅街区整備事業の施行、土地区画整理事業の施行として行なう開発行為
7)非常災害のため必要な応急措置、通常の管理行為・軽易な行為に該当する開発行為

通常の管理行為・軽易な行為は、仮設建築物の建築、土木事業などに一時的に使用するための第一種特定工作物の建設、車庫・物置その他附属建築物の建築、建築物の増築で増築に係る床面積の合計が10平方メートル以内のもの、建築物の改築で用途の変更を伴わないもの、建築物の改築で改築に係る床面積の合計が10平方メートル以内のもの、主として当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売加工修理等の業務を営む店舗・事業場などの新築(延べ面積が50平方メートル以内)であって当該開発区域の周辺の市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行なう開発行為(開発規模が100平方メートル以内に限る)など、政令で指定するものに限る。

5.開発許可の基準
知事(指定都市等では市長)が開発許可を与える場合の基準が定められている。この基準には、全国どこでも適用される全般的な基準(技術基準、都市計画法第33条)と、市街化調整区域内においてのみ適用される基準(立地基準、都市計画法第34条)の2種類がある。市街化調整区域では両方の基準を満たさなければならない。(開発許可基準については「開発許可の基準(全般的許可基準)」「開発許可の基準(市街化調整区域内の許可基準)」参照)

6.都市計画区域・準都市計画区域以外の区域における開発行為
都市計画区域および準都市計画区域以外の区域においてその面積が1万平方メートル以上開発行為を行なう場合は、4の2)〜7)に該当しない限り開発許可を受けなければならない。

開発許可が不要な開発行為(市街化区域等における~)

A)市街化区域等における面積が次の開発行為については、開発許可を受ける必要がない。
1.市街化区域における1,000平方メートル未満の開発行為(注1・2参照)
2.非線引き区域における3,000平方メートル未満の開発行為(注1・2参照)
3.準都市計画区域における3,000平方メートル未満の開発行為
4.都市計画区域および準都市計画区域以外の区域における1ヘクタール未満の開発行為
注1:三大都市圏の一定区域(都の特別区、首都圏の既成市街地と近郊整備地帯、近畿圏の既成都市区域と近郊整備区域、中部圏の都市整備区域)では、開発許可が不要な開発行為の最低面積は500平方メートル未満とされている。
注2:知事・指定都市等の市長は、条例によって開発許可が必要な開発行為の最低面積を300平方メートルにまで引き下げることができる。

従って、市街化調整区域における開発行為は、面積の如何にかかわらず開発許可を受けなければならない。

B)次の開発行為については、その面積の大小にかかわらず開発許可を受ける必要がない。
1)市街化区域以外において、農林漁業者の住宅および農林漁業用建築物(畜舎、蚕室、温室、堆肥舎、サイロなど)を建築するための開発行為
2)鉄道の施設、医療施設、小中学校、高校、公民館等の公益上必要な建築物の建築のための開発行為

開発許可が不要な開発行為(市街化調整区域における~)

市街化調整区域では、その規模にかかわらず、開発行為について知事(指定都市等では市長)の許可を受けなければならないとされている。

市街化調整区域は市街化を抑制する区域であるので、小規模開発についても、立地規制の観点から開発許可の対象としているのである。

ただし例外として、次のような開発行為については、開発許可を受ける必要がないものとされている。
1.農林漁業者の住宅や、農林漁業用建築物(畜舎、蚕室、温室、堆肥舎、サイロなど)を建築するための開発行為
2.市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗等(延床面積が50平方メートル以下)を新築する目的で、その市街化調整区域内に居住している者が自らその業務を営むために行なう100平方メートル以下の開発行為
3.鉄道の施設、医療施設、小中学校、高校、公民館等の公益上必要な建築物の建築のために行なう開発行為等

開発許可の基準(市街化調整区域内の許可基準)

市街化調整区域で建築物の建築または第1種特定工作物の建設を目的とする開発行為を行なう場合に適用される開発許可の基準。

1.趣旨
都市計画法は、開発行為(建築物の建築や特定工作物の建設を目的とする土地の区画形質の変更のこと)を行なうためには、原則として知事(指定都市等では市長)の開発許可を受ける必要があると定めている。

開発許可を与えるか否かの基準は次の2つに分けて定められている。
A)全国のすべての地域に適用される基準で、「全般的許可基準」または「技術的基準」といわれ、公共施設の整備、防災上の措置などの水準に関して審査するもの(都市計画法第33条、詳しくは「開発許可の基準(全般的許可基準)」を参照)
B)市街化調整区域内でのみ適用される基準で、「立地基準」と言われ、立地の適正性を判断するためのもの(都市計画法第34条)

このうちB)の基準は、市街化調整区域における市街化を抑制するべく定められているもので、宅地の水準を判断するA)の基準と性格を異にする。また、市街化調整区域内での開発行為に対する開発許可ついては、A)およびB)の両方が適用されることとなる。

2.市街化調整区域内の開発許可基準(立地基準)の概要
次の開発行為については許可される。
1)日常生活のため必要な物品の販売等
開発行為を行なう区域(開発区域)の周辺地域の居住者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場などのための開発行為
2)農林漁業用の建築物
市街化調整区域内で生産される農林水産物の処理・加工のため必要な建築物・第1種特定工作物のための開発行為。
3)鉱物資源・観光資源の利用など
ア 市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源などの有効利用上必要なもののための開発行為。温度・湿度・空気等について特別の条件を必要として、市街化区域内での建築・建設が困難なもののための開発行為。
イ 市街化調整区域内の工場施設と密接な関連を有する事業用の建築物・第一種特定工作物
ウ 火薬庫であって、市街化区域内で建築建設することが不適当なもののための開発行為。
4)市街化区域内での建築・建設が困難・不適当なもの
市街化区域内の建築・建設が困難不適当なものとして定められる建築物・第一種特定工作物のための開発行為。道路管理施設、休憩所、ガソリンスタンド、火薬類製造所が指定されている。
5)地区計画等の区域
地区計画または集落地区計画の区域であって、地区整備計画・集落地区整備計画が定められているとき、その計画に即して行なわれる開発行為。
6)条例を定めることによって限定的に認めるもの
ア 自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成している地域で、おおむね50以上の建築物(市街化区域内を含む)が連たんしている地域のうち条例で指定する区域において行なう開発行為で、環境保全上支障がある用途など条例で定めるもの以外のためのもの。ただし、優良農地、優れた風景のため保全すべき区域、災害発生の恐れがある区域は指定できない。
イ 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、都道府県の条例で、区域、目的又は予定建築物等の用途を限って定められたもの。ただし、優良農地、優れた風景のため保全すべき区域、災害発生の恐れがある区域は指定できない。
7) 開発審査会の議を経て都道府県知事が個別的に認めるもの
都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進する恐れがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為。たとえば、分家住宅、社寺仏閣、地区集会場、有料老人ホーム、優良田園住宅などのための開発行為があり得る。

開発許可の基準(全般的許可基準)

都市計画法における開発許可に関して、どの地域でも適用される技術的な基準のこと。

1.趣旨
都市計画法は、開発行為(建築物の建築特定工作物の建設を目的とする土地の区画形質の変更のこと)を行なうためには、原則として知事(指定都市等では市長)の開発許可を受ける必要があると定めている。

開発許可を与えるか否かの基準は次の二つに分けて定められている。
A)全国のすべての地域に適用される基準で、「全般的許可基準」または「技術的基準」と言われ、公共施設の整備、防災上の措置などの水準に関して審査するもの(都市計画法第33条)
B)市街化調整区域内でのみ適用される基準で、「立地基準」と言われ、立地の適正性を判断するためのもの(都市計画法第34条、詳しくは「開発許可の基準(市街化調整区域内の許可基準)」を参照)

A)の基準は宅地の水準を判断するための一般的な基準であって、市街化調整区域における市街化を抑制するべく定められているB)の基準とは性格を異にする。従って、市街化調整区域内での開発行為に対する開発許可ついては、B)だけでなくA)も適用されることとなる。

2.全般的許可基準の概要
「全般的許可基準」は次のとおりである。
1)予定建築物の用途が用途地域などに即していること
予定される建築物等の用途が、用途地域、特別用途地区特定用途制限地域などに適合していること。また地区計画が定められていて、地区整備計画が定められているとき(または施設の配置・規模が規定された再開発促進区があるとき)は、予定建築物等の用途などが地区計画等に即していること。
2)公共施設等との用途の配分
公共施設、公益的施設(学校など)、予定建築物の用途の配分が適正であること
3)排水施設、地盤の軟弱な土地等における安全措置
ア 排水路その他の排水施設が、下水を有効に排出し、溢水等の被害が生じないように設計されていること。
イ 地盤の軟弱な土地、がけ崩れや出水の恐れが多い土地などであるときは、地盤の改良、擁壁の設置などの安全上必要な措置が講じられていること。
4)権利者の同意
開発行為を行なう区域(開発区域)内の土地または建築物等につき、工事の実施の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を得ていること。
5)樹木の保全等、緑地帯等、輸送の便
ア 1ha以上の開発行為では、植物の生育の確保上必要な樹木の保存、表土の保全等の措置が講じられていること。
イ 1ha以上の開発行為では、騒音、振動等による環境の悪化の防止上必要な緑地帯その他の緩衝帯が配置されていること。
ウ 40ha以上の開発行為では、当該開発行為が道路、鉄道等による輸送の便等から見て支障がないこと。
6)公共空地、道路の接続
道路、公園、広場その他の公共空地(消防用貯水施設含む)が環境保全上等で支障がない規模構造で配置されること。開発区域内の主要な道路が、開発区域外の相当規模の道路に接続すること。なお、この基準は、自己居住用の住宅には適用されない。
7)給水施設
水道その他の給水施設が、想定される需要に支障をきたさないこと。なお、この基準は自己居住用の住宅には適用されない。
8)災害危険区域等を含まないこと
災害危険区域」「地すべり防止区域」「土砂災害特別警戒区域」などの土地を含まないこと(ただし支障がない時は含んでよい)。なお、この基準は、自己居住用の住宅と、自己業務用の建築物・工作物には適用されない。
9)資力信用、工事完成能力
開発許可の申請者に当該開発行為を行なうために必要な資力および信用があること。工事施行者に当該開発行為に関する工事を完成するために必要な能力があること。なお、この基準は、自己居住用の住宅と、一定規模以下の自己業務用の建築物・工作物には適用されない。

開発計画

狭義には開発許可の申請に当たって必要となる計画を、広義には不動産開発事業の計画をいう。

不動産開発事業を行なおうとする場合には、都市計画法による開発許可を得なければならない。その申請に当たっては、

1.開発区域の位置、区域および規模、2.予定される建築物または特定工作物の用途、3.開発行為に関する設計、4.工事施行者、5.設計の方針、土地利用や公共施設の整備計画、資金計画等を明確にした申請図書

が必要であるが、これらを示す図書が開発計画である。この計画によって、都市計画への適合、宅地造成の安全性、環境の保全、公共公益施設との調和などが判断される。

広い意味では、不動産開発事業の計画も開発計画である。その内容は、

1.市場調査などによる需要予測、2.開発予定地の自然的、社会的な条件の調査とその明確化、3.事業手法の確定、4.用地買収および工事の計画、5.資金計画、6.開発地の利便や魅力の向上策、7.価格設定および販売計画

など多岐にわたる。開発許可申請の際に必要な要素に加えて、事業の採算を確保するための計画が重要となる。このような計画は、開発事業のスケジュール、コスト、リスク、宅地や建物の品質を管理する基礎となる。 

開発行為

都市計画法上の開発許可の対象となる行為のこと。

1.趣旨
都市計画法では、無秩序な開発を規制するために、宅地開発に対しては知事(または市長)の許可が必要であると定めており、これを開発許可という(都市計画法第29条)。この開発許可の対象となる行為が「開発行為」である。

2.定義
開発行為とは、正確には「主として建築物建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」と定義されている(都市計画法第4条第12項)。
ここで「特定工作物」と「土地の区画形質の変更」の意味については、おおよそ次のように定義されている。
1)特定工作物
コンクリートプラント、ゴルフコース、1ha以上のテニスコートなどのこと(詳しくは特定工作物へ)。
2)土地の区画形質の変更
宅地造成、道路の新設などを伴う土地区画の変更、農地から宅地への変更などのこと(詳しくは土地の区画形質の変更へ)。

2.の定義に該当しない行為は、開発行為ではないので、開発許可を必要としない。例えば、1ha未満のテニスコートの建設のための宅地造成は、開発行為に該当しない。また建築物を建築する目的で、登記簿上で土地を合筆することは「土地の区画形質の変更」ではないので、開発行為に該当しない。

開発整備促進区

都市計画で定める地区計画の一つで、大規模集客施設の立地を可能とする地区をいう。

大規模集客施設(店舗、映画館、アミューズメント施設、展示場等で床面積が1万平方メートル超のもの、法律上は「特定大規模建築物」という)は、原則として、用途地域近隣商業地域商業地域準工業地域に指定されている土地に限って立地できる。しかし、開発整備促進区に指定することによって、それ以外の用途地域(ただし、第二種住居地域準住居地域工業地域に限る)においても立地が認められる。また、非線引き都市計画区域白地地域に開発整備促進区を指定することもできる。

開発整備促進区に指定されるためには、その土地が前記の用途地域等であることの他、現に土地の利用状況が著しく変化しつつあるかそれが見込まれること、その区域内において大規模集客施設の整備による商業等の利便の増進を図ることによって都市機能の増進に貢献することとなること、などの要件を満たさなければならない。

なお、地区計画には、当該区域の整備、開発および保全に関する方針や地区整備計画などが定められる。

開発道路

都市計画法による開発許可を受け開発行為によって開発区域内に設置された道路で、開発許可申請の際の設計に従って公共的な施設として設置されたものをいう。

設置後は、原則として市町村等に移管されて道路法の道路として管理される。通常、建築基準法接道義務を満たすために設置される私道よりも幅員が広い。

買戻

債務者(または物上保証人)の所有する不動産を、債務者(または物上保証人)が債権者に譲渡し、債務を全額弁済すると同時に債務者(または物上保証人)が債権者からその不動産を買い戻すという制度である。

民法では売買の特約としてこの買戻を規定しているが、実際上は不動産を担保に入れて金銭を得るための手段である(民法第579条)。この買戻を登記する場合には、最初の売買における所有権移転登記に、買戻特約の附記登記を行なう。

この民法上の買戻には次のような条件を満たすことが必要とされている。

1.売買契約と同時に買戻の特約をすること
2.買主(つまり債権者)が不動産を占有するので、その不動産の使用収益による利益を買主が取得する反面、買主(債権者)は売主(債務者)から利息を取ることはできないこと
3.買戻の代金は、当初の売買代金と同額であること

このように民法上の買戻は厳格な要件が定められているため、実際にはこれよりも要件が緩やかな再売買の予約が利用されることが多い。

買戻特約

私法上の概念で、「売主が代金額および契約の費用を買主に返還することによって売買契約を解除し、目的物を取り戻すことができる」とする特約をいう。

所有権移転登記と同時に買戻特約を登記しないと、第三者に対抗できない。また、売主が買戻権を行使できる期間は最長10年である。

新住宅市街地開発事業等による宅地分譲において建築義務、転売規制などを担保するため、あるいは、債務弁済による買戻特約を付けて不動産を譲渡して担保機能を確保する(売渡担保)ために利用される。

解約

法律行為の一つで、意思表示により契約関係を消滅させることをいう。

意思表示の時点から将来に向けて契約消滅の効果が生じる。

例えば借地借家法では、定期建物賃貸借に関して、「やむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する」と規定している。

これに対して、契約の解除は、過去に遡って契約関係を消滅させることであるとされ、例えばクーリングオフによる契約の消滅は、解約ではなく解除による効果である。もっとも、解約と解除が混同されることも多い。

解約に伴い、一般的に、契約当事者は原状回復義務務を負うことになる。

解約手付

手付の一種で、手付の放棄(または手付の倍額の償還)によって、任意に契約を解除することができるという手付のこと(民法第557条第1項)。

通常、契約を解除するためには、解除の理由が必要である。
具体的には、「法律上の解除原因の発生(債務不履行売主担保責任)」か、または「契約成立後に当事者が解除に合意したこと(合意解除)」のどちらかが必要である。

しかしわが国では、手付を交付することにより、契約を解除する権利を当事者が保持し続けるという手法を用いることが非常に多い。
これは、売買契約成立時に買主が売主に手付を交付し、買主は手付を放棄すればいつでも契約を解除でき、手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよいというものである(これを「手付流し」という)。
また売主も、手付の倍額を買主に償還することで、いつでも契約を解除でき、手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよい(これは「手付倍返し」という)。このように、手付相当額の出費を負担するだけで、いつでも売買契約関係から離脱できるのである。

また判例(昭和24年10月4日最高裁判決)によると、「契約において特に定めがない場合には、手付は解約手付であると推定する」こととなっている。つまり契約上、単に「手付」とされた場合には、反証がない限り、解約手付として扱われる判例が確立している。

宅地建物取引業法ではこの判例よりさらに進んで、売主が宅地建物取引業者である売買契約では、契約内容の如何にかかわらず、手付は必ず「解約手付」の性質を与えられると規定している(宅地建物取引業法第39条第2項)。これを解約手付性の付与という。

なお、手付流し・手付倍返しによる契約解除はいつまでも可能ではなく、契約の相手方が「履行の着手」を行なった時点からは、このような契約解除ができなくなるとされている(詳しくは履行の着手へ)。

カイン

地震動の強さを示す単位の一つで、観測地での揺れの速度を表す数値である。1カイン(kine)は1秒間に1センチメートル変位する速度で、数値が大きいほどより早い速度で揺れる地震動である。

地震動の大きさを示す単位はいくつかあるが、カインは、建物被害の状況と密接に関係する単位であると考えられている。そのため、建物の耐震設計における想定地震動の強さはカインで表されていて、L1地震(耐用年数中に一度以上は受ける可能性が高い地震動)は25カイン以上、L2地震(過去、将来にわたって最強と考えられる地震動)は50カイン以上を想定することとされている。

なお、阪神・淡路大震災(1995年)と東日本大震災(2011年)は同程度の震度が観測された地震であったが、地震動の速度(建物が最も揺れやすい周期1~2秒の振動の速度)は、前者のほうが後者よりも相当に大きかった。そして、前者の被害は家屋倒壊によるものが多数を占めているが、後者の被害は建物倒壊によるものは少なく、大部分は津波による被害であった。

カウチソファ

寝椅子状のソファ。座面が長く伸びていて、横たわることができる。「カウチ」は英語のcouch(長椅子・寝椅子)であるが、カウチソファは和製英語である。

リラックスする場面などに用いられ、応接用ソファなどには適さないとされている。

カウンターキッチン

キッチン(台所)とダイニングルーム(食事室)の間に、料理などをやりとりできるカウンター(台)を設置する方式又はその方式で造られたキッチンをいう。キッチンを開放的な空間とする方法として用いられている。カウンターキッチンは英語でCounter kitchenと綴れるが、意味上は和製英語である。

カウンターの設置方法には、キッチンとダイニングルームの間仕切り壁に大きな窓を空けてカウンターを置く方式、ダイニングルームの一角に調理台を設置しそれにカウンターを直接付置する方式などがある。

なお、カウンターキッチンの多くは、調理台がダイニングルームと開放的に向き合う配置となっているが、このような配置方式を「対面キッチン」という。

替地

公共事業の用地買収などの際に、金銭に替えて譲渡される土地のことで、代替地ともいう。

公共用地の買収の対価(補償金といわれる)は金銭で支払うのが原則であるが、土地所有者の要求により、その要求が相当であるときには替地を提供することがある。替地は、買収する土地と地目地積などが照応している必要がある。

土地市場が十分に発達していれば金銭による補償で問題は生じないと考えられるが、ダム事業のように大規模に生活の拠点が失われる場合や、公共事業による土地価格の上昇が期待されるようなときには、生活の安定や事業用地を提供することに伴う不公平感の是正のため、替地が要求されることがある。
そして、替地は土地収用の対象とはならず任意交渉で取得しなければならないため、不動産会社がその取得に協力する場合もある。

カエデ(楓)

ムクロジ科(旧カエデ科)カエデ属の落葉広葉樹の総称で、床材、家具材、楽器材などとして使われる。また、園芸樹の「もみじ」も旧カエデ科の樹木である。

カエデ材は、硬質で弾力性があり、木目は緻密、木肌は滑らかであることから、床や家具のほか、楽器や生活道具に利用されている。ただし、乾燥しにくく、加工しづらい 。

なお、輸入される「メイプル材」の原木もカエデである。

家屋価格等縦覧帳簿

家屋課税台帳等に登録され固定資産税を課することができる家屋について、固定資産税に係る価格などを記載した帳簿。市町村長が、毎年3月31日までに作成する。

家屋価格等縦覧帳簿に記載されるのは、家屋の所在、家屋番号、種類、構造、床面積および当該年度の固定資産税に係る価格である。

家屋価格等縦覧帳簿は、毎年、一定の期間、当該市町村内に所在する家屋に対して課する固定資産税の納税者の縦覧に供される。

家屋倒壊等氾濫想定区域

堤防決壊に伴って家屋の倒壊・流失が起きる恐れのある区域。国土交通大臣又は都道府県知事が指定する。

家屋倒壊等氾濫想定区域は、家屋の倒壊・流失の原因に応じて、洪水の氾濫流による恐れがある範囲と、洪水時の河岸侵食による恐れがある範囲の種類がある。

指定された区域では、避難は、屋内での待避(垂直避難)ではなく、避難所等への立ち退き避難(水平避難)が必要であるとされている。

家屋番号

不動産登記に当たって建物に付される番号。登記された建物を識別するための番号であって、不動産登記法に基づいて登記所が付す。建物の位置を示す住居表示とは異なるので、注意が必要である。

家屋番号は、原則として建物の敷地地番と同じ番号が付されるが、「◯番」というように番号のみが記され、地名は表示されていない。また、同じ地番に2つ以上の建物が登記された場合には、「◯番の◯」のように枝番号(支号)が付されている。

土地の分筆区画整理事業等によって地番が変更になった場合でも、付された家屋番号は変更されない。従って、敷地の地番とその敷地の上の建物の家屋番号とが異なることがある。

価格査定

不動産の売却を媒介する場合に、依頼者に助言するなどのため取引価額を算出する行為をいう。

この場合にその根拠を示すことが必要で、標準的な手法によって取引事例を比較検討し、客観的で実際的な成約見込額を算出しなければならないとされている。一般的には、価格査定のためのマニュアルを用いることが多い。

一方、不動産鑑定も価格の査定を伴うが、不動産取引の媒介に当たっての価格査定とは違って不動産鑑定士が経済価値を判定するものであり、算出する価額の性質に違いがあることに注意しなければならない。また、不動産鑑定は、価格査定と比べてより専門的、精密な方法で実施される。

化学物質過敏症

化学物質の暴露が関与する、倦怠感、疲労感、頭痛、不眠、皮膚炎などの症状の総称。ただし、中毒、アレルギーなど病因や病態が医学的に解明されている症状を除くのが一般的である。

化学物質過敏症が発症するメカニズムは解明されていないが、過去に化学物質に曝されたことがある場合に、非常に微量の化学物質に接触したときにも発症する。また、原因物質の除去により症状が改善または治癒すること、関連性のない多種類の化学物質に対して反応が生じることなどが判明している。

化学物質過敏症は、シックハウス症候群と違って、建物内環境に起因するとは限らない。また、客観的な診断方法や治療法は確立しておらず、体系的な対応策も定まっていない。しかし、一定数の患者が存在していることは確かで、医療の対象となっている。

確定申告

確定申告とは、所得を申告するために、税務署に備え付けられている「確定申告書」という書面に必要事項を記入して、住所地の税務署に提出することを指す。

一般の勤労者の場合は、毎月の給料と賞与から所得税が自動的に源泉徴収され、さらに年末調整によって所得税の納税が完了する。
従って通常は、一般の勤労者は所得税の納税について確定申告を自ら行なう必要はない。

しかし、住宅ローン控除を1年目に受ける場合、給与を2ヵ所以上から受けている場合、医療費控除を受ける場合などには、勤労者が自ら住所地の税務署に出向いて、確定申告を行なう必要がある。

確定申告書の記入は一般の個人には非常に難しい。そこで確定申告の時期には、各税務署の中で、地元の税理士会に所属する税理士たちが無償で個人の相談に乗り、確定申告書の記入を無償で代行してくれている。

確定申告は、毎年2月16日から3月15日までに行なうこととされている。ただし、所得税の還付を受ける場合には、2月16日以前でも確定申告を行なうことができる。

なお、不動産の貸付けによる所得(不動産所得という)がある個人は、必ず確定申告を行なう必要がある(詳しくは「青色申告」、「白色申告」へ)。

確定日付

私文書がその日に存在していたことを証明する、当該日付をいう。

法律の効果として文書の作成日付が重要となることがあり、その必要に応えるために日付を確定し証明するのである。内容証明郵便公正証書公証人が私書証書に日付のある印章を押捺したもの)は、確定日付のある文書(証書)である。

例えば、指名債権の譲渡の通知または承諾は確定日付のある証書をもってしなければ、債務者以外の第三者に対抗できないとされている。そのほか、契約や覚書に関して確定日付により紛争の発生を防止することができる。

カクテルアプローチ(不動産指標の~)

商業不動産について、価格動向を多面的に把握・分析する方法をいう。

商業不動産価格の動向は、金融やマクロ経済の動向と密接に関係し、金融・経済政策を適切に運営する上で欠かせない視点である。しかしながら、その動向には多様で複雑な要素が作用し、単純な指標で把握することは難しい。価格動向を的確に把握するには、賃料、不動産利回り、空室率などの各種指標を整備し、多面的に分析する必要がある。

カクテルアプローチは、その必要に応える方法であると考えられている。ただし、その方法が十分に確立しているわけではない。

確認済証(建築確認制度における~)

建築計画が建築基準関係規定に適合すると確認された場合に交付される書類をいう。

確認は建築工事に着手する前に受けなければならず、確認済証は確認した建築主事が交付する。

宅地建物取引業務においては、工事完了前の建物の売買等について、確認済証の交付を受けた後等でなければその広告をしてはならないとされている。
なお、建築工事完成後には、建築物が建築基準関係規定に適合しているかどうかの検査を受けなければならず、検査により適合が認められたときに交付される書類が「検査済証」である。

隠れたる瑕疵

「瑕疵」とは「きず」「不具合」「欠陥」という意味である。

「隠れたる瑕疵」とは、特定物(建物・土地などその固有性に着目して取引され代替性がない)の売買契約を締結した時点において買い主が知らなかった瑕疵であり、かつ買い主が通常要求されるような注意力を働かせたにもかかわらず発見できなかった瑕疵のことである。

例えば既存住宅の売買において、屋根の一部に欠陥があったため、引渡し後に雨漏りが発生したとする。この場合、屋根の欠陥が「瑕疵」に該当する。そして買い主が売買契約当時にこの欠陥があることを知らず、かつ買い主が通常要求されるような注意力を働かせても、この欠陥を発見することができなかったであろう場合には、この欠陥は「隠れたる瑕疵」に該当するといえる。

民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)以前は、民法で、特定物の売買契約において、その特定物に「隠れたる瑕疵」があったとき、売り主は買い主に対して「瑕疵担保責任」を負うものと規定されていたが、改正によってこの規定は削除され、「隠れたる瑕疵」の担保責任を含めて契約不適合責任に統合・整理された。

家具・家電付き賃貸住宅

家具や家電が備えられている賃貸住宅をいう。入居に際して、家具や家電を自ら用意する必要がない。

備え付けられている家具・家電は、一般的に、ベッド、ソファ、ダイニングセット、カーテン、テレビ、照明器具、エアコン、電子レンジ、冷蔵庫などであるが、契約前に確認する必要がある。

家具・家電付き賃貸住宅は、入居に当たっての準備が大幅に軽減され、初期費用を押さえることができる。一方、家賃が高めであるほか、家具・家電の種類等を選択できないこと、新品でない場合が多いことなどに注意が必要である。

また、備え付けられた家具・家電が破損・故障した際の費用負担について確認しておく必要がある。通常、契約書に「付帯設備」として記載されているものについての修理・交換費用は、貸主が負担する。

囲い込み(物件の~)

不動産の売却を依頼された不動産業者が、意図的に他の不動産業者に物件を紹介しない行為をいう。

囲い込みがされるのは、依頼された物件の買取りを仲介すれば、売買の依頼者双方から仲介手数料を得ることができるからである。これを「両手取り」というが、囲い込みは、依頼主の利益を損うほか、仲介の倫理に反し、不動産取引市場に対する信頼を妨げることになりかねない。

花崗岩

火成岩の一種。産出量が多く、磨耗に強いことなどから、床材・壁材などに多用される。ただし耐火性が低いという欠点もある。

火災

火によって生じる災害。「火事」も同じ意味である。

火災統計(消防庁)では、火災を、人の意図に反して発生・拡大し(放火による発生を含む)、消火の必要がある燃焼現象であって、消火するために消火施設等を必要とするもの(人の意図に反して発生・拡大した爆発現象を含む)と定義している。

燃焼のためには、発火だけでなく、可燃物と酸素の供給が必要で、可燃物又は酸素が無ければ燃焼は継続しない。したがって、火災を防ぐためには、意図しない発火を防止し、可燃物を適切に管理する必要がある。また、火災が発生したときには、早期に発見し、可燃物の隔離、酸素供給の遮断、放水による冷却などによって燃焼反応を抑えることになる。さらには、家屋火災を防ぐためには、建物防火耐火構造にすることが重要である。

火災対策のための設備として、自動火災警報器のような火災を発見・通報する設備、水や消火剤を放出し燃焼を抑える消火設備、炎や煙が拡散するのを防ぐ防火扉や排煙設備などがある。避難のための非常口の設置も有効である。また、火災による損失を補填する火災保険は、火災リスクを管理する仕組みである。

なお、失火によって他者に損害を与えた場合は、「失火ノ責任ニ関スル法律」によって、損害賠償の責任を負わないとされている。ただし、失火者に重大な過失があったときにはこの限りではない。

火災危険度

地震時に発生する出火による建物の延焼被害の危険性をいう。

自治体単位で公表しているもので、東京都は定期的に町丁目ごとに火災危険度を測定し、公表している。
東京都による火災危険度の測定は、東京消防庁による「出火危険度測定」および「延焼危険度測定」の調査結果に基づいて評価算定され、東京都の評価結果は、町丁目ごとに5段階のランク分けをして公表されている。
測定された火災危険度は、木造住宅密集地域整備事業、都市防災不燃化促進事業、防火地域の指定、防火規制等の地域選定に活用されている。

火災保険

火災による損害を補填するための保険。

火災保険契約を締結すれば、住宅、家財、店舗、工場、事業用資機材等が火災によって消失、損傷した場合に、生じた損害に対して保険金が支払われる。

一般に、火災のほか、落雷、爆発、風災などによる損害についても補填するよう設計されている。ただし、地震によって発生する火災の損害は、火災保険ではなく地震保険(火災保険に付帯されることもある)によって補填される。

火災保険の保険期間は、一般に、生命保険に比べて短い。また、保険金(保険者が支払う金銭)は、生命保険と違って、原則として被保険者が現実に被った損害額に基づいて算定される。

笠木

、手すり、腰壁などの最上部に取り付けられた横木。

家財保険

建物の中にある生活用の動産(家具、家電製品、衣類等)が、火災や災害によって損害を受けたときに補償する保険。火災保険の対象が「建物のみ」の場合には家財の損害は補填されないので、補償を受けるためには、別途、家財保険に加入する必要がある。

特に、賃貸住宅においては、一般に、建物については貸主が火災保険に加入しているが、家財については保険の対象とされていない。家財の損害を補填するためには借り主が家財保険に加入する必要がある。また、借り主が居室などに大きな損害を与えたときには、原状回復費用を負担しなければならないが、家財保険とセットになった「借家人賠償責任補償」に加入すればその費用を補填することができる。

飾り棚

収集品などを飾る棚。持ち物を展示し、鑑賞するために使われる。また、収納機能も担う。

通常の収納棚に比べて装飾性に富み、インテリア家具として設置されることもある。

火山災害警戒地域

火山噴火による人的被害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき地域。内閣総理大臣が指定する。

「常時観測火山」(今後100年程度の中長期的な噴火の可能性及び社会的影響を踏まえ火山噴火予知連絡会が選定)で、周辺に住民や登山者等が存在する火山について、その噴火による影響予想範囲が指定され、指定された都道府県及び市町村は、火山防災協議会の設置、地域防災計画への必要事項の記載等を行う。

また、火山活動の状況に応じて、指定された区域への立入りが制限されることがある。

瑕疵

法律上の欠点や欠陥。瑕疵があると、意図した法律的な効果は完全には生じない。瑕疵の具体的な内容や法律効果への影響は、民法に定められている。

例えば、詐欺強迫によってなされた意思表示は、「瑕疵ある意思表示」として、表意者は取り消すことができる。あるいは、悪意・過失・強暴・隠秘による占有は、「瑕疵占有」として、即時取得、時効取得の完成、果実の取得が求められない場合がある。

また、売買の目的物が契約に適合しないものであるとき(契約不適合の場合)には、買主は追完請求代金減額請求損害賠償請求契約解除をすることができるが、これは、売主が目的物の瑕疵についての担保責任瑕疵担保責任)を負っているからである。

なお、債権関連の民法改正(2020年4月1日施行)までは、売買の目的物に「隠れた瑕疵」があったときには売主に瑕疵担保責任を課す旨の規定があった。この規定は改正によって削除され、瑕疵担保責任は、改正で整備された契約不適合に関する規定によって対応することとされた。

瑕疵ある意思表示

「内心的効果意思」と「表示行為」は対応しており、一見正常な意思表示であるかのように見えるが、内心的効果意思を形成する際の「動機」に対して他人の強迫詐欺が関与しているもの。

いい換えれば、内心的効果意思の正常な形成が他人の強迫・詐欺により阻害されている意思表示のことである。瑕疵とは「きず」という意味である。
瑕疵ある意思表示には、強迫による意思表示詐欺による意思表示の2種類がある。

貸金業法

消費者金融や手形割引などの貸金業について、その運営を規制し、資金需要者等の利益の保護を図るための法律。1983(昭和58)年に制定されたが、多重債務問題への対応などのために2006(平成18)年に大幅に改正され、2010(平成22)年6月から全面的に施行された。

貸金業法が定める規定のうち主なものは次のとおりである。

1.借入残高の総量規制
貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合には、新規の借入れができない。その確認のため、借入れの際に「年収を証明する書類」が必要となるほか、指定信用情報機関による信用情報の収集提供が行なわれる。

2.上限金利
利息制限法による上限金利(10万円まで20%、10万~100万円18%、100万円超15%)を超える利息(利息には、礼金、割引金、手数料、調査料などの名目を問わず債権者が受け取る元本以外の金銭(公租公課等を除く)を含む)を伴う貸付等を禁止し、その行為を行政処分の対象とする。また、出資法の上限金利(20%)を超える貸付等は刑事罰の対象とする。

3.業務の適正化
1)営業の登録、指定紛争解決機関との契約締結、返済能力の調査等の義務付け
2)断定的判断の提供、過剰貸付け、誇大広告等の禁止
3)営業所ごとの貸金業務取扱主任者の設置 

瑕疵担保責任

売買契約請負契約の履行において、引き渡された目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に、売り主・請負人が買い主・注文者に対して負うこととなる責任。債務不履行により生じる責任のひとつで、目的物が特定物(その固有性に着目して取引され代替性がない)である場合の「契約不適合責任」と同義である。

瑕疵担保責任を負わせるためには、買い主・注文者は、売り主・請負人に対して、履行の追完請求(補修等の実施請求)、代金の減額請求報酬の減額請求損害賠償請求または契約解除権の行使をしなければならない。

なお、住宅の品質を確保するため、新築住宅の瑕疵担保責任について「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく特別の定めがある。詳しくは「売り主の瑕疵担保責任(品確法における~)」及び「請負人の瑕疵担保責任(品確法における~)」を参照。

過失責任主義

損害の発生について損害賠償責任を負うのは、故意・過失がある場合だけであるという私法上の原則。個人の行動の自由を保障するための原則であるとされ、民法はこの考え方を採用している。

しかしながら、事情に応じて損害発生の責任をより厳しく求めなければならない場合もあるとされ、民法の特例として、故意・過失がない場合にも損害賠償責任を負わなければならない(無過失責任)とされていることがある。たとえば、製造物責任については過失責任主義が適用されていない。

なお無過失責任の根拠としては、危険を作り出す者はそれによる損害賠償の責任を負うべき(危険責任)、利益を得る過程で損害を与えた者はその利益を損害賠償に充てるべき(報償責任)、という二つの考え方がある。

過失相殺

損害賠償額から過失相当分を差し引いて損害を負担することをいう。

賠償を受ける者にも過失がある場合に、負担を公平に行なうために適用される。

よく交通事故の損害賠償の際に問題となるが、これに限らず、債務不履行不法行為による損害賠償について一般的に考慮される。過失相殺の割合は、裁判で確定した事例をもとに判断されるが、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」が有名である。

貸主

不動産賃貸借契約において、不動産を貸す人(または法人)を「貸主」という。

不動産取引においては、取引態様の一つとして「貸主」という用語が使用される。

この取引態様としての「貸主」とは、「賃貸される不動産の所有者」または「不動産を転貸する権限を有する者」のことである。

 貸主は宅地建物取引業免許を取得している場合もあれば、そうでない場合もある。

 なお、不動産を賃貸することのみを業として行なう場合には、 宅地建物取引業の免許を得る必要はない。

瑕疵物件

取引の対象となった不動産の当事者の予想していない物理的・法律的・心理的な欠陥(瑕疵)があったときの、当該不動産をいう。

例えば、土壌の汚染、耐震強度の不足などの発見は瑕疵となる恐れが大きい。不動産売買契約締結時に発見できなかった瑕疵が一定期間内に見つかった場合には、買主は売主に対し契約不適合責任を追及することが出来る。

瑕疵保証

瑕疵が発見されたときにそれによって生じた損失を補填することを、あらかじめ約束すること。不動産に瑕疵があった場合には、売主が買主に対して瑕疵担保責任を負うのが原則であるが、それを補完するために、第三者が、瑕疵により発生した一定の損害を負担する仕組みがある。これが瑕疵保証である。

例えば、住宅の新築について工事請負人は引き渡しから10年間、住宅の構造耐力上主要な部分などについて瑕疵担保責任を負うが、住宅の性能を評価する制度を利用すれば、評価者がその瑕疵を保証する仕組みが用意されている。

貸家建付地

建物が存在している土地について、建物所有者と土地所有者が同一であるとき、この土地を「建付地」という。

ある土地が「建付地」であって、建物の種類が貸アパート・貸マンション・貸家などの賃貸用建物であるとき、その土地を「貸家建付地」と呼ぶ。

家事動線

家事のための移動経路。家事は異なる作業を異なる場所で行なう場合が多いため、間取りや家具・設備の配置によって動線に大きな違いが生まれる。

家事は、調理、洗濯、掃除、子供の世話などで構成されているが、家事動線を検討することによって、これらの作業を効率よく進めるための工夫が可能となる。

家事動線は短くシンプルであるほうが良いと考えられているが、一方で、移動に伴って、触れ合いや見守りなどの関係が生まれることもあるほか、家族の生活動線(居住生活のための移動経路)と家事動線との関係にも配慮しなければならない。

かすがい

金属製の細い棒の両端を直角に曲げ、先端を尖らせた金具。部材をつなぐために用いる。

課税証明書

住民税の課税額を証明する書類。住宅ローンの審査、児童手当の交付申請、公的年金の受給請求などの場合に必要となる。

市区町村が発行するが、交付の申請は「その年の1月1日時点の住所」の市区町村に対して行なわなければならない。

なお、「非課税証明書」は、課税額がゼロであることを証明する課税証明書である。

課税取引

課税取引とは、消費税が課税される取引のことである。

本来、消費税はすべての取引に対して課税されるのが原則であるので、物品の販売やサービスの提供は原則的にすべて「課税取引」であるとされている。
しかし、税の性格や社会政策的配慮により消費税を課税しない取引が存在する。これは「非課税取引」と呼ばれている。

具体的には、不動産取引に関連して次のものは「非課税取引」とされている。

1.土地の販売における土地の対価
2.土地と建物を一体として販売する場合における土地部分の対価
3.借地権の譲渡の対価
4.住宅の賃貸借における家賃・共益費礼金更新料

注意
・不動産仲介手数料は、たとえ上記1.から4.に関する仲介であっても、課税対象である。
・施設の整備された駐車場の駐車料は課税対象である。
・住宅の賃貸借であっても、その賃貸期間が1ヵ月未満の短期である場合はその家賃は課税対象である。
・住宅の賃貸借において授受される敷金・保証金は預かり金であるので、課税対象とならない。
・住宅の賃貸借において授受される敷金・保証金のうち将来返還を予定しない部分(関西におけるいわゆる「敷引」など)は家賃と同様の扱いであり、非課税である。

課税標準

税額を計算するときに、税率を乗じる対象となる価額をいう(税額=課税標準×税率)。

例えば、所得税では所得控除後の所得額、法人税では利益額が課税標準であるというように、税の種類によって算出方法が異なる。また、所有権移転登記に係る登録免許税固定資産税については、固定資産台帳に登録された価格が課税標準であるが、住宅用地などに特例措置が適用される場合には固定資産税の課税標準が減額されるなど、特別の措置があるので注意が必要である。

課税標準額

課税において、課税金額を算出する上で基礎となる金額をいう。

税目に応じてそれぞれ一定の方法で算出される。

例えば、固定資産税については固定資産課税台帳に登録された不動産の価格(住宅用地等のように特例措置が適用されるときにはその適用後の価額)を、消費税については課税資産の譲渡等の対価の額(その譲渡等につき課されるべき消費税額および当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を控除したもの)を、それぞれ課税標準額としている。

課税文書

印紙税が課税される対象となる契約書および受取書のことを「課税文書」という(印紙税法第3条第1項)。

具体的には次の1.から6.などが「課税文書」に該当する(印紙税法別表第一)。

1.不動産売買契約書
2.建築工事請負契約書
3.土地賃貸借契約書
4.金銭消費貸借契約書
5.5万円以上の売上代金の領収証
6.5万円以上の売上代金以外の金銭の領収証

(補足)
・建物賃貸借契約書は課税文書ではない。
不動産仲介を依頼した場合に作成する「不動産媒介契約書」は課税文書ではない。
・売上代金の領収証とは、「手付金の領収証」「不動産売買代金の領収証」「賃貸料の領収証」「不動産仲介手数料の領収証」などである。
・売上代金以外の金銭の領収証とは「敷金の領収証」などである。

仮想通貨

電子的な取引において不特定の人が決済に用いる価値表現であって、国家等の公権力組織による価値の保証がないものをいう。一方、公権力組織によって価値が保証されている通貨を「法定通貨」という。

仮想通貨とプリペイド・カードのような電子マネーとの違いは、電子マネーは法定通貨によって価値が保証されているのに対して、仮想通貨にはその保証がなく、信用を支えるのは利用者相互の信頼のみであることである。

なお、資金決済法は、仮想通貨交換業に対する規制を定めているが、そこでは、仮想通貨の定義を、① 不特定の者を相手に物品の購入、役務の提供等の代価の弁済のために使用でき、かつ、購入、売却、交換することができる財産的価値であって、② 法定通貨および通貨建資産を除き、③ 電子的方法により記録されて電子情報処理組織を用いて移転することができるもの、としている。例えばプリペイド・カードや商品購入等の際に付与されるポイントは、不特定の者を相手に使用することができないから、仮想通貨から除外される。

家族信託

家族間で締結する信託契約。

例えば、親の住宅を子供に信託し、受益権を親が保有すれば、住宅の所有・管理は子供が行ない、親はその住宅に安定的に居住するという法的な関係が生まれる。この場合、信託行為に対しては贈与税は課税されない。また、相続の対象となるのは信託受益権である。信託契約において、受益権の管理処分の方法を指図することもできる。

なお、家族信託の要件、効力等は、信託法の一般的な定めによる。例えば、未成年者は受託者になれない、受託者は信託利益を享受することができない、信託財産は信託登記・登録をしないと第三者に対抗できないなどである。

家族従業員

個人が不動産の貸付けを行なうとき、これを手伝う家族が次の要件を満たしていれば、この家族を「家族従業員」と呼ぶ。

1.その個人と手伝う家族とが同一の生計を営むこと
2.手伝う家族が15歳以上であること
3.1年のうち6ヵ月を超える期間、その貸付けの業務に専従していること

青色申告を行なっている場合、家族従業員の給料・賞与を必要経費にすることができる。
また白色申告を行なっている場合には、家族従業員について「専従者控除」を受けることができる。

片手

不動産取引を媒介としたときの宅地建物取引業者の成功報酬の受取り方をいい、取引当事者の双方から受け取る場合を「両手」、一方のみから受け取る場合を「片手」という。

例えば、宅地売買において売り手・買い手の双方から媒介の依頼を受ければ報酬は「両手」で受け取ることができるが、売り手・買い手の媒介依頼先が異なれば、取引には両方の業者が関与することとなって、それぞれの業者が受け取る報酬は「片手」となる。
 

片流れ屋根

屋根形式の一つで、片側から一方向だけに勾配があるかたちのもの。

勝手口

玄関とは別に設けられた、台所やサービスヤードへの出入りするための出入り口のこと。

茶室で、客が出入りする躙り口(にじりぐち)に対して、亭主が出入りする口(茶道口)のことも勝手口という。

割賦販売

売買代金を分割して、一定の期間内に定期的に支払う販売方法をいう。

この場合の目的物の引渡しには、一定額が支払われるまで引渡しを停止する場合と、最初に目的物を引き渡したうえで代金債権の担保措置を講じる場合とがあり、一般的には後者が採用されている。

割賦販売においては、買主を保護するために、一定の割賦販売(宅地建物の割賦販売は該当しない)について、一定期間、無条件で申込みの撤回または契約を解除できる制度(クーリングオフ)が適用される。

なお、宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地建物の割賦販売の契約については、賦払金の支払いの義務が履行されない場合に、30日以上の期間を定めて支払いを書面で催告し、期間内にその義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払いの遅滞を理由として、契約の解除や支払時期の到来していない賦払金の支払いを請求することができないとされている(強行規定)。

カップボード

食器棚。英語のcupboard。通常、戸棚形式となっている。

カップボードには主に食器類を収納するが、一般の収納棚と厳密に区分されているわけではない。

活断層

おおむね新生代第四紀後期以降とされる時代まで変位運動を繰り返していて、今後も活動する可能性のある断層をいう。

活断層は、その活動によって過去に地震の発生源となったことがあり、今後も発生源となる恐れがある。また、活断層の多くは一定の周期で瞬間的に変位する性質があると考えられている。しかし、その活動を評価する手法については、十分に確立しているとは言い難い。

なお日本の地震は、プレートの境界付近で発生する海溝型地震と、陸側のプレート内部で発生する活断層型地震とに大別できるが、土地利用などに当たって活断層の存否が注目されるのは後者との関係である。

滑動崩落(造成宅地の~)

盛り土の地滑り的変動をいい、盛り土と地山との境界面や盛り土内部を滑り面とする変動現象である。これによって、造成宅地における崖崩れや土砂の流出による被害が発生する。

大規模盛土造成地については、滑動崩落を予防するため、変動予測調査を実施する必要がある。

活動崩落を防止するためには、滑動崩落防止工事が有効と考えられている。滑動崩落防止工事の方法には、ア)地下水の状態、大規模盛土造成地の地形などの条件を変化させることによって崩壊や変形を防止する工法(抑制工)、イ)構造物等を設けることによって、その抵抗力により崩壊および変形を防止する工法(抑止工)がある。

家庭菜園

農地ではない場所で軽易・小規模に野菜や果物を栽培する場合の栽培場所または栽培活動をいう。自宅の庭、ベランダなどで栽培する場合のほか、市民農園(主として都市住民のレクリエーション等の用に供するために設置・運営される農地)での栽培を含む。

一般の農地での耕作・栽培と違って、家庭菜園での栽培は、通常はレクレーションや趣味として行なわれ、栽培した野菜や果物は主として自家消費に充てられる。

住宅の販売・賃貸に当たって、家庭菜園の提供を付加価値とする場合もある。

家庭用燃料電池

家庭に設置して住宅に電力を供給する燃料電池をいう。

燃料電池は電気化学反応によって発電する装置で、水素と酸素を化学反応させてこのとき発生する電気エネルギーを取り出す方法が用いられる。
家庭用燃料電池では、一般的に、燃料となる水素ガスを都市ガスやLPGから生成し、空気中の酸素と反応させて電力を得るとともに、併せてその際に発生する熱を給湯などに利用する方法(コジェネレーション)が採用されている。このようなシステムの統一名称が「エネファーム」である。

燃料電池は、二酸化炭素が発生しない、エネルギー変換において熱が介在しない(効率を高くできる)、比較的小規模な装置で発電できるなどの特徴があるとされるが、家庭用燃料電池も同様である。

家庭用品品質表示法

家庭用品の品質に関する表示の適正化を図るための法律。1962(昭和37)年制定。

家庭用品品質表示法の対象となるのは、日常生活に使用されている繊維製品、合成樹脂加工品、電気機械器具、雑貨工業品のうち、消費者が品質を識別することが困難で識別の必要性が高い品目で、政令で指定されている。例えば、カーテン、床敷物(パイルつき)、塗料、机・テーブルは、対象品目である。

対象となる品目については、それぞれについて、成分、性能、用途、取り扱い上の注意などの表示すべき事項(表示事項)と、表示するときに守らなければならない事項(遵守事項)とが定められ、製造・販売・表示業者は、定められた事項を表示しなければならない。

家電リサイクル法

廃棄物の減量や資源の有効利用を推進するため、使用済みの家電製品の部品・材料を再利用する制度を定めた法律。正式には「特定家庭用機器再商品化法」という。

制度の対象となるのは、エアコン、テレビ、電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機である。

制度の中心となっているのは、(1)対象となる家電製品を廃棄する消費者は、再利用等のために要する費用を支払った上で当該家電製品を小売業者に引き渡し、(2)家電小売業者は、過去に販売した商品や買い換えの際に引取りを求められた製品を引き取って製造業者等に引渡し、(3)製造業者等は、過去に自らが製造・輸入した製品を引き取って再利用する仕組みである。このうち、(2)および(3)は義務とされている。

なお、同制度を実施するための基本方針は、回収率の目標を定めるとともに、「廃棄された物をどのように処理するかという観点を転換し、製品の開発、製造から消費、廃棄等に至る各段階において、廃棄物の排出の抑制、使用済製品の再使用及び部品又は原材料としての利用である再商品化の促進という観点を持った、環境への負荷の少ない循環型経済社会システムを構築することが必要である」としている。

可動間仕切り

移動可能な間仕切りのこと。
通常は、展示場や会議場などで使用されるスライド式のパーテーションのことを「可動間仕切り」と呼んでいる。

また最近、住宅で使用されることが多くなったアコーディオン式や引き戸式の間仕切りも「可動間仕切り」と呼ばれることがある(詳しくはフレックスウォールへ)。

角地

正面と側方に路線(道路)がある土地のこと。

角部屋

分譲マンション・賃貸マンション・アパートで、各階の廊下の端にある住戸、または廊下が屈折している場合にその屈折部にある住戸のこと。

各階の廊下の端にある部屋を「端部屋」、屈折部にある部屋を「角部屋」と呼んで区別することもあるが、通常は両者を合わせて「角部屋」と称している。
「角部屋」(端部屋を含む)は日照が良く、隣室の騒音の影響を受けにくいなどの利点があることが多いため、分譲価格・家賃において同じ階の通常の住戸よりも高いことが多い。

矩計図

建物の各部分の標準的な高さや仕様を示すために、軒先を含む代表的な外壁部分の垂直断面を描いたものを矩計とか矩計図という。

平面図とともに建築設計図面の代表的なもの。

金物

建築材の接合部を結合し、補強するために取り付ける部品(その多くが金属製である)を総称して「金物」という。

金物には、くぎ、ボルト、短ざく、かね折り、プレート、アンカーボルトホールダウン金物などの多様な種類がある。

特に在来工法木造建築物では、建築物の安全性・耐震性を確保するために、「筋かいプレート」などの多種多様な金物の使用が必要不可欠である。

このため、国土交通省・農林水産省が設立する「財団法人日本住宅・木材技術センター」では、在来工法の木造建築物で使用する金物について、次のような厳格な認定制度を実施している。

1.Zマーク承認制度
(財)日本住宅・木材技術センターが開発した規格に基づく高品質な金物を製造する業者に「Zマーク(ゼットマーク)」の使用を承認する。

2.Zマーク同等認定制度
金物製造業者が開発した金物について、(公財)日本住宅・木材技術センターが同等認定試験を行ない、これに合格した高品質な金物について金物製造業者に「Zマーク同等認定」を付与する。

1.の金物は「Zマーク表示金物」、2.の金物は「Zマーク同等認定金物」と呼ばれている。
両者をまとめて「Zマーク金物」と呼ぶ。

なお、阪神大震災の教訓に基づき、建設省(現国土交通省)では平成12年に建築基準法を改正して、金物について厳しい基準を設けた。

この基準を定める「建設省告示第1460号」(2000(平成12)年6月1日施行)は、筋かいの端部の接合部などにおいては、事実上Zマーク表示金物またはZマーク同等認定金物(またはそれと同等以上の性能を有する金物)の使用を義務付けるような内容となっている。

カバ(樺)

カバノキ科カバノキ属の落葉広葉樹で、家具材、内装材などとして使われている。「かんば」とも言う。

カバ材は、均質で、肌目は緻密であるが、耐久性に難がある。幅広い用途に用いられ、着色塗装して利用されることもある。

なお、材質が桜と似ていることから、木材業界では、カバ材を「かばざくら」と称することがある。

カフェテーブル

二人掛け程度の小さめのテーブルで、一般に、休息やティータイムのために手軽に使用される。cafe tableは和製英語。その形状や素材はさまざまで、インテリア用品として利用されることも多い。

株券電子化

上場された株式の株券(上場投資証券および上場優先出資証券を含む)をすべて廃止して、株主権の管理を特定の口座で管理することで、株式のペーパーレス化を図ることである。

2009(平成21)年1月5日から実施された。

株主権を管理する口座は、証券保管振替機構(略称「ほふり」)および証券会社等に開設され、

1.株式等の売買は証券保管振替機構を通じた口座間の振替えによって
2.議決権、配当受領権などは証券保管振替機構からの通知によって作成される株主名簿に従って

それぞれ管理される。

なお、株券電子化の実施前に株券を証券会社等を通じて証券保管振替機構に預託した株主については、特別の手続きなしにその所有する株券が電子化される。また、株券を自ら保管している株主については、発行会社が株主名簿にもとづいて信託銀行等に自動的に特別口座を開設することによってその株券が電子化される が、売却に当たっては、株主は、証券会社等に新たに口座を開設する必要がある。

かぶり

コンクリート表面から鉄筋までの厚み(あるいは深さ)のことを「鉄筋かぶり」という。

コンクリートにひび割れ(クラック)が生じると、アルカリ性のコンクリートは酸化し、雨水や外気で鉄筋は錆びてくるが、かぶり厚が大きければ酸化によるコンクリートの劣化も鉄筋の錆びも防ぐことができる。結果、かぶり厚が大きければその分建物の寿命は延びることにもつながる。

壁紙

クロスを参照。

壁式鉄筋コンクリート構造(壁式鉄筋コンクリート造)

鉄筋コンクリート構造の一つ。

この「壁式鉄筋コンクリート構造」は、「柱」「」を設けず、基本的に「壁」だけで荷重を支えるような鉄筋コンクリート構造である。

この「壁式鉄筋コンクリート構造」には、柱・梁がないため、建物の内部空間が広く使用できるというメリットがある。
なお強度を確保するため、壁の中には梁に相当する配筋が作られている。

この「壁式鉄筋コンクリート構造」は、壁が多い中層建物に最適である。しかもコストが安く、空間が広く取れるため、3階建共同住宅などで多用されている。

壁心

建物床面積を測定する際に、壁の厚みの中心線を想定し、この中心線に囲まれた面積を「床面積」とする考え方のこと。「壁芯」と書くこともある。

この「壁心」の考え方で計算すると、壁の厚みの分が床面積に加算されるので、実際に使用可能な部分の床面積よりもやや大きな床面積となる。

建築基準法では、建物の床面積とは「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の面積」であると規定しているので、建築基準法は壁心の考え方を採用しているということができる(建築基準法施行令2条1項3号)。

なお、この「壁心」と異なる床面積の測定方法として「内法(うちのり)」がある。

障子の枠を形成する部材のこと。
上辺は「上框」、左右の辺は「たて框」、下辺は「下框」、中央の水平な部材は「なか框」という。
また障子だけでなく、ふすま、板戸、雨戸、和風の玄関戸、ガラス戸、網戸についても上下左右の辺を「框」という。

鴨居

住宅の開口部の上側にある横架材のこと。

通常は、障子・襖・引き戸・引違い戸などをはめ込む溝が2本彫られているが、溝のないもの(無目)、溝が1本のもの(一筋)などある。上部にあるのが鴨居、下部にあるのが敷居(鴫居という説もある)で、鴨という水鳥の名を付けているのは火難除けの願いからといわれている。

茅葺き屋根

茅で葺いた屋根をいう。断熱性に優れているが、耐火性に弱点があり、また定期的に葺き替えなければならない。

カラン(蛇口)

給水管の先端に取り付けて、水の流出を制御する器具。通常、取っ手を回して水量を調節する。

なお、「カラン」はオランダ語。

仮換地

土地区画整理事業において、正式な換地に先立って行なわれる換地をいう。

土地区画整理事業では、事業によって、区画を変更する前の宅地(従前の宅地)から区画を変更した後の宅地(新しい宅地)へと所有権が変更されるが(これを「換地」という)、その時期は、土地区画整理事業を行なう区域のすべてについて必要な工事が完了した時点とするのが原則である。しかし、工事に長期間を要することが多いため、工事が先に完成した地区において、仮に換地を定めて土地の利用を認めることがある。このようにして仮に換地を定めるのが仮換地である。また、仮換地された土地そのものを仮換地ということもある。

「仮換地」された宅地は、将来、そのまま正式に換地されるのが原則である。

仮差押

債権者が金銭債権を持っているとき、債務者が返済を滞納している等の事情があり、債務者の財産状況が著しく悪化していることが明らかである場合には、債権者は裁判所に対して、債務者の財産(不動産など)の売却等を一時的に禁止することを申請することができる。

裁判所がその申請に相当な理由があると認めた場合には、裁判所は債務者に対して、財産の売却等を当分の間行なわないよう命令する。この裁判所の命令を「仮差押」と呼んでいる。

債権者から見れば、「仮差押」によって債務者の財産を一時的に凍結することができることになる。

仮差押の登記

債務者の財産を一時的に凍結するための裁判所の命令を「仮差押」と呼ぶ。

この仮差押がなされた場合には、登記簿に「仮差押の登記」が記載され、取引関係者に対して、財産の処分を一時的に凍結していることが公示される。

仮処分

処分禁止の仮処分のこと。

債権者が金銭債権を持っているとき、債務者の財産状況の悪化などの事情がある場合には、裁判所は債務者に対して、財産の売却等を当分の間行なわないよう命令することができる。
この裁判所の命令を「仮差押」と呼んでいる。

しかしながら、金銭債権以外の債権については、こうした仮差押を行なうことができないので、その代わりに「処分禁止の仮処分」が用意されている。

例えば、A氏が土地をB氏に売却したが、B氏が代金を支払ったにもかかわらず、A氏が土地の登記名義をB氏に移そうとしないというケースでは、B氏が登記名義を取得しない間に、A氏がその土地を第三者に売却してしまう可能性がある。
そこでB氏は、裁判所に対して、当該土地の第三者への売却を一時的に禁止するように申請することができる。

裁判所はB氏に相当な理由があると認めたならば、A氏に対して「処分禁止の仮処分」を命令することができる。
この「処分禁止の仮処分」が行なわれると、A氏は当該土地を第三者に売却することができなくなる(もし第三者に売却したとしても、B氏がA氏に対する裁判で勝訴した場合には、第三者はその土地の取得をB氏に主張することができなくなる)。

仮使用

一般建築物は建築後いつでも使用を開始することができ、またリフォーム等の工事をしている最中にも通常の使用を続けることができる。

しかし、特殊建築物等については、その避難設備(廊下・階段・出入口・消火設備・排煙設備等)に関係する工事を行なう場合や、建物を新築する場合には、原則として建築主事から「検査済証」を交付された後でなければ、建築物の使用を開始することができないとされている(建築基準法7条の6)。

これは特殊建築物等では、防災上特に配慮が必要なので、避難設備に関係する工事が進行中の時期や、避難設備そのものがまだできていない時期には、原則として人に使用させないということである。

ただし「検査済証」の交付の前であっても、次の2つのケースでは仮に使用が許される。

1.特定行政庁が防火上・安全上支障がないと認めて承認をした場合
2.建築主が工事完了検査を申し出てから7日間が経過した場合

仮使用承認

建築工事の検査済証の交付を受ける前にその建築物を使用するために必要な承認をいう。建築基準法による制度である。

特殊建築物等であってその新築や避難施設等に関する工事を行なう場合には、検査済証の交付がなければその建物を使用することができない。ただし、安全上、防火上および避難上支障がない旨の承認を得れば、検査済証の交付前であっても当該建築物を使用することができるとされている。この場合の承認が仮使用承認である。承認は、申請によって特定行政庁が行なう。

仮登記

所有権移転登記などを行なうことが何らかの理由でできない場合に、仮に行なう登記のことを「仮登記」という。

例えば、A社がB氏に融資をした場合に「将来返済がされないときは、B氏所有の土地をA社に引き渡す」という契約を行なったとする。このとき、将来債務が返済されるかどうかは不確定であるので、所有権移転登記を行なうことは当然できない。そこで、A社はB氏所有の土地に対して仮登記を付けておく。
具体的には「所有権移転請求権仮登記、原因:売買予約、権利者:A社」という仮登記を付けておくことで、A社は確実に権利を保全できることとなる。

仮登記担保

金銭債権を返済できない場合には、物を債権者に売却する(または物をもって弁済に代える)ことを債務者が約束し、そのことを仮登記しておくことを仮登記担保という。

例えば、登記の原因を「代物弁済予約」とし、登記の目的を「所有権移転請求権仮登記」として、仮登記を行ない、これによって金銭債権を担保するということである。

このような仮登記担保は、金銭債権が弁済されない場合に、債権者が物の所有権を取得することから、債権者の暴利行為を助長する恐れがある。そこで、1979(昭和54)年4月1日に仮登記担保法が施行され、金銭債務の額を物の価額が超える場合には、債権者はその超過部分を債務者に返還する必要があるとされた。こうして現在では、債権者の暴利行為が法律上禁止されている(仮登記担保法第3条)。

過料

行政上の秩序を維持するために、行政法規上の義務違反に対して少額の金銭を徴収するという罰則のこと。行政法学では「行政上の秩序罰」として分類している。
過料は刑罰ではないので、刑法、刑事訴訟法は適用されない。

これに対して「罰金」「科料」は刑罰であり、刑法、刑事訴訟法が適用される(詳しくは財産刑へ)。

特に刑罰である「科料」と行政上の秩序罰である「過料」は混同されやすい。そのため前者を「とがりょう」、後者を「あやまちりょう」と呼んで区別することがある。

カリン

建物の内装材や家具材として使われる銘木(美しく趣がある木材)のひとつ。「花梨」。東南アジア産のマメ科の高木で、芯材は赤系統の色を呈し、硬質であるが加工しやすい。

なお、果実を利用する「カリン」はバラ科の樹木で、銘木のカリンとは樹種が異なる。

枯山水

自然の風景を石・砂・若干の植物によって象徴的に表現する庭。日本で、室町時代以降に、禅宗寺院において発達した庭園様式である。

なお、「作庭記」(日本最古の庭園技法書。11世紀後半に成立)では、枯山水は池や遣り水のないところに造る石組を指す用語として使われているが、一般的な使い方ではないとされている。

粘土を整形し焼き固めた屋根葺き材。

瓦の形状は、屋根の部位等に応じて多様である。例えば、平面を葺く厚板状の平瓦は、穏やかな曲線形の和瓦(J形瓦)、平らな平板瓦(F形瓦)、波打つS形瓦に大別される。

瓦の素材はもともと粘土であるが(粘土瓦、本瓦とも言われる)、陶器製のもの(陶器瓦)、プレスセメント製のもの(厚形スレート)、金属製のもの(金属瓦)なども用いられている。

瓦は、耐久性や防音性に優れるが、建物の上部が重くなるため、構造上の対応が必要である。また、耐震性・耐風性を確保するため、すべての瓦を確実に緊結しなければならない。

瓦葺き

瓦とは、あらかじめ互いに重なり合うような曲面の形状に作られた粘土製等の板のことである。この瓦によって屋根を覆うことを「瓦葺き」という。

瓦には、その素材によって、粘土瓦、厚型スレート瓦などがある。
粘土瓦は、粘土を焼成して成型したもの。耐久性に優れるが、他の屋根材料よりも重く、かつ吸水性が高いという欠点もある。
厚型スレート瓦は、セメントと細骨材から作られた瓦で、粘土瓦よりも軽量・安価である。

瓦の形状には、本瓦、桟瓦、S瓦、スペイン瓦、フランス瓦、波形瓦、平形瓦などの多くの種類がある。

瓦葺きの工法については、かつては瓦の下に土を入れる工法を用いていたが、現在では瓦を銅線や釘で止める乾式工法が一般的である。

瓦葺き屋根

瓦で葺いた屋根をいう。耐火性、耐久性に優れている一方、加重が大きい。

瓦は本来粘土製であるが、金属瓦、セメント瓦、ガラス瓦、コンクリート瓦等が用いられることもある。

簡易課税制度

消費税が課税される取引(これを課税取引という)に基づく売上高を「課税売上高」と呼ぶ。

前々年における課税売上高が5,000万円以下であるとき、その会社または個人事業者は、仕入れにおいて支払った消費税額の複雑な計算をしないで、次のような簡単な計算で消費税額を求めることができる。

消費税の納税額=消費税を除外した課税売上高×(1−みなし仕入率)×消費税率

このように簡単な計算方法で消費税の納税額を求める制度のことを「簡易課税制度」と呼んでいる。

この「簡易課税制度」は1989年の消費税導入に際して、仕入れに係る消費税額の計算の事務負担が大き過ぎるという批判によって導入されたものである。

上記計算で使用する「みなし仕入率」は業種ごとに、第一種事業(卸売業)90%、第二種事業(小売業)80%、第三種事業(製造業等)70%、第四種事業(その他の事業)60%、第五種事業(サービス業等) 50%と定められている。不動産業は第五種事業とされている。また、複数の事業を営む場合には、原則として消費税額によって按分してみなし仕入率が適用される。

なお、この「簡易課税制度」を選択する場合には、税務署への届出が必要である。

簡易宿泊所

宿泊営業施設のうち、宿泊場所を多数人で共用する設備構造のものをいう。「簡易宿所」とも称される。2段ベッド等を設置している施設や、スポーツ合宿所、カプセルホテル、民宿などの多くはこれに該当する。

簡易宿泊所を営業するためには、旅館業法により、都道府県知事(政令指定都市、中核市等保健所政令市では市長、特別区では区長)の許可を受ける必要がある。

また、その施設は、客室の延床面積が33平方メートル以上であること、適当な換気、採光、照明、防湿および排水の設備を有すること、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有することなどの基準を満たさなければならない。

簡易専用水道

水道事業者から給水される水道水を一旦貯水し、それを配水する方式の水道で、貯水槽の有効容量が10立方メートルを超えるものをいう。マンションや事務所ビルでよく使われている給水方法であり、施設の設置者は、定期的な掃除、点検、水質検査などを行なわなければならないほか、水質等について管理責任を負う。

簡易耐火建築物

建築基準において、主要構造部(壁、柱、床、、屋根、階段)が、準耐火構造と同等の準耐火性能を有するための技術的基準に適合し、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など、火災を遮る設備を有する建築物をいう。

この場合の技術的基準としては、外壁を耐火構造とする方法(外壁耐火型)、または、主要構造部を不燃材料とする方法(不燃構造型)についての要件が定められている。

簡易型耐火建築物は、もともと建築基準の制度上、主要構造部が準耐火構造ではないが耐火性があると認められる建築物として扱われていたが、現在は準耐火建築物の類型の一つとされ、もはや法令上は独立に定義された用語ではない。しかし通称として使用されることがある。また、準耐火建築物の法令上の定義に即して、「ロ準耐」(建築基準法第2条第9号の3ロに該当する準耐火建築物という意味)といわれることもある。

換価分割

相続における遺産分割において、分割が難しい土地や家屋を売却し、金銭に換価して分けること。

土地や家屋を正確に公平に分割できる一方、受け継いだ資産を活用できないほか、売却のための費用が発生する。

分割の方法には、換価分割のほか、現物分割、代償分割(相続人の一人が全部を相続し、他の相続人に金銭を支払う方法)がある。なお、土地や家屋の相続に際しては、分割せず共有する方法もある。

換気

建築基準法によれば、住宅の居室には、換気のために、窓その他の開口部を設けなければならない(建築基準法28条2項)。

この住宅の換気のための開口部の面積は、居室の床面積の20分の1以上でなければならないとされている。

ふすま、障子などの常時開放できるもので仕切られた2つ以上の居室は、1つの居室とみなすこととされている(建築基準法28条4項)。従って、1つの居室には必ず1つの窓が必要というわけではなく、障子で仕切られた2つの居室について1つの窓でもよいということになる。

なお、換気のための換気設備を有効に設けた場合には、上記のような広さの窓などを設ける必要はなくなる(建築基準法28条2項但書)。

換気扇

羽根を回転し、気流をつくって換気する機器。機械換気設備の一つである。

換気扇は、壁や窓に設置されるほか、レンジフード、換気ダクトなどにも用いられている。大きさや形状は用途に応じてさまざまであるが、一般的な換気扇は、四角の枠に羽根のついた回転軸を組み込み、それを電力で回す構造となっている。

環境アセスメント

事業等に伴って生じる環境影響を事前に予測・評価して、意思決定に活かすための仕組みをいう。

環境アセスメントは、次の要素から構成される。

1.意思決定の前に環境影響を調査・予測する
2.より良い意思決定のために代替案等を検討する
3.予測結果等を公開し、公衆からの意見表明を求める
4.予測結果や表明された意見を、最終的な意思決定に反映する

つまり、環境アセスメントは、意思決定の最適性(better decision)を確保する手法である。

このような仕組みを法制化したのが、環境影響評価法であるが、環境アセスメントは、この法律による手続きに限定されないより広範な仕組みであることに注意が必要である。

なお、公有水面の埋立、土地区画整理事業宅地造成事業などのうち一定の要件に該当するものは、環境影響評価法による環境アセスメントを実施しなければならない。

環境共生住宅

環境への負荷を抑えるための対策を講じた住宅のこと。エコハウスともいう。

対策の目標は、省エネルギーや再生可能エネルギーの使用、資源の再利用、廃棄物の削減などであり、具体的には、屋上緑化や雨水の再利用、太陽光・風力エネルギーの利用、ゴミの減量などが実施される。

その基準として、例えば(一財)建築環境・省エネルギー機構が定めた「環境共生住宅認定基準」があるが、この基準では、環境負荷の抑制だけでなく、バリアフリー化や室内の空気質の維持(シックハウス対策)なども要求されている。

環境権

人権の一つで、良好な環境のもとで生活を維持する権利をいう。

公害や環境保護をめぐる裁判において、法的に保護されるべき普遍的な権利として主張されることが多い。

その内容は、
1.良い環境を享受し、かつこれを支配する権利(自由権的な権利)
2.健康で快適な環境の保全を求める権利(社会権的な権利)
の2つを含むと考えられている。

しかし、判例は、環境権を根拠とした妨害排除や損害賠償の請求において、実定法上そのような権利に関する規定がなく、権利の内容が不明確であるなどとして、環境権を私法上の権利としては認めていない。新たな権利を認知しなくても、人格権に基づき不利益等を救済できる場合が多いことがその理由の一つであるとされている。

一方、環境権を、環境の享受に影響を及ぼす行為等について私人が関与することを保障する権利(手続き的権利)であるとし、私法上の権利性を重視しない考え方もある。

なお国際的には、環境権とは、人間環境宣言(国連人間環境会議、1972年ストックホルム)の第1原則に示された「人は、その生活において尊厳と福祉を保つに足る環境で、自由、平等及び十分な生活水準を享受する基本的権利を有する」という考え方であるとされている。

環境省

中央省庁のひとつで、地球環境の保全、公害の防止、自然環境の保護などを任務とする組織。廃棄物処理や原子力の安全確保に関する行政も所管している。

前身は、1971年に公害防止行政を一体的に担うために設置された環境庁である。その後、2001年に廃棄物行政を加えて環境省が発足した。さらに、地球環境問題への対応や原子力災害の防止のための業務を加えて現在に至っている。

省エネルギーの推進、循環型社会の形成などのための事業に対する支援も行なっていて、たとえばエコハウスモデル事業への補助金交付もそのひとつである。

環境税

環境への負荷に対して課する税をいう。

気候変動対策において、化石燃料等に対する課税によって温室効果ガスの排出量を抑制する効果があるとされ、「炭素税」等の導入について議論されているが、これも環境税である。

環境税の経済理論的な背景として、「ピグー税」と「ボーモル・オーツ税」という考え方がある。

1.ピグー税
経済活動に伴う環境負荷などについては、その影響について負担がなされていないため、市場において価格調整メカニズムが適切に機能しないとされる。そこで、課税によって負担を求めることによって市場機能の適正化を図ることができるという考え方がある。このような考え方に基づく政策を外部不経済の内部化といい、そのために課する税がピグー税である。

2.ボーモル・オーツ税
ピグー税を導入することは、外部不経済を具体的に計測することが難しいなど、現実的には極めて困難である。そこで、ピグー税に代わって、汚染物質の排出に対して課税することによって生産コストに介入し、排出量をコントロールするという手法が提案された。そのような役割を果たす税を、ボーモル・オーツ税という。現在導入が議論されている環境税は、このボーモル・オーツ税の性格が強い。

環境都市

都市ビジョンの一つで、環境価値の創造によって形成される持続可能な都市をいう。

環境価値を創造するには、低炭素、循環、生物多様性、水・大気環境などの価値要素を高めることが必要であるが、そのための取り組みを戦略的に展開することによって持続可能な魅力ある都市を形作ることができるとする。例えば、再生可能エネルギーの導入、住宅・建築物の導入によるゼロエミッション化、電気自動車等の大量導入、情報通信技術を活用したエネルギーマネジメント、集約型都市構造への転換と公共交通の整備などの総合化が考えられている。
環境都市の実現に向けた取り組みは、イノベーションを引き起こすこと、開発した技術を包括的なシステムとして発展途上国へ輸出することなど、経済的な戦略としても有効であるとされ、政府は、環境都市の形成のための施策を集中的に投入する「環境未来都市」を選定している。

なお、環境都市は、環境価値だけでなく、社会的価値(健康、ソーシャルキャピタルなど)や経済的価値(雇用、新産業など)の創造をも担うという考え方もある。

関係人(土地収用における~)

収用について利害関係を有する者であって、「土地所有者」以外のほぼすべての利害関係者を指す。

土地を収用する場合、関係人は、「土地に関する関係人」と「物件に関する関係人」に分かれる。「土地に関する関係人」は、土地に関し、地上権賃借権抵当権仮登記上の権利、登記された買戻し権、登記された差押債権、登記された仮差押債権を有するものである。

「物件に関する関係人」は、物件に関して、所有権や、土地に関する関係人と同様の権利を有するものである。物件に関する関係人では、建物所有者、工作物所有者、立木所有者、借家人等も含まれることに注意したい。

また土地ではなく、物件のみの収用、地上権等の権利のみの収用なども行なわれることがある。この場合の関係人も、土地を収用する場合と同様である。

なお、関係人に含まれないが、意見書を提出できる者として「準関係人」が定められている(詳しくは「準関係人」へ)。

還元利回り

資産の収益から資産価格を算出する際に用いる利率をいう。

キャップレート(Cap Rate)」とも呼ばれる。
資産価値は、発生するであろう収益額を現在価値に割り戻して総計した額に等しいと考えられているが、このとき現在価値に割り戻すために用いる利率が還元利回りである。

その値は、資産の種類や条件によって異なるが、おおむね一般的住宅では5~7%、事業用は8~10%が目安とされている。逆に、資産価格と収益額が与えられれば還元利回りを求めることができるが、利回りが高いほど収益性が高いと判断してよい。

観光地区

特別用途地区の一つ。
温泉その他の観光資源のある地域で、宿泊施設などを建築しやすくし、宿泊施設などに障害となる業種の進出を規制する地区である。市町村が指定する。

乾式壁

水を用いないで施工した建物の壁をいう。代表例は、石膏ボードによって造られた高層マンションにおける隣の住戸との境の壁(戸境壁)である。軽量化等に対応するため、通常、二枚の石膏ボードの間に断熱材・吸音材を入れて施工されている。堅牢性や遮音性を確保する必要がある。

一方、鉄筋コンクリートやモルタルなどでできたものを湿式壁という。

監視区域

地価が急激に上昇し、またはその恐れがある区域において、適正な土地利用の確保が困難となる恐れがあるときは、知事は監視区域を指定することが可能となる(国土利用計画法第27条の6)。

監視区域に指定されると、都道府県の規則によって定められた面積以上の土地を取引しようとする者は、あらかじめ知事に届出を行なうことが必要となる(国土利用計画法27条の7)。
知事は6週間以内に審査を終え、必要な場合には勧告を行なうことができる。取引をしようとする者がこの勧告に従わないときは、知事はその者の氏名・商号等を公表することができる(国土利用計画法第27条の8)。

監視区域はかつてバブル期に全国の都市部で数多く指定され、届出が必要な面積は都道府県規則により100平方メートルとされることが多かった。

緩衝材

モノの衝突を和らげるために用いる資材。ゴム、ばね、合成樹脂、重金属、密閉気泡など、弾力性のある物質が使われる。その用途は幅広い。

たとえば建物には、下地材、目地材、配管保護材、不陸調整材などが使われているが、これらはすべて緩衝材でもある。また、防水材や断熱材が緩衝材を兼ねる場合もある。

間接照明

人工照明の方式には大別して直接照明と間接照明があり、間接照明は壁や天井に光を反射させるもの。

直接光と比べ間接光は柔らかく、光が織りなす陰の演出でムーディな空間演出を可能にする。

換地

土地区画整理事業によって行なう土地の所有権の変更をいう。

土地区画整理事業においては、土地の区画についてその位置等を変更する必要があるが、そのために行なわれる、区画を変更する前の宅地(従前の宅地)から区画を変更した後の宅地(新しい宅地)への土地の所有権の変更手続が「換地」である。

宅地所有者から見れば、いったん従来の宅地を失い、それと同時に新しい宅地を与えられるということである。また、こうして宅地所有者に与えられる新しい宅地そのものを「換地」と呼ぶこともある。

換地計画

土地区画整理事業において、事業施行地区内の土地や土地に関する権利が、事業施行後にどのような姿となるかを定める計画をいう。

換地計画では、原則的には、事業前の各宅地に対して、事業によって整備された換地をそれぞれ交付するように定める。そのほか、換地に当たっての不均衡に対応するための金銭(清算金)の徴収・交付、公共用地の帰属、事業費に充てるための保留地などについても定められる。

換地計画において換地を定める場合には、原則として、換地および従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならないとされている(照応原則)。また、換地計画を定めようとする場合には、2週間公衆の縦覧に供するなどの手続きが必要である。

換地計画の効果は、工事が完了した後になされる換地処分によって生じるのが原則である。従って、事業完了前に換地予定地を利用する場合には、その土地を仮換地に指定して利用することとなる。

換地処分

土地区画整理事業において行なわれる、土地の権利変動等の効果を生じる行政処分をいう。これによって換地は従前の宅地とみなされる。

権利変動などの内容は換地計画に定められているが、換地処分によってそれが法的な効果として確定することとなる。

換地処分は原則として工事が完了した後に遅滞なく行なわれ、公告される。そして、公告の翌日から、従前の宅地の所有権等は、換地計画において定められた換地の所有権等に変わる。また、換地処分による土地や建物の変動は、事業施行者によって登記される。

なお、換地処分は、土地改良事業においても行なわれることがある。

鑑定評価

不動産の経済価値を判定し、価額で表示すること。その業務は、不動産鑑定士の独占とされている。

鑑定は不動産鑑定評価基準に従って実施されるが、その方法は原則として、

1.原価法(不動産の再調達原価に着目して価格を求める方法、積算価格を算出)、2.取引事例比較法(類似の不動産の取引事例価格に着目して価格を求める方法、比準価格を算出)、3.収益還元法(不動産が将来生み出す収益に着目して価格を求める方法、収益価格を算出)

の3つを併用することとされている。

なお、収益還元法には、純利益を一定率で割り戻して直接に現在価値を求める方法(直接還元法)と、保有期間中に得られる純利益と期間満了後の売却によって得られる予想価格を現在価格に割り戻して合算する方法(DCF法、Discounted Cash Flow Methodの略)があるが、不動産の証券化のための評価は原則としてDCF法が適用される。

関東間

主に関東で用いられてきた、日本の伝統家屋の基本モジュールのこと。京間よりもやや狭い。「田舎間」とも称される。

日本の伝統家屋を設計する際に基本となる柱の間隔(柱の中心から柱の中心までの距離)のことを「1間(いっけん)」という。関東間とは、この1間を「6尺」(約181.2cm)とする家屋のことである。

(注)日本古来の度量衡である尺貫法では、1尺は30.303cm、1寸は1尺の10分の1、1分は1尺の100分の1である。なお、尺の長さは1891(明治24)年の度量衡法で定められたが、1958(昭和33)年に公式の単位としては廃止されている。

監督処分

行政機関が法律にもとづき営業等の行為を規制している場合に、法令違反などがあったときに行政機関が発する命令等をいう。

例えば、宅地建物取引業者に対する監督処分しては、違反行為の内容や程度に応じて、指示、業務の停止命令、免許の取消しがある。
あるいは、宅地建物取引士に対しては、指示、事務の禁止、登録の消除が適用される。処分は法律の規定の範囲でしか行なうことができないが、処分に従わないときには罰則が適用される。また、監督処分をしようとするときには、原則として、聴聞の手続きを行なわなければならない。

なお、行政機関が行なう指導、助言、勧告、検査などは、監督処分ではない。

還付

源泉徴収された所得税額が確定した所得税額を上回る場合に、その差額を納税者に返還すること。返還する金銭を「還付金」という。

所得税の算定に当たっては各種の控除が認められているが、源泉徴収の際に控除されていないものがある場合には、申告によって還付を受けることができる。この場合、扶養控除、社会保険料控除などは年末調整で還付されるが、雑損控除、医療費控除などによる還付については、確定申告が必要である。

また、住宅ローン控除による還付を受けるためには、控除の初年度は確定申告しなければならないが、その後は年末調整によっても還付される。

官民境界査定

公共用地などの行政財産とこれに隣接する民有地との境界を確定すること。
確定のためには、行政財産の管理者と隣接民有地の所有者とが立ち会って協議しなければならない。また、協議が不調の場合には、訴訟などによって手続きを進めることになる。

なお、行政財産の管理者に代わって土地家屋調査士などが立会い・協議に当たる、公共嘱託制度がある。

管理委託契約

管理組合がマンション管理会社に対して、分譲マンションの管理を委託する契約のこと。
このとき、マンション管理会社がマンション管理法に定める「マンション管理業者」であるならば、次のことを行なう義務がある。

1.マンション管理会社は、管理委託契約の締結前に一定の重要事項を説明しなければならない(マンション管理適正化法第72条)。
2.マンション管理会社は、管理委託契約を締結するときに、一定の事項を記載した書面(通常は管理委託契約書)を遅滞なく交付しなければならない(マンション管理適正化法第73条)。

管理会社

不動産所有者の委託により、その所有する不動産の管理業務を行なう企業をいう。

管理業務の内容は、大きく分けて、設備の保守・点検、防火・警備など(作業の実施)、賃料や共益費の徴収、諸料金の支払いなど(経理事務)、テナントの募集、賃料の改定、修繕計画の立案など(経営的業務)がある。このように幅広い業務があり、そのための技術も多様であることから、その一部を受託することが多い。

なお、管理会社は、管理の対象となる不動産の性格に応じて、マンション管理業、ビル管理業、賃貸住宅管理業に大別できる。このうちマンション管理業については、法律に基づき登録する義務がある。また、賃貸住宅管理業については、国土交通省の告示による登録制度がある。

管理規約の変更

分譲マンションなどの区分所有建物では、管理組合は、区分所有者どうしの関係を定めるルールである管理規約を設定する。

この管理規約を設定するためには、集会における特別決議(すなわち区分所有者数の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上の賛成)で可決する必要がある。

このようにして特別多数により決議されて設定された管理規約であっても、時代の変化や入居者の状況の変化に応じて、内容を変更する必要に迫られる場合がある。特に最近ではペット飼育が一般化しつつあるため、管理規約の変更が議論されることが多くなっている。

このような管理規約の変更について、区分所有法では次の2つの要件を定めている。

1.管理規約を変更するには、区分所有者数および議決権の各4分の3以上の多数によって集会で決議する必要がある(区分所有法第31条)。
2.管理規約を変更しようとする場合に、その管理規約の変更が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」は、その一部の区分所有者の承諾を得なければ、管理規約を変更することができない(区分所有法第31条)。

まず上記1.のように、管理規約の変更には4分の3以上の特別多数の賛成が必要である。
また、たとえ4分の3以上の賛成を得ることができたとしても、その管理規約の変更により、一部の区分所有者だけが不利益を受ける可能性があるときは、上記2.によりその不利益を受けるであろう区分所有者の承諾を得なければ、管理規約を変更することはできない。

このように厳しい要件が定められているので、管理規約の変更には困難が伴うことが多い。
なお使用細則の変更については、原則として過半数の賛成で行なうことができるが、建物および敷地の管理に関する基本的な事項に関わる部分の変更には、4分の3以上の賛成が必要と考えられている(詳しくは使用細則へ)。

管理規約(区分所有法による~)

区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づいて定める規約。区分所有法では単に「規約」と表記しているが、一般的に「管理規約」と呼ばれている。

建物敷地、附属施設の管理・使用に関する区分所有者相互間の事項が規定されている。また、区分所有者全員の利害に関係しない一部共用部に関する事項については、共用する区分所有者の規約で定めることもできる。

管理規約を定める場合には、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならないとされる。また、規約によって区分所有者以外の者の権利を害することはできない。

管理規約の設定、変更、廃止は、区分所有者の集会において、区分所有者の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上の決議(特別決議)によって決する。

管理規約に定める事項については特に定めはないが、国土交通省マンション標準管理規約を公表し、参考に供している。マンション標準管理規約は、単棟型、団地型、複合用途型に分けて示されており、管理規約に定めるべきとされる主要な事項は次のとおりである。

1.敷地、建物、付属施設の範囲
2.共用部分の範囲
3.敷地・付属施設・共用部分に関する各区分所有者の持つ共有持分の割合
4.専用使用権の範囲
5.敷地利用権と専有部分の分離処分の可否
6.使用細則(使用に関する詳細な規則)の設定
7.集会、管理組合、理事会、会計等に関する事項

なお、管理規約は集会で設定されるべきものであるが、マンション分譲業者が最初にマンションの全部を所有している場合には、次の事項に限っては、公正証書で定めることによって、集会を経ずに管理規約を設定することができるとされている。

1.規約共用部分
2.規約敷地
3.専有部分と敷地利用権の分離処分の可否
4.敷地利用権の共有持分の割合

管理協定(雨水貯留施設の~)

民間が所有する雨水貯留施設について、それを公共下水道管理者が管理するために締結される協定をいう。下水道法で定められている制度である。

管理協定は、著しい浸水被害が発生するおそれがある区域であって、公共下水道の整備のみによっては浸水被害の防止が難しい区域(浸水被害対策区域、条例で指定される)の中に存するまたは建設予定の雨水貯留施設を対象として締結され、公示される。また、その効力は公示後に当該施設の所有者等になった者にも及ぶ(承継効)。

管理協定の承継効は、その対象となる雨水貯留施設が含まれる宅地建物についての法令上の制限であり、宅地建物取引業法重要事項説明の対象となっている。

監理技術者

一定の建設工事において、工事現場に配置され、施工の技術上の管理をつかさどる技術者。配置が必要なのは、下請契約の請負代金総額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)の建設工事である。また、多くの場合、専任で配置しなければならない。

監理技術者が担う業務は、その建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理等およびその施工に従事する者の技術上の指導監督である。

監理技術者は、監理技術者資格者証の交付を受けている者であって、国土交通大臣の登録を受けた機関による講習を受講した者でなければならない。監理技術者資格者証は、建設業の種類ごとに定められた一定の資格を有する者に対して交付される。たとえば、建築一式工事については、一級建築施工管理技士または一級建築士の資格が必要である。

管理業務主任者

マンション管理法にもとづき、国土交通大臣が毎年実施する「管理業務主任者試験」に合格し、管理事務に関し2年以上の実務経験またはそれと同等以上の能力を有すると認められて、国土交通大臣の登録を受け、管理業務主任者証の交付を受けた者のことである(マンション管理適正化法第57条、第58条、第59条、第2条)。

マンション管理業者は、その事務所ごとに、30の管理組合の事務を委託されるごとに1名の割合で、専任の管理業務主任者を置く義務がある(マンション管理適正化法第56条)。

例えば、あるマンション管理業者が2つの事務所を持ち、A事務所では40組合、B事務所では10組合の事務の委託を受けていたとすれば、A事務所で2名、B事務所で1名、計3名の専任の管理業務主任者を置く必要がある。

また、管理組合との間で、管理委託契約を締結する際には、マンション管理業者は、契約締結前の重要事項説明を管理業務主任者に行なわせる義務がある(マンション管理適正化法第72条)。また契約成立時に交付する書面(通常は管理委託契約書を指す)には、管理業務主任者が記名押印する必要がある(マンション管理適正化法第73条)。

さらにマンション管理業者は毎年、管理組合等に報告を行なう義務があるが、この際にも管理業務主任者によって報告を行なう必要がある(マンション管理適正化法第77条)。

管理組合

分譲マンションなどの区分所有建物において、区分所有者建物および敷地等の管理を行なうために区分所有法にもとづいて結成する団体のこと(ただし区分所有法上では「管理組合」という言葉を使用せず、「区分所有者の団体」と呼んでいる)。

区分所有建物においては、区分所有者は区分所有法により、当然にこの「管理組合」に加入することとされているので、区分所有者の任意で管理組合から脱退することはできない(区分所有法第3条)。

このような管理組合は、集会(いわゆる管理組合の総会)を開き、管理に関するさまざまな事項を議決し、管理規約を定める。

また管理組合の通常業務を執行するために、管理規約にもとづいて複数の理事が選出され、この理事によって構成される理事会が業務を行なう。

また管理組合は、法人になることができる。法人になった管理組合は「管理組合法人」と呼ばれる。

管理組合総会

集会ともいう。

分譲マンションのような区分所有建物において、建物および敷地の管理に関する事項を決定するために、少なくとも年に1回以上開催される区分所有者の集会のこと。

区分所有建物では、区分所有者は管理組合の構成員となる。この区分所有者の全員が参加する意思決定機関が「集会」である。一般的には「管理組合総会」「管理組合集会」「総会」とも呼ばれるが、区分所有法では「集会」という名称を使用している。

区分所有法では、「管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない」と定めている(同法第34条第1項・第2項)。ここでいう管理者とは通常は、管理組合の理事長のことである。また年に1回以上定期的に開催される集会は、一般的には「通常総会」と呼ばれている。

このほかに、特定の議案を審議するために区分所有者の一定数以上の請求により臨時的に集会を開催することも可能であり、こうした集会は「臨時総会」と呼ばれている(区分所有法第34条第3項から第5項)。

集会を開催する場合、管理者(理事長)は、開催日より1週間以上前に、開催日時・開催場所・議案の概要を各区分所有者に通知する必要がある(区分所有法第35条)。ただし区分所有者全員が同意した場合に限り、こうした招集手続を省略することも可能である(区分所有法第36条)。

集会が開催されると、原則として管理者(理事長)が議長となり、あらかじめ通知された議案が審議される。議案を議決する方法としては、普通決議特別決議がある。

区分所有者は集会に自ら出席して、議案を審議するのが原則であるが、出席できない場合には、書面によって議決を行なうことができ、また代理人を選任して代理人を出席させることも可能である(区分所有法第39条第2項)。

書面による場合には、あらかじめ各議案についての賛成・反対の意見を表明した書面(議決権行使書という)を、管理者(理事長)に提出しておく。また代理人を選任する場合には、その代理人を選任したことを証明するための書面(委任状)を管理者(理事長)に提出する。

集会の議事の内容については、議長が議事録を作成しなければならない(区分所有法第42条)。この議事録は管理者(理事長)が保管し、関係者の請求があった時、管理者はいつでもこの議事録を閲覧させる必要がある(区分所有法第42条・第33条)。

このように集会は、区分所有者の最高の意思決定機関であるが、日常的な管理組合の運営については集会の下部機関として管理規約にもとづき「理事会」が組織されており、さまざまな業務を執行している。

管理組合法人(区分所有法における~)

区分所有建物管理組合のうち、法人格を有するものをいう。

管理組合は、集会特別決議区分所有者数および議決権の各4分の3以上)により、管理組合法人となることができるとされ、その名称に必ず「管理組合法人」という文字を使用し、その名称と事務所所在地、理事の住所氏名等を登記所に登記することが必要がある。

管理組合法人の業務執行機関は理事で、管理組合法人を代表する。管理組合の理事長が管理組合法人の理事に就任することが通例である。

管理者

管理者とは、分譲マンションなどの区分所有建物において、区分所有者全員の代表者として、建物および敷地等の管理を実行する者のことである。

通常の場合、管理組合理事長がこの「管理者」である。マンション管理会社はここでいう「管理者」ではない(ただし管理者は必ずしも管理組合の理事長である必要はなく、区分所有者以外の第三者でもよい)。

管理者は、通常の場合、管理規約の定めに従って、管理組合の理事会において、理事の互選により選ばれる(ただし区分所有法(第25条)上は別の選任方法でもよい)。

管理者は、区分所有者全員の代表者として、集会で決議された事項を実行し、また管理規約において与えられた職務権限を行使することができる(区分所有法第26条)。

管理者の職務としては次のものを挙げることができる。

1.集会(管理組合の総会)の招集・議事運営・議事録作成 (区分所有法第34条・第41条・第42条)
2.管理規約の保管と閲覧への対応(区分所有法第33条)
3.義務違反者に対する訴訟の提起(区分所有法第57条から第60条)
4.そのほか管理規約・使用細則で管理者の職務とされた事項(理事会の運営・日常的な業務の執行など)

管理者管理方式(マンションにおける)

マンションの管理をマンション管理組合以外の第三者が行なう仕組みをいう。

マンションの管理は、一般的には、区分所有者管理組合を組織し、管理の実務は管理組合が管理会社に委託する方法が採用されている。しかし、多様な居住者の合意形成が困難であったり、居住者の高齢化や住戸の賃貸化などによって管理組合の運営が困難となったり、管理組合の役員に過重な負担がかかるなど、管理組合がマンションの管理に責任を負う方法が、常に円滑に機能するとは限らないという実態がある。そこで、管理組合以外の者が管理責任を担う方法が提案されている。

提案されている方法は、大きく2つある。

1.建物の区分所有等に関する法律に定められている管理者(管理組合が管理する場合は、通常、理事長が管理者とされる)として、区分所有者以外の第三者を選任して管理を委任する方法

2.区分所有者以外の第三者にマンションを信託して、その信託受託者が管理に当たる方法

この両方の方法を総称して管理者管理方式という場合もあるが、狭義には、1.の方法のみを指すこともある。

マンション管理の方法をめぐっては、管理組合や管理者管理方式のあり方を含めて、区分所有者、マンション管理業者、マンション販売業者、マンション管理士などの関係者の意見がさまざまに錯綜しているのが現状である。

管理所有(マンションにおける~)

マンションの共用部分を、特定の者が管理することをいう。
一般に共用部分の管理は区分所有者が共同で行なうが、マンション管理規約で定めることによって共用部分の管理をマンション管理業者等に委ねることができ、管理所有はそのための方法である。従って、共用部分の所有者(管理所有者)は、それを区分所有者全体の利益のために管理しなければならない。

共用部分の所有について権利の登記はできず、管理所有者が共用部分の重大変更行為などを行う場合には管理組合集会の議決等を要する。また、管理所有されている共用部分の管理費用は区分所有者が負担することになる。

管理受託契約

賃貸住宅の管理業務を受託する契約で、賃貸する住宅の所有者と賃貸住宅管理業者とのあいだで締結される。

管理受託契約には、業務の内容・実施方法、費用、再委託、免責などに関する事項が記載される。賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結する前に、それらの事項(重要事項)を、業務を委託する住宅の所有者に書面を交付して説明しなければならない。

管理受託方式

賃貸住宅管理業の実施方法の一つで、事業者が、賃貸住宅の所有者からその住宅の維持保全や家賃等の管理の業務を受託し、賃借人との賃貸借契約は賃貸住宅の所有者が自ら締結する方法。この場合、賃借人と賃貸住宅管理業者との間には契約関係は存在しない。

なお、賃貸住宅管理業の実施方法には、管理受託方式のほか、サブリース方式がある。

管理費(賃貸物件の~)

賃貸マンション・アパート、貸家において、借主が貸主に対して毎月支払う金銭であって、賃貸物件の管理のために必要とされる費用のこと。
共益費」と呼ばれることもある。

管理費(分譲マンションの~)

分譲マンションにおいて、区分所有者管理組合に対して毎月納入する金銭であって、共用部分建物敷地などの管理に要する経費に当てるために消費される金銭のこと。

具体的には、管理会社に対する管理委託費や管理組合の運営費用などの経費に充当される。

管理不全建物管理命令

所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利または法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合に、その建物について管理の必要性があるとき、裁判所が、管理人(管理不全建物管理人)を選任し、その建物の管理を命令する処分。民法の改正によって創設された制度である(2023年4月1日施行)。土地についても類似の制度(管理不全土地管理命令)がある。

管理不全建物によって利益侵害が生じ、または生じる恐れがある場合は、物権的請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権に基づいて訴えを提起し、判決を得て侵害排除のための強制執行をする仕組みがある。しかし、これらの仕組みは、継続的な管理ができない、適時適切な管理措置を講じるのが困難などの限界がある。管理不全建物管理命令は、その限界に対応するべく創設された制度である。

管理不全建物管理命令は、管理不全建物の利害関係人の請求によって、裁判所が、i)所有者による建物の管理が不適当であることによって、他人の権利・法的利益が侵害され又はその恐れがあること、ii)建物の管理状況等に照らし、管理人による管理の必要性が認められること、の両方を認めた場合に決定される。その効力は、管理不全建物のほか、建物にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)にも及ぶ。

管理不全建物建物管理人は、管理不全建物等を管理・処分する権限を有するが、訴訟の当事者にはなれない。管理のための保存行為や建物等の性質を変えない利用・改良行為は自身の判断で行なえるが、これらの範囲を超える行為(例えば建物の取り壊し)をするには、裁判所の許可が必要である。裁判所は、建物の処分を許可するには、その所有者の同意がなければならない。

また、管理不全建物管理人は、所有者に対して善良な管理者の注意義務を、共有持分に係る管理人は、共有者全員に対して誠実かつ公平な権限行使義務を負う。

なお、区分所有建物については、管理不全建物管理命令は適用されない。

管理不全土地管理命令

所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合に、その土地について管理の必要性があるとき、裁判所が、管理人(管理不全土地管理人)を選任し、その土地の管理を命令する処分。民法の改正によって創設された制度である(2023年4月1日施行)。

管理不全土地によって利益侵害が生じ、又は生じる恐れがある場合は、物権的請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権に基づいて訴えを提起し、判決を得て侵害排除のための強制執行をする仕組みがある。しかし、これらの仕組みは、継続的な管理ができない、適時適切な管理措置を講じるのが困難などの限界がある。管理不全土地管理命令は、その限界に対応するべく創設された制度である。

管理不全土地管理命令は、管理不全土地の利害関係人の請求によって、裁判所が、i)所有者による土地の管理が不適当であることによって、他人の権利・法的利益が侵害されまたはその恐れがあること、ii)土地の管理状況等に照らし、管理人による管理の必要性が認められること、の両方を認めた場合に決定される。その効力は、管理不全土地のほか、土地にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)にも及ぶ。

管理不全土地管理人は、管理不全土地等を管理・処分する権限を有するが、訴訟の当事者にはなれない。管理のための保存行為や土地等の性質を変えない利用・改良行為は自身の判断で行えるが、これらの範囲を超える行為(例えば売却)をするには、裁判所の許可が必要である。裁判所は、土地の処分を許可するには、その所有者の同意がなければならない。

また、管理不全土地管理人は、所有者に対して善良な管理者の注意義務を、共有持分に係る管理人は、共有者全員に対して誠実かつ公平な権限行使義務を負う。

なお、建物についても類似の制度(管理不全建物管理命令)がある。

カーキ色

茶色味のあるオリーブ色。英語のkhaki。色合いには幅があり、黄土色、くすんだ黄褐色などもカーキ色とされる。汚れが目立たないため、軍服の色としてよく使われている。

なお、カーキは、ヒンディー語で土埃を意味する言葉で、その色をイギリス軍が軍服に採用し、色の名前として英語に取り入れられて一般化した。

カーシェアリング

複数の者が自動車を共同で使用することをいう。英語のcarsharing。

利用する者をあらかじめ特定または登録し、一定の場所でその者が自動車を借り、一定の時間後に一定の場所に返却する方法で行なわれるのが一般的である。レンタカーは、不特定の利用者に自動車を貸し出す営利事業として実施されているのに対して、カーシェアリングは、特定の者が共同で利用することに特徴がある。

利用者の資格、利用する自動車の種類、利用料金、貸出・返却の場所などはさまざまであるが、そのルールは、短時間の利用にも対応するべく定められている。

カーテン

窓に掛ける布や膜。日照を遮ったり、部屋を装飾するために使われ、一般に、開閉できる。部屋の仕切りとして使うものも含む。英語のcurtain。

目的、材質、開閉方式などによって選択することになるが、主なものとして、厚手の織物でできたドレープカーテン、薄地で模様のあるレースカーテン、パネルを重ねたブラインド、布を巻き上げるロールスクリーンがある。

カーテンウォール

高層ビルや高層マンションにおいて、建築物自身の軽量化を実現し、地震の際にガラスが飛散することを防止するために開発された非常に軽量な外壁のこと。

通常の高層建築では鉄骨鉄筋コンクリート構造を採用し、外壁が荷重を支え、かつ地震力や風圧力に対抗する役割を有しているが、高層化が進むと、外壁自体の重さが課題となった。また高層建築で柔構造(地震の揺れに抵抗せずにしなって地震力を吸収するような建築構造)が採用されると、地震の際に壁面の変形によりガラスが飛散することが問題となった。

こうした問題を解消するために、建築物の主要構造を柱ととし、外壁は構造体に張り架けただけのものとし、かつ外壁をウロコ状に配置して建物のしなりによる歪みの影響をごく小さくするという工法が開発された。

この工法による外壁のことをカーテンウォールと呼ぶ。またカーテンウォールを採用すると、外壁施工の際に建物外部に足場を組む必要がないため、施工しやすいという長所もある。

わが国では初期の代表例としては、霞ヶ関三井ビルのアルミカーテンウォールが挙げられる。
その後、さらに改良を加えたハニカムアルミパネルや、ガラスカーテンウォール、チタンパネル、セラミックパネル、PCカーテンウォール(=プレキャストコンクリートカーテンウォール)などのさまざまな製品が登場している。

カーテンレールボックス

一般にはカーテンボックスという。

カーテンをスムーズに開閉するためのレールやカーテンを吊すフックをカバーするための箱状のもの。天井に埋め込んだり、窓枠上部に取り付けたりする。

カーペット

床に敷く厚手の織物。英語のCarpetで、「絨毯」は同義語。

カーペットは、織り方や繊維素材によって多数の種類がある。織り方は、トルコ絨毯、ペルシャ絨毯、中国緞通のような手織の絨毯、ウィルトン織、ジャガード織のような機械織によるカーペット、タフテッド、フックドラグのようなパイル植込によるカーペットなどに分類できる。繊維素材としては、羊毛、木綿のような天然繊維のほか、化学繊維も使われている。

なお、敷物としては、カーペットのほか「ラグ」があるが、カーペットは床のほぼ全面を覆うのに対して、ラグは小型で移動可能なものを指す。

カーボンニュートラル

人間活動において、二酸化炭素の排出と吸収が相殺されてゼロであることをいう。

例えば、植物のからだは空気中の二酸化炭素が固定化されたものだから、その燃焼(バイオマス燃料の利用)によって二酸化炭素が排出されてもカーボンニュートラルである。また、人間活動に伴う二酸化炭素の排出量を、自然エネルギーを導入して相殺することもカーボンニュートラルであると考えられる。

カーボンニュートラルは、パリ協定(2015年)で「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収を均衡する」旨が示され、また、多くの国において環境政策の長期的な目標とされている。

日本も、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を設定し、そのために、産業・民生・運輸の各部門でエネルギーの脱炭素化 (エネルギー転換)や徹底した省エネルギー化を推進することとされている。省エネルギー住宅基準を設定して、基準適合を求める取り組みなども、カーボンニュートラルの実現に向けた政策の一つである。

カーポート

屋根と柱のみで壁がない簡易な自動車車庫をいう。英語のCarport。

カーポートは、車庫と違い建物ではないが、青空駐車場と違って雨を避けることができる。

街区

市街地を構成する単位で、街路などによって区画され共通の空間特性を帯びる一団の区域をいう。都市計画景観計画、市街地再開発計画などにおいて空間の特性等を把握する上での基本単位とされることが多い。

不動産評価や不動産開発においても、個別の土地や建物だけでなく、周辺の空間特性、社会的環境などを十分に把握・評価することが重要であるが、街区はその際の基本的な単位となる。

なお、住居表示において街区方式を採用する場合には、街区は「市町村内の町又は字の名称並びに当該町又は字の区域を道路、鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川、水路等によって区画した場合におけるその区画された地域」(住居表示に関する法律)と定義され、たとえば◯◯町A丁目B番C号とするときのB番が街区符号である。また、街区符号で示されたほとんどの区域については、その位置座標がデータベース(街区レベル位置参照情報)で提供され、GISで空間的な分析ができるようになっている。ただし、街区符号で示された区域と現実の街区とが一致するとは限らない。

外構

建物の外に設ける工作物

門、塀・垣根、庭木などが該当し、敷地境界を形づくるとともに、建物の壁面などと一体となって敷地の景観や雰囲気を形成する。

なお、「外構」と「エクステリア」とは同じ意味である。

崖線

崖地の連なり。緑が連続し、湧水や豊かな動植物生態が残っている場合が多い。

傾斜地マンションの建設などによって、崖地の緑等の喪失、崖線の分断などが進んでいることから、崖線の保全・活用のための取り組みが必要だと考えられている。例えば、国分寺崖線(東京都)の保全のために、条例で地区を指定し、建築構造の制限、色彩の配慮、条例制限との適合性審査のための計画の届出などを定めた例(世田谷区国分寺崖線保全整備条例)もある。

外皮熱性能

建築物のエネルギー消費性能を評価するときの評価指標のひとつで、室内外の温度差による熱損失量をいう。この数値が小さいほど省エネの程度は大きい。

非住宅建築物については、屋内周囲空間(外気に接する壁から5m以内の屋内空間、屋根直下階の屋内空間および外気に接する床直上の屋内空間、「ペリメータゾーン」という)の単位ペリメータゾーン床面積当たり年間熱負荷(単位は、メガジュール/平方メートル・年、「PAL*」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、用途および地域区分に応じて基準とする数値を調整する。
住宅については、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(外皮面積・単位温度当たりの熱損失量で、単位は、ワット/平方メートル・度、「UA値」という)および冷房期(一日の最高気温が32度以上となる期間)の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの日射量に対する日射熱取得量の割合で、「ηA値」という)を算定する。これを基準として用いる場合には、地域の区分に応じて基準とする数値を調整する。

その具体的な算定方法は、国土交通大臣が定めるとされている。

なお、エネルギー消費性能の基準として外皮熱性能が用いられるのは、(1)住宅に関する省エネ基準、および、(2)全ての建物に関する誘導基準においてである。

外壁塗装

建物の外壁を保護するための塗装。外壁は、雨、大気浮遊物、紫外線などに曝されることによって劣化するが、その進行を抑える役割を果たす。

外壁塗装は、塗った塗料そのものが劣化するため、適時に再塗装する必要がある。この場合、塗装対象の確定(外壁以外にベランダ床、雨どいなどを含めるかどうか等)、塗料の選択(下地に適しているか等)などによく注意しなければならない。

外壁の後退距離

第一種第二種低層住居専用地域では、道路や隣地との境界線から一定の距離だけ、外壁を後退させなければならない場合がある。これを「外壁の後退距離」という。

この「外壁の後退距離」は都市計画によって規定される制限である。逆にいえば、都市計画に定めがないならば、第一種・第二種低層住居専用地域であっても、外壁を後退させなくてよいということである。

都市計画で「外壁の後退距離」が定められると、建築物同士の間に一定の空間が常に確保されるようになり、日照・通風・防火などの面で良好な環境が形成される。

都市計画で「外壁の後退距離」が定められる場合、その距離は1mまたは1.5mが限度である(建築基準法54条2項)。

がけ地

傾斜が急なため通常の用途に供することができない土地をいい、一般に傾斜度が30度以上のものを指すが、厳密な定義はない。

不動産鑑定や資産課税において土地を評価する場合には、対象となる土地に占めるがけ地の割合に応じて評価額を減価する補正が適用される。

なお、がけ地とほぼ同様の言葉として「法地」があるが、法地は不動産取引においてよく使われ、土地造成によって作られたがけ地を指すことが多い。

ガスオーブン

ガスを熱源とするオーブン。英語のgas oven。

電気オーブンに比べて、火力が強い、予熱時間が短い、容量が大きいなどの特徴がある一方、設置のために広いスペースを必要とする。

ガス給湯器

ガスにより瞬間的に湯を沸かし、台所・風呂などのへの給湯を行なうガス機器のこと。

給湯栓の蛇口を開くと同時に燃焼が始まり、水道の水圧を利用して給湯を行なう。
大きく分けて「ガス給湯器」「ガス風呂給湯器」の2種類がある。
また、浴槽の水を沸かす機能だけに特化したものは「風呂がま」と呼ばれる。

1.ガス給湯器
ガスの燃焼により瞬間的に湯を沸かし、台所・洗面台・風呂・シャワーの給湯栓まで湯を運び、給湯を行なう機器のこと。
かつては水温や通水量により湯温が変化するという問題があったが、近年では電子制御により火力をコントロールすることで安定した湯温が確保されている。

ガス給湯器の能力は号数で表示されている。この号数は「水温よりも25度だけ高温の湯を1分間に何L沸かすことができるか」を示したものである。一般的には4人家族の場合、24号またはそれ以上の号数のガス給湯器が推奨されている。

2.ガス風呂給湯器
台所・洗面台・風呂・シャワーへの給湯を行なうだけでなく、風呂の追いだき・沸かし直しという風呂がまの機能をも1台で兼ね備えた給湯器のこと。
追いだき時に給湯性能が低下することを防止するために、給湯用と追いだき用の2組の熱交換器を持ち、バーナーも別々になっているタイプが主流である。

ガス風呂給湯器の風呂の沸かし方については、湯はり・追いだきを自動的に行なうタイプ(オートタイプ)と、湯はり・追いだき・足し湯を自動で行なうタイプ(フルオートタイプ)という2種類がある。

なお、ガス風呂給湯器は設置場所により次の2タイプに分かれる。

1)自由タイプ
強制循環ポンプを備え、給湯器から離れた浴槽まで強制的に温水を送り出すもの。戸外に設置する。浴室に隣接して設置する必要がないため、間取りの自由さを確保しやすい。
2)浴室隣接タイプ
浴室に隣接した戸外に設置するもの。主に戸建て住宅で使用される。強制循環ポンプを備えたものと、強制循環ポンプがなく自然対流で浴槽に湯を送り出すものがある。

強制循環式のものは、ある程度設置場所を自由にすることができ、浴槽の高さと機器を設置する高さをある程度ずらすこともできる。
自然対流式では浴槽の高さと機器を設置する高さを合わせる必要があり、また水面に近い方から湯が出るために浴槽下部に冷水が溜まりやすいという面もある。

ガスコンロ

ガスを燃料とする焜炉(こんろ)。燃料とするガスの種類は、メタンを主成分とする天然ガス(都市ガス)と、液体で貯蔵されたプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガス(LPガス)に大別できる。

ガスコンロは、火力が安定していて、火力調整が容易である。一方で、ガス燃焼のための換気が必要なほか、ガス漏れに対して注意を要する。

ガスレンジ

ガスを熱源とし、コンロとオーブン(天火)やグリル(焼き網)を組み合わせた調理器具。英語のGas range。

ガスレンジのコンロには、一般に複数のバーナーが付いている。また、ユニットキッチンに組み込まれる場合もある。

合掌造り

急勾配の大きな草葺き・茅葺き屋根を山形に組み立てた民家の形式。岐阜県の白川、荘川流域や富山県五箇山地域に見られる。広い屋根裏を3〜4層に分け、養蚕などに利用する。

「合掌」は、の上に山形を組んで棟木を支持する斜材のことで、「衩首(さす)」ともいう。長い合掌を鋭角に高く組むことによって独特の建物形態が生まれるが、「合掌造り」は、そのような構造と形態を備えた民家の形式である。

合体登記

建物に物理的な変更を加えて、数個の建物を構造上一体の建物にした場合に、それら数個の建物の登記記録を一つにまとめる登記のこと。

合筆

土地登記簿上で数筆の土地を合併して、一筆の土地とすること。

合筆登記

数筆の土地を合わせて、一筆の土地にするという登記のこと。

合筆登記がされた場合、従来の数筆の土地の登記記録は閉鎖され、閉鎖登記簿へ移行する。
なお合筆登記をするには、地目が違う土地同士の合筆はできない。
また、所有権の登記(所有権の保存の登記または所有権移転登記)がある土地と、所有権の登記がない土地との合筆登記もできない。

合併登記

別個の建物として別々の登記記録が存在している数個の建物を、一個の建物にまとめて登記記録を作る登記のこと。

ガラストップコンロ

上面(天板)が強化ガラス製のガスコンロ。表面に傷や汚れがつきにくく手入れが簡単である一方、強い衝撃を受けるとガラスがひび割れする恐れがある。

ガラスブロック

ガラスを素材とするブロック材。壁材、装飾材などとして利用されている。英語のglass block。

外側が厚ガラス、内部は低圧の中空となっていて、煉瓦ブロックに比べて、透光性、断熱性に優れるとされる一方、施工に当たっては、耐火性、耐震性の確保に注意しなければならない。

がらり

細い板を斜めにして、水平方向に連続的にはめ込んだもの。
収納庫の扉などによく使用される。

がらり戸

板戸であって、の内部に、細い板を斜めにして、水平方向に連続的にはめ込んだもの。
通気性が良いため、押入れなどに使用することが多い。
よろい戸ともいう。

ガルバリウム鋼板

アルミニウムと亜鉛の合金によってめっきされた鋼板。

「ガルバリウム(Galvalume)」という用語は亜鉛めっき(galvanize)とアルミニウム(aluminum)を合成したものとされ、ガルバリウム鋼板を開発した米国の会社による造語である。「ガルバリウム鋼板」という名称は同社の商標として登録されている。それのJIS規格での名称は「溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板」である。

製造に当たってめっきされる合金は、アルミニウム55%、亜鉛43.4%、珪素1.6%の割合(質量比)で原料を溶融したもので、被覆する合金の作用によって鋼板は錆びにくく、光沢がある。

ガルバリウム鋼板は、屋根材、外壁材などとして使われている。ステンレス鋼板より安価であるが、防食性能は劣るとされている。

ガレージ

自動車を格納するための建物(自動車車庫)。英語のgarage。一般 に家屋とは別に独立して設置されるが、家屋内に設置するものは「ビルドインガレージ」という。

ガレージは 建物であって、屋根だけ設置する自動車置き場などはガレージではない。

元金均等返済

借入元金を毎期均等に返済する方法。毎期の支払い金額は、返済する元金に借入金残高に係る利息が加わることから、支払期が早いほど多く、遅くなるに従って少なくなる。

元金均等返済に対して、毎期の支払い金額が均等になるよう元金返済額を調整した方法が「元利均等返済」である。

支払わなければならない利息総額は、元金均等返済のほうが元利均等返済よりも小さくなる。

雁行型

集合住宅の住戸レイアウトのパターンの一つ。雁が飛んでいくときの列の形に似て、住戸がはすかいに続いている形式のものを雁行型という。

箱形、直列型(くの字型も含む)、L字型、ロの字型などと比較すると、一長一短がある。雁行型だと、住戸に3方向に開口部(窓等)を設けることができ、採光性、通風性に優れる反面、冬期は開口部からの熱流出、夏期は日射熱の流入が大きい。また、箱型などと比べると壁面積が大きくなり、コスト的に割高となる。

元利均等返済

借入金を毎返済期に同額で返済する方法。住宅ローンの返済において広く使われている方法である。

完済するまでの各返済期ごとに、返済する元金と支払う利息の合計額が一定となるように、元金の返済額を漸増するよう設定する。これに対して、各返済期ごとに元金を均等に返済することとし、残っている元金に対する利息を加えて支払う方法が「元金均等返済(がんきんきんとうへんさい)」である。

元金均等返済に比べて、完済までに支払う利息の総額が多くなる。一方、元金均等返済では、早い返済期であるほど支払うべき利息が多くなるため、元金を加えた支払額も早期ほど大きくなる。

ガーデニング

趣味として行う植物栽培。英語のgardening。

ガーデニングは、庭やベランダを活用して行なわれる場合が多いが、家庭菜園でのガーデニングもある。栽培される植物は、花卉(かき)のほか、ハーブ類や蔬菜(そさい)、果物などであるが、重点が置かれるのは栽培するプロセスを楽しむことである。

なお、農園付き住宅の農園は、農業を営むことよりもガーデニングを主目的にしたものであることが多い。

ガーデンファニチャー

屋外で使用する家具類。garden furnitureは和製英語で、英語ではoutdoor furnitureまたはpatio furnitureという。

ガーデンファニチャーとされるものは、屋外デッキ、縁台、屋外のテーブルと椅子、日除けなどである。また、屋外に常設するものと、必要なときに屋外に設置するものとがある。

機械換気(強制換気)

機械設備を用いる換気方法をいう。

換気の方法は大きく分けて、自然の通風や温度差による方法(自然換気)と、機械設備によって強制的に換気する方法(機械換気)とがある。機械換気は、常時確実に換気が可能であるが、稼動のためにエネルギーを消費する。機械換気に用いる設備としては、換気扇、送風機などがある。

機械換気の方法には、次の3つの種類がある。

a 第1種換気:吸気と排気の両方とも機械換気を用いるもの
b 第2種換気:吸気は機械換気、排気に自然換気を用いるもの
c 第3種換気:排気は機械換気、吸気に自然換気を用いるもの

換気の種類は、維持する空気環境の性格に応じて、吸気と排気のどちらを強制的に行なうかなどを考慮して適切に選択しなければならない。例えば、第1種換気は、安定した換気を確保できるがエネルギー消費が大きい。第2種換気は、室内を外気よりも高い圧力に保つことができるが気密性が必要である。第3種換気は臭気や湿気が発生する場所から排気することができるが室内の圧力が外気よりも低くなる。

建築基準法では、住宅の居室等においては、シックハウス症候群の発症の原因となるホルムアルデヒドの発散に対処するため、必要な換気が確保される一定の構造方法を備える場合以外は、常時換気が可能な構造の機械換気設備等の設置が義務付けられている。

機械式駐車場

車を機械で移動して立体的に駐車する設備。

機械式駐車場の方式には、車を移動する方法に応じて、上下移動のみの方法(昇降式、地下を使うときにはピット式ともいう)、上下左右に移動する方法(昇降横行式、パズル式ともいわれる)などがある。

高密度に駐車できるほか、下段の駐車スペースは風雨にさらされにくいなどとされている。一方、車の出し入れに時間を要する、設備維持のための費用負担がかさむ、停電などの障害時には利用できないなどの指摘がある。

機械式駐車場に対して、地面のみに駐車する方式を「平置き駐車場」、機械を使わず立体的に駐車する方式を「自走式立体駐車場」という。

帰還困難区域

原子力発電所の事故によって被災して避難指示のもとにある区域のうち、被災後5年間を経過した時点(2016年3月)においても、なお年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らない恐れのある地域をいう。原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の指示によって指定される。

この区域では避難の徹底が必要とされ、区域の境界において物理的な防護措置が実施される。ただし、例外的に一時立入りが可能とされ、その場合には、スクリーニングの確実な実施や、個人線量管理、防護装備の着用が求められる。

なお、この区域の不動産について価格調査等を行なうに当たっては、原発事故等格差修正を適用するなどの注意が必要とされている。

期間短縮型(住宅ローン繰上返済の〜)

住宅ローンを繰上返済する方法の一つで、毎月の返済額を変えずに返済期間を短くする方法をいう。

繰上返済する金銭は元金の返済に充てるが、減額された元金を毎月の返済額を変えないで元利均等で返済すると、返済に要する期間が繰上げ返済前に比べて短くなる。この方法による繰上げ返済が「期間短縮型」である。毎月の返済額が変わらないので負担感は同じであるが、負担しなければならない期間は短縮される。

なお、繰上返済の方法には、期間短縮型のほか、返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法(返済額軽減型)がある。

機関投資家

個人ではなく、企業体として投資する組織をいう。

例えば、銀行や保険会社のような金融機関(預かっている預金や保険金の運用)、年金基金(年金掛け金の運用)、証券会社や投資ファンドのような資産運用組織などがこれに相当し、投資の目的や方針は多様である。

機関投資家は、個人投資家に比べて市場において強い発言力を持つことができる。また、金融商品取引法において、証券会社、銀行、保険会社、年金資金運用基金などは適格機関投資家とされており、取引の規制において特例が適用される。

危険負担(契約における)

双務契約において、一方の債務の履行が責めに帰すことができない事由によって不能となったときに、他方の債務をどのように扱うかという私法上の問題をいう。

これについては、民法で、債務者が危険を負担すべきとされている。つまり、債務が履行できなくなったときには、債権者は反対給付を拒むことができる。これは、双務契約では給付と反対給付とがその存続に関して相互に関連しているから(存続上の牽連性)、一方の債務が消滅したときには反対債務も当然に消滅させる(反対債務者を拘束から解放する)のが適切であると考えられているからである。たとえば、やむを得ない事情で欠勤したときに欠勤者は賃金を請求できない。

なお、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)以前は、不動産のような特定物の物権移転については、債権者が危険を負担すべきと定めていたが、この規定は削除された。

期限付き建物賃貸借

借地借家法(1992(平成4)年8月1日施行)によって創設され、2000(平成12)年3月1日に法改正により廃止された制度。

期限付き建物賃貸借とは、次のいずれかの事情がある場合に、借家契約の更新を否定し、期間満了により借家契約が自動的に終了するという建物賃貸借のことである。

1.転勤等のやむを得ない理由により、一定期間に限り家主が不在となること
2.法令等により一定期間を経過した後に、建物が取り壊されることが明らかなこと

しかし、平成12年3月1日に法が改正され、こうした特別の事情がなくとも、定期借家契約を結ぶことが可能となった。
そのため、期限付き建物賃貸借は、2000(平成12)年3月1日をもって廃止された。

期限(期限の利益)

法律行為に付された始期または終期のこと。

例えば、債務を負う契約を締結したとき、その履行の期限を定めれば、その時点までは債務を履行する義務はない。このような期限を定めたことによる権利義務に関する効果を、「期限の利益」という(一般的に、債務者の立場から見れば利益となる)。

一方、債務の担保を損傷したりすれば、期限の利益は喪失する。また、ほとんどの金銭消費貸借契約には「期限の利益の喪失」を定める条項があり、例えば決められた期限までに返済が間に合わない場合には、期限の利益がなくなったものとして借金の残額を一括で支払うことというような特約が付されている。

気候変動適応

地球温暖化など気候変動の影響に対処して、これによる被害の回避・軽減を図ることをいう。

気候変動への対応は、温室効果ガスの排出削減などによって変動を抑制するだけでなく、変動による影響に対処して被害を回避・軽減する必要がある。気候変動適応は、被害を回避・軽減するため、影響の程度等を予測し、リスクを評価し、リスクの低減や影響の緩和を図る取り組みである。

場所や状況に特有のものであり、あらゆる状況にわたって適切な単一のリスク低減手法は存在しないとされる。影響に対する脆弱性、影響の現れ方、開発等の社会経済的過程との関係などをもとに、各種の手法を重層的に進めるのが有効であると考えられている。


気候変動適応が必要な分野は、農林水産業、自然災害、水環境・水資源、自然生態系、健康、国民生活・都市生活と広範で、それぞれの分野の施策に気候変動適応を組み込む必要がある。また、地域の実情に応じて適応を進めることも大事である。

このような必要に応えるべく、「気候変動適応法」(2018年制定)に基づき、環境大臣が5年ごとに気候変動影響評価を行なうほか、地域気候変動適応計画を策定し、これに基づいて適応策を実施することとされている。 

寄宿舎

事業者が事業従事者等の住居として設置する共同の住宅で、台所浴室などの共同施設を備えたもの。例えば、製造事業者が設置する工員宿舎、会社が設置する社員宿舎、学校が設置する学生寄宿舎などの多くが該当する。ただし、事業者が設置するものであっても、独立した住戸で構成する共同住宅は寄宿舎ではない。

寄宿舎は、建築基準法において、共同住宅、下宿などとともに特殊建築物とされ、防火、衛生などに関して一般の住宅よりも強い制限が課される。また、事業に付属して複数の労働者が共同で生活する寄宿舎(事業用寄宿舎)については、労働基準法に基づき、利用に関する規則の作成と届出、安全衛生上の措置の実施などが義務付けられている。

キシラデコール

木材用の防腐塗料のひとつ。商品名である。

木材の保護塗料には、木部に浸透して保護する「ステイン」(英語のstain)と、皮膜で木部を覆って保護する「ニス」(和語、英語はvarnish)の2種類があるが、キシラデコールは、油性ステインの代表的な商品として知られている。

木材防虫剤、木材防腐・防カビ剤を配合した有機溶剤なので、塗布のあいだや乾燥するまでは換気に注意しなければならない。

基準階面積

中高層ビルにおいて、最も一般的にレイアウトされた階(基準階)の面積をいう。

ビル経営においては、基準階面積を基礎にして床面積の利用可能性(例えば、賃貸が可能な床面積の比率)を算定・評価することが多い。

一方、地上階や最上階は、特殊なレイアウトが採用されることが多いため、別途にその利用可能性を評価しなければならない。

基準地価

都道府県地価調査により公報された「基準地」の価格のこと。

都道府県地価調査は、国土利用計画法による土地取引の規制を適正に実施するため、国土利用計画法施行令第9条にもとづき、都道府県知事が毎年9月下旬に公表する土地評価である。

評価の対象となるのは、全国の約3万地点の「基準地」である。都道府県地価調査では、毎年7月1日を基準日として各基準地につき1名以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、これを審査・調整し、毎年9月下旬に公報する。この公報された価格を「基準地価」という。

このように都道府県地価調査は、地価公示から半年後の地価を評価するものであるので、地価の変動を速報し、地価公示を補完する役割を担っている。

規制緩和

民間の産業活動や事業活動に対する政府の規制を縮小すること。
政府は、民間事業の活動について、安全の確保、技術基準の統一、競争の適正化、消費者の保護などさまざまな観点から規制を加えているが、これを緩和して活発な産業活動を促す政策が取られている。例えば、すでに行なわれた規制緩和としては、タクシー台数の制限撤廃、電力自由化、酒類免許制度の撤廃、農業への株式会社参入などがある。

不動産業に関係する規制緩和としては、土地利用に関する規制の緩和が進められ、容積率高さ制限などの見直しが推進された。

規制緩和は、社会の秩序を維持する方法として市場メカニズムをよりいっそう活用しようという考え方にもとづくもので、その背景には、社会経済活動の効率性を高めることが善であるという価値判断がある。しかし一方で、公共性を確保することも重要であり、規制緩和による弊害が生じていないかどうかに注意が必要である。

なお、規制緩和に似た政策として政府業務の民間開放がある。政府企業の民営化、指定管理者制度、PFI、市場化テストなどがそれであるが、市場メカニズムを活用することは規制緩和として共通しているものの、事業の主体を政府から民間に移すことに主眼があり、規制緩和とは別の政策として考えるべきであろう。

規制区域(国土利用計画法における~)

土地の投機的取引が相当範囲で集中的に行なわれ、またはその恐れがある区域において、地価が急激に上昇しまたはその恐れがあるとき、知事はその区域を「規制区域」に指定しなければならない(国土利用計画法第12条)。

規制区域に指定されると、その区域内における土地の取引には必ず知事の許可が必要となり、知事の許可のない土地取引はすべて無効となる(国土利用計画法第14条)。

知事の許可を得るには、土地の利用目的が「自己の居住の用」「従来から営んでいた事業の用」「公益上必要なもの」等に限定されるため、投機的な土地の取引は完全に締め出されることとなる(国土利用計画法第16条)。

基礎(建物の~)

建物の荷重を地盤に伝えるための構造のこと。

直接基礎杭基礎の2種類に分かれる。

直接基礎には、独立基礎(独立フーチング基礎)、布基礎連続フーチング基礎)、べた基礎などの種類がある。

基礎工事

建物基礎を構築する工事。建物の基礎は建物と地盤とをつなぐ構造物で、建物の荷重や加わる外力を安全に地盤に伝え、地盤の沈下や変形に対して耐える構造でなければならないとされている。

基礎の形式は、杭を地盤に打ち込んで基礎とする「杭基礎」と、地盤をそのまま基礎とする「直接基礎」とに大別される。直接基礎はさらに、主な柱の下のみに基礎構造物を設置する「独立基礎」、柱や壁の下に連続して基礎構造物を設置する「布基礎」、建物底面の全体を一枚の構造物で支える「ベタ基礎」に分かれる。

なお、基礎の設計・施工に当たっては、あらかじめ地盤調査を実施する必要がある。

基礎控除

所得税の課税において所得金額から無条件に一定額を控除すること。

基礎控除額は、2017年までは一律に年38万円(住民税は33万円)であったが、2018年以降は、合計所得金額が2,400万円までは48万円(住民税は43万円)、これを超えると段階的に縮小して合計所得金額が2,500万円を超えるとゼロになるよう改正された。


毀損

壊し、傷つけること。物を壊すことまたは傷つけることのほか、人をそしることも含む。

他人の物や名誉・信用を毀損した場合には、一般に損害賠償の責任を負うほか、一定の場合には刑罰に処せられることがある。 

既存住宅

居住に供されているまたは供されたことのある住宅。「中古住宅」も同義。これに対して、まだ人の居住の用に供したことのない住宅(建築工事完了日から1年を経過したものを除く)が「新築住宅」である

既存住宅に関しては、その品質確保や流通の円滑化に資するため、既存住宅品質表示、既存住宅状況調査、既存住宅売買瑕疵保険などのしくみが整備されている。

既存住宅状況調査技術者

既存住宅の状況調査を行なうための一定水準以上の知識とノウハウを有する技術者として認められた資格。告示による国家資格である。

既存住宅現況検査技術者の資格を得るには、「既存住宅状況調査技術者講習登録規程」(国土交通省告示)に基づいて登録された講習を受講し、終了証明書の交付を受けなければならない。証明書の有効期間は3年間である。

講習を受けることができるのは建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)のみで、講習は、講義および終了考査で構成される。

既存住宅状況調査技術者講習

住宅インスペクションに関する知識、技能を養成するための講習で、国土交通大臣が登録した講習実施機関が「既存住宅状況調査技術者講習登録規程」(2017年2月制定)に従って実施するものをいう。


講習の登録は申請によって行なわれ、既存住宅の調査に関する手順、遵守事項、調査内容等を講義すること
、修了者等の情報の公表、相談窓口の設置等を行なうこと、毎年度全国的に講習を行なうことなどの要件を満たさなければならない。また、講習を受講できるのは建築士に限定され、講習終了者は「既存住宅状況調査技術者」として「既存住宅状況調査方法基準」に従って既存住宅の調査を行なうこととなる。

既存住宅の建設住宅性能評価書

登録住宅性能評価機関が、実際に住宅を検査することにより作成した住宅性能評価書を「建設住宅性能評価書」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)第6条、同法施行規則第5条)。

この建設住宅性能評価書には、新築住宅に関するものと既存住宅に関するものという2種類があるが、そのうち既存住宅に関する建設住宅性能評価書はおよそ次の1.から4.の手順により作成される。
なお、既存住宅とは「建設工事完了後1年以上が経過した住宅や、建設工事完了後1年以内に人が住んだことがある住宅」のことである。

1.建設住宅性能評価書の作成の申請
既存住宅の売主または買主が、登録住宅性能評価機関に対して、評価を希望する分野を明らかにして、建設住宅性能評価書の作成を申請する(同法施行規則第5条第2項)。

既存住宅について評価すべき項目は、「現況検査により認められる劣化等の状況」と「個別性能に関すること」という2種類に分かれている。
このうち後者の「個別性能に関すること」をどのような分野について実施するかは売主または買主の自由に委ねられているので、申請に当たっては評価を希望する分野を明示しておく必要がある(詳しくは「日本住宅性能表示基準」へ)。
前者の「現況検査により認められる劣化等の状況」についても、後述の特定現況検査を実施するかどうかは売主または買主の自由である。
またこの申請に当たって、売主または買主は、既存住宅の付近の見取り図などの必要書類を提出する必要がある(国土交通省告示「建設住宅性能評価のために必要な図書を定める件」より)。

2.現況検査
登録住宅性能評価機関の評価員が、現地を訪問して、ひび割れ・欠損・剥がれ・傾斜などの劣化状況を検査する(これを「現況検査」という)。この現況検査は目視・計測により行なわれる。また現況検査の範囲は、外部から目視できる範囲に限定されており、屋根裏・床下は除外される。
なお売主または買主の希望により、木造部分についての腐朽等・虫害の検査(これを「特定現況検査」という)を実施することもできる。この特定現況検査は目視・打診・触診によって行なわれ、屋根裏・床下に評価員(または委託を受けた専門業者)が入り込んで検査する。

3.個別性能評価
登録住宅性能評価機関の評価員が、現地調査(現地における目視・計測)により「構造の安定」「火災時の安全」「維持管理への配慮」「空気環境」「光・視環境」「高齢者等への配慮」という6分野(21項目)の性能評価を行なう。ただし、これらの個別性能評価を行なうかどうは売主・買主の自由である。

4.建設住宅性能評価書の作成
上記のような検査と個別性能評価にもとづき、登録住宅性能評価機関が、既存住宅に係る建設住宅性能評価書を作成し、売主または買主に交付する。

既存住宅売買瑕疵保険

売買された既存住宅に瑕疵があった場合に、補修費用等を支払う旨の保険をいう。保険を引き受けるのは、住宅瑕疵担保責任保険法人である。

既存住宅売買瑕疵保険を契約する際には、既存住宅現況調査などによって住宅の基本的な性能が検査・確認される。また、保険は、住宅の種類(戸建、マンション)売り主の性格(宅建業者、一般個人)、保険金支払い先(販売事業者、検査事業者、リフォーム工事者、売り主)によって区別されている。

既存宅地

市街化調整区域は市街化を抑制する区域であるので、建築が厳しく規制されている。

具体的には、市街化調整区域内で建築を行なうことができるのは次の3つのケースである(都市計画法第43条第1項)。

1.開発許可を受けて、その開発許可に適合する建築を行なう場合
2.建築許可が不要な建築を行なう場合
3.建築許可を受けた場合

しかし2001(平成13)年5月18日より前には、市街化調整区域内であっても一定の条件を満たす土地であれば、建築許可を受けないで建築をすることが広く認められるという制度が存在した。
これが「既存宅地」の制度である(旧都市計画法43条1項6号)。

既存宅地の制度とは次の条件のすべてを満たす宅地については、建築許可を受けなくとも、建築物の新築・改築・用途変更を一定の範囲内で認めるという制度であった。

1)市街化区域に隣接している地域内の土地であること
2)おおむね50戸以上の建築物が立ち並んでいる地域内の土地であること
3)市街化調整区域に編入された際にすでに宅地であったこと
4)3)について知事の確認を受けたこと

このような知事の確認を受けた既存宅地については、比較的自由に建築を行なうことができたのである。

しかし、2001(平成13)年5月18日に都市計画法が改正・施行されたことにより、こうした既存宅地の制度は、5年間の経過措置を経たのちに消滅することとなった。

具体的には、改正法施行日(2001(平成13)年5月18日)以前に既存宅地である旨の確認を受けた土地については、施行日から5年間(2006(平成18)年5月17日まで)だけは「自己の居住または業務を行なうことを目的とする建築行為」であれば、従来と同様に建築許可を受けずに建築することができる。

ただし「自己の居住または業務を行なうことを目的としない建築行為」については、経過措置の対象にならないので、原則通り建築許可を取得することが必要となっている。

既存道路

建築基準法が適用された際に現に存在していたことを理由として「建築基準法上の道路」とされている道路のこと。

「建築基準法上の道路」とは原則的には、道路法上の道路・都市計画法による道路・土地区画整理法等による道路・特定行政庁から指定を受けた私道等である。

しかしこれらに該当しなくとも、建築基準法が適用された際に現に存在していた幅4m以上の道は「建築基準法上の道路」に含めることとされている(建築基準法第42条第1項第3号)。この第3号の規定による道路のことを一般に「既存道路」と呼んでいる。

また、いわゆる2項道路も「既存道路」に含める場合がある。

既存不適格建築物

事実上建築基準法に違反しているが、特例により違法建築ではないとされている建築物のこと。

建築基準法3条2項では、建築基準法および施行令等が施行された時点において、すでに存在していた建築物等や、その時点ですでに工事中であった建築物等については、建築基準法および施行令等の規定に適合しない部分を持っていたとしても、これを違法建築としないという特例を設けている。
この規定により、事実上違法な状態であっても、法律的には違法でない建築物のことを「既存不適格建築物」と呼んでいる。
なお既存不適格建築物は、それを将来建て替えようとする際には、違法な部分を是正する必要がある。

また、建築基準法10条では、特定行政庁は、既存不適格建築物であっても、それが著しく保安上危険であり、または著しく衛生上有害であると認められる場合には、相当の猶予期限を設けて、所有者等に建築物の除却等を命令することができるとされている。この規定により特定行政庁の権限において、著しく老朽化した既存不適格建築物を撤去すること等が可能となっている。

北側斜線制限

次のような高さの規制のことである。

1.自分の敷地の北側に隣の敷地がある場合、自分の敷地に建築する建物の各部分の高さは、その部分から隣地境界線までの距離が長いほど高くすることができる。

2.自分の敷地の北側に道路がある場合、自分の敷地に建築する建物の各部分の高さは、北側道路と向かいの敷地との道路境界線からその部分までの距離が長いほど高くすることができる。

北側高さ制限は住居系の4つの用途地域第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域)に適用される。

北側高さ制限は建築基準法56条と同法別表第3で詳しく規定されているが、その具体的な内容は、次の1)・2)の通りである。

1)第一種低層住居専用地域および第二種低層住居専用地域の場合
高さの限度=隣地境界線から建物の各部分までの距離の1.25倍+5m
2)第一種中高層住居専用地域および第二種中高層住居専用地域の場合
高さの限度=隣地境界線から建物の各部分までの距離の1.25倍+10m

※自分の敷地の北側に道路がある場合は、上記1)・2)の「隣地境界線」を「北側道路と向かいの敷地との道路境界線」と読み替えること。

北側高さ制限

北側斜線制限」を参照。

寄託

特定物の保管を委託する契約。民法に規定されている契約のひとつで、当事者の一方が目的物の保管を委託し、相手がこれを承諾することによって成立する(諾成契約)。保管を引き受ける者が受寄者、保管を委託する者が寄託者、寄託する目的物が寄託物である。

寄託は契約によって成立するが、原則として、受寄者が寄託物を受け取るまでは契約を解除することができる。また、その沿革から、原則として無報酬と考えられているが、契約で有償の寄託にすることもできる。

受寄者は、無報酬の場合には「自己の財産におけると同一の注意」をもって、有償の場合には「善良なる管理者の注意」をもって、寄託物を保管する義務を負うほか、寄託者の承認なしに受託物を使用しない、寄託者の承諾等なしに寄託物を第三者に保管させないなどの義務がある。一方、寄託者は、有償の場合には報酬を支払わなければならず、寄託物の性質・瑕疵によって受寄者が受けた損害を賠償するなどの義務を負う。

寄託者は、返還時期を定めた場合であってもいつでも寄託物の返還を請求できる。一方、受寄者は、期間の定めが無いときはいつでも、定めがあるときはやむを得ない事由がある場合を除いてその期限後に返還することができる。また、寄託物の損傷等による損害賠償や受寄者が支出した費用の償還は、寄託物の返還から一年以内に請求しなければならない。

なお、営業に伴なう寄託や寄託を業とする場合(倉庫営業)については、民法に優先して商法に定める規定が適用される。例えば、営業に伴う受寄者は、無報酬の場合であっても「善良な管理者の注意」をもって寄託物を保管しならないし、倉庫営業者は、寄託物の預り証券及び質入証券を発行しなければならない。

また、特殊な寄託として「消費寄託」がある。これは、銀行預金などのように、受寄者は寄託物を消費することができ、返還は寄託物と同種・同等・同量のものをもってする寄託である。

キッズルーム

年少の子供のための部屋。遊びの場と寝室とを兼ねる場合が多い。英語のkids room。

住宅部屋のほか、マンションなどに設置される共同の遊び場をさすこともある。

キッチン

台所。調理の場所をいい、英語のkitchen。

水槽(シンク)、給排水設備、加熱装置、作業台、収納スペースなどで構成され、ひとまとまりの空間となっている。また、食品を扱い、水や熱を利用するため、衛生保持や耐水・耐火に注意しなければならない。

キッチンには、独立の部屋とするかどうか、調理台と壁との配置関係をどうするかなどに応じて、いくつかの種類がある。たとえば、食事室との間に仕切りを設けない方式(オープンキッチン)、調理台が壁に接しないで独立している方式(アイランドキッチン)などである。

キッチンパネル

台所のコンロ周辺の壁面に取付けるパネル。和製英語である。

耐火性能が高く、油や汚れがつきにくいものでなければならない。素材としては、タイル、ホーロー、不燃樹脂、金属などが使われる。また、色彩や形状を選ぶこともできる。

 

揮発性有機化合物

常温で揮発する有機化合物のこと。

代表的なものとして、ホルムアルデヒド、クロルピリホス、トルエン、キシレン、ベンゼン、スチレンなどがあり、いずれも人体への有害性が指摘されている(詳しくはVOCへ)。

客付け

不動産業界用語の一つで、売却を依頼された不動産の買い手を見つけることをいう。

依頼された不動産会社が自らそれに当たるとは限らず、他の不動産会社の紹介で買い手が見つかることも多い。

一方、売却を依頼されることを「元付け」という。

キャスター

家具などを移動するために取り付けられた部品。英語のcaster。「足車」ともいう。台車の移動にも使われる。

キャスターの種類は、進行方向が固定されているもの(固定キャスター)と、車輪の方向を回転できるもの(旋回キャスター)に二分される。また、車輪の材質は、ゴム、ナイロン、ウレタン、金属などである。

なお、キャスターは平坦な場所で利用するよう設計されているので、傾斜のある場所での利用は避けるほうが良い。

CASBEE

建築物を環境性能で評価し格付けする手法の一つ。CASBEEは、英語のComprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency(建築環境総合性能評価システム)の略語で、任意に組織された建築物の総合的環境評価研究委員会が開発・メンテナンスしている。

CASBEEは、建築物の環境に対するさまざまな側面を客観的に評価するべく、建築物のライフサイクルを通じて評価すること、「建築物の環境品質Q」と「建築物の環境負荷L」の両側面から評価すること、環境効率の考え方を用いた評価指標「BEE(建築物の環境性能効率、Built Environment Efficiency)」で評価することの3つの理念に基づいて開発された。

CASBEEで用いる環境性能効率(BEE)は、Q(建築物の環境品質)を分子、L(建築物の環境負荷)を分母とすることにより算出される指標で、建築物の環境性能評価の結果を簡潔・明確に示す概念とされ、これによって建築物の環境評価結果をランキングすることができるとされている。

キャッシュフロー会計

企業の経営成績をキャッシュ(現金・普通預金・定期預金等)の増減をもとに明らかにするという会計手法のこと。

通常の企業会計では、企業の経営成績は最終的に当期利益によって明らかにされるが、当期利益には売掛金のように現金収入ではない収入が計上されており、また必要経費として減価償却費のように現金支出ではない経費が計上されている。このため、当期利益はキャッシュの増加とは通常一致しないことになる。
これに対してキャッシュフロー会計では、キャッシュの増減が企業活動の種類別に(営業活動・財務活動などの種類別に)表示されるので、企業の経営成績がキャッシュにもとづいて明確に表示されることになる。

欧米では古くからキャッシュフロー会計にもとづく「キャッシュフロー計算書」の作成が企業に義務付けられており、「キャッシュフロー計算書」は、貸借対照表・損益計算書と並ぶ重要な財務諸表のひとつとされてきた。
これに対して従来のわが国では、上場企業の財務会計を規制する証券取引法(財務諸表規則)上は、キャッシュフロー計算書を作成する必要がないものとされていた。
しかしわが国でも1997年から国際会計基準の導入が開始された(「国際会計基準」参照)。この結果、企業会計審議会の意見書により証券取引法が改正され、1999年4月より開始する事業年度からは、上場会社は財務諸表のひとつとしてキャッシュフロー計算書を作成することが法律上義務付けられた。これにより現在では、わが国の上場企業ではキャッシュフロー会計がすでに実施されている。

キャッシュフロー会計では、キャッシュフロー計算書においてキャッシュの増減が原因別に開示されるが、キャッシュを増加させるためには、一般的に売掛金をへらし、買掛金を増やし、商品在庫(会計用語では棚卸資産)を削減することが有効である。また不要不急の有形固定資産(土地・建物・機械設備等)の取得はキャッシュを減少させる要因となる。
そのため、わが国の上場企業ではキャッシュを増加させるため(あるいは減少させないため)に、固定資産を圧縮する方向に動いている。また上場建設会社・上場不動産会社では、商品在庫である販売用土地建物を売却する動きが加速しており、不動産市場における土地・建物の供給を増やす要因の一つとなっている。

キャッシュフロー計算書

企業の一会計期間におけるキャッシュ・フロー(現金の出入り)の状況を明らかにする書類をいう。

英語でCash Flow Statementといわれることから、CS(またはC/S)と略されることもある。

損益計算書は、営業収益(売上高)や費用は取引が行なわれた時点で計上すること(発生主義)、設備費用を減価償却により複数年度にわたって計上することから、現実の金銭の出入りをそのまま反映したものではない。だが、取引においては、企業の支払能力が重要であることから、現金の出入りを明確に示すことが要請される。
そこで、キャッシュフロー計算書を作成して、一会計年度、半期または四半期における資金の流入・流出を表示することとされている。

キャッシュフロー計算書は、資金の出入りの原因に対応する形で、営業キャッシュフロー(営業活動に伴う現金の動き)、投資キャッシュフロー(投資活動に伴う現金の動き)、財務キャッシュフロー(財務活動に伴う現金の動き)の3つに分けて表示されている。
キャッシュフロー計算書によって、企業活動による現金の動きを把握し、事業活動の状態等を分析するための基礎的なデータを得ることができる。

キャットウォーク

高所に設置された狭い通路。英語のcatwalk。劇場やダムの点検作業用通路、工事現場の高所作業用足場通路などをいう。

また、飼い猫のために屋内・室内に設置するペット用の備品を指す言葉としても使われている。

キャップレート(Cap Rate)

還元利回りのこと。資産の収益から資産価格を算出する際に用いる利率をいう。

資産価値は、発生するであろう収益額を現在価値に割り戻して総計した額に等しいと考えられているが、このとき現在価値に割り戻すために用いる利率が還元利回りである。

その値は、資産の種類や条件によって異なるが、おおむね一般的住宅では5~7%、事業用は8~10%が目安とされている。逆に、資産価格と収益額が与えられれば還元利回りを求めることができるが、利回りが高いほど収益性が高いと判断してよい。

CAD

コンピューターを使って設計すること。そのためのシステムを指す言葉でもある。英語のComputer Aided Design(コンピューター エイディッド デザイン)の略語。

建築の設計、複雑な機械のデザインなど、さまざまな分野で幅広く使われている。紙面に描いたり模型を実際に製作するよりも設計作業を容易に進めることができるほか、データの共有・管理の便に優れている。面的に設計する2次元CADと、立体的に設計する3次元CADに大別される。

キャビネット

飾り棚。英語のcabinet。美術品などを飾るための家具で、ガラス製の戸棚や引き出しが付いている。また、キャビネット自体が装飾され、インテリアの一部となっている場合も多い。

キャピタルゲイン(Capital Gain)

資産の価格変動に伴って得る利益をいう。

株式や不動産などの売買差益はこれに当たる。

資産から得られる利益の種類で、その保有により得る利益をインカムゲイン、その価格変動に伴って得る利益をキャピタルゲイン(損失はキャピタルロス)という。株式の配当、不動産の賃料、預金の利子などはインカムゲイン、株式や不動産などの売買差益はキャピタルゲイン(譲渡益、資本利得ともいう)である。

両者は税務上の取扱いなどが異なるため、投資に当たっても両者の性格の違いを十分に認識しておくことが重要である。
もっとも、両者は無関係ではなく、資産の価格はそれから得ることのできる利益を現在価格に還元したものの総額に等しいとされているため、例えばインカムゲインが増大すれば資産価格が上昇して、キャピタルゲインを得る機会となる。ただし、資産価格は期待や予想に左右されやすいことに注意が必要である。

規約(区分所有法における~)

区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づいて定める規約。一般に「管理規約」と呼ばれる。詳細は「管理規約」を参照。

規約共用部分

区分所有建物において、区分所有法の規定では専用部分とすることができるが、管理規約によって共用部分とする建物部分をいう。たとえば、マンションの管理人事務室、集会室、駐車場などである。

原則としてすべての区分所有者(賃借人を含む)が利用できるが、専用庭や駐車場などのように、規約によって特定の者に専用の使用権を認める場合もある。

なお、区分所有法によって共用部分としなければならない建物部分を「法定共用部分」という。

規約敷地

区分所有法建物の区分所有等に関する法律)により、区分所有者の規約によって区分所有建物敷地とされた土地で、区分所有者が建物および建物が所在する土地と一体として管理または使用をするものをいう。

建物の敷地ではないが、庭園、通路、駐車場など、建物の敷地と一体的に利用される土地がこれに該当する。規約敷地は、区分所有建物の敷地(法定敷地)と同様に区分所有者の共有とされ、原則として専有部分と分離して処分することはできない。

規約敷地は、区分所有建物の敷地と建物利用のために必要な土地とが分離して管理処分されることを防ぐために設定されるが、その設定・廃止は管理組合の意思による。意思決定においては、管理組合の総会において区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成が必要とされている。

急傾斜地崩壊危険区域

崩壊する恐れのある急傾斜地(傾斜度が30度以上の土地)で、崩壊により相当数の居住者その他の者に危害が生ずる恐れのあるもの、およびこれに隣接する土地として都道府県知事が指定する区域をいう。
    
指定は、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」に基づいて行なわれる。
急傾斜地崩壊危険区域内においては、
1.水の放流や停滞行為など水の浸透を助長する行為
2.ため池や用水路などの施設、または工作物の設置、または改造
3.のり切、切土、掘さく、または盛土
4.立木竹の伐採などの行為
について都道府県知事の許可が必要であり、知事は許可に当たって、急傾斜地の崩壊を防止するために必要な条件を付すことができるとされている。

求償権

法律上の理由によって被った財産の減少について、特定の者に対してその返還を求める権利。民法によって認められている。

求償権が認められているのは、他者の債務を弁済した場合に、その他者に対してその弁済額の返還を求める場合などである。例えば、保証人の一人が債務を弁済し他の債務者が債務を免れたときのその分の返還請求、他人の行為によって損害賠償した場合のその他人に対する返還請求、債務の弁済によって不当利得が生じた場合の不当利得者に対する返還請求が該当する。

求償債権

民法上の概念で、一定の法律上の理由で被った財産の減少について、特定の者に対してその返還を求める権利をいい、一般には、他人の債務を弁済した者が、その他人に対して弁済額の返還を求める権利を指す。不法行為に対する損害賠償請求権ではないことに注意。

例えば、連帯保証人や信用保証会社が被保証人の債務を弁済した場合には、弁済者は、それによって債務履行を逃れた者に対して、逃れた額に相当する求償債権を得る。

そのほか、他人の行為によって損害賠償義務を負った場合に一定の要件のもとにその他人に対して賠償義務額の返還を請求することができるが、そのような請求権なども同様の債権である。

旧耐震基準

建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準をいう。

これに対して、その翌日以降に適用されている基準を「新耐震基準」という。

旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準として設定されている。技術的には、建物自重の20%の地震力を加えた場合に、構造部材に生じる応力が構造材料の許容応用力以下であるかどうかで判断される。

なお、新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されている。

Q値

熱は温度差、空気圧の差、風力などにより移動する。室内外の温度差1度、家全体から1時間に床面積1平方メートル当たりに逃げ出す熱量を、熱損失係数(あるいは熱伝達計数)といい、「Q値」という。

Q値が小さければ小さいほど、熱が逃げにくいということになる。

給湯

湯を供給すること。湯をつくる設備がボイラー(給湯器)で、湯が必要な台所、浴室などであるが、給湯は、両者を結びつけることである。

給湯の方法には、一つのボイラーから配管によって必要な場所に供給する方式(集中給湯)と、湯が必要な場所ごとにボイラーを設置する方式(局所給湯)とがある。また、ボイラーの形式には、ガス、電力等の燃料の種類、貯湯タンクの有無などに応じてさまざまなものがある。

給湯機(給湯器)

湯を供給するための機械器具。湯沸器のほか、ポンプ、タンク、配管などの機器で構成される設備であるが、その中心となる湯沸器(英語のボイラー boiler)を指すことが多い。

給湯の方式には、局所式とセントラル式、単管式と複管式、瞬間式と貯湯式 などの種類があり、それに応じて給湯機の性能や稼働方法が異なる。また、湯沸器の燃料には、ガス、石油、電力などが用いられ、その種別に応じて「ガス給湯器」「石油給湯器」「電気給湯器」のように区分される。

旧法上の借地権

借地借家法が施行された日(1992(平成4)年8月1日)より前に成立した借地権であって、旧借地法にもとづく借地権のこと。

借地借家に関する法制度は、かつては借地法・借家法の二本立てであったが、1992(平成4)年8月1日に借地借家法が施行されたことにより、一本化された。

この新借地借家法(1992(平成4)年8月1日施行)にもとづく借地権であって、定期借地権ではない借地権のことを「普通借地権」と呼ぶ。

これに対して、旧借地法にもとづく通常の借地権のことを「旧法上の借地権」と呼ぶことがある。

普通借地権と旧法上の借地権の間には、次のような違いがある。

1.旧法上の借地権は、あらかじめ存続期間を定めなかった場合には、非堅固な建物(木造を指す)については存続期間を30年とし、堅固な建物については存続期間を60年としていた。
しかし普通借地権では建物の堅固・非堅固による区別がなく、あらかじめ存続期間を定めなかった場合には存続期間を30年とした。
2.旧法上の借地権は、建物が老朽化し、朽廃した場合には、借地権が自動的に消滅することとされていた(旧借地法第2条、第5条)。しかし、普通借地権にはこうした朽廃による消滅の規定がない。

このようにいくつかの相違点があり、しかも現在でも、旧法上の借地権による借地と普通借地権による借地が並存しているため、不動産広告等では両者の違いを明記することが多い。

給与収入

給与所得者が雇用者から受ける給料、賞与等の支払額の総額のこと。この額は、源泉徴収票の「支払金額」の欄に記載されている。

なお、雇用者から受ける金銭であっても、通勤手当(月額10万円まで)、旅費などは、給与収入から除外されている。

給与所得

給与によって得る所得をいい、所得税課税の対象となる所得の種類の一つである。給与とされるのは、俸給、給料、賃金、歳費、賞与や、これらの性質を有する給付である。

給与所得額は、原則として、給与収入額から給与所得控除額を控除した残額であり、所得税はこれに対して課税される。

つまり、原則として、
「給与所得課税額=(給与収入額−給与所得控除額)×税率」
である。

なお、給与所得額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の欄に記載されている。

給与所得控除

所得税の課税において、給与収入金額から一定の額を控除することをいう。

事業収入、不動産収入などに対する課税に当たっては、収入を得るために必要となった経費(必要経費)を差し引くことができる。しかし、給与収入については、必要経費の算定が困難である。そこで、その代わりとして、給与収入から一定の金額を控除する方法が採用されている。

給与所得控除の額は、給与収入に応じて、収入額が多くなるに従って控除額が少なくなるよう段階的に定められている。

なお、通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、一定の勤務必要経費が定められた額を超えるときには、確定申告によりその超える部分の金額をさらに差し引くことができる(給与所得者の特定支出控除)。

QOL

生活の質的な豊かさ。英語のQuality Of Lifeの略語。厳密な定義はないが、生活の満足感を、物質的な豊かさだけでなく、精神的、社会的な豊かさを含めて評価する考え方に基づく概念である。

WHO(World Health Organization(世界保健機関))は、1947年制定の健康憲章において、健康を「単に疾病がないということではなく、身体的、心理的および社会的に完全な満足のいく状態にあること」と定義しているが、QOLはこの定義におおむね合致している。

その水準は、身体的な状態、心理的な状態、社会的な関係性、生活等の環境の状態など複数の視点から評価することになる。方法について、WHOは2つのモデルを示しているが、十分に確立しているとは言い難い。

共益費

賃貸集合住宅の入居者や事務所ビルのテナントが、建物の賃料とは別に負担する費用をいう。

建物全体の清掃や補修、警備等の費用、建物の共用部分に関する付加使用料など、入居者やテナントが分別して負担することが難しい費用が対象となる。専有面積当たりで算出し、月払いするのが一般的である。

なお、法律上の用語としても「共益費」が使われるが、これは同一の債務者に対する各債権者に共通の利益のために要した費用のことである。
例えば、ある債権者が債務者の財産を保存すればそれは他の債権者に利益にもなるので、そのための費用は共益費として、他の債務者に優先して弁済を受けることができるとされる。建物の賃借人が負担する共益費は、これとはまったく別のものであるから、注意を要する。

境界(境界確定)

私法上の概念であり、土地の地番を区切る線をいう。

「けいかい」と読むこともある。

土地は、その表示登記に当たって筆に区分され地番が与えられるが、地番と地番の境が境界である。

争いのある境界を確定するためには、判決により境界線を確定することを求める(境界画定訴訟)ことができる。また2006(平成18)年1月には、当事者の申請に基づき、筆界特定登記官が「筆界調査委員」に調査を依頼した上で、その意見書をもとに境界を特定する制度(筆界特定制度)が創設された。

境界線付近の建築の制限

境界線付近で建物を設ける場合のルール。民法の相隣関係として規定されている。

定められている制限は、
①建物は、境界線から50cm以上の距離を保って築造しなければならないこと
②他人の宅地を見通すことのできる窓または縁側・ベランダを、境界線から1メートル未満の距離で設ける場合には目隠しを付けなければならないことの2つである。

①に違反する建築に対しては、それを中止・変更させることができるが、建築着手後1年を経過し、または建物が完成した後は、損害賠償請求のみが可能とされている。

なお、このルールと異なる慣習があるときには、その慣習に従うとされている。

境界標の設置

土地所有者は、隣地所有者と共同の費用で境界標(土地の境を示す標)を設置できるとするルール。民法の相隣関係の一つとして認められている権利で、「境界権」または「界標設置権」という。

この場合の費用は、相隣者が等しい割合で(測量費は土地の広さで案分して)負担する。

強行規定

法律の規定であって、公の秩序に関する規定を「強行規定」という。

また同じ意味で「強行法規」ということもある。

強行規定は、当事者の意思に左右されずに強制的に適用される規定であると解釈されている。従って、強行規定に反するような契約をした場合には、その契約はその部分について無効とされる。

この反対に、当事者の意思によって適用しないことができる規定は「任意規定」という。

ある規定が強行規定であるかどうかは、その規定の性質にもとづいて判断するのが原則である。例えば、民法の相続に関する諸規定は、社会秩序の根本に関わる規定であるため「強行規定」であると判断されている。

これに対して、消費者や社会的弱者を保護するようないくつかの法律では、法律中で強行規定であることを明記している場合がある。
例えば、借地権の存続期間等について定めた借地借家法第3条から第8条については、借地借家法第9条で「第3条から第8条に反する特約で、借地権者に不利なものは無効とする」と明記されている。

強行法規

強行規定ともいう。

法律の規定であって、公の秩序に関する規定を「強行規定」という。

強行規定は、当事者の意思に左右されずに強制的に適用される規定であると解釈されている。従って、強行規定に反するような契約をした場合には、その契約はその部分について無効とされる。

この反対に、当事者の意思によって適用しないことができる規定は「任意規定」という。

ある規定が強行規定であるかどうかは、その規定の性質にもとづいて判断するのが原則である。例えば、民法の相続に関する諸規定は、社会秩序の根本に関わる規定であるため「強行規定」であると判断されている。

これに対して、消費者や社会的弱者を保護するようないくつかの法律では、法律中で強行規定であることを明記している場合がある。
例えば、借地権の存続期間等について定めた借地借家法第3条から第8条については、借地借家法第9条で「第3条から第8条に反する特約で、借地権者に不利なものは無効とする」と明記されている。

狭小住宅

狭い土地に建てられた住宅。明確な定義はないが、おおむね敷地面積が50平方メートル(約15坪)以下のものをいう。

地価が高い地域に建てられることが多く、敷地を建ぺい率の上限まで使い、床面積を確保するため地下室を設置したり、3階建てとする場合もある

強制執行

債務者に給付義務を強制的に履行させる手続きのことを「強制執行」という。

強制執行を行なうには、公的機関が作成した確定判決などの文書(債務名義)が必要であり、またその債務名義に「執行文」が記載されていることが必要である。

強制執行は、金銭執行と非金銭執行に分類される。
金銭執行とは、債務者の財産を差し押さえて(さらには競売により換価して)、金銭を債権者に交付するような強制執行である。代表的な金銭執行としては「強制競売」と「債権差押」がある。
また非金銭執行とは、金銭債権以外の債権(例えば土地引渡請求権)を実現するために行なわれる等の強制執行である。

なお、債務者(または物上保証人)の不動産抵当権を設定している債権者が、その抵当権にもとづき不動産を競売することは、「任意競売」と呼ばれる。しかし任意競売は、強制執行には含まれない。また、任意競売では「抵当権の存在を証する文書」は要求されるが、「債務名義」は必要ではない。

供託

法令の規定により、金銭、有価証券、その他の物件を地方法務局などにある供託所または一定の者に寄託することをいう。

供託は、弁済供託(債務者が債権者の受領拒絶、受領不能、債権者を確知できない場合等に弁済を目的としてするもの)、担保保証供託(後の支払を確保を担保するもの)、執行供託(民事執行の目的たる金銭または換価代金を当事者に交付するためのもの)、保管供託(他人の物を直ちに処分し得ないときに一時保管するためのもの)、没収供託(公職選挙立候補者の供託のように没収に備えるためのもの)の5種類に分類できる。また、そのための手続きは、供託法に定められている。
宅地建物取引業を営む場合には、営業保証金を供託しなければならないとされているが、宅地建物取引業保証協会の社員はその必要はなく、別途弁済業務保証金分担金を納付することとされている。

共同担保目録

不動産登記において、一つの債権の担保として複数の不動産に対して設定された抵当権(共同担保)を一括して記載した登記事項をいう。例えば、担保価値を保全するために、土地とその上の建物、土地とそれに接続する私道の共有権などを共同担保とするのが通例である。また、担保額を確保するために複数の不動産を共同担保とする場合もある。

従来は、抵当権の登記の際に共同担保とする物件を記載したリスト(これが共同担保目録)を添付することになっていたが、現在は登記官の職権で記載される。

共同担保目録は、登記事項証明書の申請の際にそれを必要とする旨の表示をすれば確認できる。

共同仲介

1つの不動産取引を複数の不動産会社が共同で仲介することをいう。

共同媒介」ともいう。

売り手と買い手をそれぞれ紹介し合う場合のほか、売買や賃貸借の依頼情報を共有して業務に活用する場合や、代理店などによって一体的に仲介業務を行なう場合なども共同仲介である。

大規模に店舗を展開している不動産会社は別として、一般的には、不動産取引の媒介は共同で実施する場合が多い。不動産取引を迅速・公正に仲介するためには、情報を共有することが有効だからである。

共同媒介

一つの不動産取引を複数の不動産会社が媒介することをいう。売り手と買い手をそれぞれ紹介し合う場合のほか、売買や賃貸借の依頼情報を共有して業務に活用する場合、代理店などによって一体的に媒介業務を行なう場合なども共同媒介である。

大規模に店舗を展開している不動産会社は別として、一般的には、不動産取引の媒介は共同で実施する場合が多い。不動産取引を媒介するためには、情報のネットワークの充実が必要だからである。

強迫

他人に害悪を告知し、他人に畏怖を与えることにより、他人に真意に反した意思表示を行なわせようとする行為である。
(詳しくは強迫による意思表示へ)

脅迫

私法上の概念で、人に恐怖心を抱かせて自由な意思決定を妨げる行為をいう。

強迫は不法行為とされ、強迫によってなされた意思表示は取り消すことができる。この場合、第三者への対抗も有効のほか、損害賠償請求なども可能である。
なお、「脅迫」は刑法上の用語で強迫とは別の概念であるが、事実上重なることが多い。

また、心理学で使われる「強迫」は全く別の用語である。

強迫による意思表示

強迫とは、他人に害悪を告知し、他人に畏怖を与えることにより、他人に真意に反した意思表示を行なわせようとする行為である。強迫を受けた者が行なった意思表示は、取り消すことができる(民法第96条第1項)。

強迫とは、具体的には「取引をしないとひどい目に遭わせる」などと害悪を告知して、畏怖を感じさせる場合を指す。ただし、害悪の内容が法律的に正当なものであっても、強迫に該当する場合がある(例えば、会社役員に対して「役員の不正を告発する」と告知して、畏怖を感じさせ、無理やり取引を行なおうとする場合など)。

また、強迫行為と意思表示との間には因果関係が必要とされているので、強迫行為があったとしても意思表示との間に因果関係がない場合には、その意思表示を取り消すことはできない。例えば、強迫を受けた者が畏怖を感じなかった場合には、強迫行為と意思表示の因果関係が否定される。

また、強迫により被害者が完全に意思の自由を喪失してしまった場合には、その意思表示は無効となる。例えば、軟禁状態におき、暴力をふるうなどして無理やり意思表示を行なうよう強要した場合には、もはや自由意思を喪失しているため、意思表示は無効と解釈される(昭和33年7月1日最高裁判決)。

なお、強迫により法律行為が行なわれた場合には、強迫があったことを知らない(=善意の)第三者はまったく保護されない。この点で民法は、詐欺の被害者よりも、強迫の被害者をよりいっそう保護しているということができる。
(「詐欺における第三者保護」を参照のこと)

なお、強迫は取引の当事者が行なう場合だけでなく、当事者以外の者が行なう場合もあるが、このような第三者による強迫の場合でも、強迫を受けた者が行なった意思表示は、取り消すことができる(民法第96条第1項)。

京間

主に関西で用いられてきた、日本の伝統家屋の基本モジュールのこと。

関東間よりもやや広い。京都、大阪を中心に主に関西以西で用いられる。

日本の伝統家屋を設計する際に基本となる柱の間隔(柱の中心から柱の中心までの距離)のことを「1間(いっけん)」という。京間とは、この1間を「6尺5寸」(約197.0cm)とする家屋のことである。

(注)日本古来の度量衡である尺貫法では、1尺は30.303cm、1寸は1尺の10分の1、1分は1尺の100分の1である。なお尺の長さは1891(明治24)年の度量衡法で定められたが、1958(昭和33)年に公式の単位としては廃止されている。

共有

私法上の概念で、複数の者が、同一の物を同時に所有している形をいう。

例えば、相続人が複数の場合の相続の際に、遺産が分割されるまでは相続人が遺産を「共有」することになる。また分譲マンションの共用部分は、区分所有者の「共有」に属している。

なお、共有物に対する各共有者の権利を「持分」または「持分権」と呼び、それぞれ単独で自由に持分を譲渡することができる。また、共有者の氏名を「共有名義」という。

共有物の管理については、民法の改正(2023年4月1日施行)によって、共有物の管理者、共有物の軽微変更、所在等不明共有者がいる場合の対応などに関するルールが明文化された。

共有物の管理

共有している土地や建物を管理すること。

民法は、共有物の管理について、

i)共有物に変更を加えるためには、共有者全員の同意を要する

ii)使用する共有者の決定など管理に関する事項は、各共有者の持分の価格の過半数で決する

iii)補修などの保存行為は、各共有者が単独ですることができる

と定めている。

しかしながら、相続等によって、共有者が多数となる、共有者の一部が所在不明となるなどの状況が目立っている。そこで、民法の改正によって、共有物の管理について次のようなルールが制定・明文化された(2023年4月1日施行)。 

(1)軽微変更(共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わない行為)については、持分の価格の過半数で決定することができる。 

(2)短期の賃借権等の設定(借地借家法の適用のある賃借権を除く)は、持分の価格の過半数で決定することができる。

(3)共有物を使用する共有者がいる場合や賛否を明らかにしない共有者がいる場合には、一定の条件を満たすときには、持分の過半数で管理(狭義の)に関する事項を決定することができる。

(4)所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により共有物に変更を加えること、所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により管理に関する事項(抵当権の設定等の所在等不明共有者が共有持分を失うことになる行為を除く)を決定することができる。

(5)共有物の管理者を選任できる(明文化)。

(6)遺産共有状態にある共有物に共有に関する規定を適用するときは、法定相続分(相続分の指定があるケースは、指定相続分)により算定した持分を基準とする(明文化)。

なお、区分所有建物の管理については、「建物の区分所有に関する法律(区分所有法)」の定めが適用される。

共有物の管理者

共有している土地・建物を管理する者。

共有物の管理に当たって、その管理者を選任して管理を委ねることは、円滑な管理のために有効な方法で広く行なわれているが、民法の改正によって、そのためのルールが次のように明文化された(2023年4月1日施行)。

共有物の管理者の選任・解任は、共有者の持分の価格の過半数で決定する。管理者は、共有者以外であってもよい。

管理者は、管理に関する行為(軽微な変更を含む)をすることができる。軽微でない変更を加えるには、共有者全員の同意を得なければならない。その職務は、共有者が決定した共有物の管理に関する事項に従って行わなければならない。その事項に違反すると、共有者に対して効力を生じないが、善意の(決定に反することを知らない)第三者には無効を対抗することができない。

なお、区分所有建物の管理者については、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」の定めが適用される。

共有物の軽微変更

共有物に変更を加える行為のうち、形状(外観、構造等)や効用(機能や用途など)の著しい変更を伴わないもの。たとえば、砂利道のアスファルト舗装、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に軽微変更であるされる。

共有物の軽微変更は、共有物の変更であるが、持分の価格の過半数で決定することができる。

なお、このルールは、民法の改正によって明文化された(2023年4月1日施行)。

共有物分割

共有物を単独者の所有物とするために分割すること。例えば、相続によって共有している土地を分け合う場合は共有物分割に該当する。

それぞれの共有者はいつでも分割の請求をすることができる。ただし、契約によって5年以内は分割しない旨を契約することができる。分割請求がなされた場合は、共有者間で分割の協議がなされるが、整わない場合には裁判所に分割を請求することができる。

土地を分割する方法には、分筆してそれぞれを単独の所有とする方法(現物分割)のほか、共有する土地を売却して得た代金を分け合う方法、特定の者の所有とし他の共有者に対しては金銭を支払う方法(賠償分割)などがある。

なお、ある共有者から持分権を譲り受けた者は、その共有者の権利義務を承継する。

また、民法の改正によって、共有者が、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者(氏名等不特定を含む)の不動産の持分を取得することができることとされた(2023年4月1日施行)。この場合、遺産共有については、相続開始から10年を経過していなければならない。

共有名義

共有」を参照。

共有持分

複数の人が一つの物を共同で所有しているとき、それぞれの人がその物について持っている所有権の割合を「共有持分」という。

例えば、相続が発生して、3人の子が1つの土地を相続したとき、遺産分割をする前の時点では、各相続人のその土地に関する共有持分は「3分の1」である。

共用施設

マンションの住民が共同で使用する施設。建物区分所有法に定める共用部分に該当するが、躯体やベランダなどは共用部分であっても共用施設ではない。

共用施設は、管理規約等に基づき利用のルールが定められ、管理組合が管理する。

共用施設はすべてのマンションに設置されているわけではないが、主な設置例として、駐車・駐輪場、集会室、ゲストルームキッズルームなどがある。

共用部分

分譲マンションのような区分所有建物について、区分所有者が全員で共有している建物の部分を「共用部分」という。

その反対に各区分所有者がそれぞれ単独で所有している部分は「専有部分」と呼ばれる。

具体的には、次の3つのものが「共用部分」である(区分所有法第2条)。

1.その性質上区分所有者が共同で使用する部分(廊下、階段、エレベーター、エントランス、バルコニー、外壁など)
2.専有部分に属さない建物の付属物(専有部分の外部にある電気・ガス・水道設備など)
3.本来は専有部分となることができるが、管理規約の定めにより共用部分とされたもの(管理人室・集会室など)

このような1.~3.の共用部分は、原則として区分所有者全員の共有である(区分所有法第11条)。

また共用部分は共有であるため、各区分所有者はそれぞれ共用部分に関する共有持分を持っていることになる。
この共有持分の割合は、原則として、専有部分の床面積専有面積)の割合に等しい(区分所有法第14条)が、この割合は規約により変えることができる。

また区分所有者は、その共用部分の共有持分のみを自由に売却等することはできない(区分所有法第15条)。

虚偽表示

本人が相手方と通じて、虚偽の意思表示をすることをいう。

例えば、本人も相手方も土地の売買契約を締結するつもりがまったくないのに、お互いに相談のうえで、土地の売買契約を締結したかのように見せかける場合が、この虚偽表示に該当する。
(お互いに通じたうえで行なう虚偽の表示であるという意味で「通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)」と呼ばれることもある)

このような虚偽表示は、本人の有効な内心的効果意思を欠くので、原則として無効となる(民法第94条第1項)。
例えばAが土地を売る意思がなく、Bが土地を買う意思がないのに、相談のうえで仮装の土地売買契約を締結し、土地の所有名義をAからBに移したという場合には、AB間ではこの土地売買契約は無効である。従ってAは、この土地の所有名義をBからAへ戻すように、Bに対していつでも主張することができる。

しかしながら、上記の例で土地の所有名義をAからBに移した間に、Bが所有名義が自分にあることを利用してこの土地を事情を知らない第三者Cに売却してしまった場合には、この善意の(=事情を知らない)第三者は保護されるべきである。
そこで、民法ではこうした善意の第三者を保護する規定として民法第94条第2項を置いている。
(詳しくは虚偽表示における第三者保護へ)

虚偽表示における第三者保護

本人が相手方と通じて、虚偽の意思表示をすることを「虚偽表示」といい、民法では虚偽表示にもとづく法律行為を原則として無効としている(民法第94条第1項)。

例えばAが土地を売る意思がなく、Bが土地を買う意思がないのに、相談のうえで仮装の土地売買契約を締結し、土地の所有名義をAからBに移したという場合は虚偽表示に該当するので、AB間の土地売買契約は無効である。
しかし、この場合において、土地の所有名義をAからBに移した間に、Bが所有名義が自分にあることを利用してこの土地を事情を知らない第三者Cに売却し、さらにAB間の土地売買契約が無効であるとすれば、Cは権利のないBから土地を購入したことになるので、Cには土地をAに返還する義務が生じてしまう。しかし、これでは善意の(=事情を知らない)第三者であるCの取引の安全が害される結果となり、不当である。

そこで、民法ではこうした第三者を保護する規定として、民法第94条第2項を設け、「虚偽表示の無効は善意の第三者に対して主張することができない」と定めている。この民法の規定により、上記の例ではAとBは、AB間の土地売買契約の無効を善意のCに対して主張することができない。その結果、Cは問題の土地の所有権を有効に取得できることとなる。

なお、民法第94条第2項では、第三者が保護されるためには第三者が善意であること(事情を知らないこと)を要件としており、第三者が無過失であることまでは要求していない(判例)。
しかし、民法第94条第2項が類推適用される場面では、第三者に善意かつ無過失であることを要求する場合もある。
(詳しくは民法第94条第2項の類推適用へ)

極度額

根抵当権の目的不動産により担保される債権の弁済上限額。根抵当権の設定に当たって定められ、根抵当権者は、極度額を限度に、確定した元本および利息等・損害賠償金について根抵当権を行使すること(他の債権に先立って弁済を受けること)ができる。

極度額は、利害関係者の承諾を得なければ変更できない。また、元本の確定後は、極度額を、現に存する債権の額および以後2年間に生ずべき利息等・損害賠償金の合計額に減額することができる。

なお、根抵当不動産を取得した第三者等は、元本確定後の債務額が極度額を超えている場合、極度額を支払うことによって根抵当権を消滅させることができる。

居室

居室とは「居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室のこと」である(建築基準法2条4号)。

この定義に従えば、一般の住宅の場合、居室とは「居間」「寝室」「台所」である。

その反対に、「玄関」「便所」「浴室」「脱衣室」「洗面所」「押入れ」「納戸」「廊下」は居室ではない。

なお建築基準法では、居住の目的のための居室については、採光に関する基準(建築基準法第28条第1項)と換気に関する基準(建築基準法第28条第2項)をクリアすることを必要としている。

ただし、居室として使用する地下室については採光の基準が適用されず、その代わりに衛生上必要な防湿の措置等を行なうことが必要とされている(建築基準法第29条)。

居住支援協議会

住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居など、住宅セーフティネットの構築や運営に関して協議する組織。地方公共団体、宅地建物取引業者や賃貸住宅管理業者の団体、居住に係る支援を行なうNPOなどによって構成される。

住宅確保要配慮者に対する居住支援は、民間賃貸住宅への円滑な入居、公的賃貸住宅等の整備など、地域の実情に即して関係者が連携して進めることが有効であることから、そのための協議、連絡を担うべく設置されている。

居住制限区域

原子力発電所の事故によって被災して避難指示のもとにある区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルトを超える恐れがあり、被ばく線量を低減する観点から避難を継続することが求められる地域をいう。原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)の指示によって指定される。

この区域では、除染を計画的に実施するとともに、早期の復旧に不可欠な基盤施設の復旧を目指すとされている。また、避難指示によって、区域内への不要不急の立入りを控えるとともに、立ち入る場合には被ばくする放射線量をできるだけ低減するよう行動すべきとされている。

なお、この区域の不動産について価格調査等を行うに当たっては、原発事故等格差修正を適用するなどの注意が必要とされている。

居住調整地域

都市再生を図るため、住宅地化を抑制すべき区域として都市計画で定められる地域。地域地区の一つで、「都市再生特別措置法」に基づく制度である。

居住調整地域は、立地適正化計画区域のうち居住誘導区域以外の区域(市街化調整区域を除く)を対象に定められ、地域内では、3戸以上の住宅等の新改築や住宅等への用途変更、またはそのための開発行為(0.1ha以上のもの)に対して、市街化調整区域と同様の規制が適用される

居住誘導区域

都市再生を図るため、居住を誘導すべき区域として立地適正化計画で定められる区域。「都市再生特別措置法」に基づく制度である。

居住誘導区域内においては、居住環境の向上、公共交通の確保など居住を誘導するための措置が講じられる一方、居住誘導区域外においては、3戸以上の住宅等の新改築や住宅等への用途変更、またはそのための開発行為(0.1ha以上)を行なおうとする場合には、着手の30日前までに市町村長に届け出なければならず、届出に係る行為が住宅等の立地誘導に支障がある場合には、市町村長は立地適正化のための勧告をすることができる。

また、居住誘導地区内で20戸以上の住宅を整備する事業者は、事業実施のために必要な場合には、用途地域地区計画等の一定の都市計画または景観計画の決定・策定または変更を提案することができる。

居住用財産に係る譲渡所得の特別控除

居住用財産の譲渡利益に対する所得税について、課税を軽減する措置。

課税の軽減は、譲渡所得を計算するとき、譲渡利益から3,000万円(譲渡利益が3,000万円未満のときはその額)を控除する方法で行なう。

特別控除が適用されるのは、個人が自ら居住している土地・建物を譲渡して譲渡利益が生じた場合であって、住まなくなった日から3年目の年末までに譲渡した場合に限る。

居住用財産の買換え・交換特例

所得税の課税に当たって、不動産の譲渡によって生じた損失(譲渡損失)について、損失発生以降の複数年にわたって所得控除できる制度。所得金額の計算は各年ごとに独立で行なうという原則の例外である。



具体的には、所有期間が5年を超える居住用財産の譲渡損失について、次の2つの場合に、当該年度における損益通算後の損失額を翌年以降3年間、所得から控除することができることとされている。


1. 居住用財産の買い換えのときに発生した損失であって、売却相手先が親族等ではないこと、買い替え資産に係る住宅ローン残高があることなど、一定の要件を満たす場合

2. 居住用財産を譲渡するときに発生した損失であって、譲渡資産に係る住宅ローン残高があることなど一定の要件を満たす場合(当該資産に係る住宅ローン残高から譲渡金額を控除した額を限度とする)

ただし、これらの特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

家具、たんす、下駄、琴、箱などの材料として使われる落葉高木樹。ゴマノハグサ科に属し、原産地は中国大陸とされる。日本でも古くから栽培されている。

桐材は、軽く、湿気に強く、耐火性・防虫性があり、狂いが少ない。また、色は淡褐色で優美である。このような性質から、桐は、樹木としても尊重され、その花や葉のかたちは紋所となっている。

切妻屋根

屋根の形式の一つで、棟からその両側に流れ落ちるかたちのもの。屋根は二面、建物の妻側上部が三角形となる。

切り土

傾斜のある土地を平らな土地にするために、地面を掘り取ること。

宅地造成工事規制区域の中にある宅地において、高さが2mを超える崖を生じるような切り土をする場合には、着手する前に、知事(または政令市・中核市・特例市の市長)の許可を受けることが必要である(宅地造成等規制法第8条)。

近居

親子などが日常的に行き来できる距離に住むことをいう。その距離は、お互いの世帯が日常的に援助でき、援助されるような近さであると考えられている。

それぞれに独立して世帯を営みながら、子育て、介護などの必要に応えることのできる居住形態として注目されている。

金銭債権

金銭の支払いを受けることを目的とした債権をいう。

例えば、売掛金、貸金、不動産賃料、預金などはすべて金銭債権である。

金銭債権を流動化する手法(債権を早期に現金化する手法でもある)として、売掛債権、貸金債権、不動産賃料債権などを信託し、その受益権を金融商品として販売することが行なわれている。住宅ローン債権の流動化も、その一つである。

金銭債権は特約がない限り、貨幣価値の変動を顧慮する必要はなく(ただし一般的に利息の負担を伴う)、不可抗力による履行遅延が免責されないなどの特徴があるが、その特徴は金銭債権を裏付けにした金融商品にも反映されることとなる。

金銭消費貸借契約

借主が、貸主から金銭を借り入れてその金銭を消費し、その借入額と同額の金銭(利息付の場合は利息分も含めて)を貸主に返済するという契約のことである。

住宅を購入するために、住宅ローンを金融機関から借り入れる場合には、購入者は購入する住宅に抵当権を設定し、抵当として金融機関に差し入れるのが一般的である。
この場合には、金銭消費貸借契約と抵当権設定契約をまとめて一つの契約書に盛り込むことが多く、こうした契約は「金銭消費貸借抵当権設定契約」のように呼ばれる。

金銭消費貸借抵当権設定契約には次の契約条項が記載されるのが通例である。

1.借入金額・利率・返済期日・遅延損害金
2.返済の延滞や債務者の信用状況の悪化が生じた場合の措置
3.不動産に対する抵当権設定
4.不動産の滅失等の場合における追加担保の差し入れ
5.不動産の売却・賃貸借等の制限
6.火災保険への加入
7.保証人または保証会社による保証

金属板葺き

金属板で屋根を覆うこと。

金属板には、亜鉛メッキ鋼板(トタン)、スズメッキ鋼板(ブリキ)、アルミなどが使用されるが、最近では、銅、ステンレス、チタンなども用いられる。一般住宅では鋼板、アルミが多く使用されている。

金属板葺きには、軽量かつ安価であること、複雑な屋根でも加工しやすいことなどの長所がある。

金属板葺きの工法としては、一文字葺き、瓦棒葺き、横葺きなどがあり、いずれも板同士の継ぎ目を折り曲げて加工し、下地に釘などで止めるものである。
この他に、継ぎ目を溶接する工法が用いられる場合もある。

金属屋根

亜鉛メッキ鋼板(トタン)、スズメッキ鋼板(ブリキ)、アルミ、銅、ステンレス、チタンなどの金属板で葺(ふ)いた屋根のこと。

禁治産者

常に心神喪失の状態にあり、禁治産の宣告を受けた者のこと(旧民法第7条)。

2000(平成12)年に民法が改正・施行されたため、この禁治産者制度は成年被後見人制度へと移行した(詳しくは「成年被後見人」へ)。

近傍宅地

登録免許税額の算定において、課税対象土地の価格評価のために用いる土地。「近傍類似地」「隣接地」とも言われる。

登録免許税額の算定に当たって用いる土地評価額は、原則としてその固定資産税評価額とされているが、私道、ため池、用水路など固定資産税が非課税の土地については評価額が定まっていない。この場合には、「評価対象の土地に接近するほぼ類似の土地」を指定して、その固定資産評価額の30%を課税対象土地の評価額とすることとされている。近傍宅地は、このときの「評価対象の土地に接近するほぼ類似の土地」である。

近傍宅地の指定は、登録免許税を課す法務局の業務であるが、指定方法は法務局によって異なるので確認する必要がある。

金融商品取引法

有価証券をはじめとする広範な金融商品の取引等について包括的なルールを定めた法律で、証券取引法を全面的に改正するなどにより、2007(平成19)年9月に施行された。

この法律の目的は、金融商品に関する公正な取引、円滑な流通、公正な価格形成等を確保することである。そのために、企業内容等の開示制度、金融商品取引業者等に対する業務規制、金融取引所の開設・運営についての規制などを規定している。

その特徴は、

1.幅広い金融商品の取引業務を投資サービスとして捉え、そのような行為に対して横断的にルールを適用すること

2.投資家の保護と投資市場の自由な発達との均衡を図るため、プロの投資家への法の適用の特例を定めるなど、制度的な工夫がなされていること

3.規制の枠組みを、公正な価格形成などの市場機能に着目して構成していること

である。

この法律は、不動産の証券化した商品の発行や取引についてだけでなく、不動産の流動化によって生み出されたすべての金融商品の取引等に対しても適用される。ただし、不動産特定共同事業法の対象となる商品(不動産特定共同化事業契約に基づく権利の証券化商品)については、同法の特例事業(倒産隔離されたSPC方式の事業)の出資持分以外は、保険契約、共済契約等に基づく権利の証券化商品と同様に、金融商品取引法の適用対象から除外されている。

 

なお、金融商品取引法が定める損失補塡等の禁止及び適合性の原則の規定については、不動産特定共同事業法の対象となる商品についても準用によって適用される。

近隣商業地域

都市計画法(9条)で「近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」と定義されている。

この用途地域では、建ぺい率の限度は原則として60%または80%である。また容積率の限度は100%から500%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。

この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

(建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗等
4.事務所等
5.危険や環境悪化の恐れが少ない作業場面積が150平方メートル以下の工場
6.ホテル・旅館
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等、客席が200平方メートル未満のミニシアター
8.自動車教習所
9.倉庫業の倉庫

(建築できないもの)
1.上記に挙げたもの以外の工場
2.上記に挙げたもの以外の遊戯施設・風俗施設

近隣住区

居住の単位となる区域。小学校区を一つのコミュニティとし、その区域内に商業店舗、コミュニティセンター、公園などが配置され、基礎的な居住ニーズを満たすことができる。また、通過交通は近隣住区内から排除され、歩行のみで日常生活を営むことができる。

近隣住区の考え方は、アメリカのクラレンス・ペリー (Clarence A. Perry)が1924年に体系化した。郊外の開発計画ニュータウン計画などに幅広く取り入れられ、コミュニティの形成を視野に入れたまちづくりにも活かされている。

蟻害

シロアリにより主に木材が食い荒らされ、建築物の歪み・傾きなどのさまざまな不具合を引き起こすこと。

シロアリは、アリに似た白色または茶褐色の昆虫で、等翅目(シロアリ目)に属する。蟻とは無縁で、分類的にはむしろゴキブリに近い仲間である。胴体部にくびれがないことから、アリとの区別ができる。シロアリは生殖の時期には羽を持ち、羽アリとなって戸外へと移動する。
日本に生息するシロアリには、ほぼ日本全域に生息するヤマトシロアリ、千葉より西の温暖な海岸地域に生息するイエシロアリ、都市部に生息するアメリカカンザイシロアリのおおむね3種類がある。

特にイエシロアリは、湿潤な木材(主に建物の下部の木材)のみならず、乾燥した木材をも食害する能力を持ち、古材よりも新材を好んで食害し、加害場所から離れた場所に特別な巣を作り、急速に繁殖するため、その被害が大きい。

議決権(区分所有法における~)

区分所有法の第39条によれば、管理組合集会において通常の議案を議決する場合には、「区分所有者の過半数」かつ「議決権の過半数」の賛成で可決することができる(「普通決議」「特別決議」参照)。

ここでいう「議決権」とは、原則として各区分所有者の専有部分の割合を指している(区分所有法第38条)。
例えば、ある区分所有建物の専有部分の面積の合計が1,000平方メートルの場合に、ある区分所有者の専有部分の面積が70平方メートルであるならば、その区分所有者の議決権は「1,000分の70」となるのが原則である(区分所有法第38条・第14条第1項)。

ただし管理規約の定めによって、これとは異なる割合で、議決権を定めることも可能である(区分所有法第38条)。

義務違反者に対する措置(区分所有法における~)

分譲マンションなどの区分所有建物では、区分所有法の規定により、区分所有者等は、区分所有者全体の「共同の利益」に反する行為をすることが禁止されている(区分所有法第6条)。

このような共同の利益を守るために、区分所有法では「義務違反者に対する措置」という条項を設けている。その内容は次の1.2.のとおりである。

1.区分所有者が共同の利益に反する行為をする場合
この場合には次の3つの措置が用意されている。

1)行為の停止等の請求(区分所有法第57条)
ある区分所有者が、共同の利益に反する行為をした場合(またはその恐れがある場合)には、他の区分所有者は、その行為の停止(またはその行為の結果の除去や、その行為を予防するために必要な措置を行なうこと)を、その区分所有者に請求できる。
これは、迷惑行為をする区分所有者に対して、他の区分所有者は誰でもその迷惑行為の停止等を請求できるという意味であるが、実際には管理規約の定めにより理事長理事会の決議を経て、理事長からその区分所有者に対して正式に行為の停止等を要求することが多い。
なお、この行為の停止等を理事長等が裁判を起こして請求することも可能だが、裁判を起こす場合には、集会普通決議が必要である。

2)使用禁止の請求(区分所有法第58条)
共同生活上の障害が大きく、行為の停止等の請求では十分な効果が期待できない場合には、理事長等が裁判を起こして、迷惑行為をする区分所有者に対して専有部分の一定期間の使用禁止を請求することができる。
この使用禁止の請求をするには、必ず裁判を起こす必要があり、また裁判の提起には集会の特別決議(すなわち区分所有者数の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上の賛成)が必要である。

3)競売の請求(区分所有法第59条)
共同生活上の障害が非常に大きく、使用禁止の請求では十分な効果が期待できない場合には、理事長等が裁判を起こして、迷惑行為をする区分所有者の建物・土地に関する権利を、強制的に競売することができる。
この競売の請求をするには、必ず裁判を起こす必要があり、また裁判の提起には集会の特別決議(すなわち区分所有者数の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上の賛成)が必要である。

2.区分所有者の同居人や賃借人が共同の利益に反する行為をする場合
この場合には次の2つの措置が用意されている。

1)行為の停止等の請求(区分所有法第57条第4項)
ある区分所有者の同居人や賃借人(区分所有法では「占有者」という)が、共同の利益に反する行為をした場合(またはその恐れがある場合)には、1.の1)の場合と同様に、他の区分所有者は、その行為の停止等を、その区分所有者に請求できる。
なお、この行為の停止等を理事長等が裁判を起こして請求することも可能だが、裁判を起こす場合には、集会の普通決議が必要である。

2)占有者に対する引渡しの請求(区分所有法第60条)
共同生活上の障害が大きく、行為の停止等の請求では十分な効果が期待できない場合には、理事長等が裁判を起こして、迷惑行為をする占有者に対して、専有部分の引渡しを請求することができる。
この請求をするには必ず裁判を起こす必要があり、また裁判の提起には集会の特別決議(すなわち区分所有者数の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上の賛成)が必要である。
この請求が裁判で認められると、占有者はその専有部分から退去しなければならない。

逆線引き

都市計画で定める区域区分を、市街化区域から市街化調整区域に変更することをいう。

都市計画の見直しに際して、市街化区域内であるが、まとまった農地が残っているなどのため市街化を抑制すべきとされた地区が対象となる。
逆線引きがなされる背景には、特定市街化区域農地(生産緑地地区を除く)に対して固定資産税・都市計画税が宅地並みで課税されることなどの事情がある。ただし、事例は数少ない。

逆梁工法

ラーメン構造で組み立てたは、一般的に天井の下を通るため、室内に梁が出っ張る形になる。この梁の張り出しをなくすと、天井はスッキリし、家具のレイアウトもしやすくなる。また、梁を住戸の外側(一般にバルコニー側)まで移動すれば、天井も開口部も大きく取れる。それを可能にするのが逆梁工法(逆スラブ工法)。

張り出していた下の階の天井が、上の階の床側に出っ張ってくることになり、ここを二重床とすれば配管スペースとして利用でき、上下階の遮音性を高めることもできる。
また、逆梁をバルコニー側にまで移動すれば、そのままバルコニーの壁として利用でき、開口部も従来より高くなるため、天井高さまでサッシ窓などを大きく取ることもできる。

ギャラリー

片側が開けている幅広な廊下。英語のgallery。回廊、歩廊、柱廊などはギャラリーである。また、展示などに使われる場合も多く、画廊や美術品の展示場所もギャラリーと呼ばれている。

狭い意味で使われるギャラリーは、吹き抜け空間の上部にその空間に開かれた形で設置された廊下やバルコニーを指す用語で、劇場の張り出し席、教会の側廊(アイル)の上階から身廊に開けた廊下などがこれに該当する。

業界団体

産業ごとに結成されている同業種の集まり。その産業の発展のために、研修の実施、会員の規律の維持、社会的理解の促進、行政庁との連絡調整などの活動に当たっている。

不動産業の全国的な業界団体としては、(一社)不動産協会、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)、(公社)全日本不動産協会、(一社)日本住宅建設産業協会、(一社)不動産流通経営協会などがある。
そのほか、マンション管理、ビル管理、不動産の証券化などの事業についても、それぞれに業界団体が結成されている。

業務管理者(賃貸住宅管理業の〜)

賃貸住宅の管理に関する知識・経験等を有する一定の資格者。賃貸住宅管理業法に基づき、賃貸住宅管理業を営む場合に、事務所毎に選任し配置しなければならないとされている。

業務管理者の資格は、賃貸不動産経営管理士宅地建物取引士等であって一定の要件を満たす者について認められる。

業務停止

監督処分の一つで、宅地建物取引業者に対してその業務の全部または一部の停止を命令することをいう。

業務停止を命令できる場合は宅地建物取引業法に規定されており、業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき、業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき、監督処分としてなされた指示に従わないときなどに行なわれる。その期間は、1年以内である。

また、業務停止の処分に違反したときには、宅地建物取引業免許を取り消すこともできる。

業務を行なう場所の届出

宅地建物取引業者が、その業務を行なう案内所・展示会等について、業務内容その他を、業務開始の10日前までに、その案内所等を管轄する知事等に事前に届け出ること。

1.趣旨
宅地建物取引業者は、宅地建物の分譲・代理媒介のために現地案内所を設けたり、展示会・相談会・抽選会を催すなどの方法で、「事務所」以外の場所で契約を締結し、または契約の申込みを受ける場合がある。
このような場合についても公的機関が監督し、業務の適正を確保する必要があるので、そのような案内所等を事前に届け出るよう宅地建物取引業者に対して義務付けたものである。

2.届出の対象となる場所
国土交通省令で定める場所である。これは、具体的には「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」のことを指している。
(詳細は「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」へ)

3.届出をすべき時期
案内所・展示会等で業務を開始する日の10日前までに届け出なければならない。

4.届出の方法
宅地建物取引業者は、所定の様式による届出を、免許を受けた都道府県知事(または免許を受けた国土交通大臣)と、その案内所等が所在する都道府県の都道府県知事の両方に届け出なければならない。

なお、免許を受けた都道府県知事(または免許を受けた国土交通大臣)に対する届出は、案内所等の所在地を管轄する知事を経由することになっている。

5.届出書の内容
届出書の様式は、施行規則様式第12号に規定されている。
届出書の内容は、「対象となる案内所・展示会等の場所」「業務の種別」「業務の態様(契約の締結、契約の申込みの受理)」「取り扱う宅地建物の内容等」「業務を行なう期間」「専任の宅地建物取引士の氏名・登録番号」である。

銀行印(会社の~)

会社が銀行口座を開設する際に、銀行に届け出た印鑑のこと。
小切手や手形の振り出しにこの銀行印が必要である。

銀行印(個人の~)

個人が銀行口座を開設した際に、銀行に届け出た印鑑のこと。

銀行住宅ローン

個人に対する住宅資金の融資(住宅ローン)のうち、銀行等の預貯金取扱金融機関が行なうものをいう。

銀行住宅ローンを行なうのは、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫など、預金の受入れを営むことのできる金融機関(預貯金取扱金融機関)である。これらの金融機関は、銀行法等の法律に基づいて免許を受け又は設立され、業務全般について政府の強い監督のもとに置かれている。

銀行住宅ローンの多くは、融資期間が長期であること、個人に対する多額の融資であることなどによる貸し倒れリスクに対応するため、住宅金融支援機構と連携して実施されている。

なお、住宅金融専門会社、消費者金融会社、保険会社などが行なう住宅ローンは「ノンバンク住宅ローン」と言われ、業務に対して貸金業法が適用される。

区域区分

都市計画によって、都市計画区域市街化区域市街化調整区域とに区分することをいう。

区域区分は、

1.都道府県が、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があると認めるとき
2.都市計画区域が、指定都市の区域、首都圏の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏の都市整備区域の全部または一部を含む場合

に定められる。

なお、区域区分が定められていない都市計画区域を「非線引き区域」と呼ぶことがある。

区域区分が定められていない都市計画区域

市街化区域市街化調整区域とに区分されていない都市計画区域のこと。

一つの都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域とに区分することを「区域区分」(または「線引き」)と呼ぶが、この「区域区分」がされていない都市計画区域が「区域区分が定められていない都市計画区域」である。

「区域区分が定められていない都市計画区域」は一般に「非線引き区域」とも呼ばれている(かつては「未線引き区域」とも呼ばれていたが平成12年の都市計画法の改正によりこの呼称は廃止された)。

1.趣旨
都市計画法第7条では、指定都市等では「区域区分」を必ず定めるよう規定しているので、「区域区分が定められていない都市計画区域」は指定都市等以外に存在している(詳しくは「区域区分」へ)。
「区域区分が定められていない都市計画区域」は市街化の圧力が弱い地域であるので、土地利用に関する規制が市街化区域より緩やかであり、開発許可の規制も緩やかである。

2.土地利用の規制について
「区域区分が定められていない都市計画区域」では、用途地域を定めることができるが、必ず用途地域を定めるわけではない。「区域区分が定められていない都市計画区域」の内部において用途地域が定められていない部分は「非線引き白地地域」と呼ばれることがある。なお、この「非線引き白地地域」では用途制限を課す目的で「特定用途制限地域」を設けることができる。

3.都市施設等について
「区域区分が定められていない都市計画区域」では、都市施設のうち少なくとも「道路、公園、下水道」を定めなければならない(都市計画法第13条第1項第11号)。
また、市街地開発事業促進区域を定めることも可能である(都市計画法第13条第1項第13号・第8号)。

4.開発許可について
「区域区分が定められていない都市計画区域」では開発許可制度が適用される。ただし、開発許可を受けるべき開発の面積は「3,000平方メートル以上」とされている。ちなみに、市街化区域では開発許可を受けるべき開発の面積は「1,000平方メートル以上」である。

ただし、市街化区域・区域区分が定められていない都市計画区域ともに、都道府県・指定都市等の規則により、開発許可を受けるべき開発の面積を「300平方メートル以上」にまで引き下げることが可能である(都市計画法施行令第19条)。
また開発許可の基準については、市街化区域・区域区分が定められていない都市計画区域ともに都市計画法第33条の基準(技術的基準)だけを満たせば、開発許可が与えられる。つまり、区域区分が定められていない都市計画区域に対しては、都市計画法第34条の基準(市街化調整区域の開発許可の基準)は適用されない。

杭基礎

直接基礎では十分に建物を支持できない場合に用いられる基礎。
コンクリート製などの杭を打設して硬い地盤まで到達させ、その杭の上に建物の土台を築くものである。

また固い地盤がない場合には、杭自体の摩擦力で、建物全体の荷重を支える方法が取られる。

空気清浄機

空気に含まれる浮遊物を除去する装置。一般的に、空気をフィルターに通し、浮遊物を濾過する方法が用いられている。

空気清浄機は、小さな粒子を効率よく濾過する性能を備えなければならない。濾過のためのフィルターは目の細かい不織布が使われ、さらに静電気を帯電させることによって吸着力を高める場合が多い。また、空気を吸い込むためのファンは、部屋の大きさに相応する吸引力が必要である。

空気清浄機は、稼働によって濾過能力が落ちるので、フィルターの掃除・交換が必要である。

なお、空気清浄機に加湿機能を加えた加湿空気清浄機もある。

空室対策

賃貸住宅やビルの経営において、賃借人(テナント)がいない住戸(空室)を解消することまたはそのための方策をいう。

空室対策は、借し主のニーズにより良く応えることを基本として実施される。
例えば、賃借人の属性を広げる、家賃、敷金など賃借条件を適正化する、リフォームリノベーションなどによって賃貸スペースの価値を高めるなどが行なわれている。

空中権

2つの意味がある。

1.土地の上空の空間の一部を使用する権利
契約により設定する空間の上下の範囲を定めて土地を独占的に使用する権利をいい、その法的な形式によって「区分地上権」または「区分地上権に準ずる地役権」に分かれる。

区分地上権による空中権は、工作物(例えば空中電線)を所有する目的で上下の限られた空間を排他独占的に使用収益する権利をいう。また、区分地上権に準ずる地役権による空中権は、自己の土地(例えば電柱の設置場所)の便益のために他人の土地の空中を使用する(例えば電線を設置する)権利である。

いずれも、民法上の物権として認められている。

2.未利用の容積率を移転する権利
都市計画で定められた容積率(建物敷地面積に対する総床面積の割合)のうち、未使用のものを他の土地に移転する権利をいう。

一定の条件のもとで容積率を割増しする方法(実質的に容積率が移転される)としては、「特定街区」「一団地の総合的設計」「高度利用地区」「連坦建築物設計」などの制度があるが、いずれも移転対象建物が隣接していなければならない他、既存建物の未利用容積率を移転することはできない(「連坦建築物設計」を除く)。

もっと広範囲で容積率を移転できる制度としては、「特例容積率適用地区制度」がある。これは、都市計画で一定の区域を定め、その区域内の建築敷地の指定容積率の一部を複数の建築敷地間で移転することを認める制度であり、2001年に創設された。

現在、東京都千代田区の一部が「大手町・丸の内・有楽町地区特例容積率適用地区」(116.7ha)として指定され、東京駅の駅舎敷地で未使用となっている容積率(東京駅は復元改修後、それ以上容積率を使用しないで保存される)を、その周辺の新築ビル(東京ビルディング、新丸ビル、丸の内パークビル、八重洲側の南北グラントウキョウビル等)に移転して、本来の容積率以上の高層ビル化を実現している。

容積率の移転は建築確認によって認められるもので、当事者が空中権を直接に取引する制度が確立しているわけではないが、容積を移転する敷地に対して移転先の敷地所有者が地役権を設定し、移転敷地所有者にその対価を支払うという方法が取られている。

なお、アメリカでは、未利用容積率を移転する権利がTDR(Transferable Development Right:移転可能な開発権)として法制化されている。

空地率

敷地面積から建築面積建物が建っている部分の面積)を差し引き、敷地面積で割った値のこと。
敷地に占める空地(くうち:敷地のうち建築物が建てられていない部分のこと)の割合を示す数値である。

空地率が高いほど、建築物の周囲の環境が良好になると考えられている。また近年では高い空地率を確保し、空地に歩行用通路・樹木・植栽等を整備することにより、不動産の価値自体を高めるという開発手法が用いられている。

クオリティオブライフ

QOL」を参照。

躯体

建物の構造をかたちづくる部材の集まり(構造体)の総称。基礎、柱、、壁面、床などで構成され、建物に加わる力を支える役割を担っている。

躯体は、構造体の主要材料に応じて、木造、ブロック造、鉄筋コンクリート造(RC造)鉄骨造(S造)鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)などに区分される。

管柱

通し柱が1階から2階以上の階まで1本物の柱で通すのに対し、管柱は階の途中で胴差など桁材で中断されている箇所に用いる短柱をいう。

クッション・フロア/CF(シーエフ)クッションフロアの略 床材の~

床材のひとつで、合成樹脂で作られた厚みのあるシートをいう。CFはクッション・フロアの略語であるが、クッション・フロアは和製英語である。

クッションフロアは、木製のフローリングに比べて安価で耐水性、弾力性に優れているとされるが、床暖房は使えない。

クッションフロア

プラスチック系床材のうち、塩化ビニル系床材であって、発泡層を含んでいる厚さ2mm前後のプラスチックシートのことを「クッションフロアシート」または「クッションフロア」と呼んでいる。

「クッションフロア」は、表面層と裏打ち層の間に発泡層を挟んでいるため、保温性・衝撃吸収性があり、また水にも強い。そのため、洗面所・脱衣所・台所の床仕上げ材として多用されている。

区分所有

分譲マンションのように、建物が独立した各部分から構成されているとき、その建物の独立した各部分を所有することを「区分所有」という。

「区分所有」が成立するためには、次の2つの条件を満たす必要がある(区分所有法第1条)。

1.構造上の独立性があること
これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることを指している。ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りない。

2.利用上の独立性があること
これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味している。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能であるということである。

つまり、構造上・利用上の独立性がある建物であれば、分譲マンションに限らず、オフィスビル・商業店舗・倉庫などでも区分所有が成立することができる(詳しくは「区分所有建物」へ)。

区分所有権

分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物を「区分所有建物」という。

この区分所有建物において、建物の独立した各部分のことを「専有部分」という。

区分所有権とは、この専有部分を所有する権利のことである(詳しくは「区分所有建物」参照)。

区分所有者

分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物を「区分所有建物」という。

この区分所有建物において、建物の独立した各部分のことを「専有部分」という。

区分所有者とは、この専有部分を所有する者のことである(詳しくは「区分所有建物」参照)。

区分所有者数

分譲マンションなどの区分所有建物において、専有部分を所有している者のことを「区分所有者」という。

この区分所有者は管理組合を結成し、集会において管理規約を議決し、同じく集会においてさまざまな議案を議決することができる。

このように集会で議決を行なう場合には、通常の案件は普通決議で議決し、特別の案件は特別決議で議決することになるが、どちらの議決方法においても、「区分所有者数」のうちの一定以上の賛成が必要である。

ここでいう「区分所有者数」とは、次のような方法で求めた数である。

1.1人が1つの専有部分を1人で所有しているときは、「1」と数える
2.1人が2つの専有部分を1人で所有しているときは、「1」と数える
3.2人が1つの専有部分を共有しているときは、「1」と数える

区分所有建物

区分所有建物とは、構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物のことである。

区分所有建物となるためには次の2つの要件を満たすことが必要である。

1.建物の各部分に構造上の独立性があること
これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることを指している。ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りない。

2.建物の各部分に利用上の独立性があること
これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味している。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能であるということである。

上記1.と2.を満たすような建物の各部分について、それぞれ別個の所有権が成立しているとき、その建物は「区分所有建物」と呼ばれる。区分所有建物については、民法の特別法である区分所有法が適用される。

代表的なものとしては分譲マンションが区分所有建物である。しかし分譲マンションに限らず、オフィスビル・商業店舗・倉庫等であっても、上記1.と2.を満たし、建物の独立した各部分について別個の所有権が成立しているならば区分所有建物となる。

なお区分所有建物では、建物の独立した各部分は「専有部分」と呼ばれる。
また、この専有部分を所有する者のことを「区分所有者」という。

廊下・エレベータ・階段などのように区分所有者が共同で利用する建物の部分は「共用部分」と呼ばれ、区分所有者が共有する。

また建物の敷地も、区分所有者の共有となる(ただし土地権利が借地権である場合には「準共有」となる)。このとき区分所有者が取得している敷地の共有持分は「敷地利用権」と呼ばれる。

従って区分所有建物においては、区分所有者は、専有部分の所有権、共用部分の共有持分、敷地の共有持分という3種類の権利を持っていることになる。

区分所有法

分譲マンションなどの区分所有建物に関する権利関係や管理運営について定めた法律。正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」。「マンション法」と呼ばれることもある。

区分所有建物とは、分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物のことであり、通常の建物に比べて所有関係が複雑であり、所有者相互の利害関係を調整する必要性が高い。

このため、1962(昭和37)年に民法の特別法として区分所有法が制定された。これにより、専有部分共用部分・建物の敷地に関する権利関係の明確化が図られ、規約集会に関する法制度が整備された。

その後、分譲マンションが急速に普及したことに伴って、分譲マンションの管理運営に関するトラブルが生じたり、不動産登記事務が煩雑になるなどの問題点が生じたので、1983(昭和58)年に区分所有法が大幅に改正された。このときに、区分所有者が当然に管理組合を構成すること、集会での多数決主義、建替え制度、敷地利用権と専有部分の一体化などが定められた。

また、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災において被災マンションの建て替えが課題となったこと、老朽化したマンションの建て替えや大規模修繕を円滑に行なう必要が生じたことから、2002(平成14)年には、復旧決議における買取り請求規定の整備、建替え決議要件の緩和、団地内建物の建替え承認決議の創設などが措置された。

なお、マンションの建て替え等に関しては、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律(略称「マンション建替え円滑化法」)」において、合意形成や権利調整についての特別の規定が定められている。

区分建物

一棟の建物のうち、構造上区分されている部分であって、独立して住居等の用途に使用できるものをいう(不動産登記法第2条第22号)。

具体的には、分譲マンションの各住戸が「区分建物」である。

区分建物の登記記録

一棟の建物を区分した各部分のことを、不動産登記法では区分建物と呼ぶ。
この区分建物の登記記録については、普通の建物の登記記録とは異なる特徴がある。

1.表題部が2種類存在する。一棟の建物全体の表題部があり、その次に各区分建物の表題部が置かれる。一棟の建物全体の表題部には、一棟の建物全体の物理的状況が表示され、各区分建物の表題部にはそれぞれの区分建物の物理的状況が表示される。

2.表題部に、建物の物理的状況を、最初に登記をすることを「表題登記」という。一棟の建物全体についてこの表題登記をする際は、その建物に属するすべての区分建物について、同時に表題登記をしなければならない(不動産登記法第48条第1項)。

3.区分建物の敷地は、区分建物所有者全員による共有となる。そのため、敷地の持分と区分建物を別々に売買すること等が法律(建物の区分所有に関する法律)により原則的に禁止されている。
そこで不動産登記法では、区分建物の敷地である土地に「敷地権である旨の登記」という特殊な登記を記載し、その登記がなされた以降は、土地と建物が一体的に処分されることを登記上でも明確にしている(詳細は「敷地権である旨の登記」へ)。

組合

共同の事業を営むために、複数の人が出資し、組合契約を締結することで結成された人の団体のこと(民法667条等)。

組合は法人と同様に人の団体であるが、組合は法人格を持たず、法人は法人格を持つという大きな違いがある。
組合は法人と比較して、団体としての拘束が弱く、構成員の個性が顕著であるといわれている。例えば、組合の財産は全組合員の合有であり、組合の債務に対しては構成員がその個人財産によって弁済する責任を負う。また構成員が組合を脱退する際には持分の払い戻しが認められている。

このように組合は個人の集合としての性格が色濃く、法人とは異なっている(民法第676条、第675条、第681条など)。

クラウドファンディング

不特定多数が特定の目的のために資金を提供する行為またはその行為によって資金を調達すること。通常、インターネットサービスを利用する。英語でCrowd-funding。ソーシャルファンディングともいわれる。

クラウドファンディング手法の特徴は、インターネットを通じた告知・呼びかけとそれに対する応募とをマッチングすることによって、特定のプロジェクトのために多数の人々から小額の支援を得ることである。資金提供のかたちには、寄付のほか、投資や購入の方法がある。

活用の分野は広範で、市民活動や芸術活動に対する支援、小規模な事業への資金提供、企業に対する小口投資などがある。市民によるまち・地域への投資手法として活用が期待されている。

クラック

ひび割れ、すき間。英語のcrack。建物の外壁、目地などに生じる。

建物にクラックが生じると、水が浸入し、錆や腐食が発生・進行する恐れがある。クラックが生じる主な原因は、塗膜の乾燥、材料の劣化、振動であるが、定期的に点検・補修することによって防ぐことができる。

クランプ

物を挟みネジで締め付け固定する工具。英語のclampで、万力の一種。物を加工するときに動かないようにするためなどに使われる。また、足場などを組み立てるときに鋼管を締め付ける金具も「クランプ」と言われる。

なお、英語のclampには、「かすがい」という意味もある。

繰上返済(住宅ローンの〜)

住宅ローンで借りた資金を、当初の契約よりも前倒しで返済すること。繰り上げ返済した金銭は、元金の返済に充当される。返済すべき元金が減少するため、その後の利息負担も減少する。

繰上返済の方法には、(1)毎月の返済額を変えずに返済期間を短くする方法(期間短縮型)と、(2)返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法(返済額軽減型)とがある。利息を含めた負担総額は期間短縮型のほうが少なくなる一方、返済額軽減型は返済に充てる毎月の負担額を小さくできる。

繰越控除(不動産譲渡所得に係る~)

所得税の課税に当たって、不動産の譲渡によって生じた損失(譲渡損失)について、損失発生以降の複数年にわたって所得控除できる制度をいう。所得金額の計算は各年ごとに独立で行なうという原則の例外である。

具体的には、所有期間が5年を超える居住用財産の譲渡損失について、次の2つの場合に、当該年度における損益通算後の損失額を翌年以降3年間、所得から控除することができることとされている。

1. 居住用財産の買い換えのときに発生した損失であって、売却相手先が親族等ではないこと、買い換え資産に係る住宅ローン残高があることなど、一定の要件を満たす場合
2. 居住用財産を譲渡するときに発生した損失であって、譲渡資産に係る住宅ローン残高があることなど一定の要件を満たす場合(当該資産に係る住宅ローン残高から譲渡金額を控除した額を限度とする)

なお、この措置については、適用期限が定められているので注意が必要である。

クルドサック

行き止まり道路の奥がロータリーになっていて、車の方向転換ができるようになっている袋路のこと。クルドサックを用いることにより、住人以外の車の通過を防止し、防災・防犯上の安全が確保できる。

車寄せ(エントランスの)

玄関に設置され、自動車の乗り降りに使える付きの出入り口。ホテル、集会場など多くの人が出入りする建物に設けられているが、マンションの施設としてエントランスに設置される場合もある。

クレセント

引き違いサッシなどの召し合わせ部分に取り付ける、戸締まり用の金物。
片方の側にはフック状部分のある固定金物が、もう一方には取っ手の付いた円盤の縁に螺旋状の突出があり、これを回転させるとフックにかかるようになっている。

ちなみにクレセントとは三日月のことで、形状が似ていることによる。

クロス

天井や壁などの仕上げ材として用いられる薄い布製の装飾用壁紙のこと。布製だけではなく、ビニール製やプラスチック製のものも多く、環境問題を含めた安全性が問われている。

最近ではシックハウス症候群の原因とされるホルムアルデヒドを含まない壁装用接着剤が使われていたり、環境対応商品や機能性壁紙も登場している。

クロゼット

クローゼットのこと。

クローク

携帯品やコート類の一時預かり所。英語のcloak room。劇場、ホテル、会議場などに設置されている。

なお、預かり所では預かったものを一定の場所に保管することから、住宅に設ける衣類等を保管・収納する場所をクロークという例もある。しかし、英語のcloakにはそのような意味はなく、誤用である。

クロージング

不動産を売却する媒介業務が完了することをいう。

その業務は、通常、宅地建物の所有者からの売却依頼から始まり、物件の査定、広告、買い手の勧誘、価格や条件の交渉などを経て、売買契約の締結、物件の引渡しと代金決済で完了する。このように、媒介業務は連続的に進んで行くのであり、一件落着すれば「閉じる」。

クローズエンド

投資信託のうち、受益権の買い戻し義務がないもの。

クローズドエンドの場合には、信託の受託者は、受託資金を期限まで安定的に運用できるため、流動性に欠ける資産の運用も可能になる。一方、投資者は、保有する受益権を換金する場合には、受託者に買い戻しを求めることはできず、他者に売却する必要がある。

会社型の投資信託は大部分がクローズドエンドであり、上場されているREITもこれである。

なお、受益権を買い戻す義務のある投資信託は「オープンエンド」といわれ、契約型の投資信託の大部分はこれである。また、私募REITの大部分もオープンエンドである。

クローゼット

衣類や生活雑貨を収納するために間取りされた空間。英語のClosetで、「クロゼット」ともいう。「物置部屋」「押し入れ」もほぼ同義である。

CL

クローゼットのこと。

クーリングオフ

一定期間、無条件で契約の申込みの撤回または解除ができる制度。消費者を保護するための措置で、訪問販売、電話勧誘販売などに適用されるが、一定の宅地建物の取引もその対象となる。

クーリングオフの適用があるのは、

1.宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地建物売買契約において、2.その事務所やそれに準ずる場所以外の場所で申込みや締結がされた場合であり、3.撤回または解除ができるのは8日間以内

である。

撤回または解除は書面で通知しなければならないが、その理由などを示す必要はなく、発信日を明確にすれば良い。その通知があったときには、売主は速やかに手付金等受領した金銭を返還しなければならない。

グッドデザイン賞

推奨に価するデザインに与えられる賞またはそのしくみをいう。毎年、応募されたデザインについて審査・授賞される。1957年に創設され、公益財団法人日本デザイン振興会が主催している。受賞したデザインには「Gマーク」をつけることができる。

グッドデザイン賞におけるデザインは、「人間を中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する一連のプロセス」(日本デザイン振興会ホームページ)であるとされ、幅広い領域を対象としている。例えば、サービス付き高齢者向け住宅、工業化住宅なども受賞している。

グラスウール

溶融したガラスを短繊維化し綿状にしたものを接着剤で板、筒、帯状に加工したもの。断熱性、保温性に優れている。ガラス繊維(ファイバーグラス)ともいう。

グランピング

設備やサービスの提供を受けて行なうキャンプ。英語のglamorous(魅力のある)とcamping(野営)を合成した造語(glamping)である。

グランピングは、自然環境が豊かな場所に設置された、設備が整ったテントや小屋を利用して、食材の提供や調理サービスを受けて過ごす余暇活動(レクリエーション)の方法とされる。労力をかけずに手軽に野営し、自然を享受することが特徴で、そのための設備やサービスを提供する事業が展開されている。

グリル

料理用の焼き網。英語のGrill。焼き料理のための部屋Grill roomをさすこともある。

また、鉄格子や格子窓もグリルといわれるが、この場合の英語のつづりは“Grille”である。

グリーンカーテン

建物の外側を生きた植物で覆ってカーテン状にしたもの。「緑のカーテン」ともいい、壁面緑化の手法のひとつである。

グリーンカーテンは、窓の遮光のほか、外壁の温度上昇の抑制、光合成による二酸化炭素の吸収、外壁の保護、観賞植物の育成などの効果が期待できるとされている。

グリーンカーテンとして通常栽培されるのは、つる植物である。

グリーン住宅ポイント制度

高い省エネ性能を有する住宅を取得する者等に対して、商品や追加工事と交換できるポイントを発行する制度。政府の予算措置で実施され、毎年度、実施の有無、制度の内容、発行予算額が決定される。

グリーン住宅ポイントの発行対象は毎年度定められるが、おおむね、高い省エネ性能等のある持家住宅の新築、空き家バンク登録住宅等の購入、高い省エネ性能を有する賃貸住宅の新築、断熱改修等の住宅リフォームであって、一定の条件を満たす必要がある。また、発行ポイント数は、対象の種別などに応じて定められている。

発行されたポイントは、一定の商品や一定の追加工事と交換できる。

なお、発行したポイントが予算額に達すると発行が停止されるので、注意が必要である。たとえば、2021年度のポイント発行申請は、12月に受付を終了している。

グリーン投資減税(建築物に係る省エネルギー設備に関する~)

エネルギー起源の二酸化炭素の排出削減または再生可能エネルギー導入拡大に相当程度の効果が見込まれる設備等を取得した場合の減税措置のうち、建築物に係る省エネルギー設備を対象にしたものをいう。

対象設備を取得し1年以内に事業の用に供した場合には、所得税・法人税について、

1.取得価額の30%相当額の特別償却
2.取得価額の7%相当額の特別控除(中小企業者等に限る)
のいずれかを選択して適用できる。ただし、2011(平成23)年度から13(25)年度までの3年前に限られる。

減税の対象となる建築物に係る省エネルギー設備は、次の通りである。

1.エネルギー使用合理化設備
高効率空気調和設備、照明設備、高効率換気設備、高断熱窓設備(それぞれの設備が現行省エネルギー基準を25%上回るもの)を同時に設置する場合

2.エネルギー使用制御設備
ビルエネルギー管理システム(測定装置、中継装置、アクチュエーター、可変風量制御装置、インバーター、電子計算機により構成)で省エネルギー効率が全体で5%改善する場合

グリーンベルト

連続する帯状の緑地帯。英語のgreen belt。市街地が無秩序に拡大することを防止し、レクレーションや環境保全の必要に応えるために整備される。また、エベネザー・ハワード (Ebenezer Howard)が構想した田園都市も、広いグリーンベルトに囲まれている。

大規模なグリーンベルトは、ロンドン市街地の外縁を囲むものがよく知られている。日本でも、1939年に東京緑地計画としてグリーンベルトの整備が決定されている。しかしながら、東京緑地計画はほとんど実現しなかった。

グリーン・ニューディール

環境の保全・改善のための投資を促進することによって雇用を創出し、景気の浮揚を図ろうとする政策をいう。

その特徴は、環境投資と経済政策とを結び付け、「地球環境問題への対応」、「景気回復」、そして「エネルギーの確保」という3つの課題に対応することにある。

1920年代の世界大恐慌において採用されたニューディールは、TVA(テネシー川流域開発公社)設立(アメリカ)やアウトバーン建設(ドイツ)のような公共事業を中心とした投資を推進するものであったが、グリーン・ニューディールにおける投資は、気候変動問題に対応するための技術開発や、エネルギー構造の変革を推進する産業活動に向けられる。

グリーン・ニューディールの目標には、建物熱効率の改善、建物のカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出ゼロ)化、スマートグリッドの構築などが含まれていて、不動産のあり方にも大きな影響を与える可能性がある。

グルニエ

アティック(attic、アテカともいう)と同意。

屋根裏部屋のこと。グルニエ・アティックとは、もともと古代建築の記念門の上部につくられた部屋であったが、転じて屋根裏部屋の意味になったといわれている。

グルーガン

銃の形をした接着用器具。英語のglue-gun。スティック状の固体接着剤を熱で溶かして接着面に付着させ、接着剤が冷えて固化する方法で接着する。「ホットガン」ともいわれる。

グルーガンに用いられる接着剤は、溶剤は使われておらず、比較的低温で溶け硬化が早い材料(熱可塑性プラスチック)が用いられている。このような接着剤を「ホットメルト接着剤」というが、材料によって溶解温度や強度に違いがある。したがって、グルーガンを使う場合には、接着剤の性質に応じて温度などを調整しなければならない。

紙、木材、布などを手軽に接着することができる器具であるが、ガラス、鉄、プラスチックなど表面が平滑なものの接着には強度不足となる恐れもある。また、発泡スチロールなど熱に弱い材料の接着はできない。

グループホーム(認知症対応型共同生活介護・介護予防認知症対応型共同生活介護)

認知症と診断され、要介護度1以上で、ホームのある市町村に住んでいる高齢者が入居し、10人未満の小単位でスタッフとともに共同生活を営む施設。認知症対応型共同生活介護、介護予防認知症対応型共同生活介護ともいう。

住み慣れた地域で、家庭的で落ち着いた雰囲気で穏やかに過ごすことで認知症の進行を遅らせ、家庭介護の負担を軽減することを目的としており、2006年、介護保険法改正により導入された「地域密着型サービス」の一つに位置付けられた。

グループホームの指定基準は、1事業所当たり共同生活住居(ユニット)が2以下で、1ユニットの定員は5~9人。居室・居間・食堂・台所・浴室・事務所などがあり、居室は原則個室で4.5以上と定められている。
介護職員は、ユニットごとに、常勤で利用者数の3人に対し1人以上、夜間も常時1人以上を配置している。

比較的小規模な施設なので、住宅を改修したものや社宅・寮を利用したもの、他の介護施設に併設したものなどがあり、運営主体の多くは、民間事業者やNPO法人などの非営利団体である。

費用は、家賃、光熱費、共益費、食費が掛かり、立地や建物・設備の仕様によって大きな開きがある。このほか、介護保険の1割負担の費用が掛かる。

グレーチング

格子状の蓋。英語のgrating。

排水機能を備えていて、道路や通路の溝蓋などに使われている。機能だけでなく、デザインの良さも必要とされる。      

蹴上げ

階段の一段の高さのこと。階段は足が乗る水平面の板(踏面=ふみづら)と踏面と垂直に交わる蹴上げで構成される。建築基準法では、住宅の場合、幅750mm以上、蹴上げ230mm以下、踏面150mm以上と決められている。

ケアハウス

1989年にスタートした後に登場した比較的新しいタイプの軽費老人ホーム。ケア付となるので、有料老人ホームと同様に、介護保険法の特定施設となれる。

指定基準を満たす職員が配置され、居室は専有部分が21.6平方メートル以上(共同生活室を設けるユニット型の場合は15.63平方メートル以上)で、トイレ・洗面所・ミニキッチン・収納が備えられている。
費用は、家賃・事務費・生活費を月額で支払うのが一般的。

ケアマンション

高齢者の居住の利便性を高めた集合住宅のこと。シルバーマンションともいう。

空間の設計や設備が高齢者の居住に適する他、介護、給食など日常生活に対する支援サービスを伴うことが多い。分譲、賃貸の両方のタイプがある。

高齢者の居住に関しては、

1.バリアフリーユニバーサルデザインを採用するなどの空間・設備デザインについての工夫、2.生活の手伝いや健康保持・医療サービスのような高齢者向け支援の提供、3.住宅費、生活費、医療費などを含めた経済的な負担の管理に対する支援

を総合的に考えなければならない。

経営管理権(森林の〜)

市町村が、森林所有者の委託によって森林を経営管理(伐採・販売・造林・保育)する権利。森林経営管理法に基づいて市町村が設定する。

経営管理権の設定対象となる森林は、水源涵養機能、木材生産機能、生物多様性保全機能等の森林の多面的機能の発揮のために間伐等の施業を実施すべきにもかかわらず、長期間にわたって施業が実施されていない森林である。

経営管理権の設定は、市町村が、森林所有者の意向・申出に基づいて「経営管理権集積計画」を作成し、森林所有者及び関係権利者の同意を得て行なう。そして、経営管理権が設定された森林の所有者は、その経営管理を市町村に委託することとなる。

設定された経営管理権は、権利設定後にその森林の所有者となった者に対しても効力がある。宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、その旨を重要事項として説明しなければならない。

なお、経営管理権が設定された森林のうち林業経営に適した森林については、市町村は、その経営管理を林業経営者に再委託できるが、再委託によって経営管理する権利が「経営管理実施権」である。

経営管理実施権(森林の〜)

他者が所有する森林について、その経営管理(伐採・販売・造林・保育)を市町村の委託を受けて実施する権利。森林経営管理法に基づいて設定される。

市町村は、一定の森林について、森林の所有者自らが森林の経営管理を実施できない場合には、森林の経営管理を受託できる権利(経営管理権)を取得することができる。このとき、市町村は、森林管理権を設定した森林のうち林業経営に適した森林については、その経営管理を林業経営者に再委託できる。この再委託によって森林の経営管理を実施する権利が「経営管理実施権」である。

経営管理実施権は、設定を希望する民間事業者(一定の要件を満たす者)を公募し、審査・選定した民間事業者に対して設定される。

設定された経営管理実施権は、権利設定後にその森林の所有者となった者に対しても効力がある。宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、その旨を重要事項として説明しなければならない。

景観行政団体

景観法に基づき行為規制等の権限を行使する都道府県・市町村のこと。具体的には、都道府県、指定都市、中核市を指す。

ただし、指定都市・中核市以外の市町村であっても、都道府県に代わって、景観計画、景観重要建造物、景観重要樹木、景観協定、景観整備機構の事務を処理することにつき都道府県とあらかじめ協議した市町村であれば、景観行政団体となる(景観法第7条第1項)。

景観計画

景観行政団体が策定する良好な景観の形成に関する計画のこと(景観法第8条第1項)。景観計画は、都市、農山漁村その他市街地または集落地域と、これと一体となって景観を形成している区域について定められる。この景観計画が定められた区域のことを「景観計画区域」という。

景観計画では、景観計画の区域(景観計画区域)、良好な景観の形成に関する方針、良好な景観の形成のための行為の制限に関する事項その他が定められる(第8条第2項)。
特に行為の制限に関する事項(第8条第2項第3号)については、

1.建築物または工作物の形態または色彩その他の意匠の制限
2.建築物または工作物の高さの最高限度または最低限度
3.壁面の位置の制限または建築物の敷地面積の最低限度
4.その他第16条第1項の届出を要する行為ごとの良好な景観の形成のための制限

などの制限のうちで必要なものを定めることができる(第8条第3項)。

景観計画区域

景観行政団体が策定する景観計画で定められた区域のこと(景観法第8条第2項第1号)。
景観計画区域では、行為の制限に関する事項(第8条第2項第3号)として、建築物工作物の形態意匠の制限、建築物・工作物の高さの最高限度または最低限度の制限、壁面の位置の制限または建築物の敷地面積の最低限度などのうち必要なものが定められている(第8条第3項)。

景観計画区域内で次の行為をするときは、30日前までに景観行政団体の長に届出を行なうことが必要である(景観法第16条第1項、第18条第1項)。

1.建築物の新築、増築、改築もしくは移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替または色彩の変更
2.工作物の新設、増築、改築もしくは移転、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替または色彩の変更
3.開発行為その他政令で定める行為
4.良好な景観の形成に支障を及ぼす恐れのある行為として景観計画に従い景観行政団体の条例で定める行為

この届出に対して、景観行政団体の長は、設計の変更等の措置を命じることができる(景観法第17条第1項)。この命令に従わない場合、景観行政団体の長は、原状回復を命令することができ、それにも従わないときは自ら原状回復等を行なうことができる(景観法第17条第5項、第6項)。
このように景観計画区域内での行為制限には、ある程度の強制力が付与されていることに特徴がある。また原状回復命令(景観法第17条第5項)に違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則が予定されている(景観法第100条)。

景観重要建造物

景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な建造物であって、景観行政団体の長が指定した建造物のこと(これと一体となって良好な景観を形成している土地その他の物件を含む)。
景観行政団体の長は、景観計画の景観重要建造物の指定の方針に即して、景観重要建造物を指定する(法第19条第1項)。

景観重要建造物の増築、改築、移転もしくは除却、外観を変更することとなる修繕もしくは模様替え、または色彩の変更をするには、景観行政団体の長の許可が必要である(景観法第22条)。

なお、文化財保護法の規定により国宝、重要文化財、特別史跡名勝天然記念物または史跡名勝天然記念物として指定され、または仮指定された建造物については、景観重要建造物に指定することができない(法第19条3項) 。

景観重要樹木

景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な樹木であって、景観行政団体の長が指定した樹木のこと。
景観行政団体の長は、景観計画の景観重要樹木の指定の方針に即して、景観重要樹木を指定する(法第28条第1項)。
景観重要樹木の伐採または移植には、景観行政団体の長の許可が必要である(景観法第30条第1項)。

なお、文化財保護法の規定により特別史跡名勝天然記念物または史跡名勝天然記念物として指定され、または仮指定された樹木については、景観重要樹木に指定することができない(景観法第30条第2項)。

景観地区

都市計画によって定められる地域地区の一つで、市街地の良好な景観を形成するための地区をいう。

その指定要件等は景観法に規定されている。

景観地区内においては、建築物の形態意匠(デザイン・色彩など)が規制される他、条例によって、工作物の形態意匠の制限、建築物・工作物の高さ限度、壁面の位置等、開発行為等の規制を定めることができるとされている。この場合、形態意匠の規制については、各地区の事情に応じて多面的な基準を定め、その基準に基づいて審査・認定するという方法が採用されている。

なお、都市計画区域準都市計画区域以外の区域では景観区域を定めることはできないが、条例によって景観区域に準じた規制をすることができるとされている(準景観地区)。

景観法

良好な景観の形成を促進するための施策を定めた法律で、2004年6月に公布、同年12月から施行された。

この法律は、都市部だけでなく農村部等も対象にして、地域の個性を反映した柔軟な規制等によって景観の形成を図るための制度を定めており、景観に関する基本法とされる。

景観法に規定されている主な制度としては、

1.景観行政を担う主体としての景観行政団体
2.景観計画区域の指定、景観計画の策定、それにもとづく建築等の届出、デザイン・色彩に関する勧告・変更命令など
3.都市計画による景観地区の指定、建築等のデザイン・色彩、高さ等の総合的な規制、景観認定制度など
4.住民合意による景観協定
5.景観重要建造物景観重要樹木の指定・保全

などがある。

軽減税率(消費税の〜)

特定の商品に対する消費税の税率を軽減すること又は軽減して課せられる税率をいう。消費税を課している各国で広く採用されている。

日本では、消費税率を10%に引き上げる時点(2019年10月1日)に、合わせて軽減税率が導入される。軽減税率は8%で、軽減の対象となる商品は、「酒類」「外食」「ケータリング・出張料理等」を除く飲料食品、定期購読の契約をした週2回以上発行される新聞である。

消費税制度においては、事業者は、納入すべき消費税額の算定に当たって、売上税額から仕入税額を控除することになる。この場合、軽減税率が導入されているときには、仕入れ商品が軽減税率の対象であるかどうかによって仕入税額が異なる。そこで、2023年10月1日から、消費税の適切な課税を確保すべく、登録した事業者が商品ごとに適用税率・税額を表示した書類(インボイス)を交付する制度(インボイス方式)が導入され、インボイスに基づいて仕入れ税額控除を算定することとなる予定である。インボイス方式が実施されたのちは、原則としてインボイスに基づかない仕入れ税額控除は認められない。

また、2019年10月1日以降インボイス方式が導入されるまでは、軽減税率対象であるか否かを示す書類に基づいて仕入れ税額控除を算定する方法(区分記載請求書等保存方式)が適用される。

なお、小規模事業者については、事務負担軽減のため、納入すべき消費税額の算定に当たって簡易な方法を採用することが認められている。

蛍光灯

ガラス管の内面に塗った蛍光物質を発光させる照明灯。

蛍光灯のガラス管には、アルゴンなどの希ガスと少量の気体水銀が封入され、内面には蛍光塗料が塗られている。そして、放電によって電子が管内の水銀原子に衝突して紫外線が放射され、さらにその紫外線が塗られた蛍光物質を照射して可視光線が発生する。これが発光のしくみである。

蛍光灯が点灯するためには放電を始動させるための装置が必要で、その装置にはいくつかの種類がある。たとえば点灯管(グロースタータ)はその一つである。       

経済産業省

国の行政事務を分担管理する機関のひとつ。経済産業省設置法に基づいて設置され、その長は経済産業大臣である。英語表記は、Ministry of Economy, Trade and Industryである。

経済産業省は、「民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展並びに鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ること」(経済産業省設置法)を任務とし、その達成のための事務を司っている。

所掌事務は多岐にわたるが、産業政策、通商政策、エネルギー政策に関する事務の多くは、経済産業省が担っている。また、資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁は、経済産業省の組織である。

たとえば、住宅設備機器、インテリア用品、工場生産住宅などの生産に関する指導・助成や、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する指導・助成は、国土交通省だけでなく経済産業省も行なっている。

形質変更時要届出区域(土壌汚染対策法の~)

土壌の汚染状態が基準に適合していない土地であって、土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じる恐れがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域(摂取経路の遮断が行なわれた区域を含む)。土壌汚染状況調査の結果によって都道府県知事が指定するが、指定する区域には、一般の区域のほか、埋立地管理区域、埋立地特例区域、自然由来特例区域の種別がある。指定は公示され、台帳に記載して公衆の閲覧に供される。

この区域内では、土地の形質変更をしようとする場合には、都道府県知事に計画の届け出が必要である。このとき、計画が適切でない場合には、計画の変更が命じられる。この制限は、宅地建物取引の営業における重要事項説明の対象とされている。

経常利益

企業会計上の概念で、企業の経常的な経営活動から生まれた利益をいう。

通常、一会計年度の間の値をいい、当期の経常的な経営実績を表わすとされる。

経常利益は、当期の損益計算書をもとに、営業収益(売上高)から営業費用(売上原価、販売費・一般管理費)を引いた値(営業利益)に、さらに営業外の収益・費用(利息の受取・支払、有価証券の売却損益など)を加減して算出される。従って、特別損益(固定資産の売却損益、過年度の減価償却過不足修正額など)は反映されない。 

経常利益=営業収益-営業費用±営業外の収益・費用

この値がマイナスの場合は経常損失となるが、両者の総称が「経常損益」である。

珪藻土

藻の一種である珪藻類の遺骸による堆積土で、素材色は白色、灰白色、淡黄色。多孔質で吸水性に富むが、軽くて脆い。もともと研磨材、耐火材、七輪などの材料に使われたが、近年、高い吸放湿性、吸臭・吸音性、断熱性からシックハウス対策として注目され、住宅の内・外壁に使用されることが多い。

漆喰のようにツノマタなどを混ぜた左官塗り用だけでなく、素人でもローラーやハケで簡単に塗れる塗装タイプの製品も開発されている。

経年劣化

時間とともに品質が低下すること。雨風・湿気・温度変化・日照などによる品質の低下だけでなく、通常の方法で使い続けることによる摩滅、汚れ等の損耗も経年劣化である。

 

不動産の賃貸借契約解除の際に賃借人が負担すべきとされ、原状回復は、賃借人の故意・過失等による劣化の回復であって、経年劣化による損耗の回復は含まれない。たとえば、国土交通省が示す「原状回復ガイドライン」では、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡などの通常の住まい方で発生するものや、フローリングの色落ち、網入りガラスの亀裂などの建物の構造により発生するものの回復は、賃貸人の負担となるとしている。

競売

債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、その売却代金によって債務の弁済を受けるという制度のこと。

刑罰

犯罪に対して国家が犯人に与える罰のこと。

刑罰には重い順に「死刑、懲役、禁固、罰金、拘留、科料」があるとされている。
「懲役、禁固、拘留」は自由刑に分類され、「罰金、科料」は財産刑に分類される。
また、財産刑の付加刑として「没収」がある。

軽費老人ホーム

軽費老人ホームは、地方自治体や社会福祉法人など公的機関が設置・運営する福祉施設。
無料または低額な料金で入居でき、食事の提供、その他日常生活に必要な支援を提供する老人福祉施設の一つである。

軽費老人ホームは、給食付のA型と自炊タイプのB型、そして「居宅サービス」を提供する機能を持つケアハウスの3種類があるが、2008年にケアハウスへの一元化が決定。A型、B型は建て替え時にはケアハウスへの転換が求められる。
A型には、月収34万円以下という所得制限があり、月額費用も所得に応じて決められる。B型は、自炊できるぐらい自立していることが入居の条件。

景品表示法(不動産業における~)

商品やサービスの表示や景品類の提供に関して、一般消費者による自主的、合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限・禁止する法律。正式名は「不当景品類及び不当表示防止法」で、1962年に制定された。

景品表示法によって禁止される「不当な表示」および制限・禁止される「景品類」は、告示によって明示され、それに反する行為に対しては、措置命令、課徴金納付命令などが課せられる。また、不特定かつ多数の一般消費者に対して優良誤認・有利誤認を与える行為については、適格消費者団体がその停止・予防等を求めることができる。

景品表示法は、不動産取引に対しても適用される。特に、不動産広告は、誤認を招く恐れが大きいため、景品表示法に基づいて、政府の認定を受けた「不動産の表示に関する公正競争規約」(不動産公正取引協議会連合会)が定められている。

契約

対立する2個以上の意思表示の合致によって成立する法律行為のこと。

具体的には、売買契約賃貸借契約、請負契約などのように、一方が申し込み、他方が承諾するという関係にある法律行為である。

契約一時金(賃貸住宅における~)

賃貸住宅を賃借するときに、賃料とは別に契約時に一括して支払う金銭。その内容や使途は場合に応じてさまざまで、契約時にはその意味や適切さについて十分に確認しなければならない。

たとえば、礼金、保証金、敷引きなどは、いずれも契約一時金に該当するが、何に対する対価であるかについて、貸主・借主双方が合意する必要がある。また、敷金は、債務を担保するためのもので契約終了時などに精算する金銭であるから、契約一時金に含めることは適切ではなく、区別して金額等を明記しなければならない。   

契約責任原理

契約の締結によって一定の行為を履行する責任が生じるという私法上の原理。債務不履行によって損害賠償責任が生じるのはこの原理に基づく。

伝統的に、契約責任原理によって損害賠償責任が生じるのは、「債務者の責めに帰すべき事由(帰責事由)」によって債務が履行されない場合であり、債務者の故意・過失又は信義則上これと同等の事由がない場合には、損害賠償責任は生じないと考えられている。これに対して、消費者契約法理の進展などを背景にして、契約によって引き受けた結果を実現できなかったことによって生じた損害(ただし契約が想定していない障害による損害を除く)に対しては賠償の責任があるとし、債務不履行に対して責任を負わないのは「契約において債務者が引き受けていなかった事由」がある場合であるという考え方が提起されている。

このような考え方の違いは、契約責任原理を適用する場合に責任を負う根拠をどこに求めるかの違いの現れでもあり、前者は故意・過失の存在に、後者は契約の拘束に反する行動に、それぞれ責任を負わせることとなる。最近は、契約に基づく規律を重視する立場が強くなっていて、どちらの考え方を適用すべきかなどについて議論がある。

なお、契約責任原理の適用に当たっては、不動産の売買のような特定物の取引において、売主が引き受ける責任の範囲や内容を明確に確定できるかどうかなど実務的な視点からの議論も必要である。

契約締結上の過失

私法上の概念で、契約締結の過程において、一方の過失によって相手方が損害を受けたという場合に、その賠償責任を認めようとする責任理論をいう。

契約に当たって、調査・報告、配慮、注意などの義務を怠ったことにより、契約が不成立または無効となって不測の損害を与えたときに、民法で規定する信義則に違反したとして、損害賠償の責任を負うことになる。この考え方は、判例によって確立しており、損害賠償の範囲は、契約が有効なものと信じたことにより被った損害(現地検分の費用、銀行融資の利息、改修などに要した追加費用など)とされる。

例えば、売主に調査・告知義務違反があり損害を与えた場合(例えば、隣地の高層マンション計画の不告知によって生じた日照障害)、契約の準備段階で注意義務違反があり契約締結に至らなかった場合(例えば、相手に誤信を与えて取引予定の建物が改修されたが契約締結に至らなかった場合に、誤信を与えないようにする注意を怠ったとされたケース)などがその例である。

契約の解除

契約締結時にさかのぼって契約を解消すること。

ただし、賃貸借契約のように継続的な契約の場合には、契約の効果は将来に向かってのみ解消するため、解約ということが多い。

その方法は、大きく、当事者の片方が一方的に契約を解除する場合と契約の当事者で話し合って契約をなかったことにする場合(合意解除)に分かれる。前者はさらに、法律の規定によって解除する権限が発生するもの(法定解除)と、契約などで定めた条件に従って発生するもの(約定解除)の2種類がある。

法定解除ができるのは、相手方に履行遅滞や履行不能のような債務不履行があった場合と、売買契約における契約不適合責任にもとづいて解除する場合である。また、約定解除には、解約金を支払っていつでも解約できると定めた場合(解約手付)、期間内に建物を建築しないときには買い戻す約束をした場合(買戻特約)などのケースがある。

契約不適合

売買や請負において、契約に基づいて引き渡された目的物が、種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合していないことをいう。

たとえば、土地の地目が異なっていれば種類が不適合であるし、建物の耐震強度が不足していれば品質の不適合となる。また、受け取った品物の個数が違えば数量の不適合である。

目的物が不動産の場合には、品質に関する不適合の判断が問題となる。「住み心地」のような品質は評価が難しいし、耐震性、耐火性などは設計や工事記録を精査しないとわからない。あるいは、既存住宅などについては経年的な品質の劣化をも考慮しなければならない。住宅性能評価や住宅インスペクションを実施することは、契約不適合に対応するためにも有効である。

また、不動産売買において契約表示面積と実測面積のあいだに過不足があったときには、契約において実測面積を基礎に代金額を定めるとの合意がある場合に契約不適合となる。

契約不適合の場合には、買主・注文者は、売主・請負人に対して、履行の追完請求(補修や代替物等の引渡し請求)、代金減額請求報酬減額請求損害賠償請求又は契約解除権の行使をすることができる。ただしこれらの請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならないとされている。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

契約不適合責任

売買契約や請負契約の履行において、引き渡された売買の目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主・請負人が買主・注文者に対して負うこととなる責任。債務不履行により生じる責任のひとつである。

買主・注文者は、契約不適合責任を負う売主・請負人に対して、履行の追完請求(補修や代替物等の引渡し請求)、代金・報酬の減額請求、損害賠償請求又は契約解除権の行使をすることができる。ただしこれらの請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内に不適合である旨を通知しなければならない。

民法(債権関係)改正前は、売買の目的物に隠れたる瑕疵があったときの責任等について特別の規定が定められていたが、改正によってこの規定が削除され、隠れた瑕疵があった場合を含めて、目的物が契約に適合しない場合の規定に統合・整理された(改正法の施行は2020年4月1日から)。この統合・整理された規定では、引き渡した目的物が契約に適合しない場合には、引渡した者(売主・請負人)に履行の追完、代金の減額等の責任が生じることとなる。この生じる責任が契約不適合責任である。

なお、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」とおおむね同義であるが、特定物(その固有性に着目して取引され代替性がない)の売買についてのみ使われる用語である。

軽量鉄骨

正式名称は「軽量形鋼」。
厚さ6mm未満の鋼板を、複雑な形状に折り曲げてつくった鋼材のことである。

この軽量鉄骨には、断面の形状等により多数の種類がある。
最もよく使用されるのは、断面の形状がアルファベットの「C」に似たもの(「リップ溝形鋼」)である。

軽量鉄骨構造

鉄骨構造の一つ。
軽量鉄骨構造とは、次のような特徴を持つ鉄骨構造である。

1.軽量鉄骨を柱・として使用する。
2.ブレース(brace:留め具)で柱・梁を対角線につなぐことにより、水平方向の外力に対抗できる構造をつくる。
3.木質系パネル・軽量気泡コンクリートパネル・窯業系パネルなどで壁・床を構成する。

従って、「軽量鉄骨構造」とは、在来工法木造建築物における木造軸組を「軽量鉄骨とブレース」に置き換えたものであると考えることができる。

こうした「軽量鉄骨構造」は、一般住宅やアパートに使用されることが多い。

蹴込み

階段の踏面のあいだを繋ぐ垂直方向の面、あるいは、下段の踏面のうち上段の踏面と重層している部分(下段が上段の端よりも奥に突き入れている場合のその部分)をいう。

また、家の上がり口の前面を言う場合もある。

化粧合板

普通合板の表面をプラスチック材料などで覆ったもの。

欠格事由(宅地建物取引業免許の〜)

宅地建物取引業の免許を得ることができない事由。宅地建物取引業法は、業務を行なうためには許可が必要とし、許可の基準を定めている。欠格事由は、その基準に規定された許可できない事項である。

例えば、申請前5年以内に免許の不正取得、情状が特に重い不正不当行為、業務停止処分違反をして免許を取り消された場合、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない場合、宅地建物取引業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな場合などである(詳細は「免許の基準(宅地建物取引業の~)」を参照)。

欠陥住宅

備えるべき安全性能を欠いている住宅をいう。

その性能としては、風雨、地震、火災に耐える性能、地盤や主要構造部の堅牢性、さらには防音、通気、シックハウス防止等室内環境の水準などがあるが、その確保すべき水準は必ずしも明確ではない。例えば、建築基準法などの法令の規定に違反している場合、常識的な住宅としての性能を欠く場合、請負契約などで予定している性能を満たさない場合などは、欠陥住宅である可能性が大きい。また、欠陥住宅であるという苦情としては、雨漏り、亀裂の発生などに関するものが多い。

欠陥住宅が発生する原因の多くは、設計の誤りか施工時の手抜きやミスである。そこで、その責任を明確にするため、住宅の品質確保の促進等に関する法律では新築住宅の建築請負者や売主に対して、柱などの構造上重要な部分や雨水の侵入を防ぐ部分について、引渡し後10年間の瑕疵担保責任が義務付けられている。さらに、住宅の性能基準を客観的に評価し、その性能を保証する制度(住宅性能表示制度)も運営されているが、この制度を用いるかどうかは任意である。

結露

空気の温度を徐々に下げていくと、ある温度で空気中の水蒸気が飽和状態になり、さらに下げると過飽和状態になり水滴となる。これを結露という。

住宅の床・壁・天井や窓ガラスなどに結露すると(これを表面結露という)、カビや汚れの原因になる。また、断熱材や構造部材などに結露すると(これを内部結露という)、断熱性能はゼロ状態になるし、建物の耐久性を著しく低下させることになる。

煙感知器

火災による煙を感知し、火災信号を発する設備。温度が上昇する前に感知できるため、火災の早期発見に有効とされている。

一般に天井に取り付けられる。感知方法に応じて、煙によるイオン電流の変化により作動するイオン化式スポット型、煙による光電素子の受光量の変化により作動する光電式スポット型、煙の累積による光電素子の受光量の変化により作動する光電式分離型に分類される。また、作動する煙の濃度に応じて、1種(煙濃度5%)、2種(煙濃度10%)、3種(煙濃度15%)の種別があるが、一般的な煙感知器は2種である。

ケヤキ

建築用材や家具材として広く使われるニレ科の落葉高木。材は硬くて、木目が美しく、磨くと光沢が出る。「欅」または「槻」と表記される。

樹木は、街路樹、防風林、庭木などとして植えられている。また、ケヤキの老樹は珍重されることがある。

間(ケン)

長さの単位で尺貫法で用いられる。1間は6尺(1.8182m)で、1平方間が1坪(3.3058平方メートル)である。

なお、「間」はもともと柱間の数を示す単位(柱の数-1)であって、長さが決まっていたわけではない。その名残もあって、京間(畳割制)のの長さ(長辺)を指すときには、6尺3寸(1.9091m)を1間とするのが慣例である。

嫌悪施設

近隣に立地することが嫌がられる施設をいう。

住宅地での立地について紛争が発生したり、地価に影響を与える場合がある。

例えば、公害発生の恐れがある施設、不快感や危険感を与える施設、風紀を乱す恐れのある施設、地区のイメージやまち並みを低下させる施設などである。
だが、法令に合致した立地であればその立地を抑制することは財産権の不当な制約となる恐れがあり、また、立地の影響を客観的に評価することも困難である。個別具体的に、立地の当否について社会的な合意を図っていくほかない。

権原

私法上の概念で、ある法律行為または事実行為を正当とする法律上の原因をいう。

例えば、他人の土地に建物建築する権原は、地上権賃借権等である。

ただし、占有の場合には、占有を正当とする権利にもとづかないときにもその権利は保護され、占有するに至ったすべての原因が権原となることに注意が必要である。権限と区別して、「けんばら」と読むこともある。

権限外の行為の表見代理

表見代理は、代理権のない者(無権代理人)と本人との特殊な関係によって無権代理人を真実の代理人であると誤信させ、代理権の存在を信じて取引した善意無過失の相手方を保護するための制度である。表見代理においては、その代理行為を代理権のある行為として扱い、本人に対して効力を生じさせる(取引の効果を本人に帰属させる)こととなる。

なお、代理権授与表示による表見代理代理権消滅後の表見代理、権限外の行為の表見代理の3種類がある。

権限外の行為の表見代理は、代理人が本人から与えられた権限以外の行為をした場合に、相手方が権限内の行為であると信じ、そう信じることについて正当の理由がある場合である。この場合には、代理権限内の行為であると信じた無過失の相手方は、本人に対して行為の効力を主張できる。

権限外の行為の表見代理の例は、たとえば、財産管理のために土地を賃貸する代理権を与えられた代理人が、土地を売却する契約を締結した場合である。

権限踰越の表見代理

表見代理となる場合の一つ。民法に定める「権限外の行為の表見代理」と同じである。詳しくは、「権限外の行為の表見代理」を参照。

健康型有料老人ホーム

自立生活を基本とする高齢者向け居住施設。有料老人ホームの類型の一つである。

健康型有料老人ホームでは、食事の提供、洗濯の代行等のサービスを受けることができるが、原則として自立して生活する。また、レクレーション設備などを備えた施設もある。ただし、介護が必要になれば、施設を退去しなければならない。

なお、有料老人ホームには、「健康型」のほか、生活支援サービスのみを提供し介護サービスは別の契約となる「住宅型」、介護サービスを提供する「介護付」がある。

健康経営

従業員等の健康保持・増進を、経営の視点で考えて実践すること。企業が経営理念に基づいて従業員の健康保持・増進に取り組むことによって、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、業績向上や組織としての価値向上へ繋がるとされる。

健康経営の具体的な施策は、例えば、検診等に関する費用補助、健康づくりセミナーの実施、ジム利用の費用補助などがある。

健康住宅

シックハウス症候群の発生を予防していることを謳って販売される住宅。有害化学物質やハウスダストが発生しないように配慮しているとされるが、その基準等は明確に定まっていない。また、シックハウス症候群の発生機序については十分に解明されていない。

なお、シックハウス症候群の発生予防については、建築基準法に基づき、汚染源である2種類の化学物質の使用が禁止・制限され、換気装置の設置が義務付けられているほか、住宅品質確保促進法で化学物質の表示を義務化するなどの対応が図られている。

健康被害が生ずる恐れのある土地の調査

土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずる恐れがある土地について実施する汚染状況の調査をいう。土壌汚染対策法に基づく調査の一つで、都道府県知事の命令によって、当該土地の所有者等が指定調査機関に調査させる。

調査を命じるのは、次のいずれかの要件に当てはまる土地である。ただし、既に汚染の除去等の措置が講じられている土地、鉱山の敷地等については、調査命令の対象とはならない。

イ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が基準に適合しないことが明らかで、それに起因して現に地下水の水質の汚濁が生じ、又は生ずることが確実であると認められ、かつ、地下水の利用が予想される土地。

ロ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が基準に適合しない恐れがあり、それに起因して現に地下水の水質の汚濁が生じていると認められ、かつ、地下水の利用が予想される土地。

ハ 当該土地の土壌の特定有害物質による汚染状態が基準に適合せず、又は適合しない恐れがあると認められ、かつ、当該土地が人が立ち入ることができる土地。

検索の抗弁権

保証人が「主債務者には取立てが容易な財産がある」と立証した場合には、債権者は先にその主債務者の財産から取立てをしなければならない。これを「検索の抗弁権」と呼んでいる(民法第453条)。

例えば、AがBから100万円の借金をし、Aの友人であるCがその借金の保証人になったとしよう。このとき債権者Bが、保証人Cに対して100万円の債務を支払うように請求したとする。

その際に、保証人Cが「主債務者Aには強制執行が容易な銀行預金60万円がある」と証明し、保証人Cが検索の抗弁権を行使したならば、債権者Bはまず主債務者Aから60万円を取り立てなければならない(もし、主債務者Aが取立てに応じない場合には、その銀行預金に対して債権差押などを行なうべきである)。

また、債権者が迅速な取立てを怠ったために、取立て可能であった金銭が取立てできなくなった場合には、その責任は債権者が負う。例えば上記例で、債権者Bが取立てを遅らせたために、他の債権者Dが60万円の銀行預金を取り立ててしまい、債権者Bは預金からの取立てができなくなったとする。このとき保証人Cは、その金額を差し引いた40万円についてのみ保証債務を負うこととなる(民法第455条)。

このように検索の抗弁権は、債権者の立場を弱くするものである。なお連帯保証の場合には、連帯保証人にはこの検索の抗弁権がないことに注意したい。

検査済証

建築工事が完了した建築物について、建築主事等は、検査の申請を受理した日から7日以内に、当該建築物について工事完了検査を行なわなければならない。

この工事完了検査に合格した場合に、建築主事等が建築主に交付する書面が「検査済証」である。

建設協力金

地主が、建物賃借者(テナント)から建設費を借りて賃貸建物を建築する場合の、その借入金をいう。

一般的に、建設された建物は建設協力金の貸主(建物賃借者)に賃貸され、その賃料と建設協力金の返済額とが相殺されることになる。

建設協力金によって不動産賃貸事業を営む方法は、土地活用手法の一つとされ、リースバック方式ともいわれる。

建設業許可

建設業を営むために必要な許可。建設業法による制度である。

建設業許可は、営む工事の種類ごとに得なければならない。工事の種類は、土木一式工事、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事など、29種類に分類されている。許可の期間は5年間で、引き続き営業するためには期間の更新が必要である。

また、発注者から直接請け負う工事の全部又は一部を下請業者に施工させる建設業者は、工事1件当たりの下請代金が4,000万円以上、建築工事については6,000万円以上の場合には「特定建設業」の許可を、それ以外の者は「一般建設業」の許可を得ることとされている。

許可は、2以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業する場合は国土交通大臣、1つの都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業する場合には当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事が行なう。

許可を得た建設業者は、請負契約に関する規律に従い、元請人の義務を果たし、施工技術を確保し、経営事項の審査を受けるなど、法律に定められた規定に従って営業しなければならない。

建設業経理事務士

建設業経理に関する知識および処理能力があると認められた者。建設業では、業務の特性に即して簿記や原価計算を行なう必要があり、その必要に応える役割を担う。

建設業経理事務士の資格は、(一財)建設業振興基金が実施する試験によって与えられる。試験は、難易度によって1級から4級までに分かれ、合格者にはそれぞれ「1級建設業経理士」「2級建設業経理士」「3級建設業経理事務士」「4級建設業経理事務士」と称することとなる。

1級および2級の試験は建設業法に基づく「登録経理試験」とされ、その合格者について実務者登録の制度がある。また、1級および2級の試験合格者は、公共工事の入札に係る経営事項審査において、公認会計士等と同様に、経理が適正に行なわれたことを確認する者として認められている。

建設業法

建設業に関する基本的な法律で、1949年に公布・施行された。

この法律には、建設業を営むうえで守らなければならない諸規定が定められており、それによって、建設工事の適正な施工の確保、発注者の保護、建設業の健全な発達の促進を図ることとされている。

建設業法に規定されている主な制度としては、

1.建設業の営業許可制度
2.建設工事の請負契約に関する、契約内容の義務化、一括下請負の禁止等
3.主任技術者および監理技術者の設置等による施行技術の確保
4.建設業者の経営に関する事項の審査

などがある。

建設工事標準請負契約約款

中央建設業審議会や建設業界の業界団体が制定している、建設工事の請負契約のモデル契約書のこと。

建設業法第19条では工事請負契約の書面化を義務としているが、建設工事標準請負契約約款はこの建設業法第19条に適合する契約書として、現実に建設業界で広く使用されている。

建設工事標準標準請負契約には次のような種類がある。

1.公共工事に関しては、中央建設業審議会が「公共建設工事標準請負契約約款」を制定している。
2.民間工事に関しては、中央建設業審議会が「民間建設工事標準請負契約約款」を制定している。
3.民間工事に関しては、建設業界の業界団体(全国建設業協会など4つの団体)が2.の約款をベースとして、「四会連合協定工事標準請負契約約款」を制定した。
4.その後、上記3.において2つの団体が加入したため、上記3.の約款の名称が「民間連合協定工事標準請負契約約款」と改められた。

建設残土

建設工事に伴って発生する土。「建設発生土」ともいう。建設残土は「土」であって、建物の解体などで発生するコンクリート塊、建設発生木材などのような産業廃棄物とはされていない。

建設残土は、できる限り再利用することとされ、一定の基準で分別し、土の特性に応じて、盛土材、埋め戻し材などとして利用される。

建設住宅性能評価書

登録住宅性能評価機関が、実際に住宅を検査することにより作成した住宅性能評価書を「建設住宅性能評価書」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)第6条、同施行規則第5条)。

品確法では、建設住宅性能評価書を交付された新築住宅については、建設住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま売買契約の契約内容になる場合があると規定しており、この規定により買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。

新築住宅について建設住宅性能評価書が作成されるには、「設計住宅性能評価書の作成」「建設住宅性能評価書の作成の申請」「検査の実施」「建設住宅性能評価書の作成」という過程を経る必要がある(詳しくは「新築住宅の建設住宅性能評価書」へ)。

また、既存住宅について建設住宅性能評価書が作成されるには、「建設住宅性能評価書の作成の申請」「現況検査」「個別性能評価」「建設住宅性能評価書の作成」という過程を経る必要がある(詳しくは「既存住宅の建設住宅性能評価書」へ)。

これらの建設住宅性能評価書に記載されるべき事項については、国土交通大臣が基準を定めている(詳しくは「日本住宅性能表示基準」へ)。

なお、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、原則として1万円の費用負担で弁護士会に紛争処理を申請することができる(詳しくは「指定住宅紛争処理機関」へ)。

建設発生土

建設残土」を参照。

建設リサイクル法

建設資材の再生利用、建設資材廃棄物の減量等を促進するための法律。正式名は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」で、2000(平成12)年に制定された。

建設リサイクル法は、一定規模以上の解体工事及び新築工事等(対象建設工事)の受注者に対して、(1)コンクリート、木材、アスファルト・コンクリート等(特定建設資材)の廃棄物をその種類ごとに分別しつつ施工すること(分別解体等の実施)(2)分別解体等によって生じた特定建設資材廃棄物について、資材・原材料として利用できる状態又は燃料に利用できる状態にすること(再資源化等の実施)を義務付けている。

また、対象建設工事の発注者は、(3)工事着手の7日前までに分別解体等の計画を都道府県知事に届け出なければならず、(4)対象建設工事の請負契約の締結に当たって、分別解体等の方法、解体工事に要する費用等を明記しなければならない。

建築

建築物を新築し、増築し、改築し、または移転すること」と定義されている(建築基準法2条13号)。

建築家

主として建築物のデザイン設計に携わる専門職。通常、建築士の資格を有する。英語のarchitect(アーキテクト)。

建築家の仕事は、芸術的な要素をもつ建築デザインの業務と技術的な要素が強い構造・設備設計の業務が融合している。その仕事は公共的な責任を伴い、建築家を称するには、高度な教育と長い実務経験が必要と考えられている。また、建築家の職能は職人的な伝統を受け継いでいて、職能団体を結成して社会的な地位を保っている代表的な職業のひとつである。

仕事の仕方によって、独立した職業人として仕事に携わる者(アトリエ系建築家)と、建築業などの企業において業務を担当する者に大別できるが、いずれも顧客(クライエント)の注文に応じてサービスを提供することは同じである。また、建築の専門分野は、大きく、意匠設計(デザイン)、構造設計、設備設計に分かれているが、建築家とされるのは、主として意匠設計を担当するとともに設計全体を統括する役割を担う専門家であることが多い。さらには、都市計画や環境設計を専門分野とする建築家もいる。

建築確認

一定の建築物建築(増改築を含む)しようとするときに、工事の着手前に、建築計画が法令で定められた建築基準(建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準)に適合している旨の確認を受けなければならないとする制度、または当該確認行為をいう。

確認を申請する義務があるのは建築主で、確認を行なうのは建築主事等である。

建築主は、建築確認を受けた場合には確認済証の交付を受ける他、工事を完了したときには検査を受けること、一定の場合には工事の中間検査を受けることなどの義務を負う。また、建築基準に違反した建築物については、建築主、建築工事の請負人等に対して、工事施工の停止や違反を是正するための措置を命じることができる。ただし、特別な場合を除いて、従前から存在する基準に違反の建築物(既存不適格建築物)については、増改築をしない限りはそのまま使用できる。

建築確認制度において重要なのは、建築確認を受けなければならない建築物の建築工事に当たっては、その設計は建築士が当たらなければならず、また建築士である工事監理者を置かなければならないとされていることである。この条件を満たさない建築確認申請は受理されない。つまり、建築基準を確保する仕組みは、建築確認制度と建築士制度とが一体となって初めて実効あるものとなるのである。

なお、建築基準は、都市計画区域および準都市計画区域内の建築物に対してはより厳しい基準が適用されるなど、建物の敷地場所、規模、構造、用途等に応じて詳細に定められているため、その内容については注意深く確認する必要がある。

建築確認(手続の流れ)

建築主事は、建築確認の申請を受理してから、一般の建築物については7日以内に、一定の特殊な建築物または大規模な建築物については原則として35日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認した場合には、建築主に文書(確認済証)を交付することとされている。

また、建築計画が法令に適合しないと認めたとき又は申請書の記載によつては建築基準関係規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、7日又は35日以内に、その旨及びその理由を記載した通知書を建築主に交付することになる。

なお建築主は、確認の期限を過ぎた場合であっても、確認済証の交付を受ける前には、工事に着手することはできない。

建築基準法

国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。

遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。

その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。

建築協定

敷地建築物に関する民間の協定であって、特定行政庁(知事・市長など)の認可を受けたもののこと。

1.建築協定の意義
建築協定では、ある地域の土地所有者等の全員が合意することにより、「敷地の最低面積」「敷地境界線からの外壁の後退距離の最低限度」「建築物の耐火性」「建築物の用途」「建築物の階数」「建築物の色彩や意匠」「設備の設置場所」などを非常にきめ細かく規制し、統一することができる。このため、建築協定により統一的な良好なまち並みが形成され、環境が保全されるというメリットがある。

同じようなきめ細かい法的規制である地区計画は、都市計画の決定手続を経なければならないのに対して、建築協定は住民の合意という比較的簡便な手続きで設定できる点も特徴である。

なお、「一人協定」の制度が新設されてからは、宅地分譲業者などが建築協定を最初に設置できるようになったため、さらに使いやすくなっている。1996(平成8)年には、建築協定に不参加のエリアも事後的に協定に参加するための簡便な手続きとして「建築協定区域隣接地」の制度が導入されている。

2.建築協定を締結する手続き
建築協定は、その地域内の土地所有者と借地権者の全員の合意により協定書を作成して、公開による意見聴取を経て、特定行政庁の認可を受けることにより成立する(建築基準法第69条、第73条)。特定行政庁は、一定の基準に協定の内容が適合する場合には、必ず認可しなければならない(同法第73条第1項)。
ただし、借地権の目的となっている土地(いわゆる底地)については、その土地の所有者(いわゆる底地権者)の合意は不要とされている(同法第70条第3項)。建築協定の内容が建築物の借り主に関係するときは、建築物の借り主も合意に参加しなければならない(同法第77条)。
なお、建築協定を締結する前提として、市町村が建築協定の締結に関する条例を設けていることが必要である(同法第69条)。

3.建築協定書の内容
建築協定書には、「建築協定区域」「建築物に関する基準」「建築協定の有効期間」「建築協定違反があった場合の措置」を必ず記載しなければならない(同法第70条1項)。

4.建築協定の効力
特定行政庁が認可の公告をした場合、その公告の日以後に土地所有者・借地権者となった者についても効力がある(同法第75条)。ただし、合意していない底地権者から底地権を引き継いだ者には効力がない(同法第70条第3項)。

5.一人協定
土地所有者が1人(借地権者もいない)であるとき、その唯一の土地所有者が特定行政庁の認可を受けることにより、建築協定を定めることができる(同法第76条の3第1項)。この認可を受けた建築協定は、3年以内にその土地に2人以上の土地の所有者等が存することとなったときから通常の建築協定となる(76条の3第5項)。この規定により、例えば宅地分譲業者が分譲前に建築協定を設定して、その後で宅地分譲することが可能とされている。

6.建築協定区域隣接地からの参加
「建築協定区域」に隣接する土地であって、建築協定区域内の土地所有者・借地権者が建築協定への将来的な参加を希望するような隣接する土地については、建築協定書において「建築協定区域隣接地」として定めることができる(同法第70条第2項)。
このような「建築協定区域隣接地」の区域内の土地所有者・借地権者は、全員の合意により、いつでも建築協定に加わることができる。建築協定に加わる意思表示をした「建築協定区域隣接地」は、「建築協定区域」の一部となる(75条の2第2項・3項)。

7.建築協定の変更と廃止
建築協定を変更するには、合意した土地所有者・借地権者の全員の同意が必要。建築協定を廃止するには、合意した土地所有者・借地権者の過半数の合意が必要。変更も廃止も、特定行政庁の認可を受けなければならない(同法第74条・第76条)。

建築許可

市街化調整区域での建築であって、開発行為を伴わないものに対する建築の許可をいう。

市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域であるから、建築は原則的に禁止されている。ただし、次のような場合には、建築を行なうことができる。

1.開発行為(土地の区画形質の変更)を行なうための許可(開発許可)を受けた区域内で行なう、開発許可条件に適合する建築
2.開発行為を伴わない建築で、都道府県知事の許可を得て行なう建築(都市計画法第43条)(この場合の都道府県知事の許可が「市街化調整区域における建築許可」)

市街化調整区域における建築許可は厳しく運用されていて、開発許可区域以外の区域で建築(改築、用途変更を含む)を行なえるは、次のものに限られている。

1)建築許可を要しない建築
ア.農産物、林産物または水産物の生産、または集荷の用に供する建築物(畜舎、蚕室、温室、育種苗施設など)およびこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築
イ.公益上必要な建築物(鉄道の施設、社会福祉施設、医療施設、学校教育法による学校など)であって、適正合理的な土地利用および環境保全上支障がない建築物の建築

2)建築許可を受けることのできる建築
ア.都市計画事業の施行として行なう建築物の建築
イ.非常災害のため必要な応急措置として行なう建築物の建築
ウ.仮設建築物の新築
エ.通常の管理行為、軽易な行為として行なう次のもの
a.既存の建築物の敷地内において行なう車庫、物置その他これらに類する附属建築物の建築
b.建築物の改築または用途の変更で当該改築、または用途の変更に係る床面積の合計が10平方メートル以内であるもの
c.周辺の市街化調整区域内に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売、加工、修理等の業務を営む店舗、事業場その他これらの業務の用に供する建築物(その延べ面積が50平方メートル以内のものの新築で、当該市街化調整区域内に居住している者が自ら当該業務を営むために行なうものに限る)
d.土木事業その他の事業に一時的に使用するための第一種特定工作物の新設

建築構造

「荷重や外力に対抗するために必要な部分の組み合わせ」のことである。
端的にいえば、建築構造とは「建物の骨組」のこと。

建築士

建築物の設計、工事監理等を行なう技術者であって、試験に合格して免許を受けた者をいう。建築士法による資格である。

建築士は、設計等を行なうことができる建物の規模、構造、用途によって、一級建築士、二級建築士、木造建築士に分かれている。例えば、延べ面積が千平方メートルを超え階数が二以上の建築物は、一級建築士でなければ設計をしてはならないし、延べ面積が百平方メートル(木造の建築物にあっては三百平方メートル)を超えまたは階数が三以上の建築物は、一級建築士または二級建築士でなければ設計をしてはならない。

また、一級建築士であって、構造設計または設備設計について高度な専門能力を有すると認められた者は、構造設計一級建築士または設備設計一級建築士としてその専門業務に従事することができるとされている。

建築士の資格は法的に保護さていて、例えば、建築確認の申請に当たって提出する設計図書は建築士が作成しないと受理されないし、建築士の免許を受けることなく建築士の名称を用いて業務を行なう者は罰せられる。

なお、建築士の業務分野は、その専門性に応じて、大きく、意匠設計(主として、建築のデザインや設計の総合性の確保を担う)、構造設計(主として、建築物の構造の安全性確保などを担う)、設備設計(主として、建築設備の設計を担う)、監理業務(主として、工事が設計に適合して実施されるための監督などを担う)に分かれている。

建築主事

建築確認を行なう権限を持つ、地方公務員のこと。

建築主事となるには、一定の資格検定に合格しなければならない。
その後、国土交通大臣の登録を受け、知事または市町村長の任命を受けることが必要である。

都道府県には必ず建築主事が置かれる。また政令で定める人口25万人以上の市でも、建築主事が必ず置かれる。それ以外の市町村では任意で建築主事を置くことができる(建築基準法第4条)。

建築審査会

建築主事を置いている市町村と都道府県にのみ設置される、5人または7人の委員で構成される組織。

建築審査会は、特定行政庁建築基準法に関わる許可を与える場合に、特定行政庁に同意を与える等の権限を持っている。

建築条件付宅地分譲

宅地分譲の方法の一つで、宅地の売買契約後一定の期間内に、売主または売主が指定する者との間で当該土地に建物を建築する請負契約を締結することを停止条件として分譲することをいう。

住宅を建築した後に土地とともに分譲する(建売住宅)場合と違って、買主は住宅プランなどを選択する自由があるが、建築請負者があらかじめ決まっていることによる限界がある。見方によっては、建売に伴うリスクを回避しつつ、建築を請け負う利益を享受する手法である。

建築条件付き土地

建て売りといえば、土地とそこに立つ住宅がセットで販売されるものだが、建築条件付き土地の場合は、売り建てともいうように、土地を売るに当たって、一定期間内に売り主または売り主が指定する者との間で当該土地に建物を建築する請負契約を結ぶことを条件にしている。指定期間内に建築請負契約が締結されない場合は、契約は白紙解除となり、預かり金などは全額返還される。

建築施工管理技士

建築工事の施工管理を適確に実施する技術を有するとして与えられる資格。建設業法に基づく資格で、国土交通大臣が付与する。

建築施工管理技士は、1級建築施工管理技士と2級建築施工管理技士に区分されている。また、2級建築施工管理技士は、建築、躯体、仕上げの3種類の資格に分かれている。それぞれの資格を得るためには、指定試験機関が実施する技術検定に合格しなければならない。検定の対象となるのは、施工計画、施工図の作成、工程管理、品質管理、安全管理等に関する技術である。

建設業の営業所及び工事現場には、一定の資格を有する技術者を置かなければならないが、建築工事については、建築施工管理技士及び建築士がその資格者として認められている。この場合、1級施工管理技士及び1級建築士はすべての建築工事について資格があるが、2級施工管理技士、2級建築士、木造建築士については、携わる営業内容及び施工建築物の規模・用途に制限がある。

なお、業務の性質から、建築施工管理技士は工事の実施に関する技術のウエイトが比較的高く、建築士は建築物の設計・監理に関する技術のウエイトが比較的高いとされている。

建築設備

建物と一体となって建物の機能を全うさせる設備のことで、空調・換気設備、給排水衛生設備、電気設備、エレベーターなどがこれに該当する。

建築設備は、建築物本体に比べて、その運用のための費用が大きいこと、建物利用の快適性を左右しやすいこと、エネルギー消費を伴い環境に対して大きな影響を与えることなどの特徴がある。
また、一般に、建物本体よりも耐用年数が短い傾向があるほか、建物の維持・改修に当たっては、建築設備の保守・更新を的確に行なうことが重要であるといわれている。

建築設備の設計は、通常、建物の設計と同時一体的に行なわれ、その施工も建物の建築を請け負った建設業者が一括して担うことが多い(ただし、直接の施工は、建築請負業者が設備工事業者に下請発注するのが一般的)。しかし、大規模な建築物については、建築設備の設計・施工を分離して実施する場合(分離発注)もある。

建築設備士

建築設備の設計や工事監理に関して建築士に意見を述べることのできる資格。建築士法に基づく資格である。

建築設備士が意見を述べるのは、建築士が意見を求めた場合であって、建築士は、延べ面積が2,000平方メートルを超える建築物の建築設備の設計や工事監理を行なう場合には意見を求めるよう努めることとされている。ただし、設備設計一級建築士が設計を行なう場合には、意見聴取は不要である。

建築設備士の資格を得るためには、試験に合格し、登録しなければならない。登録機関として、(一社)建築設備技術者協会が指定されている。

建築線

それ以上建築物が突出してはならない道路と敷地の境界線をいう。

通常は現実の道路との境が建築線であるが、建築基準法によって、幅員が1.8m以上、4m未満の道路の場合に、その中心から2m後退した線が建築線として指定されていることがある。また、私道について道路の位置が指定されている場合には、その指定された道路位置との境界が建築線となる。

つまり、民有地の中に建築線が引かれて、それをはみ出して建物を建てるような土地利用はできない(土地所有権を制約することになる)場合が生じるが、これはオープンスペースを確保して生活の安全や環境を守るためであり、受忍すべき規制とされてる。

建築不可

再建築や新たな建築が不可能であることをいう。

例えば、道路に接する距離が2m未満の土地、条例により規制される敷地の形態に適合しない土地はいずれもこれに該当し、その取引に関する広告には、その旨表示しなければならない。

また、市街化調整区域の土地も、開発許可の条件に該当しない限り建築不可である。

建築物

建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法2条1号)。

これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。
1.屋根と柱または壁を有するもの
2.上記に付属する門や塀
3.以上のものに設けられる建築設備

上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。
なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。

建築物環境計画書制度(東京都の~)

一定の建築物の新築等に当たって、環境への配慮に関する計画書を作成・提出する制度のことで、東京都が条例により実施している。

計画書には、エネルギーの使用合理化、資源の適正利用、自然環境の保全、ヒートアイランド現象の緩和という4つの配慮項目についての評価が記載され、その概要が公表される。
また、マンションについての環境性能表示義務、特別大規模特定建築物(延べ面積1万平方メートル超で住宅、倉庫、工場、駐車場等の用途を除く)についての省エネルギー性能基準遵守義務なども規定されている。
計画書の提出義務が課せられるのは延べ面積5,000平方メートル超の大規模特定建築物であり、2,000平方メートル以上の建築物については任意で提出する。

この制度の特徴は、環境に配慮した建築物が評価される市場の形成や、建築主による自主的な取り組みを促すなど、誘導型の政策手法を活用していることである。

建築物省エネ法

建築物の省エネルギー性能を向上するための措置を定めた法律。正式名は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」で、2015年7月8日に公布され、施行日は2017年4月1日である(一部は2016年4月1日施行)。

同法に規定されている主な措置は、次の通りである。

1 建築主に対する規制措置
(1)一定規模以上の非住宅建築物について、その新築時等に、省エネ基準一次エネルギー消費量に関する基準)に適合していることを義務づける。
(2)一定規模以上の建築物について、その新増改築などを為す場合に、エネルギー消費性能の確保のための構造および設備に関する計画を届け出ることを義務づける。また、その計画が省エネ基準に適合しない場合には、必要に応じて、省エネ性能の向上のための措置を指示・命令することができることとする。
(3)住宅事業建築主が供給する建売戸建住宅に関する省エネ性能の向上のための基準(住宅トップランナー基準)を定め、一定数以上の住宅を新築する事業主に対して、必要に応じて、省エネ性能の向上を勧告することができることとする。
2 省エネ性能向上計画の認定
建物の新築および省エネ性能向上のための改修等に当たって、省エネ性能向上計画を作成し、誘導基準に適合するなどの認定を受ける制度を定める。また、認定を受けた場合には、容積率の特例を適用することとする。
3 エネルギー消費性能の表示
建築物の所有者が、その所有する建築物について省エネ基準に適合する旨の認定を受け、エネルギー消費性能を表示する制度を定める。
4 建築物エネルギー消費性能判定機関等の登録
建築物の省エネ基準等への適合を判定する業務を実施する機関または建築物のエネルギー消費性能を評価する業務を実施する機関が、それぞれ、国土交通大臣の登録を受ける制度を定める。登録を受けた機関は、それぞれ、「登録建築物エネルギー消費性能評価判定機関」または「登録建築物エネルギー消費性能評価機関」として、建築物省エネ法に基づく判定または評価の業務を実施できることとする。

建築物の耐震改修の促進に関する法律

建築物の耐震改修を進めるための措置を定めた法律。1995(平成7)年に公布、施行された。

同法は、次のような措置を定めている。
1)耐震化目標、耐震診断・耐震改修の指針、耐震改修促進計画などの策定
2)耐震診断の義務付けと結果の公表、避難路沿道建築物の指定などの規制
3)耐震改修計画の認定、耐震性の認定表示などによる耐震化の促進

建築面積

いわゆる「建坪(たてつぼ)」のこと。

建築物の柱・壁の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を指している。
ただし、1m以上突き出た庇(ひさし)や軒等がある場合には、その庇、軒等の先端から1m後退した線までの部分のみを建築面積に算入することとなっている。

建ぺい率

建築面積敷地面積で割った値のこと。
例えば、敷地面積が100平方メートル、その敷地上にある住宅の建築面積が50平方メートルならば、この住宅の建ぺい率は50%ということになる。

建築する建物の建ぺい率の限度は、原則的には用途地域ごとに、都市計画によってあらかじめ指定されている。

顕名

代理人が「本人のために代理行為を行なう」ことを示すことを顕名という。

例えば、契約を締結する場合に「Aの代理人であるB」として署名することが顕名に該当する。顕名とは「名をあらわす」という意味である。
代理の本質については顕名説と代理権説が対立しているが、通説である代理権説に立つときは、顕名は代理の本質的要素ではないので、仮に顕名がなくとも代理権は有効に成立すると解釈されている(詳しくは他人効へ)。顕名については、次のようないくつかの問題がある。

1.顕名の本質について
民法第100条が顕名を必要としている根拠は、取引の相手方に本人が誰であるかを明示することにより、取引の安全を確保しようとする趣旨である(代理権説の立場から)。

2.顕名がまったくない場合について
例えばAの代理人であるBが、相手方Cとの間で売買契約を締結するとき、うっかりして契約書に「B」とだけ署名した場合には、原則としてその契約はBが自分のために行なったものとみなされる(民法第100条本文)。
ただし、前後の事情から見て、BがAの代理人であることが明らかである場合には、たとえ契約書に「B」とだけ署名したとしても、BはAの代理人として有効に顕名をしたものとされる(民法第100条但書)。これは相手方Cの取引安全を害する可能性がないからである。

3.本人の名前を直接表示した場合について
例えばAの代理人であるBが、相手方Cとの間で売買契約を締結するとき、うっかりして契約書に「A」とだけ署名した場合については、有効な顕名がないことになる。
この場合には民法に明文がないので問題であるが、判例は、前後の事情から代理人であることが明らかであるならば有効な代理行為として成立するとしている。
相手方Cにとっては、仮に代理人Bが本人Aであると誤信していた(人違いをしていた)としても、取引相手がAであるならば契約を行なってよいとの判断のもとに契約したため、実質上の支障はない。よって、Cの取引安全の面からも支障がないこととなる。

権利落ち

配当などを受け取る権利がなくなること。「配当落ち」ともいう。

株主は会社に対して、配当請求権などの権利を行使することができるが、この株主の権利を行使するためには、会社側が設定する一定の期日において株主であることが必要とされている。この一定の期日は「権利確定日」と呼ばれている(通常、権利確定日は決算日と同じ日である)。

ただし、上場株式・上場されている不動産投資信託の場合には、配当や分配金を受け取るためには、権利確定日から3営業日を挟んで、それより前に購入しておくことが必要とされる。これは、証券取引所を通じて売買する都合上、代金の決済等に3営業日が必要とされるためである。

具体例で説明しよう。ある上場不動産投資信託において、投資法人がその決算日である「2004年6月30日(水曜日)」を権利確定日に指定したとする。この場合、次のような日程となる。

6月24日(木曜日)権利付き最終日
6月25日(金曜日)権利落ち日
6月26日(土曜日)休業日
6月27日(日曜日)休業日
6月28日(月曜日)
6月29日(火曜日)
6月30日(水曜日)権利確定日(=決算日)

このように、6月25日(金曜日)、6月28日(月曜日)、6月29日(火曜日)という3営業日が代金決済等のために必要な期間である。従って、分配金を受け取る権利を取得するには「04年6月24日(木曜日)午後3時」までに証券取引所で投資口の売買を成立させておく必要があるのである。

このとき、分配金の権利を取得できる最後の日(6月24日)は「権利付き最終日」、その反対に分配金の権利をもはや取得できない最初の日(6月25日)は「権利落ち日」と呼ばれている。

このようにわずか1日の違いで、分配金の有無が分かれるため、「権利付き最終日」と「権利落ち日」では、投資口の取引価格に差が生じることが多い。

例えば、上記の例で6月24日の投資口の取引価格が55万円、投資家が期待する分配金(=1会計期間である6ヵ月分の分配金)が投資口1口当たり1万円であったとしよう。この場合、翌日の6月25日には、投資口の取引価格が54万円になるという可能性が考えられる。

ただし、実際には投資口の取引価格は、その投資法人の将来の業績を反映するものであるので、決算日に業績の上方修正の公表が期待される場合には、権利落ち日になっても、取引価格があまり下がらない場合もありうる。

例えば上記の例で、その投資法人が次のように予想分配金を公表するものと仮定しよう。

1.04年2月下旬
前期(03年7~12月)の決算(確定値)の発表が行なわれた。それと同時に、今期(04年1~6月)の予想分配金を公表した。このとき予想分配金は「1万円」とされていた。

2.04年6月30日(証券市場終了時間より後)
今期(04年1~6月)の予想分配金を上方に修正して公表した。修正後の予想分配金は「1万7,000円」とされた(すなわち7,000円の上方修正)。

仮に、このように予想分配金が6月30日に大きく上方修正されるとすると、6月25日の権利落ち日においては、投資家の多くがこの上方修正を期待しているならば、投資口の取引価格はさほど下がらない可能性がある。

もちろん6月25日の時点では、6月30日の上方修正は、投資家は知らないのであるが、実際には投資口の取引価格は将来を織り込んで形成されるため、このような現象が起きる場合があり得る。

権利確定日

配当の受取りなどの株主の権利が確定する日のこと。通常は決算日である。

株主は会社に対して、配当請求権などの株主の権利を行使することができるが、この株主の権利を行使するためには、会社側が設定する一定の期日において株主であることが必要とされている。この一定の期日を「権利確定日」と呼んでいる。

不動産投資信託においても同じように「権利確定日」が設定されている。

例えば、ある上場不動産投資信託において、投資法人がその決算日である「2004年6月30日(水曜日)」を権利確定日に指定したとする。
この場合、この投資法人から分配金を受け取るためには、投資主は「04年6月30日」において投資主として名簿に登録されている必要がある(一般的には投資主は保管振替制度を利用するので、投資主の氏名が「実質投資主名簿」に登録される必要がある)。

ただし、ここで注意しておきたいのは、権利確定日において実質投資主名簿に氏名が記載されるためには、投資口の購入は、3営業日を挟んで、それより前に購入を終えておかなければならないということである。つまり上記の例でいえば、「04年6月24日(木曜日)の午後3時」までに証券取引所で投資口の購入が成立する必要がある。

これは、上場株式や上場不動産投資信託の場合には、証券取引所を通じて売買するため、代金決済などの関係から3日間の空白が生じるからである。上記の例でいえば、6月25日(金曜日)、6月28日(月曜日)、6月29日(火曜日)という3営業日が空白期間ということになる。
(詳しくは「権利落ち」へ)

権利金

土地や建物賃借権を設定したり譲渡したりするときに、賃借人が地主・家主に支払う金銭をいう。

賃料とは別に授受され、敷金と異なって契約が終了しても返還されることはない。その授受は、都市部で広く見られる社会的な慣行である。

その法的な性格は、

1.所有権類似の法的保護を受ける借地権の対価、2.賃料の一部の一括前払い、3.賃借権の譲渡・転貸に対する事前の承認料

などといわれ、契約の内容で判断しなければならないが、事実として行なわれている。

なお、借地権の取引においては、通常、権利金に相当する額が対価となっていて、その額は地価の7割程度の水準である。また、貸主が受け取る権利金は、課税上、不動産譲渡益と同様に取り扱われている。

権利質

財産権に設定された質権

質権は原則として動産・不動産に設定されるが、債権・株式などの財産権にも設定することができ、これが「権利質」である。権利質についての民法の適用は、動産・不動産に設定された質権の規定が準用される。

権利床

市街地再開発事業において、事業前に存在する権利の所有者に対して、その権利に相応して与えられる事業によって建築された建物(施設建築物)の敷地・床をいう。

この場合に、従前の権利の所有者に対して、施設建築物についてどのような権利を与えるかなどを定めるのが「権利変換計画」であり、関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払って定めなければならないとされている。

なお、権利床が与えられるのは、事業の施行地区内に、宅地借地権権原にもとづき建築物を有する者である。

権利証

不動産登記における「登記済証」をいう。「登記済証」を参照。

権利承継の登記(遺言による〜)

相続させる旨の遺言等により承継された財産に関する権利の登記。

従来、相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記がなくても第三者に対抗できるとされていたが、2019年7月1日以降は、法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないとされた。

権利登記

土地・建物に関する権利の状況・権利の変動を表示した登記のこと。
権利登記は、一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記記録のうち、権利部に記載される。

権利の一部が他人に属する場合における売り主の担保責任

売買した権利の一部が他人に属する場合に、その権利を取得して買い主に移転する売り主の義務をいう。契約不適合責任に基づく義務である。

例えば、売買した土地建物が売り主以外の者との共有物であったとき、土地は他者が所有していて建物は借地権付きのものであったときなどが該当する。この場合に、他人に属する権利を取得して買い主に移転すること(履行の追完)ができないときには、買い主は、代金減額請求損害賠償請求、契約解除権の行使をすることができる。

なお、これらの請求等は、原則として契約不適合を知った時から一年以内に不適合である旨を通知しなければならない。

権利能力

法律上の権利・義務の主体となることができるという資格のこと。
人間(自然人)は生まれながらにして、このような権利能力を有するとされている(民法第1条の3)。
また社団法人などの法人も権利能力を有することとされている(民法第43条)。

なお、出生前の胎児については、原則として権利能力を有しないこととされているが、相続遺贈損害賠償については出生前の胎児であっても権利能力があるものとみなされる。ただし、死産の場合には初めから権利能力がなかったこととなる(民法第721条、第886条、第965条)。

権利能力なき社団

法律の規定によらないで設立される団体をいう。

法人は法律の規定に従って設立される必要があるとされているため、権利能力なき社団は法人格を有しない。

法人には、大きく分けて、

1.一般社団法人一般財団法人等(一般社団法人および一般財団法人に関する法律による)
2.株式会社などの営利法人(会社法による)
3.学校法人、社会福祉法人、中小企業協同組合など(特別法による)

があるが、これらの法律によって設立された法人以外の団体は、すべて権利能力なき社団である。

権利能力なき社団の多くは、同窓会、互助会、町内会、ボランティア団体など非営利目的で活動する団体である。これらの団体は、所有する不動産は代表者の個人名義または構成員の共有名義で登記しなければならない。原則として団体名義での銀行取引ができないなど、権利能力において制約がある。

なお、非営利目的で活動する団体は、一般的に、一定の要件を満たすことにより、

1.特定非営利活動促進法による認証
2.一般社団法人および一般財団法人に関する法律による設立の登記

のいずれかの方法によって法人格を得ることができる。

権利の登記

登記記録甲区または乙区になされる登記のこと。不動産所有権賃借権抵当権などの権利関係を公示する登記である。「権利登記」ともいう。

権利の濫用

私法上の概念で、一見権利の行使とみられるが、具体的な情況や実際の結果に照らしてそれを認めることができないと判断されることをいう。

民法には、「権利の濫用はこれを許さない」という規定がある。

権利の濫用であるかどうかは具体的に判断するほかないが、例えば、加害を目的でのみなされた権利行使は一般的に濫用とされる。
現実の裁判においては、権利の行使を認めた場合と認めない場合に生じる不利益や社会的影響を比較較量して判断されることが多い。例えば、自己の土地の利用により近隣に迷惑が及ぶ場合には、土地利用の合理性、従来の経緯や慣行、迷惑の程度や受忍の可能性、影響回避の手段などを比較較量して、所有権の濫用であるかどうかが判断されることになるであろう(所有権は絶対的なものではないのである)。

権利の濫用であるとされたときには、権利行使の効果が生じないばかりか、権利を行使した者は不法行為として損害賠償の責任を負うことになる。

権利部

一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記記録のうち、所有権地上権賃借権抵当権などの権利に関する状況を記載した部分のこと。
権利部は、さらに甲区乙区に分かれる。

権利部という用語は、従来は使用されていなかったが、不動産登記法の全面改正(2004(平成16)年6月18日公布・2005(平成17)年3月7日施行)で新たに導入された。

CATV

通信ケーブルによってテレビ番組を各家庭へ送るサービスをいう。

もともとは難視聴地域対策として開始されたが、既存の番組を配信するだけでなく、ケーブルテレビ会社が独自に番組を作成・配信したり、通信ケーブルを利用した高速インターネット接続サービスを提供するなど、事業の範囲が拡大してきている。

テレビ放送と異なり、双方向の通信が可能なことが特徴である。

下水

不要なものとして排出される水をいい、雨水と汚水とで構成される。

雨水は、降雨等によって地表に滞留する水であり、汚水は水洗便所から排出される排水(し尿)、台所や風呂場から排出される排水(生活排水)、事業場からの産業排水などである。
下水道は、これら下水を処理するためのシステムとして構築される。

これに対して、利用のために給水される水を「上水」という。

下水道

下水を排除するために設置する施設の総称で、配水管等、処理施設、ポンプ施設などから構成される。

下水道には、汚水と雨水とを別々に排除する方法(分流式)によるものと、両者を同時に排除する方法(合流式)によるものとの2つの種類がある。また、汚水を排除する下水道には、下水を河川や海域に放流すべく処理するための終末処理場が設けられている。

下水道によって下水が排除される区域(下水道の排水区域)内においては、建築物の所有者等は、原則としてその土地の下水を下水道に流入させるための施設(排水設備)を設置しなければならず、また、汚水を終末処理場で処理できる区域(下水道の処理区域)内で汲取り便所が設けられている建築物を所有する者は、一定期間内にその便所を水洗便所に改造しなければならないなどの義務を負う。

下水道の処理区域

水洗便所から排出される排水(し尿)を、浄化槽(し尿浄化槽)によって浄化することなく、下水道管へ放出することができる区域のこと。

従って、この下水道の処理区域では、一般の住宅では、浄化槽(し尿浄化槽)の設置は不要である。

下水道の排水区域

水洗便所から排出される排水(し尿)を、浄化槽(し尿浄化槽)によって浄化した上で、下水道管へ放出しなければならない区域のこと。

ゲストハウス

中長期にわたって滞在者が利用する居住施設をいう。個室及び居間、浴室、キッチンなど共用の空間・施設を備えた賃貸住宅(シェア住居型ゲストハウス)を指す場合と、ホテルよりも安価なB&Bなどの簡易宿泊施設を指す場合がある。

シェア住居型ゲストハウスは、都市居住のスタイルを選択するときのニーズに応える住宅として利用される場合もあって、賃貸住宅経営の手法として運営される例も見られる。また、シェアハウスとして利用されることもある。

ゲストルーム

マンションの共用施設として設置された来客用の宿泊室。

ホテルの客室と同様の機能を備えていることが多い。マンションの管理規約等に従って利用することになる。

下駄ばきマンション

1階や2階を商店や事務所、駐車場にし、それ以上を住宅にしたマンションの俗称。下駄ばき住宅ともいう。

おおむね昭和40年代以降登場したもので、住宅部分と比較して面積が異なったり壁量が少なかったりするため(駐車場の場合はとくに顕著)、耐震性には十分な配慮が必要になる。

ゲニウス・ロキ

場所に現れている際立った雰囲気・土地特性であって、歴史・文化の蓄積によって生み出される類型化できない固有の価値、あるいはそれを体現している特別な場所をいう。ランドマークと重なることも多い。

ゲニウス・ロキ(Genius Loci)はラテン語で、「場所の精霊」という意味であるが、建築設計や環境設計に際しての空間認識概念として用いられている。

不動産開発に当たって、ゲニウス・ロキを保全し、活かすことには、事業の質を高める上で大事な着眼点であると考えられている。また、地域の歴史文化を継承し、あるいは建築物等を修復復元するに当たっては、ゲニウス・ロキを尊重することが重要である。

原位置での浄化による土壌汚染の除去

汚染土壌について、地下水汚染を経由した健康被害の恐れがある場合、または土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。

汚染土壌がその場所にある状態で、抽出・分解その他の方法により、当該土壌中から特定有害物質を除去することである(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

原位置封じ込め

汚染土壌について、地下水汚染を経由した健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。

汚染土壌が存在する区域の側面に、不透水層のうち最も浅い位置にあるものの深さまで地下水の浸出の防止のための構造物を設置し、汚染された地下水の流出を防止することである。

具体的には、鋼矢板などの遮水壁を土中に垂直に打ち込み、汚染土壌のある区域を遮水壁で囲いこむ。この囲んだ範囲の上部を、厚さ10cm以上のコンクリート、または厚さ3cm以上のアスファルトにより水平に覆い、当該範囲の上面から雨水が浸透しないようにする。
なお、遮水壁の内部において地下水の上昇がないことを事後的に確認し、上部のコンクリート等の雨水の遮断が十分かどうかを検証する必要がある。

さらに、上部の利用用途によりコンクリート等の上面をさらに覆土する必要がある(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

原位置不溶化

汚染土壌について、地下水汚染を経由した健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。
汚染土壌を、当該土地から掘削することなく、特定有害物質が水に溶出しないように性状を変更することである。

原位置不溶化は、汚染土壌がその場所にある状態で不溶化により法定基準以下の土壌とするものであるが、法定基準に適合する状態となっただけであって特定有害物質が除去されているわけではない。従って「汚染土壌の掘削による土壌汚染の除去」には該当しない。

また、シートによる覆い、覆土、舗装等、地表面からの飛散等の防止のため何らかの措置が必要となる(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

減価償却

企業会計において、長期間にわたって使用される資産(有形固定資産のほか、特許権などの無形固定資産を含む)を費用化する手法をいう。

例えば、生産設備などは複数の会計年度にわたって使い続けられるため、その取得費を複数年度に分けて費用として計上する必要があるが、そのための手法が減価償却である。
毎年度の減価償却費は、取得費用と耐用年数をもとに、一定の方法(定額法、定率法、級数法、生産高比例法のいずれか)で計算され、それを計上することによって資産が減価し、費用が発生することとなる。

なお、使用によって減価しない資産は減価償却の対象とならない。その代表的な例が、土地や地上権借地権などである。
一方で、土地等は減価償却の対象とならない代わりに、地価の変動等に応じて再評価する必要がある。

原価法

不動産鑑定評価において、不動産の再調達原価をベースとして、対象不動産の価格を求める手法のこと。

原価法では、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行なって対象不動産の試算価格を求める。この原価法による試算価格は「積算価格」と呼ばれる。

原価法は、対象不動産が「建物」または「建物およびその敷地」である場合に、再調達原価の把握と減価修正を適切に行なうことができるときに有効である。

また、対象不動産が「土地のみ」である場合においても、最近造成された造成地などのように再調達原価を適切に求めることができるときは、この原価法を適用することができる。
この場合において、対象不動産が現に存在するものでないときは、価格時点における再調達原価を適切に求めることができる場合に限り適用することができるものとする。

玄関

建物の表側に設ける出入口。建物の正式な出入口である。屋敷の玄関の造りは、門構えとともに建物の格式を示すとされてきた。

玄関は、土間上がり框(かまち)、床で構成される。床面の位置は土間よりも高くなっていて、床に上がるときに足場とする部位が上り框である。土間には一般に靴箱や傘立てが設置されているほか、玄関が生花や装飾品で飾られていることも多い。

なお、建物の出入口ではないが、マンション住戸の出入口も玄関とされる。この場合、土間と床との段差はわずかな場合が多い。

また、建物の裏に設置する出入口を「裏玄関」「裏口」、台所からの出入口を「勝手口」という。

玄関収納

玄関に設置する収納スペース。靴、雨具、スリッパ、防災道具などを収納するために用いられる。

戸棚を置く・吊る方法、玄関の壁面を棚状に加工する方法、玄関とは別に収納空間を造る方法などがある。

玄関テラス

外廊下から玄関扉までの間に造られた、植栽などが設置されている空間のこと。

玄関ホール

玄関に設置された部屋。英語でエントランスホール(entrance hall)ともいう。

マンションでは共用スペースになっているが、利用の仕方はさまざまである。

現況有姿

現在あるがままの状態を意味する。

山林や原野などを造成工事をしないで販売することを「現況有姿分譲」といい、市街化調整区域別荘地などの分譲でよく行なわれる。通常は、電気、ガス、水道などの施設が整備されていないために、そのままでは生活できない。分譲広告の際には、現況有姿分譲地であってそのままでは生活する施設がない旨表示しなければならない。

また、売主瑕疵担保責任を免れるために、売買契約中に「現況有姿で引渡す」旨記載して取引することがあるが(これを「現況有姿売買」という)、引渡しまでの間に目的物に変化があったときなどまで責任を免れることができるかどうかについては、消極的(ただちには免れない)に解する意見が強い。

現況有姿売買

現在あるがままの状態(現況有姿)で土地を売買することをいう。

山林や原野などを造成工事しないで販売することを「現況有姿分譲」といい、市街化調整区域別荘地などの分譲でよく行なわれる。通常は、電気、ガス、水道などの施設が整備されていないために、そのままでは生活できない。分譲広告の際には、現況有姿分譲地であって、そのままでは生活する施設がない旨を表示しなければならない。

また、売主瑕疵担保責任を免れるために、売買契約中に「現況有姿で引き渡す」旨を記載して取引することがあるが(現況有姿売買契約)、引渡しまでの間に目的物に変化があったときなどにおいてまで責任を免れることができるかどうかについては、消極的に解する(ただちには責任を免れられないとする)意見が強い。

現況有姿分譲

現在あるがままの状態で分譲する、の意味。

山林や原野などを造成工事をしないで販売することを「現況有姿分譲」といい、市街化調整区域別荘地などの分譲でよく行なわれる。通常は、電気、ガス、水道などの施設が整備されていないために、そのままでは生活できない。分譲広告の際には、現況有姿分譲地であってそのままでは生活する施設がない旨表示しなければならない。

また、売主瑕疵担保責任を免れるために、売買契約中に「現況有姿で引き渡す」旨記載して取引することがあるが(これを「現況有姿売買」という)、引渡しまでの間に目的物に変化があったときなどまで責任を免れることができるかどうかについては、消極的(ただちには免れない)に解する意見が強い。

原形復旧

災害復旧において、被災前の施設等を元のかたち(原形)に戻す考え方。公共施設の災害復旧における基本原則とされる。

ただし、公共施設の災害復旧は、被災前の施設の効用を復活することが目的である。従って、元のかたちに戻すことを原則としながらも、その方法が不適当な場合や困難な場合には、施設の形状、材質、寸法、構造などについて質的に改良して復旧することもある。

減災計画

自然災害が発生したときにその被害を最小化するための計画。多くは地方公共団体が作成している。

防災施設の整備、建物の耐震性強化などハード面での対策に加えて、ハザードマップの作成、防災教育・避難訓練、災害情報の伝達確保、避難体制の整備などソフトな対策を重視している。また、政府だけでなく、家庭・地域・企業の自主的な活動や相互協力が大きな役割を果たす。


減災計画に組み込まれている主な人々の活動は、家庭においては、住宅の耐震診断・耐震改修の促進、家具等の固定、水・食料・生活必需品の備蓄など、地域においては、障害者・高齢者の避難行動支援など、企業においては、事業継続計画(BCP)の策定などである。

また、減災のためには、被害の抑止、被害の軽減、災害予知と早期警報、被害評価、災害対応、復旧、復興の各ステージを関係者の役割分担によって運営することが大事であるとされているが(土木学会・東日本大震災フォローアップ委員会報告(2013年3月))、減災計画はその実施計画としての役割を担っている。

原状回復

ある事実がなかったとしたら本来存在したであろう状態に戻すことをいう。

例えば、契約が解除された場合には、一般に契約締結以前の状態に戻さなければならないとされる(原状回復義務を負う)。また、損害賠償の方法として、金銭で補償するのではなく損害が発生する以前の状態に戻す方法(原状回復による賠償)が認められる場合がある。

借家契約では、退去時の原状回復義務を特約していることが多いが、「本来存在したであろう状態」にまで戻せばよく、借りた当時の状態にする必要はないとされている。つまり、契約に定められた使用方法に従って通常の使用をしていれば、経年劣化があってもそのまま返還すればよい。

国土交通省が公表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、賃借人が負担すべき原状回復費用は、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」の範囲に限るとしている。また、東京都の「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例(賃貸住宅紛争防止条例、いわゆる東京ルール)」(2004年10月施行)では、重要事項説明の際に、借主に対して退去時の通常損耗等の復旧は貸主が行なうことが基本であること、入居期間中の必要な修繕は貸主が行なうことが基本であること、契約で借主の負担としている具体的な事項などを書面で説明しなければならないとしている。

原状回復義務

賃貸借契約の終了時に、賃借物(たとえば賃貸住宅)を借りてから生じた損傷を回復する義務。原状回復義務は賃借人が負う。

賃借人は、通常の使用収益によって生じた損耗及び賃借物の経年変化については、回復する義務はない。損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるときにもそれを回復する義務を免れる。

なお、賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕(たとえば賃貸住宅の維持補修)をする義務を負っている。また、賃貸借契約の終了時に、受け取った敷金(賃貸借に基づいて生じた賃借人の債務額を控除した残額)を返還する義務がある。

現状有姿

現況有姿のこと。
現在あるがままの状態を意味。

山林や原野などを造成工事をしないで販売することを「現況有姿分譲」といい、市街化調整区域別荘地などの分譲でよく行なわれる。通常は、電気、ガス、水道などの施設が整備されていないために、そのままでは生活できない。分譲広告の際には、現況有姿分譲地であってそのままでは生活する施設がない旨表示しなければならない。

また、売主瑕疵担保責任を免れるために、売買契約中に「現況有姿で引渡す」旨記載して取引することがあるが(これを「現況有姿売買」という)、引渡しまでの間に目的物に変化があったときなどまで責任を免れることができるかどうかについては、消極的(ただちには免れない)に解する意見が強い。

原生自然環境保全区域

原生状態を維持している一定以上の面積を有する国や自治体の所有地について、環境大臣が指定する区域(自然環境保全法第14条)。

建築物の建築、工作物の建築、宅地造成、海底の形状変更、土石採取、汚水や廃水の排出、車・馬・動力船の使用と航空機の着陸、植物・動物の採取・損傷、火入れ・焚き火、屋外での物の集積貯蔵、家畜の放牧などがすべて禁止される。

源泉徴収

所得税を給与等の支払者が徴収して納付するしくみ。

源泉徴収は、所得者自身が税額を計算し申告して納付する申告納税制度の特例で、給与、利子、配当、報酬などの所得について適用される。これらの所得の支払者は、支払額に応じて所得税額を計算し、支払を受ける者に対しては支払額からその所得税額を差し引いて支払い、源泉徴収票を交付し、徴収した所得税額は国(税務署)に直接納付する。

また、復興特別所得税についても所得税と同様に源泉徴収のしくみが適用されている。

源泉徴収された所得税額は、源泉分離課税される利子所得等を除いて、年末調整確定申告によって精算される。

給与等の支払者は、源泉徴収した所得税額を税務署に納付する義務を負うほか、個人事業の開業や給与支払事務所等の開設などに当たっては税務署に届け出なければならない。

源泉徴収票

正式名称は「給与所得の源泉徴収票」。
雇用者が、毎年1月初めに給与所得者に渡す書面である。

この源泉徴収票の「支払金額」の欄には、給与収入が記載される。
また、給与収入から給与所得控除を差し引いた残額(給与所得)は「給与所得控除後の金額」の欄に記載される。
給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに各種の所得控除を差し引いた残額は「所得控除後の金額」の欄に記載される。

なお「源泉徴収税額」は、給料や賞与からすでに差し引かれた源泉徴収の額の1年間の累計金額(年末調整を終了した後の累計金額)である。

源泉分離課税

納税の方式の一つで、他の所得と分離して、所得を支払う者が支払いの際に一定の税率で所得税を源泉徴収し、それだけで納税が完結するという方法をいう。

その対象となる所得は、利子所得、投資信託の収益分配金など(一部例外がある)であり、課税率は20%(一部例外あり)である。

減損会計

資産を収益性にもとづいて評価し、その結果認識された損失を当該資産の帳簿価額に反映させる手続きをいう。回収の見込みがない投資額は、損失として処理すべきであるという考え方(時価主義)にもとづく会計上の仕組みである。

資産評価によって把握した損失を処理する会計手法には、資産の帳簿価額自体を減額する方法と、損益計算において当該損失を計上する手法とがある。前者が減損会計であり、後者が時価会計である。減損会計においては評価価額の増加は計上できないが、時価会計では評価益を計上することができるなどの違いがある。資産の性格や会計の目的に応じて適切な手法を選択すべきとされている。

減損会計の対象となる資産は固定資産、および投資資産であるが、金融商品など時価会計を適用すべきとされている資産は除外される。減損会計の手続きは、

1.対象資産の確定、2.グルーピング(一体的に収益を生む複数の資産を単位化する)、3.減損の兆候の認識、4.減損損失の認識(資産から得られるであろう割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額を比較する)、5.減損損失の測定(帳簿価額を回収可能価額まで減額する、回収可能価額は、資産の使用価値、または正味売却価額のいずれか高い金額)

という順に進められる。

減損会計は、国際会計基準の一部として欧米で早くから取り入れられていたが、日本でも、2005(平成17)年4月1日以後に開始する事業年度からは全面的に適用されることとなった。

現存利益

正当な理由がないのに財産的利得を受け、これによって他人に財産上の損失を与えた場合には、利得を受けた者はその利得を返還する義務を負う(これを不当利得返還義務という)。

この場合において、利得を受けた者が善意のとき(すなわち正当な理由がないことを知らなかったとき)は、利得を受けた者は、利得が現に存在する範囲内で返還すればよいとされている。これを現存利益の返還義務と呼んでいる(民法第703条)。

具体的には、財産を遊興費で浪費してしまった場合にはその浪費分を差し引いた残額が現存利益である。ただし財産を生活費に消費した場合や、財産で借金を返済した場合には、それにより自分の財産の減少を免れているので、生活費や借金返済を差し引かない金額が現存利益となる。

減築

建築物床面積を減らす改築。1階の建築を一部分除去すること、2階を撤去することなどである。

建物をコンパクトな形にするので、建物のメンテナンス費用が軽減するほか、利用や動線の合理化、オープンスペースの確保などを図ることができると考えられている。

限定承認

相続人が遺産を相続するときに、相続財産を責任の限度として相続を承認することをいう。

相続財産を限度に被相続人の債務を弁済した後、その財産に余りがあればそれを相続できる。限定承認のためには、相続人の全員が共同して、相続人であることを知った日より3ヵ月以内に家庭裁判所に申し述べなければならない。

なお、限定承認または相続放棄のどちらも選択しなかった相続人は、被相続人の債権債務を無限定に承継する相続を承認した(単純承認)とみなされる。

減歩

土地区画整理事業における換地において、従前地の面積と換地後の面積が異なること、あるいはその宅地面積の差をいう。

土地区画整理事業では、一般に、道路の拡充、公園の整備などのために新たな用地が必要であり、その用地は土地区画整理事業区域内の宅地所有者が平等に提供することが原則とされている。このように用地を提供することが減歩であり、提供する宅地の割合を「減歩率」という。換地後の宅地面積は減少するが、土地区画整理事業によって宅地の価値が増大するため、宅地所有者に損失は生じないと考えられている。

減歩には、道路、公園等公共用地のための減歩(公共減歩)と、事業費に充てるために売却する用地(保留地)のための減歩(保留地減歩)とがあり、両者を合計したものが合算減歩である。

原野

耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地。人手が加わっていないこと、林地でないことが要件となる。

不動産登記における地目の一つであり、相続税および贈与税の課税での土地価額評価における地目ともなっている。

現状は雑草、かん木類のみが生育していても、耕作の履歴や痕跡があれば、原野と認めないのが一般的な取り扱いである。従って、耕作放棄地は一般に原野ではない。

原野商法

無価値に等しい土地を、将来値上がりするなどと説明して売付ける手口をいう。地価の高騰期に投機的な動機に乗じて行なわれた。値上がり後の転売利益を目的に買ったときなどは、詐欺とはならない場合もある。

なお、最近、過去に原野商法で取得した土地の転売を勧誘し、そのための費用を支払わせるなどの手口による被害が発生している。

コア投資

不動産投資において、賃貸収益(インカムゲイン)を重視して運用することをいう。例えば、JREITはコア投資であるとされる。

コア投資は、売買差益(キャピタルゲイン)を得る投資と比べて、安定的でリスクが小さいが、期待収益率は小さいと考えられている。

コインランドリー

貸洗濯機店。洗濯機・乾燥機を備えていて、セルフサービスで洗濯することができる店舗のことで、「コインランドリー」は和製英語。英語ではSelf-service laundry、Launderetteなどという。

行為能力

自分が行なった法律行為の効果を確定的に自分に帰属させる能力のこと。
法律行為を有効に行なうには意思能力を持つことが必要とされているが、実際の契約等において意思能力を持たない者(=意思無能力者)が、契約当時に意思能力を欠いていたことを事後的に証明することは非常に困難である。

そこで民法では、正常かつ完成された精神能力を持たない者を画一的に「行為能力が制限された者」(=制限能力者)として取り扱い、こうした者を保護している。
このような制限能力者には、法定代理人または保佐人補助人が選任されている。制限能力者が、これらの法定代理人等の同意を得ないで単独で行なった法律行為は原則として事後的に取消しが可能である。

このように法定代理人等に同意権を与えることにより、制限能力者が不適切な法律行為により不利益を被ることがないよう監視しているのである。
制限能力者とされているのは、未成年者成年被後見人被保佐人被補助人である。

公営住宅

住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸する住宅。住宅セーフティネットとしての機能を担い、公営住宅法に基づき地方公共団体が建設、買収または借り上げして、管理する。

公営住宅に入居できるのは、原則として収入分位(所得が低い順に並べたときにその所得以下の者が全体に占める割合)が25%以下の者であるが、高齢者等については収入分位が25~40%の者も対象となる。また、家賃は、入居者の収入と立地条件や規模、経過年数等を考慮して決定され、近傍同種の家賃が上限とされる。

公益財団法人

一般財団法人のうち、行政庁の認定(公益認定)を受けたものをいう。
認定の主な基準は、

1)主たる目的が、法律に定める公益目的事業(公益に関する事業で不特定かつ多数の者の利益増進に寄与するもの)を行うことであること
2)公益目的事業を実施するための経理的基礎を有すること
3)技術的能力を有すること
4)特別の利益を与える行為を行わないこと
5)収支相償(公益目的事業に係る収入額がその事業に必要な適正費用を償う額を超えない)であると見込まれること
6)公益目的事業の比率が50%以上であると見込まれること
7)遊休財産額が1年分の公益目的事業費相当額を超えないと見込まれること
である。

公益認定を受けた財団法人は、名称中に「公益財団法人」という文字を独占的に使用する。また事業活動に当たっては法律による一定の規制に服さなければならない一方、税制上「特定公益増進法人」として優遇される。

公益社団法人

一般社団法人のうち、行政庁の認定(公益認定)を受けたものをいう。
認定の主な基準は、

1)主たる目的が、法律に定める公益目的事業(公益に関する事業で不特定かつ多数の者の利益増進に寄与するもの)を行なうことであること
2)公益目的事業を実施するための経理的基礎を有すること
3)技術的能力を有すること
4)特別の利益を与える行為を行なわないこと
5)収支相償(公益目的事業に係る収入額がその事業に必要な適正費用を償う額を超えない)であると見込まれること
6)公益目的事業の比率が50%以上であると見込まれること
7)遊休財産額が1年分の公益目的事業費相当額を超えないと見込まれること
である。

公益認定を受けた社団法人は、名称中に「公益社団法人」という文字を独占的に使用する。また事業活動に当たっては法律による一定の規制に服さなければならない一方、税制上「特定公益増進法人」として優遇される。

公益法人

公益社団法人および公益財団法人の総称で、一般社団法人または一般財団法人のうち、公益目的事業を行なう法人として、一定の基準によって認定されたものをいう。

公益法人が行なう公益目的事業の収益については、原則として法人税を納める必要はない。

公益目的事業とは、学術・科学技術、文化・芸術、福祉、地域社会の発展など法定された23種類の公益分野に関する事業で、不特定多数の利益のために行なうものとされている。また、認定の基準としては、公益目的事業に充てる予定の事業費が50%以上であること、理事等に対する報酬等が不当に高額にならないよう支給基準を定めていること、営利企業等に対して寄付等の利益行為を行なわないことなどが定められている。

なお、2008(平成20)年12月1日に「一般社団及び一般財団法人に関する法律」が施行されるまでは、民法によって設立された社団法人および財団法人を公益法人と称していた。

公益法人制度改革

民法によって設立されていた社団法人、財団法人など、公益に関する非営利を目的とする法人について、その設立、運営等のしくみを抜本的に改正することをいう。改正のための法律などが整備された後、新たな制度は2008年12月1日から施行された。


改革の目的は、1)民間による非営利目的の活動の発展を促進すること、2)従来の民法法人制度の問題点(主務官庁の裁量の不透明性など)を解決することであるとされている。


この改革によって、従来の民法法人制度が採用していた許可主義(主務官庁の許可によって設立、免許主義ともいう)が、準則主義(遵守すべき法規に適合すれば当然に法人格を付与)に改められた。また同時に、新しい制度によって設立された法人(一般社団法人または一般財団法人)のうち、公益性について一定の要件を満たすことが認定されたもの(公益社団法人または公益財団法人)については税制上「特定公益増進法人」として優遇される措置も定められた。
これによって、従来の社団法人及び財団法人は廃止され、特別の法律によらない一般的な法人は、一般社団法人または一般財団法人、公益社団法人、、公益財団法人の4つに分類されることとなった。

なお、従来の社団法人または財団法人は、2008年12月1日に自動的に特例民法法人に移行し、その後5年以内に、公益社団・財団法人への移行、一般社団・財団法人への移行、解散のいずれかを選択することとされている。また、有限責任中間法人は、同日に自動的に一般社団法人に移行した。

公開空地

1971(昭和46)年に創設された総合設計制度に基づいて、ビルやマンションの敷地に設けられた一般公衆が自由に出入りできる空間のことを「公開空地」と呼ぶ。

総合設計制度は、正式には「敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例」という名称である(建築基準法第59条の2)。これは、建築物の敷地内に一定以上の公開空地を有する等の条件を満たす建築物について、容積率や各種の高さ制限特定行政庁が緩和するという制度である。
言い換えれば、容積率等をボーナスとして与えることにより、開発者に公開空地を作るように促すという制度であるということができる。

この総合設計制度により作られた公開空地は、一般公衆が自由に通行できる空間でなければならず、通路や植栽を整備した快適な空間とすることが多い。

高架水槽

狭義には建築物に給水するために鉄骨造や鉄筋コンクリート造による高い塔をつくり、その上に置く給水タンクのことをいうが、建築物の屋上に設置する高置水槽も含めて広義に高架水槽と称する。

交換差金

金銭以外の財産を交換する場合に、譲渡する財産の価額と取得する財産の価額が同額でないときにその差額を補うために授受される金銭をいう。

また、交換差金を伴う交換を「補足金付交換」という。

民法上、交換契約については売買契約の規定が準用されるが、交換差金については売買代金に関する規定が準用される。 
なお、所得税・法人税の課税において、土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは譲渡がなかったものとする特例(土地建物の交換特例)があるが、交換差金等の額が譲渡資産の価額と取得資産の価額とのいずれか高いほうの価額の20%相当額を超える場合には、この特例は受けられない。

後期高齢者

75歳以上の年齢にある人。

75歳未満の人とは別に、独立した後期高齢者医療保険に加入することとされている。そして、後期高齢者の医療保険料の負担は、原則として年金からの特別徴収(天引き)となる。

公共圏

市民社会を支える制度的な基盤。市民が自生的に形成する独自の社会領域である。ドイツの社会学者ユルゲン・ハーバーマス(Jürgen Habermas)が1999年に提示した概念で、社会学だけでなく、政治学などでも広く受け入れられている。また、まちづくりに当たっても有益な概念である。

ハーバーマスによると、公共圏は、市場や政府組織とは異なる領域で、市民の自由意思に基づいて、経済的、国家的な仕組みとは独立に、共同で意思決定し、連帯的な結合を形成・維持されているとされる。そして、公共圏が形作られるのは、自生的に成立した団体・組織・運動が私的領域の共感を集約・増幅することによってであり、自立した個人が生活世界に根差してコミュニケーションを図る場として機能するとされている。

工業専用地域

都市計画法(9条)で「工業の利便を増進するため定める地域」と定義されている。この用途地域では、建ぺい率の限度は都市計画により30%から60%の範囲内(10%きざみ)である。

また容積率の限度は100%から400%の範囲内(5種類)で都市計画で指定される。

この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

(建築できるもの)
1.公衆浴場
2.店舗等(物販店、飲食店を除く)
3.事務所
4.工場
5.カラオケボックス等(床面積1万m²以下)
6.自動車教習所
7.倉庫業の倉庫

(建築できないもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院
3.老人ホーム
4.飲食店等
5.ホテル・旅館
6.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場、パチンコ屋・麻雀屋、映画館・劇場、料理店、キャバレー、個室付浴場

工業団地造成事業(市街地開発事業としての~)

工業団地造成事業は、一般的には工場が立地するのにふさわしい土地を造成する事業をいう。

しかし、都市計画で定められる市街地開発事業の一つとされるのは、そのうちの特定の事業である。

市街地開発事業とされる工業団地造成事業は、首都圏の近郊整備地帯内または都市開発区域内、近畿圏の近郊整備区域内または都市開発区域内において、工場敷地の造成、道路、排水施設等の整備などによって、首都圏や近畿圏の秩序ある工業立地を図る役割を担う。

事業は、事業区域の土地を全面的に買収し(最終的には収用できる)、造成した工場敷地を工場経営者に売却する方法で行なわれる。
敷地の譲り渡しに当たっては、譲受人の公募、工場建設計画の承認、権利処分の制限などが必要である。

事業の仕組みは、「首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律」または「近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律」に規定されている。

工業地域

都市計画法(9条)で「主として工業の利便を増進するため定める地域」と定義されている。
この用途地域では、建ぺい率の限度は原則として50%または60%である。
また容積率の限度は100%から400%(5種類)の範囲内で都市計画で指定される。
この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

(建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.公衆浴場、老人ホーム
3.店舗等(床面積1万m²以下)
4.事務所等
5.工場
6.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(業種によっては床面積1万m²以下)
7.自動車教習所
8.倉庫業の倉庫

(建築できないもの)
1.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院
2.ホテル・旅館
3.映画館・劇場、料理店、キャバレー、個室付浴場

甲区

登記記録において、不動産所有権に関する事項を記載した部分のこと。

この甲区に記載される登記には「所有権保存登記」「所有権移転登記」「所有権移転仮登記」などがある。

後見人

未成年者成年被後見人を「後見」する者を「後見人」という。

後見とは、人(未成年者や成年被後見人)を保護するという意味である。

後見人は民法により次の権限を持つ(民法第859条)。

1.未成年者または成年被後見人の財産を管理する権限を持つ。
2.未成年者または成年被後見人の法律行為を代理して行なう権限を持つ

このように後見人には財産管理権と代理権という強い権限が付与されている。

なお、未成年者の後見人は未成年後見人と呼ばれる。
また、成年被後見人の後見人は成年後見人と呼ばれる。

公告

法律上ある事項を広く一般に知らせることをいい、その目的・効果・方法は法律によってさまざまである。

目的は、広範囲の利害関係人や不特定の者に対して権利行使等の機会を与えるためであることが多いが、一定の事項を社会に公示するためなどを目的とする公告もある。

法的効果としては、公告に対して一定期間内に一定の手続きを取らないと権利を失うなどの不利益が確定するものが多いが、不知を援用できなくなる効果に留まるものもある。

公告の方法としては、官報・新聞への掲載、裁判所等の掲示板への掲示などがある。

広告規約

不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)のこと。
不動産の広告に関する不動産業界の約束事であり、政府(公正取引委員会)が正式に認定したものを「不動産の表示に関する公正競争規約」という。

不動産業界では一般的に「表示規約」または「広告規約」と呼んでいる。

この表示規約が最初に作られたのは1963(昭和38)年のことであり、その後10回以上も改正されて、不動産の広告に関する最も詳細な規制として、不動産会社に広く遵守されている。

この表示規約の改正作業や、表示規約に違反した不動産会社への警告などを行なっているのは、全国各地に設立されている「不動産公正取引協議会」である。

広告旗

日常用語では「のぼり」「のぼり旗」と呼ばれている。
容易に移動させることができる状態で立てられ、または工作物等に立てかけられている広告用の旗のこと。また、その看板を支える台なども広告旗に含まれる。

広告旗は、店舗の宣伝や不動産物件の告知のために屋外に掲出されることが多く、コストも安く宣伝効果も高いため、近年はその利用が増えている。
しかし、改正屋外広告物法(2004(平成16)年12月施行)では、広告旗を即時撤去できる対象に新規に含めることとなったので注意したい。

屋外広告物法に基づく都道府県・市町村の屋外広告物条例では、広告旗の禁止区域や許可区域を設けている場合がある。また同じく屋外広告物条例では、広告旗の大きさや設置方法を規制している場合がある。

このような屋外広告物条例に違反し、しかも管理されずに放置されていると認められた場合、広告旗は予告なしに即時撤去できる扱いとなっている。

工作物

土地に定着する人工物のすべてを指す。従って、建物だけでなく、広告塔なども「工作物」である。

工作物のうち、建築物は当然建築基準法の対象になる。

広告塔などは、本来建築基準法の対象外のはずだが、一定以上の規模のものは、建築確認の申請が必要であり、建築物と同じように扱われる。

具体的には次の工作物である(建築基準法88条・施行令138条)。

1.高さが2mを超える擁壁(ようへき)
2.高さが4mを超える広告塔
3.高さが6mを超える煙突
4.高さが8mを超える高架水槽
5.高さが15mを超える鉄柱 など

公衆衛生

社会的に組織された衛生に関する諸活動の総称。疾病(特に、伝染病・流行病)の予防や健康の保持を目的に実施される。

公衆衛生の活動内容は幅広いが、(1)伝染病予防、成人病予防のような疾病の予防、(2)母子衛生、精神衛生、食品衛生、住居衛生、労働衛生のような健康の保持、(3)上下水道整備、汚物塵芥処理のような生活環境の改善に大別できる。また、公衆衛生のために、保健所のほか、衛生事業団体、保健師・産業医・衛生管理者等の専門家などが組織されている。

なお、医療、看護、介護、社会福祉などの活動は、一般的に公衆衛生には含まれない。

公証人

公正証書の作成、会社設立時の定款の認証、確定日付の付与などの公証事務を行なうために、法務大臣が任命する公務員のこと。全国で約500名が任命されている。

公証人は、裁判官などを長く務めた実務経験者の中から法務大臣が任命しており、全国の法務局・地方法務局に所属し、公証役場で執務を行なっている。

公証役場

公証人が執務する事務所のこと。全国に約300ヵ所の公証役場が設けられている。

公証役場では、公証人が公正証書の作成、会社設立時の定款の認証、確定日付の付与などの公証事務を行なっている。

更新事務手数料

借家契約の期間更新の際に、借家人に対して請求される費用の一つで、契約更新のための事務費用であるとされている。しかしながら、契約更新事務を依頼しない場合にはその費用を支払う必要はない。

また、契約更新に当たって家賃改定などのための事務を不動産業者等に依頼した場合も、その費用は改定を必要とする方(通常は家主)が負担するのがより合理的であるという意見がある。

更新手数料

借家契約の期間更新に際して、そのための事務費用として支払う金銭。「更新事務手数料」ともいう。

契約更新手続きを依頼した場合に、それを実施する者に対して支払う。これに対して、「更新料」は、賃貸借契約に基づき、賃貸期間更新に当たって、借主が貸主に対して支払う金銭である。

更新料(建物賃貸借における~)

建物賃貸借契約を更新する際に、借主から貸主に対して支払われる金銭をいう。

支払いを求めるためには、支払いについての合意が必要である。

なお、更新料をめぐっては、その支払い合意は無効であるとの訴訟が提起されているが、最高裁判決(平成23年7月15日、第二小法廷)は、

1.更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払い、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当

2.更新料の支払いには、およそ経済的合理性がないなどということはできず、また、一定の地域において、期間満了の際に賃借人が賃貸人に対し更新料の支払いをする例が少なからず存することは公知であること、裁判上の和解手続き等においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとしてこれを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことに照らすと、賃借人と賃貸人との間に更新料条項に関する情報の質および量ならびに交渉力について、看過し得ないほどの格差が存するとみることはできない

3.賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当

として、一定の条件のもとでその適法性を認めた。

更新料(借地契約における~)

普通借地権旧法上の借地権に関する借地契約においては、存続期間が満了したとしても、地主の側に契約更新を拒絶するだけの正当事由がない限りは、地主は契約の更新を拒絶することができない(借地借家法第6条)。そのため地主は、契約の更新について異議を唱えない代わりに、借地人に対して更新料を請求するケースが多い。更新料の金額は土地の価額の5%前後であることが多いようである。

公示価格

地価公示法にもとづいて土地鑑定委員会が公表する土地の価格をいう。

適正な地価の形成に資するため、全国の都市計画区域内等に設定された標準地(平成19年地価公示では3万地点)について、毎年1月1日時点のその正常価格を複数の不動産鑑定士が鑑定し、土地鑑定委員会で審査して決定した価格であり、同年3月下旬に公表されている。更地の単位面積当たりの価格として示される。

公共事業のための用地買収価格は、この価格を規準に決めなければならないとされているほか、民間の土地取引においてもこれを指標とするよう努めるべきとされている。

なお、各都道府県も、毎年7月1日時点でほぼ同様の調査を実施し、「都道府県基準地標準価格」として公表している。

工事完了検査(完了検査)

建築主は、工事を完了した日から4日以内に、建築主事に「工事完了検査」を申し出る必要がある。この申し出を受けた建築主事は申し出から7日以内に建築物を検査する必要がある。

この検査の結果、建築物建築基準法に適合している場合は、建築主事は「検査済証」を建築主に交付しなければならない。

公示地価

地価公示により公示された「標準地」の価格のこと。

もっとも代表的な土地評価である地価公示は、地価公示法にもとづき、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月下旬に公表する土地評価である。

地価公示では、全国で選定された3万数千地点の「標準地」について、毎年1月1日時点を基準日として各標準地につき2名以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、その正常な価格を土地鑑定委員会が判定し、毎年3月下旬に公示する。この公示された価格を「公示地価」という。

地価公示によって評価された公示地価は、一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、公共用地の取得価格の算定基準ともなっている。

公序良俗違反

公の秩序、または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は無効とされている(民法第90条)。
民法などにおける強行規定に違反する法律行為は無効とされているが、こうした強行規定に該当しない法律行為であっても、民法第90条により、公序良俗に違反したことを理由として法律行為が無効とされる場合がある。

例えば、暴利行為(高利貸し)、倫理に反する行為(妾契約)、正義に反する行為(悪事をしないことを条件として金を与える行為)、人権を侵害する行為(男女を差別する雇用契約)などである。

なお、公序良俗違反に関しては実際の状況に応じて、無効か否かを判断するという処理がされることが多い。例えば、密輸資金の融資を強く要請され、やむを得ず融資した者が貸金の返還を請求した事案では、最高裁は、融資した者の不法性は微弱であり、公序良俗違反に当らないとして貸金の返還請求を認めている。

公図

登記所法務局出張所などのこと)に備え付けられている地図であって、土地が一筆ごとに書かれており、土地の形状や隣接地との位置関係が一目で分かるように作られたもの。登記所で閲覧し、写しを取ることができる。

公図が着色されている場合には、各色が次のような意味である。

赤:道路、 青:水路、 黄色:田、 薄茶色:畑、 黄緑色:原野

洪水浸水想定区域

想定し得る最大規模の降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域。水防法に基づいて、国土交通大臣または都道府県知事が指定する。

洪水浸水想定区域が指定されるのは、洪水予報河川および水位周知河川についてである。指定された場合には、区域の範囲とともに、浸水した場合に想定される水深、浸水継続時間等があわせて公表される。また、ハザードマップなどにも表示されている。

公図の信頼性

公図は本来、明治初期に行なわれた租税徴収のための簡易な土地測量図が原型になっているといわれている。その後1892(明治25)年に「土地台帳付属地図」という名称が付けられ、それ以降、登記所が保管してきた。従って現在でも、公図の正式名称は「土地台帳付属地図」である。
このような歴史から分かるように、名前は「おおやけの地図」であっても、実際には明治時代の未熟な測量技術で作成された「土地台帳付属地図」をそのまま使用しているので、土地の形状や土地同士の位置関係が誤っていることが少なくない。

そこで、政府は正しい土地の地図を作成するために、1951(昭和26)年以降、国土調査法に基づいて全国各地で「地籍調査」を実施している。この地籍調査は土地の形状や土地同士の位置関係を最新の技術で測量する調査であり、こうして作られた正確な地図は登記所に送付され、これも「公図」として一般に閲覧されている。

従って、一口に「公図」といっても、明治時代に作られた不正確なものと、1951(昭和26)年以降に作られた極めて正確なものという2種類が存在していることになる。
しかも、地籍調査は都道府県や市町村が主導して行なっているが、市街地では調査が非常に困難であるため、市街地での地積調査は現在でもほとんど進行していない。このため、市街地を管轄する登記所には、明治時代に作られた不正確な公図が備え付けられていることが非常に多いのである。

このため、土地の売買にあたっては公図のみを信頼するべきではないといわれている。
ちなみに1959(昭和34)年以降は、土地の表示登記分筆登記を申請する際に、「地積測量図」の添付が義務化されたので、もし対象となる土地に「地積測量図」がすでに存在しているのならば、この「地積測量図」を登記所で閲覧することが望ましい。

公正証書

個人や法人からの嘱託により、公証人公証役場で作成する契約書・合意書などのことをいう。

公正証書の内容としては、不動産売買契約、不動産賃貸借契約、金銭消費貸借契約遺言などが一般的であるが、公序良俗に反しない限り、どのような契約や合意であっても公正証書にすることが可能である。

公正証書を作成するには、当事者全員(または委任状を持参した代理人)が公証役場に出頭し、公証人に案文を提出し、公証人が公正証書を作成し、当事者全員に読み聞かせ、当事者全員が署名捺印するという手続きを踏む。
このため、文書の内容に関して後日裁判になった場合でも、文書の内容が真実であることが非常に強く推定されるので、公正証書に記載された内容がそのまま裁判で証拠になるというメリットがある(これを「証拠力」という)。

また、金銭消費貸借契約に関しては、債務者が一定の事情が発生したときには直ちに強制執行に服するという旨の陳述(これを「執行認諾約款」という)が記載されている場合には、この公正証書は裁判所の確定判決と同等の効力を持つこととされている。

このため、「約束の支払い期日までに債務者が債務を返済しない場合には債務者および連帯保証人は直ちに強制執行を受けても何ら異議はない」という旨の執行認諾約款のある公正証書が存在すれば、裁判を経ないで、直ちに債務者と連帯保証人の財産に対して強制執行を開始することができるというメリットがある。

このような強い効力を持つ公正証書であるが、その作成手数料は低額であり、利用しやすい制度となっている。

公正証書の作成手数料

公証人が、公正証書等を作成した場合に支払わなければならない手数料。「公証人手数料令」によって定められている。

手数料は消費税は非課税で、原則として、公正証書等を受け取るときに現金で支払う。また、金銭消費貸借契約、土地の賃貸借契約、土地の売買契約等には、公正証書に印紙税法による印紙の貼付が必要となる。

法律行為に係る証書作成の手数料は、原則として、その目的価額に応じて次のように定められている。

目的の価額              手数料
100万円以下               5,000円
100万円を超え200万円以下         7,000円
200万円を超え500万円以下        11,000円
500万円を超え1.000万円以下        17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下     23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下     29,000円
5,000万円を超え1億円以下       43,000円
1億円を超え3億円以下    43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算
3億円を超え10億円以下    95,000円に5,000万円までごとに11,000円を加算
10億円を超える場合    249,000円に5,000万円までごとに8,000円を加算

なお、目的価額を算定することができないときは、一般に500万円とみなすとされている。

売買契約のように双方が義務を負う場合は、双方が負担する価額の合計額(売買の場合は売買価格の2倍)が目的価額となる。また、数個の法律行為が1通の証書に記載されている場合にはそれぞれの法律行為ごとに別々に手数料を計算しその合計額を目的価額とし、法律行為に主従の関係があるときには従たる法律行為は目的価額の計算対象には含まれない。

厚生地区

特別用途地区の一つ。
医療機関や社会福祉施設の周囲において、好ましくない業種(例えばパチンコ店や風俗店など)の進出を規制するという地区である。

市町村が指定する地区であり、建築規制の内容は市町村ごとの条例で定められる(建築基準法第49条)。
従って、厚生地区の詳細を知りたい場合には、市区町村役所の建築確認担当部署に問い合わせる必要がある。

更正登記

不動産登記において、登記された時点ですでに誤りがある場合に、当事者が申請して、または登記官が職権で、登記を訂正することができる。これを「更正登記」という。

不動産登記法第67条(2005(平成17)年3月7日施行)では、登記に錯誤または遺漏があることを登記官が発見した場合には、登記官はすぐに登記名義人にその旨を通知しなければならない。このような仕組みにより、当事者が更正登記を申請するよう促す制度となっている。

また、同じく、不動産登記法第67条(2005(平成17)年3月7日施行)では、錯誤または遺漏が「登記官の過誤」によるものであるときは、当事者の申請がなくとも、登記官が職権で更正しなければならないとしている。
ただしこの職権更正では、登記上の利害関係のある第三者(例えば所有権移転登記の更正における抵当権者)がいる場合には、登記官はその第三者の承諾を得なければならない。

構成部分

ある物の部分を構成する物を構成部分という。

例えば、土砂は土地の構成部分であり、屋根は建物の構成部分である。
また定着物は土地の構成部分であるとされている。

高層住居誘導地区

都市計画法第8条に列挙されている地域・地区の一つ。
容積率の限度が400%と定められている用途地域の中において、建築物の用途を「住宅」としたときには容積率の限度を最高で600%にまで拡大するという地区。

容積率のボーナスを与えることによって、人口が減少しつつある都心において高層住宅の建設を促進し、都心に人を呼び戻そうとする制度である。

この高層住居誘導地区において、容積率のボーナスを受けるには、建築物の延べ床面積の3分の2以上を住宅とし、また敷地面積の下限が設けられているときは、その下限より大きな敷地を確保する必要がある(都市計画法第9条第15項)。

公租公課

国または地方公共団体により賦課される公の負担の総称。その賦課について当事者の同意は不要で、強制力を伴う。

公租は国税・地方税を、公課は租税以外の負担(負担金・分担金・使用料など)を指すとされる。

構造計算

構造物に関して、自重、地震、強風などの加重によって発生する応力や変形を計算することをいう。その結果に基づいて構造物の安全性等を判断する。

建築確認申請に当たっては、構造や規模に応じて定められている一定の建物について、構造計算書を添付して、構造計算適合性の判定を受けなければならない。この場合の計算方法や、想定する加重、必要とする耐力などは、建物の構造、規模、用途等によって異なる。

なお、構造計算の適合性の確保を含めて建築物の構造をデザインする業務を構造設計と言い、建築士が責任を負うべき重要な業務のひとつとされている。耐震設計もこれに含まれる。

構造計算適合判定

建築物構造計算が適正であることを判定することで、一定規模以上の建築物についてその実施が義務づけられている。判定は、都道府県知事または指定構造計算適合性判定機関が行なう。

構造計算適合判定が義務づけられているのは、
・高さが20mを超える鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物
地階を除く階数が4以上である鉄骨造の建築物
・高さが13m又は軒の高さが9mを超える木造の建築物
・これらと同様なものとして国土交通省が定める建築物
である。

なお、
・許容応力度等計算、保有水平耐力計算又は限界耐力計算を行なったもの
・構造計算または許容応力度計算で、大臣認定プログラムによるもの
についても構造計算適合性判定が必要である。

構造耐力

建築物には、自重(建築物そのものの重さ)、積載荷重(人間・家具・設備の重さ)、積雪という垂直方向の力がかかり、また地震力・風圧力という水平方向の力がかかる。
これらの垂直方向・水平方向の力に対して、建築物が垂直方向の力を支え、水平方向の力による変形に対抗することができるということを「構造耐力」と呼んでいる。

また、特に水平方向の力による変形に対抗することができるということを「水平耐力」と呼んでいる。
この水平耐力を備えるように筋かいを入れ、または構造用合板などを張った壁は「耐力壁」と呼ばれている。

建築基準法では、すべての建築物が十分な構造耐力を備えるように、詳しい技術的な基準を設けている(建築基準法第20条第1号、建築基準法施行令第36条から第80条の3まで)。
また、木造3階建てなどの建築物については十分な構造耐力を持つことをチェックするために、設計段階で構造計算を行なうことを義務付けている(建築基準法第20条第2号、建築基準法施行令第81条から第99条まで)。

構造耐力上主要な部分

建築基準法施行令第1条第3号に規定されている、建築物の部分のこと。建築物の荷重を支え、外力に対抗するような建築物の基本的な部分のことである。具体的には、次の部分が「構造耐力上主要な部分」に該当する。

1.在来工法の木造住宅の場合
基礎に関するものとして「基礎」「基礎ぐい」、軸組に関するものとして「土台」「壁」「柱」「斜材(筋かいなど)」「横架材」「床版」、屋根に関するものとして「小屋組」「屋根版」が、「構造耐力上主要な部分」に該当する。

2.鉄筋コンクリート構造のマンションの場合
「基礎」「基礎ぐい」「壁」「床版」「屋根版」が「構造耐力上主要な部分」に該当する。

このような「構造耐力上主要な部分」については、住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)で新築住宅に関する10年間の瑕疵担保責任が義務付けられている(詳しくは「請負人の瑕疵担保責任(品確法における~)」、「売り主の瑕疵担保責任(品確法における~)」へ)。

なお、「構造耐力上主要な部分」の正確な定義は次の通りである。
「基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう)、床版、屋根版または横架材(、けたその他これらに類するものをいう)で、建築物の自重もしくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧または地震その他の震動もしくは衝撃を支えるものをいう」(建築基準法施行令第1条第3号)。

また、よく似た用語として建築基準法第2条第5号では「主要構造部」という用語を定義している。
この「主要構造部」とは「壁・柱・床・梁・屋根・階段」のことである。ただし、構造上重要でない最下階の床、間仕切り用の壁、間柱、つけ柱、局所的な小階段などは「主要構造部」から除外されている。

構造耐力上主要な部分等

構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」を合わせたものである(住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)第87条・第88条)。

このような「構造耐力上主要な部分等」については、品確法により、新築住宅に関する10年間の瑕疵担保責任が義務付けられている。
(詳しくは「請負人の瑕疵担保責任(品確法における~)」、「売り主の瑕疵担保責任(品確法における~)」へ)

構造用合板

壁などの強度をつくり出すことができる合板のこと。

在来工法枠組壁工法木造建築物において、耐力壁、床板、屋根の野地板などとして使用される。

広大地

その地域における標準的な宅地地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法開発行為に当たって公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものをいう。

相続税等の課税における財産評価の際に、一定の算式によって減額評価される。ただし、大規模工場用地に該当するものおよび中高層マンション等の敷地用地に適しているものは除かれる。

この場合、「著しく地積が広大」であるかどうかは、原則として、自治体の定める開発許可を要する面積基準(例えば三大都市圏の市街化区域では500平方メートル、それ以外の地域の市街化区域では1,000平方メートル)以上であるかどうかで判断されるが、その地域の標準的な宅地の地積と同規模である場合には広大地に該当しないとされている。

耕地の造成(土地収用法における~)

土地所有者または土地に関する関係人(土地に関する担保権者を除外)は金銭の代わりに、土地そのもの(または土地に関する所有権以外の権利)を損失補償として要求することができる。これを「替地による補償」という(土地収用法第82条)。

替地による補償を要求する際、収用される土地が「耕作目的」であるときは、替地となるべき土地について、耕地の造成を行なうように要求できる。これを「耕地の造成」という(土地収用法第83条)。この耕地の造成は、権利取得裁決で裁決される。

工程表

さまざまな作業について、その実施順序、進捗度、相互の関係などを表した図表。工事やプロジェクトの工程を管理するための手法として広く使われている。

工程表にはいくつかの種類がある。例えば、作業内容ごとにその実施時期を棒グラフで示したバーチャート工程表、作業内容の進捗度を棒グラフで示したガントチャート工程表、累積出来高を示した工程管理曲線、作業内容の相互関係を示したネットワーク工程表などである。これらは、目的に応じて使い分けられる。

公的融資

政府機関が直接に行なう融資。

住宅ローンでは、住宅金融支援機構が実施する財形住宅融資、災害復興住宅融資、サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資などが公的融資である。一方、民間金融機関と連携したフラット35のような住宅ローンは、同機構が直接融資するのではないから、公的融資とは言わない。

また、日本政策投資銀行等による都市開発事業に対する融資も公的融資である。

公道

公共の用に供されている道路をいう。

これに対して、私的に所有・利用される道路を「私道」という。

道路法の道路(高速自動車国道、国道、都道府県道、市町村道)のほか、農道、林道なども公道に含まれる。公道の交通に対しては、道路交通法が適用される。

なお、建築基準法においては、私道等が「道路」とされる場合があり(位置指定道路2項道路)、このような道路も公道と呼ぶことがあるので注意が必要である。

公道に至るための他の土地の通行権

私法上の概念で、他の土地に囲まれて公道に通じない土地に関して、その所有者が公道に至るためその土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行できるという権利をいう。

なお、2004(平成16)年の民法の改正によって、改正前の「囲繞地通行権」は「公道に至るための他の土地の通行権」に改称されたが、権利の意味、内容等にはまったく変わりはない(詳しくは、「囲繞地通行権」を参照)。

高度浄水処理

水道事業において、臭気物質、トリハロメタン前駆物質、色度、アンモニア性窒素、陰イオン界面活性剤等、通常の浄水処理方法では十分に対応できない物質を処理することをいう。

通常の浄水処理は、凝集、沈でん、ろ過、消毒の過程を経るが、高度浄水処理の場合は、これに、オゾン処理、活性炭処理、生物処理の過程を単独または組み合わせて加える。また、膜ろ過技術によっても同様の処理が可能となる。高度浄水処理を経ることによって、かび臭やカルキ臭などの異臭味を除去し、トリハロメタンの発生を抑えることができ、「おいしい水道水」の供給が実現できるとされる。現在、多数の水道事業において導入されている。

ただし、良質の水道水を供給するための基本は、公共用水域の水質保全であることに変わりはない。

高度地区

高度地区は、用途地域の中で定められる地区である。
高度地区では、市街地の環境維持のために建築物の高さに最高限度が設定される。
またごく少数ではあるが、土地の利用を促進するために、建築物の高さの最低限度を定める高度地区も存在する(都市計画法第8条、第9条)。

高度地区の具体的内容は市町村が決定することとされているので、詳細を知りたい場合には市区町村役所の建築確認担当部署に問い合わせる必要がある。

高度利用地区

高度利用地区は、用途地域の中で定められる地区である。
この高度利用地区では、容積率の最高限度、容積率の最低限度、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度が必ず定められる。

これにより、狭小な建物建築を排除することが可能となり、将来的に都市再開発事業を実施しやすい環境が創出されることになる(都市計画法第8条、第9条)。

公売

納税者が国税・地方税を納税しない場合に、国または地方公共団体が納税者の財産を差し押さえたうえで自ら売却し、その売却代金から税金の支払いを受けるという制度のこと。

勾配天井

天井の中央が両端より高くなったもの、つまり勾配が付いた天井のこと。船底天井や屋形天井などがある。

船底天井とは、船底を上にしたような形状に由来する呼び名で、数寄屋住宅や浴室などに使われている。勾配をより強くしたのが屋形天井。

公募と私募

有価証券を新規に発行するときの方法の区別で、50名以上の者を申込みの勧誘の相手方とするものを公募、50名未満の者を相手方とするものを私募という。

発行価額に応じて有価証券通知書や届出書が必要になるが、公募か私募かの違いによってその取扱いが異なる。私募は、機関投資家を相手に行なわれることが多い。

一般に、公募すれば広い範囲から投資家を集めることができて証券の流通性を高めることができる一方、私募であれば発行コストが低く、あらかじめ保有者を確定しやすい。

公簿売買と実測売買

土地の売買契約における取引価額の確定に用いる土地面積の違いによる区別で、土地登記簿の表示面積を用いて価額を確定する公簿売買、実測面積によって確定する場合を実測売買という。

とりあえず登記簿の表示面積で金額を定めて契約し、後ほど実測面積による金額との差額を精算する方法も、実測売買である。

公簿売買は測量が不要で簡便な方法であるが、実測面積が小さいと判明したときには紛争となりやすいため、それを回避するべく、契約において、実測面積と差異が生じても取引金額は変更できない旨を定めることが多い。
しかし、実測面積との違いが大きく、買主が取引の目的を達成できないときには、錯誤であるとして契約の無効を主張する恐れがある。

工務店

建築物の設計・施工を業務とする会社。一般に、地域密着型で事業区域が狭いこと、注文による個別設計に対応できることが特徴とされている。しかし厳密な定義はない。

工務店が建築する住宅は、主にハウスメーカーの住宅のように規格化されていない。また、工務店は、工事専門の施工会社と違って、施工だけでなく設計も自ら実施する。

鋼矢板

矢板とは土止めをするための板のこと。鋼矢板とは鋼製の矢板のことである。

高優賃

高齢者向け優良賃貸住宅」の略称。

高齢者の居住に適する構造、設備を備え、緊急時に対応したサービスを提供する住宅として都道府県知事の認定を受けた賃貸住宅をいう。

規模、バリアフリー化、緊急時サービスなどの基準を満たして認定されると、その整備に要する費用の一部について国および地方公共団体の補助を受けることができるほか、家賃の減額に要する費用の助成、税制上の優遇措置、融資に際しての優遇などがある。

高齢者向け優良賃貸住宅は、高齢者円滑入居賃貸住宅(高齢者の入居を拒まない賃貸住宅)としての登録が義務付けられている。

なお、2011年10月の「改正高齢者住まい法」の施行に伴い、サービス付き高齢者向け住宅に一本化された。

高齢者円滑入居賃貸住宅

高齢者の入居を拒まない賃貸住宅として、都道府県知事(またはその指定を受けた登録機関)に登録されている住宅をいう。

高齢者の入居に適する構造、設備となっているとは限らないが、家賃について債務保証を受けることができる。また、登録情報は一般に公開されている。

なお、2011年10月の「改正高齢者住まい法」の施行に伴い、サービス付き高齢者向け住宅に一本化された。

高齢者居住法

高齢者の居住の安定確保に関する法律」の略称。

高齢者の居住の安定の確保を図るための措置を定めた法律で、2001(平成13)年4月に公布された。

その主要な内容は、

1.高齢者の入居を拒まない民間の賃貸住宅の登録制度の創設、2.高齢者居住に適する賃貸住宅の建築や適する住宅にするための改良に対する支援措置、3.賃借人の死亡に至るまで契約が存続する賃貸借契約制度の創設

である。

1.によって登録された住宅が「高齢者円滑入居賃貸住宅」、2.の支援の対象となる住宅が「高齢者向け優良賃貸住宅」、3.による住宅の賃貸借が「終身建物賃貸借」である。

高齢者専用賃貸住宅

高齢者の入居を拒まない賃貸住宅(高齢者円滑入居賃貸住宅)として登録されたもののうち、専ら高齢者を賃借人とする賃貸住宅として登録されたものをいう。

高齢者専用賃貸住宅の登録に当たっては、介助を考慮した住宅の構造や設備であるなど、高齢者円滑入居賃貸住宅として登録するための一定の要件を備えていることに加えて、前払家賃の取扱い、各住戸における台所、水洗便所、浴室等の有無、日常生活に係るサービスの有無などを登録しなければならない。

また、高齢者専用賃貸住宅として登録された賃貸住宅のうちで、各戸の床面積が25平方メートル以上、原則として各戸に台所、水洗便所、浴室等があるなどの一定の要件を満たすもの(適合高齢者専用賃貸住宅)については、介護保険法に規定する特定施設入居者生活介護の対象となることもある他、老人福祉法に規定する有料老人ホームの届出が不要とされている。

なお、2011年10月の「改正高齢者住まい法」の施行に伴い、サービス付き高齢者向け住宅に一本化された。

高齢者の居住の安定確保に関する法律

高齢者の居住の安定の確保を図るための措置を定めた法律で、2001(平成13)年4月に公布された。

その主要な内容は、

1.高齢者の入居を拒まない民間の賃貸住宅の登録制度の創設、2.高齢者居住に適する賃貸住宅の建築や適する住宅にするための改良に対する支援措置、3.賃借人の死亡に至るまで契約が存続する賃貸借契約制度の創設

である。

1.によって登録された住宅が「高齢者円滑入居賃貸住宅」、2.の支援の対象となる住宅が「高齢者向け優良賃貸住宅」、3.による住宅の賃貸借が「終身建物賃貸借」である。

高齢者向け優良賃貸住宅

高齢者の居住に適する構造、設備を備え、緊急時に対応したサービスを提供する住宅として都道府県知事の認定を受けた賃貸住宅をいう。

規模、バリアフリー化、緊急時サービスなどの基準を満たして認定されると、その整備に要する費用の一部について国および地方公共団体の補助を受けることができる他、家賃の減額に要する費用の助成、税制上の優遇措置、融資に際しての優遇などがある。

高齢者向け優良賃貸住宅は、高齢者円滑入居賃貸住宅(高齢者の入居を拒まない賃貸住宅)としての登録が義務付けられている。

なお、2011年10月の「改正高齢者住まい法」の施行に伴い、サービス付き高齢者向け住宅に一本化された。

国税徴収法

国税の徴収に関する手続きの執行について必要な事項を定めた法律。1959年に公布・施行された(旧国税徴収法は1897(明治30)年制定)。

例えば、国税と抵当権等との優劣関係の調整、差押の要件・手続き・効力、差押財産の換価手続きなどを規定している。

国税優先の原則

国税は原則として、他の債権に優先して、納税者の財産から徴収される。これを国税優先の原則という(国税徴収法第8条)。

しかし、この原則の例外として次の3つなどは、国税よりも優先して、債権者が納税者の財産から給付を受けることができる。

1.法定納期限よりも以前に設定されていた抵当権
2.納税者が譲受した財産に関して、譲受した際にすでに設定されていた抵当権等
3.不動産保存の先取特権、不動産工事の先取特権

国定公園

国立公園に準ずる優れた自然の風景地であって、環境大臣が区域を定めて指定したものをいう。その管理は、原則として都道府県知事が担う。
国定公園の区域内で次の行為をしようとする場合には、30日以上前に都道府県知事に届けなければならない。
一定規模以上の工作物の新築・改築・増築、土地の形状変更、水面の埋立等、鉱物や土石の採取、特別地域内の河川・湖沼の水位・水量の増減、広告物の設置等、一定区域での海底の形状変更

この場合、都道府県知事は、風景を保護するために必要な限度において、届出のあった行為を禁止・制限・必要な措置の実施を命ずることができる。

また、公園の風致を維持するため都道府県知事が国定公園区域内に指定した「特別地域」においては、次の行為について許可が必要である。

工作物の新築・改築・増築、木竹の伐採、土地の形状変更、水面の埋立等、鉱物・土石の採取、物の集積・貯蔵、河川・湖沼の水位・水量の増減、湖沼への汚水等の排出、広告物の設置等、屋根・壁面等の色彩の変更、指定地域での車馬等の乗り入れ、高山植物等の採取・損傷、植物の植栽・播種、動物の捕獲・殺傷、動物の卵の採取・損傷、動物の放出(家畜の放牧を除く)

そのほか、特別地域内に指定された「特別保護地区」、国定公園区域内に指定された「海域公園地区」においては、それぞれの景観を保全するために一定行為について都道府県知事の許可が必要である。また、特別地域又は海域公園地区内に指定された「利用調整地区」においては、風致又は景観の維持とその適正な利用を図るため、原則として地区内への立入りが禁止されている。

国土形成計画

国土の利用・整備・保全を推進するための総合的かつ基本的な計画で、国土形成計画法に基づき策定される。計画は、全国計画と広域地方計画で構成される。

全国計画は、2008(平成20)年7月に閣議決定され、新しい国土像として、多様な広域ブロックが自立的に発展する国土を構築するとともに、美しく、暮らしやすい国土の形成を図ることとし、その実現のための戦略的目標、各分野別施策の基本的方向等を定めている。
戦略的目標は、

1.東アジアとの円滑な交流・連携、2.持続可能な地域の形成、3.災害に強いしなやかな国土の形成、4.美しい国土の管理と継承、5.「新たな公」を基軸とする地域づくり

の5つが掲げられている。

また、広域地方計画は、首都圏、近畿圏、中部圏、東北圏、北陸圏、中国圏、四国圏、九州圏について策定することとされ、2009(平成21)年8月に決定された。
広域地方計画の策定方針は、

1.広域ブロックごとに特色のある戦略を描くこと、2.各ブロックが交流・連携して活力を発揮すること、3.各地域が相互に補い合って共生すること、4.文化・伝統や個性ある景観など美しい国土を再構築すること

とされている。

国土形成計画は、従前策定された全国総合開発計画に代わるものであるが、社会資本投資との連携や計画の拘束力は弱い。

国土交通省

国の行政事務を分担管理する機関のひとつ。国土交通省設置法に基づいて設置され、その長は国土交通大臣である。英語表記は、Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourismである。

「国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全、そのための社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、観光立国の実現に向けた施策の推進、気象業務の健全な発達並びに海上の安全及び治安の確保を図ること」(国土交通省設置法)を任務とし、その達成のための事務を司っている。

所掌事務は多岐にわたるが、たとえば、国土、都市、住宅、交通に関する政策、河川、道路、港湾の整備、不動産業、建設業、運送業に関する事務の大部分は、国土交通省が担っている。また、国土地理院、気象庁、海上保安庁、観光庁は、国土交通省の組織である。

国土交通省は、平成の中央省庁再編の一環として、国土庁、建設省、運輸省、北海道開発庁を統合し、2001年1月6日に発足した。

国土調査

国土調査法に基づいて実施する国土の実態の科学的、総合的な調査。国の機関、地方公共団体、土地改良区などが実施している。

国土調査は、次の4つで構成される。

(1)基本調査:(2)〜(4)の調査の基礎とするための土地・水面の測量及び調査の基準を設定するための調査

(2)土地分類調査:土地利用の可能性を分類するための、土地の利用現況、土壌の物理化学的性質・侵食の状況、災害の履歴などの自然的要素、土地の生産力に関する調査

(3)水調査:治水及び利水に資するための、気象、陸水の流量、水質及び流砂状況並びに取水量、用水量、排水量及び水利慣行等に関する調査

(4)地籍調査:筆ごとの土地についての所有者、地番地目の調査及び境界地積に関する測量

 

国土調査の成果は、一般の閲覧に供されている。また、地籍調査の成果に基づき登記事項の修正、分筆合筆の登記がなされる。

国土調査法

国土の実態を明らかにするための調査の実施に関する法律。土地や水面の状態を科学的、総合的に把握することを目的として、1951(昭和26)年に制定された。

国土調査法で定める「国土調査」は、次の4種類で構成される。
(1)基本調査:調査の基礎となる基準点の設定や土地・水面の測量
(2)土地分類調査:土地の利用現況、土壌等の自然的要素・生産力に関する調査
(3)水調査:気象、水流量、水質、水利に関する調査
(4)地籍調査:筆ごとの土地についての、所有者、地番地目境界地積に関する測量

国土調査は、国、地方公共団体、土地改良区などが実施し、その成果は、修正等の申出を受け付けたのち、国土交通大臣等の認証を得ることができる。認証を得た調査の成果は一般の閲覧に供することとされ、また、認証された成果に基づいて、登記事項の修正、分筆・合筆の登記がなされる。

国土法

国土利用計画法」の略称。

計画的な国土の利用を図るための法律で、国土形成計画法とともに総合的な国土の利用や保全を推進するための枠組みを定めている。1974(昭和49)年に制定された。

国土利用計画法が定める規定は、大きく、土地利用計画の策定と土地取引の規制に分かれる。土地利用計画の中心となるのは、都道府県ごとに作成される土地利用基本計画であり、全国を、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域の5つの類型に区分している。

土地取引の規制の仕組みとしては、

1.一定の土地取引について都道府県知事に届けなければならないとし、土地の利用目的等に関して勧告できる制度(土地に関する権利の移転等の届出)

2.地価の急激な上昇の恐れがあるときには、規制区域を指定して土地に関する権利の移転等について許可に係らしめる制度(規制区域)

3.地価の上昇の恐れがあるときには、注視区域又は監視区域を指定して土地売買等の契約に関する勧告をできる制度(注視区域・監視区域)

4.取引された土地が遊休土地である旨通知して、その利用処分計画の届出を課し、助言などをする制度(遊休土地に関する措置)

がある。

なお、土地に関する権利の移転等の届出1.を要するのは、原則として、取引面積が、市街化区域にあっては2,000平方メートル、都市計画区域(市街化区域を除く)にあっては5,000平方メートル、それ以外の区域にあっては1万平方メートル以上の取引である。

国土法の届出

土地の取引に関する届出で、国土利用計画法に基づき義務付けられているものをいう。

 

届け出なければならない取引は、次の3つの場合である。

 

1.一定面積以上の土地取引を行った場合(事後届出)

届出を要する面積は、市街化区域2,000平方メートル以上、その他の都市計画区域5,000平方メートル以上、都市計画区域外10,000平方メートル以上

2.注視区域において一定面積以上の取引を行おうとする場合(事前届出)

届出を要する面積は、1.と同じ面積。

3.監視区域において一定面積以上の取引を行おうとする場合(事前取引)

届出を要する面積は、1.未満の面積で都道府県知事が定める面積

 

なお、一般的に「国土法の届出」というときには、区域を限定せずに義務付けられている1.の事後届出を指すことが多い。

国土利用計画

国土利用に関する計画で、全国計画・都道府県計画・市町村計画の3つから構成され、国土利用計画法に従って策定される。

例えば全国計画では、国土利用の基本方針、利用目的(農地、森林、住宅地等)ごとの規模の目標、目標達成のための措置などが記載されている。

国土利用計画法

計画的な国土の利用を図るための法律で、国土形成計画法とともに総合的な国土の利用や保全を推進するための枠組みを定めている。1974(昭和49)年に制定された。

国土利用計画法が定める規定は、大きく土地利用計画の策定と土地取引の規制に分かれる。土地利用計画の中心となるのは、都道府県ごとに作成される土地利用基本計画であり、全国を、都市地域、農業地域、森林地域、自然公園地域、自然保全地域の5つの類型に区分している。

土地取引の規制の仕組みとしては、

1.一定の土地取引について都道府県知事に届けなければならないとし、土地の利用目的等に関して勧告できる制度(土地に関する権利の移転等の届出)

2.地価の急激な上昇の恐れがあるときには、規制区域を指定して土地に関する権利の移転等について許可に係らしめる制度(規制区域)

3.地価の上昇の恐れがあるときには、注視区域又は監視区域を指定して土地売買等の契約に関する勧告をできる制度(注視区域・監視区域)

4.取引された土地が遊休土地である旨通知して、その利用処分計画の届出を課し、助言などをする制度(遊休土地に関する措置)

がある。

なお、土地に関する権利の移転等の届出1.を要するのは、原則として、取引面積が、市街化区域にあっては2,000平方メートル、都市計画区域(市街化区域を除く)にあっては5,000平方メートル、それ以外の区域にあっては1万平方メートル以上の取引である。

国宝

重要文化財のうち、世界文化の見地から見て価値が高く、類ない国民の宝たるものとして文部科学大臣が指定したものをいう。

重要文化財の修理等は、その所有者や管理団体が行なうのが原則であるが、国宝については、一定の場合には文化庁長官が自ら実施することができるとされる。

国宝は建造物と美術工芸品(絵画・彫刻・工芸品・書跡・典籍・古文書・考古資料・歴史資料)に区分できるが、2008年現在で指定されている国宝は、建造物214件、美術工芸品862件である。

国立公園

日本の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地(海域の景観地を含む)であつて、環境大臣が区域を定めて指定したものをいう。その管理は、原則として環境大臣が担う。

国立公園の区域内で次の行為をしようとする場合には、30日以上前に環境大臣に届けなければならない。
一定規模以上の工作物の新築・改築・増築、土地の形状変更、水面の埋立等、鉱物や土石の採取、特別地域内の河川・湖沼の水位・水量の増減、広告物の設置等、一定区域での海底の形状変更

この場合、環境大臣は、風景を保護するために必要な限度において、届出のあった行為を禁止・制限・必要な措置の実施を命ずることができる。
また、環境大臣が公園の風致を維持するため国立公園区域内に指定した「特別地域」においては、次の行為について許可が必要である。

工作物の新築・改築・増築、木竹の伐採、土地の形状変更、水面の埋立等、鉱物・土石の採取、物の集積・貯蔵、河川・湖沼の水位・水量の増減、湖沼への汚水等の排出、広告物の設置等、屋根・壁面等の色彩の変更、指定地域での車馬等の乗り入れ、高山植物等の採取・損傷、植物の植栽・播種、動物の捕獲・殺傷、動物の卵の採取・損傷、動物の放出(家畜の放牧を除く)

そのほか、特別地域内に指定された「特別保護地区」、国立公園区域内に指定された「海域公園地区」においては、それぞれの景観を保全するために一定行為について環境大臣の許可が必要である。また、特別地域又は海域公園地区内に指定された「利用調整地区」においては、風致又は景観の維持とその適正な利用を図るため、原則として地区内への立入りが禁止されている。

戸境壁

マンションやアパートなどの集合住宅で、各住戸を区切る壁のこと。界壁ともいう。

防火や遮音などの性能が求められる。

腰壁

窓の下枠から床までのあいだを塞ぐ部分壁。「腰」には、中ほどから下の部分という意味がある。 

個人情報保護

個人のプライバシー保護のために、個人情報の収集・伝達を制限することをいう。

その背景には、ネットワーク技術によって情報の複製や伝播が容易になり、プライバシーの侵害などが懸念されているという事情がある。

個人情報を保護するための原則は、

1.適法かつ公正な手段による個人データの収集、2.利用目的に必要な範囲内での正確、完全、最新なデータの管理、3.利用目的の明確化、4.明確化された目的以外の使用を制限、5.データの紛失・破壊・修正・開示等のリスクからの保護、6.データの作成・運用方針の一般への公開、7.自己に関する個人データの確認、異議申立ての機会の確保、8.データ管理者の責任負担

であるとされる。

個人情報保護法は、これらの原則を実現するための仕組みとして制定された法律であるが、同法にもとづいて政府が定めたガイドラインが公表されている。不動産業は、個人情報を取り扱う機会が多い産業であるため、情報の保護について特に注意が必要である。

個人情報保護法

個人情報の適正な取り扱いに関する規定を定めた法律。正式な名称は「個人情報の保護に関する法律」で、2003(平成15)年5月に公布された。

この法律は、高度情報社会の進展に伴って個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑みて、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護するために制定された。そこでは、個人情報は個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきものとしている。

個人情報保護法の規定のなかで重要なのは、個人情報のデータベース等(たとえば顧客リスト)を事業の用に供している者(個人情報取扱事業者)に対する個人情報の取り扱いに関する規制である。

個人情報取扱事業者には、個人情報の取り扱いについて、
ⅰ)利用目的の特定
ⅱ)利用目的の範囲を超えた利用の禁止
ⅲ)不正手段による取得の禁止
ⅳ)取得に際しての利用目的の通知
ⅴ)情報の正確性確保
ⅵ)情報の安全管理措置
の義務が課されている。さらに、
ⅶ)第三者への提供が制限され、
ⅷ)本人による情報開示請求、訂正請求、利用停止請求を規定して原則としてその請求に従わなければならない
とされている。

また、同法は、個人情報取扱事業者の個人情報の取扱いについては、個人情報保護委員会(2016(平成28)年度までは主務大臣)が監督することとし、その監督に従わない場合には罰則に処すことができること、政府は個人情報の保護に関する基本方針を定めなければならないことなども規定している。

誇大広告等の禁止

宅地建物の取引に関する広告についての規制の一つで、著しく事実と違ったり、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示の禁止をいう。

誇大に広告してはならないとされる表示は、物件の所在、規模、形質、利用の制限等、環境、交通などの利便、代金の額や支払方法、金銭の貸借の斡旋などである。
 
なお、不動産の表示に関する公正競争規約では、実際に確認できるデータに基づかないで、「完全」「当社だけ」「最高級」「特選」「格安」といった用語を使用することを禁じている。

国家戦略特区

地域を指定し、規制の特例措置を定め、その措置を活用して事業を実施する仕組み。「国家戦略特別区域法」に基づく制度である。

国家戦略特区制度を適用する区域(国家戦略特別区域)は政令で指定される。特例措置は、自治体や事業者が提案し、審議を経て決定される(特例措置の創設)。そして、その特例措置を活用する事業者を公募し、事業実施の計画(区域計画)の認定を経て、事業が実施される。

国家戦略特区における特例措置には、例えば、都心居住促進のための容積率・用途等土地利用規制の見直し等、エリアマネジメントの民間開放(道路の占用基準の緩和)、建築物用地下水の採取規制地域における冷暖房利用の特例、滞在施設の旅館業法の適用除外、「地域限定保育士」の創設、企業による農地取得の特例などがある。

なお、規制緩和のための制度には、国家戦略特区のほか、構造改革特区および総合特区がある。 

固定金利型

住宅ローンなどにおいて、返済終了時まで返済利率が変わらない方式をいう。これに対して、市況等に応じて返済利率が変化する方式を「変動金利型」という。

固定金利型の借入れにおいては、借入金完済までの資金計画が確定し、金利が高くなるリスクを負担する必要がない一方、変動金利型よりも利率が高めである。また、市場金利が大幅に低下した場合には、借り換えなどによって利息負担を軽減できるが、その実施について一定の制約が課されている場合が多い。

固定金利選択型住宅ローン

住宅ローンの種類の一つで、期間を定めて固定金利か変動金利かを選択する方法による住宅金融をいう。

当初一定期間を固定金利とし、固定期間終了後に、改めて見直した固定金利か変動金利かを選ぶタイプが多いが、最近はローン期間全体のなかでその一部分を固定か変動かの選択の対象にするタイプが現れるなど、その方法が多様化している。

将来の金利水準の変化など対する対応の幅が広がるが、負担すべき総額は確定しない。また、完全な固定金利や変動金利によるローンの場合と金利の決め方が異なることもあるので注意が必要である。

固定資産

長期にわたって保有、利用される資産。

固定資産は、(1)土地、建物、機械器具のような「有形固定資産」、(2)特許権、ソフトウェアのような「無形固定資産」、(3)投資有価証券、出資金のような「投資その他の資産」に三分類される。

使用によって価値が減耗する固定資産については、一定の期間にわたって費用化する(減価償却)こととされている。ただし、土地は減価償却の対象とはならない。

なお、固定資産に対して、現金、1年以内に現金化できる資産、棚卸資産などを「流動資産」という。

固定資産課税台帳

固定資産税の課税対象となる土地、家屋等に関して、その所在、所有者、評価額などを登録した帳簿。市町村長が作成する。

固定資産課税台帳は、土地課税台帳、家屋課税台帳、土地補充課税台帳、家屋補充課税台帳および償却資産課税台帳で構成される。土地課税台帳・家屋課税台帳には登記簿に登記されている土地・家屋について、土地補充課税台帳・家屋補充課税台帳には登記されていない土地・家屋について、償却資産課税台帳には償却資産について、それぞれ一定の登録事項が記載される。

土地・家屋についての固定資産課税台帳に登録されている事項は、次の通りである。

1.土地・家屋の所有者の氏名・住所
2.土地・家屋の属性(土地の地番地目地積、家屋の家屋番号・構造・床面積など)
3.土地・家屋の固定資産税評価額
4.土地・家屋の固定資産税課税標準額
5.土地・家屋の固定資産税額

固定資産課税台帳を閲覧できるのは、その固定資産に課税される固定資産税の納税義務者、同居の家族、納税義務者からの委任を受けた代理人、借地人・借家人および訴訟関係人で、いつでも、市町村の担当部署で閲覧することができる。また、記載されている事項の証明書の交付を受けることができる。

固定資産課税台帳の縦覧制度

固定資産課税台帳(固定資産税の納税義務者や固定資産税評価額などを記載した帳簿)の記載事項を閲覧し、確認することができる制度。地方税法の規定による。

閲覧できるのは、その固定資産に課税される固定資産税の納税義務者、同居の家族、納税義務者からの委任を受けた代理人、借地人・借家人および訴訟関係人である。閲覧は、市町村の担当部署において、いつでもできる。

また、台帳に記載されている事項について証明書の交付を受けることができる。

固定資産税

毎年1月1日現在において、土地・家屋等を所有している者に対し、市町村が課税する地方税のこと。
不動産の所在地の市町村が課税の主体となるので、実際の徴収事務は市町村の税務担当部署が行なう。

固定資産税の納付方法については、年度初めに市町村から土地・家屋の所有者に対して、固定資産税の「納税通知書」が送付されてくるので、それに従って年度内に通常4回に分割して納付することとされている(ただし1年分をまとめて先に支払うことも可能である)。

固定資産税の税額は原則的に「固定資産税課税標準額の1.4%」とされている。
ただし、一定の新築住宅については固定資産税額の軽減措置が実施されている。また、住宅用地については固定資産税課税標準額そのものが6分の1または3分の1に圧縮されている。

固定資産税は毎年1月1日において、固定資産課台帳に所有者として登録されている者に課税される。
従って、年の途中で不動産の売買が行なわれて、所有者が変わった場合であっても、納税義務者は元の所有者となる。こうした場合には不動産売買契約書において、その年度分の固定資産税額の一部を新所有者が負担するという特約を設けることが多い。

固定資産税課税標準額

固定資産税を課税する対象となる金額のこと。
固定資産税の税額は、原則的に「固定資産税課税標準額の1.4%」とされている。

建物の場合、固定資産税課税標準額と固定資産税評価額は通常一致する。
しかし土地の場合には、固定資産税課税標準額と固定資産税評価額は異なる額となる。
その理由は次の通りである。

1.住宅用地に係る課税標準額の特例
住宅用地については、その土地の課税標準額を次のように圧縮する措置が取られている。
小規模住宅用地の場合:固定資産税評価額×1/6=固定資産税課税標準額
一般住宅用地の場合:固定資産税評価額×1/3=固定資産税課税標準額
(詳しくは「固定資産税の軽減措置(住宅用地)」参照)

2.土地に関する負担調整率
土地の固定資産税評価額は3年に1度評価替えが行なわれている。この評価替えにおいて、固定資産税評価額が急激に上昇すると、納税者の税負担が急に増大し、納税の困難を招く恐れがある。
そこで法律(地方税法)では、土地の固定資産税評価額が大きく上昇したときでも、土地の固定資産税課税標準額はわずかな上昇率にとどめるという措置を講じている。この上昇率を「負担調整率」という。

具体的には、次の式により今年度の土地の固定資産税課税標準額を定めている。

「前年度の固定資産税課税標準額×負担調整率=今年度の固定資産税課税標準額」

上記1.および2.の理由により、土地の固定資産課税標準額は、土地の固定資産税評価額よりも非常に低い額となっている。
ごく普通の住宅用地(200平方メートル以下のもの)では、固定資産税課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1から10分の1程度である。

固定資産の価格に係る不服審査

固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合に、審査の申出をすることのできる制度。地方税法の規定による。

不服審査を申し出ることができるのは、納税通知書の交付を受けた日等から3ヵ月以内で、申し出先は、固定資産評価審査委員会である。固定資産評価審査委員会は、審査の申し出があった固定資産の価格について、事実審査を行ない、申し出を受けた日から30日以内に決定する。

決定によって固定資産課税台帳に登録された価格等を修正する必要があるときは、市町村長は、通知を受けた日から10日以内にその価格等を修正して登録し、その旨を当該納税者に通知する。

なお、固定資産評価審査委員会による不服審査の手続きについては、行政不服審査法の規定が準用され、また、決定に不服があるときには、その取り消しの訴えを提起することができる。

固定資産税の軽減措置(新築住宅)

新築住宅に対する固定資産税の課税額を、新築後一定期間、減額する特例。


特例が適用されるのは次の2つの場合で、それぞれ固定資産税額が2分の1に減額される。


1)一般の住宅については、新築後3年間、床面積120平方メートル相当部分について

2)中高層耐火住宅については、新築後5年間、床面積120平方メートル相当部分について





対象となる住宅は、床面積が50平方メートル(戸建て以外の賃貸住宅は40平方メートル)以上280平方メートル以下のものに限られる。

ただし、これらの特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。



また、認定長期優良住宅については、軽減する期間が、一般住宅については5年間に、中高層耐火住宅については7年間に延長される。この適用期限も同様である。

固定資産税の軽減措置(住宅用地)

住宅用地に対する固定資産税課税標準を減額する特例をいう。

住宅用地であれば課税標準を3分の1に減額するほか、特に200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)に対する課税標準は6分の1に減額することとされている。

つまり、面積A平方メートル(A>200)の住宅用地に対する固定資産税額は、
固定資産税評価額/A ×(200×1/6+(A-200)×1/3)×税率(原則1.4%)
となる。

なお、この特例の適用については期限が定められていない。

固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、固定資産課税台帳に記載された土地・家屋の評価額のことである。

この固定資産税評価額は、毎年度の初めに市町村から送付されてくる固定資産税の「納税通知書」に添付されている「課税資産明細」に記載されている。

また、毎年の一定期間内において所有者等は、固定資産課税台帳を市町村の窓口で縦覧して、固定資産税評価額を確認することができる(詳しくは固定資産課税台帳の縦覧制度へ)。

なお、土地・家屋の固定資産税評価額については3年に1度「評価替え」が実施されており、この評価替えの年度を「基準年度」という。
この固定資産税評価額は、基準年度の評価額が次年度および次々年度にそのまま引き継がれるのが原則である。

ただし、次の1.または2.の事情等があるときは、基準年度以外の年度であっても、土地の固定資産税評価額を変更するものとされている。

1.分筆合筆地目の変更により土地の区画・形質が変化したこと
2.著しい地価の下落があったこと

固定資産評価審査委員会

固定資産の価格に係る不服審査を行ない、決定するために、市町村に設置される組織。委員の定数は3人以上で市町村の条例で定め、委員は、市町村の議会の同意を得て、市町村長が選任する。任期は3年である。

固定資産評価審査委員会の審査手続きについては、行政不服審査法の規定が準用される。

固定電話

設置場所が固定されていて移動できない電話。これに対して移動できる電話などは「移動体通信」という。

電話機が電話ケーブルによって電話局に接続され、電話番号(市外局番・市内局番)が設置場所に応じて決まる。また、設置のために電話工事が必要である。

無線を利用した移動体通信が普及するまでは、ほぼすべての電話が固定電話であった。

コテージ

田舎や郊外に建てられた別荘風の小住宅。通常、一階建て・戸建ての住宅で、家具、トイレ、家電品などが設置され、短期的な賃貸に供される場合も多い。英語でcottage。

コテージに対して、家具やトイレを備えないキャンプ用の建物を「バンガロー」という。

古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法

略称は「古都保存法」。京都・奈良・鎌倉等の古都の伝統的環境を保全することを目的として、1966年に制定された法律。

この法律では、古都の歴史的風土を保存するために「歴史的風土保存区域」や「歴史的風土特別保存地区」を定め、建築行為等を届出制や許可制のもとに統制している。

なお、「古都」とは京都市、奈良市、鎌倉市、天理市・橿原市・桜井市・斑鳩町・明日香村、逗子市、大津市を指している(同法第2条)。

古都保存法

正式名称は「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」。

古都保存法では、古都において「歴史的風土保存区域」を設定し、同区域内での行為制限などその伝統と文化を保存するための措置を定めている。
ここでいう古都とは、京都市、奈良市、鎌倉市、天理市、橿原市、桜井市、斑鳩町、明日香村、逗子市、大津市である。

コネクティッドホーム

家電製品、空調設備、照明、防犯設備などがIoT(Internet of Things、モノに関する情報をネットワーク化し制御可能にする技術)によって統合的に接続され、モバイル端末等でそれらを制御できる仕組みを備えた住宅。英語のconnected home。

センサー、情報ネットワーク、情報解析、情報の統合処理、自動制御などの機能を組み合わせたシステムによって管理・運営されるが、その具体化は始まったばかりである。

個別利用区(市街地再開発事業における~)

市街地再開発事業において定める既存建築物を存置または移転することができる区域。都市再開発法に基づく制度である。

市街地再開発事業においては、事業区域内の建物等はすべて除去するのが原則であるが、個別利用区内の既存建物は存置することができ、あるいは他の土地にある既存建物を個別利用区内に移転することができる。

個別利用区は、第一種市街地再開発事業の施行者が事業計画において定め、一定の建築物に係る地権者の申出に応じて、その権利が、再開発ビルに関する権利ではなく、個別利用区内の宅地に関する権利に変換される(権利変換の特例)。また、区域内の土地については、申出によって権利変換の対象となる土地以外は、事業施行者に帰属するよう計画で定めることとされている。

コミュニティデザイン

人々のつながり方やつながるしくみを設計すること。

コミュニティデザインの対象は、施設や空間でなく、社会的な活動のかたちである。たとえば、ワークショップによって人々の交流を促す、イベントによって人のつながりを促進するなど、人が共同で活動する場を形成することや、そのためのしくみを整備することは、典型的なコミュニティデザインである。

まちづくりなどにおいても、ハードな施設・空間の形成だけでなく、社会的な関係の形成を促すことが課題となっているが、コミュニティデザインは、その課題に取り組む手法として採用されつつある。

一方で、人のつながりは極めて多元的で、自律的に自生するから、システムとして捉えデザインすることには限界があるし、それに対して外部から関与することの是非も問われている。

コミュニティビジネス

地域やコミュニティのニーズ・課題に応えて、市民が地域の人材、ノウハウ、資金などを使ってビジネスの手法で取り組む活動をいう。

その活動対象は、高齢者の介護・福祉、子育て支援、環境保全、まちづくりなど、多様である。

コミュニティビジネスの特徴は、

1.活動主体が企業だけでなく、市民団体、NPO、ボランティア組織など幅広いこと
2.地域に密着して活動が展開されること
3.活動がビジネスとして管理・運営されていること
4.地域における起業や雇用を通じて、地域活性化に寄与する可能性があること
5.地方自治体との連携によって、行政サービスを補完・充実する役割を果たす場合があること

などである。

コミュニティビジネスは、地域に根ざしたビジネスとして注目されているが、その背景として、脆弱化したコミュニティ機能を回復する必要があること、市民の社会活動への参加意欲が高まっていること、身近できめ細かい公共サービスの提供が求められていることなどの事情があると考えられている。

古民家

建築後、長い年月を経過した住宅。地域の歴史や風土を反映しやすく、単に「民家」と呼ばれることが多い。

その価値に着目して、移築や再利用されることもある。

コモンズ

共同で所有し管理する土地。英語のCommons。日本語の「入会地」とほぼ同義で、「共有地」と言われることもある。転じて、コミュニティに属する共通の場所をさすこともある。 

特定の人や団体が所有することなく、誰でもが自由に利用でき、占有が許されない空間である。まちづくりなどにおいて、一定の場所をコモンズとして確保することによって、その利用を通じて人のつながりが生きるコミュニティを形成することができるとの考え方がある。

小屋裏

小屋組の内部のこと。屋根と天井との間にできる空間である。
屋根裏部屋などとして利用される場合もある。

小屋裏換気口

小屋裏にたまる湿気や熱気を排出するために、軒裏などに設けられる換気口のこと。

小屋裏収納(屋根裏収納)

屋根と最上階の天井とのあいだに生まれる空間(小屋裏・屋根裏)を収納場所として利用すること、またはその収納空間をいう。

比較的広いスペースを確保できるが、出入りのためのハシゴ等を設置しなければならない。

小屋組

木造または鉄骨造の建築物の屋根において、屋根の荷重をささえる骨組のこと。

和小屋洋小屋の2種類に分かれる。

固有振動数(建築物における~)

物体などが自由な状態で振動するときに、その物理的な性質によって決まる固有の振動数。固有振動数による振動は、一旦始まると、外力を加えなくても継続する。また、物体にその固有振動数で外力を加えると、振幅(揺れの大きさ)が増大する(共振)。

固有振動数は、物体の質量(重さ)が大きいほど小さく、剛性(硬さ)が高いほど大きい。

建築物にも固有振動数がある。地震によってその固有振動数の振動が加わると、建築物が共振し、大きな揺れが生じる。低層で剛性が高い建築物は、固有振動数が大きいため、短い周期の振動が多い直下型の地震で大きな被害を受けやすい。一方、高層で剛性が低い建築物は、固有振動数が小さいため、長い周期の地震動(減衰しにくく長距離まで届く、大規模な地震に多い)で被害を受けやすい。

建築物の免震構造は、振動の減衰を大きくするとともに、固有振動数を地震動の一般的な振動数より小さくすることによって、地震による揺れを小さくし、共振を防ぐ仕組みである。

コリドー

建物に付属して造られた長い廊下、回廊など。建物の間をつなぎ、あるいは建物や中庭の周りを回るように設置される通路である。英語のcorridorで、「コリドール」ということもある。

なお、マンションの共用通路をコリドーと称する例もあるが、その多くは本来の意味から離れた使い方である。

コルクタイル

コルク砕粒や鋸屑に接着剤を混入し圧縮したコルク板を、一定寸法に切断したもの。薄手のものが多く、床・壁において防振・断熱の効果がある。

コレクティブ住宅

コレクティブハウスのこと。

都市における集合住宅の一つの型式として、個人生活のプライベートな領域の他に共用生活スペースを設けた協同居住型集合住宅のこと。もともとは北欧で生まれた居住スタイルといわれている。複数の家族が共同の台所等を使い、家事・育児を分担し、助け合うスタイルがつくられる。これにより、高齢者・単身者等のさまざまな世代間で豊かなコミュニティが生まれるとされている。

コレクティブハウス

都市における集合住宅の一つの型式として、個人生活のプライベートな領域のほかに共用生活スペースを設けた協同居住型集合住宅のこと。

もともとは北欧で生まれた居住スタイルといわれている。複数の家族が共同の台所等を使い、家事・育児を分担し、助け合うスタイルがつくられる。これにより、高齢者・単身者等のさまざまな世代間で豊かなコミュニティが生まれるとされている。

コロニアル

セメントと繊維を主な素材にして成形した板状の屋根材。「化粧スレート」「カラーベスト」とも言われる。「コロニアル」はもともとは商品名であって、英語で「植民地風」を意味するcolonialではない。

コロニアルの本体は防水性に欠けるが、表面を塗装して防水性や耐久性を確保している。屋根材のなかでは、本瓦やガルバリウム鋼板に比べて安価で、施工が容易であるが、割れやすく、防水性や耐久性に劣るため、定期的な補修が必要とされている。

コワーキングオフィス

独立して働く人々が共同利用しながら働く事務所。そのような場所を「コワーキングスペース」ということもある。

「コワーキング(英語でco-working)」とは、独立して仕事しながらも、場を共有することによってコミュニケーションを深めることのできる働き方をいう。コワーキングに参加する人は、孤立した環境で働くことができる人が多いとされ、コワーキングによってインフォーマルなコミュニティが形成されることもある。

コワーキングスペース

属性の異なる人々が共同で利用し、相互に交流することのできる仕事場。英語のcoworking space。業務のための場所を共有するだけでなく、利用者間の交流が生まれるところに特徴がある。また、交流を促すための行事などが実施される場合もある。

コンクリート

セメントに、水、砂利、砂を加えて混ぜ合わせることにより、化学反応(水和反応)を起こし、固体化させたもの。

圧縮に対する強度が非常に大きく、主に建築物の荷重を支える構造材として多用されている。

コンクリート技士

コンクリートの製造、施工、配合設計など、コンクリート技術に関する業務を実施する能力があることを証する資格。国家資格ではない。
(公社)日本コンクリート工学会が実施する試験に合格した者が称する。

なお、コンクリート技士の能力に加えコンクリート技術に関する指導などを実施する能力もあることを証する資格として、「コンクリート主任技士」がある。

コンクリート技士またはコンクリート主任技士であることは、「コンクリート診断士」の資格試験受験のための要件とされている。

コンクリート診断士

コンクリート構造物の診断・維持管理に関して知識、技術を有することを証する資格。国家資格ではない。

(公社)日本コンクリート工学会が実施する試験に合格した者が称する。

混構造建築物

異なる構造を併用している建物。木造鉄筋コンクリート造、組積造などの併用がある。併用の方法に応じて構造が多様で、標準化が難しい。

混構造建築物で一定規模以上のものは、建築基準法上、構造計算適合判定を必要とする。

混合水栓

給水栓の一つで、湯と水とを一つの吐水口から出すもの。用途別に浴室用、キッチン用、洗面用があり、湯と水それぞれのハンドルのあるツーハンドル、一つのレバーで操作できるシングルレバーなどがある。

コンシェルジュ

施設において顧客の要望などに応える職務。フランス語のconcierge。フランス語での原義は門番であるが、たとえばホテルで宿泊客のさまざまな要望に対応する担当者を指す言葉として使われるようになった。

マンションで居住者に対して各種サービスを提供する担当者をコンシェルジュと称する場合がある。この場合、コンシェルジュは、マンションの管理に当たるのではなく、対人サービスに携わることになる。

コンセント

電気コードを配電線に接続するための受け口。和製英語である。英語では、outlet socket(アウトレットソケット)またはreceptacle(レセプタクル)という。また、コンセントは、電気コードに限らず、電話ケーブル、TVケーブルなどのコード類を接続するための受け口を指す言葉としても使われている。

コンセントには、壁に埋め込まれた埋込型と外に露出している露出型がある。また、異なる種類のコード類を一箇所で接続できる多機能コンセントもある。

なお、コンセントに差し込むための器具がプラグ(英語のplug)である。

コンドミニアム

共同で管理する集合住宅。英語のcondominium。日本においては主に「分譲マンション」を意味する。

コンバージョン

建物の用途を変更すること。

例えば、空きオフィスを集合住宅に変更する、社員寮を有料老人ホームに変更する、というような変更を指す。構造、設備、防災法規など、法的、技術的にクリアしなければならない点も多い。

コンパクトシティ

都市の中心部にさまざまな都市機能を集約し、都市を稠密(ちゅうみつ)な構造とする政策・考え方をいう。

集約型都市構造化」といわれることもある。

その実現のための手法としては、

1.都市郊外での開発を抑制する
2.都市の中心部に居住空間を確保する(都市居住の推進)
3.中心部に都市サービス機能を集積する(住みやすさと賑わいの再生)
4.公共交通や歩道・自転車道を充実する(自動車交通の抑制)

などの政策の組み合わせが有効であるとされる。

コンパクトシティが提案される背景には、人口の高齢化や減少、都市環境や都市アメニティへの関心の高まり、中心市街地の衰退、環境負荷削減の要請などがある。また、コンパクトシティは、持続可能な都市を目指す上での有力な手法であるとも考えられている。

コンパネ

コンクリートの型枠として使われる合板。「コンクリートパネル」の略称で、和製英語である。

耐水性があるため、型枠だけでなく、屋外で使用する合板として広く利用されている。ただし、表面にざらつきがあるほか、歪みがあることも多い。

なお、英語のconcrete panelは、コンクリートを板状に成形した材料を指す言葉である。

コンピュータ庁

不動産登記事務をコンピュータで処理している登記所を「コンピュータ庁」という。

コンピュータ庁では、従来からのバインダーに紙を綴じ込んだ建物登記簿土地登記簿に代わって、コンピュータの磁気ディスクによって電子的に登記簿を作成している。

コンポスター

生ゴミから堆肥をつくる装置。英語のcomposter。

微生物が生ゴミなどの有機物を分解・発酵する働きによって作動する。生ゴミを減量し、資源として再利用する方法として広く使われている。

コンポスターには、微生物の呼吸代謝機能を利用するもの(好気性微生物の利用)と、微生物の発酵代謝機能を利用するもの(嫌気性微生物の利用)とがある。前者は、生ゴミが速く分解され、臭いの発生も少ないが、微生物の働きを活性化するために空気の供給や保温が必要である。後者は、装置を稼働するための操作はほとんど不要であるが、処理に時間を要し、生ゴミの腐敗による悪臭が発生する。

なお、コンポスターには、肉類、油性食品など微生物が分解しにくいものを入れてはならない。

コンポスト

堆肥。有機物を微生物の働きで分解・発酵させてつくる。英語のcompost。また、「コンポスト」は、生ゴミから堆肥をつくることをさす言葉としても使われる。

堆肥をつくるには、有機物が十分に分解・発酵するよう微生物を働かせるとともに、肥料として安全に利用することのできる品質を確保する必要がある。そのため、生成の過程で、含水率、pH、温度、酸素量をコントロールする必要がある。

なお、コンポストを作るための装置をコンポスターという。

コンロ

調理のための加熱装置。漢字表記は「焜炉」。

コンロの熱源としては、ガス、電気、炭などが使われ、台所に据え付けるタイプのほか、七輪のような運搬できるものもある。

なお、「炉」には、反応炉(化学変化を起こさせるもの)、熱処理炉(物理的変化を起こさせるもの)、焼却炉、融解炉(「るつぼ」等)など目的に応じて多くの種類がある。その中でもコンロは一般的に熱処理炉として使われている。

コーデュロイ

表面にうねのある柔らかい織物。英語のcorduroyで、「コール天」も同じ意味である。綿糸を使い、表面に下地の横糸をループ状に出して織ったあと(横パイル織)、そのループを切ってケバ出しがなされている。

保温性が高く、衣服のほか、ソファやクッションの表面素材としても使われている。

コートハウス

中庭(コートヤード)のある住宅。街路などの公共空間に対して閉鎖性が強い一方、中庭に対しては開けていることが特徴である。


コートハウスの中庭は、通風、採光などの機能を担うほか、私的なオープンスペースとして利用されることが多い。

コーナーガラス

建物の出隅部分に桟なしではめ込まれた、L型のガラスのこと。

コーナーには構造体が配置されることが多いが、これらをずらすことにより生まれるスペースに配置されたもの。採光を確保しやすく、開放的で、パノラマ景観を楽しむことができる。

コーポ

共同住宅に付けられる名称のひとつで、英語のcooperative house(共同住宅)の一部をとった和製英語。アパートの名称として使われることが多い。

コーポラティブハウス

土地・建築物を共有し、居住することを前提に、入居予定者が事前に組合を結成、その組合員による協同建設方式で造られた住宅のこと。

土地の入手から建物の設計・建設・管理等における諸問題をその組合で対処していく。自分たちで話し合い、解決するため大変なことが多いが、独自性のある家づくりを可能とし、協同製作の楽しさも味わうことができる。

合意更新

借家契約において、当事者の合意によって契約期間を更新することをいう。

借家契約の期間を合意で更新する場合、契約期間の制限はないが、期間を1年未満としたときには期間の定めがないものとみなされることになる。
また、合意更新においては、更新に当たって契約条件等を変更することは原則的に自由であるが、借地借家法強行規定に反する特約で借家人に不利なものは無効となる。

なお同様に、借地契約についても合意更新が行なわれるが、借地契約の更新後の契約期間は、最初の更新時には最低20年、以後の更新にあっては最低10年とされている。
また、強行規定に反する特約で借地人に不利なものが無効となるのは借家契約と同様である。

合同行為

複数の者が同じ方向に向けて意思表示することにより成立する法律行為をいう。

契約」は相対立する意思表示の合致によって成立し、「単独行為」は一人の者の意思表示で成立するが、合同行為はこれらのいずれにも該当しない。
合同行為の例としては、一般社団法人の設立行為があるとされる。

合板

ベニヤ板ともいう。

薄く切った木材を奇数枚貼り合わせたもの。木材を交互に直交させることにより、強度を高めている。

合板は、普通合板、構造用合板などに区別される。

合有

ある財産が団体の所有となっているが、その団体による拘束が弱い状態であることを「合有」という。

具体的には、組合の財産は構成員の合有とされている。

ある団体の財産が「合有」であるときは、各構成員はその団体財産に対して持分分割請求をすることができない。
しかし、各構成員が団体から脱退する際には、各構成員は持分の払い戻しを受けることができる。また、団体の債務については団体財産だけでなく、個々の構成員の個人財産からも弁済を行なわなければならない。

5棟10室基準

不動産の貸し付けにおいて、その貸し付けの戸数が一戸建ての貸し付けで5棟以上、アパートの貸し付けで10室以上に達して いるとき、この不動産の貸し付けは「事業的規模」に達したという。
このような判定基準のことを「5棟10室基準」と呼んでいる。

ちなみに「5棟10室」とは「5棟または10室」という意味であり、一戸建て1棟とアパート2室を同等とみなしている。従って、一戸建ての1棟とアパート 8室を賃貸する場合には、「事業的規模」に達したものと判定される。

5%ルール(不動産の流動化における)

特別目的会社不動産を譲渡することにより当該不動産を資金化する場合に、会計処理に当たって、その取引が不動産の売買か、金融取引かを判断するためのルールであり、日本公認会計士協会が定めた。
これによると、流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)に対するリスク負担の金額(劣後部分)の割合がおおむね5%程度以内ならば、リスクと経済価値のほとんどが移転していると判断して、売買取引(真正売買)として扱うとされている。

このようなルールが必要となるのは、不動産の譲渡後も譲渡人が当該不動産に継続的に関与し続けるような場合には、その実態は資金の供与を受ける取引(譲渡担保)と変わらず、当該不動産を譲渡人の倒産等から隔離できないからである。このルールは2000(平成12)年7月に公表され、これによって、会計処理上不動産の売却と認められるためには、リスクと経済的価値の大部分が投資家に移転する必要があることが明確となった。

また、譲渡人の子会社である特別目的会社を譲受人として流動化する場合には売却取引として会計処理することはできない。一方、いったん特別目的会社に不動産を売却し、改めて当該不動産を賃借する場合には、適正な賃借料を支払うという条件を満たせば真正の売却として取り扱われる。

注意を要するのは、一般に「5%ルール」という場合には、証券取引ルールの一つである、株券等の大量保有の状況に関する開示のルールを意味することである。公開会社の発行済株式総数の5%を超えて実質的にその株式を取得した者は、原則として、取得日から5日以内に大量保有報告書等を提出しなければならないことなどを内容とするが、このルールと、不動産の流動化における5%ルールとはまったく異なる。

ゴミ屋敷

部屋や屋敷内にゴミ(廃棄物)が山積している建物をいう。明確な定義はないが、居住者の習癖による場合が多い。近隣に防火、衛生などに関する迷惑を与える恐れがある。

娯楽・レクリエーション地区

特別用途地区の一つ。
娯楽・スポーツなどを振興するため、そうした施設の建築をしやすくし、また娯楽・スポーツなどに障害となる業種の進出を規制する地区である。市町村が指定する。

さ行

再開発組合

市街地再開発事業の施行者となる地権者の組合で、正式な名称は「市街地再開発組合」という。都市再開発法に定められた組織である。

再開発組合は、市街地再開発事業の施行区域内のすべての地権者で組織される法人で、事業の施行に当たる。組合を設立するには、5人以上の地権者が共同で申請し都道府県知事の認可を得なければならず、申請に当たっては、施行区域内の所有権者及び借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意を得なければならない。

設立後は、定款、事業計画を定めるが、総会、役員(理事3人以上、監事2人以上)、審査委員(権利変換計画等について審査する者、3人以上)を置かなければならない。

市街地再開発事業の方法には、第1種事業(権利変換方式)および第2種事業(管理処分方式(用地買収方式))があるが、再開発組合は第1種事業のみ施行できる。

再開発等促進区

市街地内のまとまった低・未利用地など相当程度の土地の区域であって、土地利用の円滑な転換を推進するため、良好な都市資産の形成に資するプロジェクトや良好な中高層の住宅市街地の開発整備を誘導するべく指定される区域。地区計画において都市計画決定される。

1.趣旨
地区計画は、特定の区域におけるまちづくりを誘導するために市町村が定める計画である(詳しくは地区計画へ)。この地区計画の区域の内部において、市街地の再開発・開発整備を実施すべき区域を定めることができ、この区域を「再開発等促進区」と呼んでいる。

2.再開発等促進区の決定
再開発等促進区は、地区計画の内容の一つとして、都市計画で決定される。再開発等促進区となるための条件としては次の1)から4)をすべて満たすことが必要である。
1)用途地域が定められている区域であること
2)現に土地の利用状況が著しく変化しつつあり、または著しく変化することが確実であると見込まれること
3)適正な配置および規模の公共施設がないこと
4)高度利用を図ることが、当該都市の機能の増進に貢献すること

3.再開発等促進区で定めるべき事項
再開発等促進区では、通常の地区計画の区域において定めるべき事項に加えて、次の事項をも定める必要がある。
1)土地利用に関する基本方針
2)施設(道路、公園、緑地、広場その他の公共空地)の配置および規模
ところで、この2)の「施設」からは、都市計画施設および地区施設は除外される。ここで都市計画施設とは「都市計画で決定されている都市施設」をいう。また、地区施設とは「主として街区内の居住者等の利用に供される道路・公園・緑地・広場などの公共空地であって、地区整備計画で定められているもの」をいう。

4.施設の配置および規模を定めない場合
上記3.の2)の「施設」については、その施設の整備事業が行なわれる見込みがないなどの特別の事情がある場合には、「施設」の配置および規模を定めなくてよいとされている(都市計画法第12条の5第5項)。
 

 

5.建築等の規制

再開発等促進区において、土地の区画形質の変更、建築物の建築などを行おうとするときには、着手する日の30日前までに、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日などを市町村長に届け出なければならない。

災害危険区域

津波、高潮、出水等による危険の著しい区域として指定された区域。

地方公共団体が条例によって指定し、その区域内では、災害を防止・軽減するため、条例の定めるところにより建物の用途、地盤高・床高、構造等が規制される。建築基準法に基づく制度である。

災害ハザードエリア

被災の恐れが大きい区域。「災害レッドゾーン」と「浸水ハザードエリア等」とに二分される。

災害レッドゾーンは、災害危険区域土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域または急傾斜地崩壊危険区域に指定された区域である。また、浸水ハザードエリア等は、浸水想定区域、土砂災害警戒区域都市洪水想定区域・都市浸水想定区域、津波浸水想定区域または津波災害警戒区域に指定された区域である。

災害ハザードエリアについては、(1)一定の開発の禁止、開発の抑制、住宅等の開発に対する勧告によって新規立地を抑制する、(2)移転を支援する制度によってエリアからの移転を促進する、(3)立地適正化計画において、災害レッドゾーンの居住誘導区域からの除外、居住誘導区域内で防災対策・安全確保策を定めることによって防災まちづくりを推進することとされている。

サイクルポート

多数の自転車を共同で利用する場合に、共用する自転車を停め置き、利用者が借用・返却する場所。また、別の意味として、建物に付属した自転車置き場をさすこともある。いずれも和製英語である。

債権

私法上の概念で、ある人(債権者)が、別のある人(債務者)に対して一定の給付を請求し、それを受領・保持することができる権利をいう。

財産権の一つであり、物権とともにその主要部分を構成する。

債権差押

債務者が有する金銭債権から、債権者が満足を得る手続きのこと。債務者の財産に対する強制執行の一つである。

債権差押では、債務者が保有する金銭債権が対象になる。例えば、債務者が銀行に預けている預金(預金債権)、債務者が取引先に請求できる売掛金(売掛金債権)、債務者が勤務先に請求できる給与(給与債権)など、いろいろな金銭債権が差押え可能である。

債権を実際に差し押さえる手続きは次のとおりである。

仮に、債務者Aが債権者Bから金銭を借りており、債権者Bが債務者AのC銀行の預金口座を差し押さえると想定する。債権者Bは、まず債務者Aの住所地を管轄する地方裁判所に、債権差押命令の申立てを行なう。これを受けた裁判所では、債務者Aが預金債権を有している相手方であるC銀行(これを「第三債務者」と表現する)に対して、債権差押命令を郵送する。

この命令が送達されてから1週間が経過すると、債権者Bは、C銀行に対して預金を自己(B)に支払うように請求することが可能となる。このようにして債権者Bは満足を得ることができる。
なお、債権差押に類似した手続きとして「転付命令(てんぷめいれい)」がある。

債権者代位権

私法上の概念で、債権者がその債権を保全するため、債務者が持つ第三者に対する権利を債務者に代わって行使する権利をいう。

例えば、不動産の賃借人は、不法占拠者の明渡し請求のために、賃貸人に代わって賃貸人が持つ物権的妨害排除請求権を行使できるとされるが、この行為は、債権者代位権にもとづいてなされると解されている。この場合についてみれば、賃借人には賃貸人に対して、賃借人が不動産を占有できるよう要求する債権があり、その保全のために、債務者である賃貸人に代わって、賃貸人の持つ所有権にもとづく妨害排除請求を行なったことになる。そして、その妨害排除請求を行なう権利が債権者代位権である。

なお、債権者代位権は、裁判外で行使できる。

債権者取消権

債権者がその債権の弁済を確保するため、債務者が成した財産を減少させる行為を取り消す権利をいう。

「詐害行為取消権」ともいわれる。

例えば、売掛金があるとき、債務者の経営が悪化して弁済の資力を失った状態のもとで、さらにそのなけなしの財産を投げ売りしたような場合には、その財産譲渡は債権に引き当てることのできる財産を故意に減少させる行為(詐害行為)であるとして、債権者取消権に基づき当該財産を債務者に取り戻すことができる。

ただし、不動産の引渡しを目的とする債権などについては、その対象となる財産(特定物)が債務者のもとにある限り、どのような財産減少行為がなされても債権者取消権を行使することはできないとされる。

また、債権者取消権は、裁判によって行使しなければならない。なお、その行使に関しては、誰に対して、どのような請求をするのかにつき議論があるため、注意が必要である。

債権譲渡

契約により債権を第三者に譲り渡すことをいう。

これにより、もとの債権者(A)の債務者(B)に対する債権は、そのままの内容で、債権を譲り受けた第三者(C)のBに対する債権に転換する。

Bは債権譲渡の契約には関知しないが、譲渡契約について対抗要件を満たすことが要請される。Bがその債務を誰に弁済すべきかを異義のないように決定するには、Bに対するAの通知またはBの承諾が必要であり、また、B以外の第三者に対して誰が債権の譲受人であるのかを異義のないように決定するには、Bに対するAの通知またはBの承諾は、確定日付のある証書によってなされなければならない。

なお、法人が、指名債権であって金銭の支払いを目的とする債権を譲渡した場合には、その債権の譲渡について債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、その債権の債務者以外の第三者については、確定日付のある証書による通知があったものとみなすという特例がある。
また、一定のリース債権等については、債権を譲渡する旨を日刊紙に公告することによって、第三者に対する対抗要件を得ることができるとされている。これらの措置は、いずれも債権の流動化を容易にして、金融手段を多様化するニーズに応えるための仕組みである。

再建築不可

建替えや増改築ができない状態であることをいう。

例えば、接道義務を満たしていない敷地既存不適格建築物はいずれも再建築不可である。

宅地建物取引業務においては、不動産広告および重要事項説明書に必ず「再建築不可」である旨の記載をしなければならない。

債権の目的

人がある人に対して給付を要求することができるという権利を「債権」という。

この債権の対象となっている給付のことを「債権の目的」と呼んでいる。
例えば、土地売買契約において買主は売主に対して土地の引渡しを要求する権利(債権)を持っているが、この場合の債権の目的は「土地を引き渡す」という給付である。

債権法

私法体系のなかで、債権・債務関係を律する法体系を指す。その中心をなす法律は、民法第3編「債権」(総則、契約、事務管理、不当利得、不法行為の各章によって構成されている)であるが、民法第1編(総則)の関係部分のほか、契約や不法行為に関する多数の特別法も債権法を構成する。
財産権は大きく物権と債権とに分かれるが、物権法は人が財貨を直接に支配する関係を律する法規範であるのに対して、債権法は人と人との間の給付請求・給付行為関係(不作為を含む)を律する法規範である。

債権法は、1896年に制定された後、約120年のあいだ全般的な見直しがされないまま推移したが、社会・経済情勢に著しい変化があったこと、当時とは国民生活の様相が大きく異なること、裁判において膨大な数の判例法理が形成されているがその明確化が求められていることなどから、見直しが図られた。そして、それに基づき必要な改正が行われている(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」2017年6月2日公布、2020年4月1日施行)。

債権・債務関係

人がある人に対して一定の給付を要求し、あるいはある人から給付を要求されるいう関係をいう。

この関係に適用される最も基本的な法律が、民法第三編「債権」であり、この部分を一般に債権法という。債権法については見直しがなされ、必要な改正が行われた(施行は2020年4月1日から)。

債権債務関係が発生する原因のうち、最も一般的なものは契約である。例えば土地売買契約では、買い主は、土地の引渡しを売り主に要求する債権を得る一方で、代金を支払う債務を負うことになる。また、不法行為も債権債務関係の発生原因として重要である。たとえば、交通事故の加害者は、被害者に対して損害を賠償する債務を負うこととなる。

採光

建築基準法によれば、住宅の居室においては、採光のために、窓その他の開口部を設けなければならない(建築基準法28条1項)。
この住宅の採光のための開口部の面積は、居室の床面積の7分の1以上でなければならないとされている。

ふすま、障子などの常時開放できるもので仕切られた2つ以上の居室は、1つの居室とみなすこととされている(建築基準法28条4項)。従って、1つの居室には必ず1つの窓が必要というわけではなく、障子で仕切られた2つの居室について1つの窓でもよいということになる。

ところで、住宅の販売広告等では、窓のない部屋はこの採光の規定(建築基準法28条)を満たしていないため、「居室」と表示することはできない。その代わりに、「納戸(なんど)」「サービスルーム」などと表示することは可能とされている。

また、地階に設けた居室についてはこの限りではないとされているので、居室として使用される地下室では採光のための開口部を設ける必要はない(建築基準法28条1項但し書き)。
ただし、こうした地下室では衛生上の要請から「ドライエリア(からぼり)」等の設備を設ける必要がある(建築基準法29条)。

催告

相手に対して一定の行為を要求することをいう。

催告をして相手方が応じない場合に、一定の法律効果が生じるという意味がある。

大きく、債務者に対して債務の履行を請求すること、無権代理者等の行為を追認するかどうか確答を求めることの2つの場合がある。例えば、債務の履行を催告すれば、時効の中断履行遅滞、解除権の発生などの、追認の催告は、場合に応じて、追認、取消しまたは追認の拒絶とみなされるなどの法律効果に結びつく。

口頭による催告も法律上有効であるが、確実を期すためには証拠力の強い方法によるのが望ましい。

催告の抗弁権

債権者が保証人保証債務の履行を請求してきた場合には、保証人は「先に主債務者に対して債務の履行を催告せよ」と債権者に主張することができる。これを催告の抗弁権という(民法第452条)。

例えば、AがBから100万円の借金をし、Aの友人であるCがその借金の保証人になったとしよう。このとき債権者Bが、保証人Cに対して100万円の債務を支払うように請求したとする。その際保証人Cは「まず主債務者Aに対して借金返済の督促をせよ」と債権者Bに主張できることになる。

しかしながら、単に督促をするだけでよいのであるから、債権者にとってはこの催告の抗弁権は実際上ほとんど問題とならない。ただし、保証人にはより強力な抗弁権として、検索の抗弁権が与えられている(民法第453条)。

再生可能エネルギー

短期間に再生し、あるいは消滅しない燃料源から取り出されるエネルギーをいう。

そのような燃料源として、太陽光、風、流水、植物・バイオマス、地熱などがある。

一般に、再生可能エネルギーは資源としての持続性に優れ、また、その発生に伴う環境への影響も小さいと考えられている。そのため、気候変動への対応や安定的なエネルギー資源の確保のために、再生可能エネルギーの開発・活用が推進されている。

なお、再生エネルギーの燃料源はさまざまであるが、通常は、電力の形で取り出されている。

最多価格帯

複数の宅地建物が同時に販売されるときに、最も販売物件の多い価格帯をいう。

価格帯は100万円刻みで設定する。

宅地建物の販売広告に当たっては、原則として、1区画または1戸当たりの販売価格を表示しなければならない。しかしながら、販売物件数が10件以上ある場合で、すべての価格を示すことが難しい場合は、最低価格、最高価格および最多価格帯とその価格帯の販売物件数を示せばよいとされている。

再調達価格(建物の〜)

同等の建物建築する場合に要する建築費。

通常、建物構造ごとに定める建築単価(1平方メートル当たりの建築費)に床面積を掛け算して算定する。

算定が必要となるのは、保険や金融において、中古建物の現在価格を算定する場合などである。

再調達価格と現在価格との関係は、次のとおりである。
現在価格=再調達価格×(残耐用年数÷耐用年数)

サイディング

建物の外壁に使用する仕上材のこと。木材、セメント板、金属、セラミック等が用いられる。

サイドテーブル

補助的に利用する小型のテーブル。英語のside table。

主テーブル、ソファ、ベッドなどの脇や壁際に置かれることが多い。

再売買の予約

いったんAからBへ売却された物を、再びBからAへ売却することを予約すること。

具体的には、ある物をAからBへ売却する時点(第1売買の時点)において、「将来その物をBからAへ売却すること(第2売買)を事前に合意する」という予約を結んでおくのである。こうすることによって第1売買の売主であるAは、将来その物を取り返すことが可能となる。

再売買の予約は、融資に用いられることが多い。
例えばBがAに2,000万円を融資するとする。融資の担保がA所有の土地(2,000万円相当)であるとする。このとき次のような形で再売買の予約を用いる。
まずAがBに対して、この土地を売る(第1売買)。これによりAは2,000万円を得る(これが金を借りたことに該当する)。そして第1売買の際に「将来AがBに2,000万円を交付するならばBがその土地をAに再び売却する(第2売買)」という予約を結んでおく。

このように第1売買における買主Bは、土地の所有者となり、同時にBがAに2,000万円を交付する。これは見方を変えれば、Bが土地を担保にとって、Aに2,000万円を貸し付けた、と見ることができる。また予約(Aが土地を取り戻すという予約)に関しては、Aは予約完結権仮登記することができるとされている。

債務

私法上の概念で、ある人(債権者)に対して一定の給付をなすべき義務をいう。

債務を負っているのが債務者である。

債務不履行

債権・債務関係において、債務が履行されない状態をいう。

例えば、売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、売り主が物件を引き渡さないときは、売り主は引渡し義務を怠っていて、「債務不履行」にあたる。

このような債務不履行に対しては、法律(民法)により、債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができるとされている。

ただし、債務不履行を理由とする損害賠償を請求するには、次の条件を満たすことが必要である。
1.債務者が債務を履行しないこと(履行不能履行遅滞不完全履行の3形態がある)
2.債務者に故意または過失があること
3.債務不履行を正当化するような法律上の理由が存在しないこと

債務名義

債務者に給付義務を強制的に履行させる手続き(強制執行)を行なう際に、その前提として必要となる公的機関が作成した文書のことを「債務名義」という。

債務名義には「確定判決」「仮執行宣言付判決」「和解調書」「調停調書」「執行認諾文言付公正証書」「仮執行宣言付支払督促」がある。

また、債務名義は強制執行の前提として必要な公的文書であるが、実際に強制執行を行なうには、債務名義に「執行文」が記載されることが必要である。
(ただし、「仮執行宣言付支払督促」は執行文なしで強制執行を行なうことができる)

サウナ

高温の比較的乾いた室内において、熱気浴・蒸気浴によって全身を発汗させる方法またはそのための設備をいう。Sauna。発祥地はフィンランド。

浴場営業や旅館等で提供されることがあるほか、家庭用の設備も販売されている。サウナであるための規格は特には定められていないが、密閉した室内を高温に保ち、温度・湿度を調節することが必要となる。

サウンディング

建設技術における地盤調査の方法をいう。これによって地盤の性質(土質)を把握することができる。建築基礎の設計や基礎工事は、サウンディングの結果に基づいて行なう必要がある。

サウンディングの種類には、ドリルの貫入によるスウェーデン式サウンディング、ハンマーの打ち込みによる標準貫入試験、人工的に表面波を発生させる表面波探査などがある。

竿縁天井

並行に敷設した細長い材の上に板を乗せた天井。この細長い材が「竿縁」で、和室の一般的な天井はこの形(竿縁天井)である。

和室の上端に沿って細い材(回り縁)を設置し、回り縁に直角に一定の間隔で竿縁を平行に取り付け、竿縁の上に天井板を置く方法で造る。このとき、竿縁が垂れ下がらないように吊り木で固定する。

竿縁は、一般に断面が長方形の木材を用いるが、断面が台形の木材、細い丸太、竹を用いる場合もある。また、天井板は数枚の板を重ねるが、重ね部分が離れないようにする部品(稲子)が取り付けられている。

下がり天井

パイプスペースやの出っ張りにより、天井より下に下がった部分(低くなっている部分)を指す。

図面上では点線で表示することが多い。

先取特権

法律で定められた特殊な債権について、債務者の財産または特定の動産不動産から優先的に弁済を受けることのできる権利をいう。この権利は、担保物権として強い保護を受ける。

例えば、雇人の最後の6ヵ月分の給料は、雇主の総財産に対して、不動産の賃貸借関係から生じた賃借人の債務は、賃借地、建物の動産、土地の果実に対して、請負人等がした不動産工事の費用や不動産売買の対価およびその利息は、その不動産に対して、それぞれ優先弁済の権利があるとされている。

ただし、他の先取特権との競合関係の際の順位が法律で定められているので、注意が必要である。

先物(先物取引)

将来の一定時期に現実の受渡しをする条件のもとで売買し、受渡しまでの間に反対売買(転売または買い戻し)をしたときには差金の授受で決済することができる取引が「先物取引」であり、そのような取引の対象となる商品等を「先物」という。

反意語は「現物取引」「現物」。

先物取引は、価格変動リスクを回避するためのヘッジ機能、仮需要を導入することによる価格発見機能などを担う。一方で、差金決済によって売買代金よりも非常に小額で買付けでき、あるいは現物を持たないまま売付けできるなど、投機性が強く、現物取引に比べてより大きな危険を伴う。

先物取引を行なう施設として認められているのは、法律で定められた取引所のみである。取引所で取引される先物には、商品、有価証券、通貨等のほか、その指数等およびそれらのオプションがある。

なお、土地(その指数等を含む)を対象にした先物取引や、それに類似する取引をする施設の開設は認められていない。

詐欺

詐欺とは、他人を騙すことにより、その者に誤った動機を抱かせることである。いい換えれば、詐欺とは他人を動機の錯誤に陥れることであるということができる。
詐欺により動機の錯誤に陥れられた者が、その錯誤にもとづいて意思表示を行なった場合には、その意思表示は取り消すことができる(民法第96条第1項)。

ただし、詐欺とは社会通念に反する違法性を帯びている場合に限られるので、例えば「この土地は値上がりするはずだ」と単に告げる程度では詐欺に該当しない。
また、詐欺と意思表示との間には因果関係が必要とされており、詐欺が動機を決定付けた場合にのみ、その詐欺にもとづく意思表示は取消しが可能なものとなる。

詐欺により法律行為が行なわれた場合に、詐欺があったことを知らない(=善意の)第三者は原則的に保護されるべきである。民法では第96条第3項でこのような第三者を保護している(詳しくは詐欺における第三者保護へ)。
なお、詐欺は取引の当事者が行なう場合だけでなく、当事者以外の者が行なう場合もある。これは第三者詐欺と呼ばれ、民法第96条第2項が適用される(詳しくは第三者詐欺へ)。

詐欺における第三者保護

詐欺による意思表示は、本人が取り消すことができる(民法第96条第1項)。例えば、AがBの詐欺により土地の売却を行ない、土地を取得したBがその土地をCに転売した場合には、AB間の土地売買は詐欺を理由として取り消すことが可能である。
しかし、Aが土地売買を取り消した場合、その売買は初めから無効であったものとして扱われる(民法第121条本文)ので、Cは権利のないBから土地を購入したこととなり、CはAに対して土地を返還する義務を負うこととなってしまう。

これでは取引の安全が確保されないので、民法ではCが善意である場合(すなわちAが詐欺にあっていたことをCが知らない場合)には、Aは取消しの効果をCに対して主張できないと定めている(民法第96条第3項)。これにより、善意のCは有効に土地の所有権を取得できることとなる。なおこの場合に、第三者Cには無過失までは要求されない。

また、第三者Cが土地の登記を備えている必要があるかどうかについては学説が対立している。有力説は、詐欺における第三者Cの保護は、詐欺にあった本人Aの犠牲において達成されるので、第三者Cは自己の権利の確保のためになすべきことをすべて行なうべきであるとして、第三者Cが自分名義の登記を取得することを要求する。
なお判例は農地売買において、第三者が仮登記を備えるべきであると判断しているが、これは特殊な事例であって、一般論ではないと解釈されている(昭和49年9月26日最高裁判決)。

詐欺による意思表示

詐欺とは、他人を騙すことにより、その者に誤った動機を抱かせることである。いい換えれば、詐欺とは他人を動機の錯誤に陥れることであるということができる。
詐欺により動機の錯誤に陥れられた者が、その錯誤にもとづいて意思表示を行なった場合には、その意思表示は取り消すことができる(民法第96条第1項)。

ただし、詐欺とは社会通念に反する違法性を帯びている場合に限られるので、例えば「この土地は値上がりするはずだ」と単に告げる程度では詐欺に該当しない。
また、詐欺と意思表示との間には因果関係が必要とされており、詐欺が動機を決定付けた場合にのみ、その詐欺にもとづく意思表示は取消しが可能なものとなる。

詐欺により法律行為が行なわれた場合に、詐欺があったことを知らない(=善意の)第三者は原則的に保護されるべきである。民法では、第96条第3項でこのような第三者を保護している(詳しくは詐欺における第三者保護へ)。
なお、詐欺は取引の当事者が行なう場合だけでなく、当事者以外の者が行なう場合もある。これは第三者詐欺と呼ばれ、民法第96条第2項が適用される(詳しくは第三者詐欺へ)。

錯誤

内心的効果意思と表示行為が対応せず、しかも表意者(意思表示をした本人)がその不一致を知らないこと。
錯誤は本来、内心的効果意思を欠く意思表示であるため、錯誤に基づいて法律行為を行なった本人を保護し、錯誤に基づく法律行為を無効とするのが原則である。しかし、それでは表意者の意思表示を信頼した相手方の保護に欠ける結果となる。

そこで、民法では次の方法により表意者保護と相手方保護の調整を図っている。
1.意思表示が次の錯誤に基づくものは取り消すことができる。ただし、その錯誤が法律行為の目的、社会通念に照らして重要なものであるときに限る。
1)意思表示に対応する意思を欠く錯誤
2)法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤。ただしその事情が法律行為の基礎であることが表示されているときに限る。
2.表意者の重大な過失による錯誤は、次の場合を除き取消しすることができない。
1)相手方が錯誤であることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき
2)相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
3. 錯誤による意思表示の取消は、善意かつ過失のない第三者に対抗できない。
なお、このような規定は、錯誤をめぐる判例の積み重ねの結果、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

錯誤における第三者保護

錯誤による意思表示の取消は、善意かつ過失のない第三者に対抗できない旨の定め。判例の積み重ねの結果、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明定された。

差押

競売(または公売)の前提として、あらかじめ債務者の財産の売却等を禁止するような裁判所の命令のこと。

仮差押が、債務者の財産を一時的に凍結する命令であるのに対して、差押は競売(または公売)の手続きが開始すると同時に行なわれるものである。

差押の原因は、次の3つのどれかである。

1.抵当権等を実行するための任意競売が開始されたこと
2.裁判所の判決等にもとづく強制競売が開始されたこと
3.税金の滞納にもとづく公売が行なわれること

差押の登記

不動産に対する差押が行なわれた際に、不動産登記簿に記載される登記のこと。
競売または公売の手続きが正式に開始されたことを公示する登記である。

差押の登記に書かれる「原因」には、次の3種類の文言がある。

1.抵当権等を実行するための任意競売が開始されたとき
→原因「競売開始決定」

2.裁判所の判決等に基づく強制競売が開始されたとき
→原因「強制競売開始決定」

3.税金の滞納に基づく公売が行なわれるとき
→原因「税務署差押」

指値

売買の注文を委託する場合に指定する取引希望価格、または価格の範囲をいう。

取引所での売買、委託販売など、客の注文を受託して取引する場合に用いられる。指値は拘束価格の指示であり、委託者は指値に従わない売買についてその結果の引受けを否認できる。

不動産売買の仲介は売買受託ではないため、客が示す希望価格は指値ではない。一方、代理等による取引における希望価格は、一般的に指値に当たる。

サステイナビリティ

環境や社会経済が安定的に長く持続することまたは持続できる性質。英語のSustainability。和訳は「持続可能性」。

サステイナビリティは、もともと、地球環境問題に対応するため、環境負荷の限界の下で開発を進めるための考え方として提案された。例えば、環境と開発に関する世界委員会報告(Brundtland Report、1987年)は、「持続可能な開発とは、将来の世代の欲求を充たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」であるとする。

この考え方は、その後、環境問題への対応だけでなく、経済活動や社会組織の安定性確保という課題への対応にも拡張され、現在は、環境、社会、経済が調和して長期的に持続するための基本的な考え方として幅広く取り入れられている。

サステイナビリティを実現するには、経済成長だけでなく人間の福祉の向上を重視すること、地球環境の定常性維持、生物多様性の保全、生態系サービスの確保などを達成すること、選択可能性の確保、世代間の公平、将来に向けた投資を図ることが必要であるとされる。SDGsも、このようなサステイナビリティの実現を共通の目標として組み立てられている。

サテライトオフィス

本拠地から離れた場所に設置する小規模な事務所。サテライト(satellite)は「衛星」を意味する英語であるが、サテライトオフィスは和製英語である。

主として、本拠地が都心部の企業が、郊外や地方部で勤務できる施設として設置している。これによって、従業者は、仕事と育児・介護等との両立や、地方に定住しながらの勤務が可能となるため、働き方の選択の幅が広がる。また、事業主は、多様な人材を確保できると考えられている。通勤や移動の時間を短縮する効果もある。

サテライトオフィスでの働き方は、情報通信機能を活用するテレワークに似た勤務形態のものもあれば、自立した拠点として組織的に仕事を進めるものもあって、設置の目的に応じてさまざまである。

なお、郊外や地方部を本拠地とする企業が、情報交流などのために都心部に設置するサテライトオフィスもある。

サニタリー

衛生を保つ必要がある場所やそのための設備。一般的に、住宅の浴室、台所トイレのような水を使用し、衛生を保つための設備が設置されている場所およびそこで使用する衛生設備を包括的にさす言葉として使われる。

英語のsanitaryは「衛生的な」「公衆衛生の」という意味の形容詞であるが、日本でその意味が特化し、衛生に関する場所や設備を包括する用語となった。

差配

所有者に代わって貸家を管理すること。管理人を意味する場合もある。

サブプライムローン

アメリカで実施されているローンのうち、比較的信用力の低い人に対する住宅ローンをいう。

通常の住宅ローンに較べて、貸出しの審査基準は緩いが、金利は高いことが多い。アメリカの住宅ローンの約15%はこれに該当するといわれている。このようなローンが成り立つ背景には、ローンの担保となる住宅の価格上昇が期待できるからであるとされる。そして、住宅価格の上昇を見込んで、ローンの多くは、借入当初は金利を低めに設定し、一定期間後に金利を上げるような仕組みを採用している。

従って、住宅価格が上昇しない場合には、ローンの返済が困難となり、不良債権化する恐れがある。そして、2007年夏に、その恐れが実際に顕在化したのである。

さらには、アメリカでは、住宅ローン債権の大部分は証券化され、金融商品として市場で取引されている。サブプライムローンが不良債権化する恐れが強くなれば、それを証券化し、組み入れた金融商品のリスクが高まり、価格は下落する。そしてその下落が、ほかの金融商品の取引価格や評価にも波及し、市場全体のリスクを高め、金融機関等が保有する債権や金融商品の価値を毀損するなどの影響を惹起する。

サブプライムローン問題(Subprime mortgage crisis)は、このようにして拡大していったのである。

サブリース

賃借人が第三者にさらに賃貸することであるが、特に、住宅の管理を手がける事業者が賃貸住宅の所有者から住宅を一括して賃借し、それを入居者にさらに賃貸するという賃貸住宅経営の方法をいうことが多い。この場合、一括して賃借する事業者を、サブリース事業者または特定転貸事業者という。

賃貸住宅の所有者は、賃借人の募集、家賃の設定や改定、住宅の管理などの業務に責任を負うことなく賃貸料を得ることができるが、サブリース事業者とのリスク分担や空室の取扱いなどについて明確にしておく必要がある。

また、サブリース事業者は、事業の実施に当たって、賃貸住宅管理業法が定める規制を遵守しなければならない(2020年12月施行)。例えば、所有者と賃貸借契約を締結する前に家賃、契約期間等(重要事項)を記載した書面を交付しなければならないほか、誇大広告の禁止、故意に事実を告げずまたは不実を告げる行為の禁止などが課せられている。

サブリース方式

賃貸住宅管理業の実施方法の一つで、事業者が、転貸を目的に住宅の所有者から住宅を賃借し、併せてその住宅の管理業務を受託する方法。転貸目的の賃貸借契約が「マスターリース契約」、住宅の管理を受託する契約が「管理受託契約」で、サブリース方式はこの二つの契約を同時に締結することになる。

またこの場合、住宅に居住する賃借人は、賃貸住宅管理業者と転貸借契約(サブリース契約)を締結することとなる。

なお、賃貸住宅管理業の実施方法には、サブリース方式のほか、管理受託方式がある。 

サムターン

扉を閉めた状態で、指でつまんで回すと施錠される捻り金具。外側からは鍵を用いないと開け閉めできないが、室内側からはサムターンを回せば戸締まりができる。

さや管ヘッダー工法

給水・給湯設備の施工方法の一つ。

ヘッダーと呼ばれる分岐管を、あらかじめコンクリートスラブなどにさや(鞘)管として埋め込み、給水・給湯による腐食、不安定な水圧、施工の煩雑さ、メンテナンスの困難さを解消する工法・システム。

更地

建物等が存在しない土地のこと。

3階建て建築物の技術的基準

準防火地域は、火災を防止するために比較的厳しい建築制限が行なわれる地域である(建築基準法第62条)。

この準防火地域では、地上3階建ての建築物であって、延べ面積が500平方メートル以下のものを建築するときには、その建築物は少なくとも「3階建て建築物の技術的基準」に適合する建築物としなければならない(建築基準法第62条第1項)。

この「3階建て建築物の技術的基準」は建築基準法施行令第136条の2に規定されている。

この基準によれば、地上3階建て建築物の外壁と軒裏は必ず防火構造とし、屋根は不燃材料でふき、外壁の開口部に防火戸を付ける必要がある。また、木造の柱・は一定以上の太さとするか、または石膏ボードなどで覆うことが必要となっている。

従って、この基準に適合した地上3階建て建築物は、準耐火建築物そのものではないが、準耐火建築物に近い準耐火性能を有しているということができる。

35条書面

重要事項説明書」と同じ。それを参照。

なお、重要事項説明に当たって35条書面を交付するのは宅地建物取引士である。一方、37条書面宅地建物取引業者が交付する。

37条書面

宅地建物取引業者が不動産取引に関与して契約が成立した場合に、当該業者が取引当事者に交付しなければならない書面。この書面の交付は、宅地建物取引業法第37条の規定に基づく義務である。

交付する書面には、代金または借賃の額、その支払方法、引き渡しの時期など法律に定める主要な契約内容(売買・交換の場合と賃貸借の場合とで異なる)を記載するとともに、宅地建物取引士が記名押印しなければならない。

なおこの書面の交付は、契約書(宅地建物取引士の記名押印があるもの)の交付によって満たすことができる。

36答申(都市河川に関する~)

都市河川を下水道幹線(暗渠)として利用する旨の答申。1961(昭和36)年、東京都市計画河川下水道調査特別部会が報告した。

この答申には、市街地における河川汚濁の現況に対応するとともに、下水道整備を促進するために、源頭水源を有しない東京都内の14河川について、次の方針で対応すべきと述べている。

1.一定の区間について暗渠化して下水道幹線として利用すること
2.下水道幹線として利用しない区間は、舟運上などの理由から特に必要な部分を除いて覆蓋化し、公共的な利用を図ること
3.狩野川台風(※)並みの降雨でも氾濫しないよう整備すること

この答申はほぼそのまま実施された。また、この考え方は都市内の中小河川について拡大して適用され、その覆蓋化等が進められた。

(※)1958(昭和33)年、9月26日に神奈川県の三浦半島に上陸した台風22号のこと。狩野川上流部に記録的(最大時間雨量120mm)という記録的な豪雨を降らせた。これにより、狩野川はいたるところで氾濫し流域に未曾有の大水害をもたらした。

散水栓

屋外で水を使うための給水口。家庭用の散水栓は、蛇口が地面下の箱の中に設置され、ホースを接続して使用するかたちのものが多いが、柱や壁に蛇口を設置したタイプ(立水栓)のものもある。

なお、家庭用の散水栓ほか、農作物への散水、公園やグランドでの散水などに用いる大型の散水栓がある。

3,000万円特別控除

譲渡所得の課税において、譲渡益から3,000万円を控除して課税する制度をいう。

個人が、居住用財産(自ら居住している土地・建物)を譲渡して譲渡利益が生じた場合に、この譲渡利益に対する所得税の課税に当たって、譲渡利益から3,000万円(譲渡利益が3,000万円未満のときはその額)を控除して譲渡所得を計算する特別の措置である。この特例が適用されるのは、住まなくなった日から3年目の年末までに譲渡した場合である。

また、相続した空き家を譲渡した場合にも、3,000万円特別控除が適用される。

山荘

山の中に構えた別荘。山中にある旅館などの名称としても使われる。

サンダー

研磨のための携帯式電動工具。英語のelectric sander(エレクトリック サンダー)。

ヤスリ面を電力で動かして研磨する工具で、ヤスリ面の形や動かし方に応じていくつかの種類がある。

サンドブラスト

対象物の表面に研磨材を吹き付けて加工する方法。英語のsandblasting(サンドブラスチング)。

鋼材、コンクリート、石材等の表面研磨、陶磁器、ガラス工芸品等の仕上げ・彫刻などに使われ、表面の処理を容易に行なうことのできる工法とされている。

研磨剤としては、硅砂のほかアルミナ、ガラスビーズなどが使用される。また、吹き付ける方法には、圧縮空気による乾式と高圧水による湿式とがある。

サンルーム

日光を室内に多量に取り込めるよう工夫した部屋をいう。

屋根や壁をガラス張りにしたり、大きな窓を設けることが多い。

サーキュレーター

室内の暖房の空気等を循環させる装置。天井などに取り付け、冷暖房と併用する。

暖房時には上部に溜まりやすい暖かい空気を下方へ、冷房時には下部に溜まる冷たい空気を循環させる。すなわち、室内の空気の質・温度を均一にする道具である。

サードパーティー(物流の〜)

取引等の当事者(荷主・荷受人)に代わって物流業務を担当する事業者。英語のthird partyは「第三者」という意味であるが、物流用語では、物流効率化のための仕組みである3PL(third party logistics)において物流業務を担当する事業者の意味で使われる。

3PLにおいては、サードパーティは、荷主等に対して物流の効率化やシステムの構築を提案し、長期的・包括的に物流業務の実施を受託する役割を果たす。この場合に、サードパーティが自ら運送を引き受けるとは限らない。

サービサー(Servicer)

金銭債権の回収・管理業務を営業する者のこと。金融機関や一般会社から、金銭債権を譲り受けたり、委託を受けて回収・管理する。債権回収会社ともいう。

金銭債権の回収・管理業務を営業するためには、法務大臣の許可を受けなければならない(弁護士は、委託を受けて回収・管理に当たることのみを行なう場合には許可を要しない)。その許可を受けた会社(株式会社に限られている)がサービサーである。

その業務の実施については、人を威迫しまたはその私生活・業務の平穏を害するような言動により相手方を困惑させる行為の禁止、暴力団員等を業務に従事させたり業務の補助として使用することの禁止などの規制がある。これらの許可や仕組みを定めるのが、「債権管理回収業に関する特別措置法」(略称「サービサー法」)(1998(平成10)年10月公布)である。

不動産取引に関する金銭債権の回収・管理業務も、その営業は、弁護士またはサービサーでなければ行なうことはできない。

サービスアパートメント

日常生活に必要な設備・サービスを備えた賃貸住宅。和製英語。

家具、食器などが備えられているほか、リネン類の交換などのサービスが提供されることもある。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

規模や設備面で高齢者が生活しやすいバリアフリーな住宅(ハード)に、介護・医療などのサービス(ソフト)が付いた住まいをいう。

ハード・ソフトの基準は以下の通り。

1. 規模・設備(ハード)
1)各専用部分の床面積は原則25平方メートル以上であること(ただし、居間、食堂、台所その他の住宅部分が、高齢者が共同して利用するのに十分な面積を有する場合は18平方メートル以上)
2)各居室部分に、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えたものであること(ただし、共用部分に共同利用に適した台所、収納設備または浴室を備えることにより、各戸に備える場合と同等以上の居住環境が確保される場合は、各戸に台所、収納設備または浴室を備えずとも可)
3)バリアフリー構造であること

2.サービス(ソフト)
1)安否確認サービスと生活相談サービスを提供すること
2)ケアの専門家(社会福祉法人・医療法人・指定居宅サービス事業者等の職員、医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、ホームヘルパー1級または2級の資格保持者)が少なくとも日中、建物に常駐してサービスを供給すること

契約方式は、「賃貸借方式」と「利用権方式」の2種類。新制度では、利用権方式のトラブルを未然に防ぐために、前払金算定の基礎や返還債務の算定方法を明示するとともに、入居3ヵ月以内に契約解除または入居者死亡による契約終了となった場合に、前払金(利用控除分を除く)を返還することが定められた。

なお、従来の高齢者向け優良賃貸住宅制度(高優賃)、高齢者円滑入居賃貸住宅制度(高円賃)、高齢者専用賃貸住宅制度(高専賃)の3つが廃止、新制度に一本化され、さらに基準を満たした有料老人ホームも登録が可能となっている。

サービスバルコニー

マンションに設置されている小さなバルコニー。厳密な定義はないが、通常のバルコニーに比べ奥行きが狭く用途が限られる。

サービスヤード

いわゆる裏庭、側庭、勝手庭のこと。台所と直結した庭園の一部分で、洗濯、物干し、ゴミ置き、通路等に使用される。

サービスルーム

採光が不足して居室として認められない部屋をいう。

建築基準法では、居室は、住宅の場合、窓の大きさは床面積の7分の1以上なければならないとされているが、その基準を満たさない部屋を「サービスルーム」と称する。

例えば、間取りが「○LDK+S」と表示されている場合の「S」がこれに当たる。「納戸」もこれと同じ意味で使われることが多い。

サーモスタット

thermoは熱、statは安定装置、反射装置の意。自動制御で室温を一定に保つ温度調節器のこと。

財形住宅融資

財形貯蓄を勤労者に対する住宅資金の融資。

労者退職金共済機構による転貸融資、住宅金融支援機構による直接融資、公務員共済組合による直接融資がある。

財形住宅融資の金利は5年間固定金利で、通常、一般の住宅ローン金利よりも低い。返済期間は最長35年以内で、元利均等払い、元金均等払いのいずれかを選択できる。また、転貸融資の場合には、事業主から負担軽減措置を受けることができる。

財形貯蓄(住宅、年金、一般)

勤労者が財形貯蓄取扱機関と契約を締結し、事業主が勤労者に代わって賃金から天引き預金する方法により貯蓄を行なう制度。事業主が天引き預金するためには労使の合意が必要である。勤労者財産形成促進法に基づいて運用されている。

財形貯蓄は、次の3つの種類に分かれている。


ア 財形住宅貯蓄
持家取得を目的として行なう貯蓄で、55歳未満の勤労者が5年以上の期間にわたって定期的に賃金からの天引きで積み立てるもの。
イ 財形年金貯蓄
年金として支払いを受けることを目的とした貯蓄で、55歳未満の勤労者が5年以上の期間にわたって定期的に賃金からの天引きで積み立てるもの。年金は、60歳以降の契約所定の時期から5年以上の期間にわたって支払われる。
ウ 一般財形貯蓄
勤労者が3年以上の期間にわたって定期的に賃金からの天引きで積み立てる貯蓄。契約時の年齢制限がなく、貯蓄の使途は自由である。

財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄については、両方を合わせて元利合計550万円(財形年金貯蓄のうち、郵便貯金、生命保険の保険料等に係るものにあっては払込ベースで385万円)から生ずる利子等が非課税とされている。

財産刑

刑罰のうち、犯人の財産を剥奪する刑罰のこと。「罰金」「科料」「没収」がある。

罰金と科料はともに、一定額の金銭を国庫に納付させるという刑罰であり、金額の違いがあるに過ぎない。

罰金は、犯罪ごとに金額が異なるが、「1万円以上」と法定されている(刑法第15条)。
科料は「1,000円以上1万円未満」である(刑法第17条)。

また没収は、主刑(死刑、懲役、禁固、罰金、拘留、科料)の言い渡しに伴って、犯人の物の所有権を剥奪して国庫に帰属させる刑罰であり、犯罪によって得た財物や証拠品を没収するものである。

座椅子(フロアチェア)

脚のない背もたれ用の椅子で、や床に座るときに用いる。

フロアチェアは、英語のfloorとchairの合成語で、座椅子と同義である。

財政投融資

政府が実施する資金の融資・出資。民間金融機関では対応困難な分野に対して政策的に実施される。

資金を長期・固定・低利で供給することによって、教育・福祉・医療等に関する事業、政策的に重要性な大規模・長期のプロジェクトなどを支援するほか、中小企業等への金融を補完する役割を果たしている。その財源は国の信用に基づき調達した資金などで、財政投融資特別会計によって管理される。

住宅・都市開発分野で財政投融資の対象となっているのは、住宅金融支援機構による住宅金融、都市再生機構が実施する都市開発事業、日本政策投資銀行等による都市開発事業金融などである。

在宅医療

疾病や障害を抱えていても、自宅等の住み慣れたところで医療を受けつつ生活できる仕組み、あるいはその仕組みによって提供される医療サービスをいう。

この場合には、住宅が、治療、療養の場としての役割を果たすこととなる。

在宅医療を円滑に実施するためには、ア)医療と介護との連携、イ)医療福祉従事者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師、リハビリ職種、ケアマネジャー、介護士等)がチームとなって患者・家族をサポートしていく体制、ウ)地域ごとに医療・介護サービスを包括的、継続的に提供する仕組みが必要である。

在宅福祉

高齢者が地域社会で生活し続けること、またはそのために支援することをいう。

在宅福祉のためのサービスは、地方公共団体の他、社会福祉法人、ボランティア団体等が提供している。また、地域社会の住民が会員制で支援する方法(住民参加型在宅福祉)も活用されている。

在宅福祉サービスの内容は、配食、寝具類の洗濯、ホームヘルプ、緊急通報、外出支援、家族介護用品の支給、ショートステイ、車椅子移送車両の貸出など、多様である。費用については、一部を自己負担する場合が多い。
また、介護保険の対象となる場合もある。

在宅福祉サービスは、高齢者・要介護者の居住を支援する仕事であり、住宅の果たす役割を広げ、機能を向上することに寄与する。

財務諸表

企業の財務状態や経営成果およびその変化を明らかにするために作成される報告書類をいう。

一般に決算書といわれているものがこれに相当し、毎会計年度ごと、あるいは半期、四半期ごとに作成、公表される。
また、報告の対象とする企業の捉え方に応じて、個々の企業ごとに作成される「個別財務諸表」と、支配従属関係にある企業グループ全体について作成される「連結財務諸表」とに分けることができる。

財務諸表を構成するのは、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)等である。これらの書類は、企業会計の慣行等にもとづき一定の規則に従って作成され、会計監査人などによって監査される。

財務諸表は相互に関連し合って企業財務の姿を表わしているため、その分析に際しては、少なくともPL、BS、CSのすべてを対象にすべきであるといわれている。

在来工法

木造建築物の工法の一つ。
「在来工法」とは、「伝統工法」を母胎としながら、第二次大戦後の技術革新で新たに生まれた木造建築物の工法である。

この「在来工法」は、「木造軸組工法」「在来軸組工法」「在来木造」「木造軸組」などのさまざまな呼び方がされるが、その内容は基本的に同じである。

「在来工法」の特徴としては次のことが挙げられる。

1.鉄筋コンクリート製の「布基礎」(連続フーチング基礎)を採用し、土台と布基礎をアンカーボルトで緊結する
2.筋かいを入れて、プレート等で止めつけることにより、軸組全体を安定させる
3.壁材に構造用合板を採用する等により、壁に強度を与える
4.その他、材の接合部(仕口)に多様な金物を用いて、軸組全体を補強する

これらの工夫により、構造的に強い木造建築が初めて可能となった。

ちなみに建築基準法では、木造建築物についてさまざまなルールを設けているが、これらのルールの前提として想定されているのはこの「在来工法」である。

在留カード

日本に中長期間在留する者に対して交付されるカード。出入国管理および難民認定法に基づくカードで、在留資格および在留期間の適法性を証明するとともに、その交付は在留を許可する行為であるとされている。

在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否などが記載されている。また、16歳以上の者については顔写真も表示されている。

なお、中長期間在留する者とは、3ヵ月を超える在留期間が認められた者(外交官等を除く)が該当する。

材料設計

建築物の要求性能に応えるための最適な材料を決定する技術。英語でmaterials design という。

建築物はライフサイクルのなかでさまざまな性能が要求される。それに応えるためには、構造や設備を最適化するだけでなく、用いる材料についても要求性能に適するよう決定しなければならない。材料設計は、このような考え方に基づいて建築材料を決定する技術である。

重要なのは、材料を評価し選定する手法であるが、建築物に要求される多様な性能を総合的に捉えること、工事や維持補修の作業と整合する必要があることなど、設計に当たって考慮すべきことが多く、手法の標準化が難しい。また、材料の調達コスト、廃棄コストなどにも留意しなければならない。

なお、材料設計は、商品開発においても採用されている技術である。この場合には、要求性能に応じて新たな素材を開発し製造することもある。

座敷

和風家屋において、格式が高い敷の部屋を指す。一般に客間として使われるが、居間として利用される場合も多い。また、板の間に対して、畳を敷き詰めた和風の部屋(畳の間)を指すこともある。

雑種地

不動産登記における地目の一つ。地目は、土地の表示に関する登記の登記事項で、法務省令で定められた土地の用途に即して指定されるが、雑種地は、田、畑、宅地、山林、原野など法務省令で特定された他の22種類の用途のいずれにも該当しない土地をいう。

露天の駐車場、資材置き場などがこれに当たる。

地目の変更は申請によって行なう。また、地目は筆を単位として主な用途によって定められるため、例えば一筆の土地が住宅の敷地と駐車場に使われていれば、その土地の地目は通常は宅地とされる。

なお、法務省令で定められた地目は次の通りである。
田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地

残地補償

同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、または使用することによって、残地の価格が減少、その他残地に関して損失が生ずるときは、起業者はその損失補償を行なわなければならない。これを「残地補償」という(土地収用法第74条)。

シアタールーム

映画などを見るための部屋で、一般に、大型スクリーンおよび音響装置が備え付けられている。

住宅内だけでなく、マンションの共用施設として設置されることもある。設置に当たっては、防音が重要となるほか、音響効果や照明に配慮する必要がある。

シェアオフィス

業務空間を共有して利用する事務所。シェアオフィスは和製英語で、英語ではshared (シェアド オフィス)officeという。

シェアオフィスは一般に賃借によって利用するが、その利用形態には、利用空間を特定せず時々で自由に利用するフリーアドレス方式や間仕切りのある専用の空間を使う方式がある。また、業務のための設備・備品を使うことができるほか、郵便物の受け取りや転送、電話の転送や秘書代行などの業務支援サービスが提供される場合も多い。

シェアサイクル

自転車を共有して利用すること。英語のshared cycle(シェアド サイクル)。都市内に設置された複数の駐輪場(サイクルポート)から自転車を借りて利用し、返却する仕組みである。

シェアサイクルは、いつでも利用でき、どのサイクルポートへも返却できることから、利用の自由度が高いとされている。会員制で運営されている場合が多い。

シェアハウス

複数の居住者・家族が一定の生活空間を共用する住宅をいう。一般に、台所、浴室、居間などを共用し、居住者同士のコミュニケーションが生まれることとなる。賃貸住宅として供給されているが、居住スタイルの選択肢の拡大に応える住宅形態のひとつである。

シェアリングエコノミー

空き状態にあるモノや技能の個人間の貸し借りを、情報通信システムを活用して仲介するサービス。英語でSharing economy。

シェアリングエコノミーはアメリカで発達した。仲介されている貸し借りの例としては、住宅を宿泊施設として貸すこと(Airbnb等)、自動車のドライバーを移動希望者に提供すること(Uber等)、空いている自動車を貸すこと(RelayRides等)、家事労働や大工作業を提供すること(TaskRabbit等)などがある。

個人間の貸し借りは古くから行なわれているが、シェアリングエコノミーの特徴は、情報通信システムを活用して余剰と需要とを的確に結び付けること、所有以外の選択肢を拡大すること、協働して消費する社会的な交流を提供することなどとされる。

シェルター

人を保護する施設や場所。英語のshelter。

シェルターは、外からの侵害を防ぎ安全を保つ機能を備えていて、危険や攻撃から保護するための施設だけでなく、暑熱、風雨などを避けるための場所や設備をも含む幅広い用語である。

たとえば、駆け込み寺、難民収容所、水屋、避難小屋などは、すべてシェルターに該当する。

シェルフ

棚または棚板。英語のshelf。

棚板のみを備え、背板や扉がない開放的な収納家具を指す用語として使われる場合がある。

シェード

日除け。英語でShade。

光を遮って陰をつくり出す設備でその形態は幅広いが、カーテン生地を上下に移動させて遮光するものを指す言葉として使われることもある。

資格証明書

会社の代表取締役などが商業登記簿に登記されていることを、登記所が証明する書面のこと。
正式名称は「登記事項に変更及びある事項の登記がないことの証明書」という。

この証明書に記載されるのは、一般的に次の事項である。

1.会社の商号
2.本店の住所
3.代表取締役の氏名と住所
4.上記1.から3.に変更がないこと
5.共同代表の登記がないこと
6.上記1.から5.について登記所の証明があること

市街化区域

都市計画によって定められた、すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいう。

一定の都市計画区域について、都道府県知事が区域区分を決定することによって定まる。

市街化区域内では、必ず用途地域が指定されている。

市街化調整区域

都市計画によって定められた、市街化を抑制すべき区域をいう。

一定の都市計画区域について、都道府県知事が区域区分を決定することによって定まる。

市街化調整区域内で土地の区画形質の変更をする場合には、原則として許可を要する(開発許可)。そして開発許可に当たっては特別な事情にある場合を除いて住宅のための宅地造成等は許可されないなど、市街化調整区域内での開発・建築行為を抑制する規制が適用される。

市街地開発事業

市街地を開発または整備する事業のこと。

具体的には、都市計画法第12条に掲げられた次の6種類の事業を「市街地開発事業」と呼ぶ。

1.都市再開発法 による「市街地再開発事業」
2.大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法による「住宅街区整備事業
3.土地区画整理法による「土地区画整理事業
4.新住宅市街地開発法による「新住宅市街地開発事業
5.首都圏の近郊整備地帯および都市開発区域の整備に関する法律による「工業団地造成事業」または近畿圏の近郊整備区域および都市開発区域の整備及び開発に関する法律による「工業団地造成事業」
6.新都市基盤整備法 による「新都市基盤整備事業

1)市街地開発事業の決定主体
市街地開発事業は、市街地を開発・整備する事業であり、原則として都道府県知事が主体となって都市計画として決定する(ただし比較的小規模な「市街地再開発事業」「住宅街区整備事業」「土地区画整理事業」については市町村が決定する(都市計画法施行令第10条)。

2)市街地開発事業を定めることができる土地
市街地開発事業は、市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)においてのみ定めることができる(都市計画法第13条第1項第12号)。

3)建築等の制限
市街地開発事業が都市計画として決定されると、その市街地開発事業が実行される土地(これを「市街地開発事業の施行区域」という)では、その事業の妨げになるような建築物の建築等が厳しく制限される(詳しくは市街地開発事業の施行区域内の制限へ)。

4)施行予定者を定めたとき
上記4.5.6.の市街地開発事業については、都市計画で「施行予定者」を定めることが可能である(都市計画法第12条第5項)。
「施行予定者」を定めた場合には、原則として2年以内に都市計画事業の認可を申請しなければならない(都市計画法第60条の2)。
また、いったん施行予定者を定めた以上は、施行予定者を定めないものへと計画を変更することは許されない(都市計画法第12条第6項)。

市街地開発事業等予定区域

市街地開発事業都市施設に関する都市計画が将来的に策定されることが予定されている区域のこと。

具体的には、次の6種類の予定区域が法定されている(都市計画法第12条の2)。

1.新住宅市街地開発事業の予定区域
2.工業団地造成事業の予定区域
3.新都市基盤整備事業の予定区域
4.区域の面積が20ha以上の一団地の住宅施設の予定区域
5.一団地の官公庁施設の予定区域
6.流通業務団地の予定区域

1)予定区域の趣旨
市街地開発事業等予定区域とは、3年以内に「市街地開発事業に関する都市計画」または「都市施設に関する都市計画」(以下「本来の都市計画」と呼ぶ)が決定される区域である。
つまり、市街地開発事業等予定区域は、「本来の都市計画」が決定されるまでの暫定的な区域であるということができる。
通常の場合、事業や施設に関する都市計画を決定するまでには詳細な計画策定が必要であるが、その策定期間内に買い占めや、無秩序な開発などの現象が発生する恐れある。そこで、先に「予定区域」を定めることによって、そうした問題を回避することが意図されている。なお、予定区域を定める主体は都道府県である(都市計画法第15条第1項第7号)。

2)予定区域から本来の都市計画への移行
上記1)で述べたように予定区域は、あくまで暫定的な区域であるので、本来の都市計画への移行が法律で義務付けられている。具体的には、予定区域に関する都市計画の告示があった日から3年以内に、市街地開発事業または都市施設に関する都市計画(本来の都市計画)を定めなければならない(都市計画法第12条の2第4項)。
3年以内に本来の都市計画が決定されると、その後2年以内に都市計画事業の認可の申請がされて、いよいよ市街地開発事業や施設の整備事業が実際に施行されることになる(都市計画法第60条の2)。

3)予定区域から本来の都市計画へ移行しなかったとき
もしも3年以内に本来の都市計画が定められないときは、予定区域は効力を失う(都市計画法第12条の2第5項)。
このようにして予定区域が効力を失ったことにより損害を受けた土地所有者等がある場合には、本来の都市計画の決定をすべき者(原則として都道府県)がその損失を補償しなければならない(都市計画法第52条の5第1項)。

4)施行予定者
予定区域では「施行予定者」を必ず定めなければならない(都市計画法第12条の2第3項)。施行予定者とは、市街地開発事業や施設の整備事業を将来的に施行する予定の者であり、国の機関・地方公共団体・そのほかの者から選ばれる(都市計画法第12条の2第3項)。
この予定区域における施行予定者は、上記2)のように「本来の都市計画」が決定される際には、「本来の都市計画」における施行予定者へとそのまま移行する(都市計画法第12条の3)。

5)予定区域内での建築等の制限
上記1)で述べたように、予定区域では開発・買い占めなどを防止する必要があるので、予定区域内では建築物建築等が厳しく制限される(詳しくは市街地開発事業等予定区域の区域内の制限へ)。

6)市街地開発事業に関する予定区域を定めることができる土地
市街地開発事業に関する予定区域(上記1.2.3.)については、市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)においてのみ定めることができる(都市計画法第13条第1項第13号)。

市街地開発事業等予定区域の区域内の制限

都市計画の告示があった日から、市街地開発事業等予定区域において適用される制限のこと。

なお、「施行予定者」が定められている都市施設、「施行予定者」が定められている市街地開発事業についても同一の制限が適用される(詳しくは下記7.へ)。

1.趣旨
市街地開発事業等予定区域の都市計画が告示されると、その告示の日から3年以内に都市施設または市街地開発事業に関する「本来の都市計画」が決定される。さらにその後2年以内に、都市計画事業の認可が申請されなければならない。
従って、市街地開発事業等予定区域では早い時期に、都市施設整備事業・市街地開発事業に係る工事等が実際に開始される。
そこで、市街地開発事業等予定区域では、こうした近い将来の事業の実行に対して障害となる恐れのある行為を厳しく制限することにしているのである。

2.制限のあらまし
都市計画の告示があった日以降、次の1)および2)の制限が課せられる。その反面、次の3)により土地所有者は土地の買い取りを要求することができる。
1)建築物建築工作物の建設、土地の形質変更の制限(下記3.4.へ)
2)施行予定者による「土地建物等の先買い」(下記5.へ)
3)土地所有者から施行予定者に対する「土地の買取請求」(下記6.へ)

3.建築物の建築、工作物の建設、土地の形質変更の制限
都市計画の告示があった日以降、建築・建設・土地の形質変更を行なうには知事(指定都市等では市長)の許可が必要である(都市計画法第52条の2第1項)。この許可について次の点が重要である。
1)建築物の建築には知事(指定都市等では市長)の許可が必要。なお、ここでいう「建築」とは「新築、増築、改築、移転」を指す(都市計画法第4条第10項)。
2)工作物の建設、土地の形質変更(宅地造成等)にも知事(指定都市等では市長)の許可が必要。
3)容易に移転除却ができる建築物や都市計画に適合した建築物であっても、知事(指定都市等では市長)は建築を不許可とすることができる。
4)軽易な行為などを行なう場合には、知事(指定都市等では市長)の許可は不要(下記5.へ)。

4.許可が不要とされる要件
管理行為・軽易な行為、非常災害のため応急措置として行なう行為、都市計画事業の施行として行なう行為については、許可が不要である(都市計画法第52条の2第1項但書)。
管理行為・軽易な行為としては、「車庫、物置その他これらに類する附属建築物(木造で2階以下かつ地階を有しないものに限る)の改築または移転」などが定められている(都市計画法施行令第36条の2)。

5.土地建物等の先買い
土地建物等の有償譲渡(※)をしようとする者は、事前に施行予定者(国の機関・都道府県・市町村・その他の者)に届出をしなければならない。施行予定者は、この届出のあった土地建物等を優先的に買い取ることができる。
この先買い制度は、施行予定者が先買い制度に関する公告を行なった日の翌日から10日を経過した日から適用される(都市計画法第52条の3)。
(※)ここでいう「土地建物等の有償譲渡」とは「土地の有償譲渡」または「土地と建築物等を一体とした有償譲渡」を指す。従って、建築物のみを有償譲渡する場合には、先買い制度は適用されない。また有償譲渡とは「売却」「交換」を指す。

6.土地の買取請求
土地所有者は、施行予定者(国の機関・都道府県・市町村・その他の者)に対して、土地を時価で買い取るべきことを、いつでも請求できる。
ただし、その土地に建築物・工作物・立木法により登記された立木がある場合には、この買取請求ができない。また、その土地に他人の権利(地上権賃借権抵当権など)が設定されている場合にも、この買取請求ができない(都市計画法第52条の4)。

7.「施行予定者」が定められている都市施設・市街地開発事業について
「施行予定者」が定められている都市施設、「施行予定者」が定められている市街地開発事業については、都市計画法第60条の2第1項の規定により、都市計画の告示から2年以内に都市計画事業の認可を申請しなければならない。このため、厳しい制限を課す必要があるので、上記2.から6.とまったく同一の制限が課せられている(都市計画法第57条の2から第57条の5まで)。
(なお、施行予定者が定められていない都市施設・市街地開発事業については「都市計画施設の区域内の制限」「市街地開発事業の施行区域内の制限」を参照のこと)

市街地開発事業の施行区域内の制限

都市計画の告示があった日から、都市計画で定められた市街地開発事業の施行区域において適用される建築制限のこと。
(市街地開発事業の「施行区域」とは、市街地開発事業が実行される予定の区域という意味であり、市街地開発事業の「地理的な範囲」を指す言葉である(都市計 画法第12条第2項)。この「施行区域」において実際に工事等が開始されるのは、都市計画事業の認可を受けた日以降である。)

1.趣旨
都市計画の告示都市計画法第20条第1項)により市街地開発事業の都市計画が正式に効力を生ずると、その市街地開発事業の施行区域内では、近い将来において市街地開発事業に関する工事等が実行されることとなる。
そこで、こうした将来の事業の実行に対して障害となる恐れのある行為(建築行為)は原則的に禁止しておくのが望ましい。このような理由により、都市計画の告示の日以降は、市街地開発事業の施行区域では下記2.から6.の建築制限が適用されるのである。
(なお、都市施設の区域でも下記2.から6.と同一の建築制限が行なわれる。「都市計画施設の区域内の制限」参照)

2.建築制限のあらまし
都市計画の告示があった日以降、市街地開発事業の施行区域において、建築物建築するためには知事(指定都市等では市長)の許可が必要である(都市計画法第53条第1項)。この許可について次の点が重要である。
1)建築物の建築には許可が必要。ここで建築とは「新築、増築、改築、移転」を指す(都市計画法第4条第10項)。
2)土地の形質変更(宅地造成等)は許可が不要。工作物の建設も許可が不要。
3)容易に移転除却ができる建築物や都市計画に適合した建築物については、知事(指定都市等では市長)は必ず建築を許可しなければならない(下記3.へ)。
4)軽易な行為などを行なう場合には、知事(指定都市等では市長)の許可は不要(下記4.へ)。
5)知事(指定都市等では市長)が指定した土地(これを「事業予定地」という)では、上記ウ)が適用されない(下記5.へ)。
6)市街地開発事業の都市計画に「施行予定者」が定められている場合には、さらに厳しい制限が課せられる(下記6.へ)。

3.建築が許可される要件
市街地開発事業の施行区域内の建築制限は、将来の事業の実行において障害になるような建築を排除する趣旨であるので、障害にならない建築については知事(指定都市等では市長)は必ず許可をしなければならない。
具体的には、次の1)または2)のどちらか一方に該当すれば必ず許可される(都市計画法第54条)。
1)都市計画に適合すること(市街地開発事業に関する都市計画に適合しているような建築は排除する必要がないので、許可される)
2)建築しようとする建築物の主要構造部が木造・鉄骨造等で、階数が2階以下で地階を有しないものであり、かつ容易に移転しまたは除却できること(木造・鉄骨造等とは「木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造」を指す。すなわち移転除却が容易な構造のことである)

4.建築許可が不要とされる要件
管理行為、軽易な行為(※)、非常災害のため応急措置として行なう行為、都市計画事業の施行として行なう行為については、建築の許可が不要である(都市計画法第53条第1項)。
(※軽易な行為として「木造で階数が2以下で地階を有しない建築物の改築」「木造で階数が2以下で地階を有しない建築物の移転」が定められている)

5.事業予定地について
4種類の市街地開発事業の施行区域内の土地はすべて「事業予定地」と呼ばれる(都市計画法第55条第1項)(※1)。この事業予定地では、上記3.の要件を満たす建築であっても不許可となる場合がある(詳しくは事業予定地内の制限へ)。
(※1 4種類の市街地開発事業とは「市街地再開発事業」「住宅街区整備事業」「新住宅市街地開発事業」「工業団地造成事業」)

6.施行予定者が定められている場合について
市街地開発事業の都市計画において「施行予定者」が定められている場合には、さらに厳しい制限が課せられる(詳しくは市街地開発事業等予定区域の区域内の制限へ)。

市街地再開発事業

都市計画で定められた市街地開発事業の一つで、市街地の合理的で高度な利用と都市機能の更新を目的として実施される事業をいう。

既成市街地において、細分化されていた敷地の統合・共同化、共同建築物の建設、公共施設の整備などを行なうことにより、都市空間の高度な利用を実現する役割を担う。

事業の方法は、第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業の2つがある。

第一種市街地再開発事業は、従前の権利を、原則として事業により新たに建設された共同建築物に対する相応の権利に変換する方法(権利変換方式)で行なわれる。このようにして与えられた建物に対する権利を「権利床」という。

一方、第二種市街地再開発事業は、第一種市街地再開発事業よりも緊急性が大きいと認められる場合に実施される。施行区域内の土地・建物等を事業施行者がいったんすべて買収し(最終的には収用できる)、買収によって権利を失う者は、希望により、事業によって新たに建設される建物に対する相応の権利を得る方法(管理処分方式)で行なわれる。

いずれの方法によっても、既成市街地における輻輳(ふくそう)したさまざまな権利を建物に対する権利へと変えるという権利調整が必要となる。

また、事業に要する資金は、原則として新たに建設する建物の処分によって賄うことになる。

なお、事業の仕組みは、「都市再開発法」に規定されている。

敷居

開口部の下部に設けられる水平材。門の内外を仕切ったり、部屋を区切るために敷く横材で、同時に建具を受ける役目もする。

建具の受け方は、戸の開閉形式によって異なり、レールを上に設けたり、溝を彫る等の手法がある。略して「敷き」とも。

敷金

建物賃貸借契約を新規に締結する際に、借主から貸主に対して、次のような目的のために預けられる金銭。

1.賃料の不払い・未払いに対する担保
2.契約により借主が負担すべき修繕費用や原状回復費用の前払い

将来契約が終了した場合には、上記1.や2.の金額を控除した残額が、借主に対して退去後に返還される。なお、関西等では「敷引」の慣行がある。

敷金返還請求権

借主が貸主に対して敷金の返還を請求できる権利。賃貸借契約が終了して貸主が建物の返還を受けたときや、賃借権を譲渡したときに請求できる。

特に、賃借権が譲渡された場合には(譲渡について貸主の承諾が必要)、旧借主は、譲渡によって賃貸借関係から離脱するので敷金の返還を請求することができ、その敷金返還請求権は新賃借人に承継されないことに注意が必要である。

敷地

建築物のある土地のことを「敷地」という。

なお、同一の敷地の上に2つの建築物がある場合には、建築基準法では、2つの建築物が用途上分けられないときは、同一敷地にあるものとみなすことになっている(建築基準法施行令1条)。
例えば、ある人の所有地の上に「住宅」と「物置」が別々に建っている場合は、この2つは用途上不可分であるので、別々の敷地上に建てたと主張することはできない、ということである。

ところで、建築基準法では「敷地」が衛生的で安全であるように、次のようなルールを設定しているので注意したい(建築基準法19条)。

1.敷地は、道より高くなければならない(ただし排水や防湿の措置を取れば可)
2.敷地が、湿潤な土地や出水の多い土地であるときは、盛り土や地盤の改良を行なう。
3.敷地には、雨水と汚水を外部に排出する仕組み(下水道など)をしなければならない。
4.崖崩れの被害にあう恐れがあるときは、擁壁(ようへき)の設置などをしなければならない。

敷地延長

ある土地が、狭い通路を通じて道路に出ることができるような形状になっているとき、その通路の部分を「敷地延長」と呼ぶ。

また、こうした狭い通路を持つ土地全体のことを「敷地延長」と呼ぶこともある。
一方、その形状が旗に竿を付けた形に似ていることから、こうした土地のことを「旗竿地」と呼ぶこともある。

敷地権

一棟の区分所有建物敷地に関する権利をいい、登記によって確定する。

分譲マンションなどの区分所有建物を所有するには、建物自体の所有権区分所有権)と建物の敷地を利用する権利(所有権や借地権であり、敷地利用権といわれる)とを必要とするが、この区分所有権と敷地利用権は原則として分離して処分できないとされており、そのような分離不能な敷地利用権として登記された権利が敷地権である。

敷地権が登記されれば、建物の専有部分の権利変動等の登記に当たっては、敷地利用権に関する登記は省略される。両方の権利が一体化されている効果であり、区分所有建物の取引に伴う手続きが簡略なものとなる。

敷地権である旨の登記

一棟の建物を区分した各部分のことを、不動産登記法では区分建物と呼ぶ。
また、区分建物がその敷地を利用するための法律上の権利(例えば所有権共有持分)のことを、敷地利用権と呼ぶ。

区分建物と敷地利用権は、別々に処分することが可能であるとすると、権利関係がいたずらに錯綜する可能性があるので、法律(建物の区分所有等に関する法律第22条)では、区分建物と敷地利用権を常に一体で処分することを原則的に義務付けている。

そこで不動産登記法では、区分建物の敷地である土地については、「敷地権である旨の登記」という特殊な登記を記載することとしている。土地の登記記録において、「敷地権である旨の登記」がなされて以降は、区分建物と敷地利用権が常に一体で処分されることを明確にしている。

また、区分建物の登記記録においても、敷地権の内容が表示される(詳細は「敷地権の表示の登記」へ)。

敷地権の表示の登記

不動産登記法では、区分建物敷地である土地には、「敷地権である旨の登記」という特殊な登記を記載することとしている。
この「敷地権である旨の登記」がなされるとき、その敷地上に存在する区分建物(および区分建物が属する一棟の建物)について、次の事項が表示される。これを「敷地権の表示の登記」という。

1.区分建物の登記記録表題部
敷地権の種類(所有権地上権か等)、敷地権の割合(その区分建物所有者が有する土地の権利の持分割合)

2.一棟の建物の登記記録の表題部
その敷地全体の所在・地番地目地積など

敷地面積の制限

第一種第二種低層住居専用地域では、建築物敷地面積を一定以上としなければならない場合がある。この「敷地面積の制限」は都市計画で 規定される。

「敷地面積の制限」は、1つの広い敷地を複数に分割してしまうようなミニ開発を防止し、良好な住環境を保存するために 設けられた制度である。
都市計画で「敷地面積の制限」が規定された場合、その都市計画が定められた区域内では、建築物を建築する敷地は最低限度以上の面積でなければならないこと になる。

この敷地面積の最低限度は、100平方メートルと定められることが多いようである。法律によればこの最低限度は最大でも200平方メートルとされて いる(建築基準法54条の2)。

なお、都市計画で「敷地面積の制限」が定められると、すでに存在している敷地面積の狭い建築物は都市計画に適合せず、違法となってしまうが、法律ではこのよう なケースには「敷地面積の制限」を適用しないという救済措置を設けている(建築基準法54条の2)。ただし、このような敷地面積の最低限度を下回る既存建築物については、敷地の分割をすることはできなくなる(建築基準法54条の2)。

敷地面積

敷地の水平投影面積のこと。
従って、傾斜地・崖地等では敷地面積はあくまで水平面に投影して測定した面積である(建築基準法施行令2条1項1号)。

また、いわゆる2項道路に接している土地では、土地の一部を「敷地面積」に算入することができない(建築基準法施行令2条1項1号但し書き)。
従って、2項道路に面した土地では、建築物を建てる際には、見た目よりも敷地が狭いものとして取り扱われることになるので注意したい。

敷地利用権

分譲マンションのような区分所有建物において、区分所有者が持っている土地に関する権利のことを「敷地利用権」という(区分所有法第2条)。

区分所有建物では、その敷地は区分所有者全員の共有とされている。
従って、敷地利用権とは、区分所有者が持っている「土地の共有持分」といい換えることができる。

敷地利用権と専有部分の一体化

分譲マンションなどの区分所有建物において、区分所有者が土地に関する権利と建物に関する権利を切り離して売却すること等が禁止されていることを指す。

分譲マンションなどの区分所有建物では、区分所有者は次の3つの権利を持っている。

1.専有部分所有権
2.共用部分共有持分
3.土地の共有持分(これを敷地利用権という)

この3つの権利のうち、1.の専有部分の所有権と3.の敷地利用権を分離して処分することは、区分所有法により原則的に禁止されている(区分所有法第22条)。(なお1.と2.を分離することも区分所有法第15条により原則的に禁止されている)

ただし管理規約で区分所有法第22条とは異なる定めを置くこともできるが、通常は管理規約において「分離して処分してはならない」という定めを設けている。

この結果、例えばある区分所有者が、敷地利用権だけを第三者に売却しようとしても、区分所有法および管理規約の定めにより、売却することができないことになる。
またある区分所有者が、借入金の担保とするために、敷地利用権だけに抵当権を設定しようとしても、区分所有法および管理規約の定めにより、抵当権設定ができないことになる。

このような「敷地利用権と専有部分の一体化」は1983(昭和58)年の区分所有法の大改正により導入された制度である(施行は1984(昭和59)年1月1日)。
それ以前は、区分所有建物でも、建物の権利と土地の権利を別々に処分することが可能であっため、分譲マンションの土地登記簿には、各住戸の売買や担保設定のたびに所有権移転登記や抵当権設定登記が記入された。
そのため住戸数が多い場合には、マンションの土地登記簿の記載内容が膨大となり、登記事務の煩雑化を招き、記載ミスや読み間違いが起きるという事態になっていた。

こうした問題に対処するため、「敷地利用権と専有部分の一体化」が導入された。これにより、敷地利用権が常に専有部分と一緒に売買等されることになったので、区分所有建物の建物登記簿のみに所有権移転登記等を記載し、土地登記簿にはこれらの登記を記載しない扱いとした(不動産登記法第93条の4「敷地権たる旨の登記」)。
こうして土地登記簿への記載が全面的に省略された結果、登記事務の大幅な簡略化が実現したのである。

敷引

借主から貸主に対して交付された敷金のうち、契約時点で一定の部分を借主に返還しないことを特約する慣行がある場合の、この返還しない部分をいう。

関西地方の慣行であるとされる。

仕口

水平材・垂直材・斜材をさまざまに組み合わせて使用するとき、それらの材同士の接合部を「仕口」という。

「仕口」は軸組全体の強度を大きく左右するものであるので、一般に金物で補強することとされている。

資産運用

資産(金銭、金融商品、不動産など)を活用して収益を得ることをいう。

資産を運用する方法は資産の性質に応じて異なるが、大別すると、株式、投資信託、REITなどの金融商品を保有・売買する方法と、不動産(土地・建物)を活用する方法がある。また、不動産を活用する場合には、そのまま賃貸して賃料を得るほか、不動産開発によって不動産の価値を高めて賃貸・売却することも選択肢となっている。

また、資産を運用する場合の収益源に着目すると、利息、株式配当金、不動産賃料など資産が生み出すキャッシュフローを得るのか、株式や不動産の売買など資産取引等によって差益を生み出す(損失を被ることもある)のかという違いがある。

資産運用型(不動産の証券化における)

不動産の証券化における類型の一つで、複数の不動産を売買・運用して、その利益を投資家に配分する仕組みをいう。

金融商品を開発して投資家に販売することを主な目的とした不動産の証券化に用いられることが多く、JREITも資産運用型の仕組みを活用している。不動産の運用収益を高めることに焦点がある。

これに対して、特定の不動産を流動化して資金を調達することを主な目的とした仕組みを、資産流動化型という。

資産価値

財産として評価した価額。おおむね市場での取引価格に等しい。これに対して、資産の利用によって得る便益に着目して評価した価額を「利用価値」という場合がある。

不動産の資産価値は、土地と建物を分けて算定することが多い。土地の資産価値は立地、区画形質などによって、建物の資産価値は立地、デザイン、管理状態などによって決まると考えられている。一般に、土地の資産価値は経年的に変化しない一方、建物の資産価値は建築後の時間経過とともに減少するとされる。ただし、不動産の資産価値は、通常、土地と建物が一体となって形成しているから、両者を截然と分けて評価することには限界がある。

資産担保金融

資金調達の方法の一つで、特定の資産の価値や収益力を裏付けに資金を調達することをいう。

不動産債権などの資産をもとの所有者から分離し、その資産から生じるキャッシュフローを原資として証券を発行する方法が主流であり、その発行される証券はABS(Asset Backed Security、資産担保証券)といわれる。これによって、もとの所有者は、責任が遡及しない形(ノンリコース)で資金を調達することができる。

これに対して、通常の融資における担保資産は、単に最優先でそれを償還に充てることを保証するだけで、返済のための原資は担保に供した資産に限定されない。責任が遡及(リコース)するのである。

資産の流動化に関する法律(資産流動化法)

特定目的会社または特定目的信託を用いて資産を流動化するための仕組みを定めた法律(1998(平成10)年6月公布)。SPC法ともいわれる。

特定目的会社(SPC)や特定目的信託が、不動産などの資産を保有・運用し、その収益を裏付けとして証券や信託受益権を発行する(これにより資産が流動化される)場合の手続きやルールを決めている。

当初、流動化の対象となる資産が限定されていたが、2001(平成13)年4月の改正で、すべての財産権を対象とした流動化が可能となった。資産の有効的な活用や、多様な金融商品の開発に当たって重要な役割を果たす法律である。

資産流動化型(不動産の証券化における)

不動産の証券化における類型の一つで、特定の不動産を流動化して資金を調達することを主な目的とした仕組みをいう。

保有する資産を特定目的会社に譲渡し、または特定目的信託に供して、その資産を裏付けとした証券等を発行することによって資産を資金化する手法である。

しかしながら、不動産の流動化に当たっては不動産の売買・運用を伴うし、資産を運用してその利益を投資家に配分することは結果として資産の流動化に資する。両者に際立った差はないが、その主な違いは、証券化するための仕組みの根拠となる法律である。「資産流動化型」の仕組みは「資産の流動化に関する法律(資産流動化法)」により、「資産運用型」の仕組みは「投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)」により構築される。前者の仕組みによるSPEが特定目的会社(SPC)や特定目的信託(SPT)であり、後者の仕組みによるSPEが投資法人や投資信託である。

指示(宅地建物取引業法による指示)

監督処分の一つで、宅地建物取引業者宅地建物取引士に対して、一定の作為または不作為(ある行為をすること、または行為をしてはならないこと)を命令することをいう。

指導と異なり、法的な強制力を伴い、指示に違反すると、罰則が課せられることがあるほか、原則的に、営業停止、免許取消などの新たな監督処分を受けることとなる。

詳しくは、「監督処分」を参照。

止水栓

配水管の途中に設置された水流の開閉栓。蛇口は配管の端末に取り付けられるが、止水栓は蛇口より上流の位置に設置され、キッチン、浴室、トイレ等水を使う設備を修理・改造するときなどに、事前に閉めて水流を遮断する役割を担っている。また、水道管を住戸に繋ぐ場所に設置される元栓も止水栓である。

システムキッチン

調理のための設備・器具を一体化した台所をいう。調理台、流し台、コンロ、収納スペースなどの部材を組み合わせたうえで、天板をのせることによって全体が一つにまとめられている。これによってデザインの統合や空間の有効利用を図ることができるとされる。

なお、システムキッチンという言葉は、和製英語である。

史跡

記念物であって「貝塚・古墳・都城跡・城跡・旧宅等の遺跡で、わが国にとって歴史上・学術上価値の高いもの」に該当し、文部科学大臣が官報に告示することによって指定したものを「史跡」という(文化財保護法第109条)。

史跡等に関して、その現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼすような行為をしようとするものは文化庁長官の許可を受けなければならない(文化財保護法第125条)。

ただし、現状変更については維持の措置・非常災害のために必要な応急措置については許可を要しない。また、保存に影響を及ぼすような行為については影響が軽微であるときは許可を要しない。

自然環境保全地域

環境大臣が指定する、自然環境を保全する必要性が特に高い地域(自然環境保全法第22条)。
なお、「自然環境保全地域」は自然公園の区域を含まない。

「自然環境保全地域」に指定されると、建築物の建築、工作物の建築、宅地造成、海底の形状変更、土石採取、特別地区内の河川湖沼の水位・水量に影響を及ぼすような行為をする場合には、30日以上前に環境大臣へ届出をすることが必要となる(自然環境保全法第28条)。

また「自然環境保全地域」の中に特別地区が設けられることがある。この「特別地区」では建築物の建築、工作物の建築、宅地造成、海底の形状変更、土石採取、大臣の指定する湖沼・湿原の周囲1km以内で排水設備を設けての汚水や廃水の排出、大臣の指定する原野山林等での車・馬・動力船の使用と航空機の着陸などについては環境大臣の許可が必要である(自然環境保全法第25条)。

自然人

私法上の概念で、権利義務の主体となる個人のこと。法人に対する用語である。

すべての自然人は、出生によって権利義務の主体となるとされる。

自然素材(天然素材)

天然素材(自然素材)」を参照。

自然堤防

河川の氾濫によって形成された微高地。水はけが良く、古い集落が立地し、畑に利用されていることが多い。

自然堤防の表層部は周辺に比べて地盤が良好であるが、土地利用に当たっては、その下部に軟弱層があることに注意しなければならない。

下地補修

建物の大規模修繕等において壁の素材(下地)を修理する工事をいう。

まず下地の不具合を調査し、ひび割れ、破裂、浮きなど不具合の状態と下地の材質に応じて最適な修理方法を選択しなければならない。修繕工事において最も重要な工程のひとつである。

紫檀

古くから家具、建築材などに利用されている銘木。樹木はマメ科の熱帯産常緑高木で、木目は稠密、心材は堅く重く、紫紅色を呈し、耐久性に優れている。英語のローズウッド(rosewood)も同義である。

紫檀とされる樹種は厳密に決まってはいないが、ツルサイカチ属のいくつかの種とされ、それ以外の樹種は「紫檀系」とするのが通例である。

日本では三大唐木(東南アジア産の木材)の一つとして賞用されてきた。その用途は、高級家具、仏具、内装材、細工物、楽器などである。

質権

債権を保全するために、債権者が債務者(または物上保証人)から物を受け取って占有し、債務が弁済されなかったときにはその物を売却して、その売却価額から債権の弁済を受けることができるという担保物権のこと(民法第342条)。

なお、債権者が債務の弁済としてその物の所有権を取得するという方法を取ること(これを流質契約「りゅうしちけいやく」という)は民法第349条により原則的に禁止されている。ただし質屋営業法ではこの流質契約を認めている。
質権は質権が設定される対象により、動産質、不動産質権利質に分類される。

しかし動産を質に取ることは現在でも質屋で広く行なわれているが、不動産を質に取ることは現代ではほとんどあり得ない。従って不動産の実務上で重要なのは、権利に対する質権である。

例えば、金融機関が不動産所有者に融資をする場合には、不動産所有者が火災保険に加入し、その火災保険金の請求権について金融機関が質権を設定するのが一般的な慣行である。
つまり、万一不動産が火災にあった場合には、金融機関はこの質権を実行し、火災保険金から融資の優先返済を受けるということである。

市町村の建設に関する基本構想

地方自治法・国土利用計画法の規定にもとづく市町村の構想・計画のこと。
具体的には、地方自治法第2条第4項に基づく「市町村の基本構想」および国土利用計画法第8条に基づく「市町村計画」を指している(※建設省(現・国土交通省)通知にもとづく「市町村の都市計画に関する基本的な方針の策定等について」平成5年6月25日建設省都計発第95号各都道府県知事・各政令指定都市都市計画担当部局長宛建設省都市局都市計画課長通知)。

一般的には「市町村の建設に関する基本構想」は、「○○市総合計画」「○○市基本計画」「○○市基本構想」のように呼称されていることが多い。

「市町村の建設に関する基本構想」は、「市町村の都市計画に関する基本的な方針」(いわゆるマスタープラン)の上位に位置付けられている。
「市町村の都市計画に関する基本的な方針」を策定・決定するにあたっては、市町村の議会の議決を経て定められた「市町村の建設に関する基本構想」に即したものとしなければならない(都市計画法第18条の2第1項)。

市町村の都市計画に関する基本的な方針

市町村が都市計画を決定するにあたって指針となる市町村の都市計画の総合的なプランのこと。
「都市計画マスタープラン」、「都市マスタープラン」、「マスタープラン」、「基本方針」とも呼ばれる。

「市町村の都市計画に関する基本的な方針」は、1992(平成4)年の都市計画法の改正により導入された制度である。その概要は次の通り。

1.意義
「市町村の都市計画に関する基本的な方針」(以下「基本方針」と呼ぶ)は、市町村の都市計画の総合的なプランである。市町村は土地利用・都市施設・都市開発事業などの都市計画を決定するにあたっては、この「基本方針」に即して都市計画を決定しなければならない(都市計画法第18条の2第4項)。

2.他の計画等との関係
「基本方針」は、市町村の建設に関する基本構想並びに都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に即したものでなければならない(都市計画法第18条の2第1項)。

3.策定方法
「基本方針」を策定する主体は市町村である。市町村はこの「基本方針」を定める責務を負う(都市計画法第18条の2第1項)。
「基本方針」の決定に際しては、あらかじめ、地方自治法に基づき市町村に附属機関として置かれている市町村審議会の議を経る(※この点は、建設省(現・国土交通省)通知に基づく(「市町村の都市計画に関する基本的な方針について」平成5年6月25日建設省都計発第94号各都道府県知事・各政令指定都市の長宛建設省都市局長通知)。
【ただし「基本方針」は都市計画ではないので、「基本方針」には都市計画の決定手続は適用されない】
「基本方針」を決定したときは、遅滞なく公表し、都道府県知事に通知しなければならない(都市計画法第18条の2第3項)。

4.住民意見の反映措置
市町村が「基本方針」を定めようとするときは、あらかじめ住民の意見を反映させるために必要な措置(例えば公聴会の開催等)を講じなければならない(都市計画法第18条の2第2項)。

5.主な内容と構成
「基本方針」は標準的には次の内容から構成される(上記3.内※の建設省(現・国土交通省)通知より要約)。
1)基本方針は本文および附属図面からなる。
2)本文では、将来の生活像を想定し、目指すべき都市像、その都市像の実現のための主要課題、課題に対応した整備方針などを「全体構想」として明らかにする。
3)さらに本文では、地域別に、あるべき市街地像などの地域像、実施されるべき施策の方向を「地域別構想」として明らかにする。
4)さらに構想の実現に向けて、定めるべき都市計画の種類・実施すべき都市計画事業の種類、これらの決定・実施の時期などを明らかにしたプログラムを伴うものにするよう努める。

漆喰

消石灰に糊剤を混ぜたもの。
日本古来の左官材料として使用される。

シックハウス症候群

住宅に起因する、倦怠感、めまい、頭痛、湿疹、のどの痛み、呼吸器疾患などの症状を総称していう。

汚染された住宅内の空気を吸引することによって発症する場合が多いとされ、建材や家具に含まれる有機溶剤や防腐剤、それらに類する揮発性有機化合物VOC、Volatile Organic Compounds)が汚染源とされるほか、カビや微生物による空気汚染も原因となるといわれている。

その対策として、住宅性能表示制度における空気環境としてホルムアルデヒド濃度を表示することとされているほか、建築基準において、居室を有する建築物については、居室内において化学物質の発散による衛生上の支障がないように建築材料、および換気設備についての一定の技術的基準に適合すべきとされている。これによって、マンションなど特に気密性の高い住宅においては、ホルムアルデヒドを発散する恐れのある建築材料を使用しない場合であっても、家具からの発散の恐れがあるため、原則として、常時換気が可能な構造の機械換気設備等の設置が義務付けられている。

シックハウス対策

シックハウス症候群(住宅の内部に居ることによって起きる、原因がはっきりしない体調不良)を防ぐために化学物質の室内濃度を抑制することをいう。

建築基準法には、シックハウス対策として次のような規定がある。

1)クロルピリホスを添加した建材の使用禁止
2)内装仕上げ建材について、ホルムアルデヒドを発散する建材の面積制限
3)原則としてすべての建築物に機械換気設備の設置
4)天井裏等について、ホルムアルデヒドの発散の少ない下地建材の使用または機械換気設備の設置

また、住宅性能表示においては、ア)ホルムアルデヒド対策(内装および天井裏等)、イ)換気対策、ウ)室内空気の化学物質の濃度等に関する項目を表示の対象としている。

失踪宣告

人が居所を去った後、長期間にわたって生死が不明である場合には、残された関係者はその後の生活を営むうえでさまざまな制約を強いられる結果となる。
そこで民法は、法律上その人が死亡したものとみなす制度を設けており、これを「失踪宣告」と呼ぶ(民法第30条)。

失踪宣告には、居所を去った後7年間生死不明であることを要件とする「普通失踪」と死亡の原因となるべき危難(戦争や船舶の沈没など)に遭遇したことを要件とする「特別失踪」という2種類がある。

失踪宣告を受けた場合、普通失踪については7年間の生死不明の期間が経過した時点で、特別失踪については危難の去った時点において、その人が死亡したものとみなされる(民法第31条)。

その結果、失踪宣告を受けた人について、死亡とみなされた時点から相続が開始することになる(民法882条)。
また死亡とみなされた時点において、婚姻(結婚)は当然に消滅する。

ただし姻族の関係(結婚によって生じた親戚関係)は当然に消滅するのではなく、配偶者が姻族関係の消滅の意思を表示する必要がある(民法728条)。

なお失踪宣告を受けるには、配偶者・相続人・保険金受取人などの利害関係者が家庭裁判所に請求する必要がある。要件を満たす請求があったとき、家庭裁判所は失踪の宣告をしなければならない(民法第30条)。

なおこのほかに、死亡が確実だが死体が確認できないという場合のために「認定死亡」という制度が用意されている(詳しくは認定死亡へ)。

失踪宣告の取消し

失踪宣告を受けた者が生存している場合(または失踪宣告によって死亡したとみなされる時期とは異なる時期に死亡していたことが判明した場合)には、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪宣告を取り消さなければならない(民法第32条第1項本文)。

この失踪宣告の取消しは、失踪宣告を受けた者が死亡したとみなされた時点にまで遡って、その効果を生ずる。具体的には、失踪宣告による死亡により発生した相続は無効となり、相続人は失踪者が生存していれば、相続財産を失踪者に返還する必要が生じる。

ただしこの点については、取消しの効果の制限という制度が設けられており、善意の相続人等が保護されている。

湿式壁

水を用いて施工した建物の壁をいう。鉄筋コンクリートや壁土、モルタルなど、伝統的な建築材料によって施工されるものは湿式壁である。堅牢性、遮音性等に優れるとされるが軽量化が難しい。

一方、石膏ボード使ったものを乾式壁という。

指定管理者制度

地方公共団体が設置する公の施設の管理を、民間事業者が担う仕組みをいう。

2003(平成15)年に地方自治法の改正によって導入された制度であり、施設の管理権限そのものを地方公共団体が指定する団体(指定管理者)に委任できることとした。委任の対象となる施設や管理者の指定手続きは条例で定められるが、指定管理者を公募したのち、あらかじめ定める基準に従って選定し、期間を定めて指定するのが一般的である。また、指定に当たっては、議会の議決を経なければならないとされている。

「公の施設」とは、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設であるとされ、文化施設、社会福祉施設、体育施設、観光施設などがこれに該当する。これらの施設については、原則として住民の利用を拒むことはできず、また、利用に関して不当な差別的取り扱いをしてはならないとされているが、指定管理者が管理する場合にもこの原則が適用される。

なお、指定管理者が管理する場合の管理の基準、利用料金の設定などの受任に当たっての条件は、条例に基づき、委任する地方公共団体との間の契約によって定められることとなる。また、指定管理者は、事業報告書を毎年度提出するなどの義務を負う。

指定緊急避難場所

災害が発生し、または発生する恐れがある場合にその危険から逃れるための避難場所をいい、災害の原因となる異常現象(洪水、津波など)の種類ごとに市町村長が指定し、公示される。

指定された避難場所の管理者は、場所の廃止や重要な変更について届けなければならないとされ、この制限は、宅地建物取引の営業における重要事項説明の対象とされている。

指定区域(土壌汚染対策法の~)

土壌の汚染状態が基準に適合していない土地として指定された区域。土壌汚染対策法に基づいて、土壌汚染状況調査の結果によって都道府県知事が指定する

指定区域は、次の2種類がある。

(1)要措置区域
土壌汚染の摂取経路があり健康被害が生じる恐れがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域。この区域に指定されると、健康被害を防止するために必要な措置を講じなければならない。また、土地の形質変更は原則禁止される。

(2)形質変更時要届出区域
土壌汚染の摂取経路がなく、健康被害が生じる恐れがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域(摂取経路の遮断が行なわれた区域を含む)。この区域では、土地の形質変更時に都道府県知事に計画の届け出が必要である。

指定区域は公示され、台帳に記載して公衆の閲覧に供される。

指定区域外土壌入換え

汚染土壌について、土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。

原則として地表から50cm以上の汚染土壌の層の掘削除去を行ない、指定区域外より持ち込んだ汚染されていない他の土壌により埋め戻すものである。ただし、地表面を高くしても居住者の日常生活に著しい使用を生じないのであれば、50cm以内の必要な範囲で土壌を掘削し、その上を50cm以上の土壌の層により覆うこととしてもよい(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

指定区域内土壌入換え

汚染土壌について、土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。

地表から50cmの範囲にある汚染土壌を掘削し、当該指定区域内のいずれかの場所において地表から50cm以上の深部に当該汚染土壌を埋め戻し、その上を指定区域内の汚染されていない土壌により50cm覆うことである(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

指定住宅紛争処理機関

建設住宅性能評価書が交付された住宅について、建設工事の請負契約または売買契約に関する紛争が発生した場合に、紛争の当事者の双方または一方からの申請により、紛争のあっせん・調停・仲裁の業務を行なう機関を「指定住宅紛争処理機関」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)第63条)。

指定住宅紛争処理機関になることができるのは、各都道府県の弁護士会または民法上の社団法人・財団法人に限定されている(同法第62条)。

このような指定住宅紛争処理機関の利用に関して次の点が重要と思われる。

1.建設住宅性能評価書が交付されている住宅であることを要する。
住宅性能評価を受けていない住宅は、指定住宅紛争処理機関による紛争処理を申請することができない。
また、住宅性能評価書には設計住宅性能評価書・建設住宅性能評価書の2種類が存在するが、設計住宅性能評価書だけが交付されている場合にはこの紛争処理を申請することができない。

2.紛争処理を申請する際の費用は原則として1万円。
住宅品質確保法69条および同法施行規則第104・105条により、紛争処理を申請する際の手数料は1万円とされている。ただし、鑑定等に要する費用を紛争の当事者が別途負担するように指定住宅紛争処理機関が定めることも可能とされている。

3.紛争処理の対象は、評価書に記載された事項に限定されない。
指定住宅紛争処理機関が扱う紛争の範囲は、建設住宅性能評価書に記載された事項に限定されない。例えば、住宅の欠陥を原因として居住者に健康被害が発生したような場合には、その住宅の欠陥の物的損害だけでなく、健康被害による損害についてもあっせん・調停・仲裁を申請することができる。
また例えば、共同住宅の建設住宅性能評価書において、重量床衝撃音などの「音環境に関すること」を全く検査せず、音環境の評価結果が存在していない事例であっても、上階からの衝撃音が大きく生活に支障をきたすような場合には、その住宅の欠陥に対してあっせん・調停・仲裁を申請することが可能である。

4.民事裁判への移行も可能。
あっせん・調停には和解契約としての効力が発生し、仲裁には民事訴訟の確定判決と同じ効力が発生するとされている。 しかし、そもそも紛争当事者の双方の合意がなければ、あっせん・調停・仲裁を行なうことはできない。
従って、紛争当事者の双方が合意に至らない場合には、紛争当事者は通常どおりの民事訴訟を提起することができる。また、指定住宅紛争処理機関による紛争処理を申請しないで、初めから民事訴訟を提起することも当然可能である。

指定調査機関(土壌汚染対策法の~)

土壌汚染状況調査を行なうことのできる者として指定された組織。二以上の都道府県の区域において土壌汚染状況調査等を行なう場合には環境大臣が、一の都道府県の区域において土壌汚染状況調査等を行なう場合には都道府県知事が指定する。

指定は5年ごとに更新される。また、指定調査機関は、技術管理者の設置義務、他の者に対する監督義務、業務規程の制定などが課せられている。

指定避難所

災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまでの間滞在させ、または災害により住居に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させるために市町村長が指定した施設をいう。指定避難所は災害の種類を問わず指定することとされ、公示される。

指定された避難所の管理者は、施設の廃止や重要な変更について届け出なければならないとされ、この制限は、宅地建物取引の営業における重要事項説明の対象とされている。

指定流通機構

指定流通機構とは、宅地建物取引業者間で不動産情報を交換するために、宅地建物取引業法第50条の2の5の規定により、国土交通大臣が指定した公益法人のことである。
全国では地域ごとに次の4つの公益法人が「指定流通機構」として指定されている。

1.公益財団法人 東日本不動産流通機構
2.公益社団法人 中部圏不動産流通機構
3.公益社団法人 近畿圏不動産流通機構
4.公益社団法人 西日本不動産流通機構

私道

民間の個人や法人が所有している道路を「私道」という。

「私道」には、特定の個人のために築造されたものもあれば、不特定多数の人が通行するために築造されたものもある。
「私道」は一定の手続きを経ることによって「建築基準法上の道路」になることができる。
この手続きは「道路位置指定」と呼ばれている。

私道負担

不動産の売買において、対象となる土地の一部が「私道敷地」となっているとき、その私道の敷地の部分を「私道負担」と呼んでいる。

私道負担に関する事項は、重要事項として説明しなければならない。また、不動産広告では、区画面積と私道負担面積とを分けて表示しなければならないとされている。例えば、「土地面積100平方メートル、別に、私道負担面積5平方メートル」のように、わかりやすく表示する必要がある。

指導・助言・勧告

行政指導のことをいう。

行政機関が特定の者に対して一定の作為または不作為を求めることで、法律上の強制力はない。

宅地建物取引業法は、国土交通大臣または都道府県知事が、宅地建物取引業の適正な運営を確保し、または宅地建物取引業の健全な発達を図るために必要な指導、助言および勧告をすることができると規定している。そして、その指導・助言・勧告に従わないときには、法律上の強制力を持つ監督処分がなされる恐れがある。しかしながら、指導・助言・勧告はあくまでも任意の措置である。

行政手続法では、行政指導を行なう際には、その趣旨や内容、指導の責任者を明確に示し、相手方が書面の交付を求めたときには行政上特別の支障がない限り交付しなければならないと規定されている。

支払督促

民事訴訟法第382条から第396条に規定されている、金銭債権を回収するための簡易な請求手続きのことである。支払命令・督促命令と呼ばれることもある。

支払督促を行なうには、債権者は、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に対して、請求する金額や請求の原因などをごく簡単に記載した支払督促申立書を提出し、通常の裁判費用の半額に相当する印紙を納付する必要がある。

簡易裁判所ではこの申立書にもとづき、支払督促を発令し、債務者に支払督促正本が郵送される。債務者が正本送達の翌日から2週間以内に異議申立てを行なえば、正式な裁判に移行することになるが、異議申立てを行なわなければ、債権者は2週間が経過した日の翌日から30日以内に、仮執行宣言の申立てをすることができる。

債権者が仮執行宣言の申立てをすると、簡易裁判所は、仮執行宣言付支払督促を発令し、仮執行宣言付支払督促正本が債務者に送達される。これに対して、2週間以内に債務者からの異議申立てがなければ、支払督促は確定判決と同一の効力を得ることとなる。

このように、早ければ申立書提出から1ヵ月程度で確定判決と同一の効力が発生し、しかも費用が通常裁判の半分であるので、支払督促は、主に少額の融資を迅速に回収する手段として多用されている(なお売掛金・未収金・未払金の回収など、金銭債権すべてについて利用できる)。

支払命令

簡易裁判所において行なう金銭債権を回収するための簡易な請求手続きのこと。

正式名称は支払督促である(詳しくは支払督促へ)。

私法

法のうち市民相互の関係を規律付けるものをいう。

国民と国家との関係を規律付けるのが「公法」であり、法の体系は、私法と公法の大きな2つの類型に分けることができる。

私法は、市民の相互関係を対象とする規律であるから、自由平等の関係を基盤に、私益を調整することを目的とする。一方、公法は、支配服従の関係を定めて公益の実現をめざすことに特徴があるとされる。

私法の一般法は民法である。民法の基本原理は、

1.法の下の平等、2.私的財産権の絶対性、3.契約自由の原則(私的自治)、4.過失責任主義

であるとされるが、これらの原理はいずれも私法の基本的な特徴でもある。私法を構成する代表的な法律は、民法のほか、借地借家法、商法、会社法などである。

私法と公法とを区分することに対しては、私的活動に対する行政の関与が拡大することに伴って両者を区分する必然性が薄れたこと、労働法や産業法のような公益上の理由で市民相互の関係を規律付ける法律分野(社会法といわれ、私法と公法の中間的な性格を持つとされる)が出現したことなどにより、その意味を失ったという意見もあるが、法の本質的な性格を明確にする基本的な視点を提供すること、法概念を分析するための基盤となることなど、区分することの理論的な有効性はいまなお失われていない。

司法書士

不動産の権利に関する登記の専門家。

不動産登記簿の「甲区」および「乙区」に登記すべき事項について、登記申請者から依頼を受けて登記申請書の作成を行ない、登記申請者の代理人として登記の申請を代理する。

また、会社の設立登記や役員変更の登記などの商業登記についても、不動産登記と同様に申請書を作成し、申請を代理することができる。

その他に、本人が行なう訴訟のための訴訟書類の作成援助、契約書の作成と助言も司法書士の業務とされている。また司法書士法の改正により2003年4月1日以降は、簡易裁判所における訴訟手続きの代理、裁判外での和解の代理なども司法書士の業務に加えられることになっている。

私募

有価証券を新規に発行するときの方法の区別で、50名以上の者を申込みの勧誘の相手方とするものを公募、50名未満の者を相手方とするものを私募という。

発行価額に応じて有価証券通知書や届出書が必要になるが、公募か私募かの違いによってその取扱いが異なる。私募は、機関投資家を相手に行なわれることが多い。

一般に、公募すれば広い範囲から投資家を集めることができて証券の流通性を高めることができる一方、私募であれば発行コストが低く、あらかじめ保有者を確定しやすい。

死亡等の届出(宅地建物取引士における)

宅地建物取引士の登録を受けている者について、死亡等の一定の事情が発生した場合に、相続人等の一定の者が知事に対して行なうべき届出のこと。

宅地建物取引士として業務に従事するためには、その前提条件として、都道府県知事より宅地建物取引士の登録を受けることが必要である(宅地建物取引業法第22条の2第1項、第18条第1項)が、この登録を受けた者について死亡等の一定の事情が発生した場合には、その旨を、登録を受けた都道府県知事に対して届出なければならず、この届出を「死亡等の届出」という(法第21条)。

死亡等の届出が提出された場合、都道府県知事はその届出にもとづいて宅地建物取引士の登録を消除しなければならない(法第22条第2号)。

また、死亡等の届出に該当する事由(下記1.および2.の事由)が生じていることが知事において判明した場合には、知事は死亡等の届出が提出されていないときでも、職権により登録を消除しなければならない(法第22条第3号、法第68条の2第1項第1号)。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の消除へ)

死亡等の届出を提出すべき事由と提出方法は次の1.および2.のとおりである。

1.死亡した場合
登録を受けた者が死亡した場合は、その者の相続人が、その事実を知った日から30日以内に、登録を受けた知事に対して、宅地建物取引士死亡等届出書(施行規則様式第7号の2)を提出しなければならない(法第21条第1号)。
届出期間は「死亡から30日以内」ではなく「死亡の事実を知った日から30日以内」であることに注意。

2.法第18条第1項第1号から第5号の2までの欠格事由が生じた場合
登録を受けた者について、宅地建物取引士の登録が不適当とされるような一定の欠格事由(法第18条第1項第1号から第5号の2までの事由)が発生した場合には、宅地建物取引士の登録を消除する必要がある。
(欠格事由について詳しくは宅地建物取引士の登録の基準へ)
この場合には、原則として本人(欠格事由が「成年被後見人又は被保佐人となったこと」(法第18条第1項第2号)であるときは、届出を行なうのは本人ではなく、後見人または保佐人(法第21条第3号))が、その事実が発生した日から30日以内に、登録を受けた知事に対して、宅地建物取引士死亡等届出書を提出しなければならない(法第21条第2号、第3号)。

私募ファンド

投資家から資金を募って運用する事業のなかで、資金を募る対象者が狭く限定されているものをいう。

また「プライベートファンド」ということもある。通常、募集対象が50人未満のものを指すが、特に対象を適格機関投資家に限った「プロ私募」による事業も私募ファンドの一つである。また、募集対象者を選別するような私募ファンドもある。

一般的に、ハイリスク・ハイリターンの運用をめざすことが多く、通常、不動産投資が組み込まれる。オポチュニティファンドと似た性格を帯び、運用者の裁量の範囲が大きい。

私募リート(私募REIT)

非上場のREIT

JREITと同様のしくみで組成される不動産投資ファンドであるが、取引所に上場せず、オープンエンドで運用される。非上場であることから、金融市場の動向に強く影響されることなく不動産評価を直接に反映した価格形成がなされ、投資リスクの分散効果が期待できる一方、換金性に乏しいこと、取引所等の規制が働かないことなどJREITとは異なる性質がある。

リスクを分散しつつ長期安定的に資金を運用するニーズに応えることができるとされ、主要な投資者は機関投資家である。

市民農園

主として都市の住民のレクリエーション等の用に供するための農地及びその保全・利用のための施設をいう。農地は、農地法の規定によって原則として農業のために利用しなければならないとされているが、市民農園の農地はその例外となる。その開設・運営に当たっては、農地関係法令等への適合が求められる。

市民農園を開設する方法は、(1)特定農地貸付けによる方法、(2)権利を設定することなく非営利目的で耕作する方法、の大きく二つに分かれる。また、市民農園の整備を推進するため、市民農園の開設について市町村の認定を受けると特定農地貸付けのための農業委員会の承認があったとみなされる等の特例が定められている(市民農園整備促進法)。

市民緑地

民間事業者や市民団体が公園緑地を整備し、公共の利用に供することができるとする制度によって設置された緑地施設。都市緑地法に基づく制度である。

市民緑地を設置するには、緑化地域等において市民緑地設置管理計画を作成し、市町村長の認定を受けなければならない。認定されるのは、緑化地域または緑化重点地区内にある面積300平方メートル以上の施設で、設置管理期間が5年以上、緑化率が20%以上のものである。

認定された市民緑地は、都市公園に準じた施設とみなされ、原則として公開され、適切な水準で維持管理される。また、市民緑地を整備する事業者に対しては、財政・税制による支援がある。

CIM

建設に関する業務のための情報を統合的に活用するためのシステム。英語のConstruction Information Modeling(コンストラクション インフォメーション モデリング)の略であるが、和製英語である。Construction Information Modeling/Management(コンストラクション インフォメーション モデリング/マネージメント)と表記されることもある。

主として土木施設の計画・設計・施工・管理の効率化と施設の品質向上のためのシステムとして構築された。その基本的な手法は、施設の3次元モデルにさまざまなデータを付加して、多様に利用できるデータベースを構築することである。従って、BIMに類似したシステムとなっていることから、CIMをBIMの一種であるとする考え方もある。

社印

会社の印鑑であって、代表者印でも、銀行印でもない印鑑のこと。
印影が正方形であることが一般的なので、「角印」とも呼ぶ。

見積書・請求書などに押印する。

遮音等級

音の伝搬を遮る性能(遮音性能)を示す指標。音の伝搬には、空気中での伝搬と、固体中での伝搬があるが、それぞれについて遮音性能を示す指標が定められている。

(1)空気中の伝搬について

空気中の伝搬に対する遮音性能を示すのがD値(外部と内部の音量の差を測定)で、値が大きいほど性能が高い。集合住宅の壁の遮音等級は、標準がD-50、許容水準がD-45とされている。

(2)固体中の伝搬について

固体中の衝撃音の伝搬を遮る性能を示すのがL値(上階の一定の衝撃音が下階で聞こえる大きさを測定)で、値が小さいほど性能が高い。
L値は衝撃物の重量によって異なるが、集合住宅の床の遮音等級は、重量衝撃L-50、軽量衝撃L-45が推奨され、標準は両者ともL-55とされている。

社会保険料控除

ある個人が自分自身の社会保険を支払った場合や、配偶者や扶養親族の社会保険を支払った場合には、その支払金額の全額を、所得から控除することができる。これを社会保険料控除という。

ここでいう社会保険とは、健康保険、介護保険、厚生年金、厚生年金基金、国民年金、国民年金基金などである。

長さの単位。尺貫法(日本で伝統的に使われてきた度量衡)で用いられる。1尺=1/3.3メートル≒0.303メートル。1尺=10寸=100分。1m=3尺3寸。

また、6尺の長さを「(けん)」と言い、1平方間が1(約3.3平方メートル)である。

なお、一般の「尺」のほか、和裁などにおいて布の寸法を測るときに用いる「尺」があり、その1尺は一般の1尺よりも長い(約0.379メートル)。両者を区別するときには、一般の尺を「曲尺(かねじゃく)」、和裁用の尺を「鯨尺(くじらじゃく)」という。1鯨尺=1尺2寸5分(曲尺)。

借地権

借地権とは次の2つの権利のどちらかのことである(借地借家法第2条)。

1.建物を所有する目的で設定された地上権
2.建物を所有する目的で設定された土地賃借権

従って、資材置場にする目的で設定された土地賃借権は「借地権」ではない。
また、青空駐車場とする目的で設定された土地賃借権も「借地権」ではないことになる。

借地権割合

土地の更地評価額に対する借地権価額の割合をいう。

土地の価格のうち、借地権者に帰属する経済的利益を示すとされ、地域特性など借地事情によってその値は異なる。一般に、地価が高いほど、借地権割合も高くなるとされる。

相続税贈与税は借地権に対しても課税されるが、その際に借地権価額を算出するため、国税庁が公表する路線価図や評価倍率表には、借地権割合が表示されている。ただし、その値が実態と常に一致するとは限らないことに注意が必要である。

なお、定期借地権も課税の対象となるが、その場合の借地権割合は、借地権設定期間および残存期間を勘案して割り引いて算出することとされている。

借地借家法

借地権および建物賃貸借契約などに関して特別の定めをする法律で、民法の特別法である。1991年公布、92年8月1日から施行されている。

従前の借地法、借家法を統合したほか、定期借地権等の規定が創設された。借地借家法では、借地権の存続期間や効力等、建物の賃貸借契約の更新や効力等について、借地権者や建物の賃借人に不利にならないよう一定の制限が定められている。

借家

借りて住む家屋。「借家する」と言うように、家を借りることを指す場合もある。これに対して、自らが所有して住む家屋は「持ち家」である。

住宅・土地基本調査では、借家を、公営の借家、都市再生機構・公社の借家、 民営借家、給与住宅に分類している。

なお、賃貸借契約に基づいて住む借家については、借地借家法が適用される。

借家権

建物賃借権をいう。

建物の賃借権は、通常の賃借権と異なって、借家人を保護するために特別の取扱いを受ける。

主要な保護措置として、

1.登記がなくても家屋の引渡しを受ければ第三者に対抗できること

2.家主の解約や契約更新拒絶には正当事由がなければならないこと

3.契約終了時の造作買取請求権が認められること

4.内縁の妻など同居者による借家権の継承が認められること

などがある。

なお、定期借家権については、原則としてこのような保護の対象とはならない。

借家人に対する補償

土地収用法第88条の通常損失の補償の一つ。政令(土地収用法第八十八条の二の細目等を定める政令)の第25条に規定されている。

収用において、土地等の収用に係る土地にある建物の全部または一部を現に賃借する者がいる場合において、この賃借人がその建物の賃借を継続することが不可能になる場合には、

1.新たに従前の賃借の目的物に照応する物件を賃借するための契約を締結するのに通常要する費用
2.新たに賃借する物件における居住または営業を安定させるために必要な期間中の、当該物件の賃借料と従前の物件の賃借料との差額

が補償される。

車庫

車両を格納する建物。自動車を格納する車庫が屋内駐車場で、ガレージも同じ意味である。

自動車用の車庫には、地表面に平置きする方式のほか、多層の建物内を自走して駐車する方式(自走式駐車場)や、自動車を機械で移動して収納する方式(機械式駐車場)がある。

 

遮光カーテン

光の透過を遮断する性能(遮光性能)を備えたカーテン

遮光性能は遮光率(1−(試験片装着時の照度または輝度÷試験片を装着しない場合の照度または輝度)×100)で測定される。一般に遮光率99.40%以上の性能を備えている。また、遮光率が99.99%以上のものは「完全遮光」とされる。

その作り方には、カーテン生地の裏側を樹脂などでコーティングする方法と、生地に黒い糸を織り混ぜる方法とがある。また、通常のカーテンに遮光性の高い裏地をつけて遮光カーテンと同様の性能を付加することもできる。

遮水工封じ込め

汚染土壌について、地下水汚染を経由した健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。

汚染土壌を当該土地から掘削し、当該土地に地下水の浸出を防止するための構造物を設置し、さらにその構造物の内部に掘削した汚染土壌を埋め戻すことである。

遮水工の上部は十分な遮水効力と十分な強度を保つ覆いを施し、また上部の利用用途によりさらに覆土する場合がある。
なお遮水工封じ込めを行なう際には、掘削した汚染土壌をいったん指定区域の近傍の土地に仮置きし、掘削した場所に遮水工を施して後に汚染土壌を埋め戻すこととなる(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

斜線制限

建築物の各部分の高さに関する制限をいう。

通風、採光等を確保し、良好な環境を保つことを目的とした制限で、建築物を横から見たとき、空間を斜線で切り取ったように制限されることから斜線制限と呼ばれる。

斜線制限には、道路高さ制限隣地高さ制限北側高さ制限日影規制がある。

1.道路高さ制限は、前面道路の反対側境界線を起点とする一定勾配の斜線の範囲内に、

2.隣地高さ制限は、隣地境界線から一定以上の高さを起点とする一定勾配の斜線の範囲内に、

3.北側高さ制限は、北側隣地(道路)境界線上の一定の高さを起点とする一定勾配の斜線の範囲内に、

4.日影規制は、敷地境界から一定の距離を設定してそのラインを越えて一定以上の日影を生じさせないように、

それぞれ建築物の高さを収めなければならないとされている。

制限される高さの具体的な算出方法は、用途地域の指定などの都市計画の状態等によって異なる。

遮断工封じ込め

汚染土壌について、地下水汚染を経由した健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。
汚染土壌を当該土地から掘削し、当該土地に必要な水密性および耐久性を有する構造物を設置し、さらにその構造物の内部に掘削した汚染土壌を埋め戻すことである。

遮断工封じ込め措置は、遮水工封じ込め措置よりもさらに厳重な封じ込め措置である。
遮断工の上部は十分な遮水効力および措置実施後の上部の利用用途により破損しないような十分な強度を保つ覆いを施し、また、上部の利用用途によりさらに覆土する場合がある。

なお、遮断工封じ込めを行なう際には、掘削した汚染土壌をいったん指定区域の近傍の土地に仮置きし、掘削した場所に遮断工を施して汚染土壌を埋め戻すこととなる(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

シャッター

細長い金属板をつないだ開閉式の戸。英語のRolling shutterで、和語は鎧戸(よろいど)である。

防犯、防火などのために設置され、巻き上げ式で開閉されるものが多いが、左右に開閉する方式もある。

シャワーカーテン

浴槽の周りに取り付ける防水カーテン。和製英語である。

シャワーの湯水が浴槽の外に飛び散ることを防ぐ。

シャワーヘッド

シャワーの先端に取り付けて水を分散噴射する器具。英語のshower head。

シャワーヘッドは交換でき、水圧を選択するほか、節水・止水機能、浄水機能、マイクロバブル機能(微細な泡による洗浄機能)などを備えたものを取り付けることもできる。また、その形状もさまざまである。

シャワールーム

シャワーのみが設置された水浴のためのスペース。浴槽が無い。英語では、shower roomのほか、shower bathとも言う。

シャワールームは、建築工事によって設置するほか、ユニットとなった設備を購入・設置することもできる。 

設置する場合には、あわせて排水・防水設備が必要となる。また、上階に設置する場合には、下の階と関係に十分注意しなければならない。

シャンデリア

天井から吊り下げた装飾性の高い照明器具。英語のchandelierであるが、もとはフランス語の燭台を意味する言葉である。

通常、複数の光源で構成され、ガラス細工などで装飾されている。インテリアの装置としての役割を担うことが多い。   

シャンプードレッサー

洗髪や化粧にも使える洗面台をいう。

例えば、大きめの洗面ボウル、シャワー機能付きの水栓、三面鏡、収納スペースなどを備えた多機能型の洗面台がこれに当たる。

収益還元法

不動産鑑定評価において、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される収益をベースとして対象不動産の価格を求める手法のこと。この収益還元法による試算価格を「収益価格」という。

収益還元法は、さらに直接還元法DCF法に分けることができる。

直接還元法とは、ある一期間の純収益(総収益から総費用を控除した残額)をある一定の利回り(これを「還元利回り」という)で割ることで、収益価格を求める方法である。
またDCF法とは、連続する複数の期間におけるそれぞれの期間の純収益を、各期間に対応した割引率で割ることにより現在価値へと換算し、それらの現在価値の合計値を収益価格とする方法である。

収益事業

 公益社団法人等の非営利法人、マンション管理組合等の人格のない社団などが行なう事業のうち、法人税の課税対象とされるものをいう。34種類の事業が指定されている。従って、収益事業に該当しない事業については非課税である。

指定されている事業は、次のとおりである。

1.物品販売業 2.不動産販売業 3.金銭貸付業 4.物品貸付業 5.不動産貸付業 6.製造業 7.通信業 8.運送業 9.倉庫業 10.請負業 11.印刷業 12.出版業 13.写真業 14.席貸業 15.旅館業 16.料理店業その他の飲食店業 17.周旋業 18.代理業 19.仲立業 20.問屋業 21.鉱業 22.土石採取業 23.浴場業 24.理容業 25.美容業 26.興行業 27.遊技所業 28.遊覧所業 29.医療保険業 30.技芸教授業 31.駐車場業 32.信用保証業 33.無体財産権の提供等を行う事業 34.労働者派遣業

なお、公益社団法人・公益財団法人については、収益事業であっても公益目的事業に該当するものは非課税である。また、一般社団法人一般財団法人については、収益事業に限定した課税が適用されるのはその法人が共益的活動を目的とし、非営利性が徹底されている場合(非営利法人の要件を満たす場合)だけであり、これに該当しない場合には全所得に対して課税される。

税率は原則として一般の法人と同じであるが、学校法人、社会福祉法人など特定の公益法人については税率が低減されている。

収益物件

賃料収入を得る目的で所有される不動産不動産投資の収益源である。

集会(区分所有法における~)

分譲マンションのような区分所有建物において、建物および敷地の管理に関する事項を決定するために、少なくとも年に1回以上開催される区分所有者集会のこと。

区分所有建物では、区分所有者は管理組合の構成員となる。この区分所有者の全員が参加する意思決定機関が「集会」である。一般的には「管理組合総会」「管理組合集会」「総会」とも呼ばれるが、区分所有法では「集会」という名称を使用している。

区分所有法では、「管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない」と定めている(同法第34条第1項・第2項)。ここでいう管理者とは通常は、管理組合の理事長のことである。また年に1回以上定期的に開催される集会は、一般的には「通常総会」と呼ばれている。

このほかに、特定の議案を審議するために区分所有者の一定数以上の請求により臨時的に集会を開催することも可能であり、こうした集会は「臨時総会」と呼ばれている(区分所有法第34条第3項から第5項)。

集会を開催する場合、管理者(理事長)は、開催日より1週間以上前に、開催日時・開催場所・議案の概要を各区分所有者に通知する必要がある(区分所有法第35条)。ただし区分所有者全員が同意した場合に限り、こうした招集手続きを省略することも可能である(区分所有法第36条)。

集会が開催されると、原則として管理者(理事長)が議長となり、あらかじめ通知された議案が審議される。議案を議決する方法としては、普通決議特別決議がある。

区分所有者は集会に自ら出席して、議案を審議するのが原則であるが、出席できない場合には、書面によって議決を行なうことができ、また代理人を選任して代理人を出席させることも可能である(区分所有法第39条第2項)。

書面による場合には、あらかじめ各議案についての賛成・反対の意見を表明した書面(議決権行使書という)を、管理者(理事長)に提出しておく。また代理人を選任する場合には、その代理人を選任したことを証明するための書面(委任状)を管理者(理事長)に提出する。

集会の議事の内容については、議長が議事録を作成しなければならない(区分所有法第42条)。この議事録は管理者(理事長)が保管し、関係者の請求があったとき、管理者はいつでもこの議事録を閲覧させる必要がある(区分所有法第42条・第33条)。

このように集会は、区分所有者の最高の意思決定機関であるが、日常的な管理組合の運営については集会の下部機関として管理規約にもとづき「理事会」が組織されており、さまざまな業務を執行している。

集会所(集会室)

会合や行事を行うことのできる共同の建物または部屋をいう。公民館や公会堂よりも小規模で、手軽に利用でき、設置・管理主体も地方公共団体に限られていない。

マンション内に共用スペースとして設置され、各種の会合や行事に利用される場合もある。

集合住宅

複数の住宅が集まって一つの建物を構成する居住形式をいう。壁、床など建物構造の一部を共有することになる。「共同住宅」と同義。

終身建物賃貸借

借主の死亡のときまで存続し、借主が死亡したときに終了する建物賃貸借契約をいう。

高齢者の居住の安定確保に関する法律」によって認められた賃貸借契約で、借地借家法の定める契約ルールの特例である。

この契約を締結する事業者は、住宅のバリアフリー化や前払い家賃の保全措置を講じるなど、一定の条件を満たした上で都道府県知事の認可を得なければならない。また、契約は公正証書等書面によらなければならないとされる。

集成材

厚さ1~3cm程度の挽板またはラミナといわれる小角材を、繊維方向が互いにほぼ平行になるように重ね、合成樹脂接着剤で接着合成し1つの材としたもの。

天然材と比較して、強度性能が高く欠陥が少ない、均一な材を造ることが可能である。

修繕義務

建物賃貸借契約においては、貸し主は建物の汚損・破損(借り主の故意や過失によって発生した汚損・破損を除く)について、必要な修繕を行なう義務を負うものとされている。これが修繕義務である。

ただし、この民法の定めは任意規定であるので、実際の建物賃貸借契約では、修繕義務を貸し主と借り主でそれぞれ分担する旨を特約することが多い。これを修繕特約という。この場合にも、老朽化した設備の取り替えや安全性確保のための修繕については、特約にかかわらず貸し主が負担すべきと考えられている。

なお、借り主は、賃貸借契約の終了に当たって原状回復義務を負うが、経年変化および通常の使用による損耗等については回復の義務はない。

修繕工事

建物を元の状態に回復する工事。劣化・損傷した設備や建築部材を修理・取り替えして、その性能や機能を回復する。大規模修繕は、定期的に建物を診断し、総合的に修繕する工事であるが、これも修繕工事である。

なお、修繕工事に対して、建物の性能・機能の向上を図る工事を「改修工事」という。

修繕積立金

管理組合長期修繕計画に従って修繕を実施するために、区分所有者から毎月徴収した金銭を積み立てたものである。
区分所有者は、管理組合に対して、通常、管理費と特別修繕費を納入するが、この特別修繕費を毎月積み立てたものが「修繕積立金」である。

この修繕積立金は、管理費と混同しないように、管理費とは別に経理することが管理規約において定められていることが多い。

集団投資スキーム

他者から金銭などの出資・拠出を受け、それを用いて事業や投資を行ない、その事業や投資から生じる収益などを出資・拠出者に分配する仕組み。「ファンド」も同じ意味である。

集団投資スキームを組成する場合には、原則として金融商品取引業の登録が必要である。また集団投資スキームに基づく権利(持分)は、原則として金融商品取引法に定める有価証券とされ、同法による規制の対象となる。

不動産特定共同事業も集団投資スキームであるが、その組成や持分(投資口)の取引については、不動産特定共同事業法によって規制されている。ただし、特例事業に係る持分の取引は金融商品取引法の規制対象である。

周知の埋蔵文化財包蔵地

埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地をいう(文化財保護法第93条第1項)。

石器・土器などの遺物が出土したり、貝塚・古墳・住居跡などの遺跡が土中に埋もれている土地であって、そのことが地域社会で認識されている土地がこれに該当する。

「周知の埋蔵文化財包蔵地」は、通常は市町村の教育委員会が作成する遺跡地図および遺跡台帳において、その区域が明確に表示されている。しかしながら、この遺跡地図および遺跡台帳は、その市町村内のすべての「周知の埋蔵文化財包蔵地」を登載しているとは限らない。
そのため、遺跡地図および遺跡台帳に登載されている遺跡の区域以外の土地であっても、その地域社会において遺物や遺跡が埋もれていることが認識されている土地もまた「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当するので、注意が必要である。

このような「周知の埋蔵文化財包蔵地」に関しては、次のような規制がある。

1.周知の埋蔵文化財包蔵地を土木工事等の目的(埋蔵文化財の調査の目的を除く)で発掘しようとする者は、発掘に着手する日の60日前までに文化庁長官に届出をしなければならない(同法第93条第1項で準用する第92条第1項)。
2.届出をした発掘に対し、埋蔵文化財の保護上、特に必要があるときには、文化庁長官は発掘前に、記録の作成のための発掘調査など必要な事項を指示することができる(同法第93条第2項)。

実際には、各市町村は開発事業者のための照会制度を設けており、開発事業者が市町村教育委員会に照会することにより、上記1.の届出が必要か否かが回答される仕組みとなっている。開発予定地が「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当するかどうかが教育委員会においても判明しない場合(例えばすでに発掘された遺跡の区域の隣接地での開発など)には、教育委員会は、開発事業者等の了解を得て現地踏査や試掘を行なうことがある。

また、上記2.の発掘調査等に要する費用は、原則として開発事業者等が負担することとされている。

なお、「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当しない土地であっても、出土品の出土等により、土地の所有者・占有者が、貝塚・古墳・住居跡などの遺跡を発見した場合には、その現状を変更することなく文化庁長官に対して届出を行わなければならず、文化庁長官は、その遺跡が重要なものであり、保護のため調査を行なう必要があると認めるときは、その土地の所有者・占有者に対し、期間を定めて(最大3ヵ月)、その現状を変更することとなるような行為の停止、または禁止を命ずることができるとされている(同法第96条第1・2項)。

収納

使用していないものを一定の場所に整理して納めること。収納するものは、衣類、器具・道具、貯蔵品、書籍など多種多様である。収納に当たっては、収納品を用途、大きさなどに応じて分類整理し、必要なときに円滑に使用できるように納める必要がある。

収納のために利用されるのは、タンス・戸棚・整理棚・下駄箱等の家具類、衣装ケース・小物入れ・道具箱等の箱類、クローゼット物置押入れ・収蔵庫等のスペースである。

収納スペースの配置は建築設計において配慮すべきことのひとつである。また、収納スペースの配置や収納具のデザインは、内装(インテリアデザイン)の重要な要素である。

収納口座(マンション管理における~)

マンション管理業者管理組合等から受領した管理費用等を分別して管理するための口座の種類をいう。管理の目的に応じて収納口座、保管口座の二つに分類される。 収納口座は、受領した管理費用等を預入して、一時的に預貯金として管理するための口座で、毎月の管理事務費以外の残高は、翌月内に保管口座に移し換えられる。

収納棚

物を収納するための棚。板を水平に渡して物を載せ、収納する家具である。一般に板は複数枚で構成され、前面に扉がついているものもある。

収納家具には、棚のほか、箪笥など箱型のものがある。棚への収納は、箱への収納に比べて、一覧性に優れ、収納物の出し入れが容易である一方、隙間が多いため多量の収納に難がある。

収納ボックス

モノを収納するための箱。大きさはさまざまで、収納するモノも、衣服や道具類からアクセサリーのような小物まで幅広い。

収納ボックスは、形、色彩、素材などが多種多様で、単にモノを収納するだけでなく、インテリアとして配置することもできる。

修復(建築物の)

建物等をその保護保全と機能回復のために改造すること。保護保全すべきものとして歴史的、芸術的な価値や環境的機能などがあり、回復すべき機能として利便性や利用可能性などがある。この両方を目指すところが「保存」や「復元」との違いであるとされる。

なお、絵画など芸術作品の「修復」には、保護保全とともに、元の状態に戻す「復元」の性格が強く現れている。

修補請求

売買契約の履行において、引き渡された売買の目的物が品質等に関して契約の内容に適合しない場合に、買主が売主に対して目的物の補修を請求すること。

修補請求は、契約不適合を原因とする債務不履行に対する追完請求のひとつである。

なお、補修請求をするためには、原則として、不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならない。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

集約型都市構造化

都市圏を高密度な拠点のネットワーク構造に転換する政策またはビジョン。

具体的な姿は都市の特性に応じて異なるが、次の施策を組み合わせることによって実現していくとされている。

ⅰ)都市機能を特定の場所(集約拠点)に集約すべく市街地を整備する
ⅱ)公共交通の整備によって集約拠点へのアクセスを確保する
ⅲ)集約拠点以外の地域の市街化を抑制する

集約型都市構造化を推進するための制度として、立地適正化計画、地域公共交通網形成計画などがある。

集約都市開発事業

医療.福祉施設、業務・商業施設、共同住宅などを集約する事業で、都市の低炭素化に資するとして認定されたものをいう。

集約都市開発事業の認定基準は、都市機能を集約した拠点の形成によって二酸化炭素排出を抑制すること、整備される特定建築物が認定低酸素建築物の基準を満たすこと、緑化やヒートアイランド緩和措置などの低炭素化措置が講じられることなどである。

集約都市開発事業に対しては、一定の事業に係る費用について交付金が支給されるほか、事業のための土地譲渡に関する課税の特例、特定建築物についての容積率不算入の特例が適用される。

収用委員会

土地収用の裁決等を行なう組織をいう。

都道府県知事の所轄のもとに置かれるが、独立してその職権を担う。都道府県の議会の同意を得て都道府県知事が任命する委員7人をもって組織し、委員の任期は3年である。

収用適格事業

土地収用ができる事業のこと。
土地収用ができる事業は、一定の公益性のある事業に限定されている。

土地収用法では、第3条に掲げられた事業だけが収用適格事業であり、約50種類の事業を収用適格事業として掲示している。
その代表的な収用適格事業は、道路、河川、砂防設備、地すべり防止施設、運河、用水路、鉄道、港湾、飛行場、郵便業務施設、電気通信施設、電気、放送設備、ガス工作物、水道施設、消防施設 下水道施設、学校、公民館、博物館、図書館、公立病院、火葬場、廃棄物処理施設、卸売市場、公園、公営住宅などである。

なお、土地収用法以外の法律でも、個別に収用適格事業を定めている場合がある(例えば都市計画法第69条の都市計画事業など)。

収用の対象

土地収用法において収用の対象になるものは、原則として土地であるが、土地以外の権利なども、その権利を消滅させる等の目的により、収用の対象になることがある。

土地は公益上必要であるときは収用することができる(土地収用法第2条)。ただし、土地収用法の収用適格事業などの公共事業にすでに供されている土地は、特別の必要がなければ、収用することができない(土地収用法第4条)。

土地を収用する場合において、土地に借地権等の権利が付着している場合には、土地のみならず、その付着した権利も同時に収用し、その付着した権利を消滅させることが必要になる。
このような意味で土地とともに収用され、消滅させられる権利としては、土地に関する所有権以外の権利(地上権賃借権地役権質権抵当権など)、鉱業権、温泉利用権、漁業権、水利権などがある(土地収用法第5条第1項・第3項)。
また、土地とともにその土地上の物件を収用する場合には、その物件に付着した権利(借家権など)をも同時に収用し、消滅させる必要がある(土地収用法第5条第2項)。

ところで収用においては、土地上の建物等は「必要かつ相当である場合に」「土地とともに」収用することとされているので、建物等は収用しないのが普通である。また建物等だけを単独で収用することはできない(土地収用法第6条)。

なお、土地ではなく、必要な土砂・砂れきだけを収用する場合がある(土地収用法第7条)。

集落生活圏

自然的社会的諸条件からみて一体的な日常生活圏を構成していると認められる集落およびその周辺の農用地等を含む一定の地域をいう。地域再生法の規定による地域で、その区域は地域再生土地利用計画において定められる。

集落生活圏の区域内において、
1)その立地を誘導すべきとされる集落福利等施設(住民の共同の福祉・利便のため必要な施設または就業の機会の創出に資する施設)整備のための開発行為建築物の新築等
2)地域再生拠点区域内における土地の区画形質の変更、建築物の新築等の行為

を行なおうとする者は、着手する30日前までに市町村長に届けなければならないとされている。

この届出義務は法令上の制限であり、宅地建物取引業法の重要事項説明の対象となっている。

集落地区計画

都市計画法第12条の4に規定する「地区計画等」の一つ。集落地域整備法に従い、都市計画によって定められる。

集落地区計画は、都市近郊の農村集落について、集落地域の土地の区域内で、営農と居住環境が調和した土地利用を図るための計画である。

なお、集落地域とは、市街化区域以外の都市計画区域であって、農業振興地域内にあることが必要とされている。

主たる債務

ある人の債務を他の者が保証するとき、保証を受ける債務を「主たる債務」という。

また保証人が負う債務を「保証債務」という。

保証債務は主たる債務に付従するものとされているので、主たる債務が弁済等の理由により消滅した場合には、保証債務もまた消滅するものとされている(詳しくは保証債務へ)。

取得時効

一定期間、所有の意思をもって平穏かつ公然と他人の物を占有したとき、その物の所有権などの権利を取得することができるとする定め。

取得時効が完成するのに要する期間には、善意かつ過失なしで占有した場合には10年(短期取得時効)、それ以外の場合には20年(長期取得時効)である。

守秘義務

知り得た秘密を守る義務。法律によって、一定の職務・業務について課せられている。

この義務が課せられている職務には、公務員のほか、弁護士、医薬剤師、公認会計士などがあるが、宅地建物取引士についても、宅地建物取引業法に基づいて課せられている。守秘義務違反については原則として罰則が適用される。

この場合、どのような事項が守るべき秘密であるかが問題となるが、判例では、公知の程度や秘密として保護しなければならない事情を実質的に判断して決すべきとされている。

なお、業務を受託するときなどに、契約によって守秘を約束する場合もある。

主要構造部

建築物の構造上、重要な役割を果たしている部分のこと。

建築基準法2条5号では、主要構造部とは「壁・柱・床・・屋根・階段」であると定義している。

ただし、構造上重要でない最下階の床、間仕切り用の壁、間柱、つけ柱、局所的な小階段などは主要構造部から除外されている。

竣工

工事が完成すること。「完工」ともいう。

建築確認を受けた建物は、建物が竣工したときには完了検査を受けなければならず、建築基準に適合していれば検査済証が交付される。また竣工しても、一定の場合を除いて、検査済証が交付されるまでは建物を使用できない。

竣工図

工事が完了したとき(竣工時)の建築物の状態を表す図面。設計図が完成すべき姿を示すのに対して、竣工図は完成した姿を示す。

工事中に設計の変更があったときには、設計図が修正され、修正された設計図が竣工図となる。しかしながら、常に修正がなされるとは限らないことから、別途、竣工図が作成される場合がある。

なお、建築基準法に基づく建築物の完了検査は、竣工時の状態について実施されるが、このときに竣工図を提出する必要はない。   

シューズインクローゼット

土足で入ることができる収納空間。和製英語である。

靴類が収納されるほか、物置やコート類の収納スペースとして利用されることもある。

また、出り口を2つ設けて、シューズインクローゼットから直接に室内に入ることができる構造のものもある。

シューズボックス

履物をまとめて収納するための家具。玄関に造り付ける場合もある。「下駄箱」も同じ意味で使われる。

なお、Shoes-boxは和製英語で、英語のShoe boxは靴一足を入れる直方体の紙箱をさす。

書院造り

日本の建物様式のひとつで、間仕切りが発達し、床(床の間)、付け書院、上段の間等が設置された座敷がある。室町時代以降、武家住宅として一般化した。

承役地

地役権とは、自分の土地の利便性を高めるために、他人の土地を利用することができるという権利のことである(民法第280条)。
この地役権が設定されている場合において、利用される他人の土地のことを承役地という。

例えばA氏が、自分の所有地から公道に出るために、B氏の所有する土地を通行しようとして、B氏の所有地の一部について通行地役権を取得し、通行路を作ったとする。
このときB氏の所有地は、通行路の開設によってA氏の土地の利便性を高めるために利用されているので、B氏の所有地は「承役地」である。

省エネ改修促進税制(住宅の~)

家屋に対して省エネ改修工事を行なった場合に課税を軽減する特例。特例は、所得税および固定資産税について適用される。

1 所得税の特例

自己が居住している家屋(貸家住宅を除く)に対する次の工事が対象。
1)居室のすべての窓の改修工事

2)1)と合わせて行なう床、天井、壁の断熱工事で改修部分が省エネルギー基準以上の性能となるものを行なって、改修後の住宅全体の省エネ性能が一定程度上がる場合(工事50万円超に限る)



これらの工事のための借入金残高の一定割合(住宅全体が省エネ基準まで性能が上がる省エネ改修工事費については2%、合わせて行なったそれ以外の改修費については1%、それぞれ限度額あり)について、5年間にわたって税額が控除される。対象は床面積280平方メートル以下の家屋に限られる。



この制度は、一般の住宅リフォーム減税との間で選択的に適用される。




さらに、省エネ改修工事に要した費用の10%を工事実施年度の所得税額から控除するという特別措置が適用されている(居住年に応じて工事額および控除額に限度がある)。

ただし、これらの特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

2 固定資産税の特例

次の工事を行なった家屋(貸家住宅を除く)が対象。

1)居室のすべての窓の改修工事

2)1)と合わせて行なう床、天井、壁の断熱工事で改修部分が省エネ基準以上の性能となるものを行なった場合(工事50万円超に限る)



これらの工事の対象となった家屋に対する翌年度の固定資産税額(120平方メートル相当分までに限る)を、3分の1減額する。



対象は床面積280平方メートル以下の家屋に限られる。

ただし、これらの特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

省エネ基準

建築物の使用によって消費されるエネルギー量に基づいて性能を評価する場合に、その基準となる性能をいう。「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に基づいて定められている。法令上の用語は「建築物エネルギー消費性能基準」である。

省エネ基準は、(A)一次エネルギー消費量に関する基準、(B)外皮熱性能に関する基準の二つから構成されている。

(A)一次エネルギー消費量に関する基準
すべての建物についての基準で、一定の条件のもとで算出した、空調、照明、換気、給湯等の諸設備のエネルギー消費量および太陽光発電設備等によるエネルギーの創出量
(B)外皮熱性能に関する基準
住宅についての基準で、一定の条件のもとで算出した、外壁や窓の外皮平均熱貫流率(単位外皮面積・単位温度当たりの熱損失量)および冷房期の平均日射熱取得率(単位外皮面積当たりの単位日射強度に対する日射熱取得量の割合)であって、地域の区分に応じて定める
(注:非住宅建築物についても外皮熱性能に関する基準が定められているが、これは、建築物省エネ法上の「建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)」とはされていない。)
省エネ基準は、建築物省エネ法による次のような規制、指導、表示などにおいて、その判定、指示、認定等の基準となっている。
(1)適合義務
一定規模以上の非住宅建築物は、新築時等に、一次エネルギー消費量に関する省エネ基準に適合しなければならず、基準不適合の場合には、建築確認を受けることができない。
(2)届出義務
一定規模以上の建築物(住宅、非住宅建築物)について、新増改築時に、エネルギー消費性能の確保のための構造および設備に関する計画を届け出なければならず、省エネ基準に適合しない場合には、必要に応じて指示・命令がなされる。
(3)エネルギー消費性能の表示
建築物の所有者は、その建築物が省エネ基準に適合することの認定を受け、その旨を表示することができる。
なお、建築物のエネルギー消費性能に関する基準には、省エネ基準のほか、次のものがある。
ア)住宅トップランナー基準
住宅事業建築主に対して、その供給する建売戸建住宅の省エネ性能を誘導する際に適用する基準
イ)誘導基準
省エネ性能向上計画の認定を受けて容積率の特例を受ける際の基準

省エネ基準適合住宅の義務化

新築住宅について省エネルギー基準への適合を義務化すること。2025年度から義務化することとされている。

建築物の省エネルギー化については、エネルギー基本計画(2021年10月)において、「住宅及び小規模建築物の省エネルギー基準への適合を2025年度までに義務化する」とされ、また、社会資本整備審議会は、「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次答申)」(2022年2月)において、「2025年度以降に新築される原則全ての建築物を対象に、現行の省エネ基準への適合を義務付ける」必要があるとしている。

このような方針を受けて、22年6月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)が改正され、3年以内(25年度)に、ほぼ全ての住宅について省エネルギー基準への適合を義務化することとされた。

義務化に際しての適合すべき省エネルギー基準、適合性の判定方法などはまだ定まっていないが、手続きについて建築確認とのリンクが予定されている。また、基準については、風土への適合、居住スタイルの自由の確保など、住宅に求められる特性に配慮する必要がある。

なお、住宅以外の一定規模以上の建築物については、17(平成29)年4月から、エネルギー消費性能基準への適合が義務化されている。

省エネ住宅ポイント

一定の性能要件を満たした住宅の新築リフォーム、完成済み新築住宅の購入を対象に発行されるポイントをいう。閣議決定による制度で、発行されたポイントは、エコ商品、地域商品券などと交換できる。

ポイント発行の対象となるのは、2014(平成26)年12月27日以降に契約した住宅等であるが、ポイント発行の申請受付は2015(平成27)年10月21日に締め切られ、この制度の適用は終了している。

省エネ性能向上計画

建築主等が、建物の新改修等に当たってエネルギーの消費性能の向上のために作成する計画。その計画が誘導基準に適合する旨の認定を受けると、容積率の特例が適用される。建築物省エネ法による制度である。2016年4月1日から施行。

省エネ性能向上計画には、建物の構造、設備、用途などのほか、資金計画も記載しなければならない。

誘導基準は省エネ基準よりも高い水準の性能が定められている。また、非住宅建築物について、省エネ基準では一次エネルギーの消費性能のみが定められているが、誘導基準には外皮熱性能に関する基準も定められている。

省エネ性能向上計画が認定された場合には、容積率の算定に当たって、省エネ性能向上のために措置を講じることに伴う通常の建築物の床面積を超える部分(上限10%)を算入しない特例が適用される。

省エネ性能の届出

建築物について、その新増改築などを為す場合に、エネルギー消費性能の確保のための構造および設備に関する計画を届け出なければならないとする制度。建築物省エネ法に規定されている。2017年4月1日から施行。
 
届出を要するのは、住宅、非住宅建築物を問わず、床面積300平方メートル以上の建物である。届出は着工の21日前までにしなければならない。

また、届け出た計画が省エネ基準に適合しない場合には、所管行政庁等は、必要に応じて、省エネ性能の向上のための措置を指示・命令することができるとされている。

省エネ補助金

エネルギー消費を削減する事業に対して、そのために必要な経費の一部を補助する資金。補助は政府が毎年度の予算に基づいて実施する。

省エネ補助金の補助対象、補助率、受給手続きなどは、毎年度、予算に従って、担当する省庁や地方公共団体が補助要項等として定め、公表される。例年補助対象とされる省エネ事業は、省エネルギー設備等の導入、脱炭素化の促進、省エネルギー改修などの事業であるが、補助を受けるための要件などの詳細は、それぞれの補助要項等に記載されている。

省エネルギー住宅

居住によって生じるエネルギー消費量が少ない住宅。建物構造の断熱化・気密化、建築設備の省エネ化などによって消費量を直接削減する方法が採用されている。また、自然エネルギーを活用することによって外部への負荷を削減する方法も有効とされている。

省エネルギー住宅の厳密な定義はないが、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に基づいて、省エネルギー性能を評価する場合に基準となる性能(建築物エネルギー消費性能基準)が定められていて、これに適合する住宅は省エネルギー住宅であるとしてよい。この基準は、一次エネルギー消費量に関する基準と、外皮熱性能に関する基準の2つから構成されている。

なお、政府のエネルギー基本計画においては、「規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する」としている。この方針のもと、一定の非住宅建築物については適合が義務化されている。一方、住宅については、省エネルギー性能の届出や建築士の説明等、住宅トップランナー制度による性能の向上などが講じられているが、基準への法的な適合義務は課せられていない。

省エネルギー住宅基準適合住宅の義務化

新築住宅について省エネルギー基準の適合を義務化する方針をいう。

例えば、政府のエネルギー基本計画においては、「規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する」としている。

しかしながらこれは目標であって、義務化が決定されているわけではない。義務化は法律で定める必要があるが、住宅については、そのような法令の規定は制定されておらず、省エネルギー性能の届出や建築士の説明等、住宅トップランナー制度による性能の向上などが講じられている段階にある。

なお、一定規模以上の非住宅建築物については、2017(平成29)年4月から、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)に基づき、エネルギー消費性能基準への適合が義務化される。

消火栓

消火に用いる水道栓。消火活動用の消防水利施設として設置される消火栓と、建物等の消防設備として設置される消火栓に大別される。

消防水利施設として設置される消火栓は、公共消防のための施設で、水道事業者が設置しなければならない。また、消防水利施設(消火栓のほか、池、泉水、井戸、水槽などを含む)は、防火対象物からの距離が一定以下になるよう設置することとされている。

建物等に設置される消火栓は、消防法令に基づき、用途および規模等に即して定められた建物等について設置が義務づけられている。この消火栓は、屋内に設置する消火栓(屋内消火栓設備)と屋外に設置する消火栓(屋外消火栓設備)とに大別される。

屋内消火栓設備は、初期消火を目的として屋内に設置され、水源(水道・井戸)、加圧送水装置(消火ポンプ)、起動装置、屋内消火栓(開閉弁、ホース、ノズル等)、配管・弁類および非常電源等から構成されている。また、放水圧力、放水量及び操作性に応じて、1号消火栓、易操作性1号消火栓、2号消火栓、広範囲型2号消火栓の種類がある。

屋外消火栓設備は、建物の周囲に設置され、初期から中期の火災の消火および外部からの放水による隣接建物への延焼防止のために用いる設備である。その構成は屋内消火栓設備に準じるが、放水量が大きいなど高い性能を備えている。

少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを求める民事裁判について、各地の簡易裁判所で簡単・迅速に判決を得ることができる裁判制度のこと。1998(平成10)年1月1日から導入されている。

従来、民事裁判では弁護士費用等に多額の費用がかかり、また裁判自体も判決までに数ヵ月以上かかるという問題点があった。そこで、60万円以下の少額の金銭をめぐる訴訟では、原告本人が訴状を作成できるよう訴状の作成を簡略化し、裁判の審理を原則的に1日で終了させて即日判決を言い渡すという少額訴訟が導入され、大きな成果を挙げている。

1.少額訴訟の対象
金銭の支払いを求める訴訟であって、請求する金銭の額(遅延損害金などを除く本体部分)が60万円以下であれば、すべて少額訴訟を起こすことができる(注:従来は請求金額30万円以下とされていたが、2004(平成16)年4月1日より請求金額60万円以下へと引き上げられている)。
具体的には、貸金の返還請求、未払い給与の支払い請求、売掛金の支払請求、交通事故の損害賠償請求、不動産賃貸借契約における家賃の支払請求、不動産の賃貸借契約における敷金の返還請求などはすべて少額訴訟の対象となる。

2.訴状の作成
少額訴訟では、本人でも提起することができるように、訴状の作成方法が簡略化されている。
全国各地の簡易裁判所には、よく提起されるいくつかのタイプの少額訴訟に対応した「定型的な訴状」の書式が用意されているので、少額訴訟を提起しようとする本人は、その訴状の項目にチェックを付けたり、数字を記入したり、紛争の概要を簡単に記述するだけで、訴状を作成することができる。

3.訴状の添付書類(証拠)
少額訴訟を提起する際には、訴状と一緒に証拠を簡易裁判所にあらかじめ提出しておくのが原則である。この証拠を「添付書類」と呼んでいる。
例えば、敷金返還請求事件の「定型的な訴状」では、賃貸借契約書、修繕・クリーニング費用の見積書等が添付書類(証拠)とされている。

4.訴状を提出する簡易裁判所(裁判管轄)
相手方の住所地の簡易裁判所に訴状を提出するのが原則である。
ただし、例えば敷金返還請求の事件で賃貸借契約書に「裁判管轄は東京地方裁判所又は八王子簡易裁判所とすることに合意する」というような「合意管轄」が定められている場合は、その合意した簡易裁判所に訴状を提出することになる。
なお、少額訴訟では簡単・迅速な裁判制度という趣旨にもとづき、原告の申立て(または裁判官の職権)により、合意管轄以外の簡易裁判所で裁判をすることが可能とされる場合がある(これを「移送」という)。

5.裁判に向けての準備
簡易裁判所に訴状を提出すると、裁判所と本人(原告)との間で簡単な事情聴取が電話で行なわれ、裁判手続の説明等が行なわれる。その後に呼出状という書面が原告に送付されて、審理の日が決まる。審理の日は、訴状提出から原則的に30日以内とされている。
訴状は裁判の相手方(被告)に送達され、被告は訴状を検討し、答弁書を作成して簡易裁判所に提出する必要がある(答弁書の書式は簡易裁判所に用意されている)。
なお、被告が少額訴訟ではなく通常の民事訴訟を希望する場合には、被告は通常手続に移行する旨の申出を簡易裁判所にすることができる

6.審理
呼出状に記載された日時に、簡易裁判所に原告・被告双方が出頭し、法廷で審理が行なわれる。この審理は通常1時間程度で終了する。
裁判官は、あらかじめ提出されている訴状・答弁書をもとに、紛争の争点を整理し、原告・被告に対して主張内容の不明な点・不十分な点を質問する(これを「当事者尋問」という)。
その後に、原告・被告の申し出(または裁判官の判断)により和解が勧められる場合があり、原告被告双方が和解の条件に同意すれば、その場で「和解調書」が作成され、和解が成立する。
和解がない場合には、ここまでで当事者双方の主張は打ち切られ(これを「弁論終結」という)、その日のうちに裁判官から「判決の言い渡し」が行なわれる。

小規模宅地の特例

小規模な住宅用地について、固定資産税都市計画税の課税を軽減する措置。

専用住宅の敷地に供されている土地について、面積200平方メートル以下の部分に対する標準課税が、固定資産税は評価額の6分の1に、都市計画税は同3分の1にそれぞれ軽減される。

この措置は、期限が定められていない特例である。

なお、住宅用地の保有に係る軽減措置の一般については、「固定資産税の軽減措置(住宅用地)」「都市計画税の軽減措置(住宅用地)」を参照。

小規模不動産特定共同事業

不動産特定共同事業のうち、一定の規模を超えない事業。不動産特定共同事業法に基づく制度である。

小規模不動産特定共同事業には二つの種類がある。一つは不動産特定共同事業契約を締結して不動産取引から生じる収益を分配する事業で小規模なもの(小規模第一号事業)、もう一つは特例事業者の委託を受けて実施する不動産取引に係る業務で小規模なもの(小規模第二号事業)である。この場合の事業の規模は、事業参加者の出資価額及び出資の合計額が政令で定める一定額を超えないものとされている。

小規模不動産特定共同事業を実施する場合は、事業実施のための許可は不要で、登録のみで足りる。なお、通常の不動産特定共同事業を実施する者は、同時に小規模不動産特定共同事業の実施者として登録することはできない。

小規模不動産特定共同事業制度は、空き家や空き店舗を再生・活用する事業に地域の不動産業者等が幅広く参入できるようにすることを目指して創設された。

小規模滅失

区分所有建物において、建物の価格の2分の1以下に相当する部分が、地震・火災等により滅失することを「小規模滅失」という。

詳しくは「復旧」へ。

償却

企業会計において、収益に貢献した資産の取得額を費用化することをいい、正式には「減価償却」と称する。

固定資産の取得原価を収益の獲得のために利用した期間にわたって費用配分するのが原則である。

実際には、取得原価のうち残存価額を除いた価額について、固定資産の平均的な利用期間を耐用期間として、次の4つのいずれかの方法で償却される。

1.定額法:固定資産の耐用期間中、毎期均等額を費用計上する方法
2.定率法:固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた額を費用計上する方法
3.級数法:固定資産の耐用期間中、毎期一定の額を算術級数的に逓減した額を費用計上する方法
4.生産高比例法:固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産または用役の提供の度合に比例した額を費用計上する方法

なお、土地は減価償却の対象資産ではない。また、企業会計とは別に、法人税の課税においては税務会計上の減価償却方法が定められている。さらには、償却資産に対しては、原則として固定資産税が課せられる。

償却金

不動産賃借において、保証金敷金が返還されるときに差し引かれる金銭。

保証金や敷金は借主が貸主に預けた金銭であり、貸主は、契約終了時に、滞納家賃など借主の債務に充当する額を控除した残りの金銭を借主に返還しなければならない。しかしながら、この場合に、使途を特定しない一定の金銭を差し引いて返還されることがある。この差し引かれる金銭が償却金である。従って、貸主はその必要性や金銭の性格について明らかにする必要がある。

借主に償却金の負担を求める場合には、償却金を差し引いて返還する旨及びその金額について、賃貸契約時に明記しなければならない。また、償還金は借主にとって賃料に上乗せされる負担であるから、借主は、その理由や金額の妥当性について確認する必要がある。

なお、「償却」の本来の意味は、使った費用などを埋め合わせることである。  

商業施設士

商業施設のデザイン、施工管理等に関して専門知識や技術を有すると認められた者。任意の資格で、(公社)商業施設技術団体連合会が実施する試験に合格することにより称号が付与される。

商業地域

都市計画法(9条)で「主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」と定義されている。

この用途地域では、建ぺい率の限度は原則として80%である。
また容積率の限度は200%から1300%の範囲内(12種類)で都市計画で指定される。

この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

(建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗等
4.事務所等
5.危険や環境悪化の恐れが少ない作業場面積が150平方メートル以下の工場
6.ホテル・旅館
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等、映画館・劇場(、料理店、キャバレー、個室付浴場
8.自動車教習所
9.倉庫業の倉庫

(建築できないもの)
1.上記に挙げたもの以外の工場

証券化(不動産の証券化)

不動産を流動化する手法の一つで、不動産をSPC等に譲渡し、または信託して、その不動産から得られるであろう収益を裏付けに、有価証券を発行する方法をいう。

証券化によって、不動産の価値が金融商品として取引されることになる。不動産のもとの所有者は、比較的少ないリスク負担で資金を調達できる一方、投資家にとっては不動産投資の機会が拡大する。

一口に証券化といっても、対象とする不動産の種類、証券を発行する主体の性格、発行する証券の性質などに応じて、用いられる手法は多様であり、金融商品としてのリスクとリターンの関係もさまざまである。また、証券を裏付けるのは不動産からの収益であるため、不動産の管理運営に関する情報公開や監視の仕組みが重要である。さらには、不動産の収益力を高めるための専門的な技術や技能を評価できる体制も整えていかなければならない。

証券化(債権の)

債権から得られるであろうキャッシュフローを裏付けにして有価証券を発行する方法をいう。

証券化の対象とされる債権には、住宅ローン債権のような貸付債権、公社債のような債券があるが、それらの債権を保有する者は、それをSPE(特別目的事業体、SPC投資法人など)に譲渡し、SPEは債権から生み出されるであろうキャッシュフローを受け取る権利を証券の形にして投資家に販売する。これによって証券化が実現するのである。

この場合、多数の債権をまとめたり、異なる性格の債権を組み合わせたりして、リスクとリターンを調整するのが通例である。また、証券化に当たって必要な、倒産隔離導管体機能を確保するのは当然のことである。

債権を証券化した金融商品は、裏付けとなるキャッシュフローが確定していること、償還に期限があることなどが特徴であるとされる。

商圏分析

商取引の実態を地理的な視点(空間的な分布状態)で調査分析することをいう。地域特性に即したビジネスを構築・実施するために行われることが多い。

商圏分析によって、店舗への集客の可能性、顧客の分布状況や地理的な特性、営業のエリア別活動実態などが明らかとなる。

証券保管振替機構

上場株券等の保管・受渡しを合理化するために、1991(平成3)年に設立されたわが国唯一の機関。
2004(平成16)年現在で上場株券の約6割を保管している。

1984(昭和59)年11月に「株券等の保管及び振替に関する法律」が施行され、この法律にもとづき、1991(平成3)年10月より「保管振替制度」が実施されている。

証券保管振替機構は、この保管振替制度にもとづくわが国唯一の保管振替機関であり、わが国の公開会社の発行済株式のうち60%以上の株券を保管している。
また2004(平成16)年現在、証券保管振替機構の取扱会社数は4,000社近くにのぼり、すべての公開会社の発行する株券等が取扱い対象となっている。

証券保管振替機構の保管対象とする証券は、「上場株」「店頭株」「転換社債」「転換社債型新株予約権付社債」「株価指数連動型投資信託受益証券(ETF)」「投資証券」などである。

なお、証券保管振替機構の組織形態は当初は財団法人であったが、2002(平成14)年4月より株式会社に移行した。現在の正式名称は「株式会社証券保管振替機構」である。

昇降機

エレベーターを参照。

少子高齢化

人口の年齢構成について、若年層の比率が低下し、高齢者層の比率が増加する現象をいう。

出生率の低下と長寿化とが同時に進行することによって起きる。

日本の年少人口(0~14歳)と老年人口(65歳以上)の割合は、1975(昭和50)年にはそれぞれ24.3%・7.9%であったが、1990(平成2)年に18.2%・12.1%、2005(平成17)年には13.8%・20.2%となった。そして、2025(平成37)年には10.0%・30.5%になると予想されている(国立社会保障・人口問題研究所による将来人口推計の中位推計結果)。

少子高齢化の進行によって、社会保障、雇用、消費構造等の多面的な分野に大きな影響が生じると予想されている。不動産業についても、需要構造が変化するであろう。
その変化は、

1.居住に関しては、医療・福祉サービスの充実、近隣の付合いや子育て環境の重視、高齢者居住環境の重点整備など、2.土地利用に関しては、ストックの活用、ブラウンフィールド(衰退産業跡地)の再生、職住近接への回帰、逆線引きなど、3.不動産流通に関しては、資産管理・運用ニーズの拡大、住環境の重視、外国人労働者の居住対応など

のような方向が考えられる。

障子

室内の境や、縁の内側などを仕切る建具。一般には、光を通す和紙を張った「明かり障子」を指す言葉として使われる。

明かり障子は、木枠に細い桟(骨)を組み入れ、和紙(障子紙)を張って造られる。一般的に、和室の境界となる敷居に嵌めて、引き違いに動かす。また、室内のデザイン設備として、窓や仕切り壁に用いられることもある。

消石灰

生石灰に水を反応させて作られる白色の粉状の物質。
主成分は水酸化カルシウム(Ca(OH)2)である。
運動競技場のライン引きとしても使用されている。
なお石灰は英語で「lime」(ライム)という。

照度

光に照らされた物体の明るさ。光がある面を照らすとき、その単位面積が受ける光の量(光束)によって計測される。国際単位系の単位は「ルクス(lx)」である。

明るさは人間の感覚によって捉えるものであるから、照度の計測は、標準観測者の視覚に基づいて行なわれる。したがって、照度の数値が同じであっても、感じる明るさは、感じるときの環境の違いや視覚の個人差に応じて異なることとなる。

このような人間が主観的に感じる感覚の強さを表す数量を「心理物理量」と言い、照度もその一つである。

消費者契約

消費者(個人)と事業者との間で締結される契約で、労働契約を除いたものをいう。

消費者契約については、消費者の保護を図るために民法の特例が定められていて、事業者の損害賠償の責任を免除する一定の条項、消費者が支払う損害賠償の額を予定する一定の条項、消費者の利益を一方的に害する条項は無効となるほか、契約締結の勧誘の際に一定の行為によって誤認や困惑したときには、契約の申し込みや承諾の意思表示を取り消すことができる(消費者契約法)。

個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合を除く)と締結する不動産の売買や賃貸借、あるいはそれらを仲介する契約も消費者契約であり消費者契約法が適用されるが、宅地建物取引業法の規定と競合する場合には、宅地建物取引業法の規定が優先して適用される。

消費者契約法

消費者(個人)と事業者との間で締結される契約(消費契約)について、消費者の保護を図るための特例を定めた法律で、2001(平成13)年3月に施行された。

この法律では、消費者が契約の締結について勧誘された際に、

1.重要事項説明について事実と異なることを告げられたこと、2.将来の変動が不確実な事項について断定的判断が提供されたこと、3.重要事項について不利益となる事実が告げられなかったこと、4.勧誘の場所から事業者が退去しないまたは自らの退去を妨げられたこと

により誤認や困惑したときには、契約の申込みや承諾の意思表示を取り消すことができることとしている。

また、消費契約について、事業者の損害賠償の責任を免除する一定の条項、消費者が支払う損害賠償の額を予定する一定の条項、消費者の利益を一方的に害する条項については、これを無効することを規定している。

なお、消費者は個人であるとされるが、事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合には消費者とはみなされず、その契約に対しては消費者契約法は適用されない。また、事業には非営利事業も含むとされている。

これらの規定は、すべて消費契約(労働契約を除く)について民法の特例を定めるもので、不動産の売買や賃貸借、あるいはそれらを仲介する契約に対しても適用される。ただし、宅地建物取引業法は消費者契約法の特別法であり、両者が競合する場合には、前者の規定が優先して適用される。

消費者庁

消費者の利益の擁護・増進などを任務とする行政機関で、2009(平成21)年9月に設置された。

消費者庁が担う主な仕事は、食品、家庭用品などの安全、品質等の表示、消費者からの苦情処理、個人情報保護などである。宅地建物取引業による重要事項説明の一部、住宅の品質確保の促進等に関する法律による日本住宅性能表示基準、不当景品類および不当表示防止法における表示などに関する事務は、消費者庁が(場合に応じて他の省庁と共同で)司ることとされている。

なお、消費者の利益の擁護および増進に関する重要事項等を調査審議・勧告するための行政委員会として、消費者委員会が設置されている。

消費生活用製品安全法

消費生活用の製品による危害の防止を図るため、特定製品の製造・販売を規制する法律。1973年制定。

消費生活用製品安全法が定める主な事項は次の通りである。

(1)特定製品の基準・販売等の制限

消費生活用製品のうち、構造、材質、使用状況等からみて特に危害を及ぼす恐れが多いと認められる製品を「特定製品」として指定し、製品ごとに技術上の基準を定める。事業者は、基準に適合する義務を負い、基準適合を表示することができる。

特定製品として、家庭用の圧力なべ・圧力がま、浴槽用温水循環器、石油給湯機、石油ストーブなど(一定のものに限る)が指定されている。

(2)特定保守製品の点検・保守

経年劣化により安全上支障が生じ、特に重大な危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品で、その適切な保守を促進することが適当なものを「特定保守製品」として指定し、事業者は、設計標準使用期間等の表示、引き渡し時の保守の必要などの説明、製品の点検保守の体制の整備などを行なわなければならない。

特定保守製品として、石油給湯器、石油風呂釜が指定されている。

(3)製品事故等の報告・公表

事業者は、重大な危害が発生した事故などについて報告しなければならない。また、その事故に係る製品の名称及び型式、事故の内容、当該製品の使用に伴う危険の回避に資する事項が公表される。

消費税

国内の資産・商品・サービスの取引によって発生する付加価値に対して課税される税金。

法人や個人事業者が有償で行なう「資産の譲渡」「商品の販売」「資産の貸付け」「サービスの提供」は原則としてすべて消費税の課税される「課税取引」とされている。

また、土地の販売・住宅の家賃のように、税の性格や社会政策的配慮により消費税が課税されないこととされている取引は「非課税取引」と呼ばれる。

なお、課税取引に基づく売上高が一定規模に達しない法人や個人事業者については「免税業者」や「簡易課税制度」という措置が設けられている。

消防法

火災の予防・警戒・鎮圧や、火災等の災害を軽減するために必要な措置を定めた法律。1948(昭和23)年に制定された。

消防法が定める火災予防のための主な措置は、(1)消防機関による立入検査、措置命令等、(2)住宅用火災警報器の設置・維持、(3)一定の建物における防火管理者の選任、消防計画の作成・届出、訓練の実施等、(4)一定の建物についての消火設備、警報設備、避難設備等の設置・維持、(5)一定の防炎品の検定等である。また、消火活動のために消防機関が即時に強制できる権限(緊急通行、土地や水利の使用、立入制限等)なども定められている。

なお、火災予防のためには、消防法のほか、建築基準法による措置が重要である。

照明

光で照らして明るくすること。照明のためには、光源を選択し、その配置などを決めなければならない。

照明の光源は、一般に、白熱灯、蛍光灯、LEDなどの電力灯が使われているが、ガス灯、ろうそく、灯油ランプなどを光源とする照明もある。また、照明の方法には、光源の位置に応じて、天井灯、壁面灯、吊下灯、卓上灯、街灯、提灯などが、光のあて方に応じて、全域照明、スポットライト、間接照明、サーチライトなどがある。さらには、シャンデリアのような装飾性や、光量調節の可否などの機能性を備えた照明もあって、その種類は多様である。

消滅可能性都市

2010年から40年までに、若年女性人口(20~39歳)が5割以上減少する市区町村。全国1,799自治体(2010年)のうち、896自治体(49.8%)が該当し、地域が消滅する可能性があるとされる。

消滅可能性都市の考え方は、日本生産性本部が設けた「日本創成会議」が提案したもので、14年5月に公表された。それによると、地方の人口減少は、若年女性人口の減少と、地方から大都市圏への若者の流出の2つの要因によって生じていて、人口減少による消滅の可能性を回避するためには、若年女性人口の減少率を5割未満に留めなければならないとしている。そして、今のままだと、30年後には896の自治体で若年女性人口が半減する可能性があるから、少子化対策と東京一極集中対策を同時に行なう必要があると提言している。

ただ、若年女性人口の半減と地域の消滅を招く可能性との関係は明確ではない。また、人口移動や出生率の推計については不確定な要素が多い。消滅可能性都市の考え方や推計は、政策提言のための仮説・試算であることに留意する必要がある。

消滅時効

一定期間、権利を行使しない状態が継続する場合に、債権などの権利が消滅するという定め。

消滅時効が完成するまでの期間は、権利の性質や権利行使しない事情に応じて異なる。主な権利の消滅時効完成期間は、次のとおりである。
1)債権
・権利行使できることを知った時から5年
・権利行使できる時から10年
2)債権または所有権以外の財産権については、権利を行使できる時から10年
3)不法行為に基づく損害賠償請求権
・損害及び加害者を知った時から3年
・不法行為の時から20年
4)人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権(特例)
・損害および加害者を知った時から5年(通常3年の特例)
・権利行使できる時(債務不履行の始期)から20年(通常10年の特例)
5)定期金債権
・権利行使できることを知った時から10年
・権利行使できる時から20年
なお、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)前まで、職業別の短期時効消滅および商事時効が定められていたが、これらの定めは改正によって削除され、債権の消滅時効に統合・整理された。

証約手付

手付の一種で、売買契約などが成立したことを証するために交付される手付のこと。

売買契約などが締結されるまでにはいろいろな交渉段階があり、どの時点で契約が成立したのかが一見明確でないことが考えられるので、そのような場合において契約の成立を証明するために交付される手付のことを証約手付けという。

ただしわが国では、手付とは原則として解約手付とされている。

初期費用

不動産の購入や賃借に際して、当初に発生する費用。

たとえば、賃貸住宅を借りる場合の初期費用は、敷金(退去するときの原状回復費用に充てるため前もって預ける金銭)、礼金(家賃とは別に賃借当初に支払う金銭、不要な場合もある)、前家賃(入居する当月の家賃)、仲介手数料火災保険料、家賃保証のための保証料(保証人が保証する場合には不要の場合もある)、引っ越し費用などである。そのほかに、入居時に家具や家電を購入する場合には、その費用も加わる。

賃貸住宅に入居するための初期費用は、一般的に、家賃の5〜6ヵ月分程度とされている。

植栽

敷地内の花壇や空いているスペースに樹木や草花を植えること。

視覚的に生活を豊かにするだけではなく、災害時の避難場所、気候調節等、さまざまな効果・役割がある。

職務行為

法人理事が、法人の目的の範囲内で行なう行為のこと。
法人は定款または寄附行為に定められた目的の範囲内で、権利を取得し、義務を負担することとされているので、法人の代表機関である理事はこの目的の範囲内で代表機関としての行為を行なうことができる。このような理事の行為のことを一般に「職務行為」と呼んでいる(法人の権利能力・行為能力を参照のこと)。

理事の職務行為が問題となるのは、法人が不法に他人に損害を与えた場合(=法人に不法行為責任が発生する場合)である。
民法第44条第1項では「理事などの代表機関が職務を行なうにつき他人に加えたる損害は法人が賠償する責任を負う」と規定して、法人が不法行為責任を負うことを明記している(詳しくは法人の不法行為責任へ)。

しかし、仮に上記の「職務を行なうにつき」という言葉を厳格に解釈するならば、そもそも理事が不法に他人に損害を与える行為自体が「職務」の範囲から除外されるという問題が生じる。
(不法に他人に損害を与える行為は、もはや法人の代表機関としての行為には該当しない、と考えることができる)
しかし、それでは法人の不法行為責任が発生するケースは存在しないことになってしまい、法人の不法行為責任を規定した民法第44条第1項が無意味なものとなる。
そこで判例では、「職務を行なうにつき」という言葉を次のように広く解釈している。

1.外形上「職務行為」と見える行為は、「職務を行なうにつき」に含める。
2.社会通念上「職務行為に関連する行為」は「職務を行なうにつき」に含める。

このように「職務を行なうにつき」という言葉を広く解釈することにより、法人の不法行為責任が成立する範囲を拡大し、法人の不法行為による被害者を救済しているのである。

なお、職務行為という言葉は、上記の1.と2.を合わせた意味で使用されることがある。本来職務行為とは、上述のように法人の代表機関の正当な行為のことを指すのであるが、法人の不法行為責任を論じる場合には、民法第44条第1項が適用されるすべての行為(上記1.と2.)を「職務行為」と呼ぶことが多いので、注意したい。

書斎

読書や執筆のための部屋。一般に、机、書棚、文房具などが備えられている。

所在地(不動産の〜)

不動産がある場所の表示。不動産登記によるものと、住居表示によるものの2種類がある。不動産登記によるものはすべての不動産について、住居表示によるものは市街地の住居について定められている。

不動産登記に表示されている所在地と住居表示とは異なる場合が多い。不動産取引における不動産の所在地は、原則として、不動産登記に基づく表示を用いる。

(1)不動産登記によるもの(不動産登記法に基づく表示)
土地については、筆ごとに、土地の所在する市、区、郡、町、村、字の名称及び地番が定められ、登記簿に表示されている。また、建物については、建物ごとに、建物の所在する土地に従って、市、区、郡、町、村、字の名称及び土地の地番が登記簿に表示されている。

地番は、市、区、町、村、字又はこれに準ずる地域(地番区域)ごとに登記所が定めることとなっている。土地が分筆されると新たな地番が付されるなどのため、地番が規則正しく並んでいるわけではない。

不動産取引に当たって、当該不動産を特定するための所在地の表示は、原則としてこの不動産登記による表示である。たとえば、重要事項説明書の不動産の表示欄に記載されている「所在」は、土地、建物ともこれに基づく所在地である。

(2)住居表示によるもの(住居表示に関する法律に基づく表示)
市街地の住居について、都道府県、郡、市、区及び町村の名称と、次のいずれかの方法によって定められる記号によって表示される。

1)街区方式:街区ごとに付される街区符号及び住居番号
1)道路方式:道路ごとに付される道路名及び住居番号

表示は市町村が定め、住居表示の方法と、街区符号及び住居番号(街区方式の場合)又は道路の名称及び住居番号(道路方式の場合)が告示されている。大部分の市町村は、街区方式による表示を選択している。

通常、住所を表示する場合は、この住居表示による所在地が使われる。たとえば、重要事項説明書の不動産の表示欄のうち建物について記載されている「住居表示」がこれに該当する。しかしながら、取引の対象とする不動産の所在地は、不動産登記に基づく表示を用いるのが原則である。

所得控除

所得税の計算において、所得から差し引くことができるさまざまな控除のこと。

所得控除には、社会保険料控除、生命保険料控除、損害保険料控除、配偶者控除配偶者特別控除扶養控除基礎控除、医療費控除などがある。

給与所得者の場合には次の計算によって課税総所得金額が計算される。
給与収入 - 給与所得控除 - 所得控除 = 課税総所得金額」

この課税総所得金額に所得税率を掛けることにより、所得税額が算出される。

所得税

個人の所得に対して課される税金で、国税である。

課税の対象となる所得は、給与所得、事業所得、利子所得、配当所得、不動産所得譲渡所得、退職所得、山林所得、一時所得、雑所得に分類されている。たとえば、家賃収入など不動産の貸付けによって得る収入は不動産所得、不動産の譲渡によって得る収入は譲渡所得である。

所得額の計算は、所得の種類ごとに定められている方法で行なう。課税額は、退職所得及び山林所得以外の所得については、それぞれの所得額を合算した金額をもとに算定する(総合課税)。また、退職所得および山林所得については、他の所得から分離してそれぞれの課税額を算定する。

所得税の課税額は、(1)所得額から、社会保険料控除、医療費控除、配偶者控除配偶者特別控除扶養控除基礎控除などの控除対象となる金額の合計額を減じてその差額を求め(これが課税所得金額)、(2)課税所得金額に所得税率を乗じ、(3)さらに、乗じて得た金額から、配当控除、住宅ローン控除(住宅ローン減税)、住宅耐震改修特別控除等の税額控除の対象となる金額の合計額を差し引いて算出する。これが納付すべき税額(基準所得税額)である。

所得税については累進課税制度が採用され、その税率は、課税所得金額が195万円までは5%、これを超える金額については、一定の額を超えるごとに、10%、20%、23%、33%、40%、45%と高くなっていくように設定されている。

なお、2013年から37年までは、復興特別所得税額(基準所得税額に2.1%を乗じた金額)を加算して納税しなければならない。

また、所得税は申告によって納付するが、申告納税額は、基準所得税額と復興特別所得税額の合計額から源泉徴収税額および外国税額控除額を差し引いた残りの金額である。従って、申告の必要がない場合もあるし、申告によって税金が還付される場合もある。

処分禁止の仮処分

債権者が金銭債権を持っているとき、債務者の財産状況の悪化などの事情がある場合には、裁判所は債務者に対して、財産の売却等を当分の間行なわないよう命令することができる。
この裁判所の命令を「仮差押」と呼んでいる。

しかしながら、金銭債権以外の債権については、こうした仮差押を行なうことができないので、その代わりに「処分禁止の仮処分」が用意されている。

例えば、A氏が土地をB氏に売却したが、B氏が代金を支払ったにもかかわらず、A氏が土地の登記名義をB氏に移そうとしないというケースでは、B氏が登記名義を取得しない間に、A氏がその土地を第三者に売却してしまう可能性がある。
そこでB氏は、裁判所に対して、当該土地の第三者への売却を一時的に禁止するように申請することができる。

裁判所はB氏に相当な理由があると認めたならば、A氏に対して「処分禁止の仮処分」を命令することができる。
この「処分禁止の仮処分」が行なわれると、A氏は当該土地を第三者に売却することができなくなる(もし第三者に売却したとしても、B氏がA氏に対する裁判で勝訴した場合には、第三者はその土地の取得をB氏に主張することができなくなる)。

処分禁止の仮処分の登記

処分禁止の仮処分」が行なわれた場合に、登記簿に記載される登記のこと。

書面申請(不動産登記における~)

不動産の登記を、書面で申請すること。
2005(平成17)年3月7日に施行された新しい不動産登記法(以下、新不動産登記法という)では、登記申請は原則としてオンライン申請によるものとされている。
ただし、現時点ではオンライン申請が可能な登記所(これをオンライン庁という)は限定されており、極めて数が少ない。
オンライン庁以外の登記所(これを未指定庁という)ではオンライン申請ができないので、従来どおり書面申請によって登記を申請することになる。

なお、オンライン庁では、オンライン申請ができるだけでなく、書面申請をすることもできる。つまりオンライン庁では、オンラインでも書面でもどちらでも申請できる制度になっている。

ところで、従来は、登記申請するには、原則として必ず登記所に出頭する必要があるとされていた(出頭主義)。しかし、新不動産登記法ではすべての登記所において、郵送で登記を申請することが認められている。このような郵送による書面申請のことを郵送申請という。

書面によらない贈与

贈与とは、当事者の一方がある財産権を相手方に無償で移転する意思を表示し、相手方がそれを受諾する意思を表示し、双方の意思が合致することによって成立する契約である(民法第549条)。
わが国の民法では、贈与を「書面による贈与」と「書面によらない贈与」に区分し、両者に異なった取扱いを設けている。

「書面による贈与」とは、贈与者による贈与の意思が現れた書面が存在する贈与である。書面による贈与は書面が存在する以上、もはや撤回することができない。「書面によらない贈与」は、原則的にいつでも撤回することができるが、履行が終わった部分については撤回できないとされている(民法第550条)。

このように、書面の存在によって取扱いが大きく異なる。しかも「書面」の範囲は広く解釈されており、できるだけ贈与の撤回を認めないという解釈が一般的である(詳しくは書面による贈与へ)。

また、書面によらない贈与であっても「履行が終わった部分」はもはや撤回できない。

では、「履行が終わる」とはどのような状態を指すのか。これは原則的には現実に引き渡したか、または登記名義を移転させた状態を指すが、判例ではゆるやかに解釈することがある。

書面による贈与

贈与とは、当事者の一方がある財産権を相手方に無償で移転する意思を表示し、相手方がそれを受諾する意思を表示し、双方の意思が合致することによって成立する契約である(民法第549条)。
わが国の民法では、贈与を「書面による贈与」と「書面によらない贈与」に区分し、両者に異なった取扱いを設けている。

「書面による贈与」とは、贈与者による贈与の意思が現れた書面が存在する贈与である。書面による贈与は書面が存在する以上、もはや解除することができない。「書面によらない贈与」は、原則的にいつでも解除することができるが、履行が終わった部分については解除できないとされている(民法第550条)。

では、「書面による贈与」とは具体的にはどのようなものだろうか。判例では贈与における「書面」については、およそ次のような解釈がなされている。
まず、書面とは贈与の成立と同時に作成される必要はなく、事前や事後に作成されたものでもよい。
次に、書面には贈与を証する書面であると明記されている必要はなく、贈与の意思が現れていればよい。

また、書面は受贈者に宛てた書面である必要はなく、第三者に宛てた書面でもよいし、また自分の日記などに贈与の意思を記載したものであってもよい。

このように判例によれば、書面とは、贈与者の贈与の意思が明確にされている書面を指すのであり、その宛先や文言、作成目的、作成時期などは緩やかに解釈している。こうすることにより書面による贈与の成立を容易にし、贈与の解除は事実上難しくなっている。

書面の電子化

書面が必要とされている手続き等について、電磁的な方法による手続き等を認め、書面化を不要にすること。「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(2021年制定)によって措置された。

不動産取引においては、次の書面について電子化されている。ただし、いずれの場合も、書面の作成・交付を電磁的な方法に代えることについて、取引の相手方の承諾が必要である。

(1)媒介契約書(媒介契約締結時に作成、交付しなければならない書面)

(2)重要事項説明書(重要事項等を記載し、交付しなければならない書面)

(3)賃貸借契約書・売買契約書(賃貸借売買の契約締結時に交付しなければならない書面)

 書面の電子化に当たっては、取引相手方の承諾を得るとともに、電子署名等によって本人証明や文書改ざんがないことの証明を行なうこと、電子書面を「電子帳簿保存法」に定められた方法で保管することなどが必要である。

なお、書面の電子化にあわせて、書面に押印する義務は、(2)(3)については不要とされた。

所有権

法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利をいう。

物を全面的に、排他的に支配する権利であって、時効により消滅することはない。その円満な行使が妨げられたときには、返還、妨害排除、妨害予防などの請求をすることができる。
近代市民社会の成立を支える経済的な基盤の一つは、「所有権の絶対性」であるといわれている。だが逆に、「所有権は義務を負う」とも考えられており、その絶対性は理念的なものに過ぎない。

土地所有権は、法令の制限内においてその上下に及ぶとされている。その一方で、隣接する土地との関係により権利が制限・拡張されることがあり、また、都市計画などの公共の必要による制限を受ける。さらには、私有財産は、正当な補償の下に公共のために用いることが認められており(土地収用はその例である)、これも所有権に対する制約の一つである。

所有権以外の財産権の取得時効

取得時効とは、物を一定期間占有したとき、その物の権利を取得することができるという時効の制度であるが、わが国の民法では、所有権の取得時効を定める(民法第162条)だけでなく、地上権地役権などの所有権以外の財産権の取得時効も定めている(民法第163条)。

所有権の取得時効は、占有開始時点において善意かつ無過失であれば10年間の短期取得時効、占有開始時点において悪意または有過失であれば20年間の長期取得時効が適用される。

地上権・地役権などの所有権以外の財産権の取得時効についてもこれと同様の区分がされており、時効期間を起算する起算点において自分が正当な権利者であると信じており、そう信じるにつき無過失であれば、時効期間は10年とされるが、悪意または有過失であれば時効期間は20年となる(民法第163条)。

所有権の取得時効は「所有の意思をもって」「占有」を継続することが要件とされるが、地上権・地役権などの所有権以外の財産権の取得時効では「自己のためにする意思をもって」「権利の行使」を継続することが要件とされる。

「自己のためにする意思」とは、例えば地上権であれば、「土地を使用するという意思」を持っていることである(自分が正当な地上権者であると信じることは必要でない。すなわち悪意であってもよい)。

また「権利の行使」とは具体的には「権利を行使し、そのことを客観的に外部に表示すること」であると解釈されているが、例えば地上権の場合に、単に土地を占有していればよいのか、それとも建物建築する必要があるのかについては意見が分かれている。
なお、賃借権については賃料の支払いが必要とされた判例がある(詳しくは賃借権の取得時効へ)。

所有権の保存の登記

初めてする所有権の登記のこと。登記記録上では、権利部甲区に「所有権保存 所有者A」のように記載される。

所有権の保存の登記をすることができるのは、原則として、表題部所有者である(不動産登記法第74条)。

所有権移転登記

不動産所有権を移転したときに、その旨を登記すること。法務局に申請し、登記簿の権利を表示する欄(権利部(甲区))に、登記目的が所有権移転であること、権利移転の原因・日付、移転先権利者の名義(必要に応じて持分割合)を記載する。

権利移転の原因には、売買、贈与相続共有物分割などがある。また、新築家屋のような新たな不動産の所有権を登記する場合は、「所有権保存登記」を行なうこととなる。

なお、土地と建物は別々に登記する。また、所有権移転登記は義務ではないが、登記がないと当該所有権について第三者に対抗することができない。

所有者不明建物管理命令

所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない建物(共有の場合には知ることができない共有持分)について、管理の必要性があるときに、裁判所が、管理人(所有者不明建物管理人)を選任し、その建物の管理を命令する処分。民法の改正によって創設された制度である(2023年4月1日施行)。土地についても類似の制度(所有者不明土地管理命令)がある。

所有者の所在が不明な建物等の管理・処分を行なうための制度として、裁判所が、不在者財産管理人や相続財産管理人を選任して管理・処分する仕組みがある。しかしこれらは、対象者の財産全般を管理する仕組みであって、特定の建物等を管理する場合には利用できない。所有者不明建物管理命令は、その必要に応えるべく創設された制度である。

所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物の利害関係人の請求によって、裁判所が、i)調査を尽くしても所有者またはその所在を知ることができないこと、ii)管理状況等に照らし管理人による管理の必要性があること、の両方を認めた場合に決定される。その効力は、所有者不明建物のほか、建物にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)にも及ぶ。

所有者不明建物等の管理権限は、所有者不明建物管理人に専属する(訴訟の当事者にもなる)。この場合、保存行為や建物等の性質を変えない利用・改良行為は自身の判断で行なえるが、これらの範囲を超える行為(例えば建物の取り壊し)をするには、裁判所の許可が必要である。また、所有者不明建物管理人は、所有者に対して善良な管理者の注意義務を、共有持分に係る管理人は、共有者全員に対して誠実かつ公平な権限行使義務を負う。

なお、区分所有建物については、所有者不明建物管理命令は適用されない。

所有者不明土地

探索しても所有者を確知できない土地。所有者が不明な場合のほか、所有者の所在が分からない場合も含まれる。

土地所有者の探索は、公的書類等による調査や聞き取り調査によるが、所有者が判明しなかったり、判明しても所在が不明の場合が少なくなく、また、長期にわたって相続登記がなく、数次の相続を経ているため所有者が多数にのぼるなど探索が困難な場合もある。このため、土地の公共的な利用に支障が生じることがある。

そこで、2018(平成30)年に、一定の事業のために特定の所有者不明土地を円滑に利用すること、所有者不明土地の財産管理人の選任申立権を地方公共団体の長等に付与すること、名義人死亡後長期間相続登記等がされていない土地である旨を登記に付記することなどの制度が創設された(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)。

所有者不明土地管理命令

所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地(共有の場合には知ることができない共有持分)について、管理の必要性があるときに、裁判所が、管理人(所有者不明土地管理人)を選任し、その土地の管理を命令する処分。民法の改正によって創設された制度である(2023年4月1日施行)。

所有者の所在が不明な土地等の管理・処分を行なうための制度として、裁判所が、不在者財産管理人や相続財産管理人を選任して管理・処分する仕組みがある。しかしこれらは、対象者の財産全般を管理する仕組みであって、特定の土地等を管理する場合には利用できない。所有者不明土地管理命令は、その必要に応えるべく創設された制度である。

所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地の利害関係人の請求によって、裁判所が、i)調査を尽くしても所有者またはその所在を知ることができないこと、ii)管理状況等に照らし管理人による管理の必要性があること、の両方を認めた場合に決定される。その効力は、所有者不明土地のほか、土地にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)にも及ぶ。

所有者不明土地等の管理権限は、所有者不明土地管理人に専属する(訴訟の当事者にもなる)。この場合、保存行為や土地等の性質を変えない利用・改良行為は自身の判断で行なえるが、これらの範囲を超える行為(例えば売却)をするには、裁判所の許可が必要である。また、所有者不明土地管理人は、所有者に対して善良な管理者の注意義務を、共有持分に係る管理人は、共有者全員に対して誠実かつ公平な権限行使義務を負う。

なお、建物についても類似の制度(所有者不明建物管理命令)がある。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

所有者不明土地の利用の円滑化や、土地の所有者の効果的な探索を図るために必要な措置を定めた法律。2018年に制定された。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が定める主な措置は、次の通りである。

(1)所有者不明土地の利用円滑化のための措置

 ア)一定の要件を満たす所有者不明土地(特定所有者不明土地)について、公共事業における収用手続きにおいて収用委員会による審理手続きを省略することができる。

 イ)特定所有者不明土地に対して、地域福利増進事業に利用する権利を設定することができる。

(2)所有者の探索を合理化するための措置

 ア)行政機関は、土地の所有者の探索のために必要な公的情報を利用することができる。

 イ)登記官は、所有権の登記名義人の死亡後に相続登記等がされていない土地であって、公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るためその所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるもの(特定登記未了土地)で一定の要件を満たす土地について、特定登記未了土地である旨等を職権で登記できる。

(3)所有者不明土地を適切に管理するための措置

 地方公共団体の長等は、所有者不明土地について、家庭裁判所に相続財産の管理人の選任を請求できる。

所要時間(徒歩所要時間)

歩いてかかる時間のことだが、不動産広告で徒歩所要時間を表示する場合には、不動産の広告を規制する「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」により、徒歩1分が80mに相当するものとして計算する(不動産の表示に関する公正競争規約規約第15条第11号)。

さらに詳しくいうと、徒歩所要時間は次のルールで算出する必要がある。

1.直線距離ではなく、道路に沿って測定した距離(道路距離)をもとにする。
2.道路距離80mを徒歩1分に換算する。
3.80m未満の端数が出たときは、切り上げて1分とする。例えば、道路距離が100mならば、徒歩所要時間は「2分」となる。
4.駅からすぐに物件があるときでも、「駅から徒歩0分」ではなく、「駅から徒歩1分」と表示しなければならない。
5.車両通行量が多い道路や鉄道などを越えるために、横断歩道・歩道橋・踏切りを経由しなければならないときは、それを経由するために余分に歩く距離を含める必要がある。
6.横断歩道や踏切り等を横断するとき、信号待ちの時間は考慮しなくてよい。
7.坂道があるために実際に歩く時間が長くなるときでも、やはり道路距離80mを徒歩1分に換算してよい。

ショーケース

商品を展示・陳列する棚。英語のshowcase。

ショーウインドーと同様に、商品を展示して顧客に訴求する役割を果たす。また、商品だけでなく、収集品などを飾るためにも用いられ、飾り棚と同じ機能を担うこともある。

ショートセール

担保残債価額よりも安い価額で販売される住宅、またはそのような住宅販売をいう。

ローン債権の行使が担保物件に限定されるような融資(ノンリコース)が多いアメリカで見られる。

一般に、住宅ローンの担保に供されている住宅は、残債を返済しなければ売買できないが、債権者が販売額を超える部分の債権を放棄することに同意すれば、残債額よりも安い価格で販売することができる。そのようにして販売される住宅がショートセールである。
ショートセール物件は、市場価格よりも安く販売される場合もあるが、債権者の同意に期間を要することなどに注意が必要であるとされる。

ショールーム

商品の陳列室。英語のshowroom。

商品見本を展示して、顧客の関心を引きつける場所として使われる。従って、陳列の際には、実際の利用状態を示して商品理解を深めるなど、展示に工夫がなされていることが多い。

たとえば、マンションのショールームとして展示されるモデルルームは、家具や小物などを置いて生活感を漂わせる演出がなされている。

使用細則

分譲マンションのような区分所有建物において、管理規約に基づいて設定される共同生活上の詳細なルールのことを「使用細則」という。

この使用細則は、区分所有者集会において管理規約とは別途に作成される規則であり、共同生活において遵守すべきルールを詳細に定めるものである。
その内容は分譲マンションごとにさまざまであるが、一般的にはおおむね次のような事項が「使用細則」に規定されている。

1.禁止される事項(物の放置・共用部分に係る工事など)
2.管理組合に届出を必要とする事項(入居者の変更・専有部分の賃貸など)
3.駐車場・駐輪場専用庭の使用に関する事項
4.ゴミ処理
5.違反者に対する措置

なお、上記の事項の全部を一つの使用細則で定める必要はなく、目的ごとに複数の使用細則を作ることも可能である(例えば全般的なルールについては「使用細則」、駐車場については「駐車場使用細則」を設けるなど)。

また、使用細則で規定されている事項は、多くの場合、共同生活のルールに関する事柄であるので、原則的には、集会の普通決議によって変更することが可能である(すなわち集会の特別決議を経る必要がない)。

ただし使用細則の変更が、管理規約の内容の変更に該当する場合や、建物敷地の管理・使用に関する基本的事項の変更に該当する場合には、管理規約そのものの変更の手続きを踏む必要がある。
従ってこうした場合には、集会の特別決議(区分所有者の4分の3以上かつ議決権の4分の3以上)が必要となる。

このように使用細則中の変更しようとする部分の性質によって、変更手続きが大きく異なるので注意したい。

使用収益

私法上の概念で、物を直接に利活用して利益・利便を得ることをいう。

使用収益するためには、その物を直接に支配する権利(物権)が必要である。

仕様書(建築物等の工事における〜)

工事を注文するときに、その内容や実施方法を指示する図書。例えば、建築工事の発注に当たっては、通常、工事請負契約書に仕様書を添付し、契約内容の一部とする。

仕様書を作成するのは一般に設計者である。記載される事項は、使用する材料・部品・設備の規格・品質・寸法等、施工の手順・方法、検査の方法など。また、仕様書は、工事の種類に応じて共通する事項を定めた「共通仕様書」と、その工事に固有の技術的な水準、施工上の制約事項などを定めた「特記仕様書」に分けて示されることが多い。

使用貸借

動産不動産を有償で貸し付ける契約が「賃貸借契約」であるが、無償で貸し付ける契約は「使用貸借契約」と呼ばれる。

使用貸借契約については、借地借家法が適用されず、民法第593条から第600条が適用される。また無償で貸し付けているため、使用貸借契約においては、貸主は原則としていつでも借主に対して契約を解除し、物の返還を要求することができる(ただし、存続期間を定めているときはその期間が満了するまでは物の返還を要求できない)(民法第597条)。

実際には使用貸借契約は、会社とその経営者の間で締結されたり、親子間で締結されることが多い。また契約書が存在せず、口約束で行なわれることも多い。
例えば会社の経営者が、個人名義の土地の上に会社名義の建物建築するケースや、親名義の土地の上に子名義の建物を建築するケースなどである。

なお税法上の相続財産評価においては、使用貸借契約により土地を貸借する権利の経済的価値はゼロと評価されている。

白木

樹皮を除去したのみで、色付けや塗装が施されていない木。白い木肌と手触りの良さが特徴とされる。白木による造作が「白木造り」である。

なお、「白木」は、トウダイグサ科シラキ属に分類される落葉小高木の一種を指す樹木名としても使われている。

シリコン

ケイ素。原子番号14の元素で、元素記号はSi(ラテン名:silicium)。siliconは英語名である。

二酸化ケイ素のような化合物のかたちで地殻中に多量(酸素に次いで2番目の量)に存在している。二酸化ケイ素を主成分とする物質は、水晶、石綿、ガラスなどである。

単体のシリコンは、半導体の素子や合金の添加元素としてもよく使われている。たとえば、半導体の集積回路はシリコンの薄片に埋め込まれているが、このような製品は「シリコンチップ」と総称される。

なお、「シリコン」に似た用語に「シリコーン」(英語名:silicone)があるが、これは有機ケイ素化合物(炭素とケイ素が結合してできた物質)の重合体であって、元素のシリコンとは別の物質である。シリコーンは、耐熱性・耐寒性に優れた有機物であることから、シリコーン油、シリコーンゴム、シリコーン樹脂などとして利用されている。

資力確保措置(住宅瑕疵担保履行のための~)

新築住宅を引き渡す場合に、瑕疵担保の履行を確保するために必要とされる措置をいう。

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律によって、2009平成21(平成21)年10月1日以降の引渡しについて義務化された。

資金確保義務を負うのは、新築住宅の建築を請け負った建設業者または新築住宅の売主となる宅地建物取引業者である。
この場合、新築住宅の発注者や買主が宅地建物取引業者である場合には、資金確保措置は不要である。

確保措置の方法は、保険加入と供託とがある。保険による方法は、国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人が保険者となる保険に加入する。
この場合、保険法人は例外なく保険の申込みを受け付ける義務がある。また、供託による方法は、引き渡した住宅戸数に応じて決められた額の保証金を法務局に供託する。

シルバーハウジング

高齢者専用の公的賃貸住宅をいう。

構造・設備がバリアフリー化され、ライフサポートアドバイザー(生活援助員)による安否確認・生活相談・緊急時の対応・疾病時の一時的家事援助等の生活支援サービスが提供される。
入居対象者は、自立可能な60歳以上の高齢者・障害者の世帯・単身者で、公営住宅への入居資格が通常の場合よりも緩和される。

シルバーマンション

高齢者の居住の利便性を高めた集合住宅のこと。ケアマンションともいう。

空間の設計や設備が高齢者の居住に適する他、介護、給食など日常生活に対する支援サービスを伴うことが多い。分譲、賃貸の両方のタイプがある。

高齢者の居住に関しては、

1.バリアフリーユニバーサルデザインを採用するなどの空間・設備デザインについての工夫、2.生活の手伝いや健康保持・医療サービスのような高齢者向け支援の提供、3.住宅費、生活費、医療費などを含めた経済的な負担の管理に対する支援

を総合的に考えなければならない。

シロアリ

木材(セルロース)を主食とし、木造建物に大きな損害を与える昆虫。シロアリ目(等翅類)に属する昆虫の総称で(ゴキブリ目に分類されることもある)、体色が白く、アリ(ハチ目アリ科)とは種類が違う。

シロアリは、放置すると木質建材に対して大きな損傷を与えることが多いが、木材の内部で生息するため発見が難しい。シロアリの予防・駆除の方法としては、木質部に対する駆除剤の塗布・注入、薬剤散布による土壌処理などがある。

白色申告

不動産の貸し付けを行なう個人は、その不動産所得について、税務署の承認を受けて「青色申告」を行なうことができ、青色申告にはさまざまなメリットが用意されている。
しかし、所得が少ない場合には、税法上のメリットを受ける余地も少ないので、青色申告を行なわず、普通の確定申告を行なうことが多い。これを青色申告と対比するために「白色申告」と呼んでいる(確定申告書が青くないという意味である)。

不動産の貸し付けを行なう個人が、その不動産所得について白色申告を行なう場合、不動産の貸付けが「事業的規模」に達しているならば、家族従業員について「専従者控除」を受けることができる。

白地

公図の上で地番が付されていない国有地のことを「白地」という。

白地の多くは道路であるが、中には土手や資材置場など、市町村が把握・管理していない国有地もある。このような管理されていない国有地である白地は、長年月のうちに隣接する民有地に取り込まれてしまった形となり、民間建物の敷地になっている場合も少なくない。
そのため、不動産取引にあたって白地の存在が問題になる場合がある。売買の対象となる土地に白地が含まれている場合には、白地は国有地であるから、売買取引の前に、市町村に対して国有地払い下げの手続きを申請する必要があることに留意しなければならない。

真壁

軸組(柱・など)をあらわにして、軸組の内側に下地を設け、土塗り等で仕上げたもの。

伝統的な日本家屋ではよく用いられていたが、現在ではほとんど見られない。

新居

新築し、または引っ越して、新たに住むこととなった居宅。新居に移る前の居宅を「旧居」という。

信義則(信義誠実の原則)

権利の行使および義務の履行は、信義に従い誠実に行なわなければならないとする原則をいう。

この原則は、契約の趣旨を解釈する基準にもなるとされ、当事者相互が、相手方が持つであろう正当な期待に沿うように行動することを要請しているのである。

どのような場合に信義誠実の原則を適用するかは、具体的な事情に応じて決定するほかない。例えば、不動産仲介業会社は、直接の委託関係はなくとも、業者の介入に信頼して取引を成すに至った第三者一般に対しても信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があるとする判例もある。判断に当たって、置かれた立場や社会的な信頼などが考慮されるということである。

なお、民事訴訟法は、当事者の訴訟行為について信義誠実義務を課しているが、これは一般的な信義誠実の原則とは別のより厳密な義務であると考えてよい。

シンク

調理の際に水洗いし、洗い水を流し去るため、台所に備え付けられている水槽をいう。英語のSink、その和名は「流し」である。シンクを設置した設備を「流し台」といい、システムキッチンには流し台が組み込まれている。

シンクで重要なのは排水機能で、水詰まりや逆流が起きないように設置しなければならない。

なお、流し台のことをシンクと呼ぶこともある。また、英語のSinkには、台所の水槽だけでなく、各種の洗浄に用いる水槽や下水溜めなどの意味もある

シングル葺き

薄い板を並べるという最も基本的な屋根の葺き方をいう。

このとき板の種類が金属板であれば「金属板葺き」、スレートであれば「スレート葺き」、アスファルトシングルであれば「アスファルトシングル葺き」と呼ばれるが、いずれも「シングル葺き」の一種である。

親権者

親が成年に達しない子を保護し監督することを「親権」という。

親は、子が未成年者である間は、民法の規定により「親権者」とされる(民法818条)。

親権者には次の2つの強い権限がある(民法824条)。

1.子の財産を管理する権限
2.子の法律行為を代理する権限

この親権は原則として父母が共同して行なうこととされている(民法818条3項)。
ただし父母のどちらか一方が、共同であると偽って親権を行使した場合には、そのことを知らなかった第三者については、その親権の行使は父母の共同であったものとみなされる(民法第825条)。

例えば、未成年者が賃貸借契約を締結するにあたって、母が父に事情を知らせないまま、母がこの契約締結について父母共同の同意を与えたとする。
この場合、本来ならば父母が実際に共同で同意を与えない限り、その契約は取消しが可能なものとなるはずである。
しかし上記の民法第825条によって、母の同意が父母共同の同意であるとみなされるので、その結果、事情を知らなかった契約の相手方(即ち善意の貸主)は保護されることとなる。

なお死別等により親権を行なう親がいないとき(または親が親権を喪失したとき等)については、親権者の遺言または家庭裁判所の選任により、未成年後見人が置かれる。

申告分離課税

上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益(譲渡所得)に対して、個人投資家が給与所得などのほかの所得と分離して、独自に税額を計算し、確定申告を行なって納税すること。

上場株式等の売却益は、給与所得・事業所得・不動産所得とは別に、独自の「譲渡所得」として課税される仕組みになっており、これを「分離課税」という。

分離課税の場合には、給与所得等の額にかかわらず、税率は原則20%(所得税15%、住民税5%)である。また、源泉徴収口座(後述)を選択した場合以外は、必ず確定申告を行なわなければならない。

ただし2013(平成25)年から2037(平成49)年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を申告・納付しなければならない。

また、申告分離課税において、個人投資家が自ら確定申告を行なうという手続き負担を軽減するために「特定口座」の制度(金融商品取引業者等が年間の譲渡損益を計算する制度)が設けられている。特定口座には、証券会社が納税まで代行する「源泉徴収口座」と、証券会社が売却益の計算だけを行なう「簡易申告口座」がある。

なお、申告分離課税制度は、山林所得、土地建物等の譲渡による譲渡所得、一定の先物取引による雑所得等についても適用されている。

新証券税制

2003(平成15)年1月1日以降の上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の譲渡益等に対して適用される所得税等の仕組みのこと。

申告分離課税への一本化」、「特定口座」、「譲渡損失の繰越控除」を主な内容としている。

1.申告分離課税への一本化
2002(平成14)年末までは、株式譲渡益に対する所得税の課税方法は、売却代金の1.05%の納税ですべて完結するという「源泉分離課税」の制度が存在していた(詳しくは源泉分離課税へ)。

しかし、「源泉分離課税」の制度は2002(平成14)年末をもって廃止されたため、2003(平成15)年1月1日以降の上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却による利益については、個人投資家が自ら確定申告を行なって納税するという「申告分離課税」の制度のみが適用されている。

この申告分離課税の制度では、上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益に対して、他の所得と分離して、20%(所得税15%、住民税5%)の税率で課税される。

ただし、2003(平成15)年1月1日から2011(平成23)年12月31日までの時限的な優遇措置として、この分離課税の税率は10% (所得税7%、住民税3%)へと軽減されている。

2.特定口座
上記のように申告分離課税が導入されたため、上場株式等への投資をする個人投資家は、必ず税務署に対して確定申告書を提出しなければならない。しかし、確定申告の手続きは非常に手間がかかり、個人投資家に大きな負担を強いるものであった。

そこで、個人投資家の取引口座を持っている証券会社が、取引口座の売買データをもとにして、個人投資家の代わりに税務署に対して確定申告を行なうなどの簡便な申告制度が導入された。これを「特定口座」と呼んでいる。

個人投資家が自己の取引口座を「特定口座」に指定すると、証券会社では毎月の株式等の売買履歴をもとにして毎月の売却益を計算し、証券会社が個人投資家の取引口座から、売却益に対応する税額(売却益の10%)を自動的に徴収(天引き)する。

ただし特定口座には、毎月の売買履歴から売却益を計算するだけにとどめて、証券会社による税額の天引きを行なわないという方式のものも存在する。

前者は「特定口座(源泉徴収あり)」、後者は「特定口座(源泉徴収なし)」として区別されている(詳しくは特定口座へ)。

3.上場株式等の譲渡損失の繰越控除
上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の取引に係る売却損を、損失が生じた翌年以降の3年間にわたって、株式等に係る譲渡所得の金額から控除できるという制度。
2003(平成15)年1月1日に導入された新制度である(詳しくは上場株式等の譲渡損失の繰越控除へ)。

新住宅市街地開発事業

都市計画で定められた市街地開発事業の一つで、住宅に対する需要が著しく多い地域において良好な住宅市街地の開発を目的として実施される事業をいう。

宅地の造成、公共施設の整備、造成された宅地の処分などによって、住区(住宅市街地の単位で、1ha当たり80人から300人を基準として6,000人から1万人が居住することができる地区)を形成することにより、住宅地を供給する役割を担う。

事業手法は、事業区域の土地を全面的に買収し(最終的には収用できる)、造成した宅地を住宅の需要者に売却する方法であるが、売却する際に、原則として譲受人を公募すべきこと、譲受人に住宅の建築義務を課すこと、義務違反等の場合の買戻特約を付すことなどが必要とされていることが特徴である。
これは、最終的には収用することになる土地を別の私人に譲り渡すことになるため、宅地処分の公共性を確保する必要があるとされる。

大都市圏の近郊に大規模な住宅市街地を建設するために活用され、多摩ニュータウン、千葉ニュータウンなどはこの事業によって建設された。

なお、事業の仕組みは「新住宅市街地開発法」に規定されている。

浸水想定区域

河川の氾濫、雨水の排除ができないことによる出水、高潮による氾濫が起きた場合に浸水が想定される区域。水防法に基づき、国土交通大臣又は都道府県知事が指定する。

浸水想定区域には、その原因に応じて、洪水浸水想定区域、雨水出水浸水想定区域、高潮浸水想定区域の種類がある。

浸水想定区域に指定された区域については、洪水予報等の伝達方法、避難場所および避難経路、避難訓練の実施など、円滑かつ迅速な避難の確保を図るための措置について定めがある。また、浸水想定区域および避難確保措置は、ハザードマップ等に記載し公表されている。

浸水被害軽減地区

浸水の拡大を抑制する効用があると認められる区域として水防管理者が指定した地区。水防法に基づいて指定される。

浸水被害軽減地区は、洪水氾濫の際に浸水拡大を抑制する施設として活用するため、その保全を図る地区で、指定されるのは、次の両方を満たす区域である。
1)洪水浸水想定区域(想定し得る最大規模の降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域)内の区域
2)帯状の盛土構造物が存する土地の区域(たとえば輪中堤防)
浸水被害軽減地区においては、土地の掘削、盛り土または切り土その他土地の形状を変更する一定の行為をしようとする者は、行為に着手する日の30日前までに、行為の種類、場所、設計又は施工方法、着手予定日等を水防管理者に届け出なければならない。届出があった場合に、水防管理者は、当該浸水被害軽減地区が有する浸水の拡大を抑制する効用を保全するため必要があると認めるときは、届出をした者に対して、必要な助言又は勧告をすることができる。

また、浸水被害軽減地区における行為の制限は、宅地建物取引業法における重要説明事項である。

浸水被害防止区域

洪水や雨水によって住民等の生命・身体に著しい危害が生じるおそれがあるとして指定された区域。原則として、流域水害対策計画において床上浸水(水深50cm以上)が想定される区域が対象となる。浸水被害防止区域に指定されると、一定の開発・建築について制限がある。特定都市河川浸水被害対策法に基づく制度で、区域の指定は、都道府県知事等が行なう。

 浸水被害防止区域内の行為制限は、次のとおりである。

 (1)開発行為の制限

予定建築物が要配慮者施設など一定の用途である開発行為をしようとする者は、あらかじめ都道府県知事等の許可が必要である。許可を得るためには、崖面の保護など浸水が発生した場合における土地の安全上必要な措置を講じなければならない。

 (2)建物用途の制限

建物用途が、非自己居住用住宅、要配慮者施設(要配慮者が利用する社会福祉施設、学校、医療施設等)、市町村が条例で定める円滑な避難が期待できない施設である場合には、建築しようとする者は、あらかじめ都道府県知事等の許可が必要である。許可を得るためには、想定洪水等に対して安全な構造で、かつ、居室の床面の高さが基準水位以上でなければならない。

 なお、宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、浸水被害防止区域に関する制限について重要事項として説明しなければならない。

浸水予測図

洪水や津波が起きた場合を想定して、浸水が予想される区域や想定される浸水深を示した地図をいい、公表されている。浸水想定区域図、浸水予想図などともいわれる。浸水の危険性を周知し、事前の予防策を講じるための基礎的な情報として活用されている。

このうち浸水想定区域図は、水防法によって指定された洪水予報指定河川および水位周知河川(避難判断水位(特別警戒水位)への水位の到達情報を通知・周知する河川)について、河川整備の基本となる降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域や想定される水深を示したもので、国土交通省または都道府県が公表している。
浸水の予測は、一定の条件を設定したうえでのシミュレーション結果に基づいている。例えば、浸水の原因としては、破堤、溢水、内水の滞留、津波などがあり、予測の前提とする降雨や津波の強度なども過去の災害実績や発生予測に基づく仮定のものである。従って、浸水予測図を活用する場合には予測条件を注意深く確認しなければならない。

申請情報(不動産登記における~)

不動産登記を申請するにあたって必要となる情報のこと。従来の不動産登記制度における「登記申請書」に相当する。

2005(平成17)年3月7日から施行されている新たな不動産登記法(以下、新不動産登記法という)では、さまざまな用語がオンライン申請に対応できるように改められた。
オンライン申請では登記申請書自体を提出することがなくなり、必要な情報をオンラインで送信することとなる。そこで、登記申請書という名称を廃止して、申請情報という名称にしたものである。

なお、新不動産登記法では、すべての登記所において書面申請郵送申請を認めているが、このような紙を提出する申請の場合であっても、やはり申請書ではなく「申請情報」と呼んでいる。

真正売買(不動産流動化における)

不動産の流動化において、オリジネーターからSPCへ真正に不動産が譲渡されたことをいう。

不動産の譲渡には、譲渡担保など真の売買ではない場合(金融取引である)があり、そのような意図で売買された不動産に対しては、譲渡者の倒産等に際して売買が否認されることがある。つまり、オリジネーターの倒産から隔離されない。そこで、譲渡が真の売買であると判断することが必要になる。これが「真正売買」の問題といわれる。

真正売買であるかどうかは、当事者の意思(不動産の買戻特約や修繕費負担の有無、リスクの移転の程度)、取引価額の適正さ、所有権移転登記などを考慮して判断すべきとされる。日本公認会計士協会は、その具体的な判断の指針(5%ルール)を公表したが、実際にもおおむねこの基準に沿って判断されている。

新耐震基準

建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年6月1日以降の建築確認において適用されている基準をいう。

これに対して、その前日まで適用されていた基準を「旧耐震基準」という。

新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されている。技術的には、地震力が加えられた場合の構造部材に生じる応力が許容応力以下であるだけでなく、一定以上の規模の建物については、靱性(粘り強さ)を確保することが求められる。また、建物強度のバランスも必要とされる。

なお、旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないような構造基準として設定されていた。

信託

財産権の移転その他の処分をなし、他人をして一定の目的に従いその財産の管理または処分をなさしめることをいう。

契約または遺言により自由に設定できる。ただし、信託を営利事業として営む場合にはさまざまな規制がある。

信託を構成するのは、特定の財産(信託財産)、財産を引き渡して管理・処分をなさしめる者(委託者)、それを委ねられる者(受託者)、その目的(信託目的)、そしてその目的に応じて成果を得る者(受益者)である。これによって、信託財産の所有権・管理処分権は受託者に帰属する一方、財産から生じる経済的な利益は受益者に帰属する。

信託の機能としては、受託者による有効な財産管理の実現(財産管理機能)、財産からの受益権の分離(転換機能)、財産が受委託者の財産から隔離・保護されること(倒産隔離機能)が重要である。また、受益者は委託者と別に存在する(もちろん委託者自身を受益者として指定してもよい)ため、信託契約の定めによって、受益する権利(信託受益権)を流通させることもできる。

委託者が自らを受益者として不動産を信託し、その後に受益権を分割して流通させれば、不動産の流動化・証券化が実現する。SPCに対応するのが受託者、SPCの発行する証券に対応するのが信託受益権証書であると考えればわかりやすい。実際にも、信託を活用した不動産の流動化・証券化の例は多い。

なお、信託の仕組みを定めた法律(信託法、1922(大正11)年制定)が、2006(平成18)年に制定以来初めて本格的に改正され、その活用の幅は大きく広がった。

信託受益権

信託において、信託財産から得られる利益を受け取る権利をいう。その権利の内容は、信託契約等において個別に定められる。

信託受益権を分割して譲渡することが可能なように信託契約で定めれば、信託受益権は株式や社債など一般の証券と同様に流通させることができる。例えば、投資信託などの受益証書は、信託受益権が分割され流通している代表的な例である。
また、信託受益権の取引については、原則として、金融商品取引法による規制の対象となる。

なお、不動産の信託受益権のなかには、その性質が不動産そのものと類似したもの(分割の禁止や譲渡の制限、信託不動産の賃借人の特定、税負担などを伴う受益権)があり、取引に当たって宅地建物取引業法が適用される恐れがあることに注意が必要である。

新築

建物を新たに建築することをいう。これに対して、従来の建物を建て直すことを「改築」という。両者を併せて「新改築」ということもある。

法令上は、一般的に、新築と改築とで取扱いが異なることはないが、新築の場合は敷地の整備を伴うことが通例であるのに対して、改築の場合は敷地整備を行わないことが多い。

新築住宅の建設住宅性能評価書

登録住宅性能評価機関が、実際に住宅を検査することにより作成した住宅性能評価書を「建設住宅性能評価書」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)第6条、同施行規則第5条)。

この建設住宅性能評価書には、新築住宅に関するものと既存住宅に関するものという2種類があるが、そのうち新築住宅に関する建設住宅性能評価書はおよそ次の手順により作成される。

1.設計住宅性能評価書の作成
新築住宅の建設住宅性能評価書を作成するためには、その前の段階として「設計住宅性能評価書」を先に作成しておく必要がある。
具体的には、新築住宅の建設工事の請負人または注文者(もしくは新築住宅の売主または買主)が、登録住宅性能評価機関に対して、設計図等の必要書類を提出して、設計住宅性能評価書の作成を依頼する必要がある(詳しくは設計住宅性能評価書へ)。

2.建設住宅性能評価書の作成の申請
新築住宅の建設工事の請負人または注文者(もしくは新築住宅の売主または買主)が、登録住宅性能評価機関に対して建設住宅性能評価書の作成を申請する。
この申請は、下記の3.で述べる検査のうち最初の検査が実施されるべき時期よりも前に申請する必要がある(建設工事がある程度進行した後では必要な検査が実施できなくなる恐れがあるため)(品確法施行規則第5条)。
またこの申請に当たっては、請負人または注文者(もしくは売主または買主)は次の3種類の書類を提出する必要がある。
1)設計住宅性能評価書またはその写し
2)建築確認を受けたことを証明する確認済証
3)国土交通省告示(建設住宅性能評価のために必要な図書を定める件)により定められている多数の書類(具体的には配置図・仕様書・各階平面図など)

3.検査の実施
登録住宅性能評価機関は原則として4回以上、建設工事が一定の進行段階に到達するたびに、建設工事の現場に立ち入って必要な検査を実施する。
この現場立入りによる検査は、設計住宅性能評価書に記載された性能のとおりに住宅が施工されているかどうかを目視や計測により検査するものである。
(ただし、空気環境の一つである「室内の化学物質の濃度等」だけは、設計住宅性能評価書の項目ではなく、建設住宅性能評価書に特有の項目である。「室内の化学物質の濃度等」を検査するには上記2)の申請において依頼者が検査を希望することが必要である)。

4.建設住宅性能評価書の作成
上記3.の検査にもとづいて、登録住宅性能評価機関は新築住宅の性能を評価し、建設住宅性能評価書を作成する(このとき評価する項目の詳細は「日本住宅性能表示基準」へ)。

新中間省略登記

合法性が高いとされる手法によって行なわれる中間省略登記をいう。

従来の中間省略登記は、権利が移転する実態を反映していないという問題があり(「中間省略登記」を参照)、また、不動産登記法の改正で手続上それが困難となった。そこで、合法的に中間省略登記を行なう手法が工夫された。その手法によって行なわれるのが新中間省略登記である。

新中間登記には、次の2つの手法があるとされる(A→B→Cの譲渡を、A→Cと登記する場合を例示する)。

1.買主の地位の譲渡を利用する手法
売買契約(A→B)、および、買主の地位を譲渡する契約(B→C)による所有権移転

2.第三者のためにする契約を利用する手法(直接移転売買)
第三者のためにする売買契約(A→B、所有権は直接Cに移転する特約付き)、および、他人物売買契約(B→C、Aの所有物をCに移転)による所有権移転

新都市基盤整備事業

都市計画に定める市街地整備事業の一つで、大都市圏の周辺に新都市を建設することを目的に実施される事業をいう。

都市の基盤となる根幹公共施設用地、開発を誘導する地区用地などを整備し、1ha当たり100人から300人を基準として5万人以上が居住できる規模の新都市の基盤を形成する役割を担う。
その背景には、大都市圏へ著しく人口が集中することに対応する必要があったとされている。

事業手法の特徴は、まず対象区域の一定割合を買収した上で、土地区画整理事業と同様の換地を行なって、根幹公共施設用地や開発を誘導する地区用地を確保・整備することである。
この場合、地権者は、所有地の一定割合を売却した上で(最終的には収用されることとなる)、残りの土地に相応する整備され土地が与えられる。つまり、土地買収と土地区画整理の手法を組み合わせる方法が用いられる。

実際に施行された事業は、一つもない。

新都市基盤整備法

新都市基盤整備事業の施行に必要な事項などを定めた法律。1972(昭和47)年制定。

この法律の目的は、人口集中の著しい大都市の周辺に新都市を建設する基盤を整備して、大都市における人口集中と宅地需給の緩和に資するとともに大都市圏の秩序ある発展に寄与することとされている。そして、そのための事業手法として新都市基盤整備事業を創設した。

新都市基盤整備事業は、区域内の土地の一定割合を事業施行者が買収または収用した上で土地整理(開発のための中核となる地区や根幹公共施設用地への所有土地の集約、その他の土地の換地・区画形質の変更など)等を行なう事業で、1ha当たり100人から300人を基準として5万人以上が居住できる規模の区域において、都市計画事業として施行することとされている。
しかしながら、今のところ実際に計画・施行された事例はない。

シンプルモダン

単純軽快で、無機的、直線的な雰囲気のあるデザインをいう。主にインテリアデザインにおいて使われている用語である。

明確な定義はないが、曲線を用いて複雑で重厚な雰囲気があるデザインの対極に位置する。

心理的瑕疵

不動産の取引に当たって、借主・買主に心理的な抵抗が生じる恐れのあることがらをいう。

心理的瑕疵とされているのは、自殺・他殺・事故死・孤独死などがあったこと、近くに墓地や嫌悪・迷惑施設が立地していること、近隣に指定暴力団構成員等が居住していることなどである。

物件の物理的、機能的な瑕疵ではないが、物件の評価に影響することがあるため、知っていながらその事実を説明しない場合には契約不適合責任を問われることがある。もっとも、何が心理的瑕疵に当たるかについての明確な基準はない。

なお、不動産の取引や取引の代理・仲介に当たって、取引対象の不動産において過去に人の死が生じた場合に宅地建物取引業者がとるべき対応を示した指針(「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」2021年)が公表されている。

心理的瑕疵の告知

宅地建物取引業者不動産の取引や取引の代理仲介を行なうときに、取引の相手に心理的瑕疵を告げること。

宅地建物取引業者は、業務を行なうときに、取引条件に関する事項であって、取引相手の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものについて、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為が禁じられている。取引対象不動産に関する心理的瑕疵も、取引の判断に重要な影響を及ぼすこととなるときには、取引相手に告知しなければならない。

しかしながら、何が心理的瑕疵に当たるかについての明確な基準はなく、また、心理的瑕疵が取引の判断に与える影響の程度は一律ではない。告知の要否や告知内容は、物件の性質、取引の内容、事由の重大性などに応じて、個別に判断することになる。

なお、不動産の取引や取引の代理・仲介に当たって、取引対象の不動産において過去に人の死が生じた場合に宅地建物取引業者がとるべき対応の指針(「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」2021年)が公表されている。

心裡留保

本人の真意とは異なる内容を、本人が外部に表示することをいう。

例えば、ある品物を買う意思がまったくないのに、冗談で「その品物を買います」と店員に言う行為が、この心裡留保に該当する。心裡留保とは「真意を心のうちに留めて置く」という意味である。

このような心裡留保による意思表示は、有効な内心的効果意思を欠くものとして無効とするという考え方もありうるが、民法ではこのような真意と異なる意思表示をする本人は法の保護に値しないとの趣旨により、心裡留保にもとづく意思表示を原則的に有効と定めている(民法第93条本文)。

ただし、心裡留保にもとづく意思表示の相手方が、本人の真意に気付いていた場合(または通常の注意力を働かせれば真意に気付いて当然であった場合)には、相手方を保護する必要がないので、心裡留保にもとづく意思表示は無効となる(民法第93条但書)。

心裡留保における第三者保護

心裡留保による意思表示において、相手方が本人の真意を知っていたとき(または真意を知るべきであったとき)には、意思表示は無効となる(民法第93条但書)。この場合において、それにより不測の損害を被る第三者を保護する規定は民法には存在しない。

そこで民法学の通説では、このような場合に第三者を保護するために、虚偽表示に関する民法第94条第2項を類推適用することを主張している。
つまり、本人(A)が心裡留保により意思表示をし、相手方(B)が本人の真意を知っていた(または真意を知るべきであった)ときに、その相手方と取引をした第三者(C)は原則として保護されるべきであるということである。
従って、AとBは、AB間の法律行為が、民法第93条但書の適用により無効である旨をCに対して原則的に主張できないことになる。
ただしCが、AB間の法律行為が民法第93条但書により無効であることを知っていた場合には、そのようなCを保護する必要はないため、この場合にはAとBは、AB間の法律行為が無効である旨をCに対して主張できることとなる。

CRE

Corporate Real Estate の略で、「企業不動産」をいう。

企業は、事業のために事務所、店舗、工場、福利厚生施設など各種の不動産を所有・賃貸借しているが、それらすべての不動産がCREである。

CREが注目されているのは、企業経営において、不動産の活用によって企業の価値を高めることができるという認識が高まったことによる。この場合、不動産の売買や賃貸借だけを考えるのではなく、経営戦略の一環として不動産を活用することが重要であるとされ、そのような視点で企業不動産を運用することを「CRE戦略」という。

そのような業務を実施するためには、企業経営と結びついた不動産マネジメントの能力が必要であるとされている。

CSアンテナ

CS(通信衛星:Communication Satellite)を利用した放送を受信するためのアンテナ。

衛星放送には、CS放送とBS放送(放送衛星:Broadcasting Satelliteを利用した放送)とがあるが、受信アンテナの形態などに違いはなく、ひとつの衛星放送用アンテナで両方の放送を受信することができる。

CMBS

Commercial Mortgage Backed Securitiesの略。商業用不動産ローン担保証券などと呼ばれることもある金融商品の一つである。事務所、ショッピングセンター、ホテルなど非居住用不動産に対するノンリコース(求償権を担保物権以外には遡及しない)の貸付債権を担保にして発行される。

通常、複数のローン債権をプールし、しかもリスクとリターンの大きさに応じて切り分けたうえで(切り分けられたローンの固まりをトランシェという)証券化されるため、住宅ローン債権を担保とするRMBS に比べて、複雑な金融商品となる。

CLT

木材板を積層接着した厚型のパネル。英語のCross Laminated Timberの略で、和訳は「直交集成板」である。

CLTは、板の層を繊維方向が直交するように交互に張り合わせたもので、高い寸法安定性、優れた断熱性があるほか、CLTを柱やとする構造は軽量で耐震強度を確保できるとされている。

CCRC

退職後の自立可能な高齢者が、必要に応じて介護・医療などのケアサービスを受けながら持続的に共同で生活する仕組みをいう。アメリカで始まったもので、英語のContinuing Care Retirement Community(コンティニューイング ケア リタイアメント コミュニティ)の略語である。

健康な段階から共同生活を始め、地域活動などに参加し、健康長寿を目指すことが特徴であるとされる。また、地方移住の方法としても有効だと考えられている。

CCS(二酸化炭素回収貯留、Carbon Capture and Storage)

大規模な排出源から分離・回収した二酸化炭素を、地層や海洋に貯留・吸収することをいう。

これによって、排出される二酸化炭素が大気から隔離され、二酸化炭素濃度の安定化を図ることができるとされる。

例えば、回収した二酸化炭素を油田に封入することによって、大気からの隔離とともに、油田の内圧を高めて採掘効率を上げる試みがなされている。ただし、技術的な安全性やCCS事業に伴う環境影響についてなお検証が必要であるとされ、CCSによる貯留量は京都議定書で定める削減量として認められていない他、CCS事業は排出量取引における排出削減プロジェクトとしても認知されていない。

SEGES

企業による緑地の保全、創出活動を評価・認定する仕組み。SEGESは、英語のSocial and Environmental Green Evaluation System(社会・環境貢献緑地評価システム)の略語で、(公財)都市緑化機構が運営する任意の制度である。

SEGESの評価・認定は、事業者が所有する緑地(300平方メートル以上)の保全・創出活動、快適で安全な都市緑地機能(アメニティ機能)を提供する取り組み、開発、建築に伴う緑地環境計画(3,000平方メートル以上)の3つの分野を対象に実施されている。

シースルー

透けて見える状態。英語のsee-through。

主に布地や服装について使われる用語である。例えば、レースカーテンは、一般にシースルーである。

なお、シースルーは、インテリア用品、収納ボックスロールスクリーンなどの性質を表す用語としても使われる。

シーリング

建物の継ぎ目や隙間を埋める工事をいう。これによって、継ぎ目や隙間からの雨水の侵入を防ぎ、構造物が振動し変位した際の伸縮性を確保することができる。

建物の大規模修繕に当たっては、一般的にシーリングをやり直す。
シーリングに使う充填材は、充填後に硬化し、防水性、伸縮性を発揮する必要があるが、成分の違いによって多くの種類がある。

シーリングハイ

床面から天井下面までの高さ(天井高)。英語のceiling height。CHと略記される。

住宅居室の高さは、建築基準法で2.1m以上でなければならないとされている。

シーリングファン(天井扇)

天井に取り付ける回転羽根をいう。

室内の空気を循環させて、上下の温度差を少なくする機能を発揮する。天井扇ともいわれる。

風量を調節したり、羽根の回転にゆらぎを加えたりできるものもある。また、実用性だけでなく、室内装飾としての効果もあるとされる。

シーリングライト

天井に直接取り付けて広く照らす照明器具。英語のceiling lightで「天井灯」ともいう。

部屋全体を照らすことができ、一般的に主照明として用いられる場合が多い。

これに対して、天井から吊り下げる照明器具をペンダントライト、局所的に照らす照明器具をスポットライト、天井に埋め込む照明器具をダウンライトという。

地上げ

事業用地を確保するために、不動産会社が土地などを購入することをいう。

自らの事業のための購入のほか、依頼を受けて土地等を買収することも含まれる。買収を依頼されたときの方法には自ら買収した後依頼者に転売する場合と、依頼者の買収を媒介する場合とがある。

地上げの目的は土地を事業の用に供することであり、そのために必要となる、地上権の解消、家屋の撤去、借家人の立ち退きの実現などもその業務に含まれる。また、権利関係が複雑な市街地の開発などにあたっては、その調整等のため専門的な能力が要請されることもある。

公共事業のための用地買収も地上げと類似するところがあるが、買収価格は用地補償基準従って決められた価格でなければならず、最終的には土地収用に至ることなど、その性質は異なる。

JREIT

不動産投資信託のことで、アメリカのREIT(Real Estate Investment Trust)の日本版であることから、JREITと呼ばれる。

不動産を買収、賃貸して収益を得る専門の会社(投資法人)または同様の機能を担う信託会社が証券を発行し、金融商品として取引される。その発行主体がJREITであり、それぞれが運用する不動産の種類やその構成は異なる。証券は発行主体ごとに流通するが、証券取引所に上場されているものも多い。需給に応じて、その取引価格も日々変動する。

株式会社の利益の源泉は事業による収益であるが、JREITの利益は、不動産の賃貸や売買による収益から得られる。その収益は、課税されることなくほぼそのまま投資家に分配されることが特徴である。株式投資とJREIT投資とを比較すれば、株式会社、株券、株価、配当金に当たるのが、それぞれ、投資法人(または信託)、投資証券投資口価格分配金と考えてよい。

不動産の証券化の手法として中心的な役割を果たしており、2001(平成12)年9月に初めて上場されたがその後急速に拡大し、金融市場において一角を占めるに至っている。

ジェットバス

浴槽の中の穴から気泡を含んだ湯を勢いよく噴出し、マッサージ効果を発揮する風呂のこと。

JHEP認証

生物多様性の保全や回復に資する取り組みを定量的に評価・認証する仕組み。JHEPは英語のJapan Habitat Evaluation and Certification Program(ハビタット評価認証制度)の略語で、(公財)日本生態系協会が開発・運営している任意の制度である。

JHEP認証においては、野生生物の生息環境(ハビタット)の価値を定量的に算出する必要がある。その方法として、
1)目標植生に基づく「みどりの地域らしさ(植生評価指数 VEI)」と「動物評価種のすみやすさ(ハビタット適性指数 HSI)」によってハビタットの質を評価する
2)ハビタットの質に量(面積)を掛けた「ハビタット価値」を算定する、3)ハビタット価値に時間を掛けて(積分して)、取り組みの実施により得られる評価期間分の「総ハビタット価値」を算出する
という手法が採用されている。
JHEP認証は申請によって行なうが、事業主体が申請するハビタット評価認証「JHEP」と、工事受注者が申請する請負工事型ハビタット評価認証「CHEP」の2つの種類がある。いずれも将来50年間の自然の価値を評価するとされている。

直物(直物件)

宅地建物取引業者が、その売却の仲介を売り主から直接に依頼された土地・建物。宅地建物取引業者は、売り主と専属専任媒介契約または専任媒介契約を締結する。「直物件」も同じ意味である。

直物に対して、売却を直接に依頼されていない土地・建物を「先物」という。

売買の仲介において、直物か先物かによる取り扱いの違いはなく、購入における仲介手数料も同じである。

直床工法

鉄筋コンクリートの床スラブカーペットフローリングを直張りすること。
歩行性や遮音性向上、また転倒時の安全性確保のために、クッション性のある材料を採用した方がよい。

床面が均一であることが絶対条件であることはいうまでもないが、フロア全体を均一に仕上げる(バリアフリー)ためには、スラブと床の間に収蔵する配管類のスペース分スラブを下げることも必要となる。

地形

土地の平面的な形状をいうが、傾斜、起伏などの状態を含めていうのが普通である。「じぎょう」と呼ばれることもある。

平坦で正方形に近ければ「整形」、いびつな形であれば「不整形」であるとされ、同じ面積でも価格が異なる。

事業継続計画(BCP)

事業組織が脅威にさらされた場合に、その影響を予防・軽減し、事態の回復を図るための計画をいう。

危機管理手法の一つで、BCP(Business Continuity Planning)と略称される。
想定する脅威としては、震災、水害などのほか、情報通信網の故障、取引先の事故・喪失、破壊的攻撃なども含まれる。

BCPの作成においては、各脅威の影響を分析評価するほか、優先業務を特定してその復旧プロセスを確定すること、代替的な業務継続方法を準備すること(例えばオフサイトの設置、データ等のバックアップ措置)などが重要な課題となる。

東日本大震災やバンコクの洪水(いずれも2011年)などの際には、製造業を中心にサプライチェーンの断絶が生じ生産困難に陥る例が目立った。また、首都直下地震においては中核的業務機能の喪失が予想される。BCPはそのような事態への対応方策として有効であると考えられている。

事業税

地方税の一つで、法人の行なう事業および個人の行なう一定の事業に対して課税するものをいう。

課税対象事業とその税率は地方税法によって定められており、個人が営む事業については、3種類に分けられている。例えば個人が事業として不動産を貸すと不動産貸付業を営むこととなり、その収入に対して事業税が課せられる(税率5%)。

個人の不動産貸付業における事業税の税額は、原則として、次によって求められる。

「事業税額=(不動産収入-必要経費-事業主控除)×5%」

ここでいう事業主控除は290万円である。

事業認定の告示

収用手続が公益上必要やむを得ないものであることを大臣・知事が認定する手続を「事業認定」という(土地収用法第16条)。

事業認定庁は、事業認定をしたときは、遅滞なく収用者(起業者)に文書で通知し、官報(知事の場合は知事が定める方法)で告示する。このような告示を「事業認定の告示」という(土地収用法第26条)。

この事業認定の告示があった日を起点として、法律上さまざまな効力が発生するとされている。

事業認定の手続

収用手続が公益上必要やむを得ないものであることを大臣・知事が認定する手続を「事業認定」という(土地収用法第16条)。
この事業認定にあたっては、認定を行なう大臣または知事(事業認定庁)は、さまざまな機関や利害関係人から意見を聴取すること等の手続を行なう必要がある。

1.専門的学識または経験を有する者の意見
事業認定庁は、必要があると認めるときは、申請に係る事業の事業計画について専門的学識または経験を有する者の意見を求めることができる(土地収用法第22条)。

2.審議会等の意見
事業認定庁のうち、国土交通大臣は、事業の認定に関する処分を行なおうとするときは、あらかじめ社会資本整備審議会の意見を聴き、その意見を尊重しなければならない。また都道府県知事は、審議会等(土地収用法第34条の7の審議会等)の意見を聴き、その意見を尊重しなければならない(ただし、事業認定申請書の縦覧期間内に、利害関係人の意見(大臣・知事に反対の意見)が提出されてない場合には、これら審議会の意見を聞く必要はない)(土地収用法第25条の2)。

3.事業認定申請書の縦覧期間における利害関係人の意見書提出
事業認定申請書は、2週間、公衆に縦覧させなければならない(事業認定申請書の縦覧)。この事業認定申請書の縦覧期間に、事業認定について利害関係を有する者は、都道府県知事に意見書を提出することができる(国土交通大臣が事業認定庁である場合には、知事から国土交通大臣へ意見書を送付する)(土地収用法第25条)。

4.事業認定申請書の縦覧期間における利害関係人の公聴会開催請求など
事業認定庁は、事業認定について利害関係を有する者から事業認定申請書の縦覧期間内に公聴会を開催すべき旨の請求があったときそのほか、必要があると認めるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない(土地収用法第23条)。

なお、事業認定庁は、事業認定申請書を受理した日から3ヵ月以内に、事業の認定に関する最終的な処分(認定処分または拒否処分)を行なうように努めなければならない(土地収用法第17条第3項)。

事業用定期借地権(事業用借地権)

定期借地権の一つで、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とするものをいう。

当初、契約期間が10年以上20年以下とされていたが、借地借家法の改正により、2008年1月1日以降は、10年以上50年未満に改められた。

事業用定期借地権は、契約の更新(存続期間の更新)を伴わない、契約終了時に建物買取請求権が発生しない、建物再築による存続期間の延長がないことを特約した借地権の設定契約(事業用借地権設定契約)によって発生する。この場合、契約期間が10年以上30年未満の場合には必ずこの特約が必要である一方、契約期間が30年以上50年未満の場合は特約するかどうかは任意とされる。また、契約は公正証書によらなければならない。

従って、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする借地権の設定は、契約期間に応じて右表のような方法を選択することができる。

事業用不動産

収益を得ることを目的に所有・利用される不動産をいう。店舗、事務所ビルなど事業のための設備として利用される不動産のほか、投資の対象とされるマンションなどもこれに該当する。一方、自己居住のために所有される住宅等は事業用不動産ではない。

事業用不動産の価格や賃料は、原理的には、得られるであろう収益に基づいて市場競争によって形成される。一方、自己居住用不動産等についてはそのようなメカニズムが働きにくい。また、事業用不動産については収益最大化を目指して利用形態や管理手法が競争的に変化する傾向があるのに対して、自己居住用不動産等については安定性が強い。さらには、事業用不動産のうち居住用途のものは住生活の基盤としての性格があるため、市場において区分して取り扱う必要がある。

事業予定地内の制限

知事の指定等により定められた事業予定地において適用される制限のこと。

1.事業予定地の定義
事業予定地とは、次の2種類の土地を指す(都市計画法第55条第1項)。
1)都市計画で定められた都市施設の区域の内で、知事(指定都市等では市長)が指定した土地
2)4種類の市街地開発事業(市街地再開発事業、住宅街区整備事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業)の施行区域内のすべての土地

2.事業予定地内の制限の趣旨
事業予定地については、通常の都市施設・市街地開発事業の建築制限(「都市計画施設の区域内の制限」「市街地開発事業の施行区域内の制限」参照)よりも厳しい建築制限が課せられる。また、土地の先買い制度が適用される場合がある。
これらの制限は、事業予定地では比較的大規模な事業が実行され、または迅速に事業を実行に移す必要性が高いためであると考えられる。

3.建築制限のあらまし
事業予定地では、建築物建築するには知事(指定都市等では市長)の許可が必要である(都市計画法第53条第1項、第55条第1項)。この許可について次の点が重要である。
1)建築物の建築には許可が必要。ここで建築とは「新築、増築、改築、移転」を指す(都市計画法第4条第10項)。
2)土地の形質変更(宅地造成等)は許可が不要。工作物の建設も許可が不要。
3)容易に移転除却ができる建築物等(すなわち都市計画法第54条の基準を満たす建築物)であっても、知事等は建築を不許可にすることができる(下記4.へ)。
4)上記3)で建築が不許可とされたとき、土地所有者には救済措置が設けられている(下記5.6.へ)。
5)軽易な行為などを行なう場合、知事等の許可はそもそも不要である(下記7.へ)。
6)都市施設や市街地開発事業に「施行予定者」が定められている場合には、さらに厳しい制限が課せられる(下記9.へ)。

4.建築許可の基準
通常の都市施設や市街地開発事業では、都市計画法第54条の基準を満たす建築物(主要構造部が木造・鉄骨造等で階数が2以下、地階がなく容易に移転除却できる建築物、都市計画に適合した建築物)については、知事等は必ず建築を許可する(「都市計画施設の区域内の制限」「市街地開発事業の施行区域内の制限」参照)。
しかし事業予定地では、都市計画法第54条の基準を満たす建築であっても、知事等は不許可とすることができる。ただし下記5.6.の救済措置が設けられている。

5.不許可とされた場合における「土地の買取りの申出」
都市計画法第54条の基準を満たす建築について知事等が不許可とした場合に、土地所有者がその土地の利用に著しく支障をきたしたならば、土地所有者は知事(または知事が指定した相手)に対して、その土地を買い取るよう申し出ることができる(都市計画法第56条)。これは不許可に対する救済措置である。このとき知事(または知事が指定した者)は、特別の事情がない限りその土地を買い取る。

6)買取りがされない場合
上記5.において、知事(または知事が指定した者)がその土地を買い取らない場合がありうるが、買い取らない場合には、土地所有者は、都市計画法第54条の基準を満たす建築物の建築許可を知事等に申請できる。このとき知事等は、その建築を許可しなければならない(都市計画法第55条第1項但書)。
結局のところ、都市計画法第54条適合の建築が不許可にされたことで著しい支障をきたした土地所有者は、上記5.または6.のどちらかで救済されることとなる。

7.許可不要の行為
管理行為、軽易な行為(※1)、非常災害のため応急措置として行なう行為、都市計画事業の施行として行なう行為は、建築の許可がそもそも不要である(都市計画法第53条第1項)。従って、これらの行為には上記5.6.の救済措置は適用されない。
(※1)軽易な行為としては「木造で階数が2以下で地階を有しない建築物の改築又は移転」が定められている(都市計画法施行令第37条)

8.土地の先買い制度の適用について
知事(指定都市等では市長)が、事業予定地において「先買い制度を適用する旨」を公告したときは、先買い制度が適用される(都市計画法第57条第1項)。
この場合には、事業予定地内の土地の有償譲渡(※2)をしようとする者は、事前に、一定の相手方(知事等が公告した相手方)に対して届出をしなければならない。相手方は届出のあった土地を優先的に買い取ることができる。
(※2)「土地の有償譲渡」のみが先買い制度の対象である。従って「土地と建築物等を一体とした有償譲渡」、「建築物のみの有償譲渡」には先買い制度は適用されない。

9.施行予定者が定められている場合について
都市施設や市街地開発事業において「施行予定者」が定められている場合には、上記3.4.5.6.7.8.は適用されない(都市計画法第57条の2)。これらに代わって、さらに厳しい制限が課せられる(詳しくは市街地開発事業等予定区域の区域内の制限へ)。

軸組

垂直材(柱)と水平材(など)を組み合わせたもの。

木造建築物の「骨組」のことである。

時効

ある事実状態が一定期間継続した場合に、そのことを尊重して、その事実状態に即した法律関係を確定するという制度を「時効」という。

時効は「取得時効」と「消滅時効」に分かれる。取得時効は所有権賃借権その他の権利を取得する制度であり、消滅時効は債権、用益物権、担保物権が消滅するという制度である。

時効は時間の経過により完成するものであるが、当事者が時効の完成により利益を受ける旨を主張すること(これを援用という)によって初めて、時効の効果が発生する。

また、時効の利益(時効の完成によって当事者が受ける利益)は、時効が完成した後で放棄することができる。これを時効利益の放棄という。

また時効は、時効の完成によって不利益を受ける者が一定の行為を行なうことにより、時効の完成を妨げることができる。これを時効の更新という。

時効

ある事実状態が一定期間継続した場合に、そのことを尊重して、その事実状態に即した法律関係を確定するという制度を「時効」という。

時効は「取得時効」と「消滅時効」に分かれる。取得時効は所有権賃借権その他の権利を取得する制度であり、消滅時効は債権、用益物権、担保物権が消滅するという制度である。

時効は時間の経過により完成するものであるが、当事者が時効の完成により利益を受ける旨を主張すること(これを援用という)によって初めて、時効の効果が発生する。

また、時効の利益(時効の完成によって当事者が受ける利益)は、時効が完成した後で放棄することができる。これを時効利益の放棄という。

また時効は、時効の完成によって不利益を受ける者が一定の行為を行なうことにより、時効の完成を妨げることができる。これを時効の更新という。

時効完成後の債務の承認

債務消滅時効により消滅した後に、債務者が、消滅時効が完成したことを知らないまま、債務の存在を承認することを「時効完成後の債務の承認」という。

例えば、BがAから借金をしていた場合に、時効期間の経過により債権の消滅時効が完成し、すでに債務が消滅しているのに、AがBに返済を督促したとする。このときBが、消滅時効の完成を知らないまま、Aに対して返済の猶予を求めたり、一部だけ返済したとしよう。このようなBの行為が、時効完成後の債務の承認に該当する。

この場合、Bの債務はすでに消滅しているのであるから、Bは時効の完成を主張すれば(すなわち時効を援用すれば)、消滅時効の起算点にさかのぼって債務は消滅するので、起算点以降に支払った金銭の返還を求めることができると考えることもできる。
しかし判例では、このようなBについて、いったん債務の存在を認めるような行為(返済の猶予を求めるなどの行為)をした以上は、その行為の後であらためて消滅時効を援用することは許されないとしている。

この理由は「いったん債務の存在を承認した以上、債権者Aとしては債務者Bがもはや消滅時効を主張することはない、と信頼するのが通常である。BはこのAの信頼を裏切ることは許されない」と説明されている。従って、時効完成後の債務の承認により、時効の援用権の行使が不可能になるということができる。

時効完成後の債務の承認

債務消滅時効により消滅した後に、債務者が、消滅時効が完成したことを知らないまま、債務の存在を承認することを「時効完成後の債務の承認」という。

例えば、BがAから借金をしていた場合に、時効期間の経過により債権の消滅時効が完成し、すでに債務が消滅しているのに、AがBに返済を督促したとする。このときBが、消滅時効の完成を知らないまま、Aに対して返済の猶予を求めたり、一部だけ返済したとしよう。このようなBの行為が、時効完成後の債務の承認に該当する。

この場合、Bの債務はすでに消滅しているのであるから、Bは時効の完成を主張すれば(すなわち時効を援用すれば)、消滅時効の起算点にさかのぼって債務は消滅するので、起算点以降に支払った金銭の返還を求めることができると考えることもできる。
しかし判例では、このようなBについて、いったん債務の存在を認めるような行為(返済の猶予を求めるなどの行為)をした以上は、その行為の後であらためて消滅時効を援用することは許されないとしている。

この理由は「いったん債務の存在を承認した以上、債権者Aとしては債務者Bがもはや消滅時効を主張することはない、と信頼するのが通常である。BはこのAの信頼を裏切ることは許されない」と説明されている。従って、時効完成後の債務の承認により、時効の援用権の行使が不可能になるということができる。

時効の援用

時効の援用とは、時効の完成によって利益を受ける者が、時効の完成を主張することである。時効の援用とは、時効の効果を確定的に発生させる意思表示であるということもできる。

当事者が時効を援用しない限り、時効の効果は発生しないものとされている(民法第145条)。時効の援用は、裁判において主張することもできるが、裁判外で主張することもできる。なお、時効の援用は「相対効」とされており、援用した者だけが時効の完成を主張することができ、援用しない者についてまで時効が完成するわけではない。

時効の援用をすることができる者の範囲は、「時効の完成により直接的に利益を受ける者」に限定されている(判例)。ただし「直接的に利益を受ける者」の範囲は、判例上次第に緩やかに解釈されるようになってきており、また判例も多数あるので注意したい。いくつか具体例を挙げる。

1.保証人
債務者の債務を保証している保証人は、債務者の債務が消滅時効により消滅すれば、保証債務から解放されるので、「消滅時効の完成により直接利益を受ける者」に該当する。たとえ債務者が時効を援用しなくとも、保証人自身が債務者の債務が時効消滅していると主張し、消滅時効を援用することができる(つまり保証人は援用権者である)。
なお、債務者が時効を援用せず保証人が援用した場合には、債権者は保証人に対する関係では債務の存在を主張できなくなる。従ってこの場合には、保証のない債務が残る結果となる。

2.物上保証人
債務者のために自己の財産を担保に入れている者(物上保証人)も、上記の保証人と同じ理由により、援用権者である。

3.抵当不動産の第三取得者
AがBから借金をし、その担保としてA所有の土地に抵当権を設定し、その後にAがこの抵当権付の土地をCに売却したとする。このときCを抵当不動産の第三取得者というが、CはAの債務(借金)が消滅時効により消滅すれば、抵当権も同時に消滅するので、Cの所有する土地の価値は上昇する。このようなCも消滅時効の援用権者である。

4.仮登記担保付の不動産の第三取得者
借金の担保として債務者の土地について再売買の予約を行ない、登記の原因を「売買予約」として「所有権移転請求権仮登記」を行なった場合も、実質的には上記3.の抵当権の設定と同じことである。そのため、こうした仮登記のついた不動産の第三取得者も、上記3.と同様に、消滅時効の援用権者である。

5.借地人・抵当権者
取得時効の時効期間が経過した土地の借地人や、その土地に抵当権を設定している抵当権者は、その土地が取得時効により取得されたことを主張できる。つまり、借地人や抵当権者は援用権者である。

6.建物賃借人は土地所有者に対して取得時効を援用できない。
AがBの土地を占有し、Aが自己所有の建物建築し、その建物をAがCに賃貸した場合に、建物賃借人であるCは、Aが取得時効により土地を取得していることをBに対して主張できないとされる(昭和44年7月15日最高裁判決)。ただし、学説はこの判例に反対である。

時効の更新

時効とは、ある事実状態が一定期間継続した場合に、その事実状態を尊重して、その事実状態に即した法律関係を確定するという法制度である。

この事実状態が継続する必要があるとされる一定の期間を「時効期間」といい、時効の種類により時効期間が設けられている(例えば所有権短期取得時効の時効期間は10年、所有権の長期取得時効の時効期間は20年、普通の金銭債権消滅時効の時効期間は10年である)。

このような時効期間が進行している途中において、それまで継続してきた事実状態を妨げるような事実や行為が発生した場合には、もはや事実状態の継続が失われたことになるので、それまで進行してきた時効期間はすべて効力を失うことになる。

このように、一定の事実や行為によって、それまで進行してきた時効期間が効力を失うことを「時効の更新」と呼んでいる(時効の進行が「ふりだしに戻る」ということである)。

なお、時効を中断させるような事実や行為は「時効の更新事由」と呼ばれている。

時効利益の放棄

時効の完成によって利益を受ける者が、時効の完成による利益を放棄することである。

時効利益の放棄は、時効が完成する前に放棄することができない(民法第146条)。これは特に、債権消滅時効において、債権者が債務者の窮状に乗じて、債務者に時効利益の放棄を事前に強いることを防止するための規定である。
ただし、時効完成後に放棄することは自由である。なお、時効利益の放棄と類似した問題として「時効完成後の債務の承認」がある。

時効利益の放棄は「相対効」である。つまり、時効を援用できる者(援用権者)が複数いる場合に、1人が時効利益を放棄してしまっても、他の者はそれに関係なく時効を援用できるということである。
なお債務の保証については、時効利益の放棄は次のように解釈されている。

1.主債務者が時効利益を放棄し、その後に保証人が時効を援用した場合
AがBから借金をし、その債務をCが保証した場合、AB間の債務を主債務といい、BC間の債務を保証債務という(保証債務は、主債務が弁済されないときに、補充的に主債務の弁済されない部分を弁済するという債務である)。
ここで、主債務者Aは借金が消滅時効で消滅したにもかかわらず、時効利益を放棄したのであるから、主債務は有効に残存している。しかし、時効利益の放棄は「相対効」であるから、保証人Cは独自に主債務の消滅を主張してよい(これは保証債務の消滅を意味する)。

2.主債務者が時効を援用し、その後に保証人が時効利益を放棄した場合
時効の援用は「相対効」を持つに過ぎないから、Aの時効の援用は、Cに影響しないのが原則であるが、保証債務は主債務の消滅により自動的に消滅するという性質(附従性)を持つので、この附従性を通じて、Aの時効の援用は、Cの保証債務を消滅させる。その結果、保証人Cは時効利益を放棄することは不可能となる(消滅してしまった保証債務を、時効利益の放棄により復活させることはできない)。
従ってこの場合、保証人Cが時効利益を放棄する旨の意思表示をしたことは無意味であり、仮にCがBに対して債務を支払ったならば、その支払い分は本来は不当利得返還請求によりCに返還されるべきである(ただし、民法第705条の非債弁済の規定により、Cは返還を請求することができないという結論になる)。

自己資金

住宅の購入・建築に当たって必要になる資金のうち、住宅ローンによる融資のほかに自らが保有し充当する資金。充当する自己資金が多いほど、ローンの融資率や返済負担率を低く抑えることができる。ただし、自己資金は、貯蓄など返済不要な資金でなければならない。

なお、住宅の購入・建築に当たっては、登録免許税、登記事務手数料、火災保険料など、住宅ローンの融資対象にならない費用を負担しなければならないが、これらも自己資金で賄うことになる。

自己の財産におけるのと同一の注意義務

善管注意義務よりも軽い注意義務のこと。
民法では、一定の場合に「取引上、一般的・客観的に要求される程度の注意義務」を取引関係者に要求しており、この注意義務を「善管注意義務」という。

これに対して、民法上、一定の場合には善管注意義務よりも軽い注意義務だけを負うことがあり、これを「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」または「自己のためにすると同一の注意をなす義務」などと呼んでいる(詳しくは「善管注意義務」へ)。

自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限

宅地建物取引業者が、他人物や未完成物件を売ることを原則的に禁止するという規制のこと。これは、一般消費者を保護するための措置である(宅地建物取引業法第33条の2)。

1.概要
「自己の所有に属しない宅地又は建物」とは他人物と未完成物件を指している。
他人物の売買は、民法上は可能とされているが、一般消費者にとってはそのような取引を行なうことは危険性が高い。未完成物件の取引も同様である。そこで宅地建物取引業法では、そのような他人物・未完成物件の売買取引を、原則的に禁止しているのである。

2.他人物売買の制限
宅地建物取引業法では他人物売買について、原則的に禁止する措置を取っている(法第33条の2本文)。

具体的には、宅地建物取引業者は、他人の所有物について、自らが売主になるような「売買契約」を締結することができない。また、宅地建物取引業者は、他人の所有物について、自らが売主になるような「予約」を締結することもできないとされている。

ただし、「他人物を確実に取得できるという別の契約または予約」があるときには、他人物の売買契約または予約を締結してよいという例外規定がある(法第33条の2第1号)(詳細については「他人物売買の制限」へ)。

3.未完成物件の売買の制限
未完成物件を造成中・工事中の段階で販売することは、「自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結」に該当するので、原則的に禁止されている(法第33条の2本文)。
しかし仮に、造成中における宅地分譲・工事中における建物分譲がまったく行なえないことになっては不動産実務上、非常に不便なことは明らかである。

そこで、宅地建物取引業法では「未完成物件に関する手付金等の保全措置」が行なわれている未完成物件については、造成中・工事中であっても、未完成物件の売買契約または予約を締結してよいこととしている(法第33条の2第2号)(詳細については「未完成物件の売買の制限」へ)。

4.適用範囲
宅地建物取引業者が売主で、宅地建物取引業者以外の者が買主になる場合についてのみ適用されることになっている(法第78条第2項)。

5.違反に対する罰則
「自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限」(法第33条の2)に違反した場合には、宅地建物取引業法の監督処分として「指示処分」または「業務停止処分」が予定されている。
なお、「自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限」に違反した売買契約(予約含む)の効力については、宅地建物取引業法にはこれを無効とする規定がないので、そのまま有効な売買契約(予約含む)として取り扱われることになる。

事故物件

権利について争いがあったり、浸水、自殺、倒産などの事故の場所となったりした宅地建物をいう。

取引価格は、事情を反映して低くなることが多い。

地震

地殻が急激にずれ動く現象。これに伴って起きる大地の揺れ(地震動)をいう場合もある。地震が発生したとき最初に地殻が動いた場所が「震源」、震源の地表面位置が「震央」、伝播する地震動が「地震波」である。

地震の大きさを示す指標には、地震の規模によるものと、地震動の大きさによるものの2種類がある。一般に、地震の規模は地震によって放出されるエネルギー量を示す「マグニチュード(M)」で、地震動の大きさは揺れの程度を客観的に段階化した「震度」で示される。震度は、マグニチュードだけでなく、震源からの距離、地震波の特性、地盤の構造や性質などによって決まる。

地震が発生しやすいのは地殻に力が加わって歪みが蓄積している場所で、地震はその歪みが解消する際に起きると考えられている。しかし、発生の場所と時点を特定するのは非常に難しい。

なお、構造物の耐震設計は、地震動によって構造物に加わる力を許容できる程度に抑えるための設計であるから、想定する地震動の大きさや性質(揺れの方向、振動数、継続時間など)が重要となる。

地震計

地震動を計測・記録する装置。その基本的な方法は、地面に振り子を固定し、地震動によって生じる振り子の強制振動を観測することである。観測するのは、振動の振幅、速度、加速度などである。

地震計は、振り子の振動方向に応じて、水平動地震計と上下動地震計とに分類される。

地震保険

地震による被災損失に対して補償する損害保険。火災保険契約等に付帯する形で付保され、「地震保険に関する法律」によって保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険している。

保険の対象は住宅および生活用動産に限られ、保険事故は地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による全損・半損・一部損である。
保険補償の範囲は、主契約の保険金額の30~50%の範囲内で、建物5,000万円、家財1,000万円を上限とする。

保険料は、建物の構造と所在地に応じて決定される。建物の構造は木造と非木造に区分され、所在地は都道府県別に区分されている。

地震保険料控除

所得税の課税に当たって、所得額から地震保険料を控除すること。

控除が認められる地震保険は、ア)自己や自己と生計を一にする親族の所有する家屋で常時その居住の用に供するものまたは生活に通常必要な家具等の生活用動産を対象とする保険であること、イ)地震等による損害により生じたときにその損失額を補填する保険金または共済金が支払われる保険であることなど、一定の要件を満たす保険契約である。

控除額は、所得年に支払った保険料の額に応じて定められた一定の金額である(限度額がある)。

なお、2006年末に廃止された長期損害保険料控除制度の経過措置として、2006(平成18)年12月31日までに締結し内容の変更がないなど一定の要件を満たす損害保険については、地震保険料控除の対象として認められている。

自重

モノそれ自体の重さ。建物構造が頑強であるほどその自重は大きくなり、地盤はそれを支えることのできる強度が必要となる。

構造物の設計においては、構造に加わる負荷(地震、風圧、備品や設備の荷重など)だけでなく、自重負荷にも耐えるようにしなければならない。

事情変更の原則

私法上の概念で、契約の内容は、社会的事情の変化があればそれに応じて変更されなければならないという原則のこと。明文の規定はないが、契約締結後、急激なインフレなどの契約当時まったく予見できなかった社会的事情の変動があり、それが当事者にとって重大である場合には、「信義誠実の原則」を適用して、当事者に契約の解除、または契約内容の改定を請求することを認めようという考え方である。

例えば、借地借家法では、地価の変動等の経済事情の変動などによって地代や借賃が不相応になったときには、契約の条件にかかわらず、地代や借賃の増減を請求できるとしている(地代等増減請求権および借賃増減請求権の規定であり、強行規定である)が、この規定は、事情変更の原則を法律のうえで認めたものといわれている。だが、具体的にどのような場合に事情変更の原則が適用されるかは、判例によって判断するほかない。

JIS

政府が定めた鉱工業製品等の規格。産業標準化法に基づいて、主務大臣が定める。JISは、Japanese Industrial Standards(ジャパニーズ インダストリアル スタンダーズ)の略語である。

産業標準化を促進するための制度で、定められるのは、製品等の種類、型式、形状、構造、品質などに関する規格である。規格に適合している商品には標章(JISマーク)が記されるが、JISの規格に従うかどうかは原則として任意である。

JISには、固有の番号(部門記号を表すアルファベット1文字と分類番号を表す4桁の数字)が付されていて、仕様書、契約書などにおいて簡便に引用できる。

なお、JISは、従来「日本工業規格」と称されていたが、2019年7月に法律が改正され、名称が「日本産業規格」に変更された。

自走式駐車場

立体的な駐車場であって、車を運転して昇降し、駐車する方法のものをいう。立体駐車場であるが、車を機械によって移動しない。

なお、地面のみに駐車する方法を「平置」、立体的であって車を機械によって移動する方法を「機械式」という。

持続可能性

人間活動が将来にわたって持続できるかどうかという概念であるが、特に、地球環境問題に対応する上での目標として用いられることが多い。

地球環境問題への対応として持続可能性を確保しなければならないという考え方は、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会(World Commission on Environment and Development)」が公表した報告書 『Our Common Future』(委員長の名を冠して『 Brundtland Report (ブルントラント レポート)』ともいわれる)において提案された。
それによると、持続可能性を確保するには、

1.開発に当たって貧困の克服と環境の保全を両立すること

2.将来世代の必要に応えるべく成長・開発を管理すること

という2つの要請を満たさなければならないとする。

なお、持続可能性という言葉は、資源の枯渇に陥らない、核戦争などによる破滅を防ぐ、経済的な破綻をきたさない、などという意味で使われることがあり、多義的であることに注意しなければならない。

地鎮祭

建物の建設に着手する前に、敷地の地主神を鎮め、工事の無事を祈願するために行なう儀式。

神道に基づくものが一般的だが、仏教式やキリスト教式などもある。工事の無事を祈願する目的のため、祭主は棟梁となる。

実質賃料

不動産鑑定評価における概念で、貸主に支払われるすべての経済的対価をいう。

賃料の鑑定評価に当たっては、実質賃料を求めることが原則とされている。

実質賃料を構成するのは、

1.支払い時期に支払われる賃料(支払賃料)
2.権利金敷金、保証金等の運用益および償却額
3.必要経費等

である。

なお、共益費等の名目で支払われる金銭のなかには、実質的に支払賃料に相当するものが含まれている場合がある。

実質投資主名簿

不動産投資信託投資法人において、投資主保管振替制度を利用している場合に、証券保管振替機構からの通知にもとづいて投資法人が作成する名簿のこと。

保管振替制度とは、上場株券の保管・受渡しを合理化するために、1991(平成3)年から実施されている制度である。すべての上場株式がこの制度の適用を受けており、投資証券もこの制度の適用を受ける。

投資主がこの保管振替制度を利用している場合、投資証券の券面上の名義人は便宜的に「証券保管振替機構」とされている。
そのため、投資法人が作成する投資主名簿上では、保管振替制度適用分については、「証券保管振替機構」が便宜上の投資主とされる。

従って、実際に投資口の権利を持つ個々の投資主の住所氏名等を、投資法人が管理するには、別の名簿を作成する必要性が生じることになる。このような管理目的で作成される名簿が「実質投資主名簿」である。

この「実質投資主名簿」の作成方法は次のとおり。

まず、投資法人の規約で定める「権利確定日」までに、証券保管振替機構(および個々の投資主が取引口座を有する証券会社)が、個々の投資主の住所氏名等を、投資法人へと通知する。
次に、投資法人が、振替機構(および証券会社)から通知された個々の投資主の住所氏名等の情報をもとに「実質投資主名簿」を作成する。

このようにして作成された「実質投資主名簿」に記載された投資主は、分配金を受け取る権利を取得し、投資主総会に出席する権利を獲得する。

従って、このような実質投資主名簿の存在によって、保管振替制度を利用する投資主は、自己の投資主としての権利を確実に行使できるようになるということができる。

なお権利確定日は、各投資法人の「規約」で定められているが、通常は権利確定日とは「決算日」のことである(詳しくは「権利落ち」へ)。

実測売買

土地の売買契約において、取引価額を実測面積によって確定する場合をいう。

面積を確定するための測量が必要で、隣地との境界が確定していないと実測面積そのものを測ることができない。境界を確定するには労力を要することも多いが、その分、契約後の憂いは少ない。また、売買契約後に実測面積を確定して取引価額を精算することがあるが、これも実測売買である。

なお、実測売買とは別の簡便な方法として、公簿売買がある。

詳しくは、「公簿売買と実測売買」を参照。

実印

個人の印鑑であって、市区町村長に対してあらかじめ印鑑登録を行なった印鑑のこと。
印鑑証明の発行を受けることができる印鑑である。

実務経験(宅地建物取引士の登録における~)

宅地建物取引士として登録する際に必要とされる、宅地建物取引業に従事した経験をいう。

宅地建物取引士資格試験に合格した者が取引士として登録を申請しようとする場合には、原則として宅地建物の取引に関し2年以上の実務の経験を有することが必要とされている。この経験は、免許を受けた宅地建物取引業者としての経験、または宅地建物取引業者のもとで勤務していた経験でなければならず、また、経験として認められる実務は、顧客への説明、物件の調査等の具体的な取引に関する業務であるとされている。

なお、実務経験がない場合でも、国土交通大臣が実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者は、取引士として登録を申請できることとされている。例えば、宅地または建物の取引に関する実務についての講習であって国土交通大臣の登録を受けたもの(登録実務講習)を修了した者が、これに該当する。

実務講習

登録実務講習を参照。

地盤調査

地盤の性質を把握するための調査。建物基礎などの設計・施工や根切り工事の施工のために実施される。

建物基礎は、建物に作用する荷重および外力を安全に地盤に伝え、地盤の沈下また変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならないとされているが、地盤調査は、この条件を満たすために必要な調査である。特に、地盤の許容応力度および基礎杭の許容支持力は、一定の方法による地盤調査の結果に基づいて定めなければならない。

調査事項は、成層状態、層の強度、圧縮性、透水性、地下水の状況などで、調査によって、地盤の許容応力度、基礎杭の許容支持力、地盤液状化の可能性などが明らかになる。

調査方法は、ボーリング調査、貫入試験、載荷試験、物理探査などがある。

地盤沈下

地盤が圧縮され、沈んでいく現象をいう。

単に地盤が低下するだけでなく、沈下量が場所によって異なることによる不同沈下、支持層に支えられた構造物が相対的に高くなる抜け上がりなどの現象を伴うことが多い。
その原因は、主として地下水の過剰な汲み揚げである。ときには、埋め立て地や盛り土が荷重により圧縮されて沈下することもある。

建物等の地上構造物の損壊や傾きの発生、地中のガス管等のライフラインの破損、津波や高潮に対する脆弱性の増大などの被害が生じることがある。新築分譲した建物が地盤沈下によって損壊したときには、原因によっては瑕疵担保責任を問われる恐れが大きい。

自筆証書遺言

全文を自筆で書き記した証書による遺言。本文のほか、日付と氏名も自書し押印しなければならない。

2019年1月13日以降は、遺言作成に当たって添付する財産目録については、自書でなく、パソコン等で作成した目録、銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書等であってもかまわない。また、自筆証書遺言に係る遺言書は、法務局に保管を申請することができる。

なお、証書による遺言の方法には、自筆証書遺言のほか、公正証書遺言(公証役場で証書を作成する方法)及び秘密証書遺言(内容を秘密にした証書について公証役場で証明だけ行なう方法)がある。

地袋

床面に接して設けられた高さの低い袋戸棚のこと。床の間の違い棚の下部、あるいは和室の窓の下部等に設置される。

事務禁止処分

宅地建物取引士に対して、期間を定めてその事務を行なうことを禁止する命令をいう。

通常は、名義貸し、不正・不当な行為などによって指示処分を受けたにもかかわらずそれに違反した場合に処せられるが、行為等が悪質な場合には指示処分を経ずに事務禁止処分となることもある。

事務禁止処分に違反したときには過料に処せられる。また、事務禁止処分に処せられたときはすみやかに宅地建物取引士証を交付を受けた知事に提出しなければならない。

なお、事務禁止処分に違反した場合や行為が特に悪質な場合などは、登録抹消処分に処せられることもある。

事務所(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業法第3条第1項で規定する場所のこと(法第3条第1項、施行令第1条の2)。
具体的には、次の2種類の場所が「事務所」に該当する(以下の文章は国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方にもとづいている)。

1.本店または支店(施行令第1条の2第1号)
商業登記簿等に記載されており、継続的に宅地建物取引業の営業の拠点となる実体を備えているものを指す。
ただし、宅地建物取引業を営まない支店は「事務所」から除外される。
また本店は、支店の業務を統括する立場にあるため、本店が宅地建物取引業を直接営んでいない場合であっても、その本店は「事務所」に該当するものとされる。

2.上記1.以外で「継続的に業務を行なうことができる施設」を有する場所で、宅地建物取引業に係る「契約を締結する権限を有する使用人」を置く場所(施行令第1条の2第2号)。

「継続的に業務を行なうことができる施設」とは、固定的な施設であり、テント張りの施設や仮設小屋は含まれない。

「契約を締結する権限を有する使用人」とは、宅地建物取引士を指すものではなく、支店長・支配人などのように営業に関して一定範囲の代理権を持つ者を指している(ただし、支店長等が同時に宅地建物取引士である場合がある)。
また、「置く」とは常勤の使用人を置くという意味である。 

以上の1.と2.の場所を合わせて、宅地建物取引業法では「事務所」と呼んでいる。
従って、会社の登記(商業登記簿)では支店として登記されていなくても、継続的に業務を行なうことができる施設に、宅地建物取引業に係る支店長や支配人を置いていれば、その施設は「事務所」とみなされることになる。

なお、宅地建物取引業法ではよく似た概念として「事務所等」「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」「標識を掲示すべき場所」「クーリングオフが適用されない場所」を定めているので、それぞれの違いに注意したい。

事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所

宅地建物取引業法では、法第3条第1項の「事務所」には専任の宅地建物取引士を一定割合以上設置することを義務付けている(詳しくは宅地建物取引士の設置義務)。

しかし、法第3条第1項の「事務所」に該当しない案内所・展示会等であっても、契約締結等を行なう場合には、宅地建物取引業の業務の適正を確保すべき必要性が非常に高いといえる。
そこで宅地建物取引業法では、こうした案内所等が一定の要件に該当する場合には、1名以上の成年の専任の宅地建物取引士を常時設置するように義務付けているのである。

このような「事務所以外の場所であって、専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、具体的には、施行規則第15条の5の2で規定されている。ただし、この施行規則第15条の5の2の内容は複雑なので、1.外形的な要件と2.実質的な要件に分けてそれぞれ説明する(なお、以下の文章は国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方にもとづいている)。

1.外形的な要件
施行規則第15条の5の2で規定する「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」とは、次の4種類の場所のどれかに該当することが必要である。
1)事務所以外で継続的に業務を行なう施設を有する場所
2)10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物を分譲する場合の案内所
3)他の宅地建物取引業者が分譲する10区画以上の一団の宅地または10戸以上の一団の建物について、代理または媒介をする場合の案内所
4)宅地建物取引業者が展示会その他の催しをする場所

上記の1)は、「事務所」と同等程度に事務所としての物的施設を有してはいるが、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する者(支店長・支配人など)が設置されていないせいで、「事務所」から除外されるような場所を指している。
具体的には、「特定の物件の契約または申込みの受付等を行なう場所」「特定のプロジェクトを実施するための現地の出張所」等が該当する。

2)は、一団地(すなわち10区画以上の一団の宅地または10区画以上の一団の建物)の分譲をするための案内所のことである。これには臨時に開設する案内所も含まれる。例えば、「週末に宅地建物取引士や契約締結権者が出張して申込みの受付や契約の締結を行なう別荘の現地案内所等のように、週末にのみ営業を行なうような場所」も含まれる。

3)は、上記2)の分譲について、販売の代理や媒介を行なう宅地建物取引業者が設置する案内所を指している。

4)は、「宅地建物の取引や媒介契約の申込みを行なう不動産フェア」「宅地建物の買換え・住替えの相談会」「住宅金融公庫融資付物件等のように一時に多数の顧客が対象となる場合に設けられる抽選会」「売買契約の事務処理等を行なう場所」などのように、催しとして期間を限って開催されるフェア・展示会・相談会・抽選会その他を指している。

2.実質的な要件
上述の1.の1)から4)の場所において、契約を締結しまたは契約の申込みを受けるとき、その場所は「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」となる。

ここで、「契約の締結」「契約の申込みを受ける」という言葉の具体的な意味が「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で詳しく規定されているので以下で紹介する。

1)契約の締結
契約とは、「宅地建物の売買・交換の契約(予約を含む)」「宅地建物の売買・交換・貸借の代理・媒介の契約(予約を含む)」を指している。従って、物件の売買契約だけでなく、物件の売買の媒介契約や、物件の賃貸の媒介契約なども含まれている。
このような意味での契約を締結するためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されている」か、または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれている」ことが必要となる。

2)契約の申込みを受ける
契約の意味は上記1)と同じである。
また「申込み」とは、契約を締結する意思を表示することであるが、手付金・申込証拠金などの金銭を交付して締結の意思表示をする場合だけではなくて、「物件の購入のための抽選の申し込み」のような金銭の授受を伴わない意思表示も含まれるので、注意したい。
なお「申込みを受ける」ためには、「契約を締結する権限を有する者が派遣されていること」または「契約を締結する権限の委任を受けた者が置かれていること」は必須ではない。この点にも注意したい。

事務所等(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業法では、その第31条の3第1項で、一定の場所には、成年で専任の宅地建物取引士を置かなければならないと定めている。
この専任の宅地建物取引士を置くべき場所のことを、宅地建物取引業法では「事務所等」と表現している。

「事務所等」とは具体的には次の2種類の場所を指す言葉である。

1.「事務所
原則的には本店・支店を「事務所」と呼ぶ。ただし、本店・支店以外であっても、継続的に業務を行なうことができる施設に宅地建物取引業に係る支店長や支配人を置いていれば、その施設は「事務所」に含まれることになる(宅地建物取引業法施行令第1条の2)。

2.「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」
これは上記1.の事務所以外であって、専任の宅地建物取引士を置かなければならない場所のことである。この場所は宅地建物取引業法施行規則第15条の5の2において具体的に規定されている。
この規則第15条の5の2の内容は複雑なので、概略だけをまとめれば「事務所以外で継続的に業務を行なう施設を有する場所」「10区画以上または10戸以上の一団地の宅地建物を分譲する場合の案内所」「他の宅地建物取引業者が分譲する10区画以上または10戸以上の一団地の宅地建物の代理または媒介をする場合の案内所」「宅地建物取引業者が展示会その他の催しをする場所」という4種類の場所であって、契約の締結または契約の申込みの受付をする場所が、この規則第15条の5の2の場所である。

なお「事務所等」という言葉は、上記のとおり宅地建物取引業法第31条第3項で定義されている。しかし、宅地建物取引業法第37条の2(クーリングオフ)においてもやはり「事務所等」という言葉が使用されている。両者は異なる内容を指しているので注意したい。

事務手数料(不動産取引における〜)

不動産取引において、仲介手数料とは別に、仲介事業者等に支払う費用。主に賃貸借契約の期間更新において請求される場合がある。

不動産取引の仲介に要する事務費用は、仲介した業者に支払う仲介手数料(成功報酬)に含まれている。しかしながら、例えば賃貸借契約の期間更新に当たって、仲介業者等が、更新手続きに要する事務経費を請求する場合がある。この場合の事務経費が事務手数料(更新事務手数料)である。

賃貸借契約を締結する際には、期間更新時における事務手数料の要否、内容、金額などを確認しておくことが大事である。

ジャグジー

気泡を噴流させる数ヵ所の吹き出し口を備えた風呂。英語でJacuzzi。

JAS

食品・農林水産品等に関する規格。JASはJapanese Agricultural Standards(ジャパニーズアグリカルチャー スタンダーズ)の略語で、「日本農林規格等に関する法律」に基づき農林水産大臣が制定する。

JASで定められている規格の対象は、食品・農林水産品等の品質・仕様、その生産・流通プロセス、事業者による産品の取扱方法、事業者の経営管理の方法、産品の試験方法などで、材木、集成材などについてもJAS規格が定められている。

また、適合している産品等には、JASマークを表示しその旨を示すことができる。

ジャロジー

細長い羽根を上下に並べ、羽根を回転させることで開閉ができる窓のこと。外部からの視線を遮る効果があること、狭い空間でも開閉がしやすいことから、浴室・トイレなどの窓によく使用される。

受遺者

遺言によって遺産の譲与を受ける者。受遺者が法人の場合もある。遺言による遺産の譲与を「遺贈」といい、相続人は原則として受遺者に対して遺贈を履行する義務を負う。

なお遺贈には、遺産の全体についてのもの(包括遺贈)と特定の財産についてのもの(特定遺贈)とがあり、その違いに応じて受遺者の法律的な取扱いが異なる。すなわち、包括遺贈の場合には受遺者に対して遺産分割など相続人と同様の法律規定が適用される一方、特定遺贈の場合には直ちに受遺者に権利が移転すると解されている。

住居番号

「住居表示に関する法律」により、各建物に付された番号のこと。
土地登記簿に記載された地番とは異なる。

住居表示

1962(昭和37)年以前は、土地登記簿に記載されている地番に基づいて、各建物を表示していたため、郵便の集配等で混乱が生じていた。
そこで1962(昭和37)年に「住居表示に関する法律」が施行され、各建物を合理的に表示するために、各建物ごとに新しい番号(これを住居番号という)を付けることとなった。これによる建物の新しい表示の方法のことを「住居表示」と呼んでいる。

建物ごとに新しい番号を付ける方式としては、街区方式と道路方式が定められている。

従業者(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業法第48条の規定により、従業者証明書を携帯させるべき者のことを「従業者」という。

この従業者の定義は、国土交通省のガイドラインである宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方に規定されている。

それによれば、従業者は従事者よりも広い概念である。具体的には、従業者とは「従事者」と「非常勤の役員」と「宅地建物の取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者」を合わせたもののことである。

こうした従業者について、宅地建物取引業者は次の2つの義務を負う。

1.従業者証明書の携帯義務(宅地建物取引業法第48条第1項)
2.従業者名簿の作成義務(宅地建物取引業法第48条第3項)

また従業者自身は、宅地建物取引業法第31条に定める「業務に関する禁止事項」を遵守する義務を負い、宅地建物取引業法第75条の2に規定する「守秘義務」を負う。

従業者証明書

宅地建物取引業者は、その「従業者」に対して、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない(宅地建物取引業法第48条)。
この証明書を「従業者証明書」と呼んでいる。

この「従業者証明書」は、宅地建物取引業者が作成してその従業者に交付するものであり、従業者の顔写真が付いたカード型のものである。
なお従業者は、取引の関係者から請求があった場合には、この「従業者証明書」を提示しなければならない(宅地建物取引業法第48条)。

従業者名簿

宅地建物取引業法第48条の規定により、従業者証明書を携帯させるべき者のことを「従業者」という。

この従業者について、宅地建物取引業者は、その事務所ごとに「従業者名簿」を作成して備え付け、最終の記載をした日から少なくとも10年間保存しなければならないという義務を負う(宅地建物取引業法第48条第3項、同法施行規則第17条の2)。

さらに宅地建物取引業者は、取引の関係者から請求があったときは、この「従業者名簿」をその者の閲覧に供しなければならないという義務を負う(宅地建物取引業法第48条第4項)。

この「従業者名簿」に記載すべき事項は次のとおりである(宅地建物取引業法施行規則第17条の2)。

1.従業者の氏名
2.従業者証明書の番号
3.生年月日
4.主たる職務内容
5.取引士であるか否かの別
6.当該事務所の従業者となった年月日
7.当該事務所の従業者でなくなったときは、その年月日

従事者(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業法の規定により、宅地建物取引業者はその事務所において「従事者」の数の5分の1以上の割合で、成年の専任の宅地建物取引士を置く義務を負う。

この成年の専任の宅地建物取引士の設置義務は、宅地建物取引業者にとって非常に重要な義務であるので、従事者の範囲は重要な意味を持っている。

この点について、国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方は次のようなガイドラインを設けている。

1. 宅地建物取引業のみを営む宅地建物取引業者の場合
代表者、役員(非常勤の役員を除く)およびすべての従業員等が「従事者」に含まれる。受付、秘書、運転手等の業務に従事する者も「従事者」に含まれる。
ただし、宅地建物の取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者は「従事者」から除外される。

2.他の業種を兼業している宅地建物取引業者の場合
代表者、宅地建物取引業を担当する役員(非常勤の役員および主として他の業種も担当し宅地建物取引業の業務の比重が小さい役員を除く)と、宅地建物取引業の業務に従事する者が「従事者」に含まれる。

なお、宅地建物取引業を主として営む宅地建物取引業者にあっては、全体を統括する一般管理部門の職員も「従事者」に含める。

住生活基本計画

住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画で、全国計画と都道府県計画がある。住生活基本法に基づき、全国計画は政府が、都道府県計画は都道府県が策定する。

全国計画には、計画期間、施策の基本方針、目標、基本的施策、大都市圏における住宅・宅地の供給促進などを定めることとされている。

例えば、2016(平成28)年に策定された全国計画は、「居住者からの視点」「住宅ストックからの視点」「産業・地域からの視点」を設定し、「結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現」、「高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現」、「住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築」、「建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新」など8つの目標を定めている。そして、それぞれの目標について基本的な施策と成果指標を示し、住宅政策の枠組みを明確にしている。

また、都道府県計画には、全国計画に即して、当該都道府県の区域内における同様の計画が定められている。

住生活基本法

住生活の安定の確保および向上の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための法律。2006(平成18)年に公布・施行されている。

住生活基本法が定める主な内容は、施策の基本理念(良質な住宅の供給・良好な居住環境の形成・居住のために住宅を購入する者等の利益の擁護及び増進・居住の安定の確保)、国及び地方公共団体が実施すべき基本的施策、住生活基本計画の策定などである。

重説

 「重要事項説明」の略で、宅地建物取引業者が、売買契約賃貸借契約の締結に先立って、買主・借主に対して契約上の重要な事項を宅地建物取引業法第35条にもとづき説明すること。

この重要事項説明において宅地建物取引業者が買主・借主に対して交付する書面を「重要事項説明書」という。

不動産の買主・借主は、契約しようとする物件に関して十分な情報を持っていない事がほとんどで、また買主・借主が一般人である場合には不動産に関する法律知識が不十分であるため、思わぬ損害を受けてしまう可能性がある。

そこで、宅地建物取引業法第35条では、売買契約・賃貸借契約を締結するよりも前に、不動産取引を代理媒介する(または自ら売主として取引する)宅地建物取引業者が、買主・借主に契約上の重要な事項を説明するように法律で義務付けているのである。

重要事項説明にあたっては、説明する重要事項をすべて書面に記載し、買主・借主にその書面(重要事項説明書)を渡す必要があるとされている。この重要事項説明書には、宅地建物取引士が記名押印しなければならない。

さらに宅地建物取引業者は、宅地建物取引士を通じて、重要事項説明書の内容をわかりやすく買主・借主に説明しなければならない(このとき宅地建物取引士は宅地建物取引士証を提示しなければならない)。このように、一定以上の知識経験を有すると認められる有資格者(宅地建物取引士)が説明することにより、買主・借主に誤った説明がされないよう配慮されているのである。

重要事項説明書に記載すべき事項は、非常に広範囲にわたる。また契約の種類・物件の種類によっても説明すべき事項に多くの違いがある。

重説IT化

不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を活用して対面以外の方法で行なうこと、またはその方法を導入すること。

重要事項説明は、宅地建物取引士が対面で行ない、書面を交付しなければならないとされている(宅地建物取引業法)。しかし、情報技術を活用すれば、インターネット等を利用して説明し、電磁的方法で書面を交付することができる。そこで、政府においてその導入の可能性等が検討されている。

検討においては、① 取引士により重要事項説明が行なわれ、取引士証が提示されること、② 重要事項説明を受ける者が契約者本人であること、③ 取引士が、必要な内容について伝達すること、④ 取引士と重要事項説明を受ける者とのやり取りに十分な双方向性があること、を満たす必要があるとされている。そこで、社会実験によって導入の可能性を検証するとされている。その際には、売買か賃貸かというような取引の類型や、契約の相手方が個人か法人かというような属性の違いについても留意することになっている。

従前地

土地区画整理事業によって換地される場合の、換地前の土地(従前の宅地)をいう。

土地区画整理事業においては、施行地区内の土地Aは、換地処分によって、造成等を終えた土地Bに換地される。Aが従前地、Bが換地である。この場合、従前地と換地とは、位置、地積、環境等が照応するように定められる。

住宅インスペクション

既存住宅を対象に、構造の安全性や劣化の状況を把握するために行なう検査・調査をいう。日本語の「住宅」と英語のInspection(検査)を組み合わせた造語である。

住宅インスペクションは、目視等を中心とした現況把握のための検査、耐震診断等の破壊調査を含めた詳細な調査、性能向上等のための調査など、目的に応じて異なった内容で実施される。

既存住宅の売買に当たっては、現況把握のための検査が実施されるが、そのためのガイドラインとして「既存住宅インスペクション・ガイドライン」(2013年、国土交通省)が公表されている。同ガイドラインの概要は次のとおりである。

1)インスペクションは、検査対象部位について、目視、計測を中心とした非破壊による検査を基本にして、構造耐力上の安全性、雨漏り・水漏れ、設備配管の日常生活上支障のある劣化等の劣化事象を把握する方法で行なう。
2)業務の受託時に契約内容等を検査の依頼人に説明し、検査結果を書面で依頼人に提出する。
3)検査を行なう者は、住宅の建築や劣化・不具合等に関する知識、検査の実施方法や判定に関する知識と経験が求められ、住宅の建築に関する一定の資格を有していることや実務経験を有していることが一つの目安になる。
4)公正な業務実施のために、客観性・中立性の確保(例えば、自らが売り主となる住宅についてはインスペクション業務を実施しないなど)、守秘義務などを遵守する。

また、建物状況調査における人材育成等による検査の質の確保・向上等を進めるため、「既存住宅状況調査方法基準」(2017年、国土交通省)が定められ、それに従ってインスペクションを実施するための「既存住宅状況調査技術者講習」が制度化された。

同基準は、既存住宅状況調査は既存住宅状況調査技術者講習を終了した建築士が行なうこと、調査は、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に係る調査として、調査対象住宅の構造に応じて規定する劣化事象等をそれぞれ定める方法により調査することなどを定めている。

なお、宅地建物取引業法に基づき、宅建業者は、1)既存住宅の媒介契約に当たって交付する書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載しなければならず、2)重要事項説明に当たって、建物状況調査に実施の有無及びその結果の概要を説明しなければならないとされているが(2018年4月1日から適用)、この場合の建物状況調査は、建築士又は国土交通大臣が定める講習を終了した者が実施する者に限定されている。

住宅確保給付金(家賃補助制度)

離職等により経済的に困窮し、住居を失った又はそのおそれがある者に対して自治体より支給される金銭。安定した住居の確保と就労自立を図るための制度で、生活困窮者自立支援法に基づいて支給される。

支給対象者は、65歳未満であって離職等後2年以内、ハローワークに求職の申し込みをしている、世帯収入合計額が一定額以下などの要件を満たす者である。

支給額は、賃貸住宅の家賃額内で住宅扶助特別基準額を限度とし、支給期間は原則3ヵ月間で最長9ヵ月まで延長可能である。

住宅確保給付金の支給方法は、住宅の貸主の口座への直接振り込みである。

住宅確保要配慮者

高齢者、低額所得者、子育て世帯、障害者、被災者等の住宅の確保に特に配慮を要する者をいう。外国人やドメスティック・バイオレンス被害者なども住宅確保要配慮者である。

住居の確保は生活の基盤であるだけでなく、人権を維持する上で必須の条件でもある。住宅確保要配慮者はその条件を満たすのに困難な場合が多いことから、住宅確保のための環境を整備するべく、住宅セーフティネットを構築する政策が展開されている。

例えば、その一環として、住宅確保要配慮者に対する民間賃貸住宅の供給を促進するため、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」が制定され、入居を受け入れる賃貸住宅の登録、登録した住宅の情報公開、登録住宅の改修等への支援などが推進されている。

住宅瑕疵担保責任

売買契約請負契約の履行において、引き渡された目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に、売り主・請負人が買い主・注文者に対して負うこととなる責任。債務不履行により生じる責任のひとつで、目的物が特定物(その固有性に着目して取引され代替性がない)である場合の「契約不適合責任」と同義である。

瑕疵担保責任を負わせるためには、買い主・注文者は、売り主・請負人に対して、履行の追完請求(補修等の実施請求)、代金の減額請求報酬の減額請求損害賠償請求または契約解除権の行使をしなければならない。

なお、住宅の品質を確保するため、新築住宅の瑕疵担保責任について「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく特別の定めがある。詳しくは「売り主の瑕疵担保責任(品確法における~)」および「請負人の瑕疵担保責任(品確法における~)」を参照。

また、債権関連の民法改正(2020年4月1日施行)までは、売買の目的物に「隠れた瑕疵」があったときには売主に瑕疵担保責任を課す旨の規定があった。この規定は改正によって削除され、瑕疵担保責任は、改正で整備された契約不適合に関する規定によって対応することとされた。

住宅瑕疵担保履行法

新築住宅に係る瑕疵担保責任の履行を確保することを目的とした法律で、正式には「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」という。  

同法は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって建設業者及び宅地建物取引業者が負う瑕疵担保責任(構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の瑕疵に対する10年間の担保責任)の確実な履行を確保するための規定を定めている。主な規定は次のとおりである。

(1)保証金の供託又は住宅瑕疵担保責任保険による資力の確保
(2)住宅の検査と一体として保険を引き受ける住宅瑕疵担保責任保険法人の指定
(3)住宅瑕疵担保責任保険契約に係る紛争を処理するための体制の整備

なお、宅地建物取引業者が瑕疵担保責任を負うのは、住宅の売り主となる場合である。

住宅借入金等特別控除

所得税の控除制度のひとつで、住宅ローン等の残高に応じて税額控除が認められる仕組みである。「住宅ローン控除」も同じ意味である。

控除は、個人が、自己の居住のために、住宅ローン等を利用して住宅を新築、取得又は増改築等し、一定の要件を満たす場合において、その新築等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する方法で行なわれる。

住宅借入金等特別控除が適用される要件は、新築等の時期、住宅の性能などに応じて定められている。また、制度の適用期限についても注意が必要である。

住宅街区整備事業

都市計画で定められた市街地開発事業の一つで、大都市地域で住宅や住宅地を供給するために実施される事業をいう。

都市計画で指定された住宅街区整備促進区域内において施行され、土地の区画形質の変更、公共施設の整備、共同住宅の建設などによって住宅の供給を促進する役割を担う。

事業手法の特徴は、従前の権利者に対して、土地区画整理事業と同様に事業によって整備した相応の土地を与える(換地、このとき減歩を伴う)ほか、事業によって建設する共同住宅の相応の持分を与える(権利変換、これにより宅地が立体化される)方法を併用することである。

また、区域内に集合農地地区を整備し、そこへ換地することによって従前の権利者が農業を継続できるようにすることも可能である。

住宅街区整備事業は、土地区画整理事業よりもさらに住宅建設への誘導効果が高いと考えられているが、事業の仕組みはより複雑なものとなるなどの理由により、実際の施行例は数例に留まっている。

なお、事業の仕組みは、「大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法」に規定されている。

住宅型有料老人ホーム

生活を支援するサービス等を提供する高齢者向け居住施設。有料老人ホームの類型の一つである。

住宅型有料老人ホームでは、食事の提供・介助、洗濯、清掃等の代行、入浴、外出等の介助などの生活するための支援を受けることができる。また、介護が必要な場合には、入居者の選択によって介護保険の在宅サービスを利用できるが、その業務を併設している施設もある。

なお、有料老人ホームには、「住宅型」のほか、生活支援に加え介護サービスを同時セットで提供する「介護付」、自立生活を基本に食事等を提供し、介護が必要になれば退去する「健康型」がある。

住宅供給公社

勤労者に対する良好な集合住宅の供給等を行なうために、都道府県等が出資し設立した公法人。「地方住宅供給公社法」に基づいて設立、運営される。

住宅供給公社は、積立分譲(一定の期間、一定の金額に達するまで定期に金銭を受け入れ、期間満了後にそれを代金の一部に充てて住宅を譲渡する方法)で住宅を供給するほか、賃貸住宅(公社住宅)の経営などの業務を行なっている。

公社は、資金調達のために債券を発行することができ、また、土地の先買いにおける買収主体になることができる。

住宅金融公庫

特殊法人(政府の機能の一部を担う特別の法律による法人)の一つで、政府の保証を背景とした住宅金融業務を実施することを目的に1950(昭和25)年に設立された。その中心的な業務は、個人住宅向けの資金融資、賃貸住宅建設のための融資、住宅融資保険などであった。だが、民間金融機関の個人向け住宅ローンの拡大等を受けて、2003(平成15)年10月からは、従来の融資業務を縮小し、新たに始めた証券化支援業務を中心とした民間金融機関による住宅金融の支援・補完機能を担う組織へと転換した。

さらに2007(平成15)年には、住宅金融公庫は廃止され、その権利義務は、(独)住宅金融支援機構に引き継がれた。

住宅金融支援機構

政府の保証を背景とした住宅金融業務を実施することを目的に設立された「住宅金融公庫」の権利義務を引き継ぐ形で2007(平成19)年に設立された。

主な業務は、

1.一般の金融機関の住宅貸付債権の譲受け、住宅貸付債権を担保とする債券に係る債務保証などの業務(証券化支援業務)

2.民間住宅ローンについて保険を行なう業務(融資保険業務)

3.災害関連、都市居住再生等の一般の金融機関による融通が困難な分野で住宅資金を直接に融資する業務(直接融資業務)

である。

なお、住宅金融公庫が民間金融機関と提携して実施していた長期固定金利の住宅資金融資(フラット35)は、証券化支援業務の一つであり、機構が引き続き実施している。

住宅宿泊管理業者

住宅宿泊事業のために必要な一定の管理業務を委託を受けて実施する事業者。「住宅宿泊事業法」に基づく事業である。

住宅宿泊管理業として実施すべきとされている業務は、住宅の維持保全および宿泊者の退室後の状況確認等である。また、住宅宿泊事業者が通常は住宅に不在である場合には、これらの業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないとされている。

住宅宿泊管理業者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない。登録に当たっては、業務従事者が一定の実務経験を有していること、常時苦情への応答が可能である人員体制を備えていること等の条件を満たす必要がある。

この場合、実務経験を有している条件については、宅地建物取引士、マンション管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士、宅地建物取引業者マンション管理業者、賃貸住宅管理業者は同等の能力を有するものとみなされる。

住宅宿泊事業

民泊の営業であって、都道府県知事等に届け出たものをいう。「住宅宿泊事業法」に基づく事業である。

有償で人を宿泊させる事業は、原則として旅館業法による許可が必要であるが、住宅に人を宿泊させる事業(民泊営業)で一定の条件を満たすものについては、都道府県知事等に届けることによって営業することができる。この届出によって営まれる事業が「住宅宿泊事業」である。


住宅宿泊事業を営む者は、年間の営業日数が180日を限度とすること(この日数は、条例で、地域を定めて短縮できる)、一定の衛生・安全等の措置を講じること、宿泊者名簿を備付けること、標識を掲示することなどの条件を満たさなければならない。また、通常は住宅に不在である場合には、営業のために必要な業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならない。

住宅宿泊事業法

住宅宿泊事業(民泊)を営むことに関する規制等を定めた法律。2017年に制定された。

 

住宅宿泊事業法が定める主な規制は、次の通りである。

(1)事業者の届出・登録

 ア)民泊事業を営む「住宅宿泊事業者」は都道府県知事等に届け出なければならない。

 イ)民泊施設の管理を受託する「住宅宿泊管理業者」は国土交通大臣の、民泊契約を仲介する「住宅宿泊仲介業」は観光庁長官の登録を受けなければならない。

(2)住宅宿泊事業に関する業務規制

 衛生確保措置、宿泊者に対する騒音防止のための説明、近隣からの苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等をしなければならない。

(3)住宅宿泊管理業に関する業務規制

 ア)住宅宿泊事業の業務を代行する場合には、その業務規制を遵守しなければならない。

 イ)管理受託契約の内容の説明、契約書面の交付等をしなければならない。

(4)住宅宿泊仲介業に関する業務規制

 宿泊者への契約内容の説明等をしなければならない。

 

住宅ストック循環支援事業補助金

良質な住宅ストックの形成とその流通を支援するための補助金。政府予算による措置である。

住宅ストック循環支援事業補助金には、次の3つの類型がある。

ア)住宅のエコリフォーム
エコリフォームを実施し、リフォーム後に耐震性が確保される場合に、リフォーム工事内容に応じて定める額を補助する
イ)良質な既存住宅の購入
40歳未満の者が既存住宅を購入し、その際に、インスペクションを実施し、既存住宅売買瑕疵保険に加入する場合に、インスペクション費用(5万円/戸)およびリフォーム工事内容に応じて定める額を補助する。
ウ)エコ住宅への建替え
耐震性のない住宅を除却してエコ住宅に建替える場合に、建替えた住宅の性能に応じて一定額を補助する。

補助金の交付申請は、それぞれの工事、販売等を行う事業者が行い、交付された補助金相当額は、工事費、購入代金等に充当するかたちで住宅所有者等に全額還元される。この場合、補助金を申請する事業者は、あらかじめ事業者情報及び事業免許等を事務局に登録する必要がある。

住宅性能評価書

住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)にもとづき、住宅性能の評価結果を表示した書面のこと。
品確法では、住宅性能評価書を作成することができる機関を登録住宅性能評価機関だけに限定しており、評価の方法に関して日本住宅性能表示基準評価方法基準という2種類の基準を法定している(住宅品質確保法第5条)。

住宅性能評価書には、設計住宅性能評価書建設住宅性能評価書の2種類が存在する。
さらに後者は新築住宅の建設住宅性能評価書既存住宅の建設住宅性能評価書に区分される。
これらの住宅性能評価書は、すべて国土交通大臣が定めた日本住宅性能表示基準に従い、かつ評価方法基準に準拠して作成される必要がある。

住宅品質確保法では、このような住宅性能評価書を交付された新築住宅については、住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約や売買契約の契約内容になる場合があると規定しており、この規定により注文者保護・買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。

また、建設住宅性能評価書が交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関に対して、紛争処理を申請することができるとされている(品確法第62条)。

住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係

住宅の品質確保の促進等に関する法律 (品確法)第6条では、住宅性能評価書を交付された新築住宅については、住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約売買契約の契約内容になる場合があると規定している。この規定により注文者保護・買主保護が図られている。

この品確法第6条の具体的な内容は、次の1.から5.のとおりである。

1.請負契約を締結したとき
請負人が、設計住宅性能評価書(またはその写し)を請負契約書に添付した場合には、請負人はその評価書(またはその写し)に表示された性能を有する住宅の建設工事を行なうことを注文者に対して契約したものとみなされる(同法第6条第1項)。
なお、設計住宅性能評価書(またはその写し)を請負契約書に添付しないで、注文者に設計住宅性能評価書(またはその写し)を交付しただけの場合であっても同様である。

2.新築住宅の建設工事の完了前に、新築住宅の売買契約を締結したとき
売主が、設計住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付した場合には、売主はその評価書(またはその写し)に表示された性能を有する住宅を買主に引き渡すことを契約したものとみなされる(同法第6条第2項)。
なお、建設住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付しないで、買主に設計住宅性能評価書(またはその写し)を交付しただけの場合であっても同様である。

3.新築住宅の建設工事の完了後に、新築住宅の売買契約を締結したとき売主が、建設住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付した場合には、売主はその評価書(またはその写し)に表示された性能を有する住宅を買主に引き渡すことを契約したものとみなされる(同法第6条第3項)。
なお、建設住宅性能評価書(またはその写し)を売買契約書に添付しないで、買主に建設住宅性能評価書(またはその写し)を交付しただけの場合であっても同様である。

4.事例による検討
例えば、新築住宅の建設工事の請負人が、設計住宅性能評価書の写しを注文者に渡したにもかかわらず、その評価書の性能よりも劣るような住宅を建設した事例を想定しよう。
この事例では、住宅品質確保法第6条第1項の規定により、評価書の性能を持つ住宅を建設することを請負人が契約したのと同じである。従ってこの事例では、請負人は明らかに請負契約に違反したことになるので、請負人には民事上の責任(具体的には瑕疵担保責任など)が発生する。よって注文者は民事訴訟を提起して、請負人の責任を追及できることになる。

5.反対の意思表示を契約書に記載した場合の取扱い
ただし、こうした住宅品質確保法第6条(第1項から第3項)の規定は、請負人や売主が契約書において反対の意思表示を文章で明記した場合には適用されないことになっている(同条第4項)。
例えば、請負契約書において「請負人は、交付した設計住宅性能評価書に表示された性能を有する住宅を建設する義務を負うものではない」と記載されている場合には、品確法第6条第1項は適用されない扱いとなる。

なお、こうした品確法第6条(第1項から第3項)の規定は、既存住宅の売買契約については適用されない扱いとなっていることに注意したい(既存住宅とは、建設工事完了後1年以上が経過した住宅や、建設工事完了後1年以内に人が住んだことがある住宅のことである(品確法第2条))。

住宅性能表示基準

住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)にもとづき、国土交通大臣が定めた住宅性能の表示に関する基準のこと。法律上の正式名称は「日本住宅性能表示基準」である。

住宅性能表示制度

住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)により導入された、住宅の性能を表示するための制度のこと。

品確法では、住宅の性能が正しく表示されるように次のような仕組みを設けている。

1.評価する機関を大臣が指定する。
品確法にもとづき正式に住宅性能を評価することができる機関は、登録住宅性能評価機関だけに限定されている(品確法第5条第1項)。登録住宅性能機関とは、住宅性能評価を行なうことができる機材や能力等を持つものとして国土交通大臣により登録を受けた会社等のことである。

2.評価書の作成方法を大臣が定める
登録住宅性能評価機関は、依頼者の依頼を受けて、住宅の性能を評価した結果を表示する書面(住宅性能評価書)を作成する。
この住宅性能評価書を作成するにあたっては、登録住宅性能評価機関は、国土交通大臣が定めた基準(日本住宅性能表示基準)に準拠しなければならない。

このように国が関与することにより、住宅の性能が適切に表示される仕組みが設けられている。

なお、品確法では、住宅性能評価書が交付された新築住宅については、住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約売買契約の契約内容になる場合があると規定している。この規定により注文者保護・買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。

また建設住宅性能評価書が交付された住宅については、指定住宅紛争処理機関に対して、紛争処理を申請することができるとされている(品確法第62条)。

住宅性能保証制度

住宅の基本的な性能を保証する仕組みをいう。

新築住宅について、構造耐力上主要な部分雨水の浸入を防止する部分に関して性能の評価を行ない、その性能を、施工現場の検査、保険により保証する。

保証期間は、住宅の完成引渡し後10年間であり、瑕疵による不具合があった場合には修繕等の費用を負担することとなる(これに加えて、仕上げや設備などに発生した不具合について2~5年間保証することも多い)。

住宅性能保証業務を実施しているのは、住宅保証機構(株)または登録住宅性能評価機関である。

住宅セーフティネット

住宅を確保するのが困難な者に対してその居住を支援するしくみをいう。

その対象となるのは、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子供を育成する家庭などの住宅確保要配慮者であり、住宅確保の方法として、
1.公的賃貸住宅の活用
2.民間賃貸住宅の質の向上と優先入居措置等
3.情報提供や相談による円滑な入居支援
が推進されている。

特に、民間賃貸住宅については、一定の基準を満たす賃貸住宅を「住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅」として都道府県等に登録し、登録された住宅について、住宅情報の開示、改修や入居への支援などを行なうしくみが整備されている。

また、住宅セーフティネットは、地域に即して構築し、関係者が連携して運営することが有効であるとされる。そのための体制として、地方公共団体、宅地建物取引業者や賃貸住宅管理業者の団体、居住に係る支援を行なうNPOなどで構成される居住支援協議会が設立され、その活動によって支援の実効性を高める取り組みが進められている。

住宅総合保険

住宅と家財とを対象に、各種の災害によって生じた損害を総合的に填補する保険。火災保険の一種として販売されている。

住宅総合保険がカバーする災害は、火災のほか、落雷、爆発、盗難、車両の衝突等による災害、風水害などである。ただし、地震や津波の災害はカバーしていないため、その損害の補填のためには、住宅総合保険(火災保険)に付帯して(セットで)地震保険を契約する必要がある。

住宅総合保険は、住宅と家財を分けてそれぞれに保険金額を設定し契約する。また、賃貸住宅の場合には、住宅については家主(建物の所有者)が契約し、家財については入居者が契約することになる。

住宅着工統計

住宅の新改築の動向に関する統計で、国土交通省が実施し、その結果は毎月公表されている。住宅の着工状況(戸数、床面積の合計)を、構造(木造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他)、建て方(一戸建て、長屋建て、共同住宅)、利用関係(持家、貸家、給与住宅、分譲住宅)、資金(民間、公的)、建築工法(在来工法、プレハブ工法、枠組壁工法)等に分類して把握できる。統計のための原資料は、建築確認申請である。

なお、住宅着工統計は、全国の建築物の動態を明らかにするための統計調査(建築動態統計調査)の一環として実施されており、その全体的な体系は次のようになっている。

1.建築着工統計調査(建築物着工統計、住宅着工統計、補正調査)
2.建築物滅失統計調査(建築物除去統計、建築物災害統計)

住宅手当(離職者に対する~)

住宅を喪失または喪失する恐れのある離職者であって、就労意欲のある者に対し、賃貸住宅の家賃を給付する制度をいう。

支給の対象となるのは、

1.離職し、離職前に生計維持者であったこと
2.ハローワークに求職を申し込んでいること
3.住宅を喪失し、または賃貸住宅に居住し住宅を喪失する恐れがあること
4.申請者および生計同一者の収入、預貯金が一定額未満であること

という条件を満たす者である。

支給額は、賃貸住宅の家賃額で地域ごとに上限があるほか、収入に応じた調整がなされる。支給期間は原則6ヵ月(一定の条件を満たせば最大9ヵ月)である。
手当を受給するには、住宅の賃貸借契約の際に住宅手当支給対象者証明書を提示したうえで自治体窓口に契約書の写し等を提出することが必要で、手当はそれにもとづき賃貸住宅の貸主等に対して直接に支払われる。

住宅展示場

複数の戸建住宅を実際に建築して展示する場所。

複数の住宅メーカーが共同で展示する場合が多く、建築される住宅は、通常、メーカーのブランドモデルとされている住宅である。

実際の住宅を比較することができるが、展示されているのは、一般に大型でグレードの高い住宅であることに注意しなければならない。

住宅トップランナー基準

一戸建て住宅についてのエネルギー消費性能の向上促進のための基準で、住宅供給事業において適合すべきとされる。建築物省エネ法に基づいて定められている。

基準は、(1)外皮熱性能について省エネ基準に適合すること、(2)一次エネルギー消費量省エネ基準に比べて一定割合(建売戸建住宅は15%、注文戸建住宅は20%(将来は25%)、賃貸アパートは10%)を削減することとされている。

また、年間供給量が一定数(建売戸建住宅は150戸、注文戸建住宅は300戸、賃貸アパートは1,000戸)以上の建築主であって住宅トップランナー基準に適合しない者に対しては、必要がある場合には、国土交通大臣は省エネ性能の向上を勧告することができ、その勧告に従わなかった場合にはその旨を公表できるとされている。 

住宅トップランナー制度

住宅を新築する住宅事業建築主に対して、供給する住宅に関する省エネ性能の向上のための基準(住宅トップランナー基準)に照らして必要がある場合に、国土交通大臣が省エネ性能の向上を勧告することができることとする制度。建築物省エネ法に基づいて定められている。2017年4月1日から施行。

勧告の対象となるのは、年間供給量が一定数(建売戸建住宅は150戸、注文戸建住宅は300戸、賃貸アパートは1,000戸)以上の建築主である。この勧告に従わなかった場合には、その旨を公表できるとされている。

住宅トップランナー基準は、(1)外皮熱性能について省エネ基準に適合すること、(2)一次エネルギー消費量を省エネ基準に比べて一定割合(建売戸建住宅は15%、注文戸建住宅は20%(将来は25%)、賃貸アパートは10%)を削減することとされている。

また、住宅事業建築主は、国土交通省の求めに応じて、建築した住宅のエネルギー消費性能算定結果を報告する必要がある。

住宅の品質確保の促進等に関する法律

住宅の性能の表示基準を定めるとともに、住宅新築工事の請負人および新築住宅の売り主に対して、住宅の一定部位について10年間の瑕疵担保責任を義務付けることにより、住宅の品質確保をめざす法律。「品確法」ともいう。



主な内容は次のとおりである。

1.住宅性能評価書

国土交通大臣により登録を受けた評価専門会社等(これを登録住宅性能評価機関という)に依頼することにより、住宅性能評価書を作成することができる(同法第5条)。
住宅性能評価書には、設計図等をもとに作成される設計住宅性能評価書と、実際に住宅を検査することにより作成される建設住宅性能評価書がある。



登録住宅性能評価機関は、住宅性能評価書を作成するにあたっては、国土交通大臣が定めた正式な評価基準である「日本住宅性能表示基準」に準拠しなければならない。


住宅の建築請負契約書または新築住宅の売買契約書に、住宅性能評価書を添付した場合等には、請負人や売り主はその評価書に表示されたとおりの性能の住宅を、注文者や買い主に引き渡す義務を負うことになる。



2.弁護士会による紛争処理
・住宅紛争処理支援センター
建設住宅性能評価書が交付された住宅について、請負契約または売買契約に関する紛争が発生した場合には、紛争の当事者は、弁護士会の内部に設置されている指定住宅紛争処理機関に対して、紛争の処理を申し立てることができる。
紛争処理を申請する際に当事者が負担する費用は、原則として1万円である。


また、弁護士会による紛争処理を支援する等の目的で、住宅紛争処理支援センターを設置することとされ、「公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター」が国土交通大臣により指定されている。住宅紛争処理支援センターは、弁護士会に対して紛争処理の業務に要する費用を助成するほか、登録住宅性能評価機関から負担金を徴収する等の事務を行なっている。


3.10年間の瑕疵担保責任の義務付け等
新築住宅の売買または建設工事における契約不適合責任瑕疵担保責任)として、次の義務を定めた。

(1)新築住宅の「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」の契約不適合(瑕疵)について、売り主・工事請負人は、注文者に住宅を引き渡した時から10年間、契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負う。
(2)契約によって、(1)の瑕疵担保期間を20年以内に延長することができる。
この特例は強行規定であり、特約によって責任を免れることはできない。

住宅販売瑕疵担保責任保険

宅地建物取引業者が新築住宅を販売した場合に、特定住宅瑕疵担保責任(構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の瑕疵に対する10年間の担保責任)を確実に履行するために当該宅地建物取引業者が締結する保険をいう。  

この保険は、(1)売り主となった住宅に関して宅地建物取引業者が特定住宅瑕疵担保責任を履行した場合に生じる損害の補填、(2)特定住宅瑕疵担保責任が生じたにもかかわらず売主の宅地建物取引業者がそれを履行しない場合に行なう損害の補填、を行なうためのもので、保険料は瑕疵担保責任を負う宅地建物取引業者が負担する。  

住宅瑕疵担保履行法は、宅地建物取引業者が新築住宅を販売した場合には住宅販売瑕疵担保保証金供託することを義務としているが、住宅販売瑕疵担保責任保険を締結した住宅については供託の対象から除外される。  

なお、住宅販売瑕疵担保責任保険には、新築住宅の販売に適用される特定住宅瑕疵担保責任を対象としたもののほか、宅地建物取引業者等が既存住宅を販売する場合の瑕疵担保責任を対象としたもの(既存住宅売買瑕疵保険)がある。いずれの場合にも、保険契約と住宅の検査とを一体として行なうことが特徴である。  

また、住宅新築工事又はリフォーム工事における工事請負者の瑕疵担保責任を対象にした保険(住宅建設瑕疵担保責任保険)も制度化されている。

住宅販売瑕疵担保保証金

宅地建物取引業者が新築住宅を販売した場合に、特定住宅瑕疵担保責任(構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分の瑕疵に対する10年間の担保責任)を確実に履行するために、当該宅地建物取引業者が供託しなければならない金銭をいう。この供託は義務であるが(住宅瑕疵担保履行法の規定)、住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結した住宅は供託の対象とされない。また、供託金額は、販売戸数(住宅販売瑕疵担保責任保険に係る住宅戸数を除く)に応じて決められている。  

特定住宅瑕疵担保責任の対象となる瑕疵によって損害が生じた場合には、買い主は、その損害賠償請求権に関して、供託された住宅販売瑕疵担保保証金について他の債権者に優先して弁済を受けることができる。

住宅紛争処理支援センター

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第78条にもとづき、国土交通大臣が指定する公益法人のこと。
住宅品質確保法では、指定住宅紛争処理機関の業務の支援などを目的とする公益法人を国土交通大臣が指定できると定めている(同法第78条)。

この規定により大臣が指定した公益法人を「住宅紛争処理支援センター」と呼ぶ。
具体的には「住宅紛争処理支援センター」としては「公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター」が国土交通大臣によりすでに指定されている。

この住宅紛争処理支援センターの主な業務は次のとおりである(同法第79・82条)。

1.指定住宅紛争処理機関に対して紛争処理の業務に要する費用を助成すること
2.住宅紛争処理に関する情報・資料の収集・整理
3.住宅の建設工事の請負契約売買契約に関する相談・助言・苦情処理
4.登録住宅性能評価機関から負担金を徴収すること

住宅保証機構

住宅の性能等を保証するための制度を運営することを目的とした財団法人(現在は株式会社)で、1983(昭和57)年に設立された。

その主要業務は、住宅性能保証、住宅完成保証、地盤保証、既存住宅保証の各業務である。
特に、住宅性能保証は、住宅の品質確保の促進等に関する法律による新築住宅の10年間の瑕疵担保責任を支援する役割を担っている。

住宅用家屋証明書

住宅用家屋について、所有権保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置を受けるために必要な証明書。軽減措置は、個人が、一定の要件を満たした住宅用の家屋を新築又は取得し、当該個人の居住の用に供した場合に適用される。

住宅用家屋証明書には、家屋の所在地、家屋番号、構造、床面積、建築年月日などとともに、当該家屋が軽減措置の要件を満たしている旨が記載されている。また、証明書は、申請によって、市区町村が発行する。

住宅用火災警報器

火災の発生をキャッチしてブザーや音声で知らせる装置をいい、すべての寝室と寝室のある階の階段には必ず設置しなければならない(スプリンクラーや自動火災警報設備が設置されているときは免除)。
また、市町村の火災予防条例で台所等への設置を義務付けている場合もある。

この義務付けは、住宅火災による死者発生の防止を目的としたもので、新築住宅は2006(平成18)年6月1日から、既存住宅は市町村の火災予防条例で定める日(最も遅い地域でも2011(平成23)年6月1日)から義務化される。
ただし、設置は自己責任とされ、設置しない場合も罰則は課されない。

住宅用火災警報器にはいくつかの種類があるが、設置が義務付けられているのは煙を感知するもの(煙式)である。なお、消防法では「住宅用防災警報器」と規定されているが、住宅用火災警報器と同義である。

住宅リフォーム減税

特定の目的で住宅の改修をした場合に、課税が軽減される制度をいう。

減税の対象となるのは、省エネ・バリアフリー・耐震の各目的で行なった住宅改修工事であり、減税の方法としては、

1.工事費の一定割合を所得税額から控除する方法
2.工事のための借入金残高の一定割合を所得税額から控除する方法(ローン控除、省エネ・バリアフリーについてのみ適用)

がある。また、改修後の住宅に課する固定資産税が一定期間減額される。

それぞれについて、減税対象となる工事の内容、控除額の算定方法や上限、適用期間などが定められている。詳細は、「省エネ改修促進税制(住宅の~)」「バリアフリー改修促進税制(住宅の~)」「耐震改修促進税制(住宅の~)」を参照。

なお、一般の住宅ローン減税においても、一定の改修工事費がその対象とされている。この場合には、改修目的は限定されないが、居住を目的とした住宅リフォームであること、リフォーム後の床面積が50平方メートル以上であること、大規模な修繕、模様替えを伴う工事であることなどの要件を満たさなければならない。

住宅履歴情報

住宅の構造・設備、改修工事、維持保全、権利関係など、住宅の情況を示す情報をいう。

その具体的な内容が統一的に定められているわけではないが、長期優良住宅の普及、住宅の資産価値の保全、中古住宅流通の活性化、住宅の維持保全などのためには、住宅履歴情報の記録・保存が必要または有効であると考えられている。

長期優良住宅の普及の促進に関する法律」では、長期優良住宅の認定を受けるためには、その建築・維持保全の状況に関する記録を作成・保存しなければならないとされているが、この記録は、住宅履歴情報に該当する。また、住宅履歴情報は、その活用によって、住宅の維持管理やリフォームを適切に実施すること、取引の安心を向上し円滑にすること、災害や事故時に迅速・適切に対応することなどに資すると期待されている。

住宅履歴情報に関する仕組みの構築、例えば情報項目の標準化、情報表示の共通化、情報活用ルールの明確化などについては、国土交通省が設置した委員会を中心に検討が進んでいる。

住宅ローン

個人に対する住宅資金の融資をいう。

主として民間の金融機関が担っているが、その円滑な実施などのため、(独)住宅金融支援機構住宅金融公庫の廃止後、その機能の一部を引き継いだ組織)と連携することが多い。また、年金基金、共済組合などが融資する場合もある。

融資の期間、利率(固定金利か変動金利かを含めて)などの条件は、金融機関によって異なるほか、借入者の属性や状況等、金融機関との取引の状況に応じて多様である。その選択のために、借入と償還をさまざまにシュミレーションできるサービスも提供されている。

住宅ローンの実施に際しては、通常、融資対象となる住宅に担保権が設定されるほか、連帯保証人を求められることが多い。また、住宅販売会社が提携金融機関の融資を斡旋する場合もある(提携住宅ローン)。

なお、住宅ローンの負担軽減のための税制上の優遇措置(住宅ローン減税)があるほか、住宅ローン債権がSPCなどに譲渡され証券化される例も増えてきている。

住宅ローン金利

住宅の建設、購入、改修のために資金を借りたときに、その借入金(住宅ローン)の残高に対して負担する利息の割合。一般に年利率で表記される。

住宅ローン金利は、金融市場での金利のほか、金融機関、借入期間、融資率、住宅金融支援機構との連携の有無などに応じて異なる。

住宅ローン金利の定め方には、「固定金利型」と「変動金利型」とがある。

(1)固定金利型

借入の全期間を通じて金利が変わらない方法。市場金利が変動しても、負担する利息は変わらない。ローンの返済額が確定する一方、市場金利が低下しても借入時に決められた金利を支払わなければならない。

(2)変動金利型

市場金利に応じて金利が変動する方法。金利は、一般に半年ごとに見直して変更されるが、一定期間は金利を固定する方法(固定金利期間選択型)もある。経済の状況に応じて返済できる一方、返済額が確定しない。

住宅ローン減税

所得税の課税に当たって、住宅ローンの残高の一部を税額から控除する制度をいう。一定の要件に該当する住宅を居住の用に供した年以降13年間(一定の住宅については10年間)に渡って、当該住宅に係るローン残高の一部を各年分の所得税額から控除できる。

住宅借入金等特別控除制度ともいわれ、これにより住宅取得等のための借入金に係る負担が軽減される。 

対象となるのは、床面積、入居年その他についての一定の要件を満たす住宅の新築、購入、増改築等のための借入金等(その住宅の敷地を取得するための借入金等を含む)の残高がある場合である。また、所得が一定の額以下でないと適用されない。

控除期間は入居後13年間(一定の場合は10年間)であって、控除額は年末の借入金残高の0.7%(2021年までに入居の場合は1%)であるが、控除の対象となる借入金の残高について、住宅の品質(認定長期優良住宅認定低炭素住宅等であるかどうか)、入居年等に応じて限度額が決められている。

この特別控除の適用は、2025(令和7)年12月31日までである。

なお、この控除と、居住用財産の買い換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除制度とは併用可能である。

住宅ローン控除

住宅ローン減税を参照。

住宅ローン破綻

住宅ローンの返済ができなくなること。ローンのリスクが顕在化し、家計が成り立たなくなることによって生じる。失業などによって返済金を賄えなくなる場合のほか、返済額の過多など元々のローン内容に無理があって返済不能になる場合がある。

住宅ローン破綻に陥ると、担保に供されている自宅が競売に付される場合があるなど大きな負担が生じ、家計の再編成等に迫られることになる。

住宅ローンは、借入金額が大きく、日常生活のなかで返済し続けなければならない借金であるから、その利用に当たっては、長期にわたって、毎月、相当額の金銭を返済する義務を負うことを確認し、それに伴う各種のリスクを慎重に検討する必要がある。

従たる権利

民法第87条第2項は「従物は主物の処分にしたがう」と定めている。これは、主物の効用を高めるために主物に結合させられた物(これを従物という)は、原則として主物と法律的運命を共にするという趣旨である(詳しくは従物へ)。

この民法第87条第2項は、物と権利との関係にも類推適用されている。例えば、借地上の建物が売買される場合には、その建物とともに土地賃借権も売買される。このように主物に附属せしめられた権利を「従たる権利」と呼んでいる。

また、抵当権の効力は従たる権利にも及ぶとされている(「付加一体物」参照)。ただし主物が登記を備えたとき、従たる権利についても物権変動が公示されたことになるかどうかは別問題であり、不動産登記法などによって決定される。

重大な不履行(契約の)

債務の履行について合理的な期待を持てない状態にあることをいう。このような場合には、債務者に故意・過失がない場合にも契約解除を認めるべきであるという私法上の考え方がある。

伝統的に、債務不履行による契約解除には相手方の責めに帰すべき事由が必要であるとされ、民法はこれを採用している。これに対して、契約解除は合理的な期待を失った法的拘束から債権者を解放する役割を果たすのだから、債務者の故意・過失の有無とは無関係にこれを認めるべきであるという考え方(帰責事由不要説)があり、その要件とされるのが「重大な不履行」である(ただしどのような場合が重大な不履行に当たるのかについては必ずしも明確ではない)。

このように帰責事由の取扱いは債務の履行を確保する上で大事な観点であり、そのあり方について議論がある。

従物

主物に附属せしめられた物のことを「従物」という(民法第87条第1項)。
例えば、建物が主物、建物に取り付けられたエアコンは従物である。判例に現れた従物の例としては、建物に対する・建具、宅地に対する石灯籠・取り外し可能な庭石などがある。
従物については、次の点が問題となる。

1.主物の売買
従物は「主物の処分にしたがう」(民法第87条第2項)とされているので、通常は、主物を売買すれば、当然に従物も売買されることになる。ただし、売買の当事者がこれと異なる合意をすれば、従物と主物を切り離して売買することが可能である。

2.主物の登記
主物が登記されれば、その登記により主物と従物の両方の物権変動が公示されたことになる。従って、建物が登記されれば、附属建物である物置が未登記であっても、登記の対抗力は附属建物である物置に及ぶ。

3.抵当権の設定
抵当権を設定した当時において、すでに主物に附属せしめられていた従物には、抵当権の効力が及ぶ。しかし抵当権設定後に附属せしめられた従物については解釈が分かれている。
(詳しくは付加一体物へ)

4.従たる権利
「従物は主物の処分にしたがう」という民法第87条第2項は、物と権利との関係にも類推適用されている。例えば、借地上の建物が売買される場合には、その建物とともに借地権も売買される。このように、主物に附属せしめられた権利を「従たる権利」という。

住民税

居住する個人に課せられる地方税で、道府県民税と市町村民税を合わせたものをいう。

地方税は、所得に対して課せられる「所得割」と、定められた額が一律に課せられる「均等割」とがある。両者を合算したのが住民税額である。
地方税は、その年の1月1日現在で居住しているところで課され、所得割の税額は、前年の1月から12月までの所得に応じて算出される。また、その賦課徴収は市町村が一括して行なう。

住民票

市区町村の住民について、その属性を個人単位に記載した書類。住民基本台帳法に基づき、市区町村長が作成する。

作成の対象となる住民は日本国籍を有する者に限られ、記載される事項は、氏名、出生年月日、性別、世帯主との関係、住所、住民となった年月日、住民票コードなどである。

また、住民票を世帯ごとに編成して住民基本台帳が作成されている。

住民票の記載事項に変更が生じる場合には、その原因に応じて、転入届(他市町村から異動したとき)、転居届(同一市町村内において住所が異動したとき)、転出届(他市町村へ異動するとき)または世帯変更届(同一住所内における世帯の分離、世帯の合併、世帯主の変更、世帯員の異動があったとき)が必要である。   

重要事項説明

宅地建物の取引において、宅地建物取引業者が取引当事者に対して契約上重要な事項を説明することをいう。

また、その際に、説明の内容を記載して当事者に交付する書面を重要事項説明書という。

重要事項説明を必要とするのは、宅地建物取引業者が自ら売主として取引する場合、および不動産取引を代理媒介する場合であり、その説明は、売買契約賃貸借契約を締結するよりも前に行なわなければならない。また、説明に当たるのは宅地建物取引士でなければならず、さらには、説明する重要事項をすべて書面に記載し、取引当事者にその書面(重要事項説明書)を交付する必要がある。

説明を要する事項は、売買か賃貸かなどの取引内容に応じて異なるが、大きく分けて、

1.取引対象不動産の権利関係、2.取引対象不動産に係る法令上の制限、3.取引対象不動産の状態やその見込み、4.契約の条件

に関する事項とされている(詳細は必ず直接に法令(宅地建物取引業法第35条およびその関連法令)に当たって確認されたい。また、臨機に改正も予想されるので留意が必要である)。

重要事項説明は、不動産の特性や取引の形態に起因して取引当事者に不利益が発生することを防ぐための仕組みとされ、その適正な実施が強く求められている。

重要事項説明書

宅地建物取引業務における重要事項説明に当たって、取引の相手となる当事者に対して交付して説明しなけばならない書面をいう(「重要事項説明」についての詳細は当該用語を参照)。

重要事項説明書には説明を要する重要事項を記載しなければならず、また、書面は、宅地建物取引士が、記名押印して交付しなければならないとされている。

重要伝統的建造物群保存地区

市町村が定めた伝統的建造物群保存地区であってわが国にとって特に価値の高いものについては、文部科学大臣は市町村からの申し出にもとづき、その全部または一部を「重要伝統的建造物群保存地区」として選定することができる(文化財保護法第144条)。

重要伝統的建造物群保存地区の数、伝統的建造物が保存すべき建造物の数については、文化庁ホームページを参照のこと。

重要土地

重要施設または国境離島等の機能を阻害する行為に供される恐れのある重要施設周辺(施設の敷地からの距離がおおむね1,000m以内)及び国境離島等の土地。重要施設とは、自衛隊の施設、米軍基地、海上保安庁の施設のほか、機能が失われると国民の生命、身体、財産に重大な被害が生じる恐れのある政令で指定される生活関連施設である。

重要土地のうち、重要施設または国境離島等の機能を阻害する行為に供することを特に防止する必要があるものは「注視区域」に指定され、区域内の土地及び建物については、土地利用等の状況調査が実施され、必要に応じて土地等の機能を阻害する行為に供しない旨を勧告・命令される。また、注視区域のうち、重要施設または国境離島等の機能が特に重要または阻害が容易であって機能の代替が困難である場合の重要土地は「特別注視区域」に指定され、区域内の土地及び建物について所有権等の移転等の届出が必要になる。

重要土地に関する調査、規制等の措置を定めているのは、重要土地等調査規制法(重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律)である。

重要土地等調査規制法

重要施設または国境離島等の機能の阻害を防止するため、その機能を阻害する行為に供される恐れのある施設周辺及び国境離島等の土地(重要土地)のうち一定のものを指定し、調査、規制等の措置を講じることを定めた法律。正式な名称は、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」で、2021年6月に制定された。

重要施設とは、自衛隊の施設、米軍基地、海上保安庁の施設のほか、機能が失われると国民の生命、身体、財産に重大な被害が生じる恐れのある政令で指定される生活関連施設である。

重要土地等調査規制法で定められている主な措置は、次の通りである。

1)「注視区域」(重要施設または国境離島等の機能を阻害する行為に供することを特に防止する必要があるとして指定される重要施設の敷地周囲おおむね1,000メートル以内の土地及び国境離島等の土地の区域)における区域内の土地及び建物の利用等の状況調査、土地等を機能を阻害する行為に供しない旨の勧告・命令

2)「特別注視区域」(注視区域うち、重要施設または国境離島等の機能が特に重要または阻害が容易であって機能の代替が困難である場合に指定される重要施設の敷地周囲おおむね1,000m以内の土地及び国境離島等の土地の区域)における土地及び建物の所有権等の移転等の届出

重要文化財

有形文化財のうち重要なものとして文部科学大臣に指定され、官報に告示されたものを「重要文化財」という(文化財保護法第27条第1項、第28条)。

重要文化財は建造物と美術工芸品に区分される。
建造物である重要文化財は、江戸時代以前のものが約9割を占めるが、明治以降の住居・学校・文化施設・産業構造物なども約1割を占めている。

重要文化財に関しては、その現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼすような行為をしようとするものは文化庁長官の許可を受けなければならない(文化財保護法第43条)。
ただし現状変更については維持の措置・非常災害のために必要な応急措置については許可を要しない。また保存に影響を及ぼすような行為については影響が軽微であるときは許可を要しない(文化財保護法第43条)。

建造物と美術工芸品の件数については、文化庁ホームページを参照のこと。

重要無形文化財

無形文化財のうち重要なものとして、文部科学大臣が官報に告示することによって指定したものを「重要無形文化財」という(文化財保護法第71条)。

また、これらの重要無形文化財に指定される芸能を高度に体現しているものや、重要無形文化財に指定される工芸技術を高度に体得しているものは「重要無形文化財保持者」または「重要無形文化財保持団体」として認定され、国が助成を行なっている。

このうち、「重要無形文化財保持者」であって「各個認定」を受けている者は、一般に「人間国宝」と呼ばれている。

重要無形民俗文化財

無形の民俗文化財であって、特に重要なものとして文部科学大臣に指定され、官報に告示されたものを「重要無形民俗文化財」という(文化財保護法第78条)。

重要無形民俗文化財の件数については、文化庁ホームページを参照のこと。

重要有形民俗文化財

有形の民俗文化財であって、特に重要なものとして文部科学大臣に指定され、官報に告示されたものを「重要有形民俗文化財」という(文化財保護法第78条)。

重要有形民俗文化財に関しては、その現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼすような行為をしようとするものは、その行為の20日前までに文化庁長官に届出をしなければならない(同法第81条)。

14条地図

登記所に備え付けられている地図。不動産登記法第14条の規定によって作成されている。

14条地図は、正確な測量に基づいて、筆ごとの土地についてその区画と地番を明確に表示している。地図の縮尺は、市街地地域では250分の1または500分の1、村落・農耕地域では500分の1または1,000の1、山林・原野地域では1,000分の1または2,500分の1で、測量は、三角点、基準点などを基礎にして行なうこととされている。その多くは、国土調査法による地籍調査の成果(地積図)がそのまま利用されている。

なお、正確な測量が実施されていない土地については、課税のために作成された土地台帳付属地図等が「地図に準ずる図面」として備え付けられている。

重量鉄骨

読み: じゅうりょうてっこつ

「重量鉄骨」とは、厚さが6mmを超える鋼材のことである。
その反対に、厚さが6mm以下の鋼材は「軽量鉄骨」という。

重量鉄骨は、重量鉄骨構造建物において柱・として使用される。

重量鉄骨構造

鉄骨構造の一つ。
重量鉄骨構造とは、次のような特徴を持つ鉄骨構造である。

1.重量鉄骨(H形鋼など)を柱・として使用する。
2.柱・梁の接合部をボルトにより「剛接合」する。
(「剛接合」とは外力を受けても接合部が回転・変形しないという意味である)
3.木質系パネル・軽量気泡コンクリートパネル・窯業系パネルなどで壁・床を構成する。

このように「重量鉄骨構造」は、剛接合された骨組を持つ非常に頑強な構造となっている。
そのため、重量鉄骨構造は3階建ての一戸建て住宅や、3階建ての共同住宅で多用されている(ただし最近は2階建ての重量鉄骨構造も見られる)。

授権行為

本人が代理人に対して、代理権を授与する行為のこと(詳しくは代理権授与行為へ)。

受贈者

贈与契約において財産等の贈与を受ける者。

贈与が成立するためには、与える者(贈与者)の贈与する旨の意思表示だけでなく、受贈者の受諾が必要である。

樹木等管理協定

樹木や樹林地の保全・管理に関する協定で、都市の低炭素化を促進するために、市町村又は緑地管理機構が、樹木の所有者等に代わって一定の樹木等を保全・管理することなどを定めたものをいう。

樹木等管理協定は公告され、新たに樹木の所有者等になった者に対しても有効である。また、このことは、宅地建物取引の営業における重要事項説明の対象とされている。

準委任契約

法律行為以外の事務の実施を委託する契約をいう。民法上委任契約の規定が全面的に適用されるため(民法656条)、委任契約と区別する実益はない。

不動産取引における媒介契約や不動産の管理委託する契約(不動産管理契約)はこれに該当する。

順位番号(不動産登記における~)

登記記録甲区乙区のそれぞれにおいて、登記の時間的順序に従って、各個の登記に付される番号のこと。

甲区にされた登記は甲区の中で順位番号が付けられ、乙区にされた登記は乙区の中で順位番号が付けられる。つまり、区の中における登記の先後は、順位番号によって判明する。
なお、区を越えて登記の先後を見るためには、受付番号で判断する。

循環型社会

資源を効率的に循環させながら利用することによって、資源消費の抑制と環境負荷の低減を図ることのできる社会をいう。

「循環型社会形成推進基本法」では、これを「製品等が廃棄物等となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」であると定義している。

循環型社会を形成するための基本的な原則は、「発生抑制」(リデュース)、「再使用」(リユース)、「再生利用」(マテリアルリサイクル)、「熱回収」(サーマルリサイクル)、「適正処分」をこの順に実施することであるとされる。
また、製品の生産者の責任を製品のライフサイクルの最終段階にまで拡大すること(拡大生産者責任)も大事である。
容器包装、家電、建設廃棄物、自動車などのリサイクルは法律によって義務付けられているが、これらはいずれも循環型社会を形成するための施策の一環である。

準関係人(土地収用における~)

収用について、利害関係を有する者であって、土地所有者以外であって、関係人以外の者のこと。
具体的には、収用の対象となる土地(または賃借権などの土地に関する権利)について、仮処分をした者や、権利を害される恐れのある者を指す。

例えば、収用対象の土地について、他へ転売してはならないという処分禁止の仮処分を行なった者や、登記されていない買戻し権を有する者が準関係人に該当する。

準関係人は、収用裁決において、収用委員会の審理が終わるまでの期間内に、収用委員会に意見書を提出することができる(土地収用法第43条)。

準禁治産者

心神耗弱者(こうじゃくしゃ)や浪費者であって、準禁治産の宣告を受けた者のこと(旧民法第11条)。

2000(平成12)年に民法が改正・施行されたため、この準禁治産者の制度は次のように改められた。

1.準禁治産者の制度は、被保佐人の制度へと移行した(被保佐人を参照のこと)。
2.上記1.の際に、単なる浪費者は被保佐人の範囲から除外された。
3.ただし、旧民法第11条により準禁治産者であった者は、改正法施行後も準禁治産者として扱われる。

準景観地区

都市計画区域および準都市計画区域外の景観計画区域において、景観の保全を図るために指定される区域をいう。

指定は、相当数の建築物建築が行なわれて現に良好な景観が形成されている一定の区域について、市町村が行なう。また、準景観地区内においては、条例で、建築物または工作物開発行為等について、一定の規制がなされる。

指定や規制の手続き、基準などは、景観法に規定されている。

準工業地域

都市計画法(9条)で「主として環境の悪化をもたらす恐れのない工業の利便を増進するため定める地域」と定義されている。

この用途地域では、建ぺい率の限度は原則として50%、60%または80%である。

また容積率の限度は100%から500%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。

この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

(建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗等
4.事務所等
5.工場(危険性が大きいか、または著しく環境を悪化させる恐れのある工場を除く)
6.ホテル・旅館
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等、料理店、キャバレー
8.自動車教習所
9.倉庫業の倉庫

(建築できないもの)
1.個室付き浴場
2.危険性が大きいか、または著しく環境を悪化させる恐れのある工場

準住居地域

都市計画法(9条)で「道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域」と定義されている。

この用途地域では、建ぺい率の限度は原則として50%、60%または80%である。

また容積率の限度は100%から500%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。

この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

(建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗等(床面積1万m²以下)
4.事務所等
5.危険や環境悪化の恐れが非常に少ない作業場面積が50平方メートル以下の工場
6.ホテル・旅館
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(業種によっては床面積1万m²以下)、客席が200平方メートル未満のミニシアター
8.自動車教習所
9.倉庫業の倉庫

(建築できないもの)
1.上記に挙げたもの以外の工場
2.上記に挙げたもの以外の遊戯施設・風俗施設

準耐火建築物

建築基準において、耐火建築物以外の建築物のうち、その主要構造部(壁、柱、床、、屋根、階段)が準耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など、火災を遮る設備を有する建築物をいう。

この場合、準耐火性能を満たすというのは、

1.主要構造部が準耐火構造であること

2.準耐火構造と同等の準耐火性能を有するための技術的基準(準耐火性能を確保するための方法としては、外壁を耐火化する手法、または、主要構造部を不燃材料化する手法が認められていて、それぞれの要件が定められている)に適合すること

である。

一定の特殊建築物や、都市計画で定められた準防火地域内の一定の建築物は、準耐火建築物でなければならない。

準耐火構造

建築基準において、壁、柱、床その他の建築物の部分の構造が、準耐火性能に適合する建築物の構造をいう。

この場合の準耐火性能とは、通常の火災による延焼を抑制するために、当該建築物の部分に必要とされる性能のことである。その技術的な基準としては、加熱開始後各構造に応じて定められる一定の時間(おおむね45分間)、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであることなどの要件が定められている。

準耐火構造は、火災中の延焼を抑制する性能が求められるにとどまり、耐火構造のように、鎮火後に建物を再使用できるような性能までは要求されていないと理解されている。

準都市計画区域

都市計画区域外の区域において、市街化が進行すると見込まれる場合に、土地利用を規制するために設ける区域。都道府県が指定する。

1.準都市計画区域の趣旨
 都市計画区域を指定するためには一定の要件を満たすことが必要であるが、その要件を満たしていない区域であっても、将来的に市街化が見込まれる場合には、土地利用をあらかじめ規制しておくことが望ましい。その必要に応えるために、2000(平成12)年に創設されたのが「準都市計画区域」の制度である。

2.準都市計画区域の指定の要件
 次の要件のすべてを満たす場合に、指定することができる。
1)都市計画区域外の土地であること
2)相当数の住居等の建築・敷地の造成等が現に行なわれ、または行なわれると見込まれること
3)そのまま放置すれば将来における都市としての整備開発保全に支障が生ずる恐れがあること

3.準都市計画区域の指定の方法
都道府県が指定する(指定の手続きについては「準都市計画区域の指定」を参照)。

4.準都市計画区域の指定の効果
 準都市計画区域においては、次のような土地利用の規制が適用される。
1)次の地域地区を定めることができる。
用途地域」「特別用途地区」「高度地区」「特定用途制限地域」「景観地区」「風致地区」「緑地保全地域」「伝統的建造物群保存地区
2)開発許可制度が適用される。この結果、原則として開発面積が3,000平方メートルを超える宅地造成について都道府県知事(または市長)の許可が必要となる(「開発許可」を参照)。
3)建物等の新築や増改築移転(増改築移転部分の床面積が10平方メートル以内のものを除く)する場合には、事前に建築確認を受けなけらばならない。この場合には、都市計画区域内と同様の基準が適用される(「建築確認」を参照)。

準都市計画区域の指定

準都市計画区域は、都市計画区域外の区域において、市街化が進行すると見込まれる場合に、土地利用を規制するために設ける区域である。準都市計画区域は、次の手続きによって指定される。

1)指定は都道府県が行なう。
2)都道府県は、指定しようとするときには、関係市町村および都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。
3)公告によって指定する。

準法律行為

法律効果の発生を目的としない意思の通知や観念の通知のこと。

具体的には、制限能力者の相手方の催告権のように、ある意思の通知ではあるが、それ自体は法律上の権利義務に影響しないものが、準法律行為である。

また、社員総会の招集の通知のように、単なる観念の通知も準法律行為である。

準防火地域

準防火地域は都市計画で指定される地域であり、火災を防止するために比較的厳しい建築制限が行なわれる地域で ある(建築基準法62条)。

準防火地域では建築物は次のようなものとし なければならない。

1.地上4階以上の建築物
→必ず耐火建築物とする

2.地上3階の建築物
延べ面積によって次の3通りに分かれる。
1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき : 必ず耐火建築物とする
2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき : 少なくとも準耐火建築物とする
3)延べ面積が500平方メートル以下のとき : 少なくとも3階建て建築物の技術的基準に適合する建築物とする

3.地上1階または地上2階の建築物
→延べ面積によって次の3とおりに分かれる。
1)延べ面積が1,500平方メートルを超えるとき : 必ず耐火建築物とする
2)延べ面積が500平方メートルを超え、1,500平方メートル以下のとき : 少なくとも準耐火建築物とする
3)延べ面積が500平方メートル以下のとき : 通常の建築物でも構わない

ポイントを2つ挙げておく。
まず、最近多い地上3階建ての一般住宅は、上記2.の3)に該当するので、少なくとも「3階建て建築物の技術的基準」に適合する必要がある。
次に、通常の地上2階建ての一般住宅は、上記3.の3)に該当するので、原則的に特別な防火措置を講じなくてよい。ただし上記3.の3)の場合に、その建築物を木造とするためには、建築基準法62条2項の規定に基づき外壁・軒裏を「防火構造」とする必要がある。

なお、準防火地域では上記の規制のほかに、次の規制があることに留意したい。

ア.屋根の不燃化
建築物が耐火構造準耐火構造でない場合には、その屋根は不燃材料で造り、ま たは不燃材料でふくことが必要である(建築基準法63条)。
イ.延焼の恐れのある開口部の防火措置
建築物が耐火構造や準耐火構造でない場合には、外壁の開口部(すなわち玄関や窓)で延焼を招く可能性のある部分に、防火戸など防火設備を設けなくてはなら ない(建築基準法64条)。

純利益

企業会計上の概念で、企業の経営活動によって最終的に生まれた利益をいう。

当期の損益計算書をもとに、経常利益特別利益(投資有価証券売却益など)を加え、それから特別損失(過年度の引当金不足修正額など)を差し引いて算出される。
この場合、法人税等の税金を支払う前のものを「税引前純利益」、税金支払後のものを「純利益」として区別する。

純利益=経常利益+特別利益-特別損失-支払った税金

この値は、企業の当期のすべての経営活動の成果を示すとされる。従って、経営を評価する際の基礎的なデータとして、自己資本に対する純利益の割合(自己資本利益率、ROE)や営業収益(売上高)に対する純利益の割合(純利益率)が活用されている。

自由刑

刑罰のうち、犯人の自由を剥奪する刑罰のこと。
自由刑としては、重い順に「懲役、禁固、拘留」がある。

懲役は「犯人を拘禁し、作業を課す」という刑罰であり、有期と無期に分かれる。有期ではその刑期は犯罪ごとに異なっているが、1月以上20年以下とされている(ただし加重する場合は30年まで上げるなどの措置が認められている)。

禁固は「犯人を拘禁する」という刑罰であり、作業をしなくてよい点に特色がある(ただし、受刑者の要望により作業することは可能である)。禁固が適用される犯罪は、過失犯などごく一部の犯罪に限定されている。

拘留は、公然わいせつ罪、暴行罪、侮辱罪、軽犯罪などに適用される刑罰であり、刑期は「1日以上30日未満」と短い。

自由設計(住宅の〜)

注文に応じて設計し建築する住宅。ブランド名として用いられることが多い。

自由設計においては、建築主の注文によって、住宅の外観、間取り、設備などを決定する。この場合、あらかじめ用意されたパターンから選択して注文する方法もある。

畳(広さの単位として)

「◯畳の間」のように使用する。その意味は「畳(たたみ)」を参照。

J

浄化槽(し尿浄化槽)

便所からのし尿と、台所等からの雑排水を一緒に浄化する水槽のこと。沈殿、バッキ、消毒の処理を行なう機能を持っている。

下水道の完備した区域(処理区域という)ではないエリアでは、し尿浄化槽を必ず設置して、し尿を浄化してから、雨水管へ放流しなければならないとされている(建築基準法31条2項)。

上場株式等の譲渡損失の繰越控除

上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の取引に係る売却損を、損失が生じた翌年以降の3年間にわたって、上場株式等に係る譲渡所得および配当所得の金額から控除できるという制度。所得金額の計算は各年ごとに独立で行なうという原則の例外である。

この制度は、まず、譲渡損失を上場株式等の配当等、利子所得の金額および配当所得の金額と損益通算し、なお控除しきれない金額について適用できる。

なお、適用に当たっては、次の注意が必要である。

1. 上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の譲渡損失は給与所得と相殺することはできない。また、事業所得・不動産所得と相殺することもできない。
2.「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を受けるには必ず確定申告をする。個人投資家が「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合であっても、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を希望する場合には確定申告しなければならない。

浄水器

給水された水道水をさらに処理し、溶存物質などを減少させるための器具。

家庭用浄水器による水処理は、活性炭による吸着や、ろ過膜(中空糸膜)による濾過の方法が用いられている。

浄水器で減少させる物質は、残留塩素、トリハロメタン、有機物などであるが、日本の水道水は、給水前に浄水処理がなされていて、そのまま安全に飲むことができる。

浄水器のタイプには、水道の蛇口に取り付けるもの、浄水して汲み置きするポット型のもの、屋内配管に組み込むものなどがある。 

上棟

棟上げと同意で、棟木を納めること、もしくはそのときに行なう儀式のこと。

新築への祝福と神の守護に感謝を示し、同時に無事建設されることを祈願する。建築工事の着工と完了の中間にあり、建物の形態がおおよそ整った時点を指す。

上棟式

建築工事において、建前が終わって、棟木を上げる時期に行なう儀式。上棟祭ともいう。

棟上げ木造建築での工程であるが、鉄筋コンクリート造など棟木のない構造の建築工事においても、主要な構造の構築が終わったときに上棟式を行なう慣行がある。

上棟式は、建物と工匠の神々を祀って感謝する行事であるとされている。これに対して、地鎮祭は大地の神霊に祈願する行事である。

譲渡益に対する追加課税

土地の譲渡益に対する課税を特別に重くする制度。地価の高騰を背景として、土地投機の抑制を図る目的で1973(昭和48)年に創設された。

重課の内容は次の通りである。

(1)個人の不動産業者等が短期所有(5年以下)の土地を譲渡した場合の事業所得等に対して、譲渡益の52%(所得税40%、住民税12%)等を課す。

(2)法人の土地譲渡益に対する税率を、短期所有(5年以下)の土地について10%、長期所有(5年超)の土地について5%を上乗せする。

しかしながら、この制度は、土地投機抑制の観点、土地取引の活性化・有効利用を図る観点から、1998(平成10)年度から2022(令和4)年度までの間、適用が停止されている。

譲渡所得

資産を譲渡したことにより得た所得をいう。

譲渡収入と資産取得や譲渡に当たって要した費用の差が譲渡所得である(課税される譲渡所得額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除)。

譲渡所得は、その他の所得と合算して課税されるのが原則であるが、土地や建物の譲渡所得については、株式等の譲渡所得と同様に、他の所得と分離して課税される。その課税に当たっては、土地や建物の保有期間に応じて、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの(長期譲渡所得)と5年以下のもの(短期譲渡所得)とに分けられ、税率などが異なる。

譲渡損失

不動産を譲渡したことによって発生した損失をいう。

譲渡金額が、当該不動産の取得金額から建物の減価償却費および取引諸経費を減じた額よりも小さい場合に発生する。

居住用財産について譲渡損失が発生した場合には、一定の要件を満たせば、所得税の課税に当たって繰越控除が認められる。

譲渡担保

債務者(または物上保証人)の所有する物(動産でも不動産でもよい)を、債務者(または物上保証人)が債権者に譲渡し、債務を全額弁済すると同時に債務者(または物上保証人)が債権者からその物を買い戻すという制度である。

担保に入っている期間中は、債権者(すなわち物の所有者)が、その物を債務者に賃貸するという点に最大の特徴がある。この意味で譲渡担保とは、買戻または再売買の予約に、賃貸借を組み合わせた制度であるということができる。

譲渡担保においては債務が弁済されないときは、債権者(すなわち物の所有者)はその物を確定的に所有できることとなる。その場合、債務の金額を物の価額が超える場合には、債権者はその超過部分を債務者に返還する必要があり、この債権者の義務を清算義務という。清算義務は判例により確立したものである(昭和46年3月25日最高裁判決など)。

譲渡費用

不動産等を譲渡する際に直接に負担した費用。譲渡所得の算定に当たって、収入から控除できる。

譲渡費用として認められるものは、支払った仲介手数料印紙税で売主が負担したもの、賃借人に支払う立退料、土地売却のために必要な建物の取り壊し費用などである。従って、修繕費、固定資産税などの維持管理費用、代金の取り立て費用などは含まれない。

除斥期間

法律で定められた期間のうち、その期間内に権利を行使しないと権利が当然に消滅する場合の、その期間をいう。

時効と異なり、中断すること(ある事由により経過した期間が消えること)はなく、また、当事者の援用(この規定によって利益を受ける旨の意思表示)がなくても効果が生じる。

法律で期間が制限されている場合に、その制限された期間が除斥期間であるかどうかは、権利の性質や関係の実態に照らして個別に判断される(つまり、条文の書き方では判断できない)。例えば、占有を妨害されたときの妨害停止等の訴え(占有保持の訴え)の提起期間や、賃貸借契約において借主の契約に反した行為による損害賠償等を返還後に請求することのできる期間は、除斥期間であると考えられている。これらの場合には、それぞれの期間(いずれも1年とされている)を過ぎれば、提起や請求をする権利は消滅する。

除染

原子力発電所の事故によって拡散・付着した放射性物質を取り除いて、放射線量を低減することをいう。放射性物質汚染対処特措法に基づき実施されている。

除染は、放射線量の状況、土地・建物・樹木等の現状、除染後の放射線量等の除染目標などに応じて、計画的に実施しなければならない。しかも、放射線量は土壌や水の流動等によって変動する。また、除染作業によって発生する放射性廃棄物を処理する必要がある。除染後のモニタリングによって除染の対象とした環境の状態を把握することも重要である。

原子力発電所の事故によって被災した区域は、避難指示解除準備区域居住制限区域帰還困難区域に3区分されるが、除染の成果はその区分を大きく左右することとなる。

ジョリパット

塗り壁の仕上げ材のひとつ。フランスで開発された商品「JOLYPATE」のことで、塗り壁の施工に用いる代表的な塗材である。

粘性で、下地に直接塗って使用し、壁の表面にデザインを施すことができる。一方、施工に当たっては一定の技術が必要である。

なお、壁の仕上げ方法には、塗材を塗る「湿式工法」とパネルを貼る「乾式工法」があるが、ジョリパットを用いる施工は、湿式工法の一つである。

自用地

他人が使用する権利のない土地をいう。相続税および贈与税の課税に当たって課税対象土地を評価する場合などに使われる用語である。

土地の財産価値は、借地権借家権が設定されていれば、それぞれの権利者に帰属する。そのため、財産課税に当たっては、土地の評価額を各権利者に分割しなければならない。その算定の基礎となるのが、所有者以外に使用する権利者がいないとしたときの土地の評価額である。このような土地が自用地である。

例えば、貸宅地の価額は、次の式によって算定される。
貸宅地の価額=自用地とした場合の価額-自用地とした場合の価額×借地権割合

人感センサー

人の存在を感知して作動する装置。感知のしくみとして、人体が発する赤外線を感知するもののほか、人が発する音波を感知するもの、人による光の遮りを感知するものなどがある。

自動ドア、自動照明、自動水栓、自動水洗、防犯設備などに使われている。そのほか、人感センサーによって高齢者等の様子を感知し、見守ることも行われている。

人造大理石

天然の石に模してつくる模造の石を人造石というが、大理石を模したものが人造大理石である。

モルタルの下地に白色セメント、大理石粉、顔料などを塗りつけ加圧成型した後に研磨して仕上げる。
価格が安く、加工が楽であるため、カウンターの天板などに利用されることが多い。テラゾともいう。

GIS

Geographic Information Systemsの略で、地理情報を総合的に管理し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術をいう。

「地理情報システム」と訳される。

GISを活用することによって、位置・空間に関する情報を含む各種のデータを地図データとして統合し、加工・分析することができる。阪神・淡路大震災において、関係機関が保有していた情報を効果的に活かすシステムがなかったことへの反省等をきっかけに、GISの活用を促進する取組みが始まった。

GNSS測量

人工衛星からの信号を用いて位置を決定する衛星測位システムを利用した測量をいう。GNSSは、英語のGlobal Navigation Satellite Systemsの略語で、和訳は「全地球衛星測位システム」である。

衛星測位システムは、人工衛星からの電波を専用アンテナで受信することによって高精度な経度緯度や座標を求めることのできるしくみであるが、複数の方式がある。日本の基準点測量では、測量法に基づく作業規定の準則において、GPS、準天頂衛星システムおよびGLONASSを採用することとされ、「GNSS測量」と総称している。

GPIF

年金積立金管理運用独立行政法人。GPIFはその英語名Government Pension Investment Fundの略。機関投資家のひとつである。

GPIFは、厚生労働大臣の委託に基づいて、厚生年金および国民年金の積立金の管理および運用を行ない、その収益を国庫に納付する業務を実施する。

積立金の運用は、基本的には信託銀行または投資顧問会社に委託される。その場合の運用の基本方針は、
・分散投資を基本とし、長期的な観点からの資産構成割合(基本ポートフォリオ)に基づいて運用すること
・各資産ごとのベンチマーク(たとえば国内株式についてはTOPIX)収益率を確保すること
としている。

基本ポートフォリオを構成する資産の大部分は、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式であるが、短期資産や金融派生商品(デリバティブ)に対する投資も認められている。

GPS

Global Positioning Systemの頭文字を取ったもの。「地球測位システム」と訳される。

人工衛星から電波を発信し、電波を発信した時刻とその電波を受信した時刻との差を計算することによって、受信者と人工衛星との距離を割り出し、さらに複数の人工衛星について同様に距離を割り出すことにより、受信者の現在位置を知ることができるという位置測定技術。もともとは冷戦時代に米国国防総省が開発した軍事技術である。そのため民生用に使用されている人工衛星の電波は精度が低く、位置測定において最大100mの誤差が生じるといわれている。

こうしたGPSの精度の問題点を克服するため、1997年12月にわが国の科学技術庁(現・文部科学省)航空科学研究所では「リアルタイム・キネマティック」方式という新しいGPS技術を開発した。この方式は頭文字を取って、RTK-GPSとも呼ばれている。
RTK-GPSでは、あらかじめ位置が正確にわかっている位置基準点と、移動可能な受信機が、ともにGPS衛星からの電波を受信する。それと同時に、位置基準点から受信機へと無線により補正用のデータが送信される。こうして、受信機側では位置のずれを自動的に修正し、受信機の正確な位置を高精度で測定することができる。その誤差はわずか数cmで、精度は通常のGPSのおよそ1,000倍に達する。
そのため、土木・建築の測量においても、RTK-GPS受信機を使用することにより、カーナビのような感覚での精密測量が可能となる。また、RTK-GPSはリアルタイムで高精度の位置情報が得られることから、高度道路交通システム(ITS)への応用が期待されている。

こうしたRTK-GPSを活用するには、RTK-GPS用の受信機が普及すると同時に、あらかじめ位置が正確に分かっている位置基準点が多数整備されることが必要である。この点について、国土交通省国土地理院は2002年度から3年計画で、RTK-GPSに対応する「電子基準点」の整備を進めている。電子基準点は高さ約5mのステンレス製の塔で、アンテナ、受信機および通信用機器で構成される。電子基準点の位置は毎日精密に測定され、地殻変動によるずれが補正されている。このような電子基準点の位置情報をリアルタイムで提供するサービス(「GPS民間活用基盤」という)も、一部地域ですでに稼動している。

こうしたRTK-GPSの実用化に伴って、95年から各省庁が連携して検討を進めてきたGIS(Geographic Information Systems:地理情報システム)の推進にも拍車がかかるものと予想される。
GISでは「世界測地系」に準拠した地図情報の集積が必要となるが、RTK-GPSは「世界測地系」に準拠したデータシステムである。しかも、RTK-GPSでは前述のように高精度の測量が可能となるので、これまで困難とされてきた各種の地図情報を統合するデータベースの構築が進展するものと期待されている。

水害ハザードマップ

想定し得る最大規模の洪水・雨水出水(内水)・高潮が生じた場合の浸水想定区域を示す図面。水防法に基づき、主に住民等の避難に活用されることを目的として、市町村が作成・公表する。

1/10,000~1/15,000程度の大縮尺の地図を用いて、浸水想定区域のほか、浸水深、浸水継続時間、早期の立ち退き避難が必要な区域、避難経路、避難場所等が表記されている。また、予警報・避難勧告等の情報伝達方法、避難勧告・避難行動に関する事項、過去の水害実績、避難訓練の実施に関する事項、緊急時・平時の心構え等の情報も記載される。

宅地建物取引において、取引の対象となる土地・建物が水害ハザードマップ上のどの位置に所在するか(水害ハザードマップが作成・公表されていない場合にはその旨)を説明することは、重要事項説明義務の一つである。

水害保険

洪水、高潮、土砂崩れなどの水害による被災損失に対して補償する損害保険。火災保険の補償対象に含める形で設定されていて、例えば、「住宅総合保険」「オールリスクタイプの火災保険」などは水害も補償対象となっているが、「住宅火災保険」には水害に対する補償はない。
保険補償額は、全損であっても保険金額の7割を限度とし、床上浸水による一部損ではその被害の状況に応じて支払限度額が定められているのが一般的である。

なお、マンションの上層階では一般に水害保険は不要であるし、浸水が予想される地域では水害リスクが高いなど、保険の加入について選択が働きやすいこと、洪水等がいったん起きれば広い範囲で被災することから、水害保険の設計には難しい要素を伴うとされている。

水源地域の保全

水資源や水源地の森林を保全するために、水源地域の土地取引等について規制・誘導する政策をいい、北海道および一部の県ではその推進のための条例が制定されている。

水源地域の保全を図るための条例には、所有者等による適切な土地の管理を確保するべく、保全すべき水源地域の指定、指定した地域内の土地に関する権利の移転等の事前届出、届出のあった権利移転等に対する助言、届出違反に対しての勧告・公表などが規定されている。

水災害リスク

大量の水によって生じる災害の危険性。

水災害リスクは、洪水(河川水の氾濫)、内水の氾濫、土砂の崩壊・流出、高潮・高波などによって生まれる危険性である。今後、気候変動に伴って、降雨量の増加、台風や前線の活動の活発化、海面水位の上昇などが予想され、水災害リスクが高まるほか、複数の災害が複合することによるリスクも増大すると考えられている。

水災害リスクの程度は、流域の地形・地質・土地利用の状態、気象の状況、危険時における行動などによって異なる。その軽減のためには流域の関係者が協働で対応することが有効で、そのために流域ごとに流域治水プロジェクトが策定されている。

不動産の取引においては、水災害の防止・軽減のための土地利用の規制・誘導や、水災害リスクに関する情報を確認し、流域治水プロジェクトの内容に留意する必要がある。

水質汚濁防止法

公共用水域(河川・湖沼・沿岸等)および地下水の水質汚染を防止するために、1970(昭和45)年に制定された法律のこと。特に、1989(平成元)年に地下水に関する規定が追加されて以降は、この法律が地下水汚染に関して中心的な役割を担っている。

水質汚濁防止法の概要は次のとおり。

1.生活環境に被害を生ずる恐れがあるような汚水等を排出し、または有害物質を使用する等の理由により、水質汚染を招く危険のある施設を「特定施設」と定義する(水質汚濁防止法第2条)。
2.特定施設を設置する工場・事業場等を「特定事業場」と定義する(同法第5条)。
3.特定施設を設置する者・使用廃止する者に特定施設設置等の届出を義務付ける(同法第5条等)。
4.特定事業場に、排水基準の遵守を義務付ける(同法第3条)。
5.指定地域内の特定事業場に、水質汚濁の総量規制を実施する(同法第4条の5)。
6.特定事業場に、排出水および特定地下浸透水の汚染状態の測定を義務付ける(同法第4条の5)。
7.有害物質を使用する特定事業場において、特定地下浸透水が有害物質を含んでいるとき、その特定地下浸透水を地下に浸透させることを禁止する(同法第12条の3)。
8.上記7.に違反して、特定事業場の事業者が、有害物質を含む特定地下浸透水を地下に浸透させた場合において、都道府県知事は地下水の水質浄化を命令することができる。これを地下水の水質浄化の措置命令という(同法第14条の3、同法施行規則第9条の3、同法施行規則別表)。
9.都道府県知事に地下水の水質を常時監視することを義務付けた。これにより1989(平成元)年以降、毎年全国の約1万2,000の井戸について水質調査が実施されている。これを地下水モニタリングという(同法第15~17条)。
10.工場・事業場から有害物質を含む水を排出し、または有害物質を含む水を地下に浸透させた場合には、工場・事業場の事業者に過失がなくても、工場・事業場の事業者に健康被害の損害賠償の責任を負わせる(同法第19~第20条の3)(詳しくは「地下水汚染の無過失責任」へ)。

水素エネルギー

水素を原料とするエネルギー。燃焼によって発生する熱や、電解質中の化学反応で生まれる電流を利用する。

水素は、エネルギーを発生する際に排ガス、燃えカスなどの廃棄物を伴わないため、利用に伴う環境影響は皆無である。また、熱効率が高く、資源量は無限である。

一方、水素はそのほぼすべてが化合物中の元素として存在するから、水素を取り出すためにエネルギーが必要である。例えば、水は水素と酸素の化合物で、水から水素を取り出すためには電気分解や高温化学反応を利用することになる。あるいは、化石燃料から水素を取り出すにも熱が必要で、さらには二酸化炭素などの副産物が生じる。また、水素は燃えやすいので、水素エネルギーを広範に利用するためには、貯蔵や輸送のための技術を確立しなければならない。

水素エネルギーの用途は、製鉄等の工業プロセスでの利用、自動車等の原動力(燃料電池)、家庭用燃料電池などにおいて実用化されているほか、水素発電なども考えられている。しかし、その本格的な活用については技術開発の途上にある。

水道

人の飲用に適する水を供給する施設の総称で、取水施設、貯水施設、浄水施設、配水施設などから構成される。下水道に対して、上水道といわれることもある。

水道事業を営む者は、その給水区域内の需要者から給水契約の申し込みを受けたときは、正当の理由がなければ契約を拒んではならないとされている(給水義務)。

水道局

上水道の供給事業を営む地方公共団体の組織。地方公営企業であって、その経費は、原則として料金収入によって賄うこととされている。

水道局は、水道事業者として給水区域における給水義務を負っている。また、供給条件について供給規程を定めなければならない。その規程は、料金が適正な原価に照らして公正妥当なものであること、料金が定率また定額をもつて明確に定められていること、特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないことなどの要件を満たさなければならないとされている。

 

水道負担金

水道への新規加入や水道口径の拡大に際して負担する費用。水道料金は原則として給水量に応じて支払うが、水道負担金は、それとは別に一定額を一時に支払うのが一般的である。その金額は、水道事業者ごとに異なる。「水道施設負担金」「水道事業分担金」「上水道加入分担金」なども同じ意味である。

なお、不動産取引における土地の価格は、上下水道施設設置のための費用その他宅地造成に係る費用を含めて表示することとされているが(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)、分譲地の購入などに当たっては、別途、水道分担金の負担が必要かどうか確認する必要がある。

水平器

物体の水平・垂直を確認するための器具。「水準器」ともいう。

一般的な水平器は、気泡を密閉した管を物体に密着させ、気泡の位置によって物体の水平・垂直を確認する(気泡管水平器)。そのほか、円盤に気泡を封入してその位置を確認するもの(円形水平器)も使われている。また、精密な水平器としては、望遠鏡と気泡管水平器を組み合わせて水平度を視認・測定する水準器がある。

水防法

水防は、洪水、雨水出水(内水)、津波、高潮に際して、水災を警戒し、防御し、これによる被害を軽減する活動である。そのための仕組みを定めた法律が「水防法」で、1949(昭和24)年に制定された。

水防法が定める主な規定は次のとおりである。
(1)水防組織
・水防の責任を負う者を「水防管理団体」とし、原則として市町村、場合によって「水防事務組合」「水害予防組合」が責任を担う。また、水防事務を処理するために「水防団」を置くことができる。
・都道府県知事は、水防事務の調整・円滑な実施のため、水防計画を定める。

(2)水防活動
水防のための活動として、次の措置等を定める。
・河川等の巡視、洪水予報等、水位の通報および公表など
浸水想定区域の指定、要配慮者利用施設利用者の避難確保に関する計画の作成など
浸水被害軽減地区の指定、浸水被害軽減地区内の土地における土地の掘削、盛土切り土等土地の形状を変更する行為の届出など
・水防団等の出動、その優先通行、警戒区域の設定・立入制限等、決壊後の処置、立ち退きの指示など

(3)費用
・水防管理団体の費用負担、都道府県の費用負担、費用の補助を定める。

水流に関するルール(民法の~)

土地の上を流れる水に関して、隣地との関係を定めたルール。民法の相隣関係として規定されている。

水流は土地に固着しないため、その特質に即した取り扱いが必要となるからである。

主なルールとして、
1)隣地から水が自然に流れてくるのを妨害してはならないこと
2)他の土地で水流の閉塞等が生じて自らの土地に損害が及ぶときには、その除去等を行なうことができまたは除去を請求できること
3)自らの土地において、隣地の岸辺・流路が変わるような行為をしてはならないこと
4)高地の所有者は、浸水や余水の排出のため、公共水流または下水道に至るまで低地に水を通過させることができること
5)堰を設ける場合には、対岸の他人所有地に付着させることができること
などが定められている。

なお、水利用に関する民法の規定は極めて簡素であって、その利用関係の調整は、河川法などによるほか、慣習による場合もある。

数量指示売買

数量を基礎にして価格が決定されている売買のこと。

1.数量指示売買の定義
数量指示売買とは、「当事者において売買の対象となる物が実際に持つ数量を確保するために、その一定の面積(容積、重量、員数、尺度なども)があるということが契約に表示され、かつ、この数量を基礎にして代金額が定められた売買」であるとされている(最高裁判決昭和43年8月20日)。
このように、ある売買契約が数量指示売買と認められるためには、「当事者の数量確保の意思」、「数量の表示」、「数量をもとにした代金額の決定」、という3要素が必要である。

2.数量指示売買で数量が不足したとき
数量が不足したとき、買主は、民法第565条による売主の担保責任を追及することができる。
これは、「数量の不足または物の一部滅失の場合における売り主の担保責任」と呼ばれる売主の責任である(民法第565条)。
具体的には、善意(数量の不足を知らなかった)の買主は、売主に対して、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求ができる(ただし契約解除は、その残存数量であれば購入しなかったであろう場合にのみ認められる)。

つまり、数量指示売買で数量不足であれば、善意の買主は常に代金減額を請求でき、重大な数量不足ならば契約を解除でき、どちらのときでも損害賠償を請求できる。このように、善意の買主の権利が非常に強いということができる。

数量の不足または物の一部滅失の場合における売り主の担保責任

売買契約において、数量の不足または目的物の一部滅失がある場合に、売り主が負うべき契約不適合責任

責任を負わせるには、買い主が、追完請求(不足数量の追加や滅失の補修の請求)、代金減額請求、損害賠償請求、解除権の行使をしなければならない。

これらの請求等を行なうためは、原則として契約不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならないとしている。ただし、売り主が不適合を知っていたときまたは重大な過失によって知らなかったときはその限りではないとされている。

なお、数量不足による契約不適合を主張するためには、売買契約が「数量指示売買」であることが必要とされている。数量指示売買とは、当事者が或る数量を確保するため契約において数量を表示し、この数量をもとに売買代金が定められた売買である。

スキップフロア

1.勾配のある土地、または住宅の一部を地下とする場合等で、建築物の室内において、半階ずらした床を設け、空間に変化を付ける空間構成手法。室内に段差が生じるため、バリアフリーには適さない。

2.集合住宅において、1または2階おきに廊下を設け、エレベーターは廊下のある階にだけ停止し、その上下階の住戸へは階段を利用するようにした型式。廊下のない階ではプライバシーが確保でき、通風も良い。また、エレベーターの停止階が少ない分だけ、その分のエレベーターホールが不要、通路面積も小さくできるといった利点もある。

スキップ方式(マンション)

マンションの形式のひとつで、エレベータを複数階ごとに停止させる構造としたものをいう。停止しない階にはエレベータホールが不要となり、建物スペースを有効に活用することができるとされる。

数寄屋造り

日本の建物様式のひとつで、茶室に倣った建物として発達し、竹、丸太、土壁などを多用し、格式を排した自由なデザインが特徴である。室内に洗練された装飾が施されることもある。

江戸時代以降、住宅としても建築されるようになった。

スケルトン

構築物の骨組みのこと。建物などの構造・強度を形成する部材で、構造躯体とも言われる。英語のskeleton。

建物を、スケルトンと内装や設備(これをインフィルinfillという)とを分離できるように設計・施工すれば、改築することなく間仕切りや設備を自由に変更できる。このような工法によって建築された住宅を「スケルトン・インフィル住宅」という。

スケルトン・インフィル

スケルトンとは骨組ともいえる躯体や共用設備、インフィルは、住戸専有部分の内装・間仕切りや設備。これらを分離させることで、耐久性と可変性が得られる。略してSI(エス・アイ)ともいう。

また、集合住宅において、インフィル部分を入居者の要望により間取りや使用を自由に構成する方式をスケルトン方式という。

集合住宅において、入居者の要望により各住戸の間取りや仕様を構成する方式の住宅。集合住宅においても、生活様式の多様化に対応した注文住宅を実現できるように考えられた手法。スケルトン(骨組ともいえる躯体や共用設備)とインフィル(住戸専有部分の内装・間仕切りや設備)が分離することにより、耐久性と可変性が得られる。

スケール

メジャー」を参照。

筋かい

軸組の垂直面において、垂直材(柱)と水平材(胴差し・土台など)を対角線に沿って斜めにつなぐ材のこと。

筋かいを入れることによって、軸組が水平方向の力に対抗できるようになり、構造強度が増す。

建築基準法施行令第45条では、筋かいの基準を設けるとともに、筋かいと柱・土台等を「金物」で緊結することを義務付けている。

なお、2000(平成12)年6月1日に施行された建設省(現国土交通省)告示第1460号により、筋かい端部における仕口(筋かいと柱・土台等との接合部のこと)の接合方法が具体的に厳しく規定された。

この結果現在では、筋かい端部の接合部においては、事実上、Zマーク金物(またはそれと同等以上の性能を有する金物)の使用が義務付けられている。

スタイロフォーム

人工樹脂でできた断熱材のひとつ。「スタイロフォーム styrofoam」は商標名で、一般名は「押出法ポリスチレンフォーム」である。

原料はポリスチレン(polystyrene、スチレンの重合体)で、製造過程で樹脂を押し出す成型方法が用いられる。断熱性能に優れ、軽く、難燃性や耐衝撃性が高い。

なお、ポリスチレンフォームの成型方法には、押し出す方式のほか、ビーズ状にする方法がある。押出方式による代表的な素材がスタイロフォームであるが、ビーズ方式で製造される素材は「発泡スチロール」である。  

STUDIO

不動産広告の用例における「ワンルーム」のこと。ただし一般的に使われているわけではない。

なお、英語のstudioは、芸術家の仕事場、工房、練習場、撮影所、放送室などのような、技能を要する制作活動のための場所や部屋をさす言葉として使われているが、「ワンルームの間取り」という意味で使われてはいない。

スタッコ仕上げ

大理石に似た表面仕上げを得るために、セメントモルタルを5~10mm程度吹き付けたり、塗り付けた後、コテやローラーで凹凸に模様を付ける仕上げ。
本来は消石灰に大理石粉、粘土粉を混入した左官材料で仕上げるが、最近はセメントモルタルで大きな粗面とすることが多い。

スタンドライト

テーブル、机、床に置く照明器具。英語のstand light。英語ではlight standということが多い。

スタンドライトは主に補助照明として利用され、移動できる。また、装飾性のあるスタンドライトは、部屋の雰囲気などをかたちづくるために使われることもある。

スタートアップオフィス

起業のための事務所。和製英語である。

初期費用が嵩まないことや、起業のために必要なサービスを手軽に利用できることが要件となる。設備機器などを備えたレンタルオフィス(rental office)である場合が多い。

また、資金援助、経営コンサルテーションなど新規事業の立ち上げを支援する機能を備えた施設を「インキュベーションオフィス」(インキュベーション(incubation)は「孵化」を意味する英語)をいうが、これもスタートアップオフィスである。

スチレン

合成樹脂の原料となる化学物質のひとつで、ベンゼンの水素原子の一つがビニル基に置換した構造のものをいう。英語のstyrene。

スチレンを重合した物質がポリスチレン(スチロール)で、硬質プラスチック材、断熱材(発泡スチロール)などとして幅広く使われている。その略号はPS、樹脂識別コード(SPIコード)は6である。

スツール

背もたれがない椅子。英語のstool。補助的な椅子や足乗せ台として使われることが多い。

ステンドグラス

絵具を焼付けた色ガラス。英語のstained glass。

一般に、小片を接合して模様や図柄を表す場合に用いられる。特に、ゴシック教会の窓に用いられたステンドグラスは、小片が鉛のリボンで複雑に接合され、図案の内容、表現方法、美しさなどで美術的に高い評価を得ている。

また、窓や家具にはめ込んで、色彩に富んだ装飾として用いられることもある。

ステンレスシート防水

ステンレス製のシートを連続的に溶接して防水層をつくる工法。

素材が錆びにくく、耐久性があり凍結に耐えるとされている一方、複雑な形をした表面に対して施工するのは難しい。また、ステンレスシートの材質、表面仕上げの方法、成型材の幅に応じていくつかの種類がある。

ステンレスシート防水の防水層は、被防水面に密着していないので、コンクリートや砂利などで覆う、接着剤で貼る、器具で接合するなどの方法で密着させる必要がある。

ステータス管理

取引などの進行状態を記録し、必要に応じて共有すること。一般的な用語であるが、不動産取引においては、レインズに登録された物件の状態を公開することをいう。

レインズのステータス管理は、物件の囲い込みを防止するなどのため、2017年1月に開始された。そこでは、専属専任媒介契約または専任媒介契約によって登録された売り物件について、その状態を、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」に分けて表示することとされている。

「公開中」は原則として買い主の紹介を拒否しない、「書面による購入申込みあり」は文書(電子メール等も可)による買い受けの申込みが必要、「売り主都合で一時紹介停止中」は売り主の意向によって紹介を受け付けない、という状態を示している。

なお、ステータスの変遷(ステータス履歴)を公開するかどうかは、各不動産流通機構の判断に委ねることとなっている。

ストックビジネス

継続的に収入を得ることのできる事業手法。和製英語である。資産(ストック)が生む価値を源泉とする事業である。

ストックビジネスの典型は、不動産賃貸で、空室が生じない限り継続的に賃料収入を得ることができる。あるいは、装置型サービスの供給(電力業、通信業など)、長期融資、機器の保守、資格・基準の認証などは、料金や利子を継続的に得ることができ、ストックビジネスとして展開できる。

一般に安定的に営むことができるとされる一方、提供する価値に対する需要が持続する必要がある。また、サービスなどを提供し続ける責任を負わなければならない。

なお、ストックビジネスに対して、時々の取引に依存する事業手法を「フロービジネス」という。

ストラクチャードファイナンス

企業活動の特定部分に着目し、仕組みを構築して行なう資金調達の方法。ストラクチャー(structure)は英語の「仕組み」を意味し、ストラクチャードファイナンスを「仕組み金融」ということもある。

明確な定義はないが、その特徴は、一般の借入れや増資によるファイナンスと違い、企業本体の信用力から保有資産や事業の価値を切り離して、それに基づいて資金を調達することである。従って、原則として個々の案件ごとに仕組みを構築するため、その手法は多様である。

主な手法としては、企業が保有する資産に着目した不動産の流動化証券化、保有する債権に着目した債権流動化、特定の事業に着目したプロジェクトファイナンス、設備利用の形態に着目したリースファイナンスなどがある。

ストーブ

小型の暖房器具。英語のstove。

ストーブは燃料の種類に応じて分類される。燃料としては、石油(灯油)、ガス(都市ガス・LNG)、電力、薪、石炭、コークスなどが利用され、石油ストーブ、ガスストーブ、電気ストーブなどに分かれる。

ストーブの選択に当たっては、燃料の種類に応じて、火力の強さや調節方法、燃料補給の方法、費用(設備費・燃料費)などが異なることのほか、排煙、換気、器具の手入れ、燃えカスの処理などにも留意する必要がある。また、移動の可否や容易さ、配管の要否などにも注意しなければならない。

なお、英語のstoveには、料理用のコンロという意味もある。

すのこ

竹や板などを少し間隔を 開けて並べ、固定した設備。通気性や吸湿性を確保するために利用される。収納スペースの床に敷く、寝具の下に置く、浴室の床とするなどのように用いられている。また、縁台やベンチの上面に使われることも多い。

スパイスラック

香辛料や調味料を収納する小さな棚。英語の「spice rack(スパイスラック)」。台所用品のひとつ。

スパン

柱の間隔をいうが、住宅の広告で使われるときには、南向きの窓がある一辺の間取りをいうことが多い。

広いスパンの間取りを「ワイドスパン」といい、日当たりや通風の良さをアピールする言葉として使われる。その基準は決まっていないが、4間(約7m)を超えたスパンであれば、通常より広いスパンであると考えて差し支えない。

スプリンクラー

「自動散水消火器」ともいわれる消火設備の一つ。

天井面に配置された散水口(スプリンクラーヘッド)と送水管より成り、火災時の熱によって散水口の可溶片が溶け、水が自動的に散水される。感知する温度を設定することができるので、厨房等でも設置することが可能である。

連結される送水管は、常時水を満たしている湿式と圧縮空気による乾式とがあり、湿式の方が一般的である。

スポットライト

特定の場所を集中的に照らす照明器具。英語のspotlight。

レンズで集光し、光をビーム状に投光する仕組みによって作動する。

スポットライトを用いるのは、主に舞台照明やスタジオ照明などにおいてであるが、展示場や部屋の照明として使われる場合もある。

すまい給付金

一定の住宅を取得する者に対して政府が給付する金銭をいう。2014(平成26)年4月の消費税率の引き上げに際して、消費税率引上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設された。

住宅取得の際に消費税が課税される場合であって、一定の要件を満たすときに支給される。

満たさなければならない要件は、取得する住宅が新築住宅か既存住宅か、資金が住宅ローン利用か現金による取得かによって異なる。共通する要件として、自ら居住すること、床面積が50平方メートル以上であること、一定の品質が確認されていることとされている。さらに、既存住宅の取得については、売り主が宅地建物取引業者であることなどの、現金取得については、年齢が50歳以上であること、収入の目安が一定額以下であることなどの要件が加わる。

給付額は、消費税率および都道府県民税の所得割額に応じて段階的に定められた給付基礎額に、取得した住宅の持ち分割合を乗じて決定される。この場合、収入が一定額を超えるときには給付額はゼロとなる。

すまい給付金制度が適用されるのは、2014(平成26)年4月から2021(令和3)年12月までに引き渡され入居が完了した住宅であるが、一定の期間内に契約した場合には引渡し期限及び床面積要件について延長・緩和する特例がある。

スマートウェルネス住宅

高齢者、障害者、子育て世帯等の多様な世帯が安心・健康に暮らすことができる住環境をいう。建物性能だけでなく、生活支援サービスの提供が必要となる。

スマートウェルネス住宅を実現するために、サービス付き高齢者向け住宅の整備、高齢者生活支援施設や子育て支援施設等の福祉施設の整備、高齢者等の居住の安定確保や健康の維持・増進に資する先導的な取り組みの推進などが進められている。

なお、スマートウェルネスは、英語でsmart wellnessと表記できるが、和製英語である。

スマートキー

自動車の施錠・解錠、エンジン始動などの操作を機械式の鍵に代わって行なう機器。英語のsmart key。車両とスマートキーとが無線で通信することによって作動する。

スマートキーによる自動車の操作は、鍵を用いた機械的な操作に代わる方法として、広く普及している。

なお、スマートキーが担う機能やその名称は、自動車メーカーによって異なる。

スマートグリッド

電力需給を最適化する機能を備えた電力網をいう。

供給される電力の質や量は、水力、風力、太陽光、火力、燃料電池など発電形態によって異なり、電力の需要も、動力、照明、熱源など電気機器の性質によってさまざまに異なる。電力網は両者を結合し包含するが、情報通信技術を活用してこの電力網を制御することによって、ロスが少なく、安定した電力需給関係を形成・維持できるとされる。

スマートグリッドの構築は、グリーン・ニューディール政策の一つとされる。住宅やビルの電力もスマートグリッドに組み込まれ、その一端を担うこととなる。

スマートグリッドに対しては、エネルギーシステムの革新であるとして期待する意見がある一方、それが消費者の利益に資するかどうか疑問視する見方もある。

スマートシティ

高度なICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)や環境技術などを使って、環境負荷、エネルギー、交通などを最適に制御するシステムを備えた都市をいう。あるいは、小さな環境負荷の下で都市機能・都市生活を展開することができる都市をいうこともある。

スマートシティの具体的な姿はまだ明確ではなく、その概念についても十分に合意されているわけではないが、スマートグリッド等によるエネルギーの供給・消費の統合的な制御、交通流の高度な制御などによる都市交通の最適化、電気自動車などの環境負荷が小さい設備・装置の導入、環境負荷の小さな住宅の建設などの手法を組み合わせて、低環境負荷のもとで都市基盤や都市サービスを総合的、効率的に運営することを目標とする都市づくりであると考えられている。現在は、その実現のための技術開発や実証実験の段階にある。

スマートシティ・スマートコミュニティ

エネルギー効率が高く、地球環境への負荷が小さい都市(スマートシティ)または地域社会(スマートコミュニティ)のことで、IT技術、再生エネルギー技術などを開発し、それらを都市または地域社会を単位にして高度に連携・統合して活用することに特徴がある。

例えば、住宅やビルのエネルギー利活用を最適に制御するシステムや再生可能エネルギーの供給システムなどをネットワーク化すること、公共交通機関の統合的な運行や信号制御の最適化などによって交通による環境負荷を最小化することなどが考えられている。
このときに中心となる技術は、分散した端末をネットワークによって結合し、双方向通信で制御することによってシステム全体の最適化を図る技術であり、例えばエネルギーの利活用についてはスマートグリッドがそれに当たる。
スマートシティやスマートコミュニティは社会的な制御を伴うことから、その実現のためには技術開発だけでなく社会的な合意が必要である。

スマートハウス

家庭でのエネルギー消費を最適に制御するシステムを備えた住宅をいう。ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)によって家電、空調給湯設備、太陽光発電蓄電池電気自動車などを一元的に管理・制御し、エネルギー消費を最適化することができるとされる。

スマートハウスを担うための重要な技術は、住宅内のエネルギー設備や家電等をネットワーク化してエネルギーの使用を管理・最適化するシステム(HEMS home energy management system)や、住宅用蓄電池であるとされている。

環境負荷を抑制する住宅としては、エコハウス(省エネルギー、再生可能エネルギーの使用、資源の再利用、廃棄物の削減等を目指した住宅)やLCCM住宅(住宅のライフサイクルにおける二酸化炭素排出量がマイナスとなる住宅)があるが、スマートハウスは家庭生活におけるエネルギー制御に重点を置いた住宅と言える。

スマートビル

照明、空調設備などを自動的に制御・管理するシステムを備えた建物。英語のsmart building(スマート ビルディング)。設置したセンサーで得た情報に基づいて、設備・器具を統合的に制御することによって、エネルギー消費などを最適化できる。また、ビルの利用状況などを詳細に把握し、業務の管理に活用することもできるとされている。

例えば、「ビルエネルギー管理システム(Building Energy Management System、BEMS)」は、スマートビルで利用されているシステムである。

スマートロック

通信で建物や部屋の鍵機能を制御する装置。英語のsmart lock。情報端末などから操作を指示する信号を受信し、その信号が本物であるかどうかを認証し、指示に従って錠前を操作するシステムである。

スマートロックの仕組みは、認証の手法、通信の方法、錠前の構造によって異なる。例えば、認証には、スマートフォンに内蔵したデータ、指紋や顔、パスワード、ICカードなどが用いられている。また、操作の日時、操作者名などの履歴を記録する機能を備えたものもある。

住み替え

住居を変えること。通常、不動産取引を伴う。

住み替えの理由は、就職、転職、結婚、出産、退職などのライフステージの変貌のほか、生活パターン、価値観などを含むライフスタイルのチェンジ、住み心地の向上等々、多様である。
 

隅切り(すみ切り・角切り)

二辺が道路に接する角地敷地として利用する場合に、その接する角の一部分を空地にすること。市町村の条例または指導によって実施され、そのような制限を「角敷地の建築制限」という。

隅切りが必要な場合およびその形状は、市町村の条例または指導によって定められている。従って、隅切りの方法などは市町村によって違うが、一般に、隅切りが必要とされるのは、敷地に接する道路幅員が一定値以下のときで、隅切りの形状は、二本の道路に接する敷地の角を頂点とし、そこからそれぞれの道路沿いに2m離れた地点を結んだ直線を底辺とする二等辺三角形とされていることが多い。

隅切りされた土地には建物工作物を設置することができず、空間的に道路と一体化するが、それを道路敷地とするかどうかなどの取り扱いは、市町村によってまちまちである。また、道路敷地にならない場合には、隅切りの土地面積は、建築確認において建物敷地面積に算入される。

スムストック

既存住宅のうち、良質なストックとして評価できるものをいう。日本語の「住む」と英語の「ストック(Stock)」を重ねた造語。「(一社)優良ストック住宅推進協議会」(住宅メーカーが参加している団体)が住宅の長寿命化を目指して名付け、その評価・流通を推進している。

スムストックは、次の3つの条件を満たさなければならないとされている。
1. 住宅履歴情報(新築時の図面やリフォーム、メンテナンス情報等)が管理・蓄積されていること
2. 長期点検計画やメンテナンスプログラムが整っていること
3. 「新耐震基準」をクリアする耐震性能があること

スラブ

本来は英語で「石板」のこと。
建築用語では、鉄筋コンクリート構造における床板のことを「スラブ」という。

鉄筋コンクリート構造では、スラブは大梁や小梁と一体化して成型される。

3PL

物流業務を他の企業に包括的に委託すること。英語のthird party logistics(サード パーティー ロジスティクス)の略語。

3PLは、物流業務を包括的に委託することで、業務を適切に管理し、その効率化や合理化を図ることができるとされている。

なお、ロジスティクスとは、もともとは、戦時作戦における軍需品の確保・保管・補給、兵員の輸送・衛生・糧食、連絡の確保などに関する計画・実施業務またはそれを担う組織(兵たん)のことである。その意味が拡張され、現在では物流業務のような後方支援活動を指す言葉として使われている。

スリーブ

設備工事で配管の継手に用いられる筒型の部品。また、コンクリートの壁、床、などを貫通する設備の配管類のためにあらかじめ埋め込んでおく筒状の金属管のことをいう。

スレート葺き

屋根の仕上げ方法の一つで、粘板岩(slate、スレート)を板状に加工したもの、または、それに類似する板状の素材で屋根を覆うことをいう。

材料としては、天然の粘板岩のほか、石綿スレート(セメントを主体に石綿を混ぜたもの)等が使われている。

スレート屋根

石板で葺いた屋根。比較的軽量で、デザイン性に富む。一方で、防水性に難があるほか、スレートの材質によっては耐久性に劣るとされる。「スレート」は英語のslate。

スレート屋根に用いられる石板には、粘板岩を薄い板状に加工したもの(天然スレート)のほか、セメントに繊維等を混ぜて板状にしたもの(化粧スレート)がある。普及しているのは化粧スレートで、一般に表面が塗装されている。

なお、2004年以前の化粧スレートはアスベスト(石綿)を含むことがあるので、撤去などに際して注意が必要である。

スロップシンク

床掃除のモップ・雑巾などを洗うため、また掃除で使った汚水を流すための深型の流し。

主にバルコニーや便所、湯沸し室に設置される。「掃除用流し」ともいう。

スロープ

一般には傾斜を表し、建築学上では「斜路」をいう。

廊下や通路の高低差は普通階段で処理するが、身体障害者が車椅子等で通行できるよう傾斜で処理する。不特定多数が利用する公共施設やホテル、ビルなどにはハートビル法等でスロープの設置が義務付けられている。

随意契約

工事などの発注や物品の調達に際して、競争入札の方法ではなく、それ以外の方法で選定した者と契約を締結すること。公共契約において用いられる用語である。

国や地方公共団体の契約相手は、会計法・地方自治法に基づき、原則として競争入札の方法で選定しなければならないとされているが、一定の場合には、それ以外の方法による契約(随意契約)が認められている。随意契約が認められるのは、契約の性質または目的が競争になじまないとき、緊急時で競争入札に付することができないとき、競争が成立しないときなどである。

随意契約の方法には、特定の事業者を指定して契約を締結する方式、複数の者から見積りをとって比較し契約相手を決定する方式(相見積り方式)、企画提案や技術提案を募り提案を審査して契約相手を決定する方式(プロポーザル方式)などがある。

生活支援ハウス

主に自治体が運営する、健康自立型の高齢者向け福祉施設。

独立して生活することに不安のある高齢者に対して、住まい、生活相談や緊急時の対応、娯楽や地域住民との交流などのサービスを提供する。
老人福祉法では、在宅福祉施設の位置付け。もともとは、過疎対策の一環で離島や山間部などに整備されていたが、1998年に立地制限が撤廃され、全国で供給されるようになった。

利用料は所得に応じて決められる。原則個室で、居室の広さは18平方メートル以上。夫婦入居の場合は2人部屋。個室が24平方メートル、夫婦室が36平方メートルというケースもある。
共用スペースとして、食堂、共同浴室、洗濯室などが用意されている。

おおむね3ヵ月以内など、入所できる期間を限定しているケースが多く、一時的な仮住まいとしての要素が強い。
入所の判断を市町村長が行なう「措置施設」であり、入所に当たっては各自治体の福祉課などへ申し込みが必要。

制限能力者

行為能力を欠くために、単独で行なった法律行為を事後的に取り消すことが可能とされている者のこと。
具体的には、未成年者成年被後見人被保佐人被補助人が制限能力者である。

制限能力者は、その保護者(法定代理人成年後見人保佐人補助人)の同意がない場合には、有効に法律行為を行なうことができないとされている(同意を得ない法律行為は事後的に取り消すことが可能である)。

制限能力者の相手方の催告権

制限能力者と契約等をした相手方は、制限能力者またはその法定代理人保佐人補助人が、その契約等を取り消すかもしれないという不安定な立場に置かれる。
そこで民法第19条では、制限能力者と契約等をした相手方から、その法定代理人・保佐人・補助人等に対して、1ヵ月以上の期間内に、その契約等を追認するか否かを返答するように催告することができると定めた。

催告をする対象が、法定代理人・保佐人・補助人であるときは、期間内に返答がない場合には、その契約等を追認したものとみなされる(すなわち契約等の取消しができなくなる)。
また、制限能力者である被保佐人被補助人に対して「保佐人・補助人の追認を得る」ように催告することもできるが、この場合には、期間内に返答がないならば、その契約等は取り消しされたものとみなされる。
なお、制限能力者である未成年者成年被後見人に対して催告をすることはできない。

制限能力者の詐術

制限能力者が詐術(さじゅつ)を用いて、契約等の相手方に対して、自分が制限能力者ではないと誤信させたような場合には、制限能力者(およびその法定代理人保佐人補助人)は、その契約等を取り消すことができなくなる(民法第20条)。
これはそのような悪意のある制限能力者はもはや保護に値せず、誤信した相手方の取引の安全を保護すべきであるという趣旨である。

例えば、自分が制限能力者ではないことを証明する書類を偽造して契約の相手方に交付するというような積極的な手段を用いる場合はもちろん「詐術」に該当し、制限能力者側の取消権は消滅する。
また、自分には相当の資産があるから信用せよと語る場合のように、他の言動と相まって相手方の誤信を強めた場合も「詐術」に該当する。

これに対して、単に制限能力者であることを黙秘していたというだけでは「詐術」に該当しないので、制限能力者側の取消権は存続すると解されている。

なお、民法20条により制限能力者側の取消権が消滅するには、契約等の相手方が、制限能力者であるという事実に気付いていなかったことが必要である。

清算金

土地区画整理事業において、換地計画によって金銭により清算すると定められた場合のその金銭をいう。

清算金が定められるのは、同意による換地の不交付や技術的な事情によって換地等に不均衡が生ずると認められる場合で、その金額は、従前の宅地等および換地等の、位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等を総合的に考慮して決定される。

生産緑地

市街化区域内にある農地や山林で、都市計画によって指定された生産緑地地区内のものをいう。

生産緑地地区として指定できるのは、市街化区域内にある一団の農地等で、
1.公害または災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、公共施設等の敷地の用に供する土地として適している
2.500平方メートル以上の規模の区域である(条例で規模の引き下げが可能)
3.用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められる
という3つの条件を備えた区域である。

生産緑地は農地等として管理されなければならず(営農の継続義務)、生産緑地地区内では、建築物等の新改築、宅地造成などについて市町村長の許可を受けなければならない。そして原則として、農林漁業を営むために必要な建築や造成等でなければ許可されない(直売所、農家レストラン等の設置は可能)。

一方で、生産緑地は、税制上の優遇措置(市街化区域内の土地であっても一定の条件を満たせば農地とみなして課税されるなど)が適用される。

また、生産緑地における農林漁業の主たる従事者が死亡等の理由で従事することができなくなった場合、または、生産緑地として定められてから30年が経過した場合には(30年経過後は10年ごとに延長可能)、市町村長に買い取りを申し出ることができる。そして、申し出てから3ヵ月以内に所有権の移転がない場合には、行為制限が解除される(実質的に生産緑地としての役割を失う)。

なお、多くの生産緑地は、2022年から買い取りの申し出が可能となる。

制震構造

地震による建物被害を防止・軽減するための方法の一つで、地震によって生じる振動を吸収する建物構造をいう。

例えば、振り子などの慣性力で地震動を吸収する、地震動に応じて外部から力を加えて振動を押さえる、緩衝装置によって建物部材の変型を軽減するなどの方法を取り入れた建物構造はこれに該当する。主として、超高層の建物において採用されている。

一方、地盤と建物基礎などの間にローラーや積層ゴムを設置して、建物に伝わる地震の揺れを絶縁または長周期化することにより外力を制御する方法を採用した建物構造を免震構造という。

耐震設計は、これらの方法を含めて、地震に対して建物構造の安全を保つための設計をいうが、どのような建物構造を選択するかは建築設計に当たっての重要なポイントの一つである。

制震(振)システム

地震の揺れをおもりや水槽などの装置で制御すること。

制震システムにはパッシブとアクティブがある。まずパッシブタイプの制振システムは、タワーや超高層ビル、マンションの最上階に水槽やおもりを載せて、地震や強風により発生する振動エネルギーを水槽やおもりで共振させることによって揺れを止めるもの。
これに対してアクティブタイプの共振システムは、タワーや超高層ビル、マンションの最上階に設置されたおもりをコンピュータ制御で移動させ、揺れを吸収する。

生石灰

石灰石を高温で焼いて作られる白色の物質。
主成分は酸化カルシウム(CaO)である。
なお石灰は英語で「lime」(ライム)という。

生前贈与

存命中に自分の財産を他人に与えることであるが、通常は、相続の前倒しとして行なう贈与をいう。

贈与を行なったときには、贈与を受けた者に対して贈与税が課せられる(毎年110万円までは非課税)。一方、相続した場合に課せられる相続税は、贈与税よりも税率が低い。そこで、存命中に被相続予定者等に対して財産を分与する必要に応えるために、一定の要件を満たす贈与財産について、相続時にその贈与財産も相続財産と同様に取り扱う制度(相続時精算課税制度)が創設された(2003(平成15)年)。この制度に従ってなされる贈与が、生前贈与である。

また、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与等については一定額まで贈与税が非課税となるが、この制度による贈与も生前贈与である。

なお、贈与税の課税においてどのような贈与が特別扱いの対象となるかなどについては、具体的な事例に則して十分に確認する必要がある。

正当事由

土地・建物賃貸借契約において、賃貸人が契約の更新を拒絶したり、解約の申し入れをする際に必要とされる「事由」をいう。

一般的に、賃貸借契約は、期間の満了や解約の申し入れによって特段の理由を必要とせずに終了するが、土地・建物の賃貸借については、賃借人保護のために、更新拒絶等に当たって「正当事由」を要するとされているのである(強行規定であり、これに反する契約条項は無効となる。1941(昭和16)年施行)。

何が正当事由となるかは、裁判での判断に委ねられていて、多数の判例があるが、規定の趣旨に照らせば、借地・借家人に有利になる傾向があるのは当然である。判例を受けて、現在の借地借家法では、正当事由は、貸主・借主が土地・建物の使用を必要とする事情、賃貸借に関する従前の経緯、土地・建物の利用状況、立退料の提供などを考慮して判断するとしている。

このように、正当事由がないと土地・建物の賃貸借を終了することができないという規定は、借地や貸家の供給を妨げかねないという意見も強く、最近、一定の要件に該当する場合には、契約の更新を認めないという特約を結ぶことも可能とするよう法律が改正された(土地については1992(平成4)年8月、建物については2000(平成12)年3月から施行)。そのような特約付きの賃借権が、定期借地・借家権等である。

成年

民法上、満20歳に達したことをいう。ただし、2022年4月1日からは「満18歳」に達したときに改正される。成年に達していないものを「未成年者」という。

成年に達するのは、20回目の誕生日の前日が終了した時点である(年齢計算に関する法律)。

成年に達すると、一人で有効な契約を締結することができ、親権に服することもなくなる。一方、成年年齢が満18歳に改正されたのちも、喫煙年齢、飲酒年齢などは満20歳のままである。

なお、2022年3月31日までは、満20歳に満たない者であっても、結婚をすることにより成年に達したものとみなされる(成年擬制)。

成年擬制

満20歳に満たない者が、結婚をすることにより、成年に達したものとみなすこと。民法上の制度であるが、2022年4月1日からは、民法改正によって成年年齢が18歳に引き下げられ、また、女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられるため(男性は18歳のまま)、成年擬制の規定が削除され、この制度は消滅する。

成年後見制度

精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)によって判断能力が不十分な成年について、その行為を支援するための制度。

成年後見制度には、(1)家庭裁判所が選任する成年後見人・成年保佐人・成年補助人が、本人を法律的に支援する「法定後見制度」と、(2)あらかじめ後見人となる者や将来委任する事務の内容を定める契約(任意後見契約)を締結し、本人の判断能力が不十分になった後にその後見人が定められた事務を本人に代わって行なう「任意後見制度」がある。

法定後見制度による支援は、障害の程度に応じて次の3種類がある。

(1)後見:判断能力が欠けているのが通常の状態の者を対象に、成年後見人が財産管理に関するすべての法律行為を代理し、成年被後見人の法律行為は日常生活に関する行為を除き取り消すことのできる制度

(2)保佐:判断能力が著しく不十分な者を対象に、一定の行為(借財、不動産等の権利の得喪、新築改築など)について成年保佐人の同意を必要とし、同意のない成年被保佐人の行為を取り消すことのできる制度

(3)補助:判断能力が不十分な者を対象に、家庭裁判所が定める特定の法律行為について成年補助人の同意を必要とし、同意のない成年被補助人の行為を取り消すことのできる制度

不動産の取引は、成年後見人が代理し、または成年保佐人の同意が必要な行為とされている。成年補助人の同意が必要な行為に定められる場合も多い。また、成年後見人が代理して、成年被後見人が居住の用に供する建物敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除等の処分をするときには、家庭裁判所の許可が必要である。

なお、法定後見制度による後見、保佐、補助や、任意後見契約については、その内容を登記することができる。

成年後見人

成年被後見人を保護・支援するために、家庭裁判所が職権で選任する後見人のこと(民法843条)。成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、法律行為について成年被後見人を代理する権限を持つ(民法859条)。

成年後見人は、成年後見制度によって成年被後見人に付される法的な機関で、成年被後見人を代理して行う行為は広範である。ただし、成年被後見人が居住の用に供する建物敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除等の処分を代理するときには、家庭裁判所の許可が必要である(民法859条の3)。

 

成年年齢

民法上、成年とされる年齢。従来「満20歳」とされていたが、2022年4月1日から年齢が引き下げられ、「満18歳」とされる。

なお、成年年齢が満18歳に引き下げられたのちも、喫煙年齢、飲酒年齢、勝馬投票券の購入年齢、国民年金の被保険者資格年齢、少年法の適用年齢などは、満20歳のままである。

成年被後見人

精神上の障害があるために、後見人を付けられた者のこと。

精神上の障害により物事を判断する能力が欠如した状態にある者について、家庭裁判所は、本人・配偶者・親族などの請求にもとづいて審判を行ない、「後見開始」の決定をし、「後見人」を職権で選任する(民法第7条、第843条)。

こうした手続きにより後見人を付けられた者のことを「成年被後見人」と呼ぶ。

また、成年被後見人に付けられる後見人は「成年後見人」と呼ばれる。この「成年被後見人」の制度は、2000(平成12)年の民法改正によって創設されたもので、それ以前は「禁治産者」という名称であった。

成年被後見人は法律行為を有効に行なうことができないものとされているので、どんな法律行為でも原則的に後で取り消すことが可能である(ただし日用品の購入などは有効に自分で行なうことができる)(民法第9条)。

従って、成年被後見人との契約を行なうには、その成年後見人を代理人として契約を行なうべきである(民法第859条)。

政府系ファンド

政府が資金を出資して投資活動を行なうための組織をいう。

ソブリン・ウエルス・ファンド(Sovereign Wealth Fund、SWF)ともいわれる。

投資に当てられる政府資金としては、天然資源収入、外貨準備金、社会保障積立金などがある。従来、産油国のオイルマネーを運用する投資ファンドが有名であったが、運用母体として新たな国が参入するとともに、投資対象も優良企業の株式などに拡大していて、他国の政府系ファンドが企業経営等に関与する恐れもあると警戒する見方もある。

政府系ファンドの実際の運用は、国際的に活躍するファンドマネジャー等が担うことが多く、その実態は明確ではない。しかし、政府系ファンドは、運用規模が大きく、また、投資に当たって国家的な戦略が反映されやすいことから、金融市場に与える影響は少なくないと考えられている。

日本においても、外貨準備金や社会保障積立金を投資的に運用して資金量の拡大を図るべきとの意見がある一方、これらの資金をリスクに曝すことには慎重であるべきとする考えも根強い。

生物多様性

生物が固有性を保持しつつ相互に関係し合っている状態の特性・機能をいう。その特性・機能は、生態系の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性の3つのレベルで構成されている。

生態系の多様性は水循環、炭素貯蔵などの環境機能等を、種の多様性は食糧や燃料の供給、文化的機能などを、遺伝子の多様性は医薬品の開発、生物の適応能力などを支えている。

生物多様性の保全等のため「生物多様性基本法」が制定されている(2008年)。そこでは、生物多様性の構成要素を利用する場合には、「現在及び将来の世代の人間が生物の多様性の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である生物の多様性が将来にわたって維持されるよう、生物その他の生物の多様性の構成要素及び生物の多様性の恵沢の長期的な減少をもたらさない方法(持続可能な方法)」によらなければならないとするなど、保全等のための基本原則が定められている。

また、地域における生物の多様性を保全するため、地域の自然的社会的条件に応じて地域における多様な主体が有機的に連携して行なう活動を促進するべく、市町村による地域連携保全活動計画の作成、同計画による活動に対する規制の緩和、生物の多様性の保全上重要な土地の取得を促進するための情報の提供、助言その他の必要な援助などを内容とする「地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律」が制定されている(2010年)。

なお、生物多様性を保全するための国際取り決めとして、生物多様性条約、カルタヘナ議定書(遺伝子組換え生物等の管理に関するもの)、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関するもの)、ラムサール条約(水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関するもの)、世界遺産条約(自然遺産の保護等に関するもの)などがある。

整理回収機構

金融機関等の不良債権の回収を主な業務とする株式会社。預金保険機構が全額出資している。

1999年(平成11)に、経営破綻した住宅金融専門会社(住専)の債権処理を担う(株)住宅金融債権管理機構(96年に設立)と、経営破綻した金融機関の債権回収に当たる(株)整理回収銀行(96年に設立、母体は95年設立の(株)東京共同銀行)が合併して発足した。

整理回収機構の業務は、破綻した金融機関等から買い取った債権を回収・処分すること、金融機関の保有する回収困難債権を買い取り・回収・処分すること、金融機関等の資本増強等に当たることなどである。そのほか、事業再生支援、金融機関等の破綻に関与した者の責任追及等も行なっている。

政令指定都市

都道府県の事務のうち一定のものを処理する権限が与えられた人口50万人以上の政令で指定された市をいう。単に「指定都市」ともいい、地方自治法に基づく制度である。

政令指定都市が処理する都道府県の事務としては、福祉、衛生に関する一定の事務、都市計画、土地区画整理事業に関する一定の事務などが定められている。

政令指定都市は、条例で市の区域を分けて「区」を設置し、事務を分掌させることとなっている。ただし、この「区」は、東京都が設置する「特別区」とは違って、地方公共団体ではない。

政令指定都市として指定されているのは、大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市、北九州市、札幌市、川崎市、福岡市、広島市、仙台市、千葉市、さいたま市、静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市、相模原市、熊本市である(指定順)。

セカンドハウス

本来の居住地から離れて設ける別の住宅。和製英語である。避暑地や避寒地に立地し保養などのために利用されることが多い。「別荘」と同義。

セカンドパーティー(物流の〜)

物流において製品等の荷受人となる問屋、卸売事業者、小売事業者などをいう。英語のsecond partyは取引等の相手方という意味であるが、物流用語では、物流効率化のための仕組みである3PL(third party logistics)において荷受人の意味で使われる。

積算

工事に要する経費を見積もること。設計図書等に基づいて、施工に要する材料費、労務費、機械経費、工事管理費などを推計し、総額を算出する業務である。工事の請負価額は、通常、積算を基に、入札、相見積もり、協議などによって決定される。

積算のための費目や算定方法については、工事の種類に応じて標準化されている。しかしながら、積算価額は予測値であって、工事に要する実際の価額は、建築物等の品質、施工技術、工事条件などによって異なる。

石綿

蛇紋石・角閃石など繊維状ケイ酸塩鉱物の総称。英名アスベスト(Asbestos)。

繊維質であるため紡績することができる。また、耐久力があり、溶融点が1,300度程度と高く、熱絶縁性が大きく、耐薬品性も大きいなど、安価で優れた性質を持つため、さまざまな用途に使用されてきた。建築素材としても、断熱材、保温材、耐火材として大量に利用された。

しかし、石綿の繊維を肺に吸入すると、肺がんや中皮腫の原因となることがわかり、1975年には吹き付け使用が禁止され、以後、段階的に使用の規制が強化されて2006年には全面的に輸入・製造・使用等が禁止された(代替品が確立していない特定の部材については例外的に確立までの間は禁止が猶予されている)。

建物の解体などの際には、使用されていた石綿が飛散するなどの恐れがあり、それに伴う健康被害を予防するため、作業方法などについて一定の基準が定められている。

セキュリティ

安全を確保するための手段。英語のsecurity。たとえば、建物の防犯・防火装置はセキュリティである。

住宅の防犯のためのセキュリティとして、強固な鍵、防犯サッシ、面格子防犯カメラ、侵入監視システム等がある。また、防火のためのセキュリティとしては、火災警報器、消火器、ガス警報器などが利用されている。

石油給湯器

湯を沸かして供給する器具(給湯器、ボイラー)のうち石油(灯油)を燃料とするものをいう。

給湯器の熱源には、石油のほか、ガス、電力、太陽光などがある。このなかで石油給湯器は、大容量の供給に適するとされる一方、燃料タンクが必要なほか、燃焼制御の方法が複雑とされている。また、給湯コストが石油価格に大きく左右される。

給湯器は、調理、浴槽、暖房など湯の用途によって必要とする湯温や湯量が異なるから、熱源はそれに適したものを選択しなければならない。また、機種の選択に当たっては、用途やコストのほか、メンテナンスの容易さ、設置スペースなども勘案する必要がある。

施工

工事を行なうこと。建築物の施工は、設計に基づいて、地盤の整備、材料の加工、構造材の組立、コンクリートの打設、設備の設置、内装などの作業を関連させながら系統的に実施される。

施工は通常、建築主が施工会社に発注するが、各種作業の実施は、施工会社がそれぞれの作業を専門とする建設会社(専門工事業者)にさらに発注するのが一般的である。

施工会社

建築工事を実施し完成する会社。「施工」とは工事を行なうことである。

建築工事に当たっては、建築主は、通常、業務を設計と施工に分けて、別々の会社に依頼する。この場合、設計会社は、建物をデザインし、設計図を作成し、工事を監理するのに対して、施工会社は、設計図に示された建物の建築工事を実施し、完成する。

建築主が施工会社に工事を依頼することを「工事発注」、施工会社が工事を完成し、建築主が工事の結果に対して報酬を支払う契約を「工事請負契約」という。

また、施工会社は、一般に、施工のために必要な各種の建築作業(整地、組立、コンクリート打設、内装など)については、その実施を専門の工事業者に依頼し、自らはそれらの作業を統括・管理する方法で工事を進める。

施主

建築の施工を依頼する人。「建築主」「発注者」も同じ意味である。一般に、建設工事請負契約においては、施主が「甲」、受注者が「乙」の立場に立つ。


施主は、完成した建築物を自ら使用・賃貸する場合のほか、そのまま販売する場合がある。完成した建物を施主がそのまま販売する場合には、建物表題登記(建物表示登記)や所有権保存登記を行なうのは、一般に、施主ではなく買い主である。ただし、区分所有建物表題登記は、施主が行なうのが原則である。

施主支給

戸建住宅の建築工事等において、工事の発注者が建材や設備を自ら調達し、工事受注者に支給する方法。

工事に必要な建材や設備は、一般に、受注者が設計に適合するものを調達して用いるが、受注者の了解を得て、発注者が調達・支給することがある。施主支給はそのような施工方法である。

施主支給に当たっては、円滑な施工を妨げないこと、工事責任が不明確にならないことなどに留意しなければならず、支給する場合の対象は、比較的容易に交換できる設備、器具等が望ましいとされている。

石灰石

炭酸カルシウム(CaCO3 )を主成分とする天然鉱石のこと。
石灰は英語で「lime」(ライム)という。

設計事務所

建築の設計や工事監理を業として営むために設置する事務所。業務には建築士が従事する。法律上は「建築士事務所」とされ、その設置に当たっては都道府県知事の登録を受けなければならない。「建築事務所」も同義。

「設計事務所」「建築士事務所」「建築事務所」のような名称で設置される事務所は、一般に、設計・工事監理業務を専業で営んでいて、建築工事の施工は請け負わない。

なお、住宅の施工を主としつつ住宅の設計を兼業するハウスメーカーなども、法律上の建築士事務所を設置し登録しなければならないが、通常は、その事務所を設計事務所、建築事務所などと称することはない。     

設計住宅性能評価書

登録住宅性能評価機関が設計図等にもとづいて作成した住宅性能評価書を「設計住宅性能評価書」という(住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第6条、同法施行規則第3条)。

住宅品質確保法では、設計住宅性能評価書を交付された新築住宅については、設計住宅性能評価書に記載された住宅の性能が、そのまま請負契約や売買契約の契約内容になる場合があると規定しており、この規定により注文者保護・買主保護が図られている(詳しくは「住宅性能評価書と請負契約・売買契約の関係」へ)。

このような設計住宅性能評価書が作成される手順はおよそ次のとおりである。

1.作成の依頼
新築住宅の請負人または注文者(もしくは新築住宅を売却する売主または買主)が、登録住宅性能評価機関に対して、設計住宅性能評価書の作成を依頼する(同法施行規則第3条)。
この評価書作成の費用は10万円から30万円程度といわれているが、その費用は請負人または注文者(もしくは売主または買主)が負担することになる。
なお既存住宅(建設工事完了後1年以上が経過した住宅や、建設工事完了後1年以内に人が住んだことがある住宅のこと)については、設計住宅性能評価書の作成を依頼することができない。

2.必要な書類の提出
依頼者は、登録住宅性能評価機関に対して、設計住宅性能評価書を作成するために必要な関係書類を提出する。
この依頼者が提出すべき書類は、配置図・仕様書・各階平面図など非常に多岐にわたる(提出書類は国土交通省告示「設計住宅性能評価のために必要な図書を定める件」により定められている)。

3.設計住宅性能評価書の作成
登録住宅性能評価機関は提出された多数の書類にもとづき、国土交通大臣が定めた基準に準拠して、新築住宅の性能を評価し、設計住宅性能評価書を作成する(このとき評価する項目の詳細は「日本住宅性能表示基準」へ)。

このように設計住宅性能評価書は、あくまで設計図等の書面のみにもとづく評価結果であり、現地で住宅を検査した結果にもとづく評価ではない。
そのため、請負人・注文者(もしくは売主・買主)が、検査結果にもとづく住宅性能評価書の作成を希望する場合には、登録住宅性能評価機関に対して建設住宅性能評価書の作成を別途依頼する必要がある(同法施行規則第5条)。

このようにして、依頼者の費用負担で作成された設計住宅性能評価書を、実際に請負契約書・売買契約書に添付等するかどうかは請負人・売主の自由に委ねられている(同法第6条)。

設計図書

建物を施工するために必要な図面その他の書類の総称。建築士法では建築物工作物だけでなく敷地を含めた工事実施のために必要な図面と仕様書、と規定されている。

実際には、施工段階で設計変更、仕様変更、追加工事等が生じることが多いために、竣工図という最新の設計内容を記録した設計図書がある。これらは、経年に伴う改修・改築等の際に必要なものであるため、建築主は必ず保管しておく必要がある。

石膏

硫酸カルシウム(CaSO4)を主成分とする物質のこと。
二水石膏(CaSO4・2H20)、半水石膏(CaSO4・1/2H20)、無水石膏(CaSO4)の3種類がある。
二水石膏を焼成すると半水石膏となる。このため半水石膏を「焼石膏」ともいう。

この焼石膏に水を加えて練ると、流動性の液体となるが、この液体は数分から数十分で再び二水石膏となり固体化する。
このような性質があるため、石膏は左官材料等として多用されてきた。

また石膏には、天然に産出する天然石膏と人工的に生産する化学石膏とがあるが、わが国で用いられる石膏の大半は化学石膏である。
石膏は英語で「gypsum」という。

石膏プラスター

石膏(焼石膏)に水、砂などを混ぜ合わせたものを「石膏プラスター」という。左官材料などに用いる。

また、石膏(焼石膏)、消石灰、水、砂などを混ぜ合わせたものは「混合石膏プラスター」という。

石膏ボード

石膏を心材とし、両面をボード用原紙で被覆した板のこと。
施工が簡単で、温度・湿度による変化が非常に少ないことから、壁材、天井材(あるいは壁・天井の下地材)として多用されている。

節水トイレ

洗浄用の水量が少ない水洗トイレ。水流の向きを渦巻きにする、便器の素材を汚れにくいものとするなどによって、少ない水量で洗浄できるとされている。ただし、設置する場合には、水圧や排水管についての適合性に注意しなければならない。

セットバック

1. 建物の上部を下部よりも後退させること。

2. 2項道路建築基準法第42条第2項の規定により道路であるものとみなされた幅4m未満の道のこと)に面する土地では、次の1)または2)の範囲に建物建築することができない。

1)その道路の中心線から水平距離2mの範囲
2)その道路の片側が崖地、川、線路等である場合には、その崖地等の側の道路境界線から水平距離4mの範囲

つまり、2項道路はその幅が4m未満であり、そのままでは防火等の面で十分な道の幅を確保することができないので、2項道路を含めて4mの範囲内には、建築物や塀などを造ることを禁止し、4mの空間を確保しようという趣旨である。

その結果、2項道路に面する土地では、自分の土地でありながら、一定の部分には建築をすることができないこととなる。これを不動産業界ではセットバックと呼んでいる(セットバックとは英語で「後退」という意味である)。

このセットバックについて次の点に注意が必要である。

a)セットバックしなければならない部分には、建築物を建築できないのみでなく、門や塀や擁壁を建築することもできない。
b)セットバックしなければならない部分は、容積率建ぺい率を算出する場合には、敷地面積から除外される。

例えば、幅2mの2項道路(片方が崖地等ではない)に面していて、道路に接する長さが10m、奥行が10mの正方形の土地があるとしよう。
この土地の本来の面積は100平方メートルである。セットバック部分の面積は1m×10mなので、10平方メートルである。よって、この土地の建築可能部分の面積は90平方メートルである。
この土地の容積率が80%であるとすると、この土地に建築できる建物の延べ床面積は、最大で90平方メートル×80%により、72平方メートルとなる。

節税

税負担を積極的に軽減すること。住宅ローン減税などの特別措置を利用するだけでなく、課税のルールを活用して負担の軽減を図ることを目的に、資金や資産を運用する行為を言う。この場合、ルールに違反してはならない。また、ルールの趣旨・目的を逸脱することも避けなければならない。

節税のために、不動産投資が活用されることもある。例えば、相続財産の評価に当たっては、金銭よりも不動産のほうが有利に扱われる場合が多い。しかしながら、不動産の経営はリスク(空室、賃料・価額低下など)を伴い、労力や管理費用を要する。また、投資資金を借りたときは、返済義務を負うだけでなく、利息を負担しなければならない。

節税のため不動産に投資する場合には、注意深く検討する必要がある。

接道義務

建築基準法第43条の規定によれば、建築物敷地は原則として、建築基準法上の道路と2m以上の長さで接しなければならない。これは消防活動などに支障をきたすことがないように定められたものである。この義務のことを「接道義務」と呼んでいる。
(なお建築基準法第43条では、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物等については、特定行政庁が建築審査会の同意を得て許可したものについては、接道義務を免除することができるとも定めている)

また、多数の人が出入りするような特殊建築物(学校・ホテルなど)や大規模建築物(3階建て以上の建築物など)については、防火の必要性が特に高い等の理由により、地方自治体の条例(建築安全条例)において、より重い接道義務を設けていることが多いので注意したい。

セメント

本来は、水と練り混ぜることにより、時間の経過とともに硬化する物質をすべてセメントと呼ぶ。

建築工事では通常、ポルトランドセメントのことを「セメント」と呼んでいる。
ポルトランドセメントとは、石灰、粘土、石膏から作られる粉末状の物質である。

専従者控除

不動産所得がある個人が白色申告を行なっている場合、一定の要件を満たす家族従業員について「専従者控除」を受けることができる。
専従者控除額は、配偶者について86万円、その他の家族ならば1名につき50万円である。

ただしこの場合、不動産貸付業が「事業的規模」に達していることが必要である。

専属専任媒介契約

宅地または建物の売買または交換の媒介の契約(媒介契約)のうち、専任媒介契約であって、かつ依頼者は、依頼した宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買等の契約を締結することができない旨の特約が付いた契約をいう。

つまり、依頼者は取引の相手方を自分で発見しても、媒介を依頼した宅地建物取引業者の媒介なしには契約できないことになる。

専属専任媒介契約を締結した場合には、宅地建物取引業者は、契約の相手方を探索するため、5日以内に、媒介の目的物に関する事項を指定流通機構に登録しなければならないとされている。

洗濯機パン

洗濯機の下に置く防水のための受け皿。「防水パン」ともいう。

排水口と直結し、洗濯機から漏れた水や結露水を溜めて排水するほか、振動が床に伝わるのを和らげる機能もある。

洗濯機パンは、床を保護するために有効で、また、2階以上では階下への水漏れを防ぐためにも設置すべきと考えられている。

センターコア方式

集合住宅やビルなどの設備部分を一ヵ所に集中させる方式のこと。

給排水、冷暖房空調、エレベーターなどの設備部分を集中させることにより、メンテナンス、室内デザイン、躯体構造など機能面、構造面を合理化できるメリットがある。

住戸単位ではキッチン、浴室、トイレなどの水回り設備を中心部にまとめることにより、他の部屋の独立性を高めることができる。

センターテーブル

部屋の中央に置くテーブル。一般に低めのテーブルで、ソファとともに配置される場合が多い。その用途は部屋の使い方に応じて多様であるが、センターテーブルを配置することによって部屋空間に求心性が生まれる。

セントラルヒーティング

ひとつの熱源から各部屋に熱を供給する暖房方式。英語のcentral heating。

一般的に、ボイラーを熱源として、そこでつくった温水又は蒸気をポンプによって各部屋の放熱器(ラジエター)に配送し、その放射熱によって暖房する仕組みが用いられている。

住戸や建物を単位で行なう方法のほか、地区全域を対象とする方法もある。

専任取引士

専任媒介契約

宅地または建物の売買または交換の媒介の契約(媒介契約)であって、媒介の依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買または交換の媒介または代理を依頼することを禁ずる媒介契約をいう。

この契約の有効期間は、3月を超えることができないとされている(契約期間の更新は可能)。

専任媒介契約を締結した場合には、宅地建物取引業者は、契約の相手方を探索するため、7日以内に、媒介の目的物に関する事項を指定流通機構に登録しなければならないとされている。

線引き

一つの都市計画区域を、市街化区域市街化調整区域とに区分すること。
都市計画法上では「区域区分」と呼んでいる(詳しくは区域区分へ)。

洗面化粧台

洗面台(洗面ボール、給水栓、鏡を備えている)と収納スペースとが一体化した設備。通常、照明器具やコンセントも備えていて、身だしなみを整えるためのニーズに応えるように作られている。

洗面台

水を溜めて顔を洗うための容器(洗面ボウル)及び水栓金具が組み合わさった設備。通常、鏡なども組み込まれている。

洗面台は壁面等に固定された設備であって、洗面のための単独の容器(洗面器)のようには移動して使うことができない。

占有

自分が利益を受ける意思によって物を現実に支配している事実・状態をいう。

そして、占有によって「占有権」という法律上の権利が認められる。占有権は、物権の一つとされている。

占有権の法的な効果は、占有の形態などによって若干異なるが、一定の要件のもとでは、取得時効(占有の継続によって所有権を得る)、即時取得(占有されている動産を取引行為によって取得できる、不動産についてはこのような効果がないことに注意)、占有責任(不法行為などについて責任を負う)などが認められ、あるいは負わされる。

占有権

占有権とは、物を支配する権利のことである(民法第180条)。

土地の所有者は、その土地を所持しているので、占有権を有している。また土地の賃借人は、その土地を使用する権限があるので、やはり占有権を有している。

そうすると占有権という権利を考えなくても、所有権や土地賃借権だけに着目すればよいようにも考えられるが、あえて占有権という権利を想定するにはそれなりの理由がある。

例えば、ある人が土地を現実に支配し利用しているが、他の人がその土地の真実の所有者であると主張したような場合には、土地を現実に支配している人はまったくの無権利者である可能性があることになる。
こうした場合には、法律上、現実に支配している人をとりあえず保護することが必要となるので、現実に支配している人に「占有権」という権利があると考えるのである。

もちろん、民事裁判によって土地を現実に支配している人が無権利者であることが確定すれば、占有権は最終的には失われることになるが、裁判が確定するまでの間は占有権によって事実状態が保護されることになるのである。

なお、真実の権利者が長期間にわたって権利を主張せず、無権利者の占有状態が長期間継続した場合には、無権利者が土地の所有権を取得することが認められている。この制度を「所有権の取得時効」という。

専有部分

分譲マンションなどの区分所有建物において、それぞれの区分所有者が単独で所有している建物の部分のことを「専有部分」と呼ぶ(区分所有法第1条・第2条)。

分譲マンションの場合でいえば、各住戸の内部が「専有部分」に該当する。

この反対に、区分所有建物において区分所有者が全員で共有している部分(例えば廊下・階段・バルコニーなど)は「共用部分」と呼ばれる。

専有面積

分譲マンションなどの区分所有建物において、それぞれの区分所有者が単独で所有している建物の部分のことを「専有部分」と呼ぶ(区分所有法第1条・第2条)。

この専有部分の床面積が「専有面積」である。

従って、専有面積とは「区分所有者が単独で所有している専有部分の床面積」のことであり、具体的には各住戸の内部空間の床面積を指している。

分譲マンションの販売広告では一般的に「専有面積60平方メートル、他にバルコニー5平方メートル」のように床面積を表示していることが多い。

バルコニーは専有面積から除外される扱いとなるが、これはバルコニーは一見それぞれの住戸に付属しているように見えるが、法律的にはバルコニーは「共用部分」とされているからである。

なお区分所有建物の場合、専有面積には「内法」と「壁心」という2種類の計算方法が存在し、両者の計算方法による専有面積の大きさは異なったものとなるので注意したい(詳しくは「専有面積の広告表示」へ)。

専有面積の広告表示

分譲マンションなどの区分所有建物専有面積には2とおりの計算方法が存在している。

1つは、壁の厚みを考慮せず、壁の内側の部分の面積だけを床面積とする計算方法である(これを「内法(うちのり)」という)。

もう1つは、壁の厚みも加えて床面積を計算する方法である(これを「壁心(かべしん・へきしん)」という)。

建築基準法にもとづいて建築確認を申請する際には、建物の床面積は上記の「壁心」の考え方で計算する(建築基準法施行令2条1項3号)。

しかし不動産登記法にもとづいて区分所有建物を登記する場合には、上記の「内法」の考え方で床面積を計算することとされている(不動産登記法施行令第8条)。

このように専有面積には2とおりの計算方法が存在し、混同しやすいので、不動産広告を規制する「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」では次のようなルールを設定している(表示規約第15条第21号)。

1.新築マンションや中古マンションの販売広告では、原則的に「壁心による床面積」を広告に表示する必要がある。
2.しかし、中古マンションの広告では「内法による床面積」だけを表示することも許される
3.2.の場合には広告中に「登記面積」である旨を明記する必要がある。

従って、新築マンションの販売広告では上記1.に従って「壁心」による床面積が表示されていることになる。

ただし「住宅ローン控除」を受ける際には、マンションの専有面積が50平方メートル以上であることが必要とされているが、ここでいう専有面積とは「登記簿上の面積」であり、「内法」の面積のことである。

そのため新築分譲マンションを購入する際には、購入する前に、登記簿上の面積(すなわち「内法」の面積)が何平方メートルになるのかを販売不動産会社に確認しておくのが望ましい。

占有屋

担保不動産競売に付される際に不動産を占有し、担保価値を損なったり、競売を妨害して高額な立退料を要求する者をいう。

虚偽の賃貸借契約などによるケースが多く、権利なき占有は違法であるが、その排除には訴訟その他の労力を要する。

なお、抵当権の登記後なされた短期間賃借(住宅は3年間)を抵当権者から保護するための制度(短期賃貸借の保護の規定)があってこれを占有屋が悪用することが多かったため、2003年にその規定が廃止され(短期賃貸借保護制度の廃止参照)、代わりに、競売前からの占有者は競売落札時から6ヵ月に限って引渡しを要しないという規定(落札後の賃料を支払わないときには適用されない)が設けられた。

また、占有屋を排除する手続きを簡便にするため、占有者不明のまま明渡し命令をなすことも可能となった。

専用使用権

区分所有建物における共用部分は、本来、各区分所有者が、通常の用法に従ってそれぞれ自由に使用することができる。敷地についても同様である。
しかし、次のいずれかの場合には、共用部分や敷地の使用を、特定の区分所有者または第三者だけに限定することが可能とされている。

1.管理規約にその旨の定めがあるとき
2.集会の決議があるとき
3.共有者全員の同意があるとき

このようにして、特定の区分所有者または第三者が、共用部分や敷地を排他的に使用できるとき、その使用の権利を「専用使用権」と呼ぶ。

具体的には、分譲マンションの1階の住戸に専用庭を設けるケースなどで、専用使用権が設定されることが多い。

専用住宅

専ら居住を目的に建築され、店舗、事務所、作業場等の業務の用に供する部分がない住宅。一戸建て、共同住宅の別を問わない。

これに対して業務用のスペースがある住宅を「併用住宅」という。

専用庭

分譲マンションにおいて敷地に設けられた庭やテラスであって、1階部分の区分所有者が排他的に使用できるもののこと。1階部分の区分所有者のために専用使用権が設定されていることが多い。

税理士

資格を得て税金に関する仕事を業として行なう者。税理士法に基づいて資格が与えられる。

税金に関する次の仕事は、税理士でなければ業として行なってはならないとされている。
1)税金の申告、申請などを当事者に代理して行なうこと(税務代理)
2)税務申告書などを作成すること(税務書類の作成)
3)税額計算などに関する相談に応じること(税務相談)

これらの仕事を「税理士業務」といい、税理士の独占業務である。ただし、納税者が自分で税務書類を作成し、税金の申告などを行なうのはかまわない。

また、税理士は、財務書類の作成、会計帳簿の記帳など、財務に関する事務を代行する場合もあるが、これらは独占業務ではない。

税理士の資格を得るには、原則として税理士試験に合格しなければならないが(一定の者については試験免除制度がある)、弁護士及び公認会計士は当然に税理士となる資格がある。税理士になる資格がある者が税理士として業務を行なうためには、税理士名簿に登録しなければならない。そして登録すると、登録を受けた区域の税理士会の会員となる。

税理士は、「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」使命があるとされている(税理士法)。また、脱税相談等に応じること、信用を失墜する行為をなすことなどが禁止され、秘密を守る義務、研修を受け資質の向上を図るよう努める義務などが課せられている。

絶対高さの制限

第一種第二種低層住居専用地域では、住環境を良くするために、建築物の高さが10mまたは12m以下に制限されている。これを「絶対高さの制限」と呼んでいる(建築基準法55条)。

この絶対高さの制限が「10m以下」と「12m以下」とのどちらになるかは、都市計画で規定される。

なお、この絶対高さの制限には例外がある。建築審査会が同意して特定行政庁が許可した場合には、絶対高さの制限を上回る高さの建築物を建築することができる。

ZEH

年間に消費する正味(ネット)のエネルギー量がおおむねゼロ以下となる住宅。ZEHは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、和製英語である。

ZEHは、住宅の高断熱化、設備(空調、換気、照明、給湯等)の高効率化、エネルギーの創出(太陽光発電等)によって実現できると考えられている。正味で75%省エネを達成したものをNearly ZEH、 正味で100%省エネを達成したものをZEHと称する。

なお、ZEHに類似した住宅としてゼロエミッション住宅があるが、ZEHはエネルギー消費の削減(省エネルギー)に特化した目標を定めているのに対して、ゼロエミッション住宅は総合的な環境負荷の削減を目標としている。

Zマーク金物

金物とは、建築材の接合部を結合し、補強するために取り付ける部品である。

Zマーク金物とは、「財団法人日本住宅・木材技術センター」が承認または同等認定する高品質な金物のことである。

筋かいの端部の接合部などにおいては、「建設省告示第1460号」(2000(平成12)年6月1日施行)によって、Zマーク金物(またはそれと同等以上の性能を有する金物)を使用することが事実上義務付けられている(詳しくは「金物」へ)。

ゼネコン

建設工事の全体を請負施工する企業。英語のgeneral contractor(ゼネラルコントラクター)。「総合建設業」も同じ意味である。

ゼネコンは、工事発注者から直接に工事を受注し、完成した建造物を引き渡す責任を負う。施工に当たっては、一般に、各種の専門工事業者が下請負で作業する。この場合、ゼネコン(元請負業者)は工事の管理・監督機能を担い、専門工事業者(下請負業者)は直接に施工する機能を担うとされる。

ゼネコンは、建設業法に基づき、「特定建設業」として営業許可を得なければならず、許可が必要な工事の種類は「土木一式工事」または「建築一式工事」である。また、一括下請負は禁止され、元請人としての責務を果たさなければならない。

ZEB

消費する一次エネルギーが実質的にゼロである建物。英語のNet Zero Energy Building(ネット ゼロ エネルギー ビルディング)の略語である。

建物は、その利用環境を良好に保つために相応のエネルギーを消費することとなるが、その量(一次エネルギー換算)と同量の再生可能エネルギーを導入することによって、一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることができる。ZEBはこの条件を満たす建物である。それを実現するためには、高断熱化等による環境負荷の抑制、設備システムの高効率化などによって、建物の大幅な省エネルギー化を図る必要がある。

ゼロエミッション住宅

環境負荷を極力小さくするように設計された住宅をいう。

厳密な定義はないが、住宅に関して、エネルギー源、エネルギー消費、施工材料・施工法などを工夫することにより、二酸化炭素の排出や廃棄物量を抑制する。

ゼロエミッション住宅においては、次の3つの技術が総合的に活用されている。

1.新エネルギー技術
太陽光発電、風力発電、燃料電池など

2.省エネルギー技術
有機EL照明、ヒートポンプ給湯、計画換気など

3.環境技術
環境配慮建材、軽量鉄骨構造など

気候変動対策のために温室効果ガスの排出量を削減することが求められているが、住宅のゼロエミッション化はそのための有効な政策であるとされ、ゼロエミッション住宅の開発・普及が促進されると考えられる。

なお、ゼロエミッション住宅に類似した住宅としてZEHがあるが、ゼロエミッション住宅は総合的な環境負荷の削減を目標としているのに対して、ZEHはエネルギー消費の削減(省エネルギー)に特化した目標を定めている。

善意・悪意

私法上の概念で、ある事情を知らないことを「善意」、知っていることを「悪意」という。

私的な法律関係においては、善意であるか悪意であるかによって、法律効果が異なる場合が数多くある。

例えば、相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効であるが、善意の第三者には対抗できないとされている。従って、AからBに不動産の仮装売買がなされ、さらに第三者Cがその不動産をBから買収したときには、Cが仮装売買の事実を知らなければABはCの買収の無効を主張できないが、Cが知っていれば買収は無効である。

全館空調

居室だけでなく廊下など建物の全てのスペースを対象とした空調のこと。

全館空調は、部屋ごとに空調機器を設置せず、一つの設備で処理した空気を配管によって建物全体に循環させる方法で運用される。通常、24時間運転とされ、稼働コストが嵩むほか、原則として新築時に設置しなければならない。

善管注意義務

取引上において一般的・客観的に要求される程度の注意をしなければならないという注意義務のこと。

すべての取引においてこの注意義務が要求されるものではなく、この注意義務が要求される取引の種類は限られている。

1.善管注意義務の意味
善管注意義務とは、正確には「善良なる管理者の注意義務」のことであり、民法第400条の条文に由来する。
民法第400条では、特定物(中古車・美術品・建物のようにその物の個性に着目して取引される物のこと)の引渡しの義務を負う者は、その引渡しが完了するまでは、その特定物を「善良なる管理者の注意義務」をもって保存しなければならない、と定めている。
この民法第400条の趣旨は、例えば美術品の売買契約が成立した場合に、契約成立後から美術品の引渡しまでの期間においては、美術品の売主は、一般的・客観的に要求される程度の注意義務(すなわち善管注意義務)をもって保管しておかなければならない、ということである。

従って、契約成立後から美術品の引渡しまでの期間に、何らかの事情で美術品が破損したとすると、売主が一般的・客観的に要求される程度の注意義務(善管注意義務)を果たしていたかどうかが問題となる。善管注意義務を果たしていたのであれば、売主には過失がないことになるので、売主には債務不履行責任(民法第415条の責任)は発生しないことになり、破損による損失は危険負担(民法第534条)として処理されることになる。
このように善管注意義務は、その義務を果たしていれば、債務者が責任を回避できるという点に実益がある。

2.善管注意義務が要求される場面
民法第400条では、特定物の引渡し前に善管注意義務が要求されると規定するが、これ以外にもさまざまな民法の条文で善管注意義務が要求されている。
具体的には、「留置権にもとづいて物を占有する者(民法第298条第1項)」「質権にもとづいて物を占有する者(民法第350条)」「委任契約の受任者(民法第644条)」などである。

3.善管注意義務よりも軽い注意義務
民法では、善管注意義務よりも軽い注意義務を要求する場合がいくつかある。
例えば、無報酬で物の保管を引き受けた者(受寄者という)は、その物の保管について「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」を負う(民法第659条)。
また、親権者は子の財産を管理するにあたっては、「自己のためにすると同一の注意をなす義務」を負う(民法第827条)。
このように「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」「自己のためにすると同一の注意をなす義務」と表現するのは、いずれも注意義務の程度が「善管注意義務」に比べて軽いということを意味している。

従って、例えば無報酬の受寄者が保管していた物を、その受寄者の不注意によって破損した場合には、受寄者の注意義務は軽いので、重大な不注意(すなわち重過失)があるときだけ、受寄者は損害賠償責任を負う。逆に、軽い不注意(すなわち軽過失)であるならば、受寄者は損害賠償責任を負わない。

全体計画

マスタープランと呼ぶのが一般的で、都市計画、事業計画などの方針や目標を明確にする図書等をいう。

そのあり方は多様で、例えば都市計画のマスタープランは、住民が将来のおおまかな都市像を頭に描きつつ、個々の都市計画が将来の都市全体の姿の中でどこに位置付けられ、どのような役割を果たしているかを理解できるようなものでなければならないとされる。あるいは、不動産開発事業のマスタープランは、事業区域や事業規模、事業方式、土地利用や主要建物の計画、事業の収支見通し、スケジュールなどを内容とし、事業の全体像を明確に示す役割を担う。

マスタープランは、開発計画などに比べて事業の方針や目標に重点が置かれ、その内容に弾力性があることが多い。

全熱交換器

建物の熱交換機は、部屋の換気に当たって、排気と吸気のあいだで熱を交換して空調のエネルギー効率を高める装置である。たとえば、暖房した空気を外に排出するときに、排気が持っている温熱を外気に移して吸入すれば暖房効率は高くなる。このとき、温度となって現われている熱(顕熱)だけでなく、水蒸気として大気に放出されていた熱(潜熱)をも交換するものを「全熱交換機」という。

全熱交換機は、顕熱のみ交換する装置よりも省エネルギー効果が大きいが、空気中の水分を交換するためのしくみが必要となる。

全熱交換機には、大別して、回転する装置を介して熱交換するもの(回転型全熱交換機)と、排気流と吸気流を接触させて熱交換するもの(静止型全熱交換機)とがある。後者のほうが小型で構造も単純であるが、室内の臭気等が排出されにくいとされる。

全部事項証明書

不動産登記簿に記載されている総ての内容を表示し、それが真正であることを証明する書面。登記簿が登記用紙によって調整されていたときの登記簿謄本と同じである。誰でも登記所に申請して交付を受けることができる(オンラインで申請することも可能)。

全部事項証明書には過去の履歴(所有権の移転、抵当権の設定・抹消など)も含めた記載内容が総て表示されている。

なお、登記簿の記載内容を表示する書面には、全部事項証明書のほか、現在有効である内容のみを表示し証明する「現在事項証明書」、内容の表示のみで証明を欠く「登記事項要約書」などがある。

前面道路

敷地に面した道路をいう。

敷地が複数の道路に面する場合には、通常、接する距離が長いほうの道路を指す。

なお、道路幅員によって定まる容積率の最高限度(道路幅員制限)を算定する場合に、敷地が複数の道路に面するときは、幅員が最大の前面道路の幅員を用いるとされている。

総合設計制度

建築物敷地に「公開空地」(一般公衆が自由に出入りできる空地)を設ける開発者に対して、特定行政庁の許可により容積率等を緩和するという制度である。
正式名称は「敷地内に広い空地を有する建築物の容積率等の特例」である(建築基準法第59条の2)。

総合設計制度とは、建築物の敷地に一定以上の広さの「公開空地」を設ける場合において、容積率および各種の高さ制限(道路高さ制限隣地高さ制限北側高さ制限絶対高さの制限)が特定行政庁の許可の範囲内において緩和されるという制度である。
容積率および各種の高さ制限を緩和するためには、特定行政庁が建築審査会の同意を得て、許可をすることが必要とされている(建築基準法第59条の2)。

特定行政庁が許可を与える基準や、容積率および各種の高さ制限を緩和する範囲については、各地方自治体が「総合設計制度許可要綱」を制定し、自治体ごとに独自の判断基準が設けられている。

また国では、自治体の総合設計制度許可要綱について一定のガイドラインを設けている(昭和61年12月27日付建設省住街発第94号、平成7年7月17日付建設省住街発第72号、平成9年6月13日付建設省住街発第75号)。

なお建築基準法では、特定行政庁の許可を受けるためには、公開空地の面積を都市計画で定められた建ぺい率による空地面積と同じかそれ以上としなければならないと規定し、また敷地面積の最低基準も定めている(建築基準法施行令第136条第1項・第3項)。

総合特別区域(総合特区)

区域を指定して規制・制度の特例や税制・財政・金融措置を総合的に適用する制度、またはその制度によって指定された区域をいう。

この制度は、実現可能性のある区域を限定し、そこに国と地域の政策資源を集中して、規制・制度の特例と税制・財政・金融上の支援を総合的に実施することによって包括的・戦略的な政策課題の設定・解決を図ることが目的とされる。

総合特別区域には、国際戦略総合特区(経済成長を牽引する産業・機能の集積を形成)および地域活性化総合特区(地域資源を活用した地域力の向上)の2つのパターンがある。いずれも、

1.地方公共団体が地域協議会の協議等を経て指定を申請
2.内閣総理大臣が総合特別区域推進本部の意見を聴いて指定
3.総合特別区域計画の作成・認定(特例措置・支援措置の対象事業について記載)

という手順を経て実現する。

適用される特例・支援措置としては、

1.建築基準法の特例などの法律や政省令等の特例および条例委任の特例(規制・制度の特例)
2.国際競争力強化のための法人税の軽減等(税制上の支援)
3.各府省庁予算制度の重点的な活用等(金融上の支援)
4.総合特別区域支援利子補給金の支給(金融上の支援)

などがある。

総合特区

総合特別区域」を参照

相殺

2人の者が互いに相手に対して同種の債権を持っているとき、相手方への意思表示によってその債務を対当額で消滅させることをいう。

一方の財産状態が悪化した場合に、相殺の意思表示によって確実に債権を回収できる(自らの債務の範囲ではあるが)から、債権担保の機能も果たすとされる。

相殺ができるのは、1.同種の債権が債権者・債務者の間に相対立して存在し、2.双方の債権がともに弁済期にある(実際には、相殺しようとする者がその債務について期限の利益を放棄すれば、債権と弁済期を同じにできる)状態にある場合で、そのような状態にあることを「相殺適状」という。意思表示をすれば、双方の債務は相殺適状の時に遡って対当額で消滅する。

ただし、相殺禁止の特約があるときなど一定の場合には、相殺が許されない。

相続

死者の有した財産上の一切の権利義務を、特定の者が包括的に承継することをいう。

相続は、死亡のみによって、意思表示を要せず一方的に開始される。ただし、遺言により相続の財産処分について生前に意思を明らかにし、相続に反映させることができるが、この場合には、遺留分の制約がある。

財産の継承者(相続人)は、1.子・直系尊属・兄弟姉妹がこの順で先順位の者が(同順位者が複数あるときには共同して均等に)、2.配偶者は1.の者と同順位で常に、その地位を得る。子・兄弟姉妹の相続開始前の死亡や相続欠格等の場合には、その者の子が代わって相続人となる(代襲相続)。
また、相続人は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に、相続の承認、限定承認、相続放棄のいずれかの意思表示が必要である(意思表示がないときには相続の承認とみなされる)。

遺言の指定がないときの相続分(法定相続分)は、1)配偶者と子のときには、配偶者2分の1、子2分の1、2)配偶者と直系尊属のときには、配偶者3分の2、直系尊属3分の1、3)配偶者と兄弟姉妹のときは、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1である。

なお、法定相続分は遺言がない場合の共同相続人の権利義務継承の割合を定めたもので、遺産分割は相続人の協議等によってこれと異なる割合で行なうことができる。

相続時精算課税制度

贈与税の納税方法で、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与税と相続財産に課す相続税とを通算する制度をいう。贈与税の算定は暦年ごとに行なうのが通例であるが(暦年課税)、その特例である。

相続時精算課税制度の適用を受けるためには、親族関係や年齢に関する一定の要件を満たすこと、同制度を選択する旨申告することが必要である。

贈与税額は、暦年課税では累進的な税率によって算定されるが、相続時精算課税制度を選択すると一律の税率で課税される。また、贈与税と相続税の精算は、相続時に、生前に贈与された財産の価額と相続財産の価額とを合計し、それを基に計算した相続税額から既に納めた贈与税相当額を控除する方法によって行なう(超過分は還付される)。これによって、生前贈与による資産移転が促進されると考えられている。

相続税

相続遺贈によって取得した財産に対して賦課される税をいう。

この場合の財産には、相続時精算課税制度の適用を受けて贈与により取得した財産を含む。

納税義務者は財産を取得した者であるが、税額の算定に際しては各種控除などが適用されるので、十分な注意が必要である。

一般的な相続税額の算出手順は次の通りである。

① 課税価格の算出
取得した財産の価額から、一定の生命保険金等の非課税財産の価額、小規模宅地に係る減額相当額などを減じ、相続時精算課税に係る贈与財産価額や3年以内の贈与財産の価額などを加算して、課税財産額を算出する。
② 相続税総額の算出
ア 課税遺産総額の算出:①で算出した課税価格から、遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を減じる。
イ 法定相続人の取得金額の算出:アで算出した課税遺産総額を民法に定める法定相続分に従って取得したと仮定して、各法定相続人の取得金額を算出する。
ウ 法定相続分ごとの取得金額に応じた相続税額の算出:イで算出した金額に相続税率を乗じて算出する。税率は、取得金額に応じて、10%から55%まで累進的に定められている。
エ 相続税総額の確定:ウで算出した法的相続人ごとの相続税額を合計する。
③ 各人ごとの相続税額の算出
②エで確定した相続税総額を、各人の実際の相続割合に応じて按分し、相続税額を算出する。
各人ごとの相続税額=②エの価額×各人の相続割合
④ 各人の納付税額の算出
③の価額から、相続人の属性に応じて、配偶者税額軽減、未成年控除などの各種税額控除額を減じ、各人の納付税額を確定する。この場合、財産取得者が被相続人の配偶者、父母、子供以外の者である場合には、相続税額の20%相当額を加算して納付税額が算出されることに注意が必要である。

相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に申告納税しなければならない。

相続登記

相続の発生に伴って、土地建物の権利者(または権利の割合)が変わった場合に、その権利の変更を登記することを「相続登記」という。

相続登記をするには、法定相続分のままで登記する場合と、遺産分割協議で決定した内容に基づいて登記する場合がある。また、有効な遺言書が存在すれば、遺言書に従って相続登記することになる。

法定相続分のままで相続登記をし、その後に遺産分割協議が成立した場合は、その協議の決定内容に基づいて再度、相続登記を申請することになる。

なお、不動産登記法の改正によって、相続登記が義務化された(2024年4月1日施行)。この場合、正式の申請に代わって、相続した旨のみを申し出ることで申請義務を履行したものとみなす仕組み(相続人申告登記)も創設されている(「相続登記の義務化」参照)。

相続登記の義務化

相続遺贈により不動産を取得した相続人に対して、相続登記の申請を義務付ける措置。不動産登記法の改正によって義務化された(2024年4月1日施行)。

相続登記を申請しなければならないのは、相続(特定財産承継遺言を含む)や遺贈により不動産を取得した相続人で、申請は、所有権を取得したことを知った日から3年以内にしなければならない。この場合、遺産分割が成立した場合にはその内容を踏まえて申請するが、成立していない場合には法定相続分で申請してかまわない。

また、相続登記の義務化と同時に、正式の申請に代わって、相続した旨のみを申し出ることで申請義務を履行したものとみなす仕組み(相続人申告登記)が創設された。

相続人申告登記は、i)所有権の登記名義人について相続が開始した旨、ii)自らがその相続人である旨を、申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出るだけで成立する。相続人が複数存在する場合でも特定の相続人が単独で申し出ることができ、法定相続人の範囲及び法定相続分の割合が確定していなくても構わないとされている。この場合、遺産分割が成立したら、成立日から3年以内にその内容を踏まえた相続登記の申請を行なうこととなる。

相続土地国庫帰属制度

相続または遺贈によって土地の所有権または共有持分を取得した者等が、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度。所有者不明土地の発生を抑制するための制度で、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(2023年4月27日施行)に基づく仕組みである。

国庫へ帰属させるためには、申請によって法務大臣の承認を得る必要がある。申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈により土地の所有権または共有持分を取得した者で、共有土地については共有者の全員が共同して申請しなければならない。

国庫への帰属を申請する土地は、建物が存在する土地、担保権または使用収益を目的とする権利が設定されている土地、境界が明らかでない土地などであってはならない。また、崖があって管理に過分の費用・労力を要する土地、通常の管理処分を阻害する工作物等がある土地など一定の土地については、帰属を承認されない。

承認を受けた者は、10年分の土地管理費相当額(土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した額)の負担金を納付しなければならない。

双方代理(双方代理の禁止)

同一人が契約当事者双方のそれぞれの代理人となって代理行為をすること。双方代理は原則として禁止されているが、これに反した代理行為が無効となるわけではなく、無権代理として扱われ、当事者本人が追認すれば有効となる。

例えば、Bが売主Aと買主Cのそれぞれの代理人となって売買契約を成立させることは双方代理に当たる。また、この場合に、AまたはCがB自身である場合を自己契約といい、双方代理と同様に禁止されている。

なお、不動産の売買・賃貸借の契約を媒介する行為は、代理行為ではないとされているので、双方の当事者から同一人が媒介の依頼を受けても双方代理とはならない(もっとも、双方に同時に信義誠実を尽くすのは容易ではないであろう)。

双務契約

契約当事者の双方がお互いに対価性のある債務を負担する契約をいう。売買、賃貸借などの契約はこれに該当する。これに対して、贈与のような当事者の一方のみが債務を負担する契約を「片務契約」という。

双務契約においては、双方の債務履行が密接な関係にあるから、相手の給付があるまでは自分の債務を履行しないとの主張(同時履行の抗弁権)が認められているほか、一方の債務の消滅等において他方の債務をどうするか(危険負担)などが問題となる。

総有

ある財産が団体の所有となっており、その財産が団体によって強く拘束されている状態であることを「総有」という。

ある団体の財産が「総有」であるときは、各構成員はその団体財産について持分を持たない。従って、各構成員は団体財産に対して持分分割請求をすることができない。
また、各構成員が団体から脱退する際には、各構成員は持分の払い戻しを受けることができない。その反面、団体の債務については団体財産だけから弁済を行なえばよく、債権者は個々の構成員の個人財産から弁済を受けることはできないとされる。

社団法人の財産は社員の総有である。また、権利能力なき社団の財産も構成員の総有であるとされている(判例:最高裁昭和39年10月15日など)。

相隣関係

隣接する不動産の所有者が相互にその利用を調整し合う関係をいう。地上権賃借権についても同様である。

調整のルールとして、民法では、境界付近で建築工事をするときの隣地の使用、袋地所有者の隣地の通行(囲繞地通行権)、水流に関するルール(自然水流に対する妨害の禁止、水流の障害を除去する権利、水流の変更についての制限など)、境界標の設置、囲障の設置、境界線付近の建築の制限などを規定している。

また、ルールのなかには、民法の規定と異なる慣習があるときにはそれに従うとされるものもある。

なお、騒音や振動の発生、日照妨害なども相隣関係から生じる問題であり、法令に違反したり、受忍の限度を超えた影響を及ぼす場合などは、不法行為として損害賠償の責任を負うこともある。

促進区域

市街地の再開発などを促進するために定められる区域のこと。

促進区域とは、次の4種類の区域の総称である(都市計画法第10条の2第1項)。

1.都市再開発法第7条第1項の規定による「市街地再開発促進区域」
2.大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法第5条第1項の規定による「土地区画整理促進区域」
3.大都市地域における住宅および住宅地の供給の促進に関する特別措置法第24条第1項 の規定に「住宅街区整備促進区域」
4.地方拠点都市地域の整備および産業業務施設の再配置の促進に関する法律第19条第1項 の規定による「拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域」

促進区域の具体的な内容は、それぞれの法律によって規定されている。

例えば、上記1.の「市街地再開発促進区域」については、その促進区域内の宅地の所有者または借地権者は、できるだけ速やかに第一種市街地再開発事業などを施行するよう努めなければならず、5年以内に自主的再開発が行なわれない場合等には、市町村(または都道府県)が第一種市街地再開発事業を施行することが予定されている(市街地再開発法第7条の2)。
また、「市街地再開発促進区域」では容易に移転除却できる建築物建築であっても知事(または市長)の許可が必要である(市街地再開発法第7条の4)。
このように促進区域では建築を規制し、本来の事業への移行を促す措置が規定されている。

なお、上記1.から4.の促進区域は、市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域(いわゆる非線引き区域)において都市計画として定める(都市計画法第13条第1項第8号)。
促進区域の都市計画決定の主体は市町村である(都市計画法第15条)。

測量士

測量業に従事して測量を行なうための資格。測量法に基づく国家資格で、測量に関する計画を作製し、実施する。

測量士の資格は、大学で測量に関する単位を取得し卒業したのち測量に関し一年以上の実務の経験を有する者、測量士試験に合格した者などに与えられる。

なお、測量士は、土地家屋調査士の試験において、土地・家屋の調査および測量についての平面測量および作図の筆記試験が免除される。

測量士補

測量業に従事して測量を行なうための資格。測量法に基づく国家資格で、測量士の作製した計画に従い測量に従事する。

測量士補の資格は、大学で測量に関する単位を取得して卒業した者、測量士補試験に合格した者などに与えられる。

なお、測量士補であれば、土地家屋調査士の試験において、土地・家屋の調査及び測量についての平面測量および作図の筆記試験が免除される。

底地(底付き、底なし)

借地権等の地上権が設定されている土地をいう。

そのような土地の所有権底地権と呼ぶ。

底地の価格は、更地価格と地上権の価格との差であるが、理論上は、地代純収益を資本還元した価額が底地価格と等しくなる。更地価格に占める底地価格の割合は、土地の用途や地区の環境等によって異なるが、一般に、商業地よりも住宅地のほうが高いとされている。

また、借地権等の譲渡の際に、底地権を合わせて譲渡することを「底付き」、借地権等のみを譲渡することを「底なし」と呼ぶ。

底地権

ある土地に借地権が設定されているとき、この土地の所有者が持っている土地所有権のことを「底地権(そこちけん)」と呼ぶことがある。

底地権の評価額は一般的に次のように考えられている。
「底地権の評価額 = 土地の更地としての評価額-借地権の評価額」
つまり、借地権の分だけ土地の評価額が下落していると考えられているのである。

Society5.0

先端技術を産業や社会生活に広範に導入し、さまざまな社会課題の解決と多様なニーズに応えることのできる社会。日本政府による造語で、AI、IoT、ロボットなどに代表される技術(第4次産業革命)を多様な分野に大幅に取り入れることによって実現する社会とされ、政府の産業政策や科学技術政策の共通目標とされている。

Society 5.0の具体的な姿は明確ではないが、例えば「新産業構造ビジョン」(2017年)では、Society 5.0を形作るために戦略的に取り組む分野として、(1)移動困難を限りなく解消するなどの「移動する」分野、(2)スマートサプライチェーンの構築などの「⽣み出す・⼿に⼊れる」分野、(3)健康寿命の延伸などの「健康を維持する・⽣涯活躍する」分野、(4)災害に強く地域活力のある街づくりなどの「暮らす」分野をあげている。

租税公課

租税(国税・地方税)および国・地方公共団体から課せられる負担金等の総称。一般に「公租公課」と言われるが、「租税公課」は、経理における勘定科目名として用いられる。

租税公課の賦課については、課税要件、賦課手続き等が法律または条例で裁量の余地なく定められ(租税法律主義)、強制的に徴収される。

事業のために負担した租税公課は、税務上、経費として認められるものが多いが、税引前利益から支払う租税(法人税・法人住民税・事業税)や延滞税等の罰則に該当するものなどは、経費計上できない。

固定資産税不動産取得税も租税公課である。これらも、事業用不動産に課せられるものは経費として認められるが、事業所が自宅兼用の場合などは、利用面積を按分し、事業に使用する面積分の税額のみが経費である。

粗大ごみ

地方公共団体が収集する一般廃棄物のうち、大きさが一定以上であって、収集の依頼が必要なものをいう。その大きさは、ごみ処理事業を行なう地方公共団体によって異なる。

通常のゴミ収集車で収集することが困難であることから、事前に収集を申し込むと共に、手数料を負担しなければならないとされている。

家電リサイクル法の対象となっているテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などや、資源有効利用のために回収することとされているパソコンなどは、販売店を通じてメーカーが回収するため、粗大ごみ収集の対象にはならない。また、事業に用いた廃棄物(産業廃棄物)は一般廃棄物ではなく、地方公共団体のごみ処理事業の対象ではない。

即決和解

民事紛争に関して、当事者双方が起訴前に簡易裁判所に出頭してする和解をいう。

「起訴前の和解」とも呼ばれる。

裁判上の和解の一つとされ、調書に記載された和解には、裁判外の和解(例えば示談)と違い、確定判決と同様に、既判力(当事者や裁判所を拘束する効果)、執行力(強制執行により請求を実現できる効果)、形成力(法律関係の変動を生じる効果)という法的な効果を伴う。

即決和解は、紛争があるとき、起訴に至る前に最終的な解決を図る手段として用いられるが、権利の実行を確実にするための手法としても活用されることがある。

なお、裁判上の和解としては、もう一つ、訴訟継続中になされる和解(訴訟上の和解)があるが、これは通常、裁判所の勧めにより行なわれる。

側溝

道路や鉄道敷に沿って設けられる小規模な水路をいう。

専ら当該道路等の排水のために設置される。

外断熱

室外側に断熱層を設け、室内への外気温移動の影響を少なくする構法のこと。

建物の外壁に使われるコンクリートは雨風を防ぎ、堅牢であるために耐久性、防犯性などに優れているが、太陽熱を蓄熱し、夜間にはその熱を空中に放熱するため、都市部の熱帯夜の主要原因ともいわれている。
鉄筋コンクリート造やブロック造などの構造躯体の外側に断熱材を張れば、外壁のコンクリートは室内側に近い温度になり、外気の影響を受けにくく、劣化も進みにくくなる。従来は、室内側に断熱材を取り付ける内断熱構法が一般的であったが、近年は断熱効率を上げるために外断熱構法を採用するケースが増えている。

ソファ

背もたれがあって、肘掛けが両端についた長椅子。英語のsofa。

標準的なソファは、張りぐるみ(全体を布などで包む造り方)になっていて、複数の人が腰かけられる。一般に、居間に置いて、休息や接客に利用する。

ソファのかたちには、標準的なもののほか、肘掛けのないもの、足を伸ばして利用するもの(カウチソファ)、背もたれを倒すことができるもの(リクライニングソファ)、ベッドに変換できるもの(ソファベッド)などがある。

ソファベッド

寝台兼用のソファ。英語のsofa-bed。ソファの背もたれを倒したり、ソファの座面を引き出したりすることで簡易な寝台として使うことができる。   

損益計算書

企業の一定期間における経営成果を明らかにする書類をいう。

英語でProfit and Loss Statementといわれることから、PL(またはP/L)と略されることもある。

損益計算書は、一会計年度、半期または四半期において得られた営業収益(売上高)に対して、売上原価、販売費・一般管理費、営業外の収益・費用(本業以外の収支)、特別の利益・損失(臨時的に発生した損益)、支払い税額を、順次に加減する形で示され、最終的には純利益が算出される。
これによって、その期の経営成果(損益)の状態とその発生原因が示されることとなる。

損益計算書からは、当該企業がどのように利益を得ているか、効率的に経営がなされているかなど、経営のパフォーマンス等を分析するための基礎的なデータを得ることができる。

損益通算

不動産所得において赤字が発生した場合は、給与所得の黒字や事業所得の黒字から、不動産所得の赤字を控除することができる(所得税法69条)。
このようにある種類の所得の赤字を、他の種類の所得の黒字から差し引くことを「損益通算」と呼んでいる。

損益通算の特例

不動産所得に赤字が発生したとき、その赤字のうち土地の取得のために借り入れた借入金の利子に相当する部分は、他の所得の黒字と通算することができない。これを「損益通算の特例」という(租税特別措置法第41条の4)。

例えば、ある年において、不動産収入が500万円、土地の取得のために借り入れた借入金の利子が70万円、その他の必要経費が550万円だったとする。この他に給与収入から給与所得控除を差し引いた後の給与所得が300万円あったとする。
このとき、不動産所得は「500万円-70万円-550万円=120万円の赤字」である。このうち70万円は給与所得と相殺することができない。
よって不動産所得の赤字のうち50万円だけを給与所得の黒字から差し引くことができるので、この年の所得は「300万円-50万円=250万円」となる。

損害賠償

違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいう。

債務不履行不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば損害賠償義務を負うことになる。その損害は、財産的か精神的かを問わず、積極的(実際に発生した損害)か消極的(逸失利益など)かも問わず填補の対象となる。
ただし、その範囲は、通常生ずべき損害とされ、当事者に予見可能性がない損害は対象とはならない(相当因果関係、因果の連鎖は無限に続くため、予見可能性の範囲に留めるという趣旨)。

損害賠償は原則として金銭でなされる。また、損害を受けた者に過失があるときは賠償額は減額され(過失相殺)、損害と同時に利益もあれば賠償額から控除される(損益相殺)。

なお、同じように損害の填補であっても、適法な行為(公権力の行使)によって生じた不利益に対する填補は、「損失補償」といわれて区別される。

損害賠償額の予定

不動産売買契約において、当事者の一方が債務を履行しない場合に備えて、あらかじめ損害賠償の金額を取り決めておくことがある。このような予定された賠償金額のことを「損害賠償額の予定」と呼ぶ。

「損害賠償額の予定」を契約に盛り込むことにより、売買契約の当事者は、将来に債務の不履行が発生した場合には、実際の損害額を立証しなくとも、所定の金額の損害賠償を請求できるというメリットがある。

また、実際の損害額が、予定された賠償額よりも少ない場合であっても、債務を履行しない債務者には予定された賠償額を支払う責任が生ずるので、債務者にとっては過剰な支払いとなる可能性がある。

このように「損害賠償額の予定」に関する契約条項は、当事者の一方に不利なものとなる可能性があるので、宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者売主となる宅地建物の売買契約においては、「損害賠償額の予定」と「違約金」との合計額が売買代金の2割を超えてはならないと定めている(宅地建物取引業法第38条)。

この宅地建物取引業法第38条により、売買取引に精通していない一般の買主が不利にならないように保護しているのである。ただし宅地建物取引業者同士の売買取引については、この宅地建物取引業法第38条は適用されない。

損害賠償額の予定等の制限

宅地建物取引業者売主となる宅地建物の売買契約では、契約の解除に伴う損害賠償額の予定違約金を定めるときは、その合計が売買代金の額の10分の2を超えてはならないという制限のこと(宅地建物取引業法第38条) 。

損害賠償額の予定とは、あらかじめ契約で損害賠償額を予定しておけば、債務不履行が発生した場合に、損害を受けた側は煩雑な損害額の証明をする必要がなくなるので、損害を受けた側の権利行使が容易になるという制度である(民法第420条第1項)。

また違約金とは、債務不履行が発生した場合に、義務を履行しなかった者が支払うことを約束した金銭のこと。この違約金は懲罰としての性格を持つだけでなく、相手方の損害に対する損害賠償としての性格を持つ場合もあるので、違約金と損害賠償額の予定との区別は実際上難しい。そこで、民法第420条第3項では「違約金は賠償額の予定と推定する」旨を定めている。

しかし、このような損害賠償額の予定や違約金は、大変高額になることもあり、取引に精通していない一般消費者はこれらによって不測の損害を被る場合が考えられる。そこで、宅地建物取引業法第38条では、宅地建物取引業者が売主で、宅地建物取引業者以外の者が買主である場合には、不当に過酷な損害賠償額の予定または違約金を課すことを禁止している。具体的には、損害賠償額の予定と違約金の合計額は最大でも代金の2割以内とした。

また同じく第38条第2項では、「前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二を超える部分について、無効とする」と定めており、代金の2割を超える損害賠償額の予定と違約金の合計額が代金の2割を超えるような契約は、自動的に代金の2割にまで縮減されると定めている(この場合も契約そのものは有効なまま維持される)。

なお、この第38条は一般消費者保護の規定であるので、宅地建物取引業者が売主で、宅地建物取引業者以外の者が買主である場合にのみ適用される。

損害保険

偶然の事故によって生じる損害を填補するための保険。保険法は、人の生死・傷病に関連する保険(生命保険)以外の保険をすべて損害保険としている。

損害保険はさまざまな種類に分かれている。典型的な損害保険として、火災保険、運送保険、海上保険があるが、そのほかにも、賠償責任保険、信用保険など多様な保険が提供されている。

損害保険の保険期間は、一般に、生命保険に比べて短い。また、損害保険の保険金(保険者が支払う金銭)は、生命保険と違って、原則として被保険者が現実に被った損害額に基づいて算定される。

損失補償(土地収用法における~)

収用により、土地や物件を収用された場合、土地や物件に関する従前の権利は消滅する。この経済的損失に対する対価として支払われるものを「損失補償」という。

損失補償は、土地に対する補償(土地収用法第71条)、土地に関する所有権以外の権利に対する補償(同法第71条)、残地補償(同法第74条)、みぞかき補償(同法第75条)、土地上の物件の(同法第77条)、物件の補償(同法第80条)、その他の通常損失(同法第88条)などに大きく分けられる。

損失補償を受けることができるのは、土地所有者と関係人である(土地収用法第68条)。(ただし、収用した土地の隣地等が損失を受ける場合がある。この場合は土地所有者・関係人以外の者が損失補償を受けることができる(土地収用法第93条))。

手続き面では、収用委員会による収用の裁決で、損失補償の内容と、権利取得の時期を決定する(土地収用法第48条、第49条)。この裁決に従い、収用者(起業者)が、権利取得の時期までに金銭払い等を行なうことにより、権利取得の時期において、土地や物件に関する従前の権利が消滅することになる。

損失補償では、「個別払いの原則」が設けられている。損失補償は土地所有者や関係人の各人に個別に別々に支払わなければならないが、例外として各人別に見積もることが困難であるときは、複数人をまとめて支払うことも許される(土地収用法第69条)。

また、損失補償は金銭で支払うことが必要である(金銭払いの原則)。しかし替地による補償、耕地の造成、工事の代行による補償、移転先の代行による補償、宅地の造成といういわゆる現物補償が行なわれる場合もある。これらの現物補償は、収用委員会の裁決によって行なう(土地収用法第70条、第82条から第86条まで)。

なお、土地収用を行なう事業が変更・廃止された場合には、それによって損失を被った土地所有者・関係人が損失補償を受けることができる(土地収用法第92条)。

損失補填の禁止

取引によって生じた顧客の損失を補填することを禁止するルール。禁止される補填は、損失発生の事前、事後を問わない。

金融商品取引法の対象となる有価証券等の取引についてだけでなく、不動産特定共同事業契約に基づく権利、保険契約に基づく権利など、投資性のある権利の取引についても適用される。また、このルールは、取引業者と顧客の双方に適用され、取引業者が損失補填を約束し、又は事後に補填することだけでなく、顧客が補填を要求することも禁止されている。

損失補填の禁止は法律に基づく規制であって、これに反する行為を行なった場合には行政処分や罰則が課されることがある。

尊属

親族関係のうち、ある人を基準にして先の世代にある血族をいう。血族とは血縁者のことであるが、民法では養子縁組によって生まれる親族も血族として扱う。例えば、父母・祖父母など(直系尊属)や、おじ・おばなど(傍系尊属)が尊属である。

尊属という概念が法的に重要だったのは、刑法で尊属殺を一般の殺人よりも重い刑に処するとされていたからであるが、その規定は違憲とされ(1973年4月4日最高裁判決)、削除されている。

なお、後の世代の血族を卑属という。

損保

損害保険」を参照。

ソーシャル・キャピタル

社会的な協調を生み出す組織的な資源。英語のsocial capital。和訳は「社会関係資本」である。

ソーシャル・キャピタルの意味や構造を明確に示したのは、アメリカの社会学者ロバート・パットナム(Robert D. Putnam)である。パットナムは、水平的で自発的な市民の協調が活発に働くのは、社会が「信頼」「規範」「ネットワーク」によって組織されているからであるとし、そのような特性を持った組織資源をソーシャル・キャピタルとする。そして、それが社会の課題を自発的に解決するための役割を果たしていること、ソーシャルキャピタルが豊かな地域は、政治的コミットメントの拡大、子供の教育成果の向上、近隣の治安の向上、地域経済の発展、地域住民の健康状態の向上など、経済面社会面において好ましい効果をもたらしていることなどを明らかにした。

また、パットナムの研究を受け継ぎ、ソーシャル・キャピタルを豊かなものとすることを目標とするまちづりや、まちづくりに当たってソーシャルキャピタルを生かす手法などが提案されている。

SOHO

Small-Office Home-Officeの頭文字で、小規模事務所や自宅で働く職場形態、もしくはその用途に対応した物件のこと。

近年では、都市郊外にコピー、FAXなどのOA機器を共用する賃貸型小規模SOHO施設も登場し、高齢者や主婦などがニュービジネスを展開するケースもある。

ソーラーチムニー

煙突内に上昇気流を発生させ、それを利用して発電する装置をいう。Solar updraft towerともいわれる。

太陽光によって高温となった空気を煙突内に導いて上昇させ、その気流でタービンを回すことによって発電する。風力発電の一種と考えてよい。

なお、発電に使うのではなく、太陽光で煙突内に上昇気流を発生させ、それによって効率的に自然換気する装置をソーラーチムニーと呼ぶ場合もある。この場合には空調設備の一種となる。

ソーラー発電システム

屋根の上になどに設置した集光板で太陽の光エネルギーを集め、電力を発生させるシステムのこと。

CO2(二酸化炭素)を発生させない、環境問題に対応したエネルギー源であると同時に、省エネにもつながるとして、近年このシステムを採用するケースが増えている。また、自宅で発電した電気を電力会社に売る売電システムもあり、今後設置費用がより廉価になれば、飛躍的に普及することが期待されている。

造園施工管理技士

造園工事について、施工計画・施工図の作成および工程管理、品質管理、安全管理等の施工管理を適確に行なうために必要な技術を有する旨の検定に合格した者。建設業法に基づく国家資格である。

造園施工管理技士には、検定試験の水準に応じて1級・2級の区分がある。

なお、造園施工管理技士は、造園工事業の営業所の専任技術者および工事現場の主任技術者または監理技術者の資格を満たすとされている(2級造園施工管理技士は一般建設業に限る)。

増価競売

抵当権が付着している不動産を、抵当権が付着した状態のままで取得した者(第三取得者という)は、いつ債権者の意向により任意競売(抵当権の実行)にかけられるかわからないという不安定な状態に置かれてしまう。そこで民法改正(2004年4月1日)より以前の旧民法第378条では「滌除(てきじょ)」という制度を設けていた。
この「滌除」では、第三取得者が自ら適当と認める金額を債権者に呈示して、債権者がそれを承諾すれば抵当権が消滅するが、債権者がそれを承諾しないときには債権者は必ず一定の金額以上で抵当不動産を任意競売にかけなければならないとされていた。この一定の金額以上での債権者による任意競売のことを「増価競売」という(改正前の民法第383条・第384条)。

増価競売では、第三取得者が呈示した金額の10分の1以上高価な価額で競売を申し立てなければならない。例えば、債権者Aが債務者Bに3,000万円を融資し、不動産Pに3,000万円の抵当権を付けたとする。その後、Bがこの不動産Pを500万円で第三者Cへ売却したとする。本来、この不動産Pの時価評価は3,500万円だが、3,000万円の抵当権が付着している分だけ売却価格が下げられているとする。
このとき第三取得者Cは、債権者Aに対して「Cが2,500万円をAに支払うので、これにより抵当権を消滅させる」旨を請求することができる(2,500万円という金額は例えとして挙げたもので、事情により幾らにするかは第三取得者が決めてよい)。
債権者が、この2,500万円の呈示に承諾しかねるときは、債権者は2,750万円の最低売却価額を設定して、抵当不動産を任意競売にかけなければならない。そして買受人が現れないときは、債権者自らが抵当不動産をその最低売却価額で買い受けなければならない。このような仕組みが「増価競売」である。

増価競売では、特に不動産の相場が下落している時期には、債権者(主に金融機関)にとって損失が発生する可能性があり、債権者にとって酷であると考えられてきた。そのため、2004年4月1日の民法改正により増価競売は廃止されている。なお、このとき滌除の制度そのものも大幅に改正され、抵当権消滅請求という名称になっている(詳しくは抵当権消滅請求へ)。

造作

建物の内部を構成する部材や設備をいう。

部材としては建具、、床、鴨居など、設備としては水道設備、空調設備などがこれに当たる。詳しくは「造作買取請求権」を参照。

なお、建築することをいう場合(「造作する」というような使い方)もあることに注意が必要である。

造作買取請求権

借家契約の終了の際、借家人が建物に付加した造作を家主に時価で買い取らせることのできる権利をいう。

造作とは、、建具、電気・水道施設などをいい、その付加について家主の同意を得ていることが必要である。

民法の原則では、賃貸借契約の終了時には賃借人が付加した造作を収去しなければならないとされているが、造作買取請求権は、借家契約における例外規定である。ただし、造作の買取り義務を負わないよう契約上特約することができる(任意規定である)。

なお、造作買取請求が正当で有効である場合に、家主が代金を支払わない間は、同時履行の抗弁権双務契約において相手方が債務を履行するまでは自分の債務を履行しないと主張する権利)によって、家屋の明渡しを拒絶される恐れがある。

増床

既存の建物において、増築しないで特定の目的のための床面積を拡大することをいう。

増床の方法には、デッドスペースの有効利用、建物空間の用途転換、同一建物内の他者が所有する空間の買収・賃借などがある。

また、企業や商業施設などが、オフィスや売り場面積を増やすこともいう。

造成宅地防災区域

造成された一団の宅地のうち、地震等によって地盤の滑動などの災害が発生する恐れが大きいとして指定される区域をいう。

その指定要件、手続きなどは、宅地造成等規制法で定められている。

造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者等は、災害防止のための擁壁等を設置するなどの責務を負うほか、都道府県知事等が、所有者等に対して、災害の防止のため必要な措置を講じるよう勧告や改善命令を行なうことがある。

なお、宅地建物取引業務における重要事項説明に際しては、取引する宅地建物が造成宅地防災区域にあるときには、その旨を説明しなければならない。

贈与

当事者の一方がある財産権を相手方に無償で移転する意思を表示し、相手方がそれを受諾する意思を表示し、双方の意思が合致することによって成立する契約のこと(民法第549条)。

贈与は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)。また、贈与は不要式契約なので、書面による必要はなく口頭でも成立する。

本来、贈与は好意・謝意などの動機で行なわれるものであるから、契約ではないとする考え方もあるが、わが国の民法では、贈与も契約であると構成したうえで、「書面による贈与」と「書面によらない贈与」に区分し、異なった取扱いをするという方法を採用している。

「書面による贈与」とは、贈与者による贈与の意思が現れた書面が存在する贈与である。書面による贈与は書面が存在する以上、もはや撤回することができない。
「書面によらない贈与」は、原則的にいつでも撤回することができるが、履行が終わった部分については撤回できないとされている(民法第550条)。

贈与税

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがある。いずれの方法の場合にも、財産の被贈与者が申告、納税しなければならない。

1.暦年課税

1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額に対して課税する方法
この場合、基礎控除額は110万円で、これを超える額に対して累進的な税率(基礎控除額を超える額に応じて10~50%、2015(平成27)年以降は最高税率55%)によって課税される。

2.相続時精算課税

あらかじめ選択した一定の要件に該当する贈与者ごとに、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計金額から2,500万円の特別控除額を控除した残額に対して課税する方法

この場合、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2,500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となる。また、相続発生時に、相続時精算課税された相続税と相続した財産に係る相続税とを通算して税額の精算が行なわれる。

相続時精算課税において控除額を超える額に対する課税税率は、一律20%である。

贈与税の特例(住宅取得等資金の贈与を受けた場合の~)

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置をいう。

2015(平成27)年1月1日から23(令和5)年12月31日までの間に、18歳以上(2021年度までは20歳以上)の相続人が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、贈与年の翌年3月15日までに、その住宅取得等資金の全額を充てて自己の居住の用に供する住宅の新築・取得・増改築をし居住を開始したときには、一定額までの贈与について、暦年課税、相続時精算課税のいずれにおいても非課税にする贈与税の特例措置が講じられている(ただし、適用について所得制限がある)。

この特例を受けて取得する住宅は、床面積が50平方メートル以上(一定の場合は40平方メートル以上)240平方メートル以下でなければならないなど一定の条件を満たさなければならない。

非課税の枠は、次の条件に応じて異なる。
・取得する住宅の種類:耐震、省エネ、バリアフリーの住宅は非課税枠が大きい
・取得契約時期:適用期限に近づくほど非課税枠が小さい
・住宅取得時の消費税率:消費税率10%の場合のほうが非課税枠が大きい


なお、「東日本大震災」の被災者についての非課税枠は、一般の場合よりも大きい。

贈与税の配偶者控除

贈与税の課税に当たって、夫婦間で居住用不動産(取得のための金銭を含む)を贈与した場合に、最高2,000万円まで控除する特例。贈与税の基礎控除額は110万円であるが、それに上乗せして控除できる。

贈与税の配偶者控除を受けるためには、(1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後の贈与であること、(2)贈与された財産が居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭であること、(3)贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること、の要件を満たさなければならない。

ゾーニング

地域や建物を用途や機能によって区分し、その位置関係を定めることをいう。英語のzoning。

都市計画においては、土地利用形態を住居系、商業系、工業系等に分類し、土地を区分して指定するが、この計画はゾーニングである。あるいは、建築設計において、空間の用途や機能の配置を定めることもゾーニングである。

た行

耐火建築物

建築基準において、その主要構造部(壁、柱、床、、屋根、階段)が耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など火災を遮る設備を有する建築物をいう。

この場合に、耐火性能を満たすというのは、

1.主要構造部が耐火構造であること

2.屋内で発生する火災、および周囲で発生する火災による火熱に、当該火熱が終了するまで耐えることができるとする技術基準で定める性能(構造耐力、上昇温度などに関する一定の要件)に適合すること

である。

一定の特殊建築物や、都市計画で定められた防火地域内の一定の建築物は、耐火建築物としなければならない。

耐火構造

建築基準において、壁、柱、床その他の建築物の部分の構造が、耐火性能に適合する建築物の構造をいう。

この場合の耐火性能とは、通常の火災が終了するまでの間、当該火災による建築物の倒壊、および延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能のことである。その技術的な基準としては、各構造部分の種類や建物の階数に応じて定められる一定時間(おおむね1~3時間)の間、火熱を加えても、各構造部分が構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであることなどの要件が定められている。

例えば、鉄筋コンクリート構造やれんが造は、原則として耐火構造である。

大気汚染防止法

大気の汚染に関して、国民の健康保護、生活環境の保全などのために必要な対策を定めた法律。1968年に制定され、その後、問題の発生に応じて改正が重ねられている。

大気汚染防止法による対策の基本的な仕組みは、(1)有害な大気汚染物質を指定し、(2)汚染物質の種類ごと、排出施設等の種類や規模ごとに排出の基準等を定めてその順守を求め、(3)必要に応じて基準適合命令、使用停止命令などの措置を講じることである。また、(4)健康被害物質の大気中への排出により人の生命又は身体を害したときは、当該排出に係る事業者はこれによって生じた損害を賠償する責めに任ずること(無過失賠償責任)を定めている。

汚染物質として指定されているのは、煤煙(硫黄酸化物、煤塵、窒素酸化物など)、揮発性有機化合物(一定のVOC)、粉塵(石綿等)、水銀等、自動車排出ガスである。

石綿(アスベスト)も大気汚染防止法による規制対象物質である。吹付け石綿等が使用されている建築物などの解体・改造・補修作業について、作業基準などが定められ、事業者はその基準を守らなければならない。また、建築物の解体・改修工事を行なうときには、資格者(建築物石綿含有建材調査者等)による事前調査の実施が義務付けられている。

耐久性向上改修

住宅の耐久性を高めるための改修であって、長期優良住宅(増改築)の認定基準を満たすための工事をいう。

耐久性向上改修の内容は、次の2つである。

1)構造躯体等の劣化対策
通常想定される維持管理のもとで、構造躯体の使用継続期間が少なくとも100年程度となる措置を講じる
2)維持管理・更新の容易性の確保
内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行なうために必要な措置を講じる

耐久性向上改修を行なった場合には、一定の減税措置(長期優良住宅化リフォーム減税)の対象となる。

退去(退居)

賃借していた住宅を立ち退くこと。

 (1)まず、借主は賃貸借契約に定められた期限までに貸主に対して契約解除を通知し、(2)引っ越しの準備などを経て住宅から立ち退き、(3)借りていた住宅を貸主に返還する(鍵を引き渡す)手順で終了する。このとき同時に、(4)負担が必要な原状回復の費用を確定し、(5)預けていた敷金を精算することになる。

 なお、家賃は、原則として、退去するまでではなく、賃貸借契約を解除するまで支払わなければならない。

退去費用

賃貸住宅から退去する時に、借主が貸主に支払う費用。

賃借人は、民法の規定によって、賃貸借が終了したときには、賃借物の使用によって生じた損傷(通常の使用収益によって生じた損耗及び経年変化を除く)を原状に復する義務(原状回復義務)を負うが、退去費用はその義務を履行するために支払う金銭である。

従って退去費用は、現状回復費用と同じで、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧するための費用」(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)である。

また、賃借するときに敷金を預けている場合は、原則として敷金を退去費用に充当し、差額が返還・徴収される。

対抗要件

私法上の概念で、当事者間で効力のある法律関係が、第三者に対して効力を有するための要件をいう。

これに対して、当事者間で効力を有するための条件は「成立要件」といわれる。

対抗要件は、権利によって異なる。例えば、動産に関する物権譲渡の対抗要件は「引渡し」であるが、不動産に関する物権譲渡の対抗要件は「登記」である。あるいは、不動産の賃貸借権の対抗要件をみれば、原則は賃貸借契約後にその物権を取得した者に対して「登記」とされるが、借地権の場合は「借地権者が土地の上に登記された建物を所有すること」、建物の賃貸借権の場合に、その後建物の物権を取得した者に対して「建物の引渡し」という特例がある(借地借家契約については、権利の登記がなくても第三者に対抗できるということである)。

また、「債権譲渡」の際の対抗要件については、その解説を参照。

貸借対照表

企業の一定時点での財務状態を明らかにする書類をいう。

英語でBalance Sheetといわれることから、BS(またはB/S)と略されることもある。

貸借対照表は、ある時点における、企業または企業グループの資産、負債、純資産の状態を表示している。
資産には、現金、設備、不動産など企業が保有する経済的な価値が、負債と純資産は資産を保有するための資金調達の状態が計上される。
他者から借入した資金(買掛金、借入金等)が負債であり、企業所有者の出資金(資本金)および企業に帰属する利益剰余金等が純資産である。そして、資産と、負債および純資産の合計とは常に一致する。

貸借対照表からは、当該企業の企業価値、負債負担能力、資金活用状況など、企業財政の状態等を分析するための基礎的なデータを得ることができる。

耐震改修促進税制(住宅の~)

住宅の耐震改修工事に対して税制上優遇する制度。優遇措置は、所得税の控除と固定資産税の軽減の2種類がある。



いずれの制度も、優遇の対象となるのは、旧耐震基準(1981年5月31日以前の耐震基準)により建設された住宅を、新耐震基準に適合させるために行なった工事である。


1)所得税について、耐震改修に要した改修工事費の一部(10%相当額)をその年度の所得税額から控除する。

2)固定資産税について、改修した住宅に対する固定資産税を、工事(工事費が50万円以上のもの)の実施時期に応じて定められる一定の期間、120平方メートル相当部分までについて2分の1に減額する。

ただし、これらの特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

耐震改修促進法

建物の耐震改修の促進のための措置を講ずるための措置を定めた法律。正式名称は「建築物の耐震改修の促進に関する法律」で、1995(平成7)に制定された。

耐震改修促進法が定める主な措置は、次の通りである。

(1)耐震化の促進のための規制措置
・既存耐震不適格建築物に対して、行政庁が耐震化の指導・助言すること
・不特定多数の者が利用する建築物避難路沿道建築物等のうち一定の建物に対して、行政庁が耐震改修を指示し、公表すること
・不特定多数の者が利用する建築物で大規模なもの等に対して耐震診断を義務付け、結果を公表すること
(2)耐震化促進のための措置
・行政庁が認定した耐震改修計画による改修について、既存不適格の継続、容積率等の特例を認めること
・行政庁が認定した区分所有建物の耐震改修について、決議要件を緩和すること(区分所有法の特例:4分の3→2分の1)
・建築物の耐震性が確保されている旨の認定を受け、その旨を表示すること

耐震基準(建築物の~)

地震の際に建物が安全であるために備えていなければならない構造上の技術的基準。建築基準法によって定められている。

耐震基準の考え方は1924(大正13)年に導入され、1950(昭和25)年の建築基準法施行時に従来よりも強化した基準として法定された。これを「旧耐震基準」という。その後、1981(昭和56)年6月1日からは、旧耐震基準を大幅に強化した基準を適用することとなった。この強化された基準を「新耐震基準」という。

新耐震基準は、およそ震度5程度の地震に対して建物の構造に損害がないように、および、およそ震度6強の地震に対して致命的な損害がなく人命を保護できるように定められている。また、基準への適合は、一次設計で構造耐力上主要な部分の地震時の応力度が許容応力度を超えないこと、二次設計で地震による変形に関する計算および材料強度による耐力計算を行って基準を満たすことの2段階で確認することになっている。

なお、地震は複雑な現象で、建物に対する影響もさまざまなかたちで及ぶから、耐震基準を満たした建物が大地震に際して確実に安全であるとまでは言い難い。

耐震基準適合認定表示

その建物が地震に対する安全性に係る基準に適合している旨の認定を受けていることの表示。認定は、申請によって所管行政庁が行なう。

認定を受けるかどうかは任意であるが、広告等に耐震基準適合認定表示を付すことができる。また、認定を受けていない場合にはこれと紛らわしい表示を付してはならないとされている。

耐震構造

地震などによる水平方向の力に対して、十分に耐えることのできるよう設計された建築物の構造をいう。

その技術的な基準は建築基準法に基づいて定められているが、建築物の用途、規模、構造の種別、土地の状況に応じて異なる。

基本的には、

1.柱、、床、壁等を有効に配置して、建築物全体がこれに作用するに対して一様に構造耐力上安全であること

2.構造耐力上主要な部分は、建築物に作用する水平力に耐えるように釣り合いよく配置すること

3.構造耐力上主要な部分には使用上の支障となる変形または振動が生じないような剛性および瞬間的破壊が生じないような靱性を持たせること

とされている。

また、一定の建築物については、その安全性を定められた構造計算によって確かめなければならない(2005(平成17)年に発覚した構造計算書偽装問題は、この構造計算書が偽造されたことをきっかけに社会問題化したである)。

具体的な耐震設計基準については、大地震などを契機に強化されてきていて、現在は、1981(昭和56)年6月1日に定められた基準(新耐震基準)が適用されている。

なお、地震に対する安全確保の方法には、主要な部材の構造耐力を確保する方法(耐震構造)の他、振動の伝播を遮断・柔軟化する方法(免震構造)、振動を吸収する方法(制震構造)がある。

耐震シェルター

地震で家屋が倒壊したときに安全を確保できる空間。住宅内の一部を地震に耐える強固な空間に改造して安全な場所とすることができるが、耐震シェルターはその強固な空間である。

地震対策に最も効果があるのは耐震改修であるが、耐震シェルターの設置は、耐震改修に比べて短期間に安価で実施できる。一方で、耐震シェルターのスペースは狭いことから、一時的な利用に留まることになる。

なお、耐震シェルターの設置工事費に対する助成制度を用意している地方自治体もある。

耐震診断

建物地震に対して安全であるかどうかを調査・判断する作業。耐震診断によって明らかになった耐震性能が耐震基準を満たさないときには、耐震改修が必要とされている。

耐震診断の方法は、建物の構造、規模や用途、調査の難易などに応じて決定する。また、耐震性能は、構造体の耐震強度や塑性変形能力のほか、建物の形状、経年劣化の程度などを加味して評価する。

耐震等級

建物の耐震強度を示す指標で、住宅性能表示において定められている。

建築基準法が定める最低基準(震度6強程度の地震によって倒壊・崩壊しない強度)を満たす強度が「等級1」、最低基準の1.25倍の強度が「等級2」、同じく1.5倍の強度が「等級3」である。

耐震補強

建物の地震に対する安全度を上げるために講じる対策。

一般的な方法として、i)壁や鉄骨(ブレース)の増設、基礎の補強などによって振動力に耐える性能を向上する方法(耐力の増強)、ii)柱に金網や鉄板を巻いたりして粘り強さ(靱性)を向上する方法(靱性の向上)がある。また、耐力の補強とは異なる方法として、iii)基礎と建物の間に積層ゴムなどを設置して建物に伝わる地震の揺れをに軽減する方法(免震補強)、iv)錘やダンパなどを設置して地震による揺れを軽減する方法(制震補強)がある。さらには、地盤が脆弱な場合には、地盤の改良を行なうときもある。

耐震補強の方法を選択するときには、地盤の状態、建物の構造、現在の耐震性能と目指す性能、費用・工期などを十分に検討する必要がある。

耐震ラッチ

地震のとき収納扉が開かないようにする器具。一定の振動が加わると自動的に扉に鍵がかかる仕組みである。

なお、耐震ラッチは扉が閉まった状態を保つ器具であって、戸棚の倒壊やガラス扉の破損を防ぐことはできない。

タイニーハウス

小さな家屋。英語のtiny houseであるが、和製英語。「狭小住宅」も同じ意味である。大きさについての基準はなく、工法や構造についても決まりはない。

ミニマルなライフスタイルに適合する住宅として選択されるほか、ゲストハウス、趣味の場、別荘などとしても利用される。

対面キッチン

ダイニングルームと開放的に向き合う配置となっている調理台。

調理室とダイニングルームとの間に大きな窓を設けて設置する方法、ダイニングの一角にキッチンを据え付ける方法などがある。

太陽光発電(システム)

太陽電池によって太陽光のエネルギーを直接に電力に変換する発電方式をいう。

太陽電池は、一定の物質に光が照射されると伝導電子が増加する現象(光電効果)を利用して電力を得る装置で、光エネルギーを電力に変換する過程で熱や運動エネルギーの媒介を必要としない。
そのため、太陽光発電は、発電時に廃棄物、CO2等の発生がない他、小規模に分散的に運用可能、設置条件の制約が少ない、などの特徴がある。

一方、他の発電方式に比べて高コスト、発電量の変動が大きい(夜間や雨天時は発電できない)、スケールメリットが効かないなどの短所がある。
そこで、太陽光発電と他の発電とを組み合わせて、発電、消費、売電、買電を適切に制御するシステム(太陽光発電システム)が開発・運用されている。

太陽電池

光エネルギーを直接に電力に変える機器。

半導体などが短波長の光に照射されると、その内部の伝導電子が増加するなどの現象が起きる(内部光電効果または光起電効果)。太陽電池は、この現象を利用して直流電流を取り出す機器である。

太陽電池の種類は、その素材や形態によって分類されるが、大別すれば、シリコンを用いるもの、無機化合物を用いるもの、有機化合物を用いるものに分かれる。変換効率、製造コスト、形状などの視点から開発が進められている。

太陽熱温水器

太陽光を熱源にして湯を沸かし、給湯する装置。再生可能エネルギーを利用する機器のひとつで、家屋の屋根などに設置される。太陽熱を直接利用することから、エネルギー変換効率が高いとされる。

太陽熱温水器は、湯を沸かす集熱器と湯を貯める貯湯槽とで構成され、その配置や給湯の方法に応じていくつかの方式がある。

耐用年数

建物、機械、器具などが使用に耐えることのできる年数。材料や構造だけでなく、管理の状態によっても異なる。

また、財務会計においては、減価償却費の算定基準として耐用年数が定められている。これを「法定耐用年数」といい、たとえば住宅用建物の法定耐用年数は、木造が22年、鉄筋コンクリート造鉄骨鉄筋コンクリート造が47年、軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超4mm以下)が27年などとされている。

実際の耐用年数と法定耐用年数とは異なるので、用語の扱いに注意しなければならない。

耐力壁

建築基準法第20条の規定に基づいて、地震力や風圧力による水平方向の力に対抗することができるように、筋かいを入れ、または構造用合板などを張った壁のことを「耐力壁」と呼ぶ。

建築基準法では「建築物は、自重、積載荷重、積雪、地震力、風圧力などに対して安全な構造でなければならない」として、すべての建築物が構造に関する基準を満たすことを要求している(建築基準法第20条第1号、同施行令第3章第1節から第7節の2)。
また、木造3階建てなどの建築物では、特に構造計算により安全性を確認することを義務付けている(建築基準法第20条第2号)。

この建築基準法第20条により、建築物は地震力・風圧力という水平方向の外力に十分に対抗できるような構造を有することが要求されており、この必要性を満たすために筋かいを入れ、または構造用合板等を張った壁を一般に「耐力壁」と呼んでいる。

耐力壁の構造は、建築基準法施行令第46条第4項の表(一)と昭和56年建設省告示第1,100号により詳しく規定されている。
それによれば、例えば在来工法の木造建築物において、柱・・筋かいから構成される壁は耐力壁となる。また枠組壁工法において一定の面材(構造用合板、パーティクルボード、石膏ボードなど)を張った壁は、筋かいがなくとも、耐力壁である。

なお建築物の形状や面積により、どれだけの耐力壁を備えるべきかという基準のことを「必要壁量」といい、この必要壁量の計算方法は建築基準法施行令第46条第4項に規定されている。

この必要壁量の計算方法では、建築物の下方階ほど強度の高い耐力壁を多く備えることが要求されている。これは地震力・風圧力とも下の階にいくほど多くの力がかかり、強い対抗力が必要になるからである。

また建築物の形状については、奥行きの長い建築物ほど多くの力がかかるため、必要壁量も多くなる。このため奥行きの長い建築物では、外壁だけでなく、内部を仕切る内壁(間仕切り壁)も耐力壁にする必要性が生じやすい。

タイル

壁や床に張る小さな板状の建築材料。英語のtile。一般に、正方形で、陶磁器でできている。

素材の質や釉薬(うわぐすり)の有無によって分類され、色は多様、模様が付いたものもある。セメントモルタルによって張り付けるが、防水性に優れ、壁や床を保護するとともに、装飾として用いられることもある。
なお、床材として張り付けるタイルには、アスファルト、プラスチック、ゴムなどでできているものもある。

タイルカーペット

50cm×50cmなどの正方形に加工された小型のカーペット

施工しやすく、汚れた部分の取替えが容易で、床下の配線工事などのための一時的な取り外しにも簡単に対応できるので、主に事務所で多用される。

タウンハウス

2階建ての連棟式住宅のこと。各住戸の敷地は、すべての住戸の所有者が共有していることが多い。

タウンマネジメント

住民・事業主・地権者等が主体的にまちづくりに取り組む手法。

明確な定義はないが、まちづくりをテーマにしていること、ハードとソフトを組み合わせた取り組みであること、住民や事業主が主体となって進めることが特徴である。

取り組むテーマは、魅力に富む環境の創出、美しいまち並みの形成、歴史文化資産の保全、まちのブランド力の形成、安全・安心な地域づくり、良好なコミュニティの形成、地域の伝統・文化の継承など、さまざまである。

中心市街地活性化のために商業事業者を中心にTMO(Town Management Organization)を設立して活性化事業を推進する方法で始まったが、十分な成果を得ることができなかった。その後、その経験を踏まえて、活動領域を商店街振興からまちづくりに拡大し、幅広い市民の参加のもとで活動を展開する取り組みが見られるようになっていった。現在のタウンマネジメントは、このような動きと、従来から展開されていたNPO等を主体とするさまざまなまちづくり活動とを包含した手法である。

なお、類似の用語に「エリアマネジメント」があるが、ほぼ同じ意味である。

高さ制限

建物の高さの限度をいう。

いくつかの種類があるが、大きくは、建物全体の高さの制限と、相隣関係などによる斜めの線による制限(斜線制限)に分かれる。

建物全体の高さの制限には、都市計画で定められた、1.低層住居専用地域における高さの限度、2.高度地区における高さの最高限度または最低限度がある。

斜線制限には、1.道路高さ制限、2.隣地高さ制限、3.北側高さ制限、4.日影規制がある。詳しくは「斜線制限」参照。

その適用の有無や具体的な数値などは、用途地域等に応じて異なるため、個々の都市計画等に照らして確認しなければならない。

託児所(保育所)併設マンション

託児や保育のための施設を設置したマンション。マンション居住者だけでなく、周辺地区の住民の必要にも応えるべく設置されることが多い。

託児や保育のための施設には、認可を受けて設置される認可保育所、認定こども園などのほか、認可を受けないで設置される保育所、幼児託児所、児童預かり施設、キッズルームなどがあり、その業務内容や運営形態は多様である。託児所(保育所)併設マンションに設置される施設も同様にさまざまである。

なお、大規模なマンションの建設に当たって一定の保育所等を設置する場合には、容積率緩和の特例措置の対象となることがある。また、大規模マンションの建設に際して、市町村から保育所等の設置を要請されることがある。

宅地(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業法では、宅地の定義を次のように定めている(宅地建物取引業法第2条第1号、施行令第1条)。

1.用途地域内の土地について
都市計画法で定める12種類の用途地域内に存在する土地は、どのような目的で取引する場合であろうと、すべて宅地建物取引業法上の「宅地」である。
従って、例えば用途地域内に存在する農地を、農地として利用する目的で売却する場合であっても、宅地建物取引業法では「宅地」として取り扱う。

2.用途地域内の道路・公園・河川・広場・水路の用地について
用途地域内の土地のうちで、5種類の公共施設の用に供されている土地については、「宅地」から除外する。具体的には、道路・公園・河川・広場・水路という5種類の公共施設の用地は「宅地」から除外される(ただし下記の補足1を参照のこと)。

3.建物敷地に供する目的で取引の対象とされた土地について
建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地は、土地の原状の用途に関係なく、すべて宅地建物取引業法上の「宅地」である。
従って、例えば土地登記簿上の地目が「田」「畑」「池沼」「山林」「原野」である土地であっても、その土地を、建物の敷地に供する目的で取引するならば、宅地建物取引業法上はすべて「宅地」として取り扱われる。
これについては、土地の所在がどこであろうと適用される判断基準である。従って、都市計画区域外の山林や原野を、建物の敷地に供する目的で取引する場合には、その山林や原野は「宅地」として取り扱われる。

(補足1)用途地域内の道路・公園・河川・広場・水路の用地を、建物の敷地に供する目的で取引の対象とする場合について:
例えば、用途地域内の道路用地である土地を、建物の敷地に供する目的で取引する場合には、上記3.の基準が適用される。従って、この場合は、用途地域内の道路用地が、宅地建物取引業法上の「宅地」に該当することになる。

宅地(不動産登記法における~)

土地登記簿の最初の部分(表題部という)には土地の「地目」が記載されている。地目は、「田」「畑」「宅地」「山林」「原野」など全部で21種類に限定されており、ここでいう「宅地」とは「建物敷地およびその維持もしくは効用を果たすための土地」と説明されている。

なお、現況が明らかに「宅地」であるにもかかわらず、登記簿上の地目が「田」や「畑」となっている場合には、登記所に対して「地目の変更登記」を申請することが可能な場合もある。

宅地造成

土地を宅地としての機能を備えたものとするために、切土盛土等による斜面の平坦化などの工事、擁壁の設置工事、排水施設の設置工事、地盤の改良工事などを行なうこと。こうして形成された宅地は「造成地」と呼ばれる。

宅地造成のための工事のうち一定のものは、「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」に基づき、着手前に都道府県知事の許可を得なければならない。(詳細は「宅地造成等工事規制区域」を参照)

宅地造成工事規制区域

宅地造成に伴い災害が生ずる恐れの著しい区域として、都道府県知事が指定した区域。

2022年に改正される前の「宅地造成等規制法」に基づく制度で、改正後の「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」によって、「宅地造成等工事規制区域」に移行した。

区域内で一定の宅地造成工事に着手する前には許可が必要なことは改正前と同じである。また、区域指定の基準なども、おおむね従前どおりである(詳細は「宅地造成等工事規制区域」を参照)。

宅地造成工事の許可

宅地造成工事規制区域内で一定の宅地造成工事に着手する前に必要な都道府県知事の許可。2022年に改正される前の「宅地造成等規制法」に基づく制度で、改正後の「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」によって、宅地造成等工事規制区域内での宅地造成工事に対する許可制度に移行した。

改正後の許可の基準等は、おおむね改正前と同じである(詳細は「宅地造成等工事規制区域」を参照)。

宅地造成等規制法

宅地造成により、崖崩れや土砂の流出が起きることがないよう、崖崩れや土砂の流出の危険性が高い区域を指定し、宅地造成工事を規制する法律。

宅地造成等規制法は1961年に制定されたが、2022年に「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)」に改正され、宅地造成に加えて、盛土等や土石の堆積の工事に対しても規制することとされた(「盛土規制法」を参照)。

宅地造成等工事規制区域

宅地造成盛土等・土石の堆積に伴い災害が生ずるおそれが大きいとして指定された区域。「宅地造成及び特定盛土等規制法」に基づき、都道府県知事が指定する。

指定されるのは、市街地、市街地になろうとする土地、集落の区域(市街地等区域)であって、盛土等が行なわれている状況、今後の盛土等が行なわれる可能性、盛土等に伴う災害の発生状況等を踏まえ、盛土等に伴う災害が発生する蓋然性があると判断される区域である。

宅地造成等工事規制区域内で行なう宅地造成・盛土等・土石の堆積に対しては、次のような規制が適用される。

ア)次の行為を伴うときには、工事に着手する前に都道府県知事の許可を得なければならない。

(1)土地の形質の変更
i)盛土・切土によって一定の高さを超える崖を生じるもの

ii)盛土・切土する土地の面積が一定値を超えるもの

iii)宅地造成以外の盛土で、高さが一定値を超えるもの

(2)土石の一時堆積(一定期間経過後に搬出することを前提とした堆積)

i)堆積する土地の面積が一定値を超えるもの

ii)堆積高が一定値を超えるもの

イ)工事の許可を得るためには、工事が、地盤の安定性確保、盛土等の形状、擁壁の設置、排水施設の設置、崖面等の侵食防止に関する技術基準に適合すること、工事を完成するために必要な能力があることなどの要件を満たさなければならない。 

ウ)許可された工事について、施工状況を定期的に報告し、一定の工事について施工中に中間検査を受け、工事完了時に完了検査を受けなければならない。

エ)区域内の土地については、土地所有者等は、宅地造成・盛土等・土石の堆積に伴い災害が生じないよう安全な状態に維持する責務がある。また、災害防止のため必要なときは、土地所有者等のほか、原因行為者に対しても是正措置等が命じられる。

宅地建物取引業

宅地建物取引業とは「宅地建物の取引」を「業として行なう」ことである(法第2条第2号)。
ここで「宅地建物の取引」と「業として行なう」とは具体的には次の意味である。

1.「宅地建物の取引」とは次の1)および2)を指している。
1)宅地建物の売買・交換
2)宅地建物の売買・交換・賃借の媒介代理

上記1.の1)では「宅地建物の貸借」が除外されている。このため、自ら貸主として賃貸ビル・賃貸マンション・アパート・土地・駐車場を不特定多数の者に反復継続的に貸す行為は、宅地建物取引業から除外されているので、宅地建物取引業の免許を取得する必要がない。
またここでいう「宅地」とは、宅地建物取引業法上の宅地を指す(詳しくは「宅地(宅地建物取引業法における~)」を参照のこと)。

2.「業として行なう」とは、宅地建物の取引を「社会通念上事業の遂行と見ることができる程度に行なう状態」を指す。具体的な判断基準は宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方の「第2条第2号関係」に記載されているが、主な考え方は次のとおりである。
1)取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行なおうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
2)取引の反復継続性
反復継続的に取引を行なおうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行なおうとするものは事業性が低い。

宅地建物取引業協会(宅建協会)

宅地建物取引業者が設立した業界団体の一つで、都道府県ごとに設立されている。

業界団体の設立は本来自由であるが、宅地建物取引業法は、宅地建物取引業の適正な運営の確保と健全な発達を図るため、宅地建物と取引者が各都道府県ごとに「宅地建物取引業協会」と称する社団法人を設立することができるとし、併せて全国を単位とする宅地建物取引業連合会および名称使用制限を設けている(同法74・75条)。

宅地建物取引業者

宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。

宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。
なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。

宅地建物取引業者名簿

宅地建物取引業者に関する一定の事項を登載した名簿のこと。
都道府県知事または国土交通大臣は、下記の1.から8.の事項を登載した宅地建物取引業者名簿を作成しなければならない(宅地建物取引業法第8条)(※末尾参照)。

1.免許証番号・免許を受けた年月日(法第8条第2項第1号)
2.商号または名称(法第8条第2項第2号)
3.事務所の名称と所在地(法第8条第2項第5号)
4.宅地建物取引業者が法人である場合には、その法人の役員の氏名および事務所の代表者の氏名(法第8条第2項第3号)
5.宅地建物取引業者が個人である場合には、その者の氏名および事務所の代表者の氏名(法第8条第2項第4号)
6.事務所に置かれる専任の宅地建物取引士の氏名(法第8条第2項第6号)
7.宅地建物取引業以外の事業を営んでいるときは、その事業の種類(施行規則第5条第2号)
8.過去に指示処分(法第65条第1項、第3項)または業務停止処分(法第65条第2項、第4項)を受けた場合には、その内容および処分の年月日(施行規則第5条第1号)

上記2.から7.までは免許申請書の記載事項(法第4条第1項)と同じである。
また上記2.から6.に関して変更があったときは、宅地建物取引業者は免許権者である知事または大臣に対して、宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更の届出(法第9条)を行なう必要がある。

※宅地建物取引業者が、不動産投資信託等に関して取引一任代理等の認可を国土交通大臣から得ている場合にはその旨も宅地建物取引業者名簿に登載される(法第50条の2、法第8条第2項第7号)。
大臣と知事では、宅地建物取引業者名簿を作成する範囲が異なっている。
国土交通大臣は、国土交通大臣が免許を与えた宅地建物取引業者の名簿のみを作成する。
各都道府県知事は、その都道府県知事が免許を与えた宅地建物取引業者の名簿と、その都道府県内に本店を置く国土交通大臣が免許を与えた宅地建物取引業者の名簿を作成する(法第8条第2項本文)。

宅地建物取引業者名簿等の閲覧

宅地建物取引業法では、都道府県知事または国土交通大臣は、宅地建物取引業者名簿などの一定の書類を広く一般の閲覧に供しなければならないと定めている(宅地建物取引業法第10条)。

これは、宅地建物取引業者の業歴、信用状況、行政処分歴などを公開することにより、宅地建物の取引の円滑化を図る制度であるということができる。具体的には次のとおり。

1.閲覧できる書類の範囲
次のように広い範囲の書類が閲覧対象とされている(法第10条)
1)宅地建物取引業者名簿
2)免許申請書
3)免許申請書の添付書類
4)宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更の届出に係る書類

上記1)には指示処分、業務停止処分の履歴が登載されており、行政処分歴が把握できる。
また上記3)には、貸借対照表および損益計算書(施行規則第1条の2第6号)、資産に関する調書 (施行規則第1条の2第7号)などの財務書類が含まれており、信用状況の把握に役立つ。

2.閲覧の方法
誰でも閲覧できることとされている。具体的な閲覧の方法は、閲覧場所ごとに閲覧規則を定めて規定している(施行規則第5条の2)。これにより閲覧可能な時間帯、閲覧申請書の記入方法などが個別に定められている。

3.閲覧場所
宅地建物取引業者が都道府県知事から免許を受けた場合(知事免許)は次の1)の場所で、国土交通大臣から免許を受けた場合(大臣免許)は次の2)の場所で、それぞれ閲覧できる。

1)知事免許の場合
各都道府県の宅地建物取引業を所管する部署において、上記1.の書類が閲覧できる。
例えば、東京都知事免許の宅地建物取引業者であれば、東京都庁の宅地建物取引業所管課で上記1.の書類が閲覧できる。
2)大臣免許の場合
この場合には次の2ヵ所で上記1.の書類が閲覧できる。
a)その宅地建物取引業者の本店の所在地を管轄する都道府県の宅地建物取引業所管課
b)全国の国土交通省地方整備局の宅地建物取引業所管課(注)

例えば、大阪府に本店・東京都に支店を置く大臣免許の宅地建物取引業者であれば、大阪府庁および全国の地方整備局において上記1.の書類が閲覧できることになる。
(ただ、し支店所在地である東京都庁では閲覧できないことに注意)

(注)地方整備局とは、「北海道開発局」「東北地方整備局」「関東地方整備局」「北陸地方整備局」「中部地方整備局」「近畿地方整備局」「中国地方整備局」「四国地方整備局」「九州地方整備局」「沖縄総合事務局」のこと。

宅地建物取引業者名簿の登載事項の変更の届出

都道府県知事または国土交通大臣は一定の事項を登載した宅地建物取引業者名簿を作成するが、この名簿の登載事項のうち一部の登載事項について変更があったときは、宅地建物取引業者は30日以内に変更の届出を行なう義務を負う。

具体的には次のとおり。

1.変更の届出を行なうべき事項
次の1)から5)の事項に変更が生じたとき、宅地建物取引業者は変更の届出を行なう必要がある(法第9条)(※参照)。
1)商号または名称(法第8条第2項第2号)
2)事務所の名称と所在地(法第8条第2項第5号)
3)宅地建物取引業者が法人である場合には、その法人の役員の氏名および事務所の代表者の氏名(法第8条第2項第3号)
4)宅地建物取引業者が個人である場合には、その者の氏名および事務所の代表者の氏名(法第8条第2項第4号)
5)事務所に置かれる専任の宅地建物取引士の氏名(法第8条第2項第6号)
※●宅地建物取引業以外の事業を営んでいるとき、その兼業している事業の種類(施行規則第5条第2号)については、変更の届出を行なう義務がない。
●役員・事務所の代表者・専任の宅地建物取引士の氏名の変更があったときは届出の必要があるが、住所の変更があったときは届出の必要がない。
●事務所の新設・移転・廃止は、「事務所の名称、所在地」の変更(法第8条第2項第5号)に該当するので、新設・移転・廃止を行なってから30日以内に届出が必要である。
●法人の場合、資本金の額や定款は、そもそも宅地建物取引業者名簿の登載事項ではない。従って資本金の額の変更や定款変更は、届出が不要である。

2.届出期間・届出の相手方
変更が生じてから30日以内に、免許権者(知事免許ならばその知事、大臣免許ならば国土交通大臣)に対して、宅地建物取引業者名簿登載事項変更届出書(施行規則様式第3号)を提出しなければならない(施行規則第5条の3第1項)。
この際に、役員・事務所の代表者・専任の宅地建物取引士の増員・交代については、成年被後見人および被保佐人に該当しない旨の登記事項証明書を提出するなど、さまざまな添付書類が必要となる場合がある(施行規則第5条の3第2項)。

宅地建物取引業初任従業者教育研修

(公財)不動産流通推進センター等が実施する従業者向けの研修のこと。宅地建物取引業務に必要な法律、制度等を実務に即して基礎から体系的に習得するためもので、受講資格要件はない。

講座内容は、3ヵ月間の通信講座と2日間のスクーリングのいずれか一方を選んで受講するというものである。

宅地建物取引業法

宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。

この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。

宅地建物取引業法施行規則第15条の5の2で定める場所

宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

宅地建物取引業法の解釈・運用に関して、国が定めた包括的なガイドラインのこと。

従来、宅地建物取引業法の解釈・運用については、国(旧建設省)が通達・行政実例により詳細かつ統一的な基準を定めてきたが、2000(平成12)年4月1日付けで「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第87号)が施行されたことにより、宅地建物取引業に係る事務は都道府県の自治事務等となった。
このため、2000(平成12)年4月1日をもって従来旧建設省から各都道府県に発出された宅地建物取引業法に関する通達等は一律廃止された。

しかし、これでは宅地建物取引業法の解釈・運用が国民から見て極めてわかりにくくなると考えられたので、2000(平成12)年7月25日付で建設省不動産業課(現・国土交通省総合政策局不動産業課)において「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を策定し、各都道府県に参考通知したものである。
なお、宅地建物取引業法等に改正があったときは、この「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」もその都度改正され、各都道府県に参考通知されている。

宅地建物取引業保証協会

宅地建物取引業により生じた債権の弁済(弁済業務)、債務連帯保証(一般保証業務)、苦情の解決、研修などを行なう社団法人(現在は、公益社団法人または一般社団法人)で、国土交通大臣の指定したものをいう。

その社員は、営業保証金の供託を必要としないかわりに、弁済業務保証金分担金(主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円)を納付しなければならない。

現在指定を受けているのは、(公社)全国宅地建物取引業保証協会および(公社)不動産保証協会の2つの団体である。

宅地建物取引士

宅地建物取引士資格試験に合格し、都道府県知事の登録を受けて、宅地建物取引士証の交付を受けた者のこと。

宅地建物取引士は、一定以上の知識・経験を持つ者として公的に認められた者である。宅地建物取引業者は、事務所ごとに従事者5名に対して1名以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければならない(詳しくは宅地建物取引士の設置義務へ)。

宅地建物取引において特に重要な次の3つの業務は、宅地建物取引士だけが行なうことができるとされている(宅地建物取引士ではない者はこれらの業務を行なうことができない)。

1.重要事項説明
2.重要事項説明書への記名・押印
3.37条書面への記名・押印

宅地建物取引士となるためには、具体的には次の1)から5)の条件を満たす必要がある。

1)宅地建物取引士資格試験に合格すること
宅地建物取引業に関して必要な知識に関する資格試験である宅地建物取引士資格試験に合格することが必要である。なお、一定の要件を満たす者については宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度がある。
2)都道府県知事に登録を申請すること
この場合、宅地建物取引に関して2年以上の実務経験を有しない者であるときは、「登録実務講習」を受講し修了する必要がある。
3)都道府県知事の登録を受けること
登録を受けるには一定の欠格事由に該当しないことが必要である。
4)宅地建物取引士証の交付を申請すること
宅地建物取引士証の交付を申請する日が宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年を超えている場合には、都道府県知事の定める「法定講習」を受講する義務がある。
5)宅地建物取引士証の交付を受けること
氏名、住所、生年月日、有効期間の満了する日等が記載されている宅地建物取引士証の交付を受けて初めて正式に宅地建物取引士となる。

宅地建物取引士は、宅地建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地建物の流通に資するよう公正誠実に業務を処理するほか、信用・品位を害するような行為をしないこと、必要な知識・能力の維持向上に努めることとされている。

宅地建物取引士資格試験の一部免除

宅地建物取引士資格試験は、宅地建物取引業法第16条にもとづき、都道府県知事が実施する資格試験である。この試験で、一定の講習(「登録講習」)を受けた者については、試験の一部を免除する制度が設けられている(宅地建物取引業法第16条第3項)。
これを宅地建物取引士資格試験の一部免除と呼んでいる。

一部免除を受けるために必要となる「登録講習」は(公財)不動産流通推進センターをはじめとする複数の登録講習機関が実施している。
「登録講習」を受講するためには、宅地建物取引業に従事していることが要件となっている(2004(平成16)年までの「指定講習」を受講するためには「通算して3年以上の宅地建物取引業務に関する実務経験を有すること」が必要だったが、2005(平成17)年からは宅地建物取引業に従事しているだけで受講できることになった)。

「登録講習」は通信講座およびスクーリングから成り立っている。
スクーリングの最終日に登録講習修了試験が実施され、この試験に合格すると「登録講習修了者証明書」が交付される。この証明書によって、証明書の公布日から3年以内に実施される宅地建物取引士資格試験の一部免除の適用を受けることができる。

なお一部免除を受ける者(即ち証明書の交付を受けた者)については次の要領で試験が実施される。

1.試験時間は1時間50分(通常の受験者より10分短い)
2.5問免除される結果、45問4肢択一の試験問題
3.上記の2.の45問は、通常の受験者と同一の問題である
4.免除される5問の範囲は「宅地及び建物の需給に関する法令および実務に関すること」および「土地の形質、地積、地目および種別並びに建物の形質、構造および種別に関すること」である。過去の出題から分析すれば、具体的には「統計・景品表示・住宅金融公庫・土地・建物」が免除されるという意味である(宅地建物取引業法施行規則第10条の5、同施行規則第8条第1号および第5号)。
5.合格点は通常の受験者と同一である。例えば、その年の通常の受験者の合格点が33点であるときは、指定講習修了者は45問中28問に正解すれば合格することとなる。 

宅地建物取引士資格試験の試験内容

宅地建物取引士資格試験は、4肢択一式の50問(50点満点)が出題される。
実施年によって多少の変化があるが、おおむね次のような科目構成となっている。

1.権利の変動(民法など)…15問
2.法令上の制限(行政法規)…10問
3.宅地建物取引業法…16問
4.税法…3問
5.その他…6問

合格ラインは全国一律で、実施年ごとに異なるが、50問中、32~34問以上正解とされることが多い。毎年、試験実施後に公開されている。

宅地建物取引士証

都道府県知事の行なう宅地建物取引士資格試験に合格し、都道府県知事の登録を受けた者は、登録をしている都道府県知事に対して申請することにより、宅地建物取引士証の交付を受けることができる(宅地建物取引業法第22条の2)。

宅地建物取引士証は顔写真付のカードであり、氏名、住所、生年月日、有効期間の満了する日等が記載されている。
有効期間は5年であり、申請により更新することができる(宅地建物取引業法第22条の3)。

取引士証の交付を受ける際に、取引士証の交付を申請する日が宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年を超えている場合には、「法定講習」を受講する義務が生じるので注意が必要である(宅地建物取引業法第22条の2第2項)。

宅地建物取引士証の提示義務

宅地建物取引士は、不動産取引の当事者から請求があったときは、宅地建物取引士証を必ず提示しなければならない(宅地建物取引業法第22条の4)。

また、宅地建物取引士は、不動産取引の当事者に重要事項説明を行なう際には、説明の相手方に対して、宅地建物取引士証を必ず提示しなければならない(宅地建物取引業法第35条)。

宅地建物取引士の設置義務

宅地建物取引業者が、その事務所等に、「成年の専任の宅地建物取引士」を置かなければならないという義務のこと。

1.取引士を置くべき場所と人数
最低設置人数は、その場所の種類で異なることとされており、具体的には次のとおり。

1)「事務所」に設置すべき成年の専任の宅地建物取引士の最低設置人数は、事務所の「業務に従事する者」(以下「従事者」という)の数の5分の1以上である。
例えば、事務所における従事者が11人ならば、その5分の1は2.2人であるので、成年の専任の宅地建物取引士を3人(またはそれ以上)置かなければならない。
なお従事者の範囲については、詳細なガイドラインが設けられている(別項目の「従事者」を参照のこと)。
2)「事務所以外で専任の宅地建物取引士を置くべき場所」に設置すべき成年の専任の宅地建物取引士の最低設置人数は、その場所の従事者の人数に関係なく、1名以上である。

2.置くべき取引士の要件
上述の1.において置くべき宅地建物取引士は「成年」かつ「専任」でなければならないとされている。

ここで「専任」とは、国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方によれば、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤(宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう)して、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいうと解説されている。
ただし、当該事務所が宅地建物取引業以外の業種を兼業している場合等で、当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行なわれていない間に他の業種に係る業務に従事することは差し支えないものと解説されている。

また、「成年」とは満20歳に達したことをいうが、民法第753条により未成年でもいったん結婚すると成年に達したものとみなされる(詳しくは別項目の「成年」へ)。

3.置くべき取引士の要件に関する特例措置
役員(個人業者の場合には業者本人)が、宅地建物取引士であるときは、その者が「成年の専任の宅地建物取引士」とみなされるという特例措置が設けられている。

従って、例えば、ある宅地建物取引業者において、18歳の役員である宅地建物取引士(婚姻はしていない者)がいて、主として専らある事務所の業務に従事している場合には、その役員がその事務所の「成年の専任の宅地建物取引士」とみなされることになる。

なお、ここでいう「役員」とは、取締役よりも広い範囲を指している。具体的には「役員とは、業務を執行する社員、取締役、執行役、またはこれらに準ずる者」とされている。ちなみに監査役はここでいう「役員」から除外されている。

4.設置義務違反の是正措置
上述の1.の最低設置人数に違反する状態になった場合には、宅地建物取引業者は早急に是正しなければならない。
具体的には、既存の事務所等がこの成年の専任取引士の設置義務に違反する状態となったときは、2週間以内に設置義務を満たす必要があるとされている。

宅地建物取引士の登録

宅地建物取引士資格試験に合格した者が、宅地建物取引士として業務に従事するのにふさわしい資格等を有していることを都道府県知事が確認する手続きのこと(宅地建物取引業法第18条、第19条)。具体的には次のとおりである。

1.登録を申請する相手方
宅地建物取引士資格試験に合格した者が、試験を行なった都道府県知事に対して登録を申請する(宅地建物取引業に従事しようとする都道府県の知事ではないことに注意)。

2.登録を受けるための要件
宅地建物取引士の登録を受けるには次の1)と2)の要件を満たすことが必要である。

1)宅地建物の取引に関して2年以上の実務経験を有すること
宅地建物取引業者の下で2年以上勤務していた経験(または免許を受けた宅地建物取引業者としての2年以上の経験)が必要である。
ただし、(公財)不動産流通推進センターが実施する実務講習を受講し修了することにより、この実務経験を有するものと同等以上の能力を持つ者として認定されることができる。
(詳しくは、実務経験実務講習へ)
2)一定の不適格な事情(欠格事由)に該当しないこと
成年被後見人であることなどの一定の不適格な事情(欠格事由)がある者は、登録を受けることができないとされている。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の基準へ)

3.登録の申請の方法
宅地建物取引士資格試験に合格した者が、試験を行なった都道府県知事に対して、一定の事項を記載した登録申請書を提出する(法第19条第1項、施行規則第14条の3、施行規則様式第5号)。このとき実務経験証明書などの一定の書類の添付が必要である(施行規則第14条の3)。

4.宅地建物取引士資格登録簿への登載
登録申請書を提出された都道府県知事は、上記2.の要件を満たしていることを確認した後に、宅地建物取引士資格登録簿に一定の事項を遅滞なく登載する(法第19条第2項)。
これにより宅地建物取引士の登録が完了する。
(詳しくは宅地建物取引士資格登録簿へ)

5.変更の登録
宅地建物取引士資格登録簿の登載事項(氏名、住所など)に変更が生じた場合には、登録を受けている本人が遅滞なく変更を申請しなければならない(法第20条)。これを「変更の登録」と呼んでいる。
(詳しくは変更の登録(宅地建物取引士の~)へ)

6.登録の移転
宅地建物取引士の登録を受けた者は、一定の事情が発生したときは、他の都道府県知事に対して登録の移転を申請することが可能である。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の移転へ)

7.死亡等の届出
宅地建物取引士の登録を受けた者について、死亡等の事情が発生した場合には、登録を受けている都道府県知事への届出が必要である。
(詳しくは死亡等の届出へ)

8.登録の消除
上記7.の死亡等の届出があった場合やその他の場合には、登録を受けている都道府県知事は、宅地建物取引士の登録を消除しなければならない。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の消除へ)

9.登録の有効期間
有効期間の制限はないので、一度登録すれば生涯にわたって有効である。ただし、上記8.により消除される場合あり。

10.宅地建物取引士との関係
宅地建物取引士の登録を受けた者は、宅地建物取引士証の交付を受けることによって、初めて宅地建物取引士となることができる(宅地建物取引士の登録を受けただけでは、まだ宅地建物取引士ではない)。

宅地建物取引士の登録の移転

宅地建物取引士の登録を受けている者は、登録をしている都道府県以外の都道府県に所在する宅地建物取引業者事務所において、業務に従事する(または業務に従事しようとする)ときは、登録を移転することができる。

宅地建物取引士の登録は、試験を行なった都道府県知事から登録を受けることとされている。しかし、宅地建物取引士の登録を終えた後に、他の都道府県内の事務所で勤務する(または勤務する予定の)場合には、登録を移転することが可能とされている(宅地建物取引業法第19条の2)。具体的には次のとおり。

1.登録を移転できる場合
登録をしている都道府県以外の都道府県に所在する事務所において、業務に従事する(または業務に従事しようとするとき)ことが必要である。

例えば東京都知事の登録を受けている者が、大阪府知事免許の宅地建物取引業者に勤務する(または勤務しようとする)場合には、登録の移転を申請して、大阪府知事の登録を受けることができる。また、東京都知事の登録を受けている者が、国土交通大臣免許の宅地建物取引業者(本店は大阪府、支店が兵庫県と京都府)の兵庫県の支店に勤務する場合には、登録の移転を申請して、兵庫県知事の登録を受けることができる。
登録の移転をするには、勤務する(または勤務する予定の)事務所が登録を受けた都道府県以外にあることが必要である。従って、住所を変更したが、勤務地は登録を受けた都道府県のままであるという場合には、登録の移転はできない。

ちなみに登録の移転は任意であるので、他の都道府県の事務所に勤務するときは必ず登録を移転しなければならないということではない。

2.登録を移転する方法
登録を受けている本人が、自分が勤務する(または自分が勤務する予定の)事務所を管轄する都道府県知事に対して、登録の移転を申請する。ただし実際の手続きとしては、現に登録を受けている都道府県知事を経由して登録の移転を申請する。

例えば、東京都知事の登録を受けている者が、大阪府知事免許の宅地建物取引業者に勤務する予定である場合には、大阪府知事に対して登録の移転を申請する(実際には東京都知事に登録移転申請書を提出する。ただし登録移転申請書の冒頭に記載する宛先は大阪府知事とする)。

3.提出する書類
登録移転申請書(施行規則様式第6号の2)に必要事項を記載して提出する(施行規則第14条の5)。

4.登録の移転が禁止される場合
宅地建物取引士としてすべき事務の禁止の処分を受けている場合(法第68条第2項、第4項)には、事務の禁止の期間が終了するまでは、登録の移転をすることができない(法第19条の2但書)。

宅地建物取引士の登録の基準

宅地建物取引士資格試験の合格者が、宅地建物取引士の登録を受けるにあたって満たすべき基準のこと。

宅地建物取引士資格試験の合格者が、宅地建物取引士の登録を受けるためには、一定の不適格な事情(登録の欠格事由)に該当しないことが必要とされている(法第18条第1項各号)。
具体的には、次の1.から5.の欠格事由に該当しない場合にのみ登録を受けることができる。

1.成年被後見人被保佐人、破産者で復権を得ない者(法第18条第1項第2号、第3号)
これらの者は登録を受けることができない。

2.免許取消し処分を受けた宅地建物取引業者
悪質な違反行為(法第66条第1項第8号、第9号)を犯したことを理由として、免許の取消処分を受けた個人業者、免許の取消処分を受けた法人の役員は、当該免許の取消処分の日から5年間は、宅地建物取引士の登録を受けることができない(法第18条第1項第4号)。

このほか、役員の連座(第4号の2)、免許取消し処分を不当にまぬがれるための廃業等(第4号の3)についても詳細な規定が設けられている。

3.懲役刑、禁固刑、一定の罪に対する罰金刑を受けた者
一定の刑事罰を受けた経歴がある場合には、刑の執行を終えた日(または刑の執行を受けることがなくなった日)から5年間は、登録を受けることができない(法第18条第1項第5号、第5号の2)。

4.登録消除処分を受けた者等
一定の悪質な違反行為(法第68条の2第2号、第3号、第4号など)を犯したことを理由として、登録の消除の処分を受けた個人は、当該登録の消除の処分の日から5年間は、宅地建物取引士の登録を受けることができない(法第18条第1項第6号)。

このほか、登録消除処分を不当にまぬがれる目的で登録の消除を申請した場合(第7号)、事務禁止処分の期間中に登録の消除を申請した場合(第8号)などに関する詳細な定めがある。

5.営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者(法第18条第1項第1号)
未成年者が登録を受けるためには「宅地建物取引業の営業に関して成年者と同一の能力を有すること」が必要とされる。
「成年者と同一の能力を有する」とは、「法定代理人より営業を許可されていること」または「婚姻により成年と同一の能力を獲得していること」を指している。
(詳しくは未成年者へ)

宅地建物取引士の登録の消除

宅地建物取引士の登録を受けている者について一定の事情が発生した場合に、都道府県知事が宅地建物取引士の登録を消除すること。

宅地建物取引士資格試験の合格者が、宅地建物取引士として業務に従事するためには、その前提条件として都道府県知事より宅地建物取引士の登録を受けることが必要である(宅地建物取引業法第22条の2第1項、第18条第1項)。この登録を受けた場合には、氏名、住所等の一定の事項が宅地建物取引士資格登録簿に登載される(法第18条第2項)。

このような宅地建物取引士の登録を受けた者について一定の事情が発生した場合には、届出により、または知事の職権により、宅地建物取引士の登録が消除される(法第22条、法第68条の2)。その場合には、再び登録を受けない限り、宅地建物取引士として業務に従事することはできない(法第22条の2により、登録がない者は宅地建物取引士証の交付を受けることができないため)。
登録が消除されるのは次の場合である。

1.本人から登録の消除の申請があったとき(法第22条第1号)
宅地建物取引士の登録は一度登録すれば生涯にわたり有効であるが、本人の意思により登録を消除することも可能である。

2.法第21条の届出(死亡等の届出)があったとき(法第22条第2号)
死亡等の届出が提出された場合、知事はその届出に基づいて登録を消除しなければならない(詳しくは死亡等の届出へ)。

3.死亡したとき
死亡の事実が判明したときは、都道府県知事は職権により登録を消除しなければならない。
本来は、相続人が上記2.の「死亡等の届出」(法第21条)を提出すべきであるが、この届出がない場合であっても、知事は職権により登録を消除しなければならない(法第22条第3号)。

4.死亡以外の理由で、法第21条の届出(死亡等の届出)を提出すべき事由が発生したとき(法第22条第3号、法第68条の2第1項第1号、法第68条の2第2項第1号)
死亡以外の理由で「死亡等の届出」を提出すべき事由が発生した場合(すなわち法第18条第1項第1号から第5号の2までの登録の欠格事由が生じた場合)については、上記3.と同様の扱いである。
従って、知事に対してその旨の届出が提出されないときでも、知事は職権により登録を消除しなければならない。
(登録の欠格事由について詳しくは宅地建物取引士の登録の基準へ)

5.宅地建物取引士資格試験の合格が取消されたとき(法第22条第4号、法第17条第1項、第2項)

6.不正の手段により宅地建物取引士の登録を受けたとき(法第68条の2第1項第2号、第2項第2号)

7.不正の手段により宅地建物取引士証の交付を受けたとき(法第68条の2第1項第3号)

8.法第68条第1項各号の事由(指示処分の対象となる事由)に違反し、特に情状が重いとき(法第68条の2第1項第4号)

9.法第68条第2項・第4項にもとづく事務の禁止の処分を受けて、その事務の禁止の処分に違反したとき(法第68条の2第1項第4号)

10.宅地建物取引士証の交付を受けていない者が、宅地建物取引士としてすべき事務を行ない、情状が特に重いとき(法第68条の2第2項第3号)

上記5.から10.までの場合には、知事は職権により登録を消除しなければならない。
また上記6.から10.までは、宅地建物取引士としての不正行為・不当行為(法第68条第1項第2号、第3号、第4号)などがあったことに由来する知事の監督処分である。このような意味で、6.から10.までの登録消除を、特に「登録消除処分」と呼ぶことがある。

宅地建物取引主任者

宅地建物取引士」の従前の名称。平成27(2015)年4月1日に改称された。

宅地建物取引士資格試験

宅地建物取引業法第16条第1項にもとづき、都道府県知事が実施する資格試験。宅地建物取引業に関して必要な知識について行なわれる試験である。

年齢、学歴、宅地建物取引業に関する実務経験などによる受験資格の制限は一切ないので、誰でも受験することができる(ただし試験を受けようとする都道府県内に居住していることが条件となっている場合が多い)。

なお、一定の実務経験を有し、登録講習機関が実施する講習(登録講習)を受けた者については、試験の一部を免除する制度が設けられている(宅地建物取引業法第16条第3項)。

宅地建物取引士資格登録簿

宅地建物取引士の登録を受けた者に関して、都道府県知事が作成した登録簿のこと。

宅地建物取引士となるためには、その前提として、宅地建物取引士の登録を受けることが必要とされている(宅地建物取引業法第18条第1項)。
この宅地建物取引士の登録を受けた者について、都道府県知事が作成した登録簿が宅地建物取引士資格登録簿である(宅地建物取引士資格登録簿の様式は施行規則様式第4号に規定されている)。

1.宅地建物取引士資格登録簿の登載事項
宅地建物取引士資格登録簿には、宅地建物取引士の登録を受けた者に関する次の事項が登載される(法第18条第2項、施行規則第14条の2)。
1)氏名
2)生年月日
3)住所
4)本籍(日本の国籍を有しない場合は、その者の国籍)
5)性別
6)試験の合格年月日および合格証書番号
7)実務経験を有する者である場合は、登録申請時現在の実務経験の期間、その内容、従事していた宅地建物取引業者の商号(または名称)と免許証番号
8)実務講習の修了者である場合は、修了認定の年月日
9)宅地建物取引業者の業務に従事している場合は、当該宅地建物取引業者の商号(または名称)および免許証番号

2.宅地建物取引士資格登録簿の登載事項の変更
登録簿に登載された上記1から9の事項について変更が生じた場合には、登録を受けた者は遅滞なく変更登録申請書を提出しなければならない(法第20条、施行規則第14条の7、施行規則様式第7号)。これを「変更の登録」と呼んでいる。

具体的には、下記の4つの事項について変更が生じれば、変更登録申請書を遅滞なく提出する必要が生じることになる
1)氏名
2)住所
3)本籍
4)宅地建物取引業者の業務に従事している場合は、当該宅地建物取引業者の商号(または名称)および免許証番号

宅配ボックス・宅配ロッカー

不在時に荷物などを受け取るための設備。配達人がロッカーに荷物を入れると鍵がかかり、荷宛人は暗証番号や認証カードを用いて受け取る。

宅配ボックスは、一般に、マンションの共用部分に設置されている。

多自然川づくり

河川を、自然の営みを視野に入れて管理する手法。河川の改修や維持管理において、自然メカニズムを可能な限り活用し、地域の生活や歴史文化との調和、生物の生育環境や河川景観の保全などについても十分に配慮して実施する手法である。

河川は、河川法に基づき、「治水」(洪水、高潮等による災害の発生の防止)、「利水」(河川の適正な利用と流水の正常な機能の維持)、「環境」(河川環境の整備・保全)の3つの必要を達成すべく管理しなければならないとされているが、多自然川づくりは、自然の持っているメカニズムを活かしてこれらの必要に応える方法である。

多重債務者

複数の金融業者から借入れをして、返済困難に陥っている者をいう。

借入れの目的はさまざまであり、借入先も、消費者金融、信販・クレジット会社、日賦貸金業者、ヤミ金融など多様であるが、返済能力を超える債務を負っていることに変わりはない。また、返済金を用意するために借入れするという悪循環に陥っている場合もある。

多重債務者が債務を整理する方法には、各債権者と任意に交渉のうえ和解合意する方法(任意整理)、調停委員の仲介により協議和解する方法(特定調停)、裁判所に申し立てて返済負担を圧縮し返済計画を立案する方法(個人民事再生)、裁判所に申し立てて生活最低必需基準資産以外の財産を放棄するのと引換えに免責を受けすべての債務の支払義務をなくする方法(自己破産)がある。

たたき

「三和土」とも。建物内において、床を張らずに、地面のまま、もしくは叩き土、漆喰、コンクリートなどで叩き固めて仕上げられた土間のこと。

最近では、コンクリート仕上げのものが多い。

床の敷物で、わらを芯に藺(い)の茎を編んだ表をつけたものをいう。部屋の広さを示す単位(「◯畳の間」など)としても使われる。
広さの単位として使われる場合には、地域によってその大きさに違いがあることに注意しなければならない。たとえば京間は6尺3寸×3尺1寸5分、江戸間・田舎間は6尺×3尺(いずれも内法)を単位にして畳数で表示される(1尺=0.30303m=10寸=100分)。
このような違いがあることなどから、不動産広告における面積の表示はメートル法によるのを原則とし、居室等の広さを畳数で示す場合には、各部屋の壁心面積を畳数で割った値が1.62平方メートル以上となるようにしなければならないとされている(不動産の表示に関する公正競争規約細則)。

畳コーナー

居室の床の一角にが敷かれている場合の、その畳敷きの空間をいう。部屋の床面すべてに畳が敷かれている居室が「和室」であるが、畳コーナーは洋室の床面の一部分だけが畳敷きになっている。

畳コーナーの形状は、畳面と他の床面とが同じ高さで連続するものと、畳面が一段高くなっているものとがある。

立入禁止(土壌汚染対策法の~)

汚染土壌について、土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。

汚染土地への一般人の立入りを禁止するために、柵や標識を設置し、汚染土壌の飛散や流出を防止するために土地にシートなどの覆いをかぶせることである。

立入の許可(土地収用法における~)

土地収用法において、事業認定申請書を提出する以前に、収用者(起業者)は、都道府県知事の許可にもとづいて、他人の占有する土地に立ち入ることができる。この都道府県知事の許可を「立入の許可」という。

起業者は、事業の準備のために他人の占有する土地に立ち入って測量・調査をする必要がある場合、当該区域を管轄する都道府県知事から立入の許可を受けなければならない。
(起業者が国または地方公共団体であるときは、都道府県知事にあらかじめ通知すればよい)。
都道府県知事は、この許可をしたときその旨を土地の占有者に通知し、または公告することとされている(土地収用法第11条)。

この許可を受けた起業者(またはその委任を受けた者)は、立ち入ろうとする日の5日前までに、その日時および場所を市町村長に通知しなければならない。市町村長は、この通知を受けたときは、直ちに、その旨を土地の占有者に通知し、または公告する。

具体的な立入の方法については、土地が、「さく等で囲まれた土地」である場合は、立ち入ろうとする者は、立入の際あらかじめその旨を占有者に告げなければならない。日出前または日没後においては、宅地またはかき、さく等で囲まれた土地に立ち入ってはならない。

立退料

借地・借家の明渡しの際に、賃貸人から賃借人に支払われる金銭をいう。

私法上の明確な支払い根拠はなく、その意味や金額は、慣習や事情に応じてさまざまである。

なお、借地借家契約の更新拒絶や解除の際に必要となる「正当事由」の判断に当たっては、立退料の提供如何も考慮される。

宅建試験

宅地建物取引業法第16条第1項にもとづき、都道府県知事が実施する資格試験のこと。正式名称は宅地建物取引士資格試験である。

宅地建物取引業に関して必要な知識について行なわれる試験で、試験科目は宅建業法、民法、都市計画法建築基準法、税法その他。配点は50点満点。試験は例年10月の第3日曜日に実施される。
(詳しくは宅地建物取引士資格試験へ)

宅建免許

宅地建物取引業を営もうとする者は、都道府県知事または国土交通大臣に宅地建物取引業の免許を申請し、免許を受けることが必要である(宅地建物取引業法第3条)。

不正の手段で宅地建物取引業の免許を受けた者や、無免許で宅地建物取引業を営んだ者には、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則が予定されている(法第79条第1号、第2号)(詳しくは無免許営業等の禁止へ)。

免許を受けるには、宅地建物取引業を営もうとする者(個人または法人)が、一定の不適格な事情(欠格事由)に該当しないことが要件とされている(法第5条第1項)。
この免許の欠格事由は、法律により詳細に規定されている(詳しくは免許の基準へ)。

また、宅地建物取引業の免許を受けるには、免許申請書および免許申請書の添付書類を都道府県知事または国土交通大臣に提出する必要があり、その記載事項等は詳細に法定されている(法第4条第1項、第2項、施行規則第1条の2)。

なお、宅地建物取引業の免許の有効期間は5年とされている(法第3条第2項)。
免許の有効期間の満了後、引き続き宅地建物取引業を営むためには、有効期間満了の日の90日前から30日前の期間内に免許の更新の申請書を提出する必要がある(法第3条第3項、施行規則第3条)。

タッセル

房状の飾り。英語のtassel。 衣類、帽子、靴、カーテンなどに装飾品として付けられている。

糸を束ね房の形にしたものであるが、精巧なデザインが施されたものもある。また、タッセルに似た装飾品として、玉房(ポンポン)がある。

建売住宅

分譲宅地に建築され、敷地と一緒に販売される住宅をいう。

類似の用語として「売建住宅」があるが、建売住宅の建築主は不動産業者であるのに対して、売建住宅の建築主は宅地購入者である。

建て替え

建物改築すること。全面的な建て替えのほか、建物の一部を建て替える場合もある。

マンションの建て替えには、区分所有者およびその議決権の各5分の4以上の多数による決議(建替え決議)が必要である。

建替え決議

区分所有建物を建て替えることを決める決議をいう。

分譲マンションのような区分所有建物について、建物が著しく老朽化した場合や地震による大きな被害を受けた場合などには、建物を元の状態に戻すことが難しいケースや、経済的に見て建物を元の状態に戻すよりも建物全部を建て替えるほうがメリットの大きいケースがある。
このため、区分所有法の規定では、区分所有者数の5分の4以上の賛成と議決権の5分の4以上の賛成による決議がある場合には、建物を取り壊し、新しい建物を新築することを可能にしている。この決議が建替え決議である。

建替え決議については、区分所有者全員に建替え計画を周知し、理解を促すために、次のような手続きが必要である。

1.建替え決議のための管理組合集会を開くには、招集者(通常は理事長)は、その集会の日の少なくとも2月前までに集会の開催を区分所有者に通知しなければならない。
2.上記1.の通知においては、招集者は「建替えを必要とする理由」、「建替えをしないときに建物の効用を維持(または回復)するのに要する費用の額と内訳」などの事項を通知しなければならない。
3.上記2.の通知事項について、招集者は、その集会の日の少なくとも1月前までに区分所有者に対する事前の説明会を開催して、説明しなければならない。
4.建替えを決議する管理組合の集会では、新たに建築する建物の設計の概要・費用の概算額・費用の分担なども併せて決議する必要がある。
5.区分所有者数および議決権の各5分の4以上の賛成により、区分所有建物の建替えを決議する(この決議要件の詳細については「建替え決議の要件」を参照のこと)。

なお、建替え決議が可決された場合には、建替えに参加する区分所有者等は、参加しない区分所有者に対して、その権利を売り渡すよう請求することができる。これは、建替えを円滑に進めるために設けられた制度である(詳しくは「建替え参加の催告」へ)。

建替え決議の要件

区分所有建物について、建替え決議によって建物を建て替えるために満たさなければならない要件をいう。

その要件は、

1.建て替え後の建物の敷地が、「建替え前の敷地と同一」または「建替え前の敷地の一部」または「建替え前の敷地の全部または一部を含む土地」であること
2.集会において区分所有者数の5分の4以上の賛成と議決権の5分の4以上の賛成があること

とされている。

つまり、老朽化の程度(新築後の経過年数)や復旧工事にかかる費用の程度にかかわらず建替えを決議することができる。また、建替えの際には、建物の敷地は同一でなくともよく(隣接地を含んでもよく、前の敷地の一部などでもよい)、建物の主たる使用目的を変更してもかまわない。例えば全戸が住居のマンションを取り壊し、商業店舗と住宅が複合したマンションに建て替えることも可能である。

建替え参加の催告

分譲マンションなどの区分所有建物について、区分所有者数の5分の4以上かつ議決権の5分の4以上の賛成により、建物を取り壊し、新たな建物を新築することを決議することができる(詳しくは「建替え決議」へ)。

この決議がなされた場合に、決議に賛成しなかった区分所有者が、建替えに参加する意思があるかどうかを確認する手続きとして「建替え参加の催告」という手続きが用意されている。
その概要は次のとおりである。

1.建替えが決議されたときは、集会の招集者(理事長)は、決議に賛成しなかった区分所有者に対し、建替えに参加するか否かを書面で催告しなければならない。
2.この催告を受けた区分所有者は、催告を受けた日から2ヵ月以内に回答しなければならず、不参加を回答した者(および回答しなかった者)は、建替えに不参加となる。
3.上記の催告の回答期間の満了の日から2ヵ月以内に、建替え参加者等は、建替え不参加者に対して、建物の区分所有権および敷地利用権を「時価」で売り渡すように請求することができる。
4.ただし、建替え決議の日から2年以内に建物の取壊しの工事に着手しない場合には、建替え不参加者で建物の区分所有権および敷地利用権を売り渡した者は、6ヵ月以内にこれらの権利を買い戻すことを請求することができる(なお、工事着手の遅延に正当な理由があるときはこの限りでない)。

こうした手続きにより、不参加者の権利を保護すると同時に、不参加者が建替えから早期に離脱することを促し、建替え手続きの円滑化が図られている。

立看板

容易に移動させることができる状態で立てられ、または工作物等に立てかけられている看板のこと。またその看板を支える台なども立看板に含まれる。

立看板は、店舗の宣伝や不動産物件の告知のために屋外に掲出されることが多いが、近年では立看板に対する法規制が強化されているので注意が必要である(広告旗(いわゆるのぼり)についても同様)。

屋外広告物法に基づく都道府県・市町村の屋外広告物条例では、立看板の禁止区域や許可区域を設けている場合がある。また同じく屋外広告物条例では、立看板の大きさや設置方法を規制している場合がある。

このような屋外広告物条例に違反し、しかも管理されずに放置されていると認められた場合、立看板は、予告なしに即時撤去できる扱いとなっている(屋外広告物の簡易除却制度)。

なお従来は、このような即時撤去の対象となる立看板は「木枠に紙張りもしくは布張りをし、またはベニヤ板、プラスチック板その他これに類するものに紙をはったもの」と定義されていた。
つまり、木枠の立看板、ベニヤ板・プラスチック板に紙張りの立看板だけが簡易除却制度の適用対象だったのである。
しかし、改正屋外広告物法の2004(平成16)年12月の施行により、「ベニヤ板・プラスチック板に直接塗装または印刷した立看板」も簡易除却制度の対象に含まれることになった。これにより、すべての立看板が簡易除却の対象となったことに注意したい。

建具

部屋の仕切りとして取り付けられた開閉式の設備。引き戸、障子、などはすべて建具である。

取り外すことができ、それによって複数の部屋を一つの空間として利用できる。

建付地

建物が存在している土地について、建物所有者と土地所有者が同一であるとき、この土地を「建付地」という。

建前(建築の~)

木造家屋の建築において、柱・・桁などの主要構造部材を組み立てること。また、組み立て作業の最後は棟木を上げるが、その作業(棟上げ)を指すこともある。

なお、棟上げの際には、主要構造の組み立てを終える儀式(上棟式)を行なうことがある。この上棟式を「建前」という場合もある。

建物

民法では、土地の上に定着した物(定着物)であって、建物として使用が可能な物のことを「建物」という。

具体的には、建築中の建物は原則的に民法上の「建物」とは呼べないが、建物の使用目的から見て使用に適する構造部分を具備する程度になれば、建築途中であっても民法上の「建物」となり、不動産登記が可能になる。

建物明渡猶予制度

抵当権に対抗することができない賃貸借について、抵当権の実行による競売がなされた場合に、賃借人は競落人の買受の日から6ヵ月間に限り、当該不動産を明け渡さなくてよいという制度のこと。
民法の改正により、2004(平成16)年4月1日に創設された制度である。根拠条文は改正後の民法395条である。

1.建物明渡猶予制度の趣旨
ある不動産に抵当権が設定された場合、抵当権設定登記がなされた後に設定された賃貸借は、本来ならばすべて抵当権に劣後するのが原則である。
従って本来は、融資返済不能などの事情によって抵当権が実行された(すなわち抵当不動産が競売された)場合には、抵当不動産の賃借権者はその賃借権を抵当権者に主張することができないはずであり、抵当不動産の競落後には賃借権者は当該不動産を直ちに明け渡さなければならないのが原則である。
しかしこれでは、正常に当該抵当不動産を利用していた賃借人も直ちに明け渡しに応じなければならないこととなり、賃借人にとって競売という不測の事態により思わぬ損害を受ける可能性がある。
こうした不都合を緩和するための措置として、従来は短期賃貸借保護制度が置かれていたが、民法改正によりこの制度は2004(平成16)年3月31日をもって原則的に廃止された。そこで、これに代わって創設されたのが建物明渡猶予制度である。

2.建物明渡猶予制度の内容
改正後の民法395条に規定されている建物明渡猶予制度では、建物賃借人は、建物の競売による代金を競売の買受人が納付した日から6ヵ月間は、当該建物の明渡しを合法的に拒むことができる。
この明渡しを拒む期間中は、建物所有者である買受人に対して、占有者(すなわち建物賃借人)は賃料と同額の金銭を買受人に支払う義務を負う。仮に、占有者が買受人からこの金銭の支払いを督促されたにもかかわらずこれを支払わない場合には、占有者はもはや明渡しを拒むことができなくなる(改正後の民法第395条第2項)。

3.抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度
以上のような建物明渡猶予制度のほかに、建物の競売がなされた際に立退きをすることなく賃貸借を継続できるという制度が、2004(平成16)年4月1日より設けられている。これは、改正後の民法387条に規定されている「抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度」である(詳しくは抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度へ)。

建物買取請求権

地主に借地上の建物を買い取らせることのできる権利をいう。

借地権が更新されないとき、または、借地上の建物を譲渡した際に地主が借地権の譲渡または転貸を承諾しないときに、借地権者または建物譲受人に生じる権利で、一方的な意思表示によって法律上の効果が生まれる(形成権)。買取価格は、時価とされる。

なお、定期借地権については、特約で定めない限り建物買取請求権は発生しない。

建物状況調査

既存の建物について、構造耐力上の安全性や雨漏り・水漏れ等の観点からその状態を確認すること。インスペクションともいう。

建物状況調査は、既存住宅売買瑕疵保険に加入するときなどに実施されている。

宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法に基づき、2018(平成30)年4月1日以降、建物状況調査に関して次のことを行なわなければならない。

・媒介依頼者に交付する媒介契約書に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載すること
・重要事項として、買い主等に対し、建物状況調査の実施の有無、その結果の概要、建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存状況を説明すること
・売買等の契約の成立時に交付する書面に、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を記載すること

建物状況調査関連ニュース

建物譲渡特約付き借地権

新借地借家法(1992(平成4)年8月1日施行)により創設された定期借地権の一つ。
「建物譲渡特約付き借地権」とは、次の契約内容を含む定期借地権である。

1.設定から30年以上を経過した日に、借地上の建物を地主に相当の対価で譲渡する。
2.1.の譲渡がなされたことにより、借地権が消滅する。

従って、「建物譲渡特約付き借地権」の存続期間は少なくとも30年以上である。

また借地権が消滅した時点において、建物の借家人は、借地権を地主に対して対抗することができるとされている。

建物倒壊危険度

地震による建物倒壊被害の危険性をいう。

自治体単位で公表しているもので、東京都は定期的に町丁目ごとに建物倒壊危険度を測定し、公表している。
東京都による建物倒壊危険度の測定は、地盤の揺れやすさと地震に対する建物耐力を考慮して行なわれ、例えば大規模造成地盛土地域や液状化による影響のある地域での危険性は高く評価される。
東京都の評価結果は、町丁目ごとに5段階にランク分けして公表されている。
測定された建物倒壊危険度は、木造住宅密集地域整備事業、防火規制、建物の耐震化助成等の地域の選定、に活用されている。

建物登記簿

1個の建物ごとに作成される登記記録のこと。

建物の区分所有等に関する法律

分譲マンションなどの区分所有建物に関する権利関係や管理運営について定めた法律。

区分所有法」、「マンション法」と呼ばれることもあり、民法の特別法である。1962年に制定され、1983年に大幅に改正されている。

区分所有建物とは、分譲マンションのように独立した各部分から構成されている建物のことであり、通常の建物に比べて所有関係が複雑であり、所有者相互の利害関係を調整する必要性が高い。そのため、民法の特例が必要となったのである。

建物の区分所有等に関する法律に定められているのは、

1.専有部分共用部分、建物の敷地に関する権利関係についての規定
2.規約集会管理組合等に関する規定
3.建替え・大規模修繕のための制度

などである。

建物評価指針(中古住宅に係る~)

住宅の機能に着目してその価値を評価するための指針で、中古戸建て住宅について公表されている(「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」(2014年、国土交通省))。

その基本的な考え方は次の通りである。

1)評価対象住宅を再調達するための価格から新築時以降減少した価値を減価修正する手法(原価法)を用いる。
2)減価修正に当たっては、人が居住する建物としての機能に着目した価値(使用価値)を把握・評価する。
3)使用価値は、住宅の各部位の機能がどの程度維持されているかを把握する方法で評価する。
これによって、法人税法の耐用年数(木造住宅は22年)を超えた住宅についても相応の価値を認めることとなるほか、リフォーム等を価値に反映することができる。

建物滅失登記

建物がなくなった場合に、当該建物に関する登記簿を閉鎖することをいう。

滅失登記は建物所有者等の申請によって行なわれるが、申請は滅失の日から1ヵ月以内にしなければならないとされている。登録免許税は非課税である。

なお、土地の売買や融資に当たって、建物滅失登記の確認を求められることがある。

店子

テナントを参照。

他人効

代理の本質は、他人の行為の効果が本人に帰属するということである(これを他人効という)。
この他人効が成立する理論的根拠については、顕名説と代理権説が対立している。

1.顕名説
代理が成立するのは、代理人が顕名を行なうからであるという考え方。顕名は代理人が本人のために行動するという意思の表示であり、その顕名の効果として他人効が発生するという考え方である。

2.代理権説
代理が成立するのは、代理権が存在するからであるという考え方。法定代理では代理権は法律によって発生し、任意代理では本人が代理人に代理権を授与する。こうした代理権が存在するため、他人効が発生するという考え方である。
この代理権説に立つとき、顕名は代理の本質的要素ではないことになる。また代理権説に立つとき、任意代理の成立根拠は代理権授与行為であるとされる。

他人物売買

他人の物を売買すること。民法では、他人の物を売買する契約も有効な契約であるとしている。

本来、他人の物を売買することは当初から不可能であるので、そのような売買契約の効力を無効とするという考え方もあり得る。しかしわが国の民法では、他人物の売買契約であっても、当事者間(売り主と買い主の間)では有効な契約であることを想定した規定が定められている。

他人物を売買したときには、売り主は、権利を取得して買い主に移転する義務がある。この義務を果たせない場合には、売り主は契約不適合責任を負うこととなる。

この場合、履行の追完は無理であるから、損害賠償請求または契約解除権の行使によって契約不適合責任を追及することとなる

他人物売買の制限

宅地建物取引業者が他人物を売ること(予約を含む)を禁止する定め。宅地建物取引業法に基づく制限である。

ただし、宅地建物取引業者が、売ろうとする他人物を確実に取得する旨の別の契約または予約(効力発生について条件付きのものを除く)を締結しているときには、他人物売買は禁止されていない。また、換地処分の公告以前の「保留地予定地」の売買契約や、第三者のためにする契約によって他人の所有権を直接に買主に移転することを宅地建物取引業者が実質的に支配している場合の売買契約についても、契約締結を禁止する規定は適用されない。

なお、宅地建物取引業者同士の売買については、この制限は適用されない。

タペストリー

図案や絵を織り込んだ厚い織物。英語のtapestry。壁掛け、家具掛けなど、主に室内装飾のために用いられる。

平織りの一種で、経糸(たていと)に、太い緯糸(よこいと)をつづるように織り込んで絵柄を表現する手芸的な方法で作成される。通常、経糸には麻や木綿、緯糸には羊毛、絹などが使われる。

タペストリーの生産地としてはフランドルが著名であるが、フランスのゴブラン織もよく知られている。

なお、京都西陣の綴錦(つづれにしき、経緯糸はいずれも絹)などもタペストリーとほぼ同様の織物である。

タモ

建築用材や家具材として広く使われるモクセイ科の広葉樹。材は弾力性に富んでいて、木目が美しく、加工しやすい。「梻」と表記される。

国産材のほか、中国産、ロシア産のものもある。

垂れ壁

天井から垂れ下がった形状の壁のこと。

建築基準法では、こうした垂れ壁であって、天井面から50cm以上、下方向に突き出しているものを「防煙壁」と呼ぶ。
この「防煙壁」は、火災により発生する煙の拡散を防ぎ、避難を容易にするための設備の一つである(建築基準法施行令第126条の2)。

垂木

木造建築において、棟木・母屋・軒桁をつなぐように架ける細長い斜材。一般に、屋根下地を支える役割を担い、等間隔で懸架される。垂木は軒桁から外に突き出て軒をかたちづくるが、軒裏に隠れる「野垂木」と、軒下に現れる「化粧垂木」との区別がある。化粧垂木は、装飾として用いられる場合もある。

タワーマンション

超高層の集合住宅をいう。そのかたちが塔(タワー)に似ていることから名づけられたが、タワーマンションは和製英語である。

タワーマンションとされる高さの目安としては、建築基準法において構造耐力に関する区分が規定されている60m以上とするのが一般的であるが、20階以上、100m以上などの説もあり、厳密な定義は無い。

短期取得時効

所有の意思をもって物を一定期間占有したとき、その物の所有権を取得することができるという時効の制度である(民法第162条)。

占有を開始した時点において自己の物であると信じ、そう信じるにつき無過失(善意かつ無過失)であれば、10年間の時効期間の経過により所有権を取得することができ、これを短期取得時効という(民法第162条第2項)。
これに対して、占有を開始した時点において悪意または有過失であれば、20年間の時効期間の経過により所有権を取得することができ、これを長期取得時効という。

短期取得時効の成立要件は次のとおりである。
地上権賃借権の取得時効については、所有権以外の財産権の取得時効へ)

1.物を占有すること
物とは原則的に「他人の物」であるが、「自分の物」であってもよい。時効は、そもそも継続した事実状態と法律関係を一致させようとする法制度であるため、自分の物を長期間占有したという継続した事実状態を主張することは当然に可能である(判例)。また、物とは国の財産であってもよい(例えば使用が廃止された国有水路など)。
物とは不動産でも動産でもよいが、動産については即時取得の制度が適用されるので、通常は動産について取得時効が問題になることはあまり考えられない。

2.10年間の時効期間が経過すること
占有が10年継続する必要がある。占有者が占有を中止したり、他人によって占有を奪われた場合には、その時点で時効の進行は中断する(つまり振り出しに戻る)。
また時効期間の計算では、占有を実際に開始した時点から起算する必要があり、占有の途中から起算することは許されないとするのが判例である。

3.平穏かつ公然に占有すること
通常は平穏かつ公然に占有しているものと推定されるのであまり問題とならない。真の所有権者であると主張する者が占有者に抗議したとしても「平穏な占有」である。

4.所有の意思をもって占有すること
所有権者と同様に物を支配する意思をもって占有することが必要である。土地賃貸借契約によって占有する場合には、その占有はあくまで賃借人としての占有にすぎないので、原則として「所有の意思」をもってする占有とはならない。

5.占有の始めにおいて善意かつ無過失であること
実際に占有を開始した時点において自己の不動産であると信じ、そう信じるについて過失がないことが必要である。ただし、占有の途中で自己の不動産ではないと気付いたとしても問題にはならない(あくまで占有開始時点で善意・無過失であればよい)。

短期譲渡所得

税務上の概念で、所有期間が5年以下の土地・建物の譲渡に係る所得のこと、所有期間は譲渡した年の1月1日現在で算定する。

これに対する所得税額は、次のように算出される。
「短期譲渡所得金額=譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)−特別控除」
「税額=短期譲渡所得金額×税率」

税率は、原則として、所得税30%、住民税9%である。ただし、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡については3,000万円の特別控除が適用されるなどの特例がある。

短期賃貸借

賃貸借契約のうち、その期間が限定されているものをいう。

被保佐人もしくは被補助人(いずれも精神上の障害により事理弁識の能力が不十分(「被保佐人」は著しく不十分)であるとして家庭裁判所の審判を受けた者、「準禁治産者」を参照)であるため処分行為能力が制限されている者または権限の定めのない代理人等の処分権限を有しない者が賃貸借する場合には、賃貸借契約の目的物に応じてその期間が制限されている。例えば、山林以外の土地については5年、建物については3年である。

従来、この期間を超えない賃貸借については、抵当権の登記後に登記したものでも抵当権者に損害を与えない限りこれに対抗できるとされていたが、この規定を悪用する例があるため、その特例は廃止された(「占有屋」参照)。

短期賃貸借保護制度

抵当権が設定された不動産において、抵当権が登記された後に賃借権が設定された場合であっても、その賃借権が短期賃借権であるならば、その賃借権は抵当権に対抗できるという制度のこと。
(ただし、この短期賃貸借保護制度は平成16年3月31日をもって原則的に廃止されたことに注意)

1.短期賃貸借保護制度の趣旨
民法602条に定める短期賃貸借とは、土地は5年以内、建物は3年以内の賃貸借を指している。
ある不動産に抵当権が設定された場合、抵当権設定登記がなされた後に設定された賃貸借は、本来ならばすべて抵当権に劣後するのが原則である。
従って本来は、融資返済不能などの事情によって抵当権が実行された(すなわち抵当不動産が競売された)場合には、抵当不動産の賃借権者はその賃借権を抵当権者に主張することができないはずであり、抵当不動産の競落後には当該不動産を明け渡さなければならないのが原則である。
しかしこれでは、抵当権設定後の当該不動産の賃借利用を事実上阻害してしまう恐れがあるとの配慮から、期間が短い賃貸借に限って、例外的に抵当権に対抗できる(すなわち、たとえ競売されたとしても当該短期賃貸借の期間中、賃借人は当該不動産を明け渡さなくてよい)こととされた。これが「短期賃貸借保護制度」である。短期賃貸借保護制度は改正前の民法395条に規定されていた。

2.短期賃貸借保護制度の具体的適用
短期賃貸借保護制度の適用にあたっては、具体的にどのような賃貸借が「民法395条で保護されるべき賃貸借に該当するのか」が問題となる。
判例によれば、競売のための差押えの登記がなされた時点において、賃借権の残存期間(継続的な賃貸借契約の場合は次の更新時期までの残存期間)が民法602条の短期賃貸借の範囲内であるか否かにより判断することとされている。
例えば、平成15年2月1日にある賃貸マンションに競売のための差押え登記がなされた場合に、その賃貸マンションの賃貸借契約の更新時期が平成15年12月31日であるとすれば、この賃貸借の残存期間は11ヵ月であるので、短期賃貸借に該当し、民法395条により保護されることとなる。
ただし、更新時期到来時にはこの賃貸借契約を更新することができないので、賃借人は平成16年1月1日以降はこのマンションを賃借することはできず、明け渡さなければならない。

3.短期賃貸借制度の廃止
このように、賃借権保護等のために一定の役割を果たした短期賃貸借保護制度であったが、平成15年8月1日に公布された「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」により、平成16年3月31日以降原則的に廃止された(詳しくは短期賃貸借保護制度の廃止を参照)。

短期賃貸借保護制度の廃止

改正前の民法395条に定められていた短期賃貸借保護制度が法改正により廃止されたこと。その代わりとして、建物明渡猶予制度が創設されている。

1.短期賃貸借保護制度とは
抵当権が設定された不動産において、抵当権が登記された後に賃借権が設定された場合であっても、その賃借権が短期賃借権であるならば、その賃借権は抵当権に対抗できるという制度である(詳しくは短期賃貸借保護制度参照)。

2.短期賃貸借保護制度の廃止の背景・経緯
短期賃貸借保護制度は、抵当権設定後の抵当不動産の賃借利用を一定限度で保障する制度であったが、依然として占有屋等による競売執行妨害にこの制度が濫用されるという弊害があった。
また、賃貸借契約の更新時期と競売のための差押え登記の期日とが近接しているかどうかという偶然の事情により、賃借人が賃借を継続できる期間に著しい格差が生じるという問題点もあった。
そこで、2003(平成15)年8月1日に公布された「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」により、2004(平成16)年3月31日以降、短期賃貸借保護制度は廃止され、その代わりに建物明渡猶予制度が創設されている。

3.短期賃貸借保護制度の廃止に伴う経過措置
「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」の施行日(2004(平成16)年4月1日)より以前に抵当不動産に設定された賃貸借については、依然として短期賃貸借保護制度が適用される(同法附則第5条)。

4.建物明渡猶予制度の創設
建物明渡猶予制度とは、抵当権に対抗することができない賃借権について、抵当権の実行による競売がなされた場合に、賃借人は競落人の買受の日から6ヵ月間に限り、当該不動産を明け渡さなくてよいという制度のことである(改正後の民法395条による)(詳しくは建物明渡猶予制度へ)。

短期プライムレート

銀行が、1年以内の期間、最優遇で貸し出す場合の金利。貸し出す企業の業績や財務状況が良好な場合に適用される。これに対して、1年を超える期間最優遇で貸し出す場合の金利を「長期プライムレート」という。

短期プライムレートは、それぞれの銀行が独自に決めるが、一般に、短期金融市場(回収期間が1年以内の資金の取引が行なわれる市場で、コール市場、CD(譲渡性預金)市場、CP(コマーシャル・ペーパー)市場、国庫短期証券市場などがある)での取引を目安に運用されている。


なお、変動金利型住宅ローンの金利は、通常、短期プライムレートに一定幅を上乗せして決定され、短期プライムローンの変動と連動する。

タンクレストイレ

貯水タンクを使わない水洗トイレ。水道と直結して水洗する方法を用いる。

タンク付きトイレに比べて設備が小さい一方、水道の水圧、稼働のための電力が必要である。また、手洗のための整備を別途設けなければならない。

単純承認

相続において相続人が留保なく相続を承認することをいう。

一方、留保をつけて相続することを「限定承認」という。

単純承認によって、相続人は、被相続人の債務について無限責任を負うなど、権利義務を無限定に承継する。

相続の開始があったことを知ったときから原則として3ヵ月以内に相続放棄や限定承認をしなければ単純承認をしたものとみなされるなど、実際の相続においては単純承認となるケースが多い。

単独行為

一人の1個の意思表示によって成立する法律行為のこと。

具体的には、遺言(民法第960条)のように、相手方の承諾なくして、ある人の一方的な意思表示で成立する法律行為である。また債務免除、解除なども単独行為とされている。

担保関係

人がある人に給付を要求できるという関係(債権・債務関係)において、その給付を確実なものとするために、担保によって債権を保全するという関係を「担保関係」という。

例えば、AがBから100万円を借りている場合に、その借入の担保としてAが自分が所有する土地を担保にしたとしよう。
この場合に、BがAに対して100万円の支払いを要求することができるという関係が債権・債務関係であり、この100万円の支払いを土地によって担保しているという関係が担保関係である。
担保関係は、債務者の信用を創出する手段などとして機能している。

担保責任(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業者が自ら売り主として土地・建物を売却するときの契約不適合責任の特例をいう。特例は、1)買い主が契約不適合責任を追及できる期間を「土地・建物の引渡しの日から2年間」とすることができること、2)宅地建物取引業者が自ら売り主として土地・建物を売却するときには、契約不適合を担保する責任の内容について民法の規定よりも買い主に不利となるような特約をすることはできないこと(1の場合を除く)、である。

なお、新築住宅の売買契約については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいて、売り主の担保責任について特別の定めがある。この特別の定めは、宅地建物取引業法による担保責任に優先して適用される。詳しくは「売り主の瑕疵担保責任(品確法における~)」を参照。

担保責任

特定物の売買において、目的物が契約不適合であった場合に、売り主が負わなければならない責任。詳しくは、「契約不適合責任」を参照。

特定物とは、取引当事者がその物の個性に着目して取引する物のことで、美術品、中古車、不動産(土地・新築建物・既存建物)などである。このうち、不動産については、その性格から担保責任が問われる場合が多い。

なお、工事の請負などにおいても、引き渡した完成物について担保責任がある。

担保物権

債権を保全するために設定される物権のこと。担保物権は約定担保物権と法定担保物権に分類することができる。

約定担保物権は、債務者の信用を創出するために、当事者の合意によって設定される担保物権であり、抵当権質権がある。
法定担保物権は、政策的な必要性から、一定の事情がある場合に法律上当然に成立する担保物権であり、先取特権留置権がある。

またこのほかに、民法第二編には規定されていない約定担保物権があり、変則担保と呼ばれている。具体的には、譲渡担保仮登記担保買戻再売買の予約、所有権留保である。

タームシート

契約の大まかな枠組みを項目別にまとめた表をいう。

契約対象、契約方式、契約期間などが簡潔に記述されており、契約交渉にあたっての資料として利用されることが多い。特に、ライセンス契約などにおいてよく用いられる用語である。

不動産の証券化などにあたっては、個別の案件ごとに、資産の概要、証券化等の仕組み、発行証券の内容、関係者(オリジネーターSPC等の組成責任者、資産の管理運営者等)などをまとめて記載した条件書が作成されるが、それもタームシートである。

第一種住居地域

都市計画法(9条)で「住居の環境を保護するため定める地域」と定義されている。
この用途地域では、建ぺい率の限度は原則として50%、60%または80%である。
また容積率の限度は100%から500%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。
この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(3,000平方メートル以下のものに限る)
4.事務所(3,000平方メートル以下のものに限る)
5.危険や環境悪化の恐れが非常に少ない作業場面積が50平方メートル以下の工場
6.ホテル・旅館(3,000平方メートル以下のものに限る)、
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場等(3,000平方メートル以下のものに限る)
8.自動車教習所(3,000平方メートル以下のものに限る)

(建築できないもの)
1.上記に挙げたもの以外の店舗
2.上記に挙げたもの以外の事務所
3.上記に挙げたもの以外の工場
4.上記に挙げたもの以外のホテル・旅館
5.上記に挙げたもの以外の遊戯施設・風俗施設
6.上記に挙げたもの以外の自動車教習所
7.倉庫業の倉庫

第一種中高層住居専用地域

都市計画法(9条)で「中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」と定義されている。
この用途地域では、建ぺい率の限度は30%から60%の範囲内(10%きざみ)で用途地域で指定され、容積率の限度は100%から500%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。
この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(日用品販売店舗、喫茶店、理髪店、物品販売店舗、飲食店、銀行など)
4.2階以下で作業場の面積が50平方メートル以下のパン屋等の工場

(建築できないもの)
1.上記に挙げたもの以外の店舗
2.事務所
3.上記に挙げたもの以外の工場
4.ホテル・旅館
5.遊戯施設・風俗施設
6.自動車教習所
7.倉庫業の倉庫

第一種低層住居専用地域

都市計画法(9条)で「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」と定義されている。

この用途地域では、建ぺい率の限度は30%から60%の範囲内(10%きざみ)で都市計画で指定され、容積率の限度は50%から200%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。

また良好な住環境を確保するため、建築物の高さが10m(または12m)以下に制限されていることがこの用途地域の大きな特徴である。これを「絶対高さの制限」と言う。なお制限が10m・12mのいずれになるかは都市計画で定められている。
この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、公衆浴場、老人ホーム

(建築できないもの)
1.大学、専修学校、病院
2.店舗
3.事務所
4.工場
5.ホテル・旅館
6.遊戯施設・風俗施設
7.自動車教習所
8.倉庫業の倉庫

第一種特定有害物質

土壌汚染対策法において、人の健康に被害を生ずる恐れが大きいものとして指定された26種類の特定有害物質のうち、揮発性有機化合物に該当する12種類の物質のこと。

この第一種特定有害物質については、土壌汚染状況調査を実施するに当たっては、土壌ガス調査および土壌溶出調査を実施することとされている。

この第一種特定有害物質は具体的には次の12種類である。

1.四塩化炭素
2.ジクロロメタン
3.1・2-ジクロロエタン
4.1・1-ジクロロエチレン
5.シス-1・2-ジクロロエチレン
6.1・1・1-トリクロロエタン
7.1・1・2-トリクロロエタン
8.トリクロロエチレン
9.テトラクロロエチレン
10.1・3-ジクロロプロペン
11.ベンゼン
12. クロロエチレン

代位弁済

債務を債務者以外の者が弁済し、その弁済者が債務者に対して求償権を取得する場合の弁済をいう。

債権者からみれば債務者に代わる者(代位する者)から弁済を受けることになり、債権者の求償権は弁済者に移るのである。

代位弁済には大きく2つ場合がある。
一つは、保証人、連帯債務者、抵当不動産の第三取得者など、弁済について正当な利益を持つ者による弁済で、この場合は弁済によって当然に求償権が移転する(法定代位)。

もう一つは、利害関係のない第三者が弁済する場合で、この場合にはその代位について債権者の承諾が必要である(任意代位)。

ダイオキシン類

ダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾフラン、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンおよびコプラナーポリ塩化ビフェニル(PCB)をいう(ダイオキシン類対策特別措置法第2条)。

ダイオキシン類は化学物質の製造や廃棄物の燃焼などに伴って副次的に生産される物質であり、極めて毒性が強い。わが国では1999(平成11)年にダイオキシン類の規制が先進諸国に比較して非常に遅れていることが指摘され、議員立法によりダイオキシン類対策特別措置法が制定されたという経緯がある。

なお、土壌汚染対策法ではダイオキシン類を特定有害物質から除外しており、ダイオキシン類の土壌汚染に関する規制はダイオキシン類対策特別措置法に委ねられている。

ダイオキシン類対策特別措置法

ダイオキシン類による大気汚染・水質汚染・土壌汚染に対する国民の不安の高まりに対処するため、1999(平成11)年7月に議員立法により制定された法律。2001(平成13)年1月6日から施行されている。

この法律では、ダイオキシン類の排出ガス・排出水における濃度基準(排出基準)を設定したほか、ダイオキシン類を排出する施設を特定施設と定義して、その特定施設の設置にあたって排出基準を遵守することを定め、また排出基準を超える排出に対して知事の改善命令等が定められている。

また知事によるダイオキシン類排出の常時監視と、排出者自身による年1回以上の測定を義務付けている(同法第26条から第28条)。
さらにダイオキシン類の土壌汚染を排除するため、知事がダイオキシン類土壌汚染対策地域を指定できるという制度を創設し、知事がその対策地域に関するダイオキシン類土壌汚染対策計画を策定することにより、迅速にダイオキシン類の除去事業を実行する仕組みが設けられている(同法第29条から第32条)。

ダイオキシン類土壌汚染対策計画

ダイオキシン類による土壌汚染の除去等を実施するため、都道府県知事が策定する計画。ダイオキシン類対策特別措置法に基づく計画で、ダイオキシン類土壌汚染対策地域を指定した場合に遅滞なく定めなければならないとされている。

ダイオキシン類土壌汚染対策計画においては、土壌の汚染の除去に関する事業、健康被害の防止のために必要な事業などが定められる。

なお、この計画を策定するに当たっては、知事は関係市町村長の意見を聴くとともに、公聴会を開くなど、対策地域の住民の意見を反映させるための措置を講じなければならない。

ダイオキシン類土壌汚染対策地域

ダイオキシン類対策特別措置法第29条にもとづき、知事が定める地域。

知事は、ダイオキシン類により汚染された具体的な地域について、土壌からダイオキシン類を除去する必要がある地域を「ダイオキシン類土壌汚染対策地域」として指定することができる。

ただし、この対策地域に指定することができる地域は、次の要件をすべて満たす地域に限られている。

1.人が立ち入ることができる地域であること
2.工場または事業場の敷地である場合には、その敷地内に従事者以外の者が立ち入ることができる地域であること

従って、工場または事業場の敷地であって、その事業の従事者だけが立ち入る敷地については、この対策地域に含めることができない。このため、工場・事業所は通常、対策地域から除外されることとなる(同法施行令第5条)。

なお、この対策地域を指定した時は、知事は遅滞なく、ダイオキシン類土壌汚染対策計画を定め、土壌汚染の除去事業を迅速に実施しなければならない(同法31条)。

代価弁済

抵当権が付着している不動産(抵当不動産)が第三者に譲渡された場合に、債権者が自らの意思により、抵当不動産の所有者から債権の一部の弁済を受け取ることで、抵当権が消滅するという仕組みのこと。民法第378条に規定されている。

例えば、債権者Aが債務者Bに3,000万円を融資し、不動産Pに3,000万円の抵当権を設定したとする。その後Bがこの不動産Pを500万円で第三者Cへ売却したとする。本来、この不動産Pの時価評価は3,500万円だが、3,000万円の抵当権が付着している分だけ売却価格が下げられているとする。
このとき債権者Aは、第三取得者Cに対して「Cは抵当権の代価として2,800万円をAに支払え」と請求することができる(2,800万円という金額は例えとして挙げたもので、事情により幾らにするかは債権者が決めてよい)。このAの請求に対してCがその金額を支払った場合には、抵当権が消滅し、Cは抵当権の付いていない不動産の所有者となる。このような仕組みが、民法378条に規定する代価弁済である。

また、これによく似たものとして、民法第474条では「第三者弁済」という仕組みも設けられている。これは、第三者が他人の債務を肩代わりして弁済できるというものである。先程の例でいえば、第三取得者Cは債権の全額である3,000万円を、債権者の意思に関係なくいつでも債権者Aに支払うことができ(民法第474条第2項)、その結果として、Aの抵当権は原則として消滅するということである。

なお、債権者と第三取得者との利害を調整する仕組みとしては、代価弁済のほかに、抵当権消滅請求(民法第379条~381条)がある(詳しくは抵当権消滅請求へ)。

大規模建築物

建築基準法6条1項2号と3号に定める一定の大規模な建築物のことを「大規模建築物」と呼んでいる。

具体的には次の2種類がある。

1.木造の建築物で次の要件のどれか一つを満たすもの
1)高さが13mを超える
2)軒高が9mを超える
3)階数が3以上
4)延べ面積が500平方メートルを超える

2.木造以外の建築物で次の要件のどれか一つを満たすもの
1)階数が2以上
2)延べ面積が200平方メートルを超える

例えば鉄骨造の2階建ての建築物であっても、建築基準法の上では「大規模建築物」となるので、注意が必要である。

大規模修繕

分譲マンションの性能を維持し老朽化を防止するために、計画的に行なわれる修繕であって、多額の費用を要する修繕のことである(これに対して多額の費用を要しない計画的な修繕は「小規模修繕」という)。

具体的には、鉄部塗装工事・外壁塗装工事・屋上防水工事・給水管工事・排水管工事などの各種の修繕工事を指している。

これらの修繕工事を適切に行なうためには、分譲マンションの管理組合が「長期修繕計画」を作成し、修繕積立金を積み立て、大規模修繕を実施することが不可欠である(修繕工事の実施時期・費用等について詳しくは長期修繕計画へ)。

なお、大規模修繕を実施するためには、管理組合の集会で大規模修繕の実施を可決しなければならない。一般に、大規模修繕はマンションの形状や効用の著しい変化を伴わないため、区分所有者数の過半数かつ議決権の過半数の賛成で可決される。

大規模の修繕

建築物主要構造部の一種以上について行なう過半の修繕」と定義されている(建築基準法2条14号)。

大規模の模様替

建築物主要構造部の一種以上について行なう過半の模様替え」と定義されている(建築基準法2条15号)。

大規模滅失

区分所有建物において、建物の価格の2分の1を超える部分が、地震・火災等により滅失することを「大規模滅失」という。

詳しくは「復旧」へ。

大規模盛土造成地

谷や沢を大規模(3,000平方メートル以上)に埋めて造成した土地や、盛土前の傾斜が大きな地盤(20度以上)の上に高く(5m以上)盛土して造成した土地をいう。大規模な地震などの際に、地滑り、崖崩れ、土砂流出などが起きる恐れがあるため、監視や変動予測が必要とされる。

なお、災害発生の恐れの大きい大規模盛土造成地などについては、都道府県知事が造成宅地防災区域に指定し、擁壁等の設置又は改造その他必要な措置を講じることとされている。また、大規模盛土造成地の位置や規模を表示した地図(大規模盛土造成地マップ)を公表している地方公共団体もある。

代金減額請求

売買契約の履行において、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合に、買い主が売り主に対して、代金の減額を請求すること。

代金の減額を請求する権利は、契約不適合を原因とする債務不履行に対する請求権のひとつである。

代金減額請求は、まずは履行の追完を催告し、追完されないときに行なうことができる。もっとも、催告しても追完を受ける見込みがない場合などは、催告なしに減額請求することができるとされる。

代金減額請求をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内に不適合である旨を通知しなければならない。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

大黒柱

家屋の中心部に立っている太い柱。民家において、土間と床上との境の中央に立つ特に太い柱や、四間取(床上が4室からなる平面形式で「よまどり」又は「よつまどり」という)の中心にある柱をいう。

第三者詐欺

詐欺により動機の錯誤に陥れられた者が、その錯誤にもとづいて意思表示を行なった場合には、その意思表示は取り消すことができる(民法第96条第1項)。例えば、AがBの詐欺によりBに対して土地の売却を行なった場合には、AはAB間の土地売買を、詐欺を理由として取り消すことが可能である。

しかしながら、詐欺を行なうのは取引の相手方とは限らず、相手方以外の第三者が詐欺を行ない、本人を錯誤に陥れる場合がある。このような詐欺は第三者詐欺と呼ばれ、民法第96条第2項が適用される。

例えば、AがCの詐欺によりBに対して土地の売却を行なった場合には、AはCの詐欺(第三者詐欺)のせいで錯誤に陥っているのであるから、本来ならば被害者であるAを保護し、AB間の土地売買を第三者詐欺を理由としてAが取り消すことを可能にすべきであるとも考えられる。しかし、もしAの取消しを常に可能とするならば、詐欺に関与していないBの取引の安全を著しく害する結果となり不当である。

そこで、民法第96条第2項では「相手方がその事実を知っていた場合に限り、本人は取り消すことができる」と規定し、本人保護と相手方保護の調和を図っている。つまり、上記の例で、Cの詐欺によりAが錯誤に陥っていることをBが知っていたのならば、そのようなBを保護する必要はないので、Aの取消しを可能にするという趣旨である。

なお、このようにAの取消しが可能な場合であっても、善意の第三者(例えば事情を知らないで上記のBから土地を購入してしまったD)が存在する場合には、AはDに対しては取消しの効果を主張することができないことに注意したい。
(詳しくは詐欺における第三者保護へ)

第三者のためにする契約

当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約する契約をいう。

第三者の権利は、その者が受益の意思表示をしたときに生じることとなる。

第三者のためにする契約は、中間省略登記を合法的に行なうための手法の一つとして利用されている。この場合には、

1.第三者のためにする売買契約(A→B、所有権は直接Cに移転する特約付き)

2.他人物売買契約(B→C、Aの所有権をCに移転)

という2つの契約を締結する。これにより、A→B→Cという譲渡をA→Cと登記することができるとされる。

なお、宅地建物取引業者は、原則として他人物売買契約の締結が禁止されているが、第三者のためにする売買契約が締結されている場合などは例外とされる。

第三取得者

抵当権が付着している不動産を、抵当権が付着した状態のままで取得した者のこと。

第三取得者は、抵当権が付着している不動産(抵当不動産)の所有権を一応有してはいるが、債務の返済ができなくなった場合等では、債権者はいつでも抵当不動産を任意競売にかけることができる(抵当権の実行)。そのため、第三取得者は、所有権を喪失し、損害を受ける危険に常にさらされている。
そこで民法では、債権者(抵当権者)と第三取得者との利害の調和を図るために、「代価弁済」と「抵当権消滅請求」という2種類の仕組みを用意している(詳しくは「代価弁済」「抵当権消滅請求」へ)。

第三種特定有害物質

土壌汚染対策法において、人の健康に被害を生ずる恐れが大きいものとして指定された26種類の特定有害物質のうち、農薬等に該当する5種類の物質のこと。

この第三種特定有害物質については、土壌汚染状況調査を実施するに当たっては、土壌溶出量調査を実施することとされている。

第三種特定有害物質は具体的には次の5種類である。

1.有機リン化合物(パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン、EPN)
2.シマジン
3.チウラム
4.チオベンカルブ
5.ポリ塩化ビフェニル(PCB)

代襲相続

被相続人の子または兄弟姉妹が、相続開始前に死亡などによって相続できないときに、その者の子が、その者に代わって相続することをいう。代わって相続する者が「代襲者」である。民法に定められている制度である。

また、代襲者が相続開始前に死亡などによって相続できないときも、代襲者の子は代襲者に代わって相続できる。これを「再代襲」という。

代襲者の相続分は被代襲者の相続分と同じで、代襲者が複数いるときにはそれを均等に相続する。

代償分割

共同で相続した遺産を分割する方法のひとつで、協議によって遺産を特定の者が取得し、他の相続人に対しては代償金を支払う方法を言う。

相続した不動産などは、物理的に分割することが困難・不利益で、共有物にすると管理に支障が生じる恐れがあることなどから、代償分割によって相続されることが多い。

なお、共同相続遺産を分割する主な方法には、代償分割のほか、現物のままでそれぞれの遺産ごとに取得者を決める方法(現物分割)、遺産を売却してその収益を分け合う方法(換価分割)がある。

大深度地下

事前の補償なしに使用できる一定以上の深さの地下空間。その深さは、i)地下室等のために通常は使用されない地下40m以上の深さ、または、ii)通常の建築物の基礎杭を支持することのできる地盤(許容支持力2,500キロニュートン/平方メートル以上の地盤)の上面から10m以上の深さ、のいずれか深いほうである。その使用等については、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」で定められている。

大深度地下を使用できる地域は、三大都市圏のなかで指定された地域で、使用できるのは、道路、河川、鉄道等の事業者に限られる。使用するためには、国土交通大臣または都道府県知事の認可を受けなければならない。

事業者は、大深度地下を使用する際に事前に補償する必要はないが、損失が生じた場合は請求によって補償しなければならない。

土地所有権等の効力は深さを問わず地下にも及ぶから、深い地下を使用する場合にも、通常は、権利者の承諾、区分地上権の設定等が必要であるが、大深度地下の使用に関する制度は、その例外を認める仕組みである。

大臣免許

宅地建物取引業者が国土交通大臣から免許を受けていること。

宅地建物取引業を営もうとする者が、2以上の都道府県において事務所を設ける場合には、国土交通大臣から免許を受けることが必要とされている(宅地建物取引業法第3条第1項)。この規定にもとづき、国土交通大臣から免許を受けることを、一般に「大臣免許」または「国土交通大臣免許」と呼んでいる。
 

第二種住居地域

都市計画法(9条)で「主として住居の環境を保護するため定める地域」と定義されている。

この用途地域では、建ぺい率の限度は原則として50%、60%または80%である。

また容積率の限度は100%から500%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。

この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

(建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗等(床面積1万m²以下)
4.事務所等
5.危険や環境悪化の恐れが非常に少ない作業場面積が50平方メートル以下の工場
6.ホテル・旅館
7.ボーリング場・スケート場・ゴルフ練習場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(業種によっては床面積1万m²以下)
8.自動車教習所

(建築できないもの)
1.上記に挙げたもの以外の工場
2.上記に挙げたもの以外の遊戯施設・風俗施設
3.倉庫業の倉庫

第二種中高層住居専用地域

都市計画法(9条)で「主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」と定義されている。
この用途地域では、建ぺい率の限度は30%から60%の範囲内(10%きざみ)で都市計画で指定され、容積率の限度は100%から500%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。
この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(2階以下かつ1,500平方メートル以下のものに限る。すべての業種が可能)
4.事務所(2階以下かつ1,500平方メートル以下のものに限る)
5.2階以下で作業場の面積が50平方メートル以下のパン屋等の工場

(建築できないもの)
1.上記に挙げたもの以外の店舗
2.上記に挙げたもの以外の事務所
3.上記に挙げたもの以外の工場
4.ホテル・旅館
5.遊戯施設・風俗施設
6.自動車教習所
7.倉庫業の倉庫

第二種低層住居専用地域

都市計画法(9条)で「主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」と定義されている。
この用途地域では、建ぺい率の限度は30%から60%の範囲内(10%きざみ)で都市計画で指定され、容積率の限度は50%から200%の範囲内(6種類)で都市計画で指定される。

また良好な住環境を確保するため、建築物の高さが10m(または12m)以下に制限されていることがこの用途地域の大きな特徴である。これを「絶対高さの制限」という。なお制限が10m・12mのいずれになるかは都市計画で定められている。
この用途地域では次のような用途規制が行なわれている。

建築できるもの)
1.住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
2.幼稚園、小学校、中学校、高校、公衆浴場、老人ホーム
3.店舗(日用品販売店舗、喫茶店、理髪店等のみ)
4.2階以下で作業場の面積が50平方メートル以下のパン屋等の工場

(建築できないもの)
1.大学、専修学校、病院
2.上記に挙げたもの以外の店舗
3.事務所
4.上記に挙げたもの以外の工場
5.ホテル・旅館
6.遊戯施設・風俗施設
7.自動車教習所
8.倉庫業の倉庫

第二種特定有害物質

土壌汚染対策法において、人の健康に被害を生ずる恐れが大きいものとして指定された26種類の特定有害物質のうち、重金属等に該当する9種類の物質のこと。

この第二種特定有害物質については、土壌汚染状況調査を実施するに当たっては、土壌溶出量調査および土壌含有量調査を実施することとされている。

第二種特定有害物質は具体的には次の9種類である。

1.カドミウムおよびその化合物
2.六価クロム化合物
3.水銀およびその化合物
4.鉛およびその化合物
5.砒素およびその化合物
6.シアン化合物
7.セレンおよびその化合物
8.フッ素およびその化合物
9.ホウ素およびその化合物

ダイニング

食事をする部屋。英語のdining room。間取りを示す「◯LDK」のDである。居間や調理室と兼用する場合も多い。

なお、英語のダイニングは食事という意味であって、部屋を示す言葉ではない。例えば 、ダイニングテーブル(食卓)、ダイニングカー(食堂車)にように使われ、部屋を示すときにはダイニングルームとしなければならない。

ダイニングチェア

食卓(ダイニングテーブル)に着き食事するための椅子。一般に背もたれがある。

食卓に合うものを選択するのが原則で、組み合わせで一緒にデザインされたものもある。

ダイニングテーブル

食事をするための台。英語のdining tableで、日本語の食卓と同義だが、一般にちゃぶ台は含まず、椅子に腰掛けて用いるものをさす。

着席人数に応じて大小さまざまである。また、天板を支える脚の構造や天板の材質も多様であるほか、天板を伸縮することのできるもの(extension table)もある。

DK

ダイニングは「食事室」、キッチンは「台所」であり、ダイニング・キッチンは「食事室兼台所」という意味である。

不動産広告を規制している「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」では、広告中に「DK」と表示する場合には、「食事室兼台所」として使用できるだけの広さと機能を備えていることが必要であるとしている(不動産の表示に関する公正競争規約第15条第25号)。

この場合に、最低必要なDKの広さの目安は、居室(寝室)数が1部屋のときには4.5畳、2部屋以上のときには6畳以上とされている。」

代表者印

会社の代表取締役の印鑑であって、登記所に対して印鑑届けを行なった印鑑のこと。
印影が円形であることが一般的なので、「丸印」とも呼ぶ。

代物請求

給付を受けた目的物が契約不適合である場合に、それに代わるものの給付を請求すること。私法上、目的物に瑕疵があるなど債務が完全に履行されていないときにはそれを完全なものにするための請求(追完請求)をすることができるが、代物請求はその方法の一つである。

代物請求は追完請求であって、本来債務の代わりに他の給付をして債務を消滅させる「代物弁済」の請求とは意味が異なる。金銭債務不履行の場合には不動産を引き渡して代物弁済することが多いが、代物請求はこれとは違い、たとえば引き渡した動産に瑕疵があるときに他の動産の引渡によって債務の完全履行を求めることである。不動産売買は種類売買(目的物を特定しないで種類のみを定める売買)ではないから、代物請求の余地はないという考え方もある。

なお、追完請求の方法には、代物請求のほか、修補請求、不足分の引渡し請求がある。

代物弁済予約

代物弁済とは、金銭債権を返済できないときに、物をもって弁済に代えるということである。

この代物弁済をあらかじめ予約しておくことで、その物を担保に入れたのと同じ状態に置くという方法が、代物弁済予約である。このような代物弁済予約に対しては、仮登記担保法が適用される。
(詳しくは仮登記担保へ)

代理(民法における)

代理とは、本人と一定の関係にある他人が意思表示を行ない、その意思表示の効果が本人に帰属するという法制度である。

代理の本質は、代理権を持つ者(代理人)が存在し、その代理人が行なった行為の効果が本人に帰属することであると解釈されており、このことを「他人効」と呼ぶ。この他人効がなぜ発生するのかという理論的根拠については、「顕名説」と「代理権説」が対立している。(詳しくは他人効へ)。

代理が成立するためには、本人と他人との間に一定の関係が存在することが必要であり、このとき他人は「代理権」を持つものとされており、このような他人を「代理人」と呼ぶ。
また代理において、行為の主体が本人であるのか、それとも代理人であるのかについて学説が分かれており、通説は代理人が行為主体であると考えている(代理人行為説)。

また、代理はさまざまに分類されるが、主な分類としては任意代理法定代理がある。任意代理は本人と代理人との合意にもとづく代理権であり、任意代理が成立するには代理権授与行為が必要であるとされている。
なお、代理人が代理行為を行なうには、本人のためにすることを示すこと(=顕名)が必要とされている。

代理(宅地建物取引業法における~)

不動産取引における宅地建物取引業者の立場(取引態様)の一つ。

宅地建物取引業者が、売買取引・交換取引・賃貸借取引について、売主の代理人や買主の代理人となって(または貸主の代理人や、借主の代理人となって)、取引成立に向けて活動するという意味である。

代理契約(宅地建物取引業法における~)

宅地建物取引業者が、売買取引・交換取引・賃貸借取引について、売主の代理人や買主の代理人となって(または貸主の代理人や、借主の代理人となって)、取引成立に向けて活動するという意味である。
宅地建物取引業者がこうした活動を行なう際に、依頼者(売主・買主・貸主・借主)と宅地建物取引業者との間に締結される契約を「代理契約」と呼ぶ。

代理契約の方法や内容については、宅地建物取引業法第34条の2(および第34条の3)によって厳しい規制が加えられている。
代理契約に関する規制は、媒介契約に関する規制と同一であるが、報酬額の最高限度が異なっている。

代理権消滅後の表見代理

表見代理は、代理権のない者(無権代理人)と本人との特殊な関係によって無権代理人を真実の代理人であると誤信させ、代理権の存在を信じて取引した善意無過失の相手方を保護するための制度である。表見代理においては、その代理行為を代理権のある行為として扱い、本人に対して効力を生じさせる(取引の効果を本人に帰属させる)こととなる。

代理権授与表示による表見代理、代理権消滅後の表見代理、権限外の行為の表見代理の3種類がある。

代理権消滅後の表見代理は、代理権が消滅して代理人ではなくなった者が代理行為をした場合をいう。この場合には、代理権の消滅を知らない無過失の相手方は、本人に対して行為の効力を主張できる。

また、この場合に、無権代理者が与えられていた代理権の範囲外の行為をしたときも、代理権があると信ずべき正当な理由がある場合には、同様に、本人はその行為について責任を負わなければならない。

代理権消滅後の表見代理の例は、たとえば、委任契約を解除した後も元の代理人が委任状を利用した場合、本人が使用人の解雇を取引先に通知しなかった場合などである。

代理権授与行為

任意代理において、代理権が発生する根拠となる本人と代理人との合意のこと。
実際上は、委任契約請負契約・雇用契約などを締結する際に、その契約と同時に、代理権授与行為がなされるのが一般的である。

代理権授与表示による表見代理

表見代理は、代理権のない者(無権代理人)と本人との特殊な関係によって無権代理人を真実の代理人であると誤信させ、代理権の存在を信じて取引した善意無過失の相手方を保護するための制度である。表見代理においては、その代理行為を代理権のある行為として扱い、本人に対して効力を生じさせる(取引の効果を本人に帰属させる)こととなる。

なお、表見代理には、代理権授与表示による表見代理、代理権消滅後の表見代理権限外の行為の表見代理の3種類がある。

代理権授与表示による表見代理は、あたかも有効な代理権が存在するかのような表示(代理権授与表示)が本人によってなされた場合をいう。この場合には、その表示された事項を信頼して取引した相手方(代理権が不存在であることを知らず、かつ過失がない相手方)は、本人に対して行為の効力を主張できる。

また、この場合に、無権代理者が表示された代理権の範囲外の行為をしたときも、代理権があると信ずべき正当な理由がある場合には、同様に、本人はその行為について責任を負わなければならない。

代理権授与表示による表見代理の例は、たとえば、名義貸し(本人が他者に自分の名義で第三者と取引することを認めること)によって行なわれた他者と第三者との取引である。

代理行為の瑕疵

代理行為に関して意思の欠缺、瑕疵のある意思表示などの欠陥が存在することをいう。

瑕疵とは「きず」という意味である。

例えば、代理人が冗談で取引をすると意思表示をした場合には、この代理人の意思表示には、意思の欠缺(この場合には心裡留保)という欠陥が存在することとなり、代理行為に瑕疵があるということができる。

民法では、このような代理行為の瑕疵は、「代理人について判断する」と規定している(民法第101条第1項)。判例・通説では「代理における行為の主体は、代理人である」と考えられている(これを代理人行為説という)。この代理人行為説の立場からすれば、この民法第101条第1項は当然の規定であるということができる。

例えば、本人(A)が代理人(B )に土地の売却の代理権を与えたが、取引の相手方(C)が代理人に対して詐欺を働き、代理人を騙して土地を購入したとする。このとき、代理人について詐欺が成立しているので、Aは、101条第1項によりAC間の土地売買契約を詐欺による意思表示を理由として取消すことができる。

ただし、代理人Bが相手方Cに対して詐欺を働いた場合は問題である。民法第101条第1項ではこのような事態を予定していないからである。通説は、本人AがBの詐欺行為を知らない場合であっても、CはBの詐欺を理由として売買契約を取り消すことができるとする。

また、本人Aが相手方C対して詐欺を働いた場合はどうか。この場合には、一見、Aという第三者がBC間の取引においてCに詐欺を働いたという「第三者詐欺」に該当するようにも見える。仮に第三者詐欺に該当するのならば、Bが善意(=BがAの詐欺を知らない状態)である場合には、Cは取消しを主張することができなくなってしまう。
しかしこの場合には、AとBが代理関係にある以上、Aは第三者ではなく当事者であると考えるべきである。従って通説ではこの場合には、たとえBが善意(=BがAの詐欺行為を知らない状態)であったとしても、CはAに対して取消しを主張できると考えている。

大理石

石灰岩が高温高圧下で結晶化した岩石。中華人民共和国の「大理」で多く産出することからこの名がある。光沢があり、色彩が美しいことから、室内の床材などに使用される。火熱や水に弱いという欠点もある。

ダウンライト

天井に埋め込まれ、下面を照らす照明器具。英語のDown light。照明器具が天井面から突出していない。

これに対して、天井に直接取り付ける照明器具を「シーリングライト」という。

諾成契約

当事者の合意の意思表示のみで成立する契約

民法は、基本原則として、契約は締結の申込みに対して相手方が承諾したときに成立する旨を規定し、売買契約賃貸借契約などほとんど全ての契約について諾成契約としている。

また、契約の成立には、法令による特別の定めがない限り書面の作成などの方式を備える必要はなく、任意の意思表示で足りる。

ダクト

空気調和や換気された空気を所定の場所に導くための長方形や円形の管路をいう。風道とも(ductは送管、導管の意味で、ガスや電気等の管も含む)。

また、空調や換気用の複数の管を内蔵するための空間(ダクトスペース)のことをいう。

DS

管類を配置するために建物に設けられている空間。英語のDuct Space。

ダクトスペースには、一般的に換気・空調のための通気管が配置されるが、そのほか、水道管・ガス管・電力線などをまとめて通す場合もある。

ダストシュート

ビルやアパートの各階廊下に設けられたゴミ投入口(ホッパー)にゴミを投棄すると、筒状の孔を経て最下部の収集口に集まるという塵芥投棄用設備。ゴミ・シュートとも。防災面、管理面から最近ではあまり採用されることはない。

脱衣所

入浴のための準備や入浴後の作業を行なうためのスペース。通常、浴室に隣接する。

衣類のほか、入浴・洗濯・洗面・化粧用品など多くの備品が扱われるため、収納のための利便が大事であるとされる。

ダブルベッド

二人用の寝台。英語のdouble bed。ダブルベッドで用いるマットレスは通常は一枚で、共同で使用する。   

団体信用生命保険

生命保険の類型の一つで、住宅ローン債務者を被保険者、債権者を契約者および保険金受取人とする生命保険契約をいう。

住宅ローンの借入者が債務返済中に事故によって借入金の返済不能に陥ったときに、その弁済を保険によって行なうことにより、住宅ローンの担保となっている土地・住宅に対する担保権の実行(当該土地・住宅の売却等)を回避することができる。

この契約は、ローンの貸出者と保険会社との間で締結されるもので、住宅ローン契約の際にその加入が必要条件とされることがあるほか、クーリングオフが適用されないこと、保険会社に対して告知が必要となることがあるなどの注意が必要である。

団地

同じ性質の建物が集団的に立地し、関連する施設が整備された一団の土地。住宅団地、工業団地などがあり、一般に計画的に建設される。

例えば住宅団地は、複数の住宅が計画的に配置されているほか、道路、広場、上下水道などが一体的に整備され、店舗、保育園、病院などの生活利便施設が備わっている場合が多い。また、施設等を維持管理し、居住の利便などを図るため、団地を運営する組織が設けられている場合が多い。

なお、都市計画で定める「一団地の住宅施設」は、50戸以上の集団住宅及びこれらに付帯する通路等の施設である。

断定的判断の提供

宅地建物取引業について禁止されている行為の一つで、契約締結の勧誘の際に、相手方等に対して、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供することをいう。

これに違反すれば、監督処分の対象となることがある。

なお、消費者契約法では、契約の勧誘の際に将来における価額など将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供され、それが確実であると誤認したときは、契約等の意思表示を取り消すことができるとしている。また、金融商品取引法でも、金融商品取引業者等に対して、顧客に対し不確実な事項について断定的判断を提供するなどして契約締結を勧誘することを禁止している。

断熱構造

熱の伝わりを防ぐ仕組みをいう。

断熱のためには、一般に断熱材を使用する。断熱材には、グラスウールなどの繊維系断熱材、フェノールフォームなどの発泡系断熱材、真空断熱材などがある。また、鉄筋コンクリート造における断熱方式として、断熱材を躯体の内側に設置する内断熱、外側に設置する外断熱の区別があるが、両者には、一長一短がある。

さらには、複層ガラスの採用、直射日光の遮蔽などによっても建物の断熱効果を高めることができるなど、断熱によるエネルギー消費の削減の可能性は幅広い。

断熱材

熱の移動を防ぐために使われる材料。

一般に、グラスウールなどの無機繊維系材料、セルロースファイバーのような木質繊維系材料、羊毛などの天然素材、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームなどの発泡プラスチック系材料等に分類される。それぞれ、断熱性能、耐熱性、耐久性、施工方法、価格などが異なる。

断熱材を建物に施工する方法には、構造の空隙に断熱材を充填する「充填断熱工法」と、構造体の外面を断熱材で覆う「外張断熱工法」とがある。

断熱シート

窓に貼って室内と屋外との熱交換を断つシート。冷暖房の効率を高めるだけでなく、紫外線の遮断や結露防止のために使われることもある。また、絵柄入りのシートを貼ってインテリアの一部とする場合もある。

厚さや素材はさまざまなので、目的に応じて選択することとなる。

断面図(設計図面の~)

設計する対象物をある平面で切ったときの姿を描いた図。断面図は、対象物の横断面や縦断面の姿を投影図として描画したもので、対象物の内部構造を示すことができる。英語のcross section(クロス セクション)。 

建物の垂直断面図は、外部から見えない屋根から基礎までの構造や寸法が描かれ、配置図(平面図)、間取図(水平断面図)、立面図(外観図)とともに、建物の設計を表す必須の図面である。

なお、建物の垂直断面図に、基礎・床・壁・天井・屋根など主要部の構造、寸法、材料の種類、仕上方法などを書き加えた図面を「矩計図(かなばかりず)」と言い、設計の詳細を表示し、正確な施工を確保するために活用されている。

暖炉

暖房のための炉。通常、壁に接して設置され、それを「壁付暖炉」という。また、壁付暖炉の上の飾り棚が「マントルピース」である。

薪や石炭を焚く暖炉には煙突が付いているが、ガスや電力を熱源とする煙突のないものもある。

地域危険度

災害が生じた場合の危険性について地域ごとに評価した結果をいう。

ハザードマップ等に表示されているデータもこれに当たるが、広く知られているのは東京都が条例によって測定し公表している町丁目ごとの「地震に関する地域危険度」である。

東京都の地震に関する地域危険度は、建物倒壊、火災、避難のそれぞれについてその危険性を測定評価することによって、5段階にランク分けされている。
その測定・公表は、都内都市計画区域の町丁目を単位に、1975(昭和50)年から5年ごとに行なわれていて(毎回まったく同一の手法が採用されているわけではない)、地震に強い都市づくりの指標、震災対策事業を実施する地域の選択、地震災害に対する認識と防災意識の向上のために活用されている。

地域継続計画(DCP)

大震災時に、業務地区等において被災者や帰宅困難者を支援するための計画をいう。DCP(District Continuity Planning)と略称される。

その主要な内容は、非常食の備蓄、避難場所の確保、交通情報等の伝達提供などで、JR東京駅の周辺地区、丸の内地区等において検討されている。
DCPは、被災者や帰宅困難者を支援する役割を果たすだけでなく、救援活動や物資輸送などを円滑に実施することにも資すると考えられている。

なお、内閣府・中央防災会議の推計では、首都直下地震が発生した場合の帰宅困難者は最大で約650万人にのぼるとされる。

地域再生拠点区域

集落生活圏において、地域における住民の生活および産業の振興の拠点を形成するために集落福利等施設(住民の共同の福祉・利便のため必要な施設または就業の機会の創出に資する施設)の立地を誘導すべき区域をいう。地域再生法の規定による区域で、地域再生土地利用計画において定められる。

地域再生拠点区域内における土地の区画形質の変更建築物の建築等の行為を行なおうとする者は、着手する30日前までに市町村長に届けなければならないとされている。

この届出義務は法令上の制限であり、宅地建物取引業法重要事項説明の対象となっている。

地域再生法

地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出など地域の活力の再生を総合的、効果的に推進するための法律をいう。2005(平成17)年に制定された。

地域再生は、地方公共団体の自主的、自立的な取り組みによって行なうとされ、そのための次のような措置が定められている。

1)地方公共団体による地域再生計画の作成とその認定
この計画には、計画区域、計画期間、道路等の整備事業、雇用機会創出等のための事業に対する金融、特定政策課題の解決のための事業、集落生活圏における地域再生拠点の形成等のための事業などが記載される。
2)認定地域再生計画に基づく事業に対する支援措置
地域再生計画に基づく事業に対して、地域再生基盤強化交付金の交付等、地域再生支援利子補給金等の支給、特定地域再生事業に係る課税の特例、地方債の特例などを講じる。
3)地域再生土地利用計画の作成等
地域再生土地利用計画には、集落生活圏の区域、地域再生拠点区域誘導施設等を定め、地域再生拠点の形成、農用地等の保全と農業上の効率的かつ総合的な利用を図るための規制など講じる。
4)地域再生推進法人の指定
地方公共団体の長がNPO法人、一般社団法人等を指定し、その法人は、地域再生を図るために行なう事業のための土地の取得・管理・譲渡、事業への参加などの業務を実施する。
5)その他(地域農林水産業振興施設整備計画の作成など)

地域循環共生圏

廃棄物等を含む資源が循環し、低炭素社会・自然共生社会を構築することのできる地理的な範囲。

循環型社会の形成において、地域の特性や循環資源の性質に応じて最適な規模の循環を形成する「地域循環圏」と、低炭素型で自然と共生する社会圏域とを重ね、結びつけたものである。さらに、地域循環共生圏の構築は、SDGs(持続可能な開発目標)のゴールのひとつである「持続可能な消費と生産」の実現にも資すると考えられている。

地域地区

都市計画において、土地利用に関して一定の規制等を適用する区域として指定された、地域、地区または街区をいう。

指定する地域地区の種類に応じて、その区域内における建築物の用途、容積率、高さなどについて一定の制限が課せられる。

地域地区の種類は、次の通りである。

1.用途地域
2.特別用途地区
3.特定用途制限地域
4.特例容積率適用地区
5.高層住居誘導地区
6.高度地区または高度利用地区
7.特定街区
8.都市再生特別措置法による都市再生特別地区居住調整地域または特定用途誘導地区
9.防火地域または準防火地域
10.密集市街地整備法による特定防災街区整備地区
11.景観法による景観地区
12.風致地区
13.駐車場法による駐車場整備地区
14.臨港地区
15.古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法による歴史的風土特別保存地区
16.明日香村における歴史的風土の保存および生活環境の整備等に関する特別措置法による第一種歴史的風土保存地区または第二種歴史的風土保存地区
17.都市緑地法による緑地保全地域特別緑地保全地区または緑化地域
18.流通業務市街地の整備に関する法律による流通業務地区
19.生産緑地法による生産緑地地区
20.文化財保護法による伝統的建造物群保存地区
21.特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法による航空機騒音障害防止地区または航空機騒音障害防止特別地区

地域通貨

特定された地域内やコミュニティにおいて流通する通貨。英語ではcommunity currency(コミュニティ カレンシー)という。

中央銀行が発行する法定通貨ではなく、地域やコミュニティが発行し自治的に運営する。通貨の流通範囲は特定の地域やコミュニティの構成員に限られ、財貨・サービスを相互に交換・流通するために用いられる。また、無利子で、その信用は構成員の信頼によって支えられている。

信頼を基盤とした互酬的交換や構成員間の社会的交流を促進すると考えられていて、域内循環による地域経済の自律的な成長や、コミュニケーションの多様化、連帯性の向上などに資するとされている。また、まちづくりにも活用できる。

地域福利増進事業

特定所有者不明土地に対して土地使用権を設定できる事業。地域住民その他の者の共同の福祉または利便の増進を図るために行なわれる事業であって、道路、学校、病院、公園、被災者住宅、購買施設や文化教養施設等であって周辺で不足しているものなどを整備する事業が該当する。土地使用権の存続期間は10年を超えることができないが、裁定によって期間を延長することができる。

収用適格事業だけでなく、民間企業等が実施する地域住民等のための公共的な事業も含まれ、所有者不明土地の有効な活用に資するよう措置されている。

地域包括ケア

高齢者を地域単位で包括的に支援する仕組みをいう。要介護状態等になっても可能な限り住み慣れた地域や自宅で生活し続けるように、おおむね30分以内に駆けつけられる圏域で、個々人のニーズに応じて、医療・介護等のさまざまなサービスが適切に提供できるように地域の体制を構築するというものである。

提供が必要なサービスとして、介護保険サービス(介護予防訪問介護など)のほか、高齢者向け住宅、生活支援(見守り、配食、送迎など)、医療系サービス(在宅診療、訪問看護など)、福祉・権利擁護サービス(法的後見、生活保護など)がある。これらを日常生活圏内でニーズに即して複合的に供給しなければならないが、コミュニティビジネスによってこれを担うなど、住宅居住と結びついたケアサービスの拡大・充実が必要だと考えられている。

地域包括支援センター

地域住民の保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支援するための施設。介護保険法に基づき市区町村が設置する。

主な業務は、要介護状態等になることの予防や自立した日常生活の営みなどに対する支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の実施と、要支援認定を受けた者に対して必要なサービスを提供する事業(介護予防マネジメント事業)の実施であり、両方を一体的に運営することによって、地域における保健・福祉・医療の向上を包括的に支援する役割を担っている。

保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士が置かれ、それぞれの専門性が相互に連携する体制が整えられている。また、センターの設置主体は市区町村であるが、その運営は社会福祉法人等に委託されている場合が多い。

地域防災計画

地方自治体が策定する防災に関する基本的な計画で、災害対策基本法に基づいて作成されている。

地域防災計画において定める事項は、災害の類型ごとに、予防・事前対策、応急対策、復旧・復興対策として行なうべき事項とその実施責任についてである。

計画においては、災害は次のように類型化されている。
1.自然災害:地震災害、津波災害、風水害、火山災害、雪害
2.事故災害:海上災害、航空災害、鉄道災害、道路災害、原子力災害、危険物等災害、大規模火事災害、林野災害

また、具体的な対策事項は災害の類型ごとに異なるが、例えば地震災害については、地域の実情などに応じて、
1)予防・事前対策:地震の想定、防災啓蒙活動、観測、防災訓練など
2)応急対策:情報の収集連絡、救急援助、消火、交通確保、避難収容、保健衛生、社会秩序の維持、応急復旧など
3)復旧・復興対策:方針決定、原状復旧、被災者支援、被災中小企業復興など
が記述されている。

なお、地域防災計画とは別に、行政機関や公共機関は、災害時にそれぞれの役割を果たすべく防災業務計画を策定している。
災害対策は、防災・救援・復旧・復興の各段階をたどるが、関係者の具体的な行動は、地域防災計画および防災業務計画に沿って実施されることとなる。

地域密着型サービス(介護保険法における~)

要介護者の住み慣れた地域での生活を支えるため、身近な市町村で提供される介護サービス。介護保険法に基づいて提供されるサービスで、地域包括ケアシステムにおいて重要な役割を担っている。

おおむね30分以内に必要なサービスを提供できる生活圏を単位に構築され、訪問、通い、宿泊などを組み合わせて柔軟に介護サービスを提供する仕組みである。サービス事業者は、公募によって選定・指定される。

介護保険法の介護給付の対象となる地域密着型サービスは、次の9種類である。

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間地域巡回型訪問サービス)
・夜間対応型訪問介護
・認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
・認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
・地域密着型特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・地域密着型通所介護

また、次のサービスについては、介護保険法の予防給付の対象となる。

・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型共同生活介護

チェスト

モノを収納する蓋付きの大きな箱型家具。英語のchestで、日本の「長持(ながもち)」や「櫃(ひつ)」とほぼ同じように使われる家具である。蓋を上げ下げして収納するもののほか、引き出しを用いて収納するものもチェストに含めるのが一般的である。

主要家具の一つで、部屋のなかの目立つ場所に置かれることが多く、装飾が施されている場合もある。また、腰掛や寝台としても利用されることがある。その素材は、伝統的には天然材であるが、金属などを用いたものもある。

地役権

地役権とは、他人の土地を自分の土地の利便性を高めるために利用することができるという権利である(民法第280条)。「通行地役権」などがある。

地階

次の2つの条件を満たす階をいう。

1.床が地盤面下にあるような階であること
2.床から地盤面までの高さが、床から天井までの高さの3分の1以上であること
建築基準法施行令第1条第2号)

地価公示

最も代表的な土地評価である地価公示は、地価公示法にもとづき、国土交通省土地鑑定委員会が毎年3月下旬に公表する土地評価である。

地価公示では全国で選定された3万数千地点の「標準地」について、毎年1月1日時点を基準日として各標準地につき2名以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、その正常な価格を土地鑑定委員会が判定し、毎年3月下旬に公示する。この公示された価格を「公示地価」という。

地価公示によって評価された公示地価は、一般の土地取引価格の指標となるだけでなく、公共用地の取得価格の算定基準ともなっている。
 

地下室

地階に設けた室のことである。
建築基準法では、床面から天井までの高さの3分の1以上が平均地盤面より下にある部屋を「地下室」と呼んでいる。

例えば、地下室の床面から地下室の天井までの高さが2.4mであるとすれば、地下室の床面から地盤面までの高さを80cm以上にすれば、法律上は「地下室」であるということになる。
このように、地盤面から見れば「やや下にある1階部分」のように見える場合でも、法律上は「地下室」ということになる。

ただし、地下室に関する容積率の優遇措置を受ける場合には、地下室の天井が地盤面の上に出ている高さが1m以下であることが必要である。この場合には、地下室の床面から天井までの高さが2.4mであるとすれば、地下室の床面から地盤面までの高さは140cm以上にしなくてはならない。つまり、天井高の半分以上が地盤面より下に埋まっている状態となる。

地下水汚染の無過失責任

水質汚濁防止法では、特定の有害物質を含む水の排出や地下への浸透により、人の生命・身体に損害を与えた場合には、事業者に過失がない場合であっても、事業者に損害賠償の責任を負わせることとしている(水質汚濁防止法第19条~第20条の3)。

この無過失責任を定めた規定が適用される場面としては、有害物質を使用する工場・事業場が有害物質を含む水を公共用水域(河川・湖沼・沿岸等)に排出した場合と、地下に浸透させた場合がありうるが、公共用水域への水の排出により健康被害が発生する状況は今日ではほとんどないと考えられるので、主に地下への浸透により地下水が汚染された状況においてこの無過失責任の規定が実際に適用されると考えることができる。

この水質汚濁防止法の無過失責任の規定において重要な点は次のとおりである。

1.事業者に過失がなくても事業者に損害賠償責任が発生する。従って、被害を受けた者は、有害物質を含む水の地下への浸透と健康被害との間の因果関係を立証すれば、損害賠償を請求することが可能になる。ただし汚染発生源から離れた場所において、地下水の移動により健康被害が発生した場合には、この因果関係の立証は困難になるケースが多いと思われる。

2.水質汚濁防止法の無過失責任の規定は、健康被害についてのみ適用がある。従って地下水の汚染により土地の価格が低下する等の財産上の損害については、水質汚濁防止法は適用されないので、通常どおり民法の不法行為責任(民法709条以下)を追及することとなる。

3.有害物質とは、水質汚濁防止法に定める26種類の物質に限定されている(詳しくは「有害物質」へ)。従って、それ以外の物質による健康被害については通常どおり民法の不法行為責任(民法709条以下)を追及することとなる。

地下水の水質浄化の措置命令

特定施設を設置する工場・事業場が、有害物質を含む水を地下へ浸透させたことにより、健康被害の恐れが生じたときは、都道府県知事は相当の期限を定めて、地下水の水質の浄化のための措置をとることを事業者に命令することができる(水質汚濁防止法第14条の3)。この命令を「地下水の水質浄化の措置命令」と呼ぶ。

この地下水の水質浄化の措置命令は、平成8年の水質汚濁防止法の改正により新設された制度であり、1997(平成9)年4月1日から施行されている。

地下水モニタリング(水質汚濁防止法の~)

水質汚濁防止法によって都道府県知事が毎年度実施している地下水質の測定調査をいう。

全国の約1万2,000の井戸について実施されている。

この地下水モニタリングは、土壌汚染対策法に定める土壌汚染状況調査を実施する対象となる土地を確定するうえで重要な役割を担っている(詳しくは「健康被害が生ずる恐れのある土地の調査」)。

この地下水モニタリングは、次の3種類の調査で構成され、その結果は毎年公表されている。

1.概況調査
各地域の地下水質の状況を把握するための井戸の水質の調査。原則として前年度の対象井戸とは異なる井戸を調査する。

2.汚染井戸周辺地区調査
概況調査等によって発見された地下水汚染がある場合に、その汚染範囲の拡大・縮小を確認するために行なわれる調査。

3.定期モニタリング調査
汚染井戸周辺地区調査により水質汚染が確認された井戸に関して、汚染を継続的に監視するために行なう水質の調査。

地球温暖化対策地域推進計画

温室効果ガスの排出抑制のために地方公共団体が策定する計画で、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づくものをいう。

この計画によって、地域の自然的、社会的条件に応じた総合的、計画的な施策が展開されている。例えば、一定規模以上の建築物の建築主に環境計画書の提出を義務付ける(東京都)、マンション広告等において温熱環境等の環境性能に関する表示を義務付ける(東京都)、北方型の住宅普及に関して補助を行なう(北海道)、高効率給湯器の設置経費に対する補助(岡崎市)などの例がある。

地区計画

都市計画において、それぞれの区域の特性にふさわしい良好な環境の街区を形成するために決定された計画をいう。

1.趣旨
都市計画法では適正な土地利用を実現するために、用途地域特別用途地区をはじめとする多様な地域地区の制度を設けているが、都市化の進展の中で、不良な環境の地区が形成される恐れのあるケース等では、地域地区などの規制だけでは対応できない可能性がある。
そこで、特定の地区について土地利用規制と公共施設整備(道路、公園などの整備)を組み合わせてまちづくりを誘導する制度が必要となった。このような目的のために1980年に創設されたのが、地区計画制度である。

2.地区計画の決定
地区計画は都市計画の一つであるので、都市計画の決定手続により市町村が決定する。
具体的には次の1)または2)に該当する土地の区域について地区計画が定められる。
1)用途地域が定められている土地の区域
2)用途地域が定められていない土地の区域のうち次のいずれかに該当するもの
ア.市街地の開発などの事業が行なわれる、または行なわれた土地の区域
イ.建築物建築敷地の造成が無秩序に行なわれ、または行なわれると見込まれる土地の区域で、公共施設の整備の状況などから見て不良な街区の環境が形成される恐れがあるもの
ウ.優れた街区の環境が形成されている土地の区域

3.地区計画の内容
地区計画に関する都市計画では、地区計画の種類、名称、位置、区域、面積の他、次の事項を定める。
1)地区計画の目標
2)区域の整備、開発および保全に関する方針
3)地区整備計画(詳しくは4.へ)
4)再開発等促進区(詳しくは下記5.へ)

4.地区整備計画
地区整備計画とは、地区施設(主として街区内の居住者等の利用に供される道路・公園・緑地・広場などの施設のこと)、建築物等の整備、土地の利用に関する計画である。
地区整備計画では道路・公園などの整備、建築物等の用途制限、容積率の制限、建ぺい率の制限、敷地面積の最低限度などを詳細に規定することが可能である。従って、地区整備計画はまちづくりのプランであるということができる。
なお、地区計画に関する都市計画では、地区整備計画を定めることができない特別の事情がある場合には、地区計画の区域の全部または一部について、地区整備計画を定めなくてもよいものとされている。地区計画の区域の一部についてのみ地区整備計画を定める場合は、その一部区域をも都市計画に定める必要がある。

5.再開発等促進区
地区計画の区域の内部において、市街地の再開発等を進める場合には、地区計画に関する都市計画において再開発等促進区を定めることができる。再開発等促進区では特別な事項をも定めるものとされている(詳しくは再開発等促進区へ)。

6.地区計画の区域内における届出制度
地区整備計画が定められている地区計画の区域では、土地の区画形質の変更、建築物の建築を行なう場合には、その行為に着手する日の30日前までに市町村長に届け出なければならない。
また地区整備計画において、用途の制限、建築物等の形態の制限、建築物等の意匠の制限が規定されている場合には、それらを変更する行為も30日前の届出が必要である。

地区計画等

特定の地区の特性を反映した市街地等を形成するするための計画で、都市計画において決定されたものをいう。

地区計画等には次の5種類の計画がある。

1.地区計画
2.密集市街地整備法による防災街区整備地区計画
3.地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律による歴史的風致維持向上地区計画
4.幹線道路の沿道の整備に関する法律による沿道地区計画
5.集落地域整備法による集落地区計画

このうち、最も一般的なものは「地区計画」である。地区計画は、地域住民の意見を反映しながら、それぞれの地区の特性に応じたきめ細かなまちづくりを実施し、良好な環境を実現するための計画である(詳しくは地区計画へ)。
防災街区整備地区計画」は、阪神・淡路大震災への反省から、防災機能が不十分な密集市街地について防災施設を整備し、火災・地震による延焼の被害を軽減し、避難経路を確保するようなまちづくりを誘導するための計画である。
「歴史的風致維持向上地区計画」は、地域におけるその固有の歴史および伝統を反映した人々の活動とその活動が行なわれる歴史上価値の高い建造物およびその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境を維持向上するための計画である。
沿道地区計画」は、幹線道路の沿道で道路交通騒音の被害を軽減するとともに、商業その他の幹線道路の沿道としてふさわしい業務の利便を増進するための計画である。
「集落地区計画」は、都市計画区域内の農業振興地域にある集落について、営農と居住の調和の取れた居住環境と適正な土地利用を実現するための計画である。

地区整備計画

地区計画の区域において定められる、道路・公園の整備、用途の制限などに関する具体的な計画。

1.趣旨
地区計画は、特定の区域におけるまちづくりを誘導するために市町村が定める計画である(詳しくは地区計画へ)。この地区計画におけるまちづくりの具体的なプランが「地区整備計画」である(都市計画法第12条の5第2項)(注1)

2.地区整備計画の内容
地区整備計画では下記に掲げる事項のうち、必要なものを定める(都市計画法第12条の5第6項、施行令第7条の4、施行令第7条の6、施行令第7条の7)。
1)地区施設(主として街区内の居住者等の利用に供される道路・公園・緑地・広場などの公共空地のこと)の配置および規模
2)用途の制限
3)容積率の最高限度または最低限度
4)建ぺい率の最高限度、
5)敷地面積または建築面積の最低限度
6)壁面の位置の制限、
7)壁面後退区域(壁面の位置の制限として定められた限度の線と敷地境界線との間の土地の区域のこと)における工作物の設置の制限
8)高さの最高限度または最低限度
9)形態・意匠の制限、垣・柵の構造の制限
10)現に存する草地樹林地等の保全に関する事項

ところで、市街化調整区域内の地区整備計画では「容積率の最低限度」「建築面積の最低限度」「高さの最低限度」を定めることはできない。

蓄電池

放電と充電の両方が可能な電池をいう。

電池は極と電解質で構成され、化学反応によって電流を発生させる(放電する)装置であるが、特定の極と電解質が組み合わさった場合には、放電とは逆方向に電流を流すことによって放電力が回復する(充電する)性質がある。
この性質を利用したのが蓄電池で、放電のみ行なう使い切り電池を一次電池と呼ぶのに対して、蓄電池を二次電池と呼んで区別する。

蓄電池には、電極と電解液の組み合わせに応じて、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン二次電池などの種類がある。例えば、自動車のバッテリーには鉛蓄電池、家庭用蓄電池にはニッケル水素蓄電池が主に使われている。
家庭用蓄電池を利用すれば、住宅での太陽光発電燃料電池による発電と、家電製品や電気自動車などの電力需要とを適切に調節する能力を高めることができると考えられている。

蓄熱式床暖房

床に設置した蓄熱材を利用して暖房する方法。深夜電力で蓄熱材を暖め、日中は蓄熱材からの放熱によって暖房する。

一般に、蓄熱材としてコンクリートを用い、蓄熱材のなかに設置した管に深夜電力を利用してつくった温水を循環させて暖める仕組みが採用されている。従って、リフォームによって設置することは難しい。 

築年数

建物完成後の経過年数をいう。

通常、建物登記簿表題部に記載された「登記原因及びその日付」をもとに判断できる。

一般に、築年数が古いほど、建物の老朽化や損傷、設備の陳腐化がより進行しているが、日常的な管理の状況や、リフォームの有無、マンションの大規模修繕の時期などによってその程度に大きな違いがある。

なお、不動産広告では、建築年月が表示されている。

地権者

土地を使用収益する権利を有する者。土地の所有者、地上権者、賃貸借権者などは地権者である。一方、土地に対する抵当権者などは地権者ではない。

地質地盤図

地層や岩石の構造や形成過程を表す地質図と、地盤の物理特性を表す地盤図を兼ねた地図。地層の3次元の分布形態を平面図、断面図、立体図で表示し、あわせてボーリング調査データが付加されている。都市部を対象に産業技術総合研究所地質調査総合センターが作成している。公表されているのは「東京都区部」「千葉県北部地域」である。

地質地盤図が表す地下浅部の地質地盤特性は、地震被害等と密接に関係し、その情報を活用することによって地震による影響を予測することができる。また、地下の利用や基礎杭の設置に当たっては、地質地盤の特性を詳細に把握しなければならないが、地質地盤図はそのための基礎となる情報を提供する。

地質調査技士

地質調査の実施・業務管理を行なう技術的能力に関する資格。国土交通省の「公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格登録規程」に基づいて、技術者資格登録簿に登録された資格の一つである。

地質調査技士の資格を得るには、(一社)全国地質調査業協会連合会が実施する地質調査技士資格検定試験に合格しなければならない。資格は、「現場調査部門」、「現場技術・管理部門」、「土壌・地下水汚染部門」に分かれていて、5年ごとに資格者としての登録の更新が必要である。

知事免許

宅地建物取引業者が、都道府県知事から免許を受けていること。

宅地建物取引業を営もうとする者が、一つの都道府県内においてのみ事務所を設ける場合には、その都道府県の知事から免許を受けることが必要とされている(宅地建物取引業法第3条第1項)。この規定にもとづき、都道府県知事から免許を受けることを、一般に「知事免許」と呼んでいる。

地上権

建物工作物を所有する目的で、他人の土地を使用する権利のこと(民法第265条)。

土地賃借権と地上権は非常によく似ているが、次のような違いがある。

1.土地賃借権は債権だが、地上権は物権である
2.地上権は、土地所有者の承諾がなくても、他人に譲渡することができる。
3.地上権を設定した土地所有者には登記義務があるので、地上権は土地登記簿に登記されているのが一般的である。

地上権等がある場合等における売主の担保責任

不動産の売買において、引き渡した不動産に、買い主が知らない地上権、対抗力のある不動産賃借権地役権留置権質権が付着していた場合に生じる売り主の契約不適合責任をいう。

担保責任を負わせるには、買い主が、追完請求(付着した権利を消滅させるなどの請求)、代金減額請求損害賠償請求、解除権の行使をしなければならない。

これらの請求等を行なうためは、買い主は、原則として契約不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならないとしている。ただし、売り主が不適合を知っていたときまたは重大な過失によって知らなかったときはその限りではないとされている。

地勢

比較的広域な視点で捉えた土地の概況のことで、自然環境だけでなく、人工的な改変を含めた総合的な土地の状態をいい、地形・水系・植生・交通網・集落などの要素によって構成される。また、洪水、地震、津波などの災害の歴史も地勢に反映されている。

不動産評価や不動産開発に当たっては、当該不動産と周辺環境との関係や当該不動産の特性を把握することが必要となるが、そのためには、地勢を読み取り、十分に理解することが不可欠である。

なお、国土地理院が刊行している20万分の1の基本図は、比較的広域を対象とする土地および土地資源の利用開発、土地に関する調査・研究・計画等の広範囲な用途に供することができるように作成され、地勢図という名称が与えられている。

地籍

土地について筆ごとに示される情報。

示される情報は、位置、形状、面積、筆界、利用の状態、所有等の権利関係などである。過去の位置関係、利用状態、権利関係などを含めていう場合もある。

現在の地籍を明らかにするための公的な調査が「地籍調査」、一定の地籍を表示するしくみが「土地登記」、登記された土地情報を表示する書類が「土地登記簿」である。また、課税のための土地台帳には、地価のような登記で表示されていない地籍が表示されている。

地積

土地登記簿に記載されている土地の面積をいう。

この地積は、明治初期の測量に基づく場合がある等の事情により、不正確であるケースが少なくない。
そのため、土地の売買にあたっては、土地登記簿の地積を信頼するのは危険であり、実際に測量をすることが望ましいといわれている。

地積測量図

土地の表示登記分筆登記を申請する際に、土地家屋調査士が作成し、登記所へ提出する書面。正確な測量技術により土地の面積、土地の形状が記載されている。

地代

借地契約や土地賃貸借契約において、借主が地主に対して支払う賃料のこと。

 

千鳥(施工における〜)

釘などの留め場所を斜めに違えること。継ぎ跡が一直線に並ばず、互い違いのかたちになる。「千鳥掛け」「千鳥打ち」ともいう。また、互い違いとなる配置方法(英語のzigzag)も千鳥という。

地番

土地登記簿表題部に記載されている土地の番号のこと(不動産登記法第79条)。

民有地には地番が付されているが、公有地は無番地であることが多い。
なお、分筆された土地の場合には、原則として分筆の旨を示す記録・記号が付けられている。

地方公共団体

地域における行政を自主的、総合的に実施する役割を担う団体。その組織、運営、財務などについては、憲法の規定に基づき、地方自治法等によって定められている。

普通地方公共団体である都道府県・市町村と、特別地方公共団体である特別区・地方公共団体の組合・財産区の二種類に分類され、いずれも法人である。また、市町村は、地域の事務を一般的に処理する基礎的な地方公共団体である。

地方公共団体は、地方自治の本旨に基づいて組織し、運営しなければならない。この場合、地方自治の本旨とは、「団体自治」(国から独立した地域団体によって自己の事務を自己の機関・責任で処理し、国家から独立して意志を形成すること)および「住民自治」(住民が行政需要を自らの意思・責任によって充足し、意志形成において住民が政治的に参加すること)であるとされている。

地方創生

明確な定義はないが、地域社会が持続するための政策をいう場合が多い。狭義には、「まち・ひと・しごと創生法」に基づいて推進されている政策をさすこともある。

地方創生が政策課題となっているのは、少子高齢化が急速に進行し、特に地方都市や過疎地域の市町村においてその影響が深刻になっているからである。例えば、人口急減による労働力人口の減少や消費市場の縮小が生じ、それが生活サービスの低下を招き、人口の流出を加速する。地域社会や地域経済が縮小のスパイラルに陥る恐れが大きい。

地方創生はこのような事態に対応する政策であり、その基本は、それぞれの地方が独自性を活かして、多様な地域社会を創り出していくことである。またその基盤として、地方の自主性・自立性を高めるべく、分権型社会を確立することも政策課題とされている。

具体的な施策は、① 地方における安定した雇用の創出、②地方への人口移動の推進、③若い世代の結婚・出産・子育てに対する支援、④「しごと」と「ひと」の好循環を支える「まち」の活性化、という4つの目標を設定し、それに即して展開されている。

チムニー

煙突。英語のChimney。


チムニーは、暖炉等の煙を上方に排出するための筒状の設備で、通常、屋根の上に突き出ている。

地目

登記所の登記官が決定した土地の主な用途のこと。 土地登記簿の最初の部分(表題部という)には、土地の所在、地番、地目、地積(土地面積)が記載されている。

地目は、現況と利用状況によって決められることになっており、次の23種類に限定されている。

田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、
墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、
堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地

地目の変更

土地登記簿上の「地目」が、実際のその土地の現況および利用状況と明らかに食い違う場合には、登記所に対して「地目の変更登記」を申請することができる。例えば、農業委員会から農地の転用許可を取得して、農地宅地にした場合には、登記所に対して「地目の変更登記」を申請することとなる。

また農地の転用許可を取得しない場合でも、20年以上の長期間にわたって農地が耕作されていない等の場合には、当該市町村の農業委員会から「非農地証明」を取得した後に「地目の変更登記」を申請することが可能とされる場合がある。

茶室

茶の湯のために造られた建物又は部屋。

一般に、床の間と炉を備え、が敷き詰められている。また、にじり口、下地窓などのような独特の造作が施される場合が多い。

茶の湯が洗練されていく過程で、書院造りが茶の湯の精神と調和するよう改変され、生まれた様式であると考えられている。

仲介

不動産取引における宅地建物取引業者の立場(取引態様)の一つ。
媒介」と同意。

仲介契約

媒介契約」へ。

仲介手数料

媒介報酬(仲介報酬)とも。

宅地建物取引業者媒介により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者が媒介契約にもとづき、依頼者から受け取ることができる報酬のこと(詳しくは報酬額の制限へ)。

仲介報酬

媒介報酬とも。宅地建物取引業者媒介により、売買・交換・貸借が成立した場合に、宅地建物取引業者が媒介契約にもとづき、依頼者から受け取ることができる報酬のこと(詳しくは報酬額の制限へ)。

中間金

中間金とは、売買契約が成立した後に、売買代金の一部として買主から売主へ交付される金銭のこと。契約成立から義務履行(財産移転)までの間に支払われるので、中間金と称する。

また、手付は契約の義務が履行されれば代金に充当されるのに対して、中間金は交付される時点ですでに代金の一部である。

中間検査

阪神・淡路大震災で倒壊した建物が多数存在したことに鑑み、建築物の安全性の向上のために1999(平成11)年に導入された新制度。
この制度では、建築物を新築する際のある中間工程を「特定工程」とし、この特定工程の工事が済んだ時点で検査を義務付けるというものである。それと同時に、中間検査に合格しない限り、それより先の工程の工事が全面的にストップするという厳しい内容となっている。

具体的には、建築基準法の規定(7条の3)によれば、建築主は、特定行政庁が指定した特定工程の工事を完了した日から4日以内に、建築主事に「中間検査」を申し出る必要があるとしている。この申し出を受けた建築主事は申し出から4日以内に工事中の建築物を検査する必要がある。このように、中間検査の申し出から実際の中間検査まで8日間とされており、中間検査が迅速に行なわれるよう配慮されている。
この中間検査の結果、建築物が建築基準法に適合している場合は、建築主事は「中間検査合格証」を建築主に交付しなければならない。

どのような建築物について中間検査を義務付けるかは、それぞれの特定行政庁(知事や市長)が自由に決定できることとされている(建築基準法7条の3)。従って、詳しくは自治体の窓口(建築確認の担当部署)に問い合わせる必要がある。

一例を挙げれば、首都圏のある政令指定都市では、次のような中間検査を義務付けている。まず、対象となる建築物は、木造3階建ての一戸建て住宅などである。
特定工程に指定されているのは、木造3階建て住宅では「屋根工事」である。この「屋根工事」の中間検査に合格する前には、構造耐力上主要な部分を覆う壁・床・天井を設ける工事の工程に進むことはできないこととされている。
このように、屋根工事を一つの区切りとして、工事途中の段階で、建物の構造の安全性をチェックする仕組みになっているのである。

中間省略登記

不動産所有権が、AからB、BからCへと移転した場合、本来ならば不動産登記簿には「AからBへの所有権移転登記」と「BからCへの所有権移転登記」という2個の移転登記が記載されるべきである。
しかし当事者(A・B・C)が相談のうえ、「AからCへの所有権移転登記」という1個の移転登記のみを申請し、登記するケースがある。このような登記を「中間省略登記」と呼んでいる。

中間省略登記は、権利が移転する実態を反映していない登記ではあるが、少なくとも現在の実態(Cが所有者であるという事実)には合致しているので、すでになされた中間省略登記は、当事者全員の合意があれば、有効であるものと解されている。

また不動産取引の実務上は、後日紛争になった場合に備えて、中間者(先ほどの例でいえば、登記簿上に現れないBを指す)から、中間省略登記をなすことについて異議がない旨の承諾書を徴収しておくのが望ましいといわれている。

中高層階住居専用地区

特別用途地区の一つ。中高層の階を「住宅以外」の用途に使用する場合に、建築物の規制を強化する地区である。市町村が指定する。

中高層共同住宅使用細則モデル

分譲マンションのような区分所有建物において、管理規約に基づいて設定される共同生活上の詳細なルールのことを「使用細則」という。

中高層共同住宅使用細則モデルは、公益財団法人マンション管理センターが作成した使用細則のモデルのことである。このモデルは、分譲マンションの管理組合が使用細則を作成する際の有用な指針として活用されている。

なお、中高層共同住宅使用細則モデルは1999年に作成されたが、その後の法改正やマンション標準管理規約の改正に対応して改定され、「細則モデル」として公表されている。現在公表されている細則モデルには次のものがあるが、利用する場合には、追加・改訂の有無を含めて確認が必要である。

また、細則モデルは、国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)に準拠しているので、管理組合で細則の制定等を検討する場合には注意が必要である。


1.マンション使用細則
2.専有部分の修繕等に関する細則
3.専用庭使用細則
4.駐車場使用細則
5.自転車置場使用細則
6.集会室使用細則
7.ペット飼育細則(例1)
8.ペット飼育細則(例2)
9. 管理費等の徴収及び滞納処理細則モデル
10. 管理組合業務委託細則
11. 会計処理細則
12. 防犯カメラ運用細則モデル
13. 大規模修繕工事専門委員会運営細則モデル
14. 理事会運営細則モデル
15. マンション標準管理規約第22条第2項細則モデル

中高層共同住宅標準管理委託契約書

マンションの管理委託契約を締結する際の指針となる標準的な契約書の様式をいう。

1982(昭和57)年に、住宅宅地審議会(当時)の答申にもとづき建設省(現国土交通省)が策定した。

その後、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が施行されるなどの情況の変化を踏まえて、2003(平成15)年に大きく改定され、現在は名称を変更して「マンション標準管理委託契約書」として活用されている。

中高層共同住宅標準管理規約

分譲マンションなどの区分所有建物における管理規約について一定のガイドラインを示すために、国土交通省(旧・建設省)が昭和57年に作成したマンション管理規約のモデルのこと。

現在は名称が変更され、「マンション標準管理規約」となっている。
(詳しくはマンション標準管理規約へ)

中古住宅

既存住宅」を参照

中古住宅流通の活性化

中古住宅の取引を活発にする政策が進められている。この政策によって、既存住宅の活用が進み、住宅の選択肢が広がり、ライフサイクルやライフスタイルに応じた住生活の確保が容易になると考えられている。

中古住宅の流通を活性化するためには、次のような政策が有効であるとされている。

1)適時適切な修理修繕、リフォームによる建物構造の強化や住機能の充実、周辺住環境の整備などによって、既存住宅の質を維持・向上すること。
2)住宅の質を的確に評価し、それに基づいて価格が形成される市場環境を整えること。そのために、住宅履歴の記録・保存、質を調査する技術の確立・普及、質を反映する価格査定手法の確立などを図ること。
3)中古住宅の特性に即した流通サービスを提供すること。たとえば、リフォームとの連携、品質調査・価格査定サービスの充実、建物価値に基づく金融サービスなど。

仲裁(土地収用法における~)

土地収用法において、当事者の双方の申請により行なわれる土地等の対価に関する仲裁のこと。

土地収用では、収用者(起業者)は、事業認定申請書を提出する前に、できる限り多くの土地を土地所有者との合意により取得しておくのが普通である。このような任意の土地取得において、土地等の取得に関しては合意が形成されたものの、土地等の取得の対価について合意が形成されない場合に、土地所有者と起業者の双方が、都道府県知事に申請することにより、3人の仲裁委員によるあっせんを受けることができる(土地収用法第15条の7以下)。この手続きは、事業認定の告示前のものと、事業認定の告示後のものがある。

注視区域

地価が一定の期間内に相当な程度を超えて上昇し、またはその恐れがある区域において、適正な土地利用の確保に支障を生ずる恐れがあるときは、知事は注視区域を指定することが可能となる(国土利用計画法第27条の3)。

注視区域に指定されると、注視区域が市街化区域である場合には、その注視区域内の2,000平方メートル以上の土地を取引しようとする者は、あらかじめ知事に届出を行なうことが必要となる(国土利用計画法27条の4)。
知事は6週間以内に審査を終え、必要な場合には勧告を行なうことができる。取引をしようとする者がこの勧告に従わないときは、知事はその者の氏名・商号等を公表することができる(国土利用計画法第27条の5)。

注視区域では監視区域よりも土地取引の規制の程度が緩やかであり、注視区域の指定でも効果がない場合について、監視区域への移行が予定されている。

注視区域(重要土地等の〜)

重要施設または国境離島等の機能を阻害する行為に供することを特に防止する必要があるとして指定される土地の区域。重要土地等調査規制法に基づき、内閣総理大臣が指定する。

注視区域に指定されるのは、重要施設(自衛隊の施設、米軍基地、海上保安庁の施設、機能が失われると国民の生命、身体、財産に重大な被害が生じる恐れのある政令で指定される生活関連施設)の敷地周囲おおむね1,000m以内の土地および国境離島等の土地である。

注視区域内の土地および建物については、その利用の状況についての調査が実施され、必要に応じて土地等を重要施設または国境離島等の機能を阻害する行為に供しない旨を勧告・命令される。

駐車場

車両を停め置く場所。原則として道路外に確保する。

その構造によって平面駐車場と立体駐車場に分類できる。

平面駐車場は、地上にそのまま駐車する形のもので、その多くは車両を覆う構造物がない(青空駐車場)。

立体駐車場は、立体的な構造物の中に駐車する形のもので、地下駐車場や屋上駐車場も含まれる。駐車できる車両の高さや幅などに制限がある。

立体駐車場は、さらに自走式機械式に分けることができる。自走式立体駐車場は、階の間をつなぐ車路を自ら走行して駐車するかたちとなっている。一方、機械式立体駐車場は、無人の車両を機械によって運搬し収納するかたちのものをいう。機械式立体駐車場はさらに、運搬の方法によって、ピット式、昇降横行式、垂直循環式などに分類することができる。

なお、都市計画で定められた駐車場整備地区においては、駐車場整備計画に基づいて路上・路外の駐車場が整備されるほか、商業地域内などにおいて一定規模以上の建築物を新増築する場合には、条例で駐車施設の設置が義務付けられることがある(附置義務駐車場)。

駐車場整備地区

自動車交通の混雑解消のために都市計画で定められる地区。地域地区の一つで、地区内で駐車施設の付置が義務づけられる。「駐車場法」に基づく制度である。

駐車場整備地区は、商業地域、準商業地域などのうち、自動車交通が混雑する地域を対象に指定される。

駐車場整備地区内では、条例の定めに従って、延べ面積2,000平方メートル以上の建築物または事務所等の特定用途に供する一定面積以上の建築物の新増築に当たっては、駐車施設を付置しなければならない。また、駐車場整備地区については駐車場整備計画が策定される。

なお、駐車場整備地区以外の地域においても、条例によって、駐車場整備地区内と同様に、駐車施設の付置義務が課せられる場合がある。

中二階

一階と二階床の中間につくられた階。

中二階は、階高が低めで、床面積が一階より小さく、張り出しているかたちとなっている。バルコニーに似て、空間的に一階とつながるため開放的であるとされる。

また、二階以上の階について同様のかたちでつくられた階も「中二階」という。

注文住宅

自ら工事を発注して建築する住宅。一般に戸建て住宅であって、デザイン、間取りなどを自分で決めることができるほか、建築途上で設計を変更するなど、建築過程に関与することができる。この場合、土地の手当ても自らが行なうことになる。

建築に当たっては、自らが建築主として建築確認を申請しなければならないが、通常は、設計や工事監理を建築士に委託する。また、木造の住宅で高さが13mを超える場合など一定のものの工事については、必ず建築士が設計・工事監理に当たらなければならないとされている。

注文住宅と対比されるのが「分譲住宅」で、分譲住宅は、販売事業者が住宅を建築し、居住者がそれを購入することとなる。

駐輪場

多数の自転車を停め置く施設。鉄道駅付近などに公共的に設置されているほか、大規模な商業施設について設置が義務づけられている。また、集合住宅に付置されていることも多い。

駐輪場の形式は、平面式のほか、立体式、地下式、機械式などがある。

長期修繕計画

分譲マンションの性能を維持し老朽化を防止するために、管理組合が作成する分譲マンションの長期的な修繕計画のことである。

長期修繕計画は、一般的に10年から30年程度の期間を対象として、マンションの各箇所に関する鉄部等塗装工事・外壁塗装工事・屋上防水工事・給水管工事・排水管工事などの各種の大規模修繕をどの時期に、どの程度の費用で実施するかを予定するものである。

1999(平成11)年度の建設省(現・国土交通省)の「マンション総合調査」によると、これらの大規模修繕のうち新築後5~6年で実施率が高まるのが鉄部等塗装工事である。
また新築後9~10年では外壁塗装工事と屋上防水工事の実施率が高まり、給水管工事・排水管工事は新築後15年以降に実施率が上昇する。
ただしマンションの建築・設備の仕様によってこれらの時期は大きく変化する。

長期修繕計画ではこうした大規模修繕の実施時期を定めるだけでなく、その費用についても収支計画を定めるのが望ましい。
大規模修繕の費用は原則として「修繕積立金」をとり崩すことで賄われる。また、マンションの管理規約により「駐車場収入の剰余金」が「修繕積立金」に組み入れられる場合も多い。
しかしこれらの収入だけでは大規模修繕の費用をまかなうのに十分ではないケースが非常に多いので、各大規模修繕の実施時期において、費用の不足分を各戸から一時金として徴収することも計画に組み込んでおく必要がある。

このように長期修繕計画は、分譲マンションの管理運営上非常に重要な事項であるので、通常は管理規約において長期修繕計画の作成を管理組合に義務付けている場合が多い。
ちなみに、国土交通省が作成した管理規約のモデルである中高層共同住宅標準管理規約では、次のような旨の規定を設けて、長期修繕計画の位置付けを明確化している。

1.長期修繕計画の作成は、管理組合の業務である(単棟型規約第31条)。
2.管理組合の理事会は、長期修繕計画の案を作成する(単棟型規約第52条)。
3.長期修繕計画を作成するには、集会の決議を行なう必要がある(単棟型規約第46条)。
4.修繕積立金は、一定年数の経過ごとに計画的に行なう修繕などに限って支出することができる(単棟型規約第27条)。

長期取得時効

取得時効とは、所有の意思をもって物を一定期間占有したとき、その物の所有権を取得することができるという時効の制度である(民法第162条)。

占有を開始した時点において自己の物であると信じ、そう信じるにつき無過失(善意かつ無過失)であれば、10年間の時効期間の経過により所有権を取得することができる。これを短期取得時効という(民法第162条第2項)。
これに対して、占有を開始した時点において自己の物でないことを知り、または過失によって知らない場合(つまり悪意または有過失の場合)には、20年間の時効期間の経過により所有権を取得することができ、これを長期取得時効という(民法第162条第1項)。

長期取得時効の成立要件は、ほぼ短期取得時効の成立要件と共通であるが、次のとおりである。
(なお地上権賃借権の取得時効については、所有権以外の財産権の取得時効へ)

1.物を占有すること
物とは原則的に「他人の物」であるが、「自分の物」であってもよい。時効はそもそも、継続した事実状態と法律関係を一致させようとする法制度であるので、自分の物を長期間占有したという継続した事実状態を主張することは当然に可能である(判例)。また物とは国の財産であってもよい(例えば使用が廃止された国有水路など)。
物とは不動産でも動産でもよいが、動産については即時取得の制度が適用されるので、通常は動産について取得時効が問題になることはあまり考えられない。

2.20年間の時効期間が経過すること
占有が20年継続する必要がある。占有者が占有を中止したり、他人によって占有を奪われた場合には、その時点で時効の進行は中断する(つまり振り出しに戻る)。
また時効期間の計算では、占有を実際に開始した時点から起算する必要があり、占有の途中から起算することは許されないとするのが判例である。

3.平穏かつ公然に占有すること
通常は、平穏かつ公然に占有しているものと推定されるのであまり問題とならない。真の所有権者であると主張する者が占有者に抗議したとしても「平穏な占有」である。また、占有者が自己の物でないと知っていても「平穏な占有」である。

4.所有の意思をもって占有すること
所有権者と同様に物を支配する意思をもって占有することが必要である。土地賃貸借契約によって占有する場合には、その占有はあくまで賃借人としての占有に過ぎないので、原則として「所有の意思」をもってする占有とはならない。

長期譲渡所得

税務上の概念で、所有期間が5年を超える土地・建物の譲渡に係る所得のこと、所有期間は譲渡した年の1月1日現在で算定する。

これに対する所得税額は、次のように算出される。
「長期譲渡所得金額=譲渡価額 −(取得費+譲渡費用)−特別控除」
「税額=長期譲渡所得金額×税率」

税率は、原則として、所得税15%、住民税5%である。ただし、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡については3,000万円の特別控除および軽減税率(所得金額6,000万円までは10%)が適用されるなどの特例がある。

長期生活支援資金貸付制度

高齢者世帯の生活を支援するために、厚生労働省社会援護局が平成14年12月に創設した貸付制度のこと。日本初の全国的かつ公的なリバースモーゲージとして注目されている。

厚生労働省社会援護局地域福祉課では、従来から低所得世帯等を支援するため「生活福祉資金貸付制度」を実施しており、都道府県・市町村の社会福祉協議会がその融資主体および窓口となっていた。この「生活福祉資金貸付制度」を改訂することにより、平成14年12月24日に創設されたのが「長期生活支援資金貸付制度」である。

「長期生活支援資金貸付制度」は、土地資産を持ちながら低所得であるような65歳以上の高齢者世帯を対象として、生活資金や医療費等の貸付けを行なうという制度であり、平成15年4月以降、全国の各都道府県社会福祉協議会において順次導入・実施されている。

その具体的な内容は、およそ次の通りである(「平成14年12月24日厚生労働省発社援第1224001号厚生労働事務次官通知」などを参考とした)。

1.貸付けの仕組み
都道府県社会福祉協議会が融資主体となり、区市町村社会福祉協議会が融資申込みの受付窓口となる。また民生委員は、融資の相談業務を行なうほか、融資を受ける高齢者世帯に関する調査等を社会福祉協議会の要請により行なうものとされている。なお民間金融機関は一切関与しない。

2.融資を受けるための資格
融資を受けるためには次の1)から5)のすべての条件に当てはまることが必要である。
1)原則として65歳以上の高齢者世帯で、高齢者以外の同居人(子などの同居人)がいないこと
2)市町村民税が非課税となる程度の低所得世帯であること
3)現に居住し所有する土地および建物を担保にすること(ただしマンションおよびその敷地は不可)
4)土地および建物が配偶者との共有であるときは、配偶者を連帯債務者とすること
5)土地および建物に、借家権借地権・先順位の抵当権などの権利が付着していないこと

3.貸付けの方法
融資限度額は、現に居住している建物の敷地である土地の評価額のおおむね7割を基準として決定される。
土地評価に当たっては不動産鑑定士による簡易な評価が行なわれる。ただし評価額が1,000万円以上であることを一応の目安として、融資を実行することとされている(具体的な評価額の下限は都道府県社会福祉協議会が決定する)。
1ヵ月当たりの融資額は、原則として30万円以内である(ただし医療費等のための臨時増額が可能)。
貸付金の利率は、長期プライムレートを基準として都道府県社会福祉協議会の会長が定める。
貸付金の元金および利息は、融資契約期間中は返済する必要がなく、融資契約の終了時(高齢者の死亡時など)に一括返済する。

4.担保設定など
現に居住し所有する土地および建物に、根抵当権を設定する。さらに当該土地および建物について代物弁済予約を行なうことが必要とされている。さらに人的保証として、推定される相続人の中から1名を、融資の連帯保証人としなければならない。また融資を受ける者は、融資契約に関して推定相続人全員の同意を取得するように努めなければならない(同意を得られない推定相続人に対しては融資契約の締結を告知する)。
なお融資を受けた者が、子またはその他の者を当該不動産に新たに同居させようとする場合には、都道府県社会福祉協議会の会長の承認を受ける必要がある。

5.資金の回収
融資契約が終了した際に、金銭による返済が行なわれない場合には、都道府県社会福祉協議会の会長は、根抵当権の実行と代物弁済とのどちらかを選択し、貸付金を回収することができる(ただし融資を受けた者(またはその相続人)は代物弁済を選ぶことを会長に要請することができない)。

6.費用負担
土地の評価の費用、根抵当権の登記等の費用、不動産の処分にかかる費用は、融資を受ける者が負担する。

長期プライムレート

銀行が、1年を超える期間、最優遇で貸し出す場合の金利。貸し出す企業の業績や財務状況が良好な場合に適用される。これに対して、1年以内の期間最優遇で貸し出す場合の金利を「短期プライムレート」という。

長期プライムレートは、それぞれの銀行が独自に決めるが、一般に、長期金融市場(回収期間が1年を超える資金の取引が行なわれる市場で、主に、国債、社債などの証券が取引される)での取引等を参考に運用されている。

なお、固定金利型住宅ローンの金利は、融資時の長期プライムレートに一定幅を上乗せし、あるいは長期金融市場の動向を参考に決定されることが多い。

長期未着手都市計画

都市計画決定されてから長期間経過したのに、事業化の目処が立っていない都市計画施設をいう。特に、都市計画道路について例が多い。

都市計画決定された都市計画施設の区域については、その区域内で建築物を建築しようとする場合には許可を要し、移転が容易であるなどの条件満たさないと許可されない。そして、事業化の見通しがないままこのような私権に対する制限が長年継続している場合には、その制限の合理的な理由の前提を欠く事態となっている恐れがあり、制限によって生じた損失に対しての補償を拒むことは許されないのではないかという考えがある(2005(平成17)年11月1日最高裁三小法廷判決補足意見。この判決事案における事業未着手期間は60年以上であるが、補足意見は、当該土地の置かれた環境などに照らして未だ補償を必要とする状態には至っていないとした)。

このような事情を背景に、長期未着手の都市計画道路について、その見直しが進められている。見直しに当たっては、社会情勢の変化・政策の転換・都市構造の変化の検証、 「広域的な観点」「地域のまちづくりの観点」からの必要性の検証などを行うとされている。また、既決定路線・区間を廃止する場合には、長期にわたっての計画区域内の建築制限についてその状況を把握することとされている。

長期優良住宅

長期にわたり使用可能な質の高い住宅をいう。

その具体的な基準は明確には定まっていないが、単に物理的に長寿命であるだけでなく、ライフスタイルの変化などへの対応、住環境への配慮など、社会的に長寿命であることが必要であるとされる。「200年住宅」ともいわれる。
長期優良住宅の開発・普及は、優良な住宅ストックを形成するための重要な政策の一つであると考えられている。

2008年には、長期優良住宅の普及のために「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(長期優良住宅普及促進法)」が制定され、i)長期使用に耐える構造(劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、省エネルギー性、バリアフリー性)を備え、ii)居住環境、iii)自然災害への配慮、iv)住戸面積、v)維持保全計画について一定の基準を満たす住宅を認定する制度(認定長期優良住宅制度)が創設されている。 

また、認定長期優良住宅の普及のために、税制上の優遇、容積率の制限緩和、超長期住宅ローンなどの措置が講じられている。

同時に、法律とは別に、長期間使用可能な住宅の先導的なモデルの開発や、住宅の建築確認、点検、保全工事などの情報(住宅履歴情報)を記録・保存する仕組みを整備し、その活用などによって優良な住宅の円滑な流通を促進することなども推進されている。

長期優良住宅化リフォーム

既存住宅を長期優良住宅に改修することをいう。

長期優良住宅化リフォームの内容には、① 耐震改修、② 省エネルギー改修、③ 耐久性向上改修(劣化対策および維持管理・更新の容易性確保)がある。これらの改修のうち一定の基準を満たすものについては、工事費の税額控除および固定資産税の減額措置を受けることができる。

また、既存住宅を長期優良住宅とするための増改築計画について認定する制度があり、認定基準を満たす工事は補助事業の対象となる。

長期優良住宅に関する課税の特例

長期優良住宅として認定された住宅(認定長期優良住宅)を対象とした税制上の優遇措置。その内容は、次の3つである。


1 住宅ローン減税の上乗せ
 
 認定長期優良住宅に対する住宅ローン減税について、控除対象借入金限度額を、一般住宅よりも優遇する。

2 所得税額の控除(投資型減税)    
 
 認定長期優良住宅の新築・取得等において、標準的な性能強化費用(通常の住宅よりも上乗せして必要となる費用)の10%を所得税額から控除する(居住年に応じて控除対象額および控除額に限度がある)。


3 登録免許税不動産取得税固定資産税の軽減措置

認定長期優良住宅に対する登録免許税・不動産取得税・固定資産税の課税について、次のような軽減措置を適用する。

・登録免許税:税率を一般住宅の特例よりもさらに引き下げる。
 所有権保存登記 0.15%→0.1%

 所有権移転登記 0.3%→マンション0.1%、戸建て0.2%
・不動産取得税:課税標準からの控除額を一般住宅の特例よりも増額する。

 1,200万円→1,300万円

・固定資産税:軽減期間を一般住宅特例よりも延長する。
 戸建て住宅 3年→5年、中高層住宅 5年→7年

ただし、これら1〜3の特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

長期優良住宅認定制度

長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられている住宅を認定する制度。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(長期優良住宅普及促進法)」に基づく仕組みである。

認定は、(1)住宅を建築する者が、住宅の構造・設備、維持保全の方法などを記載した「長期優良住宅建築等計画」を作成して行政庁に認定を申請し、(2)行政庁は、申請に係る計画が認定基準に適合するときには、認定して申請者に通知する、という方法で実施される。

認定基準は、次の5項目である。 

1)構造及び設備が、劣化対策、耐震性、可変性(ライフスタイルの変化等に応じて構造・設備の変更が容易)、維持管理・更新の容易性、省エネルギー性、バリアフリー性(共同住宅について)に関する基準を満たしていること(長期使用構造等であること)

2)地区計画景観計画建築協定等と調和していること

3) 自然災害による被害の発生の防止または軽減に配慮されたものであること

4)良好な居住水準を確保するために必要な住戸面積が確保されていること

5)維持保全計画を策定し、構造耐力上の主要部、雨水の浸入を防止する部分、給水・排水設備について、少なくとも10年ごとに点検すること

認定された長期優良住宅(認定長期優良住宅)の新築等に対しては、税制上の優遇措置(住宅ローン減税の上乗せ、性能強化費用の一部についての所得税額の特別控除、登録免許税等の軽減)や容積率の特例が適用される。

長期優良住宅普及促進法

長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅を普及するための法律。正式には、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」といい、2008(平成20)年に制定された。

この法律は、長期優良住宅を認定するための手続き、基準などを定めている。この制度によって認定された住宅が「認定長期優良住宅」である。

調光器

照明の明るさを調節するための装置。

従来は電気抵抗や電圧を変える装置(抵抗器または変圧器)が用いられていたが、最近は、半導体によって電力を変換する装置(サイリスタ—)が使われている。

なお、蛍光灯など調光器を使えない照明装置があるので注意が必要である。

長周期地震動

地震による周期の長いゆっくりとした大きな揺れをいう。

長周期地震動は、① 震源が浅くて大きな地震ほど発生しやすい、② 遠くまで伝わる、③ 堆積層で波が増幅される、という特徴がある。

高層ビルの固有周期は長いため長周期の波と共振しやすく、共振すると長時間にわたり大きく揺れる。また、高層階の方がより大きく揺れる傾向がある。

長尺塩ビシート

プラスチック系床材のうち、塩化ビニル系床材であって、発泡層を含んでいない、幅の広いロール状のプラスチックシートのことを「長尺塩化ビニルシート」または「長尺塩ビシート」と呼んでいる。

「長尺塩ビシート」は、ロール状であるため大きな床面の仕上げに適しており、同時に硬質で耐久性・耐摩耗性に優れている。このため、学校、病院、オフィスなどでよく使用されている。

調停調書

紛争を解決するために当事者が互いに譲歩して合意に達することを「和解」というが、これに対して、当事者以外の第三者が介入することにより当事者間の合意を形成することを「調停」という。

民事調停法にもとづく民事調停手続きでは、当事者の一方が簡易裁判所(または地方裁判所)に調停を申し立て、裁判官と調停委員が調停案を作成し、当事者双方が調停案に合意すれば、調停調書が作成される。

このようにして作成された調停調書は、債務者に給付義務を強制的に履行させる手続き(強制執行)を行なう際に、その前提として必要とされる「債務名義」の一つである。

町内会

地域の住民が組織した任意団体。集落、街区など一定の区域に居住する者を会員とする権利能力なき社団で、住民相互の連絡や親睦、行政機関等との協力の推進などの自治的な活動を行なっている。

町内会の名称、組織形態、活動内容はさまざまで、特に決まりはない。

なお、地方自治法は、市町村内の一定の区域に住所を有する者が地縁に基づいて形成する町内会等の団体について、市町村長の認可によって法人格を付与する制度を定めている。認可を受けた町内会等は「認可地縁団体」とされ、法人として活動できるが、行政組織ではない。

丁番

2つの面を開閉できるようにつなぐ部品で、扉、蓋などに使われる。「蝶番(ちょうつがい)」と同義である。

基本的なしくみは、管付きの2枚の板を管に通した1本の軸(ピン)で連結し、ピンを回転軸として板を開閉することである。単純な丁番のほか、ばねによって自動的に閉まるもの(スプリング丁番)、開閉位置を任意に保つことのできるもの(トルク丁番)、複数の軸によってスライドしながら開閉するもの(スライド丁番)など、多くの種類がある。

張壁

構造耐力(自重、積載荷重、積雪、地震力、風圧力などを支えまたは対抗する力のこと)を負担しない壁である。

具体的には、耐力壁ではない間仕切り壁が張壁である。また近年、高層ビルの外壁に使用されているカーテンウォールも張壁である。

聴聞

行政機関が処分に先立ち、相手方や関係人に意見を述べる機会を与える手続きをいう。

行政手続法では、聴聞は、不利益処分のうち相手方に対する打撃の大きな許認可の取消しなどについては聴聞を義務付け、それ以外の場合には弁明の機会を付与するとしている。聴聞は口頭で審理が行なわれ、当事者には証拠書類等の提出、文書閲覧などが認められている(弁明は原則として書面の提出で行なう)。

宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者に対する指示または業務の停止、および、宅地建物取引士に対する指示またはその事務の禁止の処分については、行政手続法の規定にかかわらず、すべての場合に聴聞を行なわなければならないとしている。そのほかの監督処分を行なう場合にも、行政手続法に従って聴聞が行なわれ、または弁明の機会が付与されるのは当然である。

直接還元法

不動産鑑定評価などに当たって用いられる不動産の収益価格を求める手法の一つをいい、不動産から得ることのできる一定期間(通常1年間)の純利益(収入から経費を減じた額)を一定の還元利回りで除して算出する手法である。

もう一つの手法はDCF法であり、両者の選択は対象不動産の性格や算出の目的に応じて決められる。ただし、不動産の証券化などにおける収益見込みの算出には、原則としてDCF法を用いることとされている。

直接還元法は、DCF法に比べて簡便であるが、精度は劣るとされる。だが、純利益の把握や還元利回りの設定によって予測の精度が左右されることは、DCF法についても同様である。

直接基礎

建物の荷重が、基礎を通じて直接的に地盤に伝達されるとき、この基礎を直接基礎という。

直接基礎には「独立基礎」「布基礎」「べた基礎」の3種類がある。

貯水槽水道

水道事業者から給水される水道水を一旦水槽に貯水し、そこから給水する方式をいう。マンションや事務所ビルでよく使われている給水方法で、貯水槽内の水及びそこから配水される水の水質等については、貯水槽の設置者が管理責任を負う。

なお、貯水槽の有効容量が立方メートルを超える貯水槽水道を「簡易専用水道」という。

直下型地震

居住地域の直下で発生する地震。明確な定義はないが、比較的浅い活断層を震源とする場合が多く、初期微動がほとんどないまま、いきなり縦揺れが生じる。小さな規模(マグニチュードが小さい)であっても、大きな被害が生じやすい。たとえば、阪神・淡路大震災(1995年)は、震源の深さが16km、マグニチュード7.3の直下型地震で、震度7を記録し、死者6,434人、全壊住家10万4,906戸などの被害が生じた。

貯留機能保全区域

河川氾濫水や雨水を一時的に貯留し、流域の都市浸水を抑制する機能を保全するために指定された土地の区域。現に農地等として貯留機能が保全され、かつ、都市浸水が想定される土地の区域などが対象で、貯留機能保全区域に指定されると一定の行為について届出が必要となる。特定都市河川浸水被害対策法に基づく制度で、区域の指定は、土地の所有者の同意を得て、都道府県知事等が行なう。

貯留機能保全区域内の土地において、盛土、塀の設置など氾濫水や雨水を一時的に貯留する機能を阻害する行為をしようとする者は、行為に着手する30日前までに、行為の種類、場所、設計・施行方法、着手予定日等を都道府県知事等に届け出なければならない。都道府県知事等は、都市浸水の拡大を抑制する効用を保全するため必要があると認めるときは、届出をした者に対して必要な助言又は勧告をすることができる。

貯留機能保全区域の指定は、土地の所有者が変わる場合でも引き続き効力を有するため、宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、この制限がある旨を重要事項として説明しなければならない。

賃借権

賃貸借契約によって得られる借主の権利をいう。

借主は契約の範囲で目的物を使用し収益できる一方、貸主に賃料を支払わなければならない。民法上、債権とされる。

賃借権は債権であるので、

1.登記しなければ第三者に対抗できない(賃貸人に登記義務はなく、登記がなければ対抗要件を欠くので、例えば目的物が譲渡されると新たな所有者は賃借権に拘束されない)

2.賃貸人の承諾なしに賃借権の譲渡・転貸ができない(承諾なしに第三者に使用・収益させたときには賃貸人は契約を解除できる)

など、物権に比べて法的な効力は弱い。

しかし、不動産の賃借権は生活の基盤であるため、賃借人の保護のために不動産の賃借権について特別の扱いを定めている(賃借権の物権化)。

すなわち、対抗力については、借地に関してはその上の建物保存登記、借家に関しては建物の引渡しによって要件を満たすこととした。また、譲渡・転貸の承諾については、借地に関しては、建物買取請求権を付与し、さらには裁判所による承諾に代わる譲渡等の許可の制度を設け、借家に関しては造作買取請求権を付与した(いずれも強行規定である)。

そのほか、契約の更新拒絶や解約において貸主の正当事由を要件とすることを法定化し、判例においては、賃借権の無断譲渡・転貸を理由とした契約解除を厳しく制限する、賃借権にもとづく妨害排除請求権を承認するなど賃借人保護に配慮している。

一方で、借地借家の供給促進の観点から定期借地権、定期借家権が創設され、賃借権の多様化が進みつつある。

賃借権の取得時効

取得時効とは、物を一定期間占有したとき、その物の権利を取得することができるという時効の制度であるが、わが国の民法では、所有権の取得時効を定める(民法第162条)だけでなく、地上権地役権などの所有権以外の財産権の取得時効も定めている(民法第163条)。

このため、地上権・地役権などの物権(用益物権)については当然に取得時効が成立するのである。賃借権という債権についても取得時効が成立するかについては、取得時効は「物」を支配するという事実状態を尊重する制度であり、債権は取得時効の対象にはなり得ないと考えることもできるが、判例では、不動産賃借権は地上権と同様に不動産を占有する権利であるので、民法第163条の財産権に含まれ、取得時効が成立するものとしている。
このような賃借権の取得時効については、取得時効を主張する者が「自己のためにする意思」をもち、「権利を行使する」ことが必要である。

自己のためにする意思とは「賃借の意思」であり、不動産を使用収益するという意思のことである。また「権利の行使」とは、「賃借の意思にもとづいて不動産を使用収益し、その使用収益が賃借の意思にもとづくものであることが客観的に表現されていること」であると解釈されている(判例)。

「客観的に表現されている」といえるためには、賃料の支払い(または供託)が必要であるというのが判例の立場である。例えば、Aは自称代理人であるBとの間で土地賃貸借契約を締結し、Aがその土地上に建物建築し、継続的に自称代理人であるBに対してAが地代を支払ってきたという事例において、判例は地代支払いという事実を重視して、Aが土地賃借権を10年間の時効期間により時効取得することを認めている(昭和52年9月29日最高裁判決)。

賃貸経営

不動産を賃貸する事業をいう。

賃貸する不動産は、住宅、事務所ビル、店舗など多様であるが、賃貸料を収益源とすることは共通である。

賃貸経営に当たっては、賃借人の募集や交渉・契約、賃貸料の徴収・管理、賃貸不動産の維持管理などの業務を実施しなければならない。

賃貸経営を行なうことについては特別の資格は必要ない。しかし、賃貸経営を支援する事業のうち、賃借人の斡旋など賃貸借を媒介する事業については、宅地建物取引業の許可が必要である。

賃貸借

ある目的物を有償で使用収益させること、あるいはそれを約する契約をいう(賃貸借契約)。

賃貸借契約の締結によって、貸主(賃貸人)は目的物を使用収益させること、目的物を修繕すること等の債務を、借主(賃借人)は賃料を支払うこと、目的物を返還する際に原状回復すること等の債務をそれぞれ負うことになる(従って双務契約である)。

民法では、あらゆる賃貸借契約について、

1.契約期間は最長でも20年を超えることができない、2.存続期間の定めがない場合にはいつでも解約の申し出ができる、3.賃貸人の承諾がない限り賃借人は賃借権の譲渡・転貸ができない、4.目的物が不動産の場合には賃借人は登記がない限り第三者に対抗できない(賃貸人には登記義務がないとされるから結果として賃借人は対抗力を持つことができないこととなる)

等と規定している。

しかしながら、不動産の賃貸借は通常は長期にわたり、また、居住の安定を確保するために賃借人を保護すべしという社会的な要請も強い。そこで、不動産の賃貸借については、民法の一般原則をそのまま適用せず、その特例として、

1.契約期間を延長し借地については最低30年とする、2.契約の更新を拒絶するには正当事由を必要とする、3.裁判所の許可による賃借権の譲渡を可能にする、4.登記がない場合にも一定の要件のもとで対抗力を認める

等の規定を適用することとされている(借地借家法。なお、契約期間等については、定期借地権など特別の契約について例外がある)。

賃貸住宅管理業

賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、住宅の点検、清掃等の維持保全業務およびこれと併せて行なう家賃、敷金共益費等の管理業務を実施する営業。業務の実施について、賃貸住宅管理業法に基づき規制が課されている。

まず、賃貸住宅管理業を実施する場合には、管理戸数が一定規模未満の事業を除き、国土交通大臣の登録を受けなければならない。

また、営業に当たっては、a)事務所毎に、業務管理者(賃貸住宅の管理に関する知識・経験等を有する一定の資格者)を選任し配置すること、b)管理を受託する契約の締結前に具体的な管理業務の内容・実施方法等(重要事項)について書面を交付して説明すること、c)管理する家賃等について自己の固有の財産等と分別して管理すること、d)業務の実施状況等について管理受託契約の相手方に対して定期的に報告すること、e)名義貸しをしない、知り得た秘密を守る、標識を掲示するなどの義務を遵守しなければならない。

登録を受けた賃貸住宅管理業者は、国土交通大臣による監督を受けることとなるが、賃貸住宅管理業法は、監督措置として、報告聴取、立入検査、業務改善命令、登録の取り消しなどを定めている。

なお、賃貸住宅管理業に対する法規制は、賃貸住宅管理業法の施行(2021年6月)から発効し、また、法施行のときに現に賃貸住宅管理業を営んでいる者の登録義務は一年間猶予される。

賃貸住宅管理業者登録制度

賃貸住宅管理を営業する者(賃貸住宅管理業者)を登録する制度をいう。「賃貸住宅管理業法」に基づく制度である。

管理する住宅戸数が一定規模以上の賃貸住宅管理業者は、国土交通大臣の登録を受ける義務がある。登録は申請によって行なうが、一定の要件に該当すれば登録を拒否される。登録の有効期間は5年間で、期間は更新できる。

登録を受けた賃貸住宅管理業者は、営業に当たって、名義貸しの禁止業務管理者の選任、業務の一括再委託の禁止、財産の分別管理、秘密の保持等の業務規制を遵守しなければならない。

この登録制度は、法律によって定められるまでは国土交通省の告示に基づいて実施され、ほぼ同様の規制が課せられていたが、登録するか否かは任意であった。法律に基づく制度に移行した結果、登録が義務化されたのである。

なお、この制度に関する法律の施行は2021年6月からである。また、法施行のときに現に賃貸住宅管理業を営んでいる者の登録義務は1年間猶予される。

賃貸住宅管理業法

賃貸住宅を管理する業務を適正に実施するための措置を定めた法律。正式な名称は「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」で、2020年6月に制定された。

賃貸住宅管理業法が定める主な措置は次のとおりである。

(1)賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設

・委託を受けて賃貸住宅の管理業務を行う事業を営もうとする者について、 国土交通大臣の登録を義務付ける。(ただし、管理戸数が一定規模未満の者は対象外とする。なお、管理業務とは、賃貸住宅の維持保全及びこれと併せて行う家賃、敷金共益費等の管理である。)

・賃貸住宅管理業者の業務について、次のことを義務付ける。

 a)事務所毎に、業務管理者(賃貸住宅の管理に関する知識・経験等を有する一定の資格者)を選任し配置すること

 b)管理受託契約の締結前に、具体的な管理業務の内容・実施方法等(重要事項)について書面を交付して説明すること

 c)管理する家賃等について、自己の固有の財産等と分別して管理すること

 d)業務の実施状況等について、管理受託契約の相手方に対して定期的に報告すること

 e)名義貸しの禁止、知り得た秘密を守ること、標識の掲示など

(2)サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置

・サブリース業者及び勧誘者が特定賃貸借契約(住宅を転貸するための賃貸借契約)を勧誘する場合に、契約の相手方に誇大に広告する行為及び家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げずまたは不実を告げる行為を禁止する。

・特定賃貸借契約の締結前に、家賃、契約期間等(重要事項)を記載した書面を交付して説明することを義務付ける。

 なお、法律は、(1)に関しては21年6月から、(2)に関しては20年12月から施行される。また、(1)については、法施行のときに現に賃貸住宅管理業を営んでいる者の登録義務は、一年間猶予される。

賃貸住宅管理業務処理準則

賃貸住宅管理を業務として行なう場合に基準となるルールをいう。国土交通省の告示に基づくもので、賃貸住宅管理業者として登録した事業者はこれを遵守する義務を負っている。

この準則は、賃貸住宅管理業者の登録制度が法定化されたため、賃貸住宅管理業法の施行(2021年6月)とともに廃止され、ほぼ同様の内容が法律に基づく義務として課せられている。

同準則が定める主要ルールは次の通りである。
(1)禁止行為
不実告知、不確実事項に関する断定的判断の提供、重要事実の不告知等
・費用その他についての誇大広告等
(2)重要事項の説明・書面交付の義務
・賃貸人に対して:管理受託契約の内容(業務の内容・実施方法、費用、再委託、免責などに関する事項)等
・賃借人に対して:管理業務の内容・実施方法等
(3)管理業務の方法
・基幹業務についての一括再委託の禁止
・家賃等の分別管理義務
・賃貸人に対する事務報告義務
・業務に関して知り得た秘密を漏らさない義務

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律

「賃貸住宅管理法」を参照。「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」は「賃貸住宅管理法」の正式な名称である。

賃貸人の地位の移転

賃貸不動産が譲渡されたときに、賃貸人の地位が譲渡を受けた者に移転すること。民法に定められている制度である。

この移転は、賃貸借について、賃借権の登記、借地借家法の規定(登記がなくても建物の引き渡しがあれば対抗力が生じる旨の定め)などによる対抗要件が備わっていれば、原則として当然に(意思表示しなくても)効力を生じる。また、譲渡による賃貸人の地位の移転は、譲り受けた不動産について所有権移転の登記をしなければ、賃借人に対抗できない。

なお、例外として、賃貸不動産を投資法人等が取得し、従前の所有者がその譲渡不動産を賃貸管理するために改めて賃借する場合には(もとからの賃借人は転借人となる)、売買当事者の合意によって、賃貸人の地位を譲渡した者に留保できることとされている。この場合、当事者間の賃貸借が終了すれば、賃貸人の地位は不動産の所有者に移転する。

賃貸不動産経営管理士

賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を有することを証する資格。(一社)賃貸不動産経営管理士協議会が実施する試験に合格し、登録することによって認定される。

賃貸住宅管理業者は、「賃貸住宅管理業法」に基づいて業務管理者を選任し配置しなければならないとされているが、賃貸不動産経営管理士、宅地建物取引士等であって一定の要件を満たす者は、選任・配置が義務付けられている業務管理者としての資格が認められる。

なお、賃貸不動産経営管理士は法令に基づかない任意の資格であったが、賃貸住宅管理業法の施行(2021年6月)によって、法律の委任によって定められた国土交通省令に基づく資格として認知された。

賃貸併用住宅

自らが居住する建物空間(自己居住部分)と、賃貸の用に供する建物空間(賃貸部分)とが合わさって、一つの建物となっている住宅。自己居住部分と賃貸部分とは区分されていて、それぞれ独立して居住の用に供される。

賃貸併用住宅は、所有する住宅の建て替えに当たって、自己が居住すると同時に、建物の一部を賃貸して家賃を得るなどのために建てられることが多い。

賃料

賃貸借契約によって賃借人が支払う対価をいう。

特約がない限り後払いである。また、地代・家賃については、事情変更による増減請求権が認められている。

なお、借主が実質的に負担するのは、賃料に保証金、預かり金等の運用益を加えた額(実質賃料)である。また、共益費など賃料以外の負担を求められることも多い。

チーク材

建物などの材料として使われる銘木(美しく趣がある木材)のひとつ。堅牢で耐久性に富み、水に強く色が美しいことから、建物の内装材や家具材だけでなく、造船材や彫刻材などにも使われている。

チーク材となる樹木がチーク(英語のteak)で、アジアの熱帯モンスーン地域に生育する落葉高木樹である。天然樹は伐採が強く規制され、育成林の材木が流通している。

追完請求

売買契約の履行において、引き渡された売買の目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、買主が売主に対して、目的物の補修、代替物の引渡し又は不足分の引渡しを請求すること。「追完」とは、法的に効力が未確定な行為についてあとから行為を有効にすることである。

追完を請求する権利は、債務不履行に対して行使する請求権のひとつである。

追完請求をするためには、原則として、不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならない。また、売主は、この請求に対して、買主に不相当な負担を課さない範囲で請求とは異なる方法で義務履行を追完することができる。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

追認

効果のない法律行為について、その効果を生じさせる意思表示をいう。

一定の場合にのみ認められる(通常は、新たな法律行為が必要である)。

その場合とは、次の4つである。

1.無権代理人の法律行為について、本人の意思表示で本人について効果が生じる。

2.無効の法律行為について、当事者が無効であると知ったうえで追認すれば、そのとき新たな行為をしたとみなされる。

3.取り消すことのできる行為を一方的な意思表示によって確定的に有効とする。

4.訴訟能力等を欠いている場合の訴訟行為について、能力を得た後の追認によって行為のときに遡って効力が生じる。

通気筒

建物の室内と外気とをつないで気流を確保する太めの管をいう。換気、排煙、厨房排気、空調などのために多量の空気を円滑に流す役割を果たす。

通気筒には、一般に、ダンパ、ファンなど風量をコントロールするための装置が取り付けられている。また、通気筒を外付けすることなく、躯体構造と一体化して設置する場合もある。

通行地役権

通行地役権とは、通行という目的のために設定される地役権のことである(民法第280条)。

例えばAの所有地が、ある公道に面しているとする。
しかしAがその公道を使用すると、通勤の関係では遠回りになるので、できることならば、裏手にあるBの所有地を横切って、その向こうにある別の公道に出たいと考えているとする。

このときAがBの所有地を通行するには、AがBの土地の一部を賃借するという方法がまず考えられる。
しかしながら賃借権を設定するならば、その土地の一部をAが排他的・独占的に使用することとなる。そのためBの承諾を得ることが難しいし、また賃借料も高額になるであろう。

こうした場合によく用いられるのが通行地役権である。通行地役権の場合には、その目的が「Aの通行」に限定されているため、賃借権の場合に起きるであろう問題を回避することができるからである。

こうした通行地役権を設定するには、要役地の所有者(上記例ではA)と承役地の所有者(上記例ではB)との間で「地役権設定契約」を締結することが必要である。

この設定契約において地役権の対価(通行料の支払い)が定められるが、法律上は無償の地役権とすることも可能である。また地役権は登記することができる(不動産登記法第114条)。

通謀虚偽表示

本人が相手方と通じて、虚偽の意思表示をすることをいう。

例えば、本人も相手方も土地の売買契約を締結するつもりがまったくないのに、お互いに相談のうえで、土地の売買契約を締結したかのように見せかける場合が、この虚偽表示に該当する。

このような虚偽表示は、本人の有効な内心的効果意思を欠くので、原則として無効となる(民法第94条第1項)。
例えばAが土地を売る意思がなく、Bが土地を買う意思がないのに、相談のうえで仮装の土地売買契約を締結し、土地の所有名義をAからBに移したという場合には、AB間ではこの土地売買契約は無効である。従ってAは、この土地の所有名義をBからAへ戻すように、Bに対していつでも主張することができる。

しかしながら、上記の例で土地の所有名義をAからBに移した間に、Bが所有名義が自分にあることを利用してこの土地を事情を知らない第三者Cに売却してしまった場合には、この善意の(=事情を知らない)第三者は保護されるべきである。
そこで民法ではこうした善意の第三者を保護する規定として民法第94条第2項を置いている。
(詳しくは虚偽表示における第三者保護へ)

月極駐車場

ひと月単位で賃貸される駐車場。通常、書面によって賃貸借の契約が締結される。また、常時駐車が可能であれば、当該駐車場は車庫証明における保管場所として認められる。

月極駐車場の賃貸借を仲介する場合に宅地建物取引業法が適用されるかどうかは、利用の様態に応じて判断されるが、駐車場設備を利用するだけであって土地を占有する権利等が発生しないような態様であれば、同法は適用されない。

継手

部材の長さが確保できないときに、2つ以上の部材を継ぎ足すことがある。
このときの接合部のことを「継手」という。

しかし「継手」は強度が非常に小さくなるので、できるだけ「継手」は行なわないことが望ましい。また、やむを得ず行なうときは金物で補強する必要がある。

つくばい

茶室に接した庭(茶庭・露地)に置かれる設備で、低く据えられた手水鉢(ちょうずばち)およびその周りに配置された役石(やくいし)によって構成される。

茶事の席に入る前に客人が手や口を清めるための場所として設置され、「つくばい(蹲踞)」という名称は、水で清める際にしゃがむ姿勢となることに由来する。

なお、茶庭ではない日本庭園にも、修景物の一つとして、つくばいが設置されている場合がある。

つくば方式

マンションの建設手法の一つで、定期借地権を活用してスケルトン・インフィル(SI住宅)を建設する方法をいう。スケルトン定借ともいわれる。

SI住宅は、構造・躯体(スケルトン)と内装・設備(インフィル)が分離され、耐用年数が長く、また居住形態の変化に柔軟に対応できる。そこでそのような特性を活かして、建物譲渡特約付き定期借地権(期間30年)を設定してSI住宅を建設し(入居者は地代を負担)、借地権期間終了後はスケルトン部分を地主に譲渡して賃借する方法(借家)に移行する。借家に移行後は、入居者は家賃を負担するが、スケルトンの譲渡代金を家賃と相殺することによって負担額を地代と同様の水準に押さえることができる。

なお、「つくば方式」という名称は、この方式が筑波研究学園都市において開発され、1996年に同地で初めて具体化したことに由来する。

土壁

土を主な材料とした壁。古くから使われている壁で、一般的な工法は、割り竹や細木を組んで下地(小舞)を造り、それに土に藁や砂を練り混ぜた材料を塗り込み、さらに仕上げ材を上塗りする。用いる材料や質感に応じて、京壁、大津壁、珪藻土壁などの種類がある。

耐火性に優れ、調湿作用があるとされる一方、施工に熟練が必要で、工事に要する期間が長い。

つなぎ融資

住宅・宅地の取得資金や工事代金に充てるため、公的な融資が実行されたり、不動産の売却代金を得るまでの間、一時的に資金を借りることをいう。

金融機関により融資条件はさまざまであるが、短期融資として取り扱われる。

公的融資の実行は土地・建物の登記後とされ、登記は決済後でないとできないため、つなぎ融資が必要となるケースは多い。また、住宅の買い換えなどの際にも、購入の後に売却することが多く、同時決済などの便宜を得ない限りはつなぎ融資が必要である。

津波災害警戒区域

津波が発生した場合に住民等の生命又は身体に危害が生ずる恐れがあり、津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべきとして指定された土地の区域をいう(津波防災地域づくりに関する法律)。
指定は、国土交通大臣が定める基本指針に基づき、津波浸水想定を踏まえて、都道府県知事が行なう。
津波警戒区域内では、津波の発生時における避難施設の指定など、警戒避難のために必要な措置が講じられる。

また宅地建物取引業者は、対象不動産が津波災害警戒区域内であるかどうかを重要事項として説明しなければならない。

津波災害特別警戒区域

津波災害警戒区域のうち、津波が発生した場合に建築物が損壊し、又は浸水し、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずる恐れがあると認められ、一定の開発行為および一定の建築物の建築又は用途の変更の制限をすべきとして指定された土地の区域をいう。
指定は、国土交通大臣が定める基本指針に基づき、津波浸水想定を踏まえて、都道府県知事が行なう。

津波災害特別警戒区域内では、特に防災上の配慮を要する者が利用する一定の施設等を建築するための開発行為や同施設等の建築(用途変更を含む)について、都道府県知事等の許可を得なければならない。

また宅地建物取引業者は、対象不動産が津波災害特別警戒区域内であるかどうかを重要事項として説明しなければならないほか、区域内であるときにはそれに伴う開発・建築行為の制限についても説明しなければならない。

土地面積や部屋の広さを測るときの単位。1坪おおよそ3.3平方メートルに相当する。

土地の売買契約においては、一般的に「1辺を6尺(約1.818m)とする正方形」が1坪であるという慣行が成立しているものと思われる。この慣行に従えば、1坪とは約3.3058平方メートルであるということができる。

なお不動産の広告を規制する「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」によれば、土地の面積や建物床面積を広告で表示する場合には、必ずメートル法によって表示することとされている(不動産の表示に関する公正競争規約第15条第19号)。

ただしメートル表示と同時に、坪表示も併せて表示することは可能である。

坪単価

面積1あたりの価格。土地の価格水準を示すときに使われることがある。1坪=3.3058平方メートル。

「坪」は日本で使われていた面積の単位で、1辺が1間(=1.8182メートル)の正方形の面積である。また、300坪が1段(反)(=991.74平方メートル)、3,000坪が1町(=9917.4平方メートル)である。

坪庭

和風建築において、建物や塀で囲われた狭い庭をいう。「壷前栽(つぼせんざい)」といわれることもある。

寝殿造りにおいても見られるが、代表的な坪庭は、町家に設置される母屋と離れとの間の庭園である。最近は、採光や景観のために設置されることもある。

妻入り

二つの屋根面が山の形に合わさった側(「妻」という)に出入り口がある建物構造。これに対して、妻と直角をなす側(「平」という)に出入り口がある構造を「平入り」という。

吊り戸棚

壁上部や天井に直接取付けられた棚。キッチンなどで流し台等の上部の空いた空間に設置され、小物の収納に利用する場合が多い。

2×4(ツーバイフォー)工法

北米で生まれた木造建築の工法。わが国における正式名称は「枠組壁工法」である。
断面が2インチ×4インチの木材を使用することから、このような名称が付けられた。

このツーバイフォー工法の最大の特徴は、木材で組んだ「枠組」に構造用合板を打ち付けることで、構造全体の強度を得ることである。

手洗いカウンター

便所に設置される手洗のための洗面台蛇口、洗面ボウル、設置台で構成されている。

トイレ室のデザイン要素となるほか、収納スペースとしても利用される。

TMK

特定目的会社」の略称。

特定の資産を裏付けとした有価証券を発行するためだけに設立された法人で、「資産の流動化に関する法律」にもとづいて設立される特別な社団をいう。

通常SPC(Special Purpose Company)といわれる。不動産の証券化などのために活用される一種のペーパーカンパニーであり、資産処分とともに解散される。

その重要な機能は、証券化の対象になる資産を独立させ、責任を資産価値の範囲内に限定すること(倒産隔離機能)、および、投資家への二重課税を回避するための器となること(導管体機能)である。資産の管理運用などの具体的業務は、一定の要件を備えた会社等に委託される。

なお、資産の流動化に関する法律では、資産流動化の方法として、特定目的会社を用いる場合のほか、特定目的信託を用いる場合を規定している。

TCFDガイド

気候に関連する財務情報を開示するための指針。金融安定理事会(IMF、世界銀行、各国中央銀行等が参加する国際組織)に設置されたTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)が2017年に公表した。「TCFD提言」「TCFDガイダンス」も同じ意味である。

TCFDガイドが開示を推奨する情報の中核的な要素は、(1)気候関連のリスク・機会に関する組織ガバナンス、(2)組織のビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスク・機会の実際的潜在的な影響、(3)組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス、(4)気候関連リスク・機会を評価・管理するために使用する指標・目標である。

TCFDガイドが示す情報の開示は、気候変動の影響評価の質的な向上と、投資家等が気候関連問題の視点から企業活動に関わることに資すると考えられている。

不動産開発、不動産投資等も、気候関連のリスク・機会と密接に関係しているから、TCFDガイドに即した情報開示の対象となる。

定款

一般社団法人一般財団法人、株式会社等の基本的な規則またはそれを記した記録をいう。

それぞれの法人の設立の際に定められるのが通例である。

定款で定められる事項は、法人の種類等によって異なるが、目的、事務所所在地、組織、会計などが規定されている。

定額補修分担金

建物の賃貸借契約において、退去後の回復費用等に充てるため一定の金額をあらかじめ負担することを特約する場合の当該負担金をいう。この負担金は敷金と違って返還されることはない。

なお、民法では自然損耗の回復費用は貸主が負担すべきとされていることから、定額補修分担金にその費用が含まれていると推定される場合(つまり負担金額が一般的に生じる軽過失損耗部分の回復費用を上回る場合)には、このような特約は消費者の利益を一方的に害するものとして無効であるとの判例(地方裁判所)がある。

定期借地権

1992(平成4)年8月1日に施行された新借地借家法では、借地権普通借地権と定期借地権に区分した。

普通借地権とは、借地権の存続期間が満了した際に、地主側に土地の返還を請求するだけの正当事由が存在しなければ、借地人が更新を望む限り自動的に借地契約が更新されるというものである。

これに対して定期借地権とは、借地権の存続期間が満了した際に、地主側の正当事由の有無にかかわらず、借地人は借地を地主に返還しなければならないというものである。

定期借地権には「一般定期借地権」「建物譲渡特約付き借地権」「事業用借地権」の3種類がある。

定期借家契約

契約期間の満了によって賃貸借関係が確定的に終了する借家契約。借地借家法に基づく契約類型である。

一般の借家契約は、借り主を保護するために、貸し主は正当事由がない限り契約の更新を拒絶できないとされているが、定期借家契約においてはそのような制約がない。

定期借家契約を締結するには、次の要件を満たさなければならない。
1)契約期間を確定的に定めること
2)公正証書による等書面によって契約すること
3)貸主が借主に対して、契約の更新はなく期間の満了とともに契約が終了することを、あらかじめ書面(契約書ではないもの)を交付して説明すること

中途解約の可否等は特約で定めることとなるが、やむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難となった借家人(床面積が200平方メートル未満の住宅に居住している借主に限る)は、特約がなくても中途解約ができる。また、契約を延長する場合は、当事者双方の合意による再契約が必要である。

また、契約は期間の満了によって終了するが、期間が1年以上の場合は、賃借人に対して、期間満了の1年前から6ヵ月前までのあいだ(通知期間)に契約が終了する旨を通知しないと強制力が働かない。ただし、通知期間後に契約終了の旨を通知すれば、通知後6ヵ月を経過したあとは契約の終了を強制できる。

定期借家契約は契約更新が無い契約であるから、契約を延長する場合は、当事者双方の合意による再契約が必要である。

なお、賃料の改訂に関して特約があれば、借地借家法に定める家賃増減請求権の規定(契約条件にかかわらず、税負担等の増減、経済事情の変動、近傍家賃との不相応による家賃改訂を請求することができる旨の規定)は適用されない。

定期借家制度

新借地借家法(1992(平成4)年8月1日施行)の一部が改正されたことにより、2000(平成12)年3月1日に創設された制度。

従来の新借地借家法では、一部の例外(期限付き建物賃貸借)を除いて、貸主側に建物の返還を求めるだけの正当事由がない限り、貸主は借家契約の更新を拒否することができないとされていた。
しかし、2000(平成12)年3月1日の改正法施行により、借家契約時に貸主が「期間の満了により契約が終了する」ことを借家人に対して、公正証書などの書面を交付して説明する場合には、期間満了に伴い借家契約を終了させることができることとなった。
従って、2000(平成12)年3月1日以降の借家契約では「従来の借家契約」と「定期借家契約」のいずれかを当事者が選択できることとなった。

定期建物賃貸借

契約の更新がないことを特約した建物賃貸借をいう。

「定期借家」ともいう。

通常の建物賃貸借契約は、その更新拒絶や解約に際して正当事由が必要とされ、賃貸借関係が長期化しやすい。そこで、借家の供給を容易にするなどのため、2000(平成12)年3月から、賃貸借期間を定めその後期間の更新をしない旨の特約をすることが認められた。この契約による賃貸借が、定期建物賃貸借(定期借家)である。

定期建物賃貸借契約を締結するには、貸主はあらかじめその旨を書面で借主に説明しなければならず、契約は公正証書による等書面でしなければならない。また、契約期間の終了に当たっては、期間満了の1年前から6月前までの間に賃借人に対し契約が終了する旨の通知をしなければならないとされている(その後の通知については、通知後6月の経過で契約を終了できる)。

定期モニタリング調査

水質汚濁防止法により、汚染井戸周辺地区調査によって水質汚染が確認された井戸に関して、水質汚染を継続的に監視するために行なう水質の調査をいう。

この調査は、都道府県知事が毎年度実施している地下水モニタリングの一つである。

定型約款

不特定多数の者を相手にする画一的な内容の取引において、特定の者が契約の内容としてあらかじめ準備する条項の総体をいう。たとえば、旅客運送約款、銀行取引約款、保険約款、電気供給約款などがこれに該当する。

これらの取引においては、不特定多数の者に対して個々の取引ごとに契約の内容について合意を得ることが困難で、また当時者の一方が特定の者であって契約内容が画一的であることから、不特定多数の者に対してあらかじめ準備した内容で契約するか否かのみについて意思決定を求め、合意を得るのが合理的であると考えられている。定型約款は、この場合の特定の者があらかじめ準備した契約内容である。

あらかじめ特定の者が準備し表示された定型約款に合意したときには、当事者は約款の個別条項についても合意したものとされる。ただし、定型約款のうち相手方の権利制限や義務加重を定める条項であって、信義誠実の原則に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意しなかったとみなされる。

また、定型約款を変更する場合に、その変更が相手方の一般的な利益に適合し、又は変更が契約目的に反せず合理性を有することなどの条件を満たす場合であって、変更に関して適切な方法で周知されたときには、変更について合意があったとみなされる。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

停止条件

法律行為の効果の発生が、将来の不確実な事実にかかっているときの、当該事実をいう。

例えば、「宅建試験に合格したら給料を3割上げる」と約束した場合の「合格」が停止条件である。

逆に、法律効果が将来の不確実な事実によって消滅するとき、その事実を「解除条件」という。

停止条件付き宅地

将来に一定の事実が発生したときに初めて法律的な効力が生じる契約の目的物となっている宅地。停止条件付き売買契約によって取引された宅地であってまだ条件を満たしていないものがこれに該当する。

停止条件付き宅地の具体例は、たとえば、一定期間内にその土地に建物を建築することを条件とする売買契約の目的物(建築条件付き宅地)、住宅ローンの融資について金融機関の承認を得ることを条件とする売買契約の目的物(ローン条件付き宅地)、地主の承諾を条件とする借地権売買契約の目的物である。

停止条件付き宅地の売買契約は、条件とされている事実が発生するまでは、代金支払い義務などの法的な効力は生じない。また、条件が発生しなかった場合は、契約は無効となる。

停止条件付売買契約

将来に一定の事実が発生したときに初めて法律的な効力が生じる旨を特約した売買契約。停止条件付き売買契約は、条件とされている事実が発生するまでは法的な効力(たとえば代金を支払う義務)は生じない。また、条件とされる事実が発生しなかった場合は、契約は無効となる。

たとえば、一定期間内にその土地に建物建築することを条件とする土地売買契約(建築条件付き売買契約)、住宅資金の融資について金融機関の承認を得ることを条件とする宅地売買契約(ローン条件付き売買契約)、地主の承諾を条件とする借地権の売買契約は、いずれも停止条件付き売買契約である。

なお、将来に一定の事実が発生したときには法律的な効力が消滅する旨を特約した売買契約を「解除条件付き売買契約」という。

邸宅

広くて大きな住宅。「屋敷(やしき)」も同じ意味である。近年は、戸建て住宅だけでなく、マンションの住戸についても使われるようになっている。

なお、「邸」は、もともと、諸候などが都にのぼったときに宿泊する場所のことである。

低炭素化(都市の~)

都市活動に伴う温室効果ガス(主として二酸化炭素)の排出を抑制する取り組みをいう。

住宅の環境性能向上などの単体対策のみでなく、都市に関する諸施策を総合的に推進することに特徴がある。

国土交通省は、2010(平成22)年8月に都市の低炭素化を進めるための手引きとして、「低炭素都市づくりガイドライン」を策定・公表している。そこでは次のような方針が示されている。

1.コンパクトな都市構造の実現と交通対策
・集約型都市構造の実現(集約拠点への公共施設・サービス施設等の立地および居住の誘導など)
・交通流対策の推進(交通需要マネジメントなど)
・公共交通機関の利用促進(公共交通機関の整備およびサービスの改善)

2.エネルギーの効率的な利用と未利用・再生可能エネルギーの活用
・低炭素に寄与する省エネルギー建物への更新(集約化による建物更新の機会を捉えたエネルギー利用の効率化など)
・エネルギーの面的活用(一体的な土地利用更新の契機等を捉えた面的エネルギーシステムの導入)
・未利用・再生可能エネルギーの活用(未利用エネルギーの賦存量と需要の調整など)

3.緑地の保全と都市緑化の推進
・吸収源の確保(緑地の保全・創出など)
・木質バイオマス利用の推進(緑地の保全・管理+市街地での木質バイオマス利用)
・ヒートアイランド対策による熱環境改善(多様なスケールに応じたヒートアイランド対策の連携)

低炭素社会

温室効果ガスの排出量を自然が吸収できる範囲にとどめること(カーボンニュートラル)のできる社会をいう。

ただしこれは究極的な目標であり、低炭素社会という言葉は、それに向けて取り組むことに重点を置いて使われることが多い。

低炭素社会を実現するためには、
1.社会のあらゆるセクターが温室効果ガスの排出を最小化すること(カーボンミニマムの実現)
2.生活の豊かさの志向を大量消費から生活の質の向上に変革すること(消費者選択の変革)
3.自然環境を保全・再生して地球生態系の安定を確保すること(自然との共生)が必要であると考えられている。

スマートシティ・スマートコミュニティの整備や低炭素まちづくり計画の策定などは、いずれも低炭素社会に向けた取り組みの一環である。

低炭素住宅認定制度

二酸化炭素の排出の抑制に資する建築物(住宅以外の建築物も含む)を認定する制度。「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく仕組みである。

認定されるのは、市街化区域等の区域内に建築される建築物である。認定は、(1)建築物の新改築等(空気調和設備等の設置を含む)をする者が、建築物の構造、設備、用途などを記載した「低炭素建築物新築等計画」を作成して行政庁に認定を申請し、(2)行政庁は、申請に係る計画が認定基準に適合するときには、認定して申請者に通知する、という方法で実施される。

認定基準は、次の2項目である。

1)外皮の断熱性能が省エネルギー法に基づく省エネルギー誘導基準と同等以上であり、かつ、一次エネルギー消費量が省エネルギー基準に比べて一定割合少ないこと

2)低炭素化に資する一定の措置(節水対策、エネルギーマネジメント、ヒートアイランド対策、躯体の低炭素化、再生可能エネルギーの導入に関する事項のうち一定のもの)が講じられていること

認定された低炭素住宅(認定低炭素住宅)の新築等に対しては、税制上の優遇措置(住宅ローン減税の上乗せ、性能強化費用の一部についての所得税額の特別控除、登録免許税等の軽減)や容積率の特例が適用される。

低炭素まちづくり計画

都市における温室効果ガスの排出を抑制するための計画をいい、「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき市町村が作成する。

計画は、
1.都市機能の集約化
都市サービス施設等の集約事業、集約駐車場の整備など
2.公共交通機関の利用促進
LRT等の整備、共同輸配送の実施など
3.建築物の低炭素化
低炭素建築物・住宅の整備など
によって構成される。

この計画に沿って実施される事業については、費用負担等に関して一定の優遇措置が講じられている。

定着物

定着物とは、土地の上に定着した物をいう。

具体的には、建物、樹木、未分離の果実、移動困難な庭石などが定着物である。なお土砂は土地そのものであり、定着物ではない。

定着物は、土地から分離することができないので、原則として定着物は土地の所有権に吸収され、土地の取引とともに取引され、土地と法律的運命をともにすることに最大の特徴がある。
ただし、この例外として次のような定着物がある

1.建物
定着物のうち、建物は常に土地から独立した定着物であり、独立して取引の対象となる。
ただし建築中の建物は、土地から独立した定着物ではない(詳しくは建物へ)。

2.立木(りゅうぼく)法により登記された立木
定着物のうち、立木法により登記された立木(注:立木とは樹木の集団のこと)は、建物と同様に、土地から独立した定着物となる。

3.果実、桑葉、立木法により登記されていない立木など
これらはすべて定着物であるが、明認方法を施すことにより、土地から分離して取引することができる。

抵当権

債権を保全するために、債務者(または物上保証人)が、その所有する不動産に設定する担保権のこと。債務者(または物上保証人)がその不動産の使用収益を継続できる点が不動産質と異なっている。

債権が弁済されない場合には、債権者は抵当権に基づいて、担保である不動産を競売に付して、その競売の代金を自己の債権の弁済にあてることができる。

抵当権者

ある人(A)が他の人(B)に対して債権を有している場合に、Aが債権を保全する目的のために、Bの所有する財産に対してAが抵当権を設定したとき、Aのことを「抵当権者」という。

また、Bは「抵当権設定者」と呼ばれる。

Aが債権を保全する目的のために、第三者(C)の財産に対してAが抵当権を設定することがあるが、このときもAは「抵当権者」と呼ばれる。また、このとき第三者Cは「物上保証人」と呼ばれる。

抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度

抵当権設定登記以後に設定された賃借権について、抵当権者の同意のもとに、賃借権が抵当権に対抗できるものとする制度のこと。
この制度は、改正後の民法387条に規定されており、2004(平成16)年4月1日よりスタートした。

1.制度の趣旨
ある不動産に抵当権が設定された場合、抵当権設定登記がなされた後に設定された賃貸借は本来ならばすべて抵当権に劣後するのが原則である。
従って本来は、融資返済不能などの事情によって抵当権が実行された(すなわち抵当不動産が競売された)場合には、抵当不動産の賃借権者はその賃借権を抵当権者に主張することができないはずであり、抵当不動産の競落後には賃借権者は当該不動産を直ちに明け渡さなければならないのが原則である。
こうした競売に伴う賃借人の不利益を緩和するための措置として、建物賃貸借に関しては、6ヵ月間の建物明渡猶予制度が置かれているが、やはり猶予期間経過後には必ず立ち退かなければならないという不都合がある。
そこで、一定の条件を満たした賃借人については、競売にかかわらず立退きをしなくてよいとする本制度が創設されたものである。

2.制度の内容
次の条件をすべて満たした賃借権については、賃借人は常に抵当権者に対抗できる(つまり、競売がなされても従前のとおり賃貸借を継続できる)とするものである。
1)その賃借権が正式に登記されていること
2)抵当権者全員の同意があること(ただし当該賃借権に劣後する抵当権者の同意は不要)
3)上記2)の同意が登記されたこと

3.制度における敷金の継承
この制度により、上記1)・2)・3)の条件をすべて満たした賃借人は、競売にかかわらず従前のとおり賃貸借を継続することができる。そのため、競売における買受人は、従前の賃貸人(=すなわち旧不動産所有者)の賃貸借に関する義務をそのまま継承することとなる。
従ってこの制度の適用下では、賃借人は競売後において将来的に自発的に退去しようとする際には、敷金の返還を買受人に対して主張することが可能となる。
こうした事態が予想されるので、上記ア)の賃借権の登記においては、敷金が登記すべき事項に加えられており、買受人の便宜を図っている(改正後の不動産登記法第132条第1項)。

抵当権消滅請求

抵当権が付着している不動産を、抵当権が付着した状態のままで取得した者(第三取得者という)は、いつ債権者の意向により任意競売(抵当権の実行)にかけられるかわからないという不安定な状態に置かれてしまう。
そこで民法第379条では、第三取得者からの請求により抵当権を消滅させることができるという仕組みを設けており、この仕組みを「抵当権消滅請求」と呼んでいる(民法改正により2004年4月1日以降は「抵当権消滅請求」という名称になった。旧名称は「滌除(てきじょ)」)。

なお、この反対に、債権者からの請求により抵当権が消滅する仕組みとして民法第378条の代価弁済が設けられている(詳しくは代価弁済へ)。

民法第379条の抵当権消滅請求の仕組みは次のとおり。
まず、抵当権が付着している不動産を、抵当権が付着した状態のままで取得した者(第三取得者)は、自分が適当と認める金額を債権者に呈示して、抵当権の消滅を要求することができる(改正後の民法第379条)。債権者が、この要求から2ヵ月以内に任意競売の手続き(すなわち競売の申立て)を行なわない場合には、第三取得者が呈示した金額の支払いで抵当権が消滅することを債権者が承諾したことになる(改正後の民法第384条)。

例えば、債権者Aが債務者Bに3,000万円を融資し、不動産Pに3,000万円の抵当権を設定したとする。その後Bがこの不動産Pを500万円で第三者Cへ売却したとする。本来、この不動産Pの時価評価は3,500万円だが、3,000万円の抵当権が付着している分だけ売却価格が下げられているとする。
このとき第三取得者Cは、債権者Aに対して「Cが2,500万円をAに支払うので、これにより抵当権を消滅させる」旨を請求することができる(2,500万円という金額は例えとして挙げたもので、事情により幾らにするかは第三取得者が決めてよい)。

このCの請求を拒否するためには、Aは請求から2ヵ月以内に任意競売の申立てをしなければならない。Aが任意競売の申立てをしないときは、Cが2,500万円を支払うことで抵当権が消滅する。このような仕組みが、改正後の民法379条に規定する抵当権消滅請求である。

(補足)「滌除」と「抵当権消滅請求」の違いについて
現在の「抵当権消滅請求」では、抵当不動産の所有者からの要求により抵当権が消滅するが、民法改正前の「滌除」では、抵当不動産の所有者のほかに、抵当不動産の地上権の取得者も抵当権の消滅を要求することができた。
また、現在の「抵当権消滅請求」では、債権者は単純に2ヵ月以内に任意競売を申し立てればよいが、民法改正前の「滌除」では、増価競売をする必要があった。また、増価競売をして買受人が現れなかった場合には、債権者自らが抵当不動産を増価競売の価額で買い取ることが必要とされていた(詳しくは増価競売へ)。

抵当権設定者

ある人(A)が他の人(B)に対して債権を有している場合に、Aが債権を保全する目的のために、Bの所有する財産に対してAが抵当権を設定したとき、Bを「抵当権設定者」という。

また、Aは「抵当権者」と呼ばれる。

Aがその債権を保全する目的のために、第三者(C)の財産に対してAが抵当権を設定することがあるが、このとき第三者Cは「物上保証人」と呼ばれる。

抵当権等がある場合における売主の担保責任

私法上の概念で、売買契約における売主が負うべき無過失責任の一つである。

1.売主の担保責任
民法では、売主が責任を果たさない場合には、買主は売主の債務不履行責任を追及できると定めている。しかし、このような債務不履行責任を買主が追及できるのは、売主に帰責事由(故意または過失)がある場合だけである。
しかしながら、これだけでは買主の保護に欠け、売買契約への信頼性を損なうことになりかねない。そこでわが国の民法では、売主に帰責事由がない場合(売主が無過失である場合)であっても、一定の場合には売主が買主に対して責任を負うと定めている。
このような売主の無過失責任が「売主の担保責任」である。

2.抵当権等がある場合における売主の担保責任
売主の担保責任の一つとして、抵当権等がある場合における売主の担保責任がある。
これは、売買の対象となった不動産に抵当権または先取特権が付いていて、債権者がその抵当権または先取特権を行使することによって買主が不利を被ったときに適用される規定である。
具体的には、次のとおりである。
1)買主は、抵当権または先取特権の行使によって買った不動産の所有権を失ったときは(通常、競売による)、売主に対して契約解除および損害賠償を請求することができる(売主はたとえ無過失であったとしても契約の解除損害賠償請求を拒絶することはできない)。
2)買主は、所有権を保存するために費用を支出したときには(つまり、代価弁済または権利消滅請求に伴う費用を負担したとき)、売主に対してその費用の償還および損害賠償を請求することができる。
なお、この規定は、買主が抵当権等があることを知っていた場合にも適用される。

抵当権の及ぶ範囲

抵当権は担保に取った不動産に及ぶだけでなく、その不動産に付属している物や権利にも及ぶ(民法第370条)。

従って、抵当権にもとづいて不動産を競売する場合には、付属している物や権利も一緒に競売されることとなる。

抵当権の実行

ある不動産抵当権が設定されているとき、債権が弁済されない場合には、債権者はその抵当権にもとづいて、担保である不動産を競売し、その代金を自己の債権の弁済に充てることができる。このように債権者によって抵当不動産が競売されることを「抵当権の実行」という。

抵当証券

土地・建物・地上権を目的にした抵当権(担保目的物を債務者等の使用収益に任せておきながら、債務不履行の場合には目的物の価額から優先弁済を受けることができる物権)および担保されている債権を記載した証券。「抵当証券法」(1931年制定)に基づいて発行され、金融商品として流通している。

抵当証券は、債務者の同意または特約のもと、抵当権者の申請によって登記所が発行する。その所持人(実務上は証券の保管証・取引証の所持人)は、記載されている債権に基づき、元本及び利息を受け取ることができる。抵当証券は、不動産担保債権を小口化・流動化した有価証券であって、その取引の営業については金融商品取引法が適用され、同法が定める規律に服さなければならない。

低未利用地の譲渡所得課税の特例

個人が保有する低額な土地等を譲渡した場合に、譲渡所得課税を軽減する特例措置。

個人が、譲渡価額が500万円以下であって、都市計画区域内にある一定の低未利用地(低未利用であること及び買主が利用意向を有することについて市区町村が確認をしたもの)を譲渡した場合に、長期譲渡所得から100万円を控除する措置である。2020年以降の譲渡所得に係る所得税個人住民税について適用される。

なお、この特例については適用期限があるので注意が必要である。

適格消費者団体

不特定多数の消費者の利益のために、事業者に対して不当な行為の停止や予防を請求すること(差止請求権)が認められている団体をいう。一定の要件を満たした上で内閣総理大臣の認定を受ける必要がある(消費者契約法)。

消費者契約等において不当な行為を理由に契約を取り消すことができるのは原則としてその当事者であるが、適格消費者団体は、そのような不当な行為に対する差止請求権を付与され、その行使等によって消費者被害の防止や消費者救済を図る役割を果たす。

なお、適格消費者団体による差止請求の対象となる不当な行為は、(1)消費者契約法に規定されている不実告知、不利益事実の非告知など、(2)不当景品類および不当表示防止法に規定されている不当な表示、(3)特定商取引に関する法律に規定されている訪問販売、通信販売、電話勧誘販売等に係る不実告知、威迫行為など、である。

適格請求書

消費税額の算定に当たって、仕入れ税額控除が認められる書類。「インボイス」ともいう。

適格請求書には、原則として、発行者の氏名または名称及び登録番号、取引年月日、取引の内容(軽減税率対象品目である場合にはその旨の記載を含む)、税率ごとに合計した対価の額(税抜又は税込)および適用税率、税率ごとの消費税額等、交付を受ける事業者の氏名又は名称が記載される。ただし、不特定多数の者に対して販売を行なう事業者については、記載事項を簡易なものとすることができる(適格簡易請求書)。

適格請求書を発行するためには、あらかじめ「適格請求書発行事業者登録簿」に登録しなければならない。

なお、適格請求書を発行する制度は、2023年10月1日に施行される予定である

適合高齢者専用賃貸住宅

高齢者専用賃貸住宅のうち、介護保険法で定める一定の居住水準等(各戸の床面積が25平方メートル以上、各戸に台所、水洗便所、浴室等を備えている、介護等のサービスが提供されるなど)を満たすものとして、都道府県知事に届出がなされたものをいう。

適合高齢者専用賃貸住宅として届出すると、

1.介護保険法に基づく特定施設入居者生活介護の指定を受けて、事業所として入居者に対し介護保険サービスを提供することができる

2.介護保険法上の住所地特例の対象となる

3.有料老人ホームの届出が不要となる

という取り扱いがなされる。

適合性の原則

顧客の知識、経験、財産の状況、契約締結の目的に照らして不適当な勧誘を行なってはならないという原則。

投資家を保護するためのルールであって、金融商品等の取引に当たってはこの原則を遵守しなければならない。また、この原則は、金融商品取引法の対象となる有価証券等だけでなく、不動産特定共同事業契約に基づく権利、保険契約に基づく権利など、投資性のある権利の取引についても適用される。

適合性の原則の遵守は法律に基づく業務規制であって、これに反する行為を行なった場合には行政処分が課されることがある。

滌除

第三取得者からの請求により抵当権を消滅させることができるという制度のこと(改正前の民法第378条)。滌とは洗うという意であり、滌除とは抵当権を洗い流すという意味合いである。

滌除の制度は、2004年4月1日施行の民法改正により大幅に改正され、名称も「抵当権消滅請求」へと変更されている(詳しくは抵当権消滅請求へ)。

TES(Thin and Economical System)

東京ガスが開発したガス温水システムのこと。熱源機を中心に床暖房、給湯、浴室暖房乾燥機、風呂、食器洗い乾燥機など、暮らしに合わせて自由にプランニングできる温水を利用したトータルシステム。

手数料

法令上は、公的組織が特定の者に役務を提供するとき、その費用を賄うなどのために徴集する料金をいう。

例えば、許認可、試験、検定などに関する手数料で、法令によって定められている。

一方、私人間でも、役務の提供に対する報酬を手数料と呼ぶことがある。宅地建物の取引を媒介したときの報酬も手数料と呼ばれることが多い。

鉄筋コンクリート構造(鉄筋コンクリート造)

鉄筋とコンクリートによって、柱・小梁・大梁・スラブ・壁を造り、すべての部分を一体化した構造のこと。

鉄筋コンクリートの部材は、引っ張る力にも、圧縮する力にも強いので、地震に対する安全性が高い構造となる。
また、すべての部材がコンクリートで一体化され、部材同士の接合部は剛であるので、建築学上の「ラーメン構造」となっている。

この鉄筋コンクリート構造のデメリットは、自重が大きいため、原則的には大空間建築や高層建築に向かないということである。

鉄骨構造(鉄骨造)

鉄骨造、S造とも。

柱とを「鉄骨」で作り、壁・床に「木質系パネル」「軽量気泡コンクリートパネル」「窯業系パネル」など使用した構造のこと。

主要な構造を形成する鉄骨の種類により「軽量鉄骨構造」と「重量鉄骨構造」に分けることができる。

鉄骨鉄筋コンクリート構造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

鉄筋コンクリートに、鉄骨を内臓させた建築構造

比較的小さい断面で、強い骨組を作ることができ、粘り強さもあるため、高層建築に多用されている。

手付

売買契約請負契約賃貸借契約などの有償契約において、契約締結の際に、当事者の一方から他方に対して交付する金銭などの有償物のこと(民法第557条・第559条)。

手付には交付される目的により、解約手付証約手付違約手付の3種類がある。民法で手付とは、原則的に解約手付であるとしている。また一般に取引において交付される手付の大半は解約手付であると考えてよい。

宅地建物取引業法では、消費者保護の観点から、売主宅地建物取引業者である場合にはその売買契約で交付される手付は解約手付とみなすという強行規定を設けている(宅地建物取引業法第39条第2項)。これを解約手付性の付与という。

なお、契約に従って当事者が義務を履行したとき、手付は代金の一部に充当される。

手付金等

売買契約の締結から宅地建物の引渡し前の間に支払われる手付金などの金銭で、最終的に代金の一部になる金銭のこと(宅地建物取引業法第41条第1項)。

宅地建物取引業法(第41条・第41条の2)では、この手付金等を、第三者が保管するなどの方法で保全するように定めている。これは、売主が物件を引き渡せないなどの不測の事態が生じた場合に、手付金等が確実に買主に返還されるようにする目的で創設された制度である(詳しくは「手付金等の保全」へ)。

実際の不動産取引では、次の金銭が「手付金等」に含まれるかどうかが問題になる。

1.手付金:手付金は契約締結時に交付され、通常は物件引渡し時点までに(例えば残金支払いと同時に)手付金は売買代金の一部になる。従って、手付金は「手付金等」に該当する。

2.内金:内金は通常は物件引渡し前に交付される「代金の一部」のことであるので、「手付金等」に該当する。なお、内金という名称で実際は「手付金」の場合もまれにあるが、これは上記1.の理由によりやはり「手付金等」である。

3.中間金:中間金は物件引渡し前に交付される「代金の一部」のことであるので、「手付金等」に該当する。

4.残金:売買代金から、手付金、内金、中間金を差し引いた残りのことである。残金は、通常は宅地建物の登記名義の移転手続き(このとき物件の鍵も交付する)と同時に支払われる。従って、残金支払いの時点で物件が引き渡されるのが通常であるから、残金は「手付金等」に含まれないということができる。

5.申込証拠金:申込み証拠金は契約より前に買主が売主に交付する少額の金銭(通常は10万円以下)で、その目的は申込み意思の確認や、申込みの順番を確保するものである。申込み証拠金は直接的に代金の一部になるものではない。従って、申込み証拠金は「手付金等」に含まれないということができる(ただし、申込証拠金は契約と同時に「手付金」の一部になることが多い。すると、契約時点以降は上記1.の手付金に含まれることになる)。

手付金等の保全

物件の引渡し前に買主が支払う金銭(手付金・内金中間金)について、第三者に保管させる等の方法で保全することを「手付金等の保全」という(宅地建物取引業法第41条・第41条の2)。

手付金・内金・中間金を合わせて「手付金等」と呼ぶ。この手付金等は、物件がまだ買主に引き渡されない時点で買主が売主に交付する金銭である。
従って、売主が物件を引き渡せない等の不測の事態が生じた場合に、手付金等は、確実に買主に返還される必要がある。そこで、宅地建物取引業法(第41条・第41条の2)では、手付金等の保全について必要な措置を規定している。

1.手付金等の金額の要件
手付金等は一定の金額に達した場合にだけ、保全措置を講じる義務が生じる。その金額の要件は次のとおり。

1)工事完了前の宅地または建物の売買の場合
「手付金等の合計が代金の額の百分の五を超えるとき」または「手付金等の合計が1,000万円を超えるとき」には、保全措置を講じなければならない。
例えば2億2,000万円の一戸建て(未完成)の売買契約に際して買主が1,050万円の手付金を交付したとする。このとき2億2,000万円の5%は「1,100万円」なので、手付金は「5%以下」であり、この点では保全措置は不要に見える。しかし、手付金は「1,000万円超」であるので、やはり保全措置が必要になる。
また、例えば3,000万円のマンション(未完成)の売買契約に際して買主が300万円の手付金を交付したとする。このとき3,000万円の5%は「150万円」なので、手付金は「5%超」であり、保全措置を講じなければならない。
2)工事完了後の宅地または建物の売買の場合
「手付金等の合計が代金の額の百分の十を超えるとき」または「手付金等の合計が1,000万円を超えるとき」には、保全措置を講じなければならない。この考え方は上記1)と同じである。

2.保全措置の内容
上記の金額の要件を満たしたとき、講じるべき保全措置は次のとおり。

1)工事完了前の宅地または建物の売買の場合
手付金等の保全措置としては「銀行等による保証」と「保険事業者による保証保険」の2種類の措置のうち、どちらか一つを講じればよい。
2)工事完了後の宅地または建物の売買の場合
手付金等の保全措置としては「銀行等による保証」と「保険事業者による保証保険」と「指定保管機関による保管」の3種類の措置のうち、どれか一つを講じればよい。

3.保全措置が不要とされる場合
次の4とおりの場合には、保全措置を講じる義務がない。

1)金額の要件を満たさない場合:
上記1.の金額の要件に到達しないならば、保全措置は不要である。
2)売主が宅地建物取引業者でない場合:
保全措置を講じる義務を負うのは宅地建物取引業者だけである
3)業者間取引である場合:
売主・買主ともに宅地建物取引業者である場合には、両者とも不動産取引に精通しているので、保全措置は不要とされる(宅地建物取引業法第78条第2項)。
4)買主がその宅地建物について登記を取得した場合:
保全措置は物件の引渡し前の措置であるので、買主が登記(所有権移転登記または所有権保存登記)を取得した場合には、もはや保全措置を講じる必要はないとされる。

4.「工事完了」の意味について
上記1.および2.では、工事完了前と工事完了後で扱いが異なる。この「工事完了」の意味については、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方で次のように説明されている。
工事完了は「売買契約時において判断すべき」である。また、工事の完了とは「単に外観上の工事のみならず内装等の工事が完了しており、居住が可能である状態を指すものとする」。

手付貸与の禁止

宅地建物取引業に対する業務規制の一つで、契約の誘引に際して、手付金の貸付けなど信用の供与をしてはならないという規制をいう。

これに反すると(契約に至らなくとも)監督処分の対象となる。

手付流し

売買契約成立時に買主が売主解約手付を交付している場合において、買主が手付を放棄することにより、契約を解除することを「手付流し」という。

この手付流しによる契約解除では、買主は手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよいとされている(民法第557条第2項)。

手付の額の制限

売主宅地建物取引業者である宅地建物の売買契約を締結するとき、手付は、代金の額の10分の2を超えてはならないという制限のこと(宅地建物取引業法第39条第1項)。

手付とは、売買契約・賃貸借契約・請負契約などが締結されるに際して、当事者の一方が相手方に交付する金銭等のことである。

この手付が高額であると、買主としては手付を放棄して売買契約を解除することが難しくなり、売買契約の拘束力が不当に高くなってしまう。そこで、宅地建物取引業法では、売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者以外の者である場合には、手付は代金の2割を超えてはならないという制限を設けている(宅地建物取引業法第39条第1項)。ただし、この第39条は一般消費者保護の規定であるので、この制限は売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者以外の者である場合にのみ適用される。

仮に、代金の「3割」の手付を買主が支払った場合には、2割を超えた部分(つまり1割)は手付ではなくて、代金の前払い(内金または中間金)であると考えることになる。

なお、この手付の額の制限は、強行規定であるので、これに反する特約で、買主に不利なものは無効となる(宅地建物取引業法第39条第3項)。

手付倍返し

売買契約成立時に買主が売主解約手付を交付している場合において、売主が手付の倍額を買主に償還することにより、契約を解除することを「手付倍返し」という。

この手付倍返しによる契約解除では、売主は手付相当額以外の損害賠償を支払わなくてよいとされている(民法第557条第2項)。

手付保証

手付金等の保全」を参照。

テトラクロロエチレン

揮発性有機化合物の一つで、不燃性があり、脱脂洗浄力が高いため、ドライクリーニング用の溶剤としてクリーニング店でよく使用されている。比重が1.6と水より重いため、土壌中に漏れ出した場合は、長く土壌中に残留する傾向がある。
土壌汚染対策法では、このテトラクロロエチレンを特定有害物質に指定し、テトラクロロエチレンによる土壌汚染を規制している。

テナント

事務所ビルや商業スペースの賃借人をいう。大型商業ビルにおいて、集客の中心となるのが「キーテナント」である。
 
テナントの業種構成や配置、賃料の設定などは、ビルの性格を決め、その収益性を左右する。

テラス

庭の一部にコンクリートやレンガ等を敷き詰め、住宅から自由に出入できるようにした場所のこと。

テラスハウス

2階建ての連棟式住宅のこと。各住戸の敷地は、各住戸が単独で所有している。

テラゾ

白セメントに大理石の粒を入れて練り、板状にし、表面を研磨することにより、大理石に似た模様を作り出したものを「テラゾ」という。

大理石に似せた人造石である。

大理石以外の石の粒(花崗岩など)を入れたものも「テラゾ」と呼ぶ場合がある。

テレワーク

働き方のひとつで、情報通信機器等を活用して時間や場所の制約を受けずに柔軟に働く方法をいう。事業所に出勤せずに家で作業する在宅勤務、個人が委託・請負によって作業する在宅ワークなどがあるが、情報通信技術を幅広く活用することが特徴である。

テレワークにおいては、住宅が職場ともなり得る。

展開図(不動産における〜)

部屋の壁面・床面・天井面の状態を正面から描いた図面。インテリアの様子やコンセント、家具等の配置を分かりやすく把握することができる。

展開図は、矩計図(かなばかりず)などに比べて理解するのは容易であるが、設計図書ではないので、建物の構造や仕様を正確に知るための図面として利用することは難しい。

天空率

空が建築物に遮られていない程度を示す指標。建築基準において、建築物の高さを制限するときの基準として用いられる。

建築物の天空率は、次の手順で算定する。

1)地上に測定地点を中心とする半球(半径r)を想定し、その半球面に測定地点から建築物を投影する。

2)投影された建築物の半球上の影をさらに地平面に垂直に投影し、その投影面積を求める(面積Ab)。

3)想定した半球を地平面に垂直に投影した面積をAsとする(πr2乗となる)。

4)測定地点の天空率は、(As−Ab)/As である。

計画する建築物の天空率が、高さ制限道路斜線制限隣地斜線制限北側斜線制限)に適合する建築物の天空率よりも大きければ、その高さ制限は、計画する建築物に対しては適用されない。

転出届

異なる市区町村に住所を移す場合に提出する書類。住民基本台帳法に基づき、提出の義務がある。

転出届の届け出先は移転元住所の市区町村窓口で、移転14日前から移転14日後の間に届け出さなければならない。届け出は原則として本人が窓口で行なうが、代理人に委任することや郵送で届け出ることも認められている。

転出届が受理されると、「転出証明書」が交付される。この転出証明書は、移転先の市区町村に「転入届」を提出するときに添付しなければならない。

市区町村は、健康保険、国民年金、各種給付などの住民サービスを担っているが、その事務の多くは住民票の記載に基づいて処理される。そして住所の移転による住民票の作成や消除は、原則として届け出に基づいて行なわれるため、届け出を怠ると不利益を被る恐れがある。

転貸借

所有者(A)から目的物を借りた賃借人(B)が、それを第三者(転借人、(C))に使用収益させることをいう。

いわゆる「また貸し」であり、賃借権の譲渡は転貸借とはいわない。

転貸借されてもAB間の賃貸借関係は残る。CはAとの契約関係はないが、Aに対して直接に賃料の支払い等の義務を負う。転貸借には、Aの承諾が必要で、これに反して転貸借がなされた場合には、AはAB間の契約を解除できるし、Cに対して目的物の引渡しを請求できる。

ただし、目的物が宅地建物である場合には、転貸借に関して特別の取扱いがされている。つまり、

1.承諾がない場合であっても当事者間の信頼関係が壊されない限りAの契約解除を許さない(判例による)

2.借地の転貸借について、裁判所がAの承諾に代わって許可を与えることができる

3.Aが承諾しない場合、Bに対して建物買取請求権造作買取請求権を与える

という特例である。

なお、賃借権を第三者に譲渡する場合も、転貸借と同様に目的物の所有者の承諾が必要で、宅地建物についての承諾に関して特例があるのも同じである。

天地返し

汚染土壌について、土壌の直接摂取による健康被害の恐れがある場合における土壌汚染の除去等の措置の一つ。

土壌汚染の除去等の措置として土壌入れ換えを行なう場合に、指定区域内において汚染されている深さまでの汚染土壌をすべて掘削し、その下の汚染されていない土壌と上下をすべて入れ換えることである(環境省の「土壌汚染対策法ガイドライン」を参考とした)。

転抵当

抵当権者がその抵当権を他の債権の担保に供すること。この場合に、担保の対象となる他の債権を有する者が転抵当権者である。

転抵当は、保有する抵当権を処分する方法の一つで、抵当権者と転抵当権者の合意によって成立し、抵当権の付記登記を対抗要件とする。ただし、元の抵当権の債務者に通知し又はその承諾がなければ、当該債務者、その保証人等に対抗できない。抵当権者は、転抵当することによって債権を事前に回収するのと同様の効果を得ることができる。

転抵当権者は、元の抵当権に実行の要件が備わったときには、その抵当権を実行し、当該抵当権の被担保債権の限度において優先弁済を受けることができる。

転入届

住所を異なる市区町村へ移すときに必要な届出。転入後14日以内に、移転先の市区町村窓口に提出する。転入届を提出するときには、転出証明書(移転元の市区町村に転出を届けたときに交付される)、本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)、マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カードなどを提示しなければならない。

また、転入に当たっては、国民年金、国民健康保険などについても手続きが必要である。

なお、同一市区町村内で住所を移す場合は、転出届・転入届は不要であるが、転居届を提出しなければならない。

天然素材(自然素材)

自然のなかで形成・生育し、人工的に合成された物質を含まない素材。厳密な定義はないが、岩石、樹木、植物繊維、生物の生成物(例えば絹)などで、これらを軽易に加工したものを含む。


建材として利用される天然素材(自然素材)は、例えば、石材、粘土、珪藻土漆喰、材木(集成材ではない木材)などである。

天板

カウンターや机、棚(箱物家具)等の最上面の板。「甲板(こういた)」ともいう。

天袋

2つの意味がある。

1.天井面に接して、もしくは近い位置に造られる戸棚のこと。押入上部や天井から吊り下げて設置されることが多い。
2.押入の上部にある、小さいふすまの付けられた収納部分のこと。

転付命令

債務者の預金などを債権者へ直接的に移すのと同じ効果を生じる手続きのこと。債務者の財産に対する強制執行の一つである。

実際に預金から債権を取り立てる一般的な手続きとしては債権差押がある。
仮に、債務者Aが債権者Bから金銭を借りており、債権者Bが債務者AのC銀行の預金口座を差し押さえるものとしよう。債権者Bは、まず債務者Aの住所地を管轄する地方裁判所に、債権差押命令の申立てを行ない、裁判所がC銀行に対して、債権差押命令を郵送し、差押命令の送達から1週間が経過すると、債権者Bは、C銀行に対して預金を自己(B)に支払うように請求することが可能となる。このような手続きが債権差押である。

しかしこの債権差押では、C銀行は一定の事情(例えば、ほかにも同じ預金を差し押さえた別の債権者Dがいるなどの事情)があるときは、C銀行は債権者Bに対して預金を支払うことができない。このように債権差押では、目的とする預金から必ず満足を得られるとは限らないという不都合がある。

そこで、債権者Bは、債務者Aの預金を直接的に自己(B)に移すように求めることができる。この手続きを転付命令という。上記例では、債権者Bが裁判所に債権差押命令の申立てを行なうと同時に、転付命令の申立てを行なうことができる。この転付命令がC銀行に送達されると、その時点から、預金そのものが債権者Bに移されたのと同じ効果が生じ、債権者Bは他の債権者に優先して、預金から返済を受けることができるようになる。

このように転付命令には、債権者が他の債権者に優先して満足を得ることができるというメリットがあるので、預金のように存在が確実な財産から債権を取り立てる場合には、転付命令を取得することが望ましいとされている。

天窓

トップライトともいう。

屋根に設けられる窓のこと。天井からの採光のために作られる。
壁面の窓に比べて、3倍の採光効果があるとされている。
また、天井近くの高い位置に設ける窓も「天窓」と呼ばれることがある。

ディスクシリンダー錠

シリンダーの内部にディスクを並べて、それらの組み合わせを制御する鍵によって解錠できるようにした錠をいう。

鍵穴から錠を作動するシリンダーに比較的容易に接触できるため、ピッキング(鍵穴に器具を差し込んで解錠すること)に弱いとされているが、改良が進んでいる。

ディスポーザー

生ゴミを細断・破砕する装置。流しの排水口下部に取り付け、流れ落ちてくる生ゴミをカッターで破砕、水とともに下水道に流す。ガーベジ・クラッシャー(gabage crusher)ともいう。

ディベロッパー

不動産開発業者。英語のdeveloper。

土地や建物を改変・建設し、その価値を高める事業に携わる。事業を実施するためには、宅地建物取引業の免許が必要なほか、企画、資金調達、工事管理などを統合する管理能力が重要となる。また、不動産開発事業は、一般に、ハイリスク・ハイリターンの事業とされていることから、ディベロッパーには相応の資力が求められる。

DINKS

子供を持たないで、夫婦とも職業に従事するライフスタイルを意識的に選択するカップル。英語のDouble Income No Kidsの略語。アメリカで使われ始めた用語である。

DINKSは、一般に、高収入で、子育てのための負担がなく、自分の職業や生活の充実に力を注ぐとされ、マーケティングにおいて訴求性のある顧客層とされることがある。例えば、そのライフスタイルに適するとして「DINKS向きマンション」が賃貸・販売されることがあるが、通常のマンションとの違いはない。

ディンプルキー

シリンダーの作動によって制御される錠(シリンダー錠)の一つで、シリンダー内に並べられたピンの制御を、表面に多数の小さなくぼみ(ディンプル)が付いている鍵によって行なうものをいう。

鍵のパターンが非常に多く、鍵の複製が難しいのでピッキング(鍵穴に器具を差し込んで解錠すること)対策に優れているとされる。

DIY

自分自身でモノの製作や修理を行なうこと。Do It Yourself(あなたが自ら行なえ)の略語。

日曜大工、設備や器具の自己組み立て・自己修繕などは、おおむねDIYである。

なお、「自分でできることは自分で行なう」という考え方や態度をさす場合もある。この場合には、モノの製作などだけでなく、サービス活動も含めて広く捉えられている。

DX

情報通信技術やデータを活用して、事業の内容や進め方を抜本的に変革すること。英語のdigital transformationの略。transformationをXと略すのは、transをXと略記する用例があるからである。

DXの明確な定義はないが、アナログなデータをデジタルデータ化することや、業務処理の仕組みをデジタル化することに留まらず、事業の内容や進め方を抜本的に変革することであると考えられている。それによって、市場での競争優位性の獲得、消費者ニーズの変化への対応、生産性の向上などを図ることができるとされている。

DCF法

不動産鑑定評価において収益をベースとして対象不動産の価格を求める手法(収益還元法)の一つ。
対象不動産が将来生み出すであろう各期間の純収益を現在価値へと換算し、それらの現在価値の合計値を資産価格とする方法のことである。

DCF法とは「Discounted Cash Flow法」の頭文字を並べたものである。日本語では、「割引キャッシュフロー法」と訳されることもある。

DCF法では、毎期の収益をもとに詳細な計算を行なうため、特に不動産投資信託では、保有不動産をDCF法によって鑑定評価することが原則とされている。

DBJグリーンビルディング認証

環境・社会への配慮がなされた不動産(Green Building)を認証する仕組み。DBJ(日本政策投資銀行Development Bank of Japan Inc.)が運営する任意の制度である。

DBJグリーン認証においては、Green Buildingを環境性能とステークホルダーの要請に応じる取組の2つの観点から総合的に評価するとし、次の5つの視点を挙げている。

建物の環境性能(Ecology)、テナント利用者の快適性(Amenity & Diversity)、リスクマネジメント(Risk Management)、周辺環境・コミュニティへの配慮(Community)、ステークホルダーとの協働(Partnership)。

出口戦略

投資において、投資の区切りにおける対応方針をいう。

いったん損益を確定し、その結果を受けてどのようにするかということであるが、投資商品の開発の際にそれを明確にしておくこともある。

例えば、不動産の証券化においてSPCの存続期間が終了したとき、対象不動産を売却してしまうか、改めて資金を集めて証券化を継続するかは、いずれも出口戦略である。

デザイナーズ住宅

住むためのデザインに優れている住宅をいう。明確な定義はないが、設計による付加価値を重視する。

一般に、外観だけでなく、住み心地、使い勝手、安全性、耐久性などが良好なものをいうことが多い。

デザイナーズマンション

コンセプトが明確でユニークさを帯びたマンション。和製英語である。

外観・内装に統一性をもたせ、空間感覚を高める設計の建物が多いが、明確な定義はない。また、一般的に、必ずしも著名な建築家が設計しているわけではない。

デシベル

音の強さのレベルを表す単位。英語のdecibel で、dBと表記する。測定対象の音の強さをIとしたとき、聞こえる最小の音の強さ(最小可聴値) I0とIとの比の常用対数の10倍がIのデシベル値である。すなわち、Iのデシベル値=10log10(I/I0)となる。従って、IがI0の10n 倍であれば、Iのレベルは10ndBである。

たとえば、ささやき声は10〜20dB、静かな室内は30〜40dB、通常の会話は50〜70dB、幹線道路沿いは70〜80dBである(「理科年表」(自然科学研究機構国立天文台 編)による)。

なお、デシベルの算定手法は、量のレベルを基準値との比で表す一般的な方法で、音の強さだけでなく、電力、電流、エネルギー、圧力などのレベルを表すために採用され、いずれもデシベルを単位として表示される。

デットとエクイティ(Debt・Equity)

資本調達の区分をいい、デットは、社債発行や銀行借入などにより調達する他人資本、エクイティは、新株や新株予約権付社債の発行などにより調達する株主資本という違いがある。
デットによる資金調達は、返済期間や金利が定められているのに対して、エクイティは、返済期限が定められていない資金の供与であり、通常、投資先の支配権を伴う(議決権なしの株式など、その例外もある)。

不動産の証券化に当っては、デットとエクイティの組合せによって資金を調達するのが一般的で、収益の配分に当ってはデット部分が優先される。一方、エクイティ部分に対する収益の配分は、ハイリスク・ハイリターンになりやすい。

デッドスペース

家屋にある利用が難しい空間。英語のdead space。階段下、屋根裏などに生じやすい。

デッドスペースは収納場所に利用されることが多いが、アクセスの容易さや利便性に劣る傾向がある。

デベロッパー

ディベロッパー」を参照。

出窓

外壁から外部に突き出した窓のこと。

建築基準法では、外壁から外側に突き出した長さが50cm未満であれば、この突き出し部分は床面積から除外することとしている。このため、出窓の突き出しは50cm以下であることが多い。

デュー・デリジェンス

「適正評価手続」または「物件精査」のこと。デュー(due)は「適正な」、デリジェンス(diligence)は「努力」という意味なので、直訳すれば「適正な努力」ということである。

米国においては、不動産の売買取引を行なう際に、売主は、物件情報の詳細な開示(ディスクロージャー)を行なう義務を負う。それと同時に、買主は、買主の費用負担において物件を独自に調査する権利が与えられるのが一般的である。
買主はこのような物件調査権を十分に活用し、「建物および設備の劣化状況」、「建物および設備の機能」、「健康被害(鉛を含む塗料、地下水汚染など)」、「(賃貸不動産・商業不動産の)借主の信用力や周囲のマーケット環境」等々を詳細に調査することが多い。
そしてこれらの詳細な調査の結果、物件が買主の希望に沿わないと判明した場合には、買主は売買契約手続を打ち切り、もしくは希望に沿うような是正措置を講じるように売主に要求することが可能である。
このような米国の不動産売買契約手続において、買主が物件内容を詳細に調査することを「デュー・デリジェンス」と呼んでいる。

また、不動産証券化においても「デュー・デリジェンス」という用語が使用されている。不動産投資信託などの不動産証券を発行する場合には、発行主体は、不動産の内容に関する詳細な情報開示(ディスクロージャー)を行なう義務を負う。

この物件情報の開示が適正かつ十分なものであるか否かについては、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士等の各分野の専門家が、第三者の中立の立場から審査を行なうのが一般的であり、この審査手続が「デュー・デリジェンス」と呼ばれている。

またわが国では、特にオフィスビルの建物診断を指して「デュー・デリジェンス」と呼ぶことがある。近年、わが国の大手・中堅ゼネコンでは、建物診断を重要な新規事業と位置付けており、これをデュー・デリジェンスと呼んでいる。具体的には、建物の劣化診断、機能診断、耐震性診断、省エネルギー診断などであり、建設会社の技術力を生かした詳細な建物診断を事業化している。

DEN

一般的には書斎のこと。趣味を楽しむための部屋としても使用され、要するに動物の巣のようなプライバシーの高い室。

広さ・形の基準はなく、間取り図にDENと表示されることが多い。

田園住居地域

都市計画における住居系用途地域の一つで、農業の利用の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域。都市計画法に基づく制度である。

田園住居地域は、都市の構成要素としての農地を都市計画に本格的に位置付ける制度であって、生産緑地以外の市街化区域内農地について建築等を規制し、農業利用と調和した低層住宅の良好な住居の環境を保護する仕組みである。

田園住居地域における規制の概要は、次の通りである。
(1)開発規制
農地である区域内において、1)土地の形質の変更、2)建築物工作物の建築、3)一定の土石等の堆積を行おうとする場合には、市町村長の許可を必要とする。市町村長は、規模300平方メートル未満の行為については許可しなければならない。
(2)建築規制
・区域内での建築物の用途は、低層住居専用地域に建築可能なもの(住宅、老人ホーム、診療所等)又は農業用施設(農業の利便増進に必要な店舗・飲食店等で面積500平方メートル以内のもの、農産物の生産・集荷・処理・貯蔵に供するもの、農産物の生産資材の貯蔵に供するもの)に限る。
・区域内の建築物について、容積率建ぺい率、高さ、外壁後退を、低層住居専用地域と同様に制限する(これによって、日影等の影響を受けずに営農継続が可能となる)。

電気温水器

割安な深夜電力を利用して夜間に高温の温水を沸かし、貯湯タンクに蓄えておいて、台所・洗面台・風呂・シャワーなどへの給湯を賄う電気機器のこと。

深夜電力は通常の電灯料金の約3分の1と割安であり、また電気ヒーターで加熱するので二酸化炭素が発生せず、燃焼音がなく静かに湯を沸かすことができるというメリットがある。

近年では、湯を使用すると同時に必要な量の湯を自動的に追加して沸かすタイプや、給湯圧を高めて2階でも湯の出る勢いを高めたタイプなどさまざまな製品が普及している。また配管を電気温水器本体部に内蔵し、配管工事の手間を軽減した製品が主流となっている。標準的な貯湯タンクの容量は3人家族で300L程度が目安とされている。

浴槽への給湯については、給湯のみを行なうタイプ、自動的に風呂釜への湯はりを行なうタイプ(オートタイプ)、自動湯はりだけでなく自動追いだき・自動足し湯も行なうタイプ(フルオートタイプ)という3種類がある。

なお、電気温水器の「風呂追いだき機能」については昼間電力を使用するためコストが高いなどの課題があったが、近年は深夜電力の蓄熱を利用して熱交換方式で追いだきをすることにより、低コストかつスピーディな追いだきができる製品が2000(平成12)年に開発されており、ガス給湯器に劣らない性能となっている。

電気工事士

一定の電気工事に従事するための資格。電気工事士法によって定められている制度である。軽微な作業以外の電気工事は、電気工事士または電気事業者でなければ行なってはならないとされている。

電気工事士には、第一種電気工事士と第二種電気工事士の二つの種類があって、行なうことのできる工事の内容に違いがある。第一種電気工事士は、おおむね一般用電気工作物(600ボルト以下で受電する電気設備等)および自家用電気工作物(一般送配電事業等の用に供する電気工作物)のうち最大電力500 キロワット未満の設備に関する電気工事を、第二種電気工事士は、おおむね一般用電気工作物に関する電気工事をそれぞれ行なうことができる。

また、電気工事士が行なうことができる電気工事以外の工事は、電気事業者が行なうこととなる。

電気自動車

電気モーターを動力源とする自動車。電池を車載する方式(電池式)と走行中に電力を外部から供給する方式(架線式)に二分できる。
また、車載する電池への充電は外部から行なうのが一般的であるが、発電装置(太陽電池燃料電池など)を車載する方式もある。
ハイブリッドカーは、電気モーターと内燃機関を組み合わせて動力源とする自動車である。

電気自動車は、内燃機関を動力源とする自動車に比べて、エネルギー効率が高い、アイドリングなどの無駄なエネルギー消費がない、一般家庭で充電が可能でガスステーションなどが不要、などの特徴がある。
一方、充電に時間が掛かる、航続距離が短い(特に重量が大きい場合に)などの短所がある。

なお、電気自動車を利用する場合には、住宅で発電した電気を家庭用蓄電池に蓄電した上で充電するなど、自動車を住宅のエネルギー管理の一環に組み込むことができる。

電子契約

情報通信技術を利用し、コンピューター画面を介して電子データを用いて締結される契約

電子契約の信頼性を書面契約と同水準で確保するためには、契約意思を表示する電子的な署名の仕組み、契約内容の改ざん防止する措置、契約内容を電子データとして保管し、真正性を証明するシステムなどが必要で、「電子署名法」「電子帳簿保存法」等の法令が整備されている。

なお、不動産特定共同事業契約の成立前の書面の交付や、建設工事の請負契約の締結に際しての書面交付は法令で義務付けられているが、これらについては、相手方の承諾を得たうえで、一定の要件を満たす電子的な交付や電子契約が認められている。一方、宅地建物取引業法において義務付けられている書面の交付や書面による契約については、電子データのみで実施することは認められていない。

電子商取引

インターネット上で行なわれる商取引をいう。

取引の内容は、商品購入、広告宣伝、契約締結、資金決済など幅広いものがあり、取引の当事者についても、企業間(B to B、Buisiness to Buisiness)、企業対消費者(B to C、Buisiness to Cosumer)、消費者間(C to C、Consumer to Consumer)の各タイプがある。

電子商取引を活用すれば広範囲の相手と低コストで取引することができるが、ネットという媒体の特性に即して取引の安全や消費者の保護を確保するための注意や工夫が必要である。

特にB to Cの取引については注意が必要であり、消費者保護のための原則(OECD「電子商取引に関する消費者保護ガイドライン」)が明らかにされている。それによると、一般の取引を下回ることのない透明かつ有効な水準の消費者保護を実現するため、

1.営業・広告・販促行為における公正さの確保、2.事業者、商品/サービス、取引条件に関する詳細な情報の提供、3.明確な意思確認プロセスの確保、4.安全な支払いの手段の提供、5.紛争解決・救済手段へのアクセスの確保、6.個人情報(プライバシー)の保護

が必要であるとされる。

不動産取引における電子商取引は、不動産の特性から広告・宣伝の手段としての活用にとどまっている。また、本格的な活用のためには、重要事項説明等不動産取引のための仕組みのあり方について検討する必要がある。

電子署名

電磁的な記録(電子文書)について、その作成者および作成された記録が改竄されていないことを保障する仕組みをいう。

電子署名がなされた電子文書は、署名押印された文書と同様に、真正に成立したものとみなされる(電子署名及び認証業務に関する法律)。

電子署名の方式はいくつかある。いずれも暗号化技術の応用であるが、一般には公開鍵暗号方式を基本とした仕組みが利用されている(詳しくは、「暗号化」を参照)。

なお、電子署名において公開鍵を公開する場合に、その信頼性を確保するため、公開鍵がその持ち主のものであることを第三者が証明すること(認証業務)が有効であると考えられており、一定の要件を満たす認証業務(特定認証業務)を行なう者を認定する制度が整備されている。

伝統工法

第二次大戦以前から行なわれてきた日本古来の工法のこと。現代では、この伝統工法による木造住宅は極めて少なくなりつつある。

伝統工法は、布基礎を用いないこと、筋かいではなくで壁の強度をつくること、柱をあらわにする「真壁(しんかべ)」を採用することなど、現代の一般的な木造住宅とは大きく異なる特徴を有している。

伝統的建造物群

周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している建造物群で、価値の高いものを「伝統的建造物群」という(文化財保護法第2条)。

伝統的建造物群とは、具体的には城下町・宿場町・門前町などの全国各地に残る歴史的な建造物群を指している。

伝統的建造物群については、市町村が伝統的建造物群保存地区を定め、その保存を図っている(文化財保護法第143条)。

また、国はその中から価値の高いものを重要伝統的建造物群保存地区として選定している(同法第44条)。

伝統的建造物群保存地区

伝統的建造物群とこれと一体をなしてその価値を形成している環境を保存するために、市町村が定める地区をいう。

例えば、城下町・宿場町・門前町などに残る歴史的な集落やまち並みが指定の対象となる。

伝統的建造物群保存地区は、都市計画区域内または準都市計画区域内においては都市計画法地域地区として、それ以外の区域は条例によって定められる。

市町村は、条例により、伝統的建造物群保存地区の現状変更の規制等について定めることとなるが、その基準は政令の定めに従わなければならない。

規制等の基準を定める政令は、許可の対象となる行為を、「建築物その他の工作物の新築、増築、改築、移転又は除却」「建築物その他の工作物の修繕、模様替え又は色彩の変更でその外観を変更することとなるもの」「宅地の造成その他の土地の形質の変更」「木竹の伐採・土石の類の採取」「そのほか現状を変更する行為で条例で定めるもの」としている。

また、許可を与える基準については、許可対象となる行為をした後の伝統的建造物等の位置・形態等が伝統的建造物群の特性を維持していること、伝統的建造物以外の建築物等については、その位置・形態等が当該保存地区の歴史的風致を著しく損なうものでないこと、などとしている。

なお、伝統的建造物群保存地区のうち価値の高いものは、国が重要伝統的建造物群保存地区として選定している。

電動シャッター

電動で開閉するシャッター。一方、人力で開閉するものを「手動シャッター」という。

電動シャッターは、手動シャッターに比べて、防犯性に優れ、リモコンで操作でき利便性が高いなどとされる一方、設置費用がかさみ、維持コストを要する。

電動ドライバー

電力で回転するネジ回し。回転する部品(ピット)を交換して、穴あけ機(ドリル)としても使うことができる。

転力だけでなく打撃力もあるインパクト・ドライバーと、回転力のみのドリル・ドライバーに大別できる。

データセンター

データ処理を専門に行なうための施設。英語のdata center。コンピュータやデータ通信設備が設置され、それを支障なく運用するため、防火・耐震・耐水害性能、非常電源、非常時通信回線、セキュリティなどの確保が図られている。

原則として、データ処理に必要な場所を提供し、データ処理システムの設計や設備の設置・運用はデータセンターの利用者が実施する。この場合、設備をレンタルし、運用を代行するサービスが提供されることが多い。

なお、データセンターがデータ処理の場所を提供するのに対して、クラウドサービスは、ネットを通じて定型化されたデータ処理サービスを提供する。

トイレ

便所。英語のtoiletを短縮した和製英語である。

洋式と和式に二大別できる。また、水洗式であるかどうかの区別もある。

洋式の水洗トイレは、便器・便座・水タンクで構成されている。その種類としては、この三つを組み合わせた通常のトイレ、水タンクがなく水道に直結するタンクレストイレ、三つが一体となっているシャワートイレ一体型、水タンクをキャビネットに収めた収納一体型トイレがある。

等価交換方式

土地の上にマンションなどの建物をディベロッパーが建設し、土地と建物の評価額に応じて双方が土地と建物を取得する方法をいう。

地主は自己資金を必要とせず、土地の一部を提供することにより、等価の建物の一部を取得することになるのが特長。

登記官による本人確認

不動産登記の申請において、登記官が申請人以外の者が申請していると疑うに足るだけの相当な理由があると認められる場合に、登記官は当該申請人の権限の有無を調査しなければならない。この制度のことを「登記官による本人確認」という。

特に、新しい不動産登記法(2005(平成17)年3月7日施行)においては、従来原則的に許されなかった郵送申請を解禁したために、申請人が本当に本人であるかどうかを調査することの重要性が高まり、不動産登記法24条において登記官による本人確認の制度が設けられている。

登記完了通知

登記を申請した者に対して、登記手続きが完了したことを知らせるために通知される通知のこと。
2005(平成17)年3月7日に施行された新しい不動産登記法では、オンライン庁を指定することとした。オンライン庁では、従来の登記済証の提出・交付の制度の代わりとして、登記識別情報の提出・交付の制度を導入している。このため、オンライン庁で登記が完了した場合には、登記申請者に対しては、登記済証が交付されるのではなくて、登記識別情報が通知されるだけである。
そこでオンライン庁では、登記が完了した際、登記申請者に対して「登記完了通知」を交付することとした。つまり登記完了通知が、従来の登記済証が有していた登記完了を告知するという機能を担っている。

オンライン庁で登記完了通知が行なわれる場合、申請方法がオンライン申請であれば、登記完了通知はインターネットを通じたデータ送信で通知される。また書面申請であれば、登記完了通知は、書面で通知される。なお、未指定庁では従来どおり登記済証の提出・交付の制度が継続されているので、登記完了通知は行なわれない。

登記記録

一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記の記録のこと。

従来は紙であったため「登記用紙」と呼ばれていたが、現在はほとんどの登記所でハードディスク上のデータとなっているため、現在の不動産登記法では「登記記録」という用語が使用されている(不動産登記法第2条第5号)。

登記義務者

不動産の登記により形式的に不利益を受ける者のこと。

売買による所有権移転登記の場合でいえば、移転登記により不利益を受けるのは従前の所有権名義人であるので、「登記義務者」は従前の所有権名義人(すなわち売り主)である。

また、所有者が住宅ローンを完済したことにより金融機関の抵当権を抹消する登記をする場合(抵当権抹消登記)でいえば、抵当権抹消登記により不利益を受けるのは金融機関であるので、「登記義務者」は金融機関となる。

登記権利者

不動産の登記により形式的に利益を受ける者のこと。

売買による所有権移転登記の場合でいえば、移転登記により利益を受けるのは新たな所有権名義人であるので、「登記権利者」は新たな所有権名義人(すなわち買い主)である。

また、所有者が住宅ローンを完済したことにより金融機関の抵当権を抹消する登記をする場合(抵当権抹消登記)でいえば、抵当権抹消登記により利益を受けるのは所有者であるので、「登記権利者」は所有者となる。

登記識別情報

権利の登記を終えた場合に、その登記名義人が真正な権利者であることを公的に証明するために、その登記名義人に対して通知される秘密の12桁の番号のこと。従来の登記済証に代わるものである。

2005(平成17)年3月7日に施行された新しい不動産登記法では、オンライン庁を指定することとした。オンライン庁では、従来の登記済証の代わりとして、登記識別情報の提出・交付の制度を導入している。
オンライン庁では、不動産登記をオンライン申請または書面申請する際には、登記申請者(登記義務者)は、自分が真正な権利者であることを証明するために、登記識別情報を添付しなければらない。また、オンライン庁で登記が完了した場合には、登記申請者に対しては、登記済証が交付されるのではなくて、登記識別情報が通知されるだけである。

「登記識別情報」とは、12桁の英数字からなる秘密の番号であって、他人が盗み見ることができないような方法で、登記名義人に通知される。
オンライン庁でオンライン申請した場合には、登記識別情報は、暗号技術を用いた方法でインターネットを通じて登記名義人に通知される。また、オンライン庁で書面申請した場合には、登記識別情報は、書面に印刷して目隠しシールを貼った状態で、登記名義人に交付される(この書面を「登記識別情報通知書」という)。

登記識別情報通知書

登記完了後に、登記名義人に対して登記識別情報を通知するために交付される書面のこと。
オンライン庁では、従来の登記済証に代わるものとして、登記識別情報(12桁の秘密の番号)を、登記完了時に登記名義人に交付することとなっている。
オンライン庁で書面申請をする場合には、登記申請者は、この登記識別情報を「書面」の形で受け取ることとなり、この書面を「登記識別情報通知書」と呼んでいる。

この登記識別情報通知書では、登記識別情報(12桁の秘密の番号)を書面に印刷し、その登記識別情報の部分に、一度剥がすと二度と貼れない特殊な目隠しシールを貼った状態になっている。このような特殊なシールにより登記名義人以外の者が、登記識別情報を盗み見ることを防止している。

登記所

登記事務を担当する機関のこと。

一般名称として「登記所」と呼んでいるが、正式名称は「法務局」、「地方法務局」、「支局」、「出張所」である。

登記事項証明書

一筆の土地、一個の建物ごとに記録されている登記記録の全部または一部を、登記官が公的に証明した書面のこと。

従来は登記記録(登記用紙)が紙で調製されていたため、その写しを交付しており、これを登記簿謄本と呼んでいた。しかし、現在は登記事務が電子化されたため、登記記録は磁気ディスク上に調製されている。この電磁的な登記記録の記載事項を公的に証明したものが、登記事項証明書である。

なお、遠隔地の不動産に関する登記事項証明書であっても、登記情報交換システムを通じて最寄りの登記所でその交付を受けることができる。

登記事項要約書

一筆の土地、一個の建物ごとに記録されている登記記録を要約した書面のこと。
従来は、登記記録(登記用紙)が紙で調製され、バインダー式の帳簿に閉じられており、これを登記所内の所定の場所で閲覧することができたが、現在では大半の登記所がコンピュータ化されたため閲覧ができない。そこで閲覧に代わるものとして、磁気ディスク上の登記記録の要約を、希望者が入手できるようにしたものが登記事項要約書である。

なお、登記事項要約書は、その登記所が管轄している区域内の不動産に関して交付されるのみであり、他の登記所の管轄については交付されない。これは、閲覧制度の代替が登記事項要約書であるからだと考えられる。

また、登記事項要約書は、登記事項証明書よりも記載事項が少ない。
まず、現在の権利だけが登記事項要約書に記載され、過去の権利の発生・移転・消滅の履歴は判らない状態になっている。また、権利の発生原因(売買など)も省略されているので知ることができない。また、登記の受付番号・受付年月日も省略されているので知ることができない。

登記情報交換システム

法務省が2000(平成12)年以降、各地の登記所をコンピュータ・オンラインで結び、ある登記所において別の登記所の管轄する不動産登記を閲覧できるというシステムを導入した。このシステムのことを「登記情報交換システム」という。

現在全国各地で順次稼動を開始している。

これまでは、遠隔地にある不動産の登記簿を閲覧する場合、その遠隔地の登記所へ出向くか、もしくはその遠隔地で開業している司法書士に閲覧を依頼する必要があったが、このシステムがすでに導入された地域では、登記所の管轄を越えて、登記簿を閲覧することが可能になっている。

登記済証

不動産登記事務が電子化される以前は、権利登記において、登記手続きの完了後に、登記をした者(登記名義人)に対して、登記申請書の写し(副本)に登記官が「登記済」と押印したものが返還されていた。この登記名義人となった者に返還される押印された申請書副本が「登記済証」である。

登記済証は、登記名義人が所持し、その所持者が登記名義人であることを公的に証明する書面であることから、「権利証」とも呼ばれている。

しかしながら、不動産登記法が改正され(施行日は2005(平成17)年3月7日)、本人確認は登記識別情報によることとされたため、登記済証の発行制度は廃止された。
ただし、制度廃止後の初回の書面申請においては、申請人は未だ登記識別情報を保有していないため、その場合には登記済証の提出によって本人確認を行うこととされている。

登記の欠缺

すべき登記がされていないことをいう。登記の欠缺があると、原則として登記による法律効果を享受できない。たとえば、不動産の権利変動に関する登記が欠缺していると、その変動について第三者に対抗することができない。

なお、詐欺脅迫によって登記を妨げた第三者は登記の欠缺を主張できないとされているほか、登記の欠缺を主張することが信義則に反する場合にはその援用は認められないと解されている。

登記簿

登記記録が記録される帳簿のこと。
従来は、登記簿とはバインダーに閉じられた登記用紙の帳簿を指していたが、新しい不動産登記法(2005(平成17)年3月7日施行)では、磁気ディスクなどをもって調製される帳簿を、登記簿と呼ぶことが原則になった。

登記簿謄本

ある不動産に関する1組の登記用紙のすべての写しのこと。

登記簿謄本の末尾に登記官が押印することにより、その内容が正しいことを証明している。
土地の場合、登記簿謄本はその土地に関する「表題部」「権利部」(甲区乙区)の写しである。また建物の場合、登記簿謄本はその建物に関する「表題部」「権利部」(甲区・乙区)の写しである。

なお、1組の登記用紙の一部のみの写しは「登記簿抄本(とうきぼしょうほん)」という。
コンピュータシステムを導入している登記所では、登記簿謄本に代わるものとして「登記事項証明書」を交付している。

登記名義人

一筆の土地または一個の建物に関する登記記録において、不動産に関して所有権賃借権抵当権などの権利を有する者として記載されている者のことを「登記名義人」という。

例えば、A氏からB氏への所有権移転登記が記載されている場合、B氏が登記名義人と呼ばれる。

東京都自然保護条例

正式名称は「東京における自然の保護と回復に関する条例」。
自然保護指導者の育成、里山の保護などを内容としている。

特に注目を集めているのは屋上緑化の規定である。
2001(平成13)年4月より改正・施行された東京都自然保護条例では、屋上緑化について次のように定めている。

1.1,000平方メートル以上の敷地面積の民有地において、建築物・駐車場等を新築・増築する者はすべて緑地化の義務を負う。
2.地上部では、原則的に空地部分の20%以上で、樹木・芝等の緑化を行なう必要がある。
3.屋上・壁面・ベランダでは、原則的に屋上の利用可能部分の20%に相当する面積以上で樹木・芝等の緑化を行なう必要がある。
4.地上部と屋上等の緑地化に関する届出を義務付けた。この届出の義務に違反した場合20万円以下の罰金を科すことができる。

東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例

東京都議会で2004(平成16)年3月31日に可決成立し、2004(平成16)年10月から東京都内で施行された、住宅の賃貸借の紛争防止のためのルールのこと。

東京都住宅局は、2004(平成16)年2月6日『民間賃貸住宅に関する「東京ルール」の推進について』とする方針を公表し、民間賃貸住宅に関して、退去時の敷金の精算や入居期間中の修繕をめぐる紛争など、多くの相談が寄せられていることから、紛争の未然防止を図るため、契約時点での的確な説明を義務付けた全国初の条例を策定する方針を明らかにした。
(なおこのとき同時に、「戦後の住宅難等を背景に地域的に始まったとされる礼金更新料については、それらの授受のない契約を普及させ、円滑な住替えを促進する」ことも言明している)

このような東京都住宅局の方針を受けて、東京都議会で2004(平成16)年3月31日に可決成立し、2004(平成16)年10月1日から東京都内で施行されている条例が「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」である。この条例では、おおよそ次のことを定めている。

1.重要事項説明における説明義務の加重(条例第2条関係)
宅地建物取引業者は、住宅の賃貸借の代理または媒介をする場合は、当該住宅を借りようとする者に対して法第35条第1項の規定により行なう同項各号に掲げる事項の説明に併せて、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
1)退去時における住宅の損耗等の復旧ならびに住宅の使用および収益に必要な修繕に関し東京都規則(以下「規則」という)で定める事項
2)前号に掲げるもののほか、住宅の賃貸借に係る紛争の防止を図るため、あらかじめ明らかにすべきこととして規則で定める事項

2.指導・勧告・公表(条例第5条・第6条関係)
知事は、宅地建物取引業者に対し、説明を行ない、または報告もしくは資料の提出をし、もしくは報告もしくは資料の内容を是正するよう指導および勧告をすることができる。
知事は、勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
知事は、公表をしようとする場合は、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えるものとする。

東京ルール

東京都議会で2004(平成16)年3月31日に可決成立し、2004(平成16)年10月から東京都内で施行された「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」において示された、住宅の賃貸借の紛争防止のためのルールのこと。

東京都住宅局は2004(平成16)年2月6日『民間賃貸住宅に関する「東京ルール」の推進について』とする方針を公表し、民間賃貸住宅に関して、退去時の敷金の精算や入居期間中の修繕をめぐる紛争など、多くの相談が寄せられていることから、紛争の未然防止を図るため、契約時点での的確な説明を義務付けた全国初の条例を策定する方針を明らかにした。
(なおこのとき同時に、「戦後の住宅難等を背景に地域的に始まったとされる礼金更新料については、それらの授受のない契約を普及させ、円滑な住替えを促進する」ことも言明している)

このような東京都住宅局の方針を受けて、東京都議会で2004(平成16)年3月31日に可決成立し、2004(平成16)年10月1日から東京都内で施行されている条例が「東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例」である。この条例では、おおよそ次のことを定めている。

1.重要事項説明における説明義務の加重(条例第2条関係)
宅地建物取引業者は、住宅の賃貸借の代理または媒介をする場合は、当該住宅を借りようとする者に対して法第35条第1項の規定により行なう同項各号に掲げる事項の説明に併せて、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
1)退去時における住宅の損耗等の復旧ならびに住宅の使用および収益に必要な修繕に関し東京都規則(以下「規則」という。)で定める事項
2)前号に掲げるもののほか、住宅の賃貸借に係る紛争の防止を図るため、あらかじめ明らかにすべきこととして規則で定める事項

2.指導・勧告・公表(条例第5条・第6条関係)
知事は、宅地建物取引業者に対し、説明を行ない、または報告もしくは資料の提出をし、もしくは報告もしくは資料の内容を是正するよう指導および勧告をすることができる。
知事は、勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。
知事は、公表をしようとする場合は、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べ、証拠を提示する機会を与えるものとする。

登記料

一般的には、不動産所有権などを登記する場合に、登記印紙によって納税する「登録免許税」のことを「登記料」と呼んでいる。

不動産登記手続を代行する司法書士に支払う報酬と、登録免許税との合計額を「登記料」と呼ぶこともある。

倒産隔離

資産(不動産)の証券化に当たってSPEが満たすべきとされる要件の一つで、その保有・運用する資産(不動産)を関係者の倒産等のリスクから切り離すことをいう。

企業が倒産すると、債権者や管財人は倒産企業が保有する資産や株主議決権などを活用して債権回収を図るが、SPEの保有・運用する資産に対してそのような追及が及べば投資家の利益を損なうことになる。倒産隔離は、そのような追及を防いで、保有・運用資産を法的に保護する仕組みである。

例えば、SPE自身の倒産リスクに対しては、他業規制(当初目的事業以外の禁止)などのほか、議決権を有する出資者を有限責任中間法人やケイマンSPC(ケイマン島に設立した特殊な法人)に限定して公正な第三者のみが議決権を持つようにする手法などが、オリジネーター(Originator)の倒産リスクに対しては、真正売買を確保するなどの方法が採用されている。

投資

金銭を金融商品等に変換し、あるいは事業に充当して利益を得る行為。株式、債券、不動産などを取得して配当等を受け取る方法、それらを売買して差額を得る方法、事業に出資する方法などがある。

例えば、「株式投資」または「不動産投資」は株式または不動産を金銭運用の対象とする投資、「投資信託」は投資利益を証券化した金融商品で信託のしくみを使うもの、「投資ファンド」は共同で投資するために集めた資金のことである。

投資は、費用とリスクを伴う。不動産投資を例にすれば、取引に伴って税(取引の内容に応じて、不動産取得税印紙税、譲渡所得税、固定資産税など)や手数料を負担する必要があるほか、不動産価格の変動などによって賃貸料の減少や売却損が生じる恐れがある。

なお、経済学でも「投資」という用語を使うが、その意味は、一般的な意味とはまったく違うので注意が必要である。経済学でいう「投資」は、「消費」と対比した用語で、一定期間における実物資産の増加分(使われないで次の期に積み上がる資産)をいう。この場合、「投資」は事後的に「貯蓄」と等しくなる。

投資口

不動産投資信託において、投資家が投資法人に出資する単位のこと。通常の会社における「株式」に相当する。

投資法人は、投資家からの出資を集めて設立される法人であり、投資家が投資法人に出資する単位のことを「投資口」と呼んでいる。また、投資口を保有する投資家は「投資主」と呼ばれる。

証券取引所に上場されている不動産投資信託の場合、投資口の1口の価格(すなわち投資主の最低の投資額)は、おおむね20万円から100万円程度となっている。
投資主は保有する投資口の口数に応じて、投資法人から分配金を受け取ることができる。

投資口価格

不動産投資信託における投資口が証券取引所において日々売買される価格のこと。

不動産投資信託において、投資家が投資法人に出資する単位のことを「投資口」という。投資口は普通の会社における「株式」に相当するものである。なお、投資口を購入した投資家は「投資主」と呼ばれる。

東京証券取引所・大阪証券取引所に上場されている不動産投資信託の場合には、投資主が保有する「投資口」は、普通の上場株式と同じように自由に売買することができる。

具体的には、証券取引所が開いている時間帯に、投資主は証券会社を通じてある希望価格で(または買い手の言い値で)投資口を売却するという注文を出す。また、投資口を買いたい投資家は証券会社を通じてその投資口をある希望価格で(または売り手の言い値で)買い付けるという注文を出す。そして、売り手と買い手の注文が合致したとき売買が成立する。

このようにして、証券取引所では時々刻々と投資口の取引価格が成立していることになる。この投資口の証券取引所における取引価格のことを「投資口価格」と呼んでいる。なお、実際には新聞やインターネット上では、「投資口価格」という正式名称の代わりに「株価」と呼ばれることが多い。

投資口の追加発行

不動産投資信託において投資法人が営業開始後に出資を追加的に募集すること。

投資証券

不動産投資信託における投資法人において、投資主であることを表す証券のこと。
普通の株式会社でいえば「株券」に相当する。

投資法人は、投資主で構成される法人である。投資主の権利は、保有する投資口に由来している。普通の株式会社でいえば、投資主は「株主」、投資口は「株式」に相当する。

このような投資主の地位(すなわち投資口の権利)を表した証券が、「投資証券」と呼ばれている。

投資法人は、法人設立の際または新投資口の発行の際に、投資証券を新たに発行して、投資主に交付する。
また、証券取引所で不動産投資信託を売買する場合には、不動産投資信託を購入した投資主は、以前の投資主から、既存の投資証券を受け渡されることになる。

ただし実際には、投資証券そのものの交付や受け渡しは原則として行なわれず、「証券保管振替機構」において投資証券が一括保管されることになっている(詳しくは保管振替制度へ)。

投資信託委託業者

不動産投資信託において、投資法人から実際の投資判断を委託された不動産のプロのこと。多くの場合、大手不動産会社・中堅不動産会社・商社・生命保険会社・損害保険会社などが投資信託委託業者として選任される。

不動産投資信託における投資法人は、資産運用方針・資金調達方針を決定する主体ではあるが、専門的な不動産運用の部署を投資法人の内部に設置することは法律上できない。

そこで、調達した資金をどの不動産に投資するか、どの不動産を売却するか等の専門的判断は、すべて不動産のプロであるところの投資信託委託業者に委託することとされている。このように、不動産投資信託の実際の運用を行なうという意味で、投資信託委託業者は「ファンドマネージャー」「アセットマネージャー」「資産運用会社」と呼ばれることがある。

投資信託委託業者は、不動産運用に関する報酬を投資法人から受け取る。この報酬額の定め方は、上場された不動産投資信託の場合は、有価証券報告書で確認することができるが、多くの場合、運用成績に連動した報酬額とされている。

なお、投資法人が保有するオフィスビル等を実際に管理運営する不動産管理専門会社は、投資信託委託業者ではないことに注意したい。

投資信託及び投資法人に関する法律

投資者から資金を集め、投資者以外の者がその資金を集合して特定の資産に対する投資として運用し、その成果を投資者に分配する制度を定める法律。「投信法」と略称されることがある。  

同法は、その方法として
(1)投資者が拠出した財産を信託財産とし、信託契約によって投資運用してその利益を受益者に分配するしくみ(投資信託制度)
(2)投資者が特定の資産に対する投資運用を目的とした社団を設立し、その利益を分配するしくみ(投資法人制度)の二つを定めている。   

また、投資信託制度には、
(ア)委託者指図型投資信託 ひとりの委託者(金融商品取引業者に限る)が投資の運用を指図し、その委託者が、信託利益を受け取る権利(信託受益権)を分割して複数の者に販売するかたち
(イ)委託者非指図型投資信託  複数の委託者が信託約款によって金銭を信託し、受託者が指図に基づかないで投資運用して、委託者に対して信託利益を配分するかたち の二つの種類がある。  

JREITは、不動産を対象にして、これらの制度(大部分は投資法人制度)によって投資運用することで成り立っている。  投資信託制度による信託受益権や、投資法人制度による利益の配分を受ける権利等(投資口)は、有価証券(受益証券または投資証券)のかたちで流通し、その取引は金融商品取引法に基づいて行なわれる。従って、JREITの取引については、宅地建物取引業法は適用されない。  なお、不動産を投資運用の対象とする場合には、委託者指図型投資信託の委託者や投資法人制度における設立企画者・資産運用会社は、宅地建物取引業免許及び取引一任代理等の認可を受けた金融商品取引業者でなければならないとされている。

投資主(投資信託における)

会社型投資信託に投資した者をいう。株式会社における株主に相当する。

会社型投資信託は金融商品の一つとして販売されているが、その投資口(株式会社における株式に相当する)を購入した者が投資主である。投資主は、投資法人の構成員となる。

投資主には、投資運用の結果得られた利益を分配金として受け取ること、投資主総会において議決権を行使すること、代表訴訟(投資信託委託業者、執行役員等に対する訴訟)の提起権や総会決議取消請求権を行使することなど、一定の権利が与えられている。

投資主総会

不動産投資信託における投資法人の重要な事項を決定するための投資主の総会のこと。通常の株式会社における「株主総会」に相当する。

不動産投資信託には大きく分けて会社型と契約型があるが、証券取引所に上場されている不動産投資信託はすべて会社型である。

会社型投資信託における投資の主体は「投資法人」という法人である。投資法人の業務執行は役員(執行役員など)が実施するが、一定の重要な事項については数年に一度、投資主の総会を開催して、投資主の議決を経なければならない。このような総会が「投資主総会」である。

投資主総会の開催方法は投資法人の「規約」に定められるが、一般的には、役員の任期に合わせて2年に一度開催するものとされている。

実際に投資主総会で議決される案件には、次のようなものがある。

1.役員(執行役員、監査役員)の選任・解任
2.会計監査人の選任・解任
3.規約の変更

投資不動産

「賃貸収益獲得を目的として、または価格の上昇を目的として保有する土地・建物」のこと。英語ではInvestment Propertyという。

投資不動産については、国際会計基準では時価評価(または時価情報の注記)が求められており、このような国際会計基準での取扱いをわが国が採用するかどうかをめぐって、最近わが国で大きな議論が起きている(「国際会計基準」参照)。

国際会計基準委員会(IASC)の理事会は、2000年3月に、投資不動産の会計上の取扱いに関する「国際会計基準第40号」を承認した。この国際会計基準第40号によれば、投資不動産とは「賃貸収益、資本増価、またはその両方を目的として保有する不動産」と定義されている。

具体的には、賃貸ビル、賃貸店舗、賃貸マンション、賃貸アパート、遊休地などが「投資不動産」に該当する。また遊休地を一時的に駐車場として利用している場合には、その駐車場は「投資不動産」に該当する。
その反面、通常の事業目的で所有する土地建物(例えば本社ビル、自社で使用する工場、自社で使用する店舗など)は「投資不動産」ではない。また、不動産会社・建設会社が販売目的で所有する土地建物は「投資不動産」から除外される。

このような投資不動産について、国際会計基準第40号では、原則的に決算日における「時価」により毎期評価することを求めている。また企業が時価評価を採用しない場合には、決算日における時価を貸借対照表に注記することを求めている。
また、投資不動産の時価評価を行なう場合には、投資不動産の時価の変動から生じる評価益(または評価損)は、毎期の当期利益に含めて表示されることになる。

時価評価を行なわず、時価の注記だけを行なう場合には、国際会計基準第40号では、投資不動産は取得原価で評価され、毎期減価償却を行ない、減損が発生した場合には減損会計により損失を計上すればよい。つまりこの場合には通常の固定資産と同様の会計処理でよいことになる。

なお上記における「時価」は英語では「フェア・バリュー(公正価値)」と表現されている。この「フェア・バリュー」とは、原則として、取引知識がある者同士の間で成立する資産の取引価額のことであり、不動産市場における市場価格と考えることができる。

日本では05年度から減損会計の完全実施が予定されている(「減損会計」参照)。
わが国で導入される減損会計においては、企業会計審議会の意見書によれば、投資不動産についても減損会計を適用することとされており、かつ時価情報の注記については今後の議論に委ねることとされている(2002年8月9日企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」六より)。

つまり、国際会計基準第40号が求めているような投資不動産の時価評価はわが国では導入せず、また時価情報の注記についても今後の議論によって先送りにされる可能性が高いのである。

ただし、海外で資金調達を行なうような企業にとっては、国際会計基準に準拠した財務諸表の作成が今後ますます求められるようになるので、わが国でも投資不動産の時価情報の注記が後年実施されるようになる可能性があると思われる。

投資物件

投資対象とする不動産。投資家の間で売買される。

投資物件は利用を目的とするのではないから、その売買に当たっては、収益性やリスクが重視される。

投資物件は、住宅、店舗、ホテル、事務所ビルなど不動産の用途で分類されるほか、投資家が投資物件を評価する際には、収益の源泉を賃料収入(インカムゲイン)に求めるのか、売買差益(キャピタルゲイン)に求めるのかによる観点の違いがある。

投資不動産を参照。

投資法人(投資信託における)

会社型投資信託において、投資家の資金によって投資を行なう主体となる法人をいう。

その構成員は投資主であるが、意思決定機関として投資主総会、業務遂行機関として役員会が設置されている。

投資法人の設立には内閣総理大臣への登録が必要で、出資総額は1億円以上とされるなど、一定の要件を満たさなければならない。また、投資法人は、投資主に対して会計情報等を開示するなど、その業務運営に関して規制があり、金融商品取引法等によって金融庁等の監督を受ける。

なお、投資法人による投資運用は、実際には、投資信託委託業者が行なっている。例えば、不動産投資信託(JREIT)の場合には、不動産と金融に詳しい専門家がこれに当たることが多い。

投資法人の課税の特例(不動産投資信託における~)

不動産投資信託投資法人において、法人税を事実上ほぼ免除するという税法上の特例のこと。根拠条文は租税特別措置法第67条の15である。

この特例では、一定の条件を満たす投資法人が、税引前当期利益(税法上の所得)の90%超に相当する額を、分配金として投資主に支払うならば、その分配金に相当する額を法人税法上の「経費」として計上することができると定めている。

例えば、ある投資法人の1会計期間(6ヵ月)の税引前当期利益(税法上の所得)が100億円、分配金が99億円、法人税の税率が40%だったとする。
この場合、分配金を損金(経費)扱いできるので、投資法人が支払うべき法人税は(100億円-99億円)×40%=4,000万円となる。その結果、当期純利益は100億円から4,000万円を差し引いた残額、すなわち99億6,000万円となる。

従って、「投資法人の課税の特例」が適用できる場合、「税引前当期利益」「分配金」「当期純利益」がほぼ等しくなるという現象が起きる。上記の例でいえば、税引前当期利益は100億円、分配金は99億円、当期純利益は99億6,000万円とほぼ等しい。

このように「投資法人の課税の特例」の適用を受ける結果として、投資法人は所得のほとんどを投資主に分配するという役割を担うことになる。このような意味で、投資法人は、不動産と投資家との間を橋渡しする「ビークル(乗り物)」であるといわれることがある。

投信法

投資信託および投資法人に関する法律のことで、投資者から資金を集め、投資者以外の者がその資金を集合して特定の資産に対する投資として運用し、その成果を投資者に分配する制度を定める法律。

その方法として、

1.投資者が拠出した財産を信託財産とし、信託契約によって投資運用してその利益を受益者に分配する形式(契約型)

2.投資者が、特定資産に対する投資運用を目的とした社団(投資法人)を設立してその利益を分配する形式(会社型)

とを定める。

1.の形式には、委託者の指図にもとづいて投資運用するタイプ(委託者指図型投資信託)と、指図にもとづかないで投資運用するタイプ(委託者非指図型投資信託)とがある。また、信託受益権を表示した受益証券(1.による)や、投資法人から利益の分配を受ける権利を表示した証券(2.による)は、いずれも有価証券とされており、その取引に当っては金融商品取引法に従わなければならない。

なお、この法律は1951(昭和26)年に制定され、当初は、契約型の方法で有価証券を対象に投資することのみを許していたが、1998(平成10)年に会社型の方法が認められた。また、2000(平成12)年には投資対象となる特定資産として不動産等が追加された。JREITは、この法改正によって組成が可能となったのである。 

塔屋

ビルの屋上に造られた建物をいう。

一般に、エレベーターの機械室、階段室、空調・給水設備室などとして利用されている。

なお、塔屋を「ペントハウス」と称する場合があるが、そのときには、機械・設備室ではなく、建物の最上階に設けられた高級な居室を意味することもある。

棟梁

大工頭。木造建築において、大工の作業を統率する。また、一般に建築士の資格を有し、木造軸組工法等の建築工事においては、設計・積算や工事管理の業務を担うことが多い。この場合、棟梁は、工事に携わる大工、左官、石工、屋根葺き工、設備工などを指揮し、作業の進行を監督する。

登録(宅地建物取引士の~)

宅地建物取引士資格試験に合格した者が、宅地建物取引士として業務に従事するのにふさわしい資格等を有していることを都道府県知事が確認する手続きのこと(詳しくは宅地建物取引士の登録へ)。

登録講習

宅地建物取引士資格試験では一定の講習を受けた者については、宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度(50問中の5問の免除)が設けられている(宅地建物取引業法第16条第3項)。

この宅地建物取引業法第16条第3項に定められた一部免除を受けるために受講しなければならない講習のことを「登録講習」と呼んでいる。

この「登録講習」は(公財)不動産流通近代化センターをはじめとする複数の登録講習機関が実施している。
「登録講習」を受講するためには、宅地建物取引業に従事していることが要件となっている(2004(平成16)年までは「通算して3年以上の宅地建物取引業務に関する実務経験を有すること」が必要だったが、2005(平成17)年からは宅地建物取引業に従事しているだけで受講できることになった)。

「登録講習」は、通信講座およびスクーリングから成り立っている。
スクーリングの最終日に登録講習修了試験が実施される。この終了試験に合格すると「登録講習修了者証明書」が交付される。この証明書によって宅地建物取引士資格試験の一部免除の適用を受けることができる。

登録実務講習

宅地建物取引士資格試験に合格した者が宅地建物取引士の登録を申請しようとする場合には、宅地建物の取引に関して2年以上の実務経験を有する必要がある。しかし、この実務経験がなくても、登録実務講習実施機関が実施する一定の講習を受講し修了証明書を交付された場合には、登録を受けることができるとされている。この一定の講習が「登録実務講習」である。

登録実務講習は、取引士制度に関する科目、宅地または建物の取引実務に関する科目、取引実務の演習に関する科目(業務の標準的手順の修得のための演習)について、それぞれ一定時間以上実施される。

登録住宅性能評価機関

住宅の品質確保の促進等に関する法律品確法)にもとづき住宅性能評価の業務を行なう機関であって、国土交通大臣の登録を受けた機関のこと。
住宅品質確保促進法第5条第1項では「登録住宅性能評価機関は住宅性能評価を行ない、住宅性能評価書を交付することができる」と定めている。
この規定により、正式な住宅性能評価書の交付を行なうことができる機関は、登録住宅性能評価機関だけに限定されているということができる。

登録の消除(宅地建物取引士の~)

宅地建物取引士の登録を受けている者について一定の事情が発生した場合に、都道府県知事が宅地建物取引士の登録を消除すること。

死亡等の届出(宅地建物取引業法第21条)にもとづいて消除する場合と、職権により消除する場合がある。
(詳しくは宅地建物取引士の登録の消除へ)

登録免許税

不動産の所有権を登記する場合や、抵当権を登記する場合に、登記所で納付する国税のことである。登録免許税は一般には「登記料」などと呼ばれることも多い。

登録免許税は、原則的には現金で納付し、その領収証書を登記申請書に貼付するが、その税額が3万円以下の場合には印紙によって納付することができる。

登録免許税の税率は、登記の種類ごとに「登録免許税法」によって定められている。

なお、住宅の建物部分や土地に関する所有権の移転、保存などの登記については、時限的に、登録免許税の軽減措置が講じられている。(詳細は、「登録免許税の軽減措置(住宅の建物部分)」「登録免許税の軽減措置(土地)」を参照。)

また、土地を相続登記する場合の登録免許税は、法務大臣が指定する土地について免除される。ただし、この特例の適用には期限があるので注意が必要である。

登録免許税の軽減措置(土地)

土地の売買による所有権の移転等の登記に対する登録免許税率の軽減措置。

土地の売買に係る登録免許税率が1.5%に軽減されている(本則は2%)。



また、土地所有権の信託登記に係る登録免許税率についても、0.3%に軽減されている(本則は0.4%)。

ただし、これらの特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

登録免許税の軽減措置(住宅の建物部分)

住宅の建物部分に係る登記に対する登録免許税率の軽減措置。


次の要件を満たす住宅の建物部分についての登録免許税率が次のように軽減されている。


・要件

 1)自己の居住用であること

 2)住宅の建物部分の登記簿上の床面積が50平方メートル以上であること

 3)新耐震基準に適合している住宅であること(登記簿上の建築日が昭和57年1月1日以降の家屋については新耐震基準に適合しているとみなす)

・登録免許税率
 1)所有権の保存登記…建物価額の0.15%(本則は0.4%)

 2)所有権の移転登記…建物価額の0.3%(本則は2%)

 3)抵当権の設定登記…債権金額の0.1%(本則は0.4%)




また、認定長期優良住宅および認定低炭素住宅の所有権の保存登記等、特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記については、さらに低い税率が適用される。

ただし、これらの特例の適用については期限が定められているので、具体的な期限について確認が必要である。

登録有形文化財

建造物である有形文化財のうち、その文化財としての価値に鑑み、保存および活用のための措置が特に必要とされるものとして登録されたものをいう(文化財保護法第57条)。

登録は、文部科学大臣により文化財登録原簿に記載することによって行なわれ、官報に告示される(同法第58条)。

登録有形文化財制度は、文化財保護法が1996(平成8)年10月1日に改正・施行されたことにより創設された制度である。この制度は、消滅の危機にさらされている主に近代の建造物を後世に継承していくことを目的としている。

登録有形文化財は、時代別では江戸時代が約1割、明治・大正・昭和がそれぞれ約3割を占めている。また種類別では、最も多いのが住宅(約4割)であり、産業関連が次に多い(約3割)。
登録有形文化財に関しては、その現状を変更しようとする者は、その行為の30日前までに文化庁長官に届出をしなければならない(同法第4条)。

登録有形文化財の件数については、文化庁ホームページを参照のこと。

通し柱

2階建て以上の木造建築物で、土台から軒桁まで1本の材で通された柱のこと。一般に建物の隅部などの要所に使われる。途中で桁・胴差などで中断されている短柱は管柱という。

特殊建築物

建築基準法において、一般の建築物よりも強い制限を課す建築物。「学校(専修学校及び各種学校を含む)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物」とされている。

特殊建築物に課す制限は、防火、衛生などの必要に応じて、その用途、床面積、階数などを特定して適用され、一律ではない。適用される制限の内容に即して、対象となる建築物や建築部分を確認する必要がある。

なお、耐火建築物等としなければならない特殊建築物の用途は、次のように分類されている。

(1)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場

(2)病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等(幼保連携型認定こども園を含む)

(3)学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場

(4)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗(床面積が10平方メートル以内のものを除く)

(5)倉庫

(6)自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ

特定空家等

空家のうち、放置することが不適切な状態にある建物(その敷地を含む)をいう。倒壊等著しく保安上危険となる恐れ、著しく衛生上有害となる恐れ、著しく景観を損なっている状態などがこれに当たる。

市町村長は、特定空家等の所有者等に対して、除却、修繕、立木竹の伐採など周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を取るよう助言、指導することができる。さらに、助言、指導にもかかわらず状態が改善されない場合には、勧告、命令を行なうこともできるとされている。

また、勧告の対象となる特定空家等の敷地については、固定資産税都市計画税の課税における住宅用地の課税軽減措置の対象から除外される。

なお、「空家」とは、居住その他の使用がなされていないことが常態であるものとされ、調査によって客観的に判断することとなっている。

特定街区

都市計画において、市街地の整備改善を図るために街区の整備を行なう区域として指定された地区をいう。

特定街区内では、一般的な建築規制を撤廃して、建築物容積率、建築物の高さの最高限度、壁面の位置についてのみが特別に指定される。比較的自由に大規模な建築物の建築が可能となることから、大規模な都市開発プロジェクトにおいてよく活用される制度である。

特定既存住宅情報提供事業者団体制度

安心できる既存住宅(安心R住宅)の情報を提供する宅地建物取引業者の団体が、その旨を国土交通省に登録する制度。国土交通省の告示による制度である。

安心R住宅とは、新耐震基準等に適合し、インスペクション建物状況調査等)を実施して既存住宅売買瑕疵保険を締結できる用意がなされている既存住宅で、「R」はReuse・Reform・Renovationの意味である。

特定既存住宅情報提供事業者団体は、その構成員に対し、安心R住宅の標章の使用を許諾する。また、許諾を得た構成員が遵守すべき事項を定めそれを遵守させるために必要な措置をとること、住宅リフォーム工事の実施判断の基準を定めること、特定既存住宅情報提供事業に関する相談等に応ずることも業務とされている。

特定行政庁

建築基準行政において、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長を、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。

人口が25万人以上の市の市長は原則として特定行政庁であるほか、それ以外の市町村長も建築主事を置くことによって特定行政庁となる。

建築主事は建築確認等の業務を行なうが、違反建築物に対する措置等は特定行政庁の業務とされている。

特定建築物(環境衛生維持に関する〜)

維持管理について環境衛生上特に配慮が必要な建築物。「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づき、政令で、店舗、事務所、学校等の用途に利用される面積が3,000平方メートル以上(学校の場合は8,000平方メートル以上)の建築物が指定されている。

特定建築物の維持管理に権原がある者は、その建築物について、空気環境の調整、給排水の管理、清掃等に関する基準(建築物環境衛生管理基準)に従って維持管理しなければならない。また、建築物環境衛生管理技術者を選任して監督させ、基準に適合させるための意見を尊重することとされている。

そのほか、特定建築物に関しては、建築確認申請時に必要に応じて環境衛生上の措置について事前協議すること、建築物の使用開始の日から1月以内に特定建築物届を提出すること、一定の帳簿類を備え付けることが義務付けられている。

なお、建築基準法に基づき、敷地、構造及び建築設備について定期的に調査し結果を報告しなければならない建築物も「特定建築物」というが、これは、環境衛生管理基準に従って管理しなければならない特定建築物とは異なる(「特定建築物(定期報告が必要な~)」を参照)。

特定建築物(定期報告が必要な〜)

敷地、構造及び建築設備について定期的に調査し、結果を報告しなければならない建築物。建築基準法に基づいて報告義務が課せられている。

定期報告が必要な特定建築物は、安全上、防火上又は衛生上特に重要なものであって、政令または特定行政庁によって指定されている。指定されているのは、不特定多数の者が利用する一定の建築物のうち、一定の階数、面積等を有するものであるが、その詳細は指定する特定行政庁によって異なる。また、高齢者等が就寝用途で利用する一定の福祉施設も指定されている。

特定建築物の所有者・管理者は、1級建築士・2級建築士・建築物調査員(設備については建築設備等検査員)に調査を依頼し、その結果を特定行政庁が定める期間ごとに報告しなければならない。

なお、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に基づき、空気環境の調整、給排水の管理、清掃等に関する基準(建築物環境衛生管理基準)に従って維持管理しなければならない建築物も「特定建築物」というが、これは建築基準法に基づき定期報告が必要な特定建築物とは異なる。

特定工作物

都市計画法における開発許可の対象となる、コンクリートプラント、ゴルフコース、テニスコート、墓園などのこと。

都市計画法では、建築物工作物をつくる目的で宅地造成などを行なう場合には、開発許可を受ける必要があると定めている(都市計画法第29条)。特定工作物は、この開発許可の対象となる工作物のことであり、次の2種類に区分されている。

1.第一種特定工作物
周辺の地域の環境の悪化をもたらす恐れがある工作物であって、都市計画法施行令第1条第1項に規定されたもののこと。具体的には、コンクリートプラント、クラッシャープラント、危険物の貯蔵または処理に供する工作物である。

2.第二種特定工作物
大規模な工作物であって、都市計画法施行令第1条第2項に規定されたもののこと。具体的には次のものである。
1)ゴルフコース(面積関係なし)
2)1ha以上の野球場、庭球場、陸上競技場、遊園地、動物園その他の運動・レジャー施設
3)1ha以上の墓園

特定口座

上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益に関しては、個人投資家が確定申告を行なって納税しなければならない。そこで、個人投資家の確定申告にかかる手続負担を軽減するために設けられた制度が「特定口座」である。

1.特定口座の概要
個人投資家は、自己の取引口座のある証券会社に「特定口座開設届出書」を提出することによって、自己の取引口座を「特定口座」として指定することができる(ちなみに、特定口座に指定されていない取引口座は「一般口座」と呼ばれる)。

特定口座は、証券会社に一つだけ開設することができる。複数の証券会社に取引口座がある場合には、それぞれの証券会社でそれぞれ一つずつ開設することができる。

こうして個人投資家が特定口座を持つと、証券会社は個人投資家の上場株式・店頭株式・上場不動産投資信託の売却益(または売却損)を毎月末締めで自動的に計算する。さらに、1年間の取引結果が「年間取引報告書」にまとめられて、翌年1月末頃に個人投資家の手元に届けられることになる。

2.「特定口座(源泉徴収あり)」の特徴
このような特定口座は、所得税額・住民税額の天引きをするかどうかによって、「特定口座(源泉徴収あり)」と「特定口座(源泉徴収なし)」という2種類に分かれている。

「特定口座(源泉徴収あり)」とは、証券会社が毎月の取引から生じた売却益に係る所得税額・住民税額(現行では税率10%)を、毎月末締めで自動的に顧客口座から天引きするという方式である。ただし、ある月に売却損が生じた場合には、その売却損は翌月以降に持ちされて翌月以降の売却益と相殺される仕組みとなっている。

この月末締めで天引き(源泉徴収)された金銭は、証券会社が翌月10日までに税務署に納税する。この納税により、証券会社が個人投資家の確定申告を代行することになるので、個人投資家自身は税務署で申告手続をする手間を省くことができるというメリットがある。

個人投資家は「特定口座開設届出書」を提出する際に、「特定口座源泉徴収選択届出書」を併せて提出することによって、この方式の適用を受けることができる。

なお、個人投資家がその年において売却損を被り、「上場株式等の譲渡損失の繰越控除」の適用を希望する場合には、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択している場合であっても、自分自身で確定申告をしなければならないことに注意したい。

3.「特定口座(源泉徴収なし)」の特徴
個人投資家が「特定口座(源泉徴収なし)」を選んだ場合には、上記のような天引き(源泉徴収)の仕組みが適用されないため、個人投資家は自分自身で税務署にて確定申告の手続きを行なわなければならない。

ただし「特定口座(源泉徴収なし)」では、1年間の取引結果が「年間取引報告書」にまとめられて、翌年1月末頃に個人投資家の手元に届けられるので、この「年間取引報告書」によって簡便な方法で確定申告手続を行なうことができるというメリットがある。

なお、「特定口座(源泉徴収なし)」で確定申告を行なう場合、上場株式等の売却益は「配偶者控除等を適用するための所得金額」に加算されてしまうというデメリットがある。

例えば、パート収入のある妻の給与所得が、配偶者控除を受けられる範囲内の給与所得であったとしても、その妻が株式売買で多額の利益を上げたならば、その利益が配偶者控除の適用の判定にあたっての妻の所得金額に加算される結果、配偶者控除の適用外と判定されることがある。
(これに対して、「特定口座(源泉徴収なし)」を選べば、株式売却益は「所得金額」に加算されないので上記のようなデメリットは生じない)

特定施設(水質汚濁防止法における~)

有害物質を排出しまたは生活環境に被害を生ずる恐れがあるような汚水等を排出する施設であって、水質汚濁防止法施行令で指定された施設のこと。全部で103種類の施設が特定施設とされている。

環境省の調べ(2015(平成27)年度)によると、こうした特定施設を設置している工場・事業場等(「特定事業場」という)の数は、全国で26万強(瀬戸内海法に基づくものを含む)にのぼる。

業種・施設別に見ると、多い順に、旅館業(6万強)、自動式車両洗浄施設(3万強)、畜産農業(3万弱)であり、上位10業種・施設で約4分の1を占めている。

なおこうした特定施設のうち、土壌汚染対策法で定める特定有害物質を使用する施設は「有害物質使用特定施設」と呼ばれ、全国で約1万5,000ヵ所と推計されている。

特定施設設置等の届出(水質汚濁防止法における~)

有害物質を排出し、または生活環境に被害を生ずる恐れがあるような汚水等を排出する施設であって、水質汚濁防止法施行令第1条で指定された101種類の施設のことを「特定施設」という。

環境省の調べによると、こうした特定施設を設置している工場・事業場等(「特定事業場」という)は、全国で約30万ヵ所にのぼるとされている。
こうした特定施設を設置等しようとする事業者については、水質汚濁防止法により次のような届出義務が課せられている(同法第5条・第10条)。

1.工場・事業場から公共用水域(河川等)に水を排出する者は、特定施設を設置しようとするときは、事前に都道府県知事に汚水等の処理の方法や排出水の汚染状態および量などを届け出なければならない。ただし公共下水道等に水を排出する場合には、この届出義務は免除される(同法第2条第1項)。

2.有害物質を使用する特定施設において水を地下に浸透させる者は、特定施設を設置しようとするとき、汚水等の処理の方法などを事前に都道府県知事に届け出なければならない。

3.特定施設の使用を廃止した事業者は、使用廃止後30日以内に都道府県知事に使用廃止の届出を行なう必要がある。

特定承継人

他人から個別の権利を承継する者をいい、例えば売買によって所有権を取得する者などがこれに当たる。他人の権利義務を一括して継承する者(包括継承人)に対する概念である。

特定継承人は、特別の定めのない限り、被継承人(例えば売買における売主)が有していた債権・債務関係には拘束されない。そこで、例えば区分所有法では、規約および集会の決議は区分所有者の特定承継人に対しても効力がある旨規定して、区分所有者に対する規約・集会決議の拘束力の継続を確保している。

特定所有者不明土地

所有者不明土地のうち、現に建築物がなく、業務の用、その他の特別の用途に供されていない土地(簡易構造の小規模な建築物がある土地を含む)をいう。

特定所有者不明土地については、地域福利増進事業を実施しようとする者が一定の手続きによって土地使用権を設定し、事業の用に供することができる。また、事業認定を受けた収用適格事業または都市計画事業の企業地・事業地内にある特定所有者不明土地について、起業者・事業者は、都道府県知事の裁定によってその土地を収用または使用することができる。

特定地下浸透水

水質汚濁防止法は、人の健康に係る被害を生ずる恐れがある有害物質または生活環境に被害を生ずる恐れがある汚染水を排出する施設を政令で指定し、これらの施設を「特定施設」としている。

「特定地下浸透水」とは、有害物質を使用する特定施設を設置する工場・事業場から地下に浸透する水である。

有害物質を含む可能性があることから、有害物質を使用する特定施設を経営する事業者に対しては、排出水および特定地下浸透水の汚染状態の測定が義務付けられている。

また、特定地下浸透水が有害物質を含んでいるとき、その特定地下浸透水を地下に浸透させることが禁止されており、これに違反して事業者が有害物質を含む特定地下浸透水を地下に浸透させたときには、地下水の水質浄化の措置命令が出される場合がある。

特定賃貸借契約

住宅を第三者に転貸する事業を営むために締結する賃貸住宅の賃貸借契約。「マスターリース契約」とも言う。この場合、事業者は、併せてその住宅の管理業務を受託する契約を締結するのが一般的である。

特定賃貸借契約の内容は、家賃等賃貸の条件、契約期間、転貸する住宅の維持保全の実施方法、転借人の資格等転貸の条件などである。事業者は、契約を締結したときには、これらを記載した書面を契約の相手方に交付しなければならない。

また、特定賃貸契約を締結しようとする場合に、転貸事業者および契約勧誘者は、契約の相手方(賃貸住宅の所有者)に対して誇大に広告する行為および家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げずまたは不実を告げる行為が禁止されているほか、事業者は、契約の締結前に、家賃、契約期間等(重要事項)を記載した書面を交付して説明しなければならない。

これら特定賃貸借契約に関する規制は、賃貸住宅管理業法に基づくもので、違反すると業務停止処分や罰則が課されることがある。

特定転貸事業者

特定賃貸借契約によって賃借した住宅を第三者に転貸する事業を営む者。

特定転貸事業者は、特定賃貸借契約の締結をしようとする場合に、契約の相手方(賃貸住宅の所有者)に対して誇大に広告する行為及び家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げずまたは不実を告げる行為が禁止されるほか、契約の締結前に、家賃、契約期間等(重要事項)を記載した書面を交付して説明しなければならない。

また、事業者は、契約を締結したときには契約内容を記載した書面を契約の相手方に交付し、事業の内容や財産の状況を記載した書類を備え置いて閲覧に供さなければならない。

これらの義務は、賃貸住宅管理業法に基づいて課せられている。義務に違反した場合には、違反是正措置の指示、特定賃貸借契約に関する業務の停止命令、または罰則が課せられることがある。また、必要に応じて、業務に関する報告の聴取や営業所等への立入検査が実施される。

特定登記未了土地

所有権登記名義人の死亡後に相続登記等がされていない土地であって、公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索する必要があるものをいう。

登記官は、その所有権の登記名義人の死亡後一定の期間(10年以上30年以内で政令で定められる)を超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を探索したうえで、職権で、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記等がされていない土地である旨などをその所有権の登記に付記することができる。

特定都市河川浸水被害対策法

都市河川の流域における浸水被害対策を定めた法律。

2004(平成16 )年に公布された。治水を、流域対策を含めて実施するための仕組みを定めていることが特徴である。

この法律で定められている主要な対策事項は次の通りである。

1.特定都市河川及び特定都市河川流域の指定

 著しい浸水被害が発生し、またはその恐れがあって、通常の河川整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難な河川およびその流域を指定する。指定は、国土交通大臣または都道府県知事が行なう。

2.流域水害対策計画の策定

 浸水被害の防止を図るための流域水害対策計画を策定する。同計画は、河川管理者、下水道管理者、都道府県知事および市町村長が共同して作成し、

 1)河川管理者による雨水貯留浸透施設の整備

 2)事業実施によって利益を受ける地方公共団体間の費用負担

 3)条例による下水道排水設備の貯留浸透化の義務付け

などについて定める。

3.雨水の流出の抑制のための規制等

 1)著しい雨水の流出増をもたらす一定規模以上の行為についての都道府県知事の許可、許可に当たっての雨水貯留浸透施設の設置義務付け

 2)一定規模以上の防災調整池を保全調整池として都道府県知事が指定、埋立等の行為についての都道府県知事に対する届出を義務付け

 3)地方公共団体による保全調整池の所有者との承継効を有する協定の締結と当該保全調整池の管理

4.都市洪水想定区域及び都市浸水想定区域の指定等

 1)都市洪水(河川の氾濫)または都市浸水(内水による溢水・湛水)により浸水が想定される区域を都市洪水想定区域・都市浸水想定区域として指定・公表

 2)地下街管理者による浸水時の避難等に関する計画作成および公表の努力義務

貯留機能保全区域及び浸水被害防止区域の指定

 1)浸入した水や雨水を一時的に貯留する機能を有する土地の区域を貯留機能保全区域として指定し、盛り土などの行為の届出を義務付け

 2)洪水や雨水の出水によって建築物が損壊・浸水し、著しい危害が生じる恐れがあると認められる土地の区域を浸水被害防止区域として指定し、特定の開発行為について許可を得ることを義務付け

特定道路

建築基準法の容積率に関する規定では、幅15m以上の道路のことを「特定道路」という。

このような幅員の広い道路から近い距離にある建物については、一定の割合で「前面道路による容積率の制限」が緩和され、容積率の割増を受けることができる。
(詳しくは「容積率」へ)

特定農地貸付け

農地を農業者以外の者に貸付けることをいう。一定の要件を満たす場合に認められ、市民農園などを開設・運営する場合に活用されている。貸付けることのできる農地は、営利を目的としない農作物栽培を目的とすること、アール未満で相当数の者を対象に定型的に貸付けること、貸付期間が年を超えないことなどの条件を満たさなければならず、また、貸付けについて農業委員会の承認を必要とする。

一方で、農業委員会の承認があれば賃貸借等についての農地法の許可は必要ない。

特定非営利活動促進法

一定の非営利活動を行なう団体に法人格を付与することなどの制度を定めた法律で、1998年に公布・施行された。ボランティア活動など、市民による自由な社会貢献活動の発展を促進することを目的としている。

この法律によって、民間の非営利団体が、その設立について都道府県知事の認証を得て法人格を付与される制度が創設された。知事の認証を得るには、

1.団体の活動が、保健・医療・福祉、社会教育、まちづくり、環境の保全、災害救援、国際協力、消費者保護など法律に定められた17種類の活動を、不特定多数の利益のために非営利で行なうことを目的としていること
2.宗教活動、政治活動などを主たる目的としていないこと

などの要件を満たさなければならない。

認証を受けて設立され、法人格を付与された団体を「特定非営利活動法人」という。

特定非営利活動法人

特定非営利活動促進法によって法人格を付与された団体をいう。

特定非営利活動法人以外の者は、その名称中に、「特定非営利活動法人」またはこれに紛らわしい文字を用いてはならないとされている。

特定防災街区整備地区

密集市街地の防災機能確保のために都市計画で定められる地区。地域地区の一つで、地区内の土地について建築行為が制限される。「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(密集市街地整備法)に基づく制度である。

特定防災街区整備地区の指定は、老朽化した木造建築物が密集し、延焼防止や避難の機能(特定防災機能)が確保がされていない地域が対象となる。

特定防災街区整備地区内は、都市計画で、最低敷地面積、壁面位置、開口率(防災都市計画施設に接する割合)等が定められ、建築物はその基準を満たさなければならない。

特定目的会社

特定の資産を裏付けとした有価証券を発行するためだけに設立された法人で、「資産の流動化に関する法律」にもとづいて設立される特別な社団をいう。

通常SPC(Special Purpose Company)といわれ、また、TMKと略称されることもある。不動産の証券化などのために活用される一種のペーパーカンパニーであり、資産処分とともに解散される。

その重要な機能は、証券化の対象になる資産を独立させ、責任を資産価値の範囲内に限定すること(倒産隔離機能)、および、投資家への二重課税を回避するための器となること(導管体機能)である。資産の管理運用などの具体的業務は、一定の要件を備えた会社等に委託される。

なお、資産の流動化に関する法律では、資産流動化の方法として、特定目的会社を用いる場合のほか、特定目的信託を用いる場合を規定している。

特定目的信託

不動産証券化手法の一つで、資産の流動化を目的とした信託をいう。

通常SPT(Special purpose Trust)といわれる。

資産の流動化に関する法律(資産流動化法)」によって制度化されており、対象特定資産の保有者は、信託契約締結時に、信託受益権を分割して複数の者に取得させることを目的とする旨定めて、当該資産を流動化する仕組みである。特定目的会社とほぼ同様の機能を発揮することができる。

特定盛土等規制区域

土地の傾斜度、渓流の位置、土地利用の状況などから、盛土等・土石の堆積によって居住者等の生命身体に危害を生ずるおそれが特に大きいと認められるとして指定された区域。ただし、宅地造成等工事規制区域を除く。「宅地造成及び特定盛土等規制法」に基づき、都道府県知事が指定する。

指定されるのは、土石流等によって居住者等の生命身体に危害を生ずるおそれの特に高い区域であって、盛土等が行なわれている状況、今後の盛土等が行なわれる可能性、盛土等に伴う災害の発生状況等を踏まえ、盛土等に伴う災害が発生する蓋然性があると判断される区域である。

特定盛土等規制区域内で行なう盛土等・土石の堆積に対しては、次のような規制が適用される。

ア)一定の盛土等・土石の堆積に関する工事について、着手する30日前までに都道府県知事に届け出なければならない。

イ)次の行為を伴うときには、工事に着手する前に都道府県知事の許可を得なければならない。

(1)土地の形質の変更

i)盛土・切土によって一定の高さを超える崖を生じるもの

ii)盛土・切土する土地の面積が一定値を超えるもの

iii)高さが一定値を超える盛土

(2)土石の一時堆積(一定期間経過後に搬出することを前提とした堆積)

i)堆積する土地の面積が一定値を超えるもの

ii)堆積高が一定値を超えるもの

ウ)工事の許可を得るためには、工事が、地盤の安定性確保、盛土等の形状、擁壁の設置、排水施設の設置、崖面等の侵食防止に関する技術基準に適合すること、工事を完成するために必要な能力があることなどの要件を満たさなければならない。

エ)許可された工事について、施工状況を定期的に報告し、一定の工事について施工中に中間検査を受け、工事完了時に完了検査を受けなければならない。

オ)区域内の土地については、土地所有者等は、盛土等・土石の堆積に伴い災害が生じないよう安全な状態に維持する責務がある。また、災害防止のため必要なときは、土地所有者等のほか、原因行為者に対しても是正措置等が命じられる。

特定有害物質(土壌汚染対策法の~)

土壌汚染対策法において、人の健康に被害を生ずる恐れが大きいものとして指定された26種類の物質のこと。

なお、ダイオキシン類については、ダイオキシン類対策特別措置法において土壌汚染対策が定められているので、土壌汚染対策法の特定有害物質からは除外されている。

土壌汚染対策法では、特定有害物質を使用する特定の施設(「有害物質使用特定施設」という)の使用を廃止したとき、土地所有者等に対して土壌汚染状況調査の実施を義務付けている。

特定有害物質はその性質により次の3種類に区分されている。

1)第一種特定有害物質
 トリクロロエチレンテトラクロロエチレンなどの12種類の揮発性有機化合物
2)第二種特定有害物質
 鉛、砒素などの9種類の重金属等
3)第三種特定有害物質
 有機リン化合物などの5種類の農薬等

ドアクローザー

開けた扉を自動的に閉める装置。英語のdoor closer。押し引きで開閉する扉に用いられる。外部動力を備えておらず、扉を開くエネルギーをバネに溜めて、バネの力で閉まる。このとき、閉まる速度が減速装置によって調節される。

ドアスコープ

玄関などのドアに取り付け、外の様子を見ることのできるのぞき穴。穴に広角レンズがはめ込まれている。ドアスコープは和製英語で、英語ではpeephole(ピープホール)という。

ドアストッパー

扉を開いた状態に固定するため、または扉を開けたとき家具等に当たらないようにするために用いる器具。英語のdoorstopper。

ドアストッパーには、 扉を止める方法に応じて、ドアと床面との隙間に差し込むもの、足で留め具を操作するもの、扉を磁力で留めるもの、床や壁に扉の当たり止めを設置するものなどの種類がある。

同意権

他人のなす行為について、それを肯定する旨の意思表示をする法律上の権限。法律の規定によって、一定の者が行なう一定の行為について、法律上完全な効力が生じるためには特定の者の同意が必要とされている場合に、その同意する権能が同意権である。

同意権を定める規定は民法に多い。たとえば、未成年者法律行為をするには原則としてその法定代理人の同意を得なければならないが、同意を得ないで行なった行為は取り消すことができるとされている。あるいは、被保佐人不動産等に関する権利の得喪を目的とする行為などをするときには、保佐人の同意を得なければならず、同意を得ないでなした行為は取り消すことができる。

同意権が及ぶ範囲、同意する方法、同意を得ないで行った行為の効力などは法律に規定されていて、定められた同意権ごとに異なる。

導管体

資産(不動産)の証券化に当たってSPEが満たすべきとされる要件の一つで、資産(不動産)から得られた利益をそのまま投資家に配分するための機能をいう。

通常、法人が事業利益を得るとその利益に対して法人税が課せられるが、税を支払えば投資家に配分できる利益は減少する。そこで、事業目的を投資家に利益を配分することに限定したSPEについては、一定の要件を満たせば法人税を課さないこととされている。その要件を満たすSPEは導管体としての機能を有することになる。

導管体には二つの種類がある。

一つは、その性格からそもそも法人税が非課税のもので、任意組合、匿名組合、信託(特定目的信託等は除く)がこれに相当する(パス・スルー型)。

もう一つは、法人税は課税されるが投資家に配分する利益を損金として控除できるため結果として課税されないもので、資産流動化法による特定目的会社特定目的信託、投資信託および投資法人法による投資法人がこれに相当する(ペイ・スルー型)。この場合、配当可能所得額の90%を超える部分を配当に当てなければならないとされている。

いずれの場合も、利益を配分された投資家に対して課税されるのは当然である。

動機

内心的効果意思(具体的にある法律効果を意欲する意思)を形成するもととなった心意のこと。

例を挙げれば、品物を家族にプレゼントしようという意図が「動機」であり、その動機にもとづいて店頭で品物を買おうと意欲する意思が「内心的効果意思」である(詳しくは意思表示へ)。

動機の錯誤

錯誤とは、内心的効果意思と表示行為が対応せず、しかも表意者(=意思表示をした本人)がその不一致を知らないことである。
従って、動機そのものが思い違いにもとづくものである場合には「錯誤」の範囲に含めることができないので表意者を保護することは本来できないはずである。しかし、実際にはこうした動機に関する思い違いが「錯誤」の問題として争われることが非常に多いため、判例ではこうした動機に関する思い違いも次の3つの要件を同時に満たすとき「錯誤」として取り扱い、表意者の保護を図っている。

1.法律行為の要素の錯誤であること
法律行為の要素とは「意思表示の内容の主要な部分であり、社会通念上この点について錯誤がなければ表意者はそのような意思表示をしなかっただろうと認められるような部分」のことである。このような重要な部分について、動機の思い違いがあれば、表意者を保護しようという趣旨である。

2.動機が明示または黙示に表示されたこと
動機が何らかの形で表示され、相手方がその動機を知ることができたことである。これにより相手方が不測の損害を受けることを回避しようとする趣旨である。

3.表意者に重大な過失がないこと
これは通常の錯誤と同じ要件である。表意者が少し注意すれば、要素に該当する動機の思い違いを回避できた場合には、その表意者は保護しないという意味である。

動産

動産とは「不動産以外の物」のことである(民法第86条第2項)。
そして不動産とは「土地及び定着物」とされているので、動産とは「土地及び定着物ではない物」ということができる。
特に重要なのは、不動産に付属させられている動産(例えば家屋に取り付けられているエアコンなど)である。このような動産は「従物(じゅうぶつ)」に該当し、不動産実務でよく問題となる(詳しくは従物付加一体物へ)。

同時履行の抗弁権

双務契約の当事者が、相手方が債務を提供するまでは自己の債務を履行しない、と主張できる権利をいう。

債務がお互いに対価の関係にあるとき、他方が履行しないのに一方だけを履行させるのは不公平だという考え方にもとづいて認められている。ただし、特約でどちらかの債務履行を先とする旨決められていることには主張できない。

同時履行の抗弁権がある間は、期限を過ぎて債務を履行しなくとも、履行遅滞とはならず、損害賠償義務や相手方の契約解除権は発生しない。また、訴訟において同時履行の抗弁権を主張すると、相手方には自分の弁済と引換えに給付を受けられるという判決(引換給付判決)がなされる。

公平確保のための権利であるから、双務契約の場合だけでなく、契約解除における原状回復義務(お互いに原状回復の義務を負う)、売主瑕疵担保責任(担保責任の履行と代金の支払いは双務関係)などにも適用される。

同棲

同居することをいうが、特に、正式な婚姻関係にないカップルが共に棲むことを指す言葉として使われる場合が多い。

賃貸住宅の借り入れや居住において、同棲することについて留意しなければならない場合がある。

動線

建物内や都市空間において、人やモノが移動する場合の経路をいう。

空間設計に当たってその合理性、機能性などを判断する重要な要素となっている。たとえば、家事や日常的作業における動線は、短く、交差せず、シンプルであれば利便性が高い。一方、商業空間などにおいては、多様な動線によって賑わいが生まれる場合もある。

工場や売り場での動線は、生産の効率性や商品の売上高に大きな影響を与える場合が多い。

道路(建築基準法上の~)

建築基準法第43条では、建築物敷地は「建築基準法上の道路」に2m以上の長さで接していなければならないと定めている。

ここでいう「建築基準法上の道路」には、次の2種類が存在する。

1.建築基準法第42条第1項の道路
建築基準法第42条第1項では次の1)~3)を「道路」と定義している。
この1)~3)の道路はすべて幅が4m以上である。
1)道路法上の道路・都市計画法による道路・土地区画整理法等による道路
2)建築基準法が適用された際に現に存在していた幅4m以上の道
3)特定行政庁から指定を受けた私道

2.建築基準法第42条第2項の道路
建築基準法第42条第2項では「建築基準法が適用された際に現に建築物が立ち並んでいる幅4m未満の道であって、特定行政庁が指定したもの」を道路とみなすと定めている。

このように建築基準法では、道路とは原則として4m以上の幅の道であるとしながらも、4m未満であっても一定の要件をみたせば道路となり得ることとしている。

道路(道路法上の~)

道路法上、道路とは、高速自動車国道・国道・都道府県道・市町村道のことで、一般交通の用に供される。それぞれ、その路線は、政令による指定(高速自動車国道・国道)、都道府県知事の認定(都道府県道)、市長村長の認定(市町村道)によって定められている。

一方、道路法上の道路ではない道路もある。農道、林道、私道などがこれに該当する。現況は公衆の通行する道路(国有地)でありながら、道路法上の道路ではないものも多く、これらは「里道(りどう)」と呼ばれる。

道路位置指定

特定行政庁が、私道の位置を指定することを「道路位置指定」と呼んでいる(建築基準法第42条第1項第5号)。

この「道路位置指定」を受けることによって、私道は「建築基準法上の道路」となることができる。
従って、私道のみに接する土地で建築をしようとする際には、まず私道について「道路位置指定」を受けることが必要である。

「道路位置指定」を受けるためには、その私道が建築基準法施行令第144条の4の基準を満たすことが必要である。この基準によれば、私道の幅は少なくとも4m(袋地の場合には6m)であることが必要とされている。

道路外災害応急対策施設

道路管理者との協定によって、災害時の応急対策の拠点として利用する駐車場等。災害時には、支援活動に必要な専用のスペースとして利用されるほか、必要に応じて防災設備が整備される。道路法に基づく制度である。

道路外災害応急対策施設として利用するための協定(災害応急対策施設管理協定)の対象となるのは、広域災害応急対策の拠点として指定された「防災拠点自動車駐車場」(道路管理施設)に隣接し、それと一体になって拠点機能を発揮することのできる駐車場等である。協定は、道路外災害応急対策施設の所有者等と締結する。

この道路外災害応急対策施設についての協定は、締結後に道路外災害応急対策施設の所有者等となった者に対しても、引き続き効力がある。宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、この協定がある旨を重要事項として説明しなければならない。

道路外滞留施設

道路管理者等との協定によって、踏切遮断時に歩行者や自転車利用者が滞留のため利用する施設。踏切での安全確保のためには、踏切遮断時に歩行者等が滞留するスペースを確保することが有効だが、その整備が困難な場合に、道路管理者等が協定によって整備・管理する道路外の施設である。協定は、土地の所有者等と締結する。踏切道改良促進法に基づく制度である。

この道路外滞留施設についての協定は、締結後に道路外滞留施設の所有者等となった者に対しても引き続き効力がある。宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、この協定がある旨を重要事項として説明しなければならない。

道路外利便施設

道路管理者との協定によって、道路の通行者・利用者の利便に供する施設。

道路には、並木、街灯など通行者・利用者の利便の確保に資する施設を整備する必要があるが、それが困難な場合に、道路管理者が協定によって管理する道路外の施設である。協定は、施設の所有者等と締結する。道路法に基づく制度である。

この道路外利便施設についての協定は、締結後に道路外利便施設の所有者等となった者に対しても引き続き効力がある。宅地建物取引業者は、取引や取引の代理・媒介に当たって、この協定がある旨を重要事項として説明しなければならない。

道路斜線制限

道路高さ制限のこと。

建築基準法によれば、建物の各部分の高さは、その部分から前面道路までの距離が長いほど高くすることができる。これを道路高さ制限と呼んでいる(建築基準法56条)。
中層以上の建築物で道路に面した壁の一部が、垂直でなく、斜面になっていることがあるのは、道路高さ制限を守るために、そのような形に設計したものである。

道路高さ制限の具体的な内容は、建築基準法56条と建築基準法別表第3で細かく規定されている。概要は次の通りである。

1.建物の各部分の高さの限度は、「前面道路の幅」と「その部分から道路までの距離」との合計の1.25倍または1.5倍である(住居系の用途地域(7種類)では1.25倍、それ以外の用途地域では1.5倍である)。

2.上記1.の建物の各部分の高さの限度は、前面道路とその向かいの敷地との境界線から一定の距離以上離れた建物の部分には適用されない。この道路高さ制限の適用を免除される距離は、建築基準法56条と建築基準法別表第3で細かく規程されている。

一例を挙げると、第二種中高層住居専用地域容積率が150%であるときは、この道路高さ制限の適用を免除される距離は20mと規定されている。従ってこのときは、前面道路と向かいの敷地との境界線から20m以上離れた地点では、道路高さ制限は適用されず、建物の高さを自由に高くしてよいということになる。

道路高さ制限

道路斜線制限」を参照。

道路幅員

道路の幅の広さ。車道・歩道だけでなく、路肩、植樹帯、中央帯等を含めた道路構造物全体の幅を言う。

建物敷地は道路に接していなければならないが、その接面道路の幅員に応じて、建築に一定の制限が課せられている。たとえば、接面道路の幅員が4メートル未満の場合には、原則として、道路中心線から2メートルの位置まで建築線を後退しなければならない。あるいは、接面する道路の幅員に応じて容積率が制限されることがある。

接面道路の幅員は、不動産取引に当たっての重要事項説明において、敷地と道路との関係を説明する際に明示されるが、道路台帳等の書類によるだけでなく、現地調査によって現況が確認されていることが望ましい。

ドーマー

屋根から突き出した切妻の小屋根付き窓のこと。ドーマーウィンドウともいう。

採光換気のために用いるが、最近は、外観上のデザインアクセントとして付けることもある。屋根面に完全にのったルーフドーマーウィンドウ、軒部分から立ち上がるウォールドーマーウィンドウがある。

ドームハウス

半球状の建物。丸屋根で、空間全体が球曲面に囲まれている。domeは英語だが、ドームハウスは和製英語である。

ドーム(和語は「穹窿(きゅうりゅう)」「丸屋根」)は屋根に用いられる構造体であるが、ドームハウスは、屋根だけでなく建物全体を半球状に形作る建築物で、支柱や壁のないシンプルな空間が特徴である。その構造には、アーチ構造、シェル構造、空気幕構造などいくつかの種類がある。

ドームハウスの大きさや用いる建材はさまざまで、その用途・形式も、テント風の小屋、独立カプセル形の宿泊施設、通常の住宅、大空間施設など幅広い。

ドームハウスは、一般に建築費が安いとされるが、間仕切りが難しい、デッドスペースが生じやすいなどの難点がある。